JP3364441B2 - ホーロー鋼板 - Google Patents

ホーロー鋼板

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はマーカーボード、チ
ョークボード、トンネル内装材、建築用内装材、建築用
外装材として使用されるホーロー鋼板を提供するもので
ある。特にホーロー密着性に優れ建築用内装材として予
めホーロー被覆した後に、簡単な加工成形して使用する
ことができる曲げ加工密着性、曲げ加工部耐食性、耐端
面錆性に優れたホーロー鋼板を提供するものである。
【0002】
【従来の技術】鋼板に耐食性、耐薬品性、耐候性、意匠
性などの機能を付与し、基材の寿命を向上させる方法に
塗装やホーロー被覆法がある。ホーロー被覆鋼板(以
下、ホーロー鋼板と略す)は塗装鋼板に比べ、硬度、耐
候性、洗浄回復性、耐熱性、不燃性などの点で優れた性
質を有するが、価格が高く加工すると剥がれるといった
欠点がある。即ちホーロー鋼板を用いた塑性加工製品
は、母材の金属を塑性加工した後にホーロー被覆される
といった手順で製造されるいわゆるポストコート品が一
般的であって、帯状の金属に連続的に被覆し、その後、
塑性加工されるいわゆるプレコート品に比べ、製造コス
トが著しく高価なものとなってしまう。一方塗装鋼板
は、ある程度塗膜が加工に追随するため、軽度の加工製
品であれば連続的にコイルコートにより塗装された後に
加工されるプレコートでの製造が可能であり、製造コス
トが低く低価格となる。したがって多種用途へ適用され
ている。つまりホーロー鋼板はポストコート品であるた
め価格が高くなるという問題がある。しかし例えば病院
内などではホーローの優れた洗浄回復性による汚染防止
効果が好まれ、ホーロー製品が多く用いられている。そ
こで特に例えば病院に代表される衛生を重視する建物の
内装材としてホーロー被覆後に曲げ加工してもホーロー
が剥がれないホーロー鋼板が要求されてきた。この場合
ホーロー鋼板の板厚は通常0.3mm以上であるので曲
げ加工時にはホーロー表面は10%以上の引っ張り加工
を受けることになる。ホーロー層は、ガラス質であるた
めに延び率が低く、ホーロー層へのクラックの侵入は免
れない。従って曲げ加工できるホーロー鋼板の必須条件
としてはホーロー層にクラックが入ってもホーロー層は
下地金属に強固に密着していること、さらにクラック部
から錆の発生がないことが必要となる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】このようなホーロー被
覆後に曲げ加工されるホーロー鋼板としては特公平6−
43257号公報の発明が提案されている。これは表面
部がアルミニウムから成る金属板の表面に組成・厚みを
規定したホーロー層を設けたものであるが、塗装鋼板に
適用されるような厳しい曲げ加工がされる際には、ホー
ロー層はたとえ脱落しないまでもホーロー層のクラック
が下地アルミニウムめっきにまで侵入し、めっきにクラ
ックが入る。アルミニウムはそれ自体の防錆性は良好で
あるが、一般的な大気中では鋼に対する犠牲防食作用が
無いためにめっきにクラックが入った場合には赤錆(鉄
錆)の発生は免れないという問題点があった。またホー
ロー被覆後に加工されたホーロー鋼板の場合には必ず端
面に鋼素地が露出するが、下地めっきがアルミニウムの
場合には端面からの赤錆発生を免れないという問題もあ
った。
【0004】一方、耐食基材をホーロー層の下層に有す
るホーロー鋼板としては、特公平5−71667号公報
の発明が提案されている。これは、アルミニウム亜鉛合
金めっきにホーロー被覆するものであり、塗装鋼板の場
合には同様の耐食性の目的で従来からアルミニウム亜鉛
合金めっきを塗装下地処理として使用しているが、犠牲
防食作用を持つ亜鉛を含有するめっき層にホーロー被覆
することでホーローのピンホール部等から出る赤錆の発
生を防止したものである。しかしながらアルミニウム亜
鉛合金めっき層を構成する成分のうち亜鉛はホーロー層
とは密着性が良好でないためにホーロー被覆後に曲げ加
工した場合にはホーロー層が剥がれるという本質的欠点
がある。したがって、ホーロー鋼板を用いた、後曲げ加
工に優れる製品は従来世の中に存在していなかった。つ
まり、特公平5−71667号公報による方法をそのま
ま実施しても、後曲げ加工するとホーロー層が剥離して
しまった。また、この場合加工用ホーロー層としての考
慮がホーロー組成については全くなされておらず、ホー
ロー組成が十分な密着性能を有していなかったという原
因も有する。また、前述の通りホーロー層組成以外のめ
っき層とホーロー被覆層の密着性への影響因子について
も何ら考慮されていなかった。ここで亜鉛とホーロー層
の密着が良好でない理由は明らかでは無いが、亜鉛は非
常に酸化されやすい性質を有するため、無機酸化物(ホ
ーロー)による酸化が激しく密着に寄与する界面の反応
層が脆くなり、特公平5−71667号公報の発明では
めっき層とホーロー層の密着性、ホーロー層自体の加工
時の耐剥離性に問題を有していたものと考えられる。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明は上記実情に鑑み
検討を重ね、ホーロー密着性に優れる、ひいては曲げ加
工密着性、曲げ加工部耐食性に優れ、さらに耐端面錆性
にも優れた低価格で製造可能なホーロー鋼板を提供しよ
うとするものである。
【0006】すなわち本発明は、鋼板表面にアルミニウ
ム亜鉛合金めっき層を有し、該アルミニウム亜鉛合金め
っき層の上層部がアルミニウムおよびニッケルおよび1
重量%以下の亜鉛から成り、該アルミニウム亜鉛合金め
っき層上にホーロー被覆層を有することを特徴とするホ
ーロー鋼板を提供するものである。また、前記上層部
が、アルミニウム亜鉛合金めっき層表面を、ニッケルを
含有したpH4以下の水溶液に浸漬することにより形成
されるアルミニウムおよびニッケルおよび1重量%以下
の亜鉛から成るのが好ましい。また、前記ホーロー被覆
層が、P2 5 :45〜65重量%、Sb2 3 :5〜
15重量%、Al2 3 :2〜10重量%、B2 3
0.5〜5重量%、7重量%≦Na2 O+K2 O+Li
2 O<15重量%、7重量%≦ZnO+BaO+CaO
+SrO≦20重量%、1重量%≦TiO2 +SiO2
+ZrO2 ≦10重量%を含有するのが好ましい。
【0007】
【発明の実施の態様】以下に本発明をさらに詳細に説明
する。本発明は鋼板表面にアルミニウム亜鉛合金めっき
層を有する。該アルミニウム亜鉛合金めっき層中の金属
比率はアルミニウム含有率4〜70重量%と、残りが亜
鉛および通常の不純物及び皮膜特性を損なわず、または
向上させるための添加物質からなることが好ましい。ア
ルミニウムが4重量%未満ではアルミニウム亜鉛合金め
っき本来の優れた耐食性が望めない。一方アルミニウム
含有率が70重量%超の場合には曲げ加工部に生じるク
ラック部の犠牲防食効果が不充分となる傾向にあるから
である。より好ましくはアルミニウム含有率25〜70
重量%である。アルミニウム含有率が25重量%以上と
することでアルミニウム亜鉛合金めっきの融点がより高
くなり、めっき層が溶融するという損傷を受けにくくな
るからである。アルミニウム亜鉛合金めっきの添加物質
にはSi,La,Ce,Mg,Sn等がある。特にSi
は、加工部のめっき密着性の点から1〜2重量%添加さ
れていることが好ましい。アルミニウム亜鉛合金めっき
層の付着量は、両面で80〜300mg/m2 とするの
が好ましい。
【0008】前述のように、ホーロー層の下地層として
の亜鉛はホーロー密着性が劣るために曲げ加工するとホ
ーロー剥離を生じる。一方アルミニウムはホーローとの
密着性が良好である。アルミニウム亜鉛合金めっきは、
溶融めっき法によって一般的に製造されるが、溶融めっ
き処理における冷却過程でAlリッチ相とZnリッチ相
に相分離して鋼板表面に析出するため、Alリッチ相と
Znリッチ相に分れている。例えば、Al含有率25〜
75重量%の範囲のめっきの場合、まずα−Alが樹枝
状に晶出し、その後その樹枝間にα−Alとβ−Znが
晶出する。本発明では、主にα−AlからなるAlリッ
チ相は残したまま、α−Alとβ−ZnからなるZnリ
ッチ相表面にニッケルを析出付着させたホーロー下地層
を用いれば、ホーロー被覆層との密着性の優れたホーロ
ー下地層となるアルミニウム亜鉛合金めっきの上層部が
得られることを知見し本発明に至ったものである。
【0009】本発明のホーロー下地層としてのアルミニ
ウム亜鉛合金めっき層の上層部は、1重量%以下の亜鉛
およびアルミニウム、ニッケルから成るものである。こ
こで上層部とは表層約20Å深さまでの範囲のことをい
い、上層部の各成分の組成は、オージエ電子分光法によ
りマッピング像を得て面積比率を求め比重をかけて重量
%として評価する。表面のAlの含有率は4〜70重量
%、Niは30〜96重量%が好ましい。通常金属表面
は薄い酸化層または水酸化層を有していることから、ア
ルミニウムとニッケルのそれぞれが酸化物または水酸化
物を含んでもよい。またこのような上層部の好ましい製
造方法としては、ホーロー前処理として使用されるニッ
ケルめっき浴に、アルミニウム亜鉛合金めっき層を浸漬
する方法が例示され、この場合用いるニッケルめっき浴
に含まれるリン、りん酸その他浴アニオン等の密着性を
損なわず、または向上させるための添加物質または不純
物を含有していてもよい。特に、アルミニウム亜鉛合金
めっき層の上層部にNiと共にリン酸を含有させた場
合、リン酸系ホーローとの密着性に優れるので好まし
い。理由は定かでないが、リン酸同士の結合が生じるた
めと考えられる。また本願で提示したリン酸系ホーロー
層である場合には、後述するように耐薬品性等の化学的
耐久性に優れ、540℃以下の低温で焼成できるためア
ルミニウム亜鉛合金めっき層の溶融による損傷がなく、
優れた密着性と耐食性、ホーロー特性(硬度、耐候性、
洗浄回復性、耐熱性、不燃性に優れる)を持ち合わせた
ホーロー鋼板を提供できる。上層部の亜鉛含有率は1重
量%以下とする。1重量%超の亜鉛が存在すると下地の
アルミニウム亜鉛合金めっき層とホーロー被覆層の密着
性が劣化する。
【0010】その他、アルミニウム亜鉛合金めっき層の
上層部をアルミニウムとニッケル及び1重量%以下の亜
鉛で構成させる方法としては、電解めっき法、無電解め
っき法、置換析出法などによってNiをZn上に形成さ
せる方法が好ましい。特にニッケルイオンを含有したp
H4以下の水溶液にアルミニウム亜鉛合金めっき層表面
を浸漬すると、アルミニウムリッチ相は溶解せず、亜鉛
リッチ相上にのみニッケルを容易に析出させることが可
能であり、好適である。ニッケルイオンを含有するpH
4以下の水溶液としては、鋼板にニッケルめっきする際
に用いられるニッケルめっき浴が例示できる。pH4超
であると亜鉛リッチ相は溶解せずアルミニウムリッチ相
の一部が溶解し、亜鉛が表面に残存するため、めっき層
とホーロー被覆層の密着性の点から好ましくない。さら
に、ニッケルイオンとリン酸を含有するpH4以下の水
溶液に浸漬することにより、めっき層の上層部にNiと
リン酸を含有することが可能であり、リン酸系ホーロー
層の場合には上述の理由により好ましい。
【0011】本発明のホーロー鋼板は、鋼板上にその上
部層が1重量%以下のZnおよびアルミニウムとニッケ
ルから成るアルミニウム亜鉛合金めっき層を下地層とし
その最表層にホーロー被覆層を有する。
【0012】本発明に用いるホーロー被覆層の組成は特
に限定されないが、例えばホーロー焼成時間にもよる
が、焼成時間が5分の場合600℃を越えると下地層の
アルミニウム亜鉛合金めっき層は完全にホーロー層に混
入してしまうため、アルミニウム亜鉛合金めっきの優れ
た防錆性、犠牲防食性等が著しく低下する。従ってホー
ロー被覆層に600℃未満の低融点釉薬を用いることが
好ましい。さらにアルミニウム亜鉛合金めっき層は、5
40℃を越えるとめっきの溶融が始まり、ホーロー層に
混入する形となるため、特にホーロー被覆層を片面のみ
形成させる場合にはホーロー焼成温度を540℃以下と
するのが好ましい。本発明のホーロー鋼板は防錆性、犠
牲防食性に優れたアルミニウム亜鉛合金めっき鋼板をホ
ーロー下地として用いるため裏面には必ずしもホーロー
被覆層を必要としない。表側にのみホーロー層を形成さ
せる場合には、釉薬が片面分ですむためコストも低減で
きる。しかしこの場合裏面にはアルミニウム亜鉛合金め
っき層を有することが好ましい。この場合このめっき層
が損傷しないホーロー焼成条件としてできるだけ低温で
焼成することが好ましい。めっきの融点をこえた温度で
焼成するとホーロー焼成中に炉内にめっきが流れ、設備
にも悪影響を及ぼし、製品としても裏面のめっき層も損
傷を受け防錆性、犠牲防食性が失われ、赤錆発生を引き
起こすからである。ホーロー被覆層のない裏面側に存在
するアルミニウム亜鉛合金めっき層は前述の特定の上層
部を有しないものであるが、上層部を有していてもかま
わない。
【0013】融点が600℃未満の低融点釉薬組成とし
ては、主にPbOを主体としたホウ酸鉛系、ホウケイ酸
鉛系、P2 5 を主体としたりん酸亜鉛系、りん酸鉛
系、Na2 Oを主体としたソーダガラスなどが適用でき
る。これら基本組成に数種ないし数10種の酸化物を添
加した組成とすることができる。
【0014】特に釉薬組成として、P2 5 :45〜6
5重量%、Sb2 3 :5〜15重量%、Al2 3
2〜10重量%、B2 3 :0.5〜5重量%、7重量
%≦Na2 O+K2 O+Li2 O<15重量%、7重量
%≦ZnO+BaO+CaO+SrO≦20重量%、1
重量%≦TiO2 +SiO2 +ZrO2 ≦10重量%、
の範囲を含有する組成である場合には、鉛を含有せずに
540℃以下のホーロー焼成が可能となり好ましい。釉
薬組成はそれぞれ下記の理由でこの範囲であるのが好ま
しい。
【0015】P2 5 が45〜65重量%であると、ホ
ーローの耐薬品性を損なわずに540℃以下の低温焼成
が可能である利点がある。P2 5 は、本発明でのホー
ローのガラスを構成するもので、網目状に形成される。
2 5 は単体二重結合酸素を含むため、そのままでは
化学耐久性が低く、揮発性も強い。そこで以下の元素を
添加することによって、ホーローに必要な特性を発現す
ることが出来る。P2 5 は低温でのホーロー焼き付け
の点から、45〜65重量%の範囲が好ましい。すなわ
ち、45重量%未満になるとガラスの焼き付け温度が高
くなり、540℃以下での焼き付けが出来なくなる。逆
に65重量%を超えるとスリップ作製におけるボールミ
ル粉砕時にスリップの固化が発生する。Sb2 3 が5
〜15重量%であると、ホーローの化学的抵抗性を損な
わずに540℃以下の低温焼成が可能である利点があ
る。Sb2 3 は、ホーローの化学的抵抗性に影響を及
ぼす組成であり、5〜15重量%の範囲が好ましい。す
なわち、5重量%未満になるとホーローの焼成温度が高
くなり、540℃以下の低温焼き付けができなくなり、
逆に15重量%を超えるとホーローの耐酸性が発揮され
ない。
【0016】Al2 3 が2〜10重量%であると、ホ
ーローの機械的特性を損なわずに低温焼成が可能である
利点がある。Al2 3 は、ホーローの機械的性質、化
学的抵抗性に影響を及ぼす組成であり、2〜10重量%
の範囲が好ましい。すなわち、2重量%未満になるとホ
ーローの機械的性質、化学的抵抗性が発揮されない。逆
に10重量%を超えるとホーローの焼き付け温度が高く
なり、540℃以下での焼き付けが出来なくなる。B2
3 は、ホーローの低温化、耐酸性、光沢に影響を及ぼ
す組成であり、0.5〜5重量%の範囲が好ましい。B
2 3 が5重量%を超えると、耐酸性が劣り、また0.
5重量%未満では光沢が減少し、また焼成温度が高くな
るため、0.5〜5重量%の範囲が好ましい。Na
2 O、K2 O、Li2 Oは、ホーローの低温化、光沢、
化学的抵抗性に影響を及ぼす組成であり、これらから選
ばれる1種以上を含有することが好ましい。つまり、7
重量%≦Na2 O+K2 O+Li2 O<15重量%の範
囲が好ましい。Na2 O+K2 O+Li2 Oが7重量%
以上15重量%未満であると、ホーローの化学的抵抗性
を損なうことなく540℃以下の低温焼成が可能である
利点がある。すなわち、7重量%未満になるとホーロー
の光沢が減少し、また焼き付け温度が高くなり540℃
以下での焼き付けが出来なくなる。逆に15重量%以上
ではホーローの化学的抵抗性が減少してしまう。
【0017】ZnO、BaO、CaO、SrOは、ホー
ローの化学的抵抗性、機械的性質、熱膨張率に影響を及
ぼす組成であり、これらから選ばれる1種以上を含有す
ることが好ましい。つまり、7重量%≦ZnO+BaO
+CaO+SrO≦20重量%の範囲が好ましい。Zn
O+BaO+CaO+SrOが7〜20重量%である
と、ホーローの化学的抵抗性、機械的性質を損なうこと
なく540℃以下の低温焼成が可能である利点がある。
すなわち、7重量%未満になるとホーローの化学的抵抗
性、機械的性質が発揮されない。逆に20重量%を超え
るとホーローの焼き付け温度が高くなり、540℃以下
での焼き付けが出来なくなる。また、ホーローの熱膨張
率を増加させ鋼板とのミスマッチを生じ、ホーローに亀
裂が発生する。
【0018】TiO2 、SiO2 、ZrO2 は、ホーロ
ーの化学的抵抗性、機械的性質に影響を及ぼす組成であ
り、これらから選ばれる1種以上を含有することが好ま
しい。つまり、1重量%≦TiO2 +SiO2 +ZrO
2 ≦10重量%の範囲が好ましい。TiO2 +SiO2
+ZrO2 が1〜10重量%であると、ホーローの化学
的抵抗性、機械的性質を損なうことなく540℃以下の
低温焼成が可能である。すなわち、1重量%未満になる
とホーローの化学的抵抗性、機械的性質が発揮されな
い。逆に10重量%を超えるとホーローの焼き付け温度
が高くなり、540℃以下での焼き付けが出来なくな
る。
【0019】本発明の低温ホーロー釉薬を構成する組成
の原料としては、焼成により前記成分の酸化物もしくは
それらの酸化物の混合物を生じる原料であれば、どのよ
うなものでも良い。例えば、リン酸一水素アンモニウ
ム、リン酸二水素アンモニウム、酸化アルミニウム、酸
化アンチモン、(無水)ホウ酸、炭酸ナトリウム、ケイ
酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、酸化亜
鉛、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウ
ム、酸化チタン、(無水)ケイ酸、酸化ジルコニウム、
ジルコン等が挙げられる。特に、鉛は有毒であり、ホー
ロー用スリップの廃棄にも問題が生じる。特にスプレー
方式によりホーロー被覆層を形成させる場合には周囲へ
の飛散が大きく、作業環境とスリップの廃棄の双方で問
題となる。またホーロー鋼板として製品となった後リサ
イクルできない等の問題を生じるため前記のような鉛を
用いない釉薬が好ましい。
【0020】さらにこれらの釉薬からなるフリットに着
色顔料としての酸化物を混合したものを作って前述の下
地層(アルミニウム亜鉛合金めっきの上層部)上に施釉
し、その後炉内で焼成し、ホーロー層を形成させる。施
釉方法はスプレー方式、コーター方式、静電方式のいず
れを用いてもよい。
【0021】本発明のホーロー被覆層の膜厚は特に限定
されない。通常ホーローの膜厚は50μm以上である。
しかし特に曲げ加工用として使用される場合には、ホー
ロー膜厚は50μm以下とすることによりホーロー密着
性がさらに良好となる。鋼板とホーローは熱膨張係数が
異なるため、鋼板表面はホーロー焼成直後の冷却に際し
ホーローとの界面に応力を受ける。ホーロー膜厚が厚い
ほどその応力が大きくなり界面の密着性が低下する。さ
らに曲げ加工される場合には、ホーロー膜厚が厚いほど
表面のホーローの加工率が大きくなる。この2つの理由
から、膜厚を50μm以下とすると曲げ加工用として好
ましい。しかし特にこのような要求のない用途では膜厚
50μmを超えてもよい。
【0022】本発明のホーロー鋼板はホーロー焼成後加
工される用途に用いられることが好ましい。後曲げ加工
用として優れた密着性、耐食性を有する。また、もちろ
ん焼成後加工することなく平板のまま用いられてもよ
い。さらに本発明のホーロー鋼板は、帯状のホーロー鋼
帯であってもよい。
【0023】
【実施例】次に本発明の効果を実施例に基づいて具体的
に説明する。
【0024】(実施例)板厚0.35mm、片面当たり
の付着量75g/m2 (Al含有率55重量%、Si含
有率1.6重量%)のアルミニウム亜鉛合金めっき層を
有するガルバリウム鋼帯(AZ150)及びアルミニウ
ムめっき鋼帯(Si含有率1.6重量%)無塗油材を、
表1に示す種々の前処理を行った後、連続的に施釉工程
へと導き、表2に示す釉薬を用いてスプレー方式でスリ
ップを施釉し、5分焼成した。得られたホーロー鋼帯の
性能は表3の通りであった。
【0025】
【0026】
【0027】以下に各種試験方法とその評価方法につい
て記する。 (めっき表面の皮膜構成)オージェ電子分光法によりめ
っき層の上層部(最表面から約20Å以内)のAl,N
i,Znのマッピング像を得、面積比率を求め、それぞ
れに比重をかけて重量%に換算した。また、環境保全の
観点から、釉薬中の鉛の有無を第3表に示した。さらに
裏面外観として、ホーロー被覆後の裏面の外観を、焼成
時の加熱によるめっき流れによる劣化状況について評価
した。
【0028】(曲げ加工密着性)90度曲げ加工するベ
ンダーを用いて0.5mmRの加工率で曲げ加工した。
曲げ加工後にセロテープ剥離試験を行った後、ホーロー
層の剥離状況を目視にて観察した。 [判定] ◎:優 剥離無し ○:良 極わずか剥離有り(剥離面積1%未満) △:悪 剥離面積1%以上10%未満 ×:劣 剥離面積10%以上
【0029】(ホーロー密着引張試験)ホーロー層の密
着強度を測定した。2枚のホーロー鋼板を熱硬化型エポ
キシ系接着剤で接着面積3cm2 となるように貼り合わ
せ、170℃、20分の熱処理をした。接着剤硬化後貼
り合わせた2枚のホーロー鋼板をそれぞれ反対側の端か
ら引張り剥がれた時の強度を測定した。
【0030】(曲げ加工部耐食性)前述の曲げ加工を行
ったホーロー鋼板に、純水噴霧(35℃、4h)→乾燥
(60℃、2h)→湿潤(50℃、2h)を繰り返すサ
イクル試験を行い1ヶ月後の赤錆発生状況を観察した。
【0031】(耐端面錆性)ホーロー鋼板を、37℃、
95RH%の恒温恒湿箱に1ヶ月保管し、端面の赤錆発
生状況を観察した。
【0032】(耐酸性)JIS R 4301−197
8「ほうろう製品の品質基準」に規定された、クエン酸
による常温スポット試験(:10%クエン酸、15分ス
ポット)に基づき、表面浸食度を、同試験法で規定され
たAA,A,B,C,Dの5段階で評価した。
【0033】(耐アルカリ性)JIS R 4301−
1978「ほうろう製品の品質基準」に規定された耐ア
ルカリ試験(:10%炭酸ナトリウム、15分スポッ
ト)に基づき、表面浸食度を、下記基準に基づき判定し
た。 ○:変色なく、鉛筆の線マークも見えない。 △:変色か、鉛筆の線マークのいずれかが見える。 ×:変色、鉛筆の線マークの両者が見える。
【0034】
【表1】
【0035】
【表2】
【0036】
【表3】
【0037】
【表4】
【0038】
【発明の効果】本発明によって従来法に求め得ない省設
備、低コストで耐食性とホーロー密着性を兼ね備えたホ
ーロー鋼板が得られ、後曲げ加工用の曲げ加工密着性と
曲げ加工部耐食性に優れたホーロー鋼板を提供すること
ができる。これにより工業的効果が大きいばかりでな
く、内装材の衛生向上にも貢献する。また本発明を用い
れば後曲げ加工しない製品であってもホーロー密着性、
耐端面錆性に優れるため従来のホーロー鋼板では得られ
ないホーロー鋼板寿命が得られる。これにより耐久性が
向上し、ひいては地球資源の節約に貢献するものであ
る。
フロントページの続き (72)発明者 福島 康雅 千葉県千葉市中央区川崎町1番地 川崎 製鉄株式会社技術研究所内 (72)発明者 鈴木 利英 千葉県千葉市中央区川崎町1番地 川崎 製鉄株式会社技術研究所内 (72)発明者 渡辺 浩司 千葉県習志野市東習志野2−18−13 川 鉄建材株式会社技術研究所内 (72)発明者 永石 博 千葉県習志野市東習志野2−18−13 川 鉄建材株式会社技術研究所内 (72)発明者 冨樫 房夫 千葉県習志野市東習志野2−18−13 川 鉄建材株式会社技術研究所内 (56)参考文献 特開 平7−268653(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C23D 3/00 C23C 28/00 C23D 5/00

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】鋼板表面にアルミニウム亜鉛合金めっき層
    を有し、該アルミニウム亜鉛合金めっき層の上層部がア
    ルミニウムおよびニッケルおよび1重量%以下の亜鉛か
    ら成り、該アルミニウム亜鉛合金めっき層上にホーロー
    被覆層を有することを特徴とするホーロー鋼板。
  2. 【請求項2】前記上層部が、アルミニウム亜鉛合金めっ
    き層表面を、ニッケルを含有したpH4以下の水溶液に
    浸漬することにより形成されるアルミニウムおよびニッ
    ケルおよび1重量%以下の亜鉛から成る請求項1に記載
    のホーロー鋼板。
  3. 【請求項3】前記ホーロー被覆層が、P2 5 :45〜
    65重量%、Sb2 3 :5〜15重量%、Al
    2 3 :2〜10重量%、B2 3 :0.5〜5重量
    %、 7重量%≦Na2 O+K2 O+Li2 O<15重量%、 7重量%≦ZnO+BaO+CaO+SrO≦20重量
    %、 1重量%≦TiO2 +SiO2 +ZrO2 ≦10重量
    %、 を含有する請求項1または2に記載のホーロー鋼板。
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