JP3321106B2 - ホーロー鋼板 - Google Patents

ホーロー鋼板

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JP3321106B2 JP36997198A JP36997198A JP3321106B2 JP 3321106 B2 JP3321106 B2 JP 3321106B2 JP 36997198 A JP36997198 A JP 36997198A JP 36997198 A JP36997198 A JP 36997198A JP 3321106 B2 JP3321106 B2 JP 3321106B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はマーカーボード、チ
ョークボード、トンネル内装材、建築用内装材、建築用
外装材として使用されるホーロー鋼板を提供するもので
ある。特に、ホーロー密着性に優れ、建築用内装材とし
て予めホーロー被覆焼成した後に、加工成形して使用す
ることができる曲げ加工密着性、曲げ加工部耐食性およ
び耐端面錆性に優れたホーロー鋼板を提供するものであ
る。
【0002】
【従来の技術】鋼板に耐食性、耐薬品性、耐候性、意匠
性などの機能を付与し、基材の寿命を向上させる方法に
塗装やホーロー被覆法がある。ホーロー被覆鋼板 (以
下、「ホーロー鋼板」と略す)は塗装鋼板に比べ、硬
度、耐候性、洗浄回復性、耐熱性、不燃性などの点で優
れた性質を有するが、価格が高く加工するとホーロー層
が剥がれるといった欠点がある。即ちホーロー鋼板を用
いた塑性加工製品は母材の金属を塑性加工後にホーロー
被覆されるといった手順で製造されるいわゆるポストコ
ート品が一般的であって、帯状の金属に連続的に被覆
し、その後塑性加工されるいわゆるプレコート品に比
べ、製造コストは著しく高価なものとなってしまう。一
方、塗装鋼板はある程度塗膜が加工に追随するため、軽
度の加工製品であれば連続的にコイルコートにより塗装
された後に加工されるプレコートでの製造が可能であ
り、製造コストが低く低価格となる。したがって、多種
用途へ適用されている。つまりホーロー鋼板は、ポスト
コート品であるため、価格が高くなるという問題があ
る。しかし、例えば病院内などではホーローの優れた洗
浄回復性による汚染防止効果が好まれ、ホーロー製品が
多く用いられている。そこで特に例えば病院に代表され
る衛生を重視する建物の内装材としてホーロー被覆後に
曲げ加工してもホーロー層が剥がれないホーロー鋼板が
要求されてきた。ホーロー鋼板の板厚は通常0.3mm
以上であるので曲げ加工時にはホーロー表面は10%以
上の引っ張り加工を受けることになる。このとき、ホー
ロー層は、ガラス質であるために延び率は低く、ホーロ
ー層へのクラックの侵入は免れない。従って曲げ加工で
きるホーロー鋼板の必須条件としてはホーロー層にクラ
ックが入ってもホーロー層が下地金属に強固に密着して
いること、さらにクラック部から錆の発生がないことが
必要となる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】このようなホーロー被
覆後に曲げ加工されるホーロー鋼板としては特公平6−
43257号公報の発明が提案されている。これは表面
部がアルミニウムから成る金属板の表面に組成・厚みを
規定したホーロー層を設けたものであるが、塗装鋼板に
適用されるような厳しい曲げ加工がされる際には、ホー
ロー層はたとえ脱落しないまでもホーロー層のクラック
が下地アルミニウムめっきにまで侵入し、めっきにクラ
ックが入る。アルミニウムはそれ自体の防錆性は良好で
あるが、一般的な大気中では鋼に対する犠牲防食作用が
無いためにめっきにクラックが入った場合には赤錆の発
生は免れないという問題点があった。またホーロー被覆
後に加工されたホーロー鋼板の場合には必ず端面に鋼素
地が露出するが、下地めっきがアルミニウムの場合には
端面からの赤錆発生を免れないという問題もあった。
【0004】一方、耐食基材をホーロー層の下層に有す
るホーロー鋼板としては、特公平5−71667号公報
の発明が提案されている。これは、アルミニウム亜鉛合
金めっきにホーロー被覆するものであり、塗装鋼板の場
合には同様の目的で従来からアルミニウム亜鉛合金めっ
きを塗装下地処理として使用しているが、犠牲防食作用
を持つ亜鉛を含有するめっき層にホーロー被覆すること
でホーローのピンホール部等から出る赤錆の発生を防止
したものである。しかしながらアルミニウム亜鉛合金め
っき層を構成する成分のうち亜鉛はホーロー層とは密着
性が良好でないためにホーロー被覆焼成後に曲げ加工し
た場合にはホーロー層が剥がれるという本質的欠点があ
る。したがって、予めホーロー鋼板を用いた後曲げ加工
に優れる製品は、従来、存在していなかった。つまり、
特公平5−71667号公報による方法をそのまま実施
しても、後曲げ加工するとホーロー層が剥離してしまっ
た。また、この場合、加工用ホーロー層としての考慮
が、ホーロー組成については全くなされておらず、十分
な密着性能を有していなかったという原因も有する。ま
た、前述のとおり、ホーロー層組成以外のめっき層とホ
ーロー被覆層の密着性への影響因子についても何ら考慮
されていなかった。ここで亜鉛とホーロー層の密着が良
好でない理由は明らかではないが、亜鉛は非常に酸化さ
れやすい性質を有するため、無機酸化物(ホーロー)に
よる酸化が激しく密着に寄与する界面の反応層が脆くな
り、特公平5−71667号公報の発明ではめっき層と
ホーロー層の密着性、ホーロー層自体の加工時の耐剥離
性に問題を有していたものと考えられる。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明は上記実情に鑑み
検討を重ね、ホーロー密着性に優れる、ひいては、曲げ
加工密着性、曲げ加工部耐食性に優れ、さらに耐端面錆
性にも優れた、低価格で製造可能なホーロー鋼板を提供
しようとするものである。
【0006】すなわち本発明は、鋼板表面にアルミニウ
ム亜鉛合金めっき層を有し、該アルミニウム亜鉛合金め
っき層の上層部がアルミニウム96重量%以上であり、
該アルミニウム亜鉛合金めっき層上にホーロー被覆層を
有することを特徴とするホーロー鋼板を提供するもので
ある。また、前記ホーロー被覆層が、P2 5 :45〜
65重量%、Sb2 3 :5〜15重量%、Al
2 3 :2〜10重量%、B2 3 :0.5〜5重量
%、7重量%≦Na2 O+K2 O+Li2 O<15重量
%、7重量%≦ZnO+BaO+CaO+SrO≦20
重量%、1重量%≦TiO2 +SiO2 +ZrO2 ≦1
0重量%含有するものが好ましい。
【0007】
【発明の実施の形態】以下に本発明をさらに詳細に説明
する。本発明は鋼板表面にアルミニウム亜鉛合金めっき
層を有する。該アルミニウム亜鉛合金めっき層中の金属
比率はアルミニウム含有率4〜70重量%と、残りが亜
鉛および通常の不純物及び皮膜特性を損なわず、または
向上させるための添加物質からなることが好ましい。ア
ルミニウム含有率が4重量%未満ではアルミニウム亜鉛
合金めっき本来の優れた耐食性効果が望めない。一方ア
ルミニウム含有率が70重量%超の場合には曲げ加工部
に生じるクラック部の犠牲防食効果が不充分となる傾向
にあるからである。より好ましくはアルミニウム含有率
25〜70重量%である。アルミニウム含有率が25重
量%以上とすることで、アルミニウム亜鉛合金めっきの
融点がより高くなり、めっき層が溶融するという損傷を
受けにくくなるからである。アルミニウム亜鉛合金めっ
きの添加物質にはSi,La,Ce,Mg,Sn等があ
る。特にSiは、加工部のめっき密着性の点から1〜2
重量%添加されていることが好ましい。アルミニウム亜
鉛合金めっき層の付着量は、両面で80〜300mg/
2 とすることが好ましい。
【0008】ここで、本発明のアルミニウム亜鉛合金め
っき層の上層部は、96重量%以上がアルミニウムであ
ることを必要とする。前述のように、ホーロー層の下地
層としての亜鉛はホーロー密着性が劣るために曲げ加工
するとホーロー剥離を生じる。一方アルミニウムはホー
ローとの密着性が良好である。アルミニウム亜鉛合金メ
ッキは、溶融めっき法によって一般的に製造されるが、
溶融メッキ処理における冷却過程で、Alリッチ相とZ
nリッチ相に相分離して鋼板表面に析出するため、Al
リッチ相とZnリッチ相に分かれている。例えば、Al
含有率25〜75重量%の範囲のめっきの場合、まずα
−Alが枝状に晶出し、その後、その樹枝間にα−Al
とβ−Znが晶出する。本発明では、アルミニウム亜鉛
合金めっき層の上層部においてZnリッチ相を低減し、
上層部のアルミニウムを96重量%以上とすることによ
り優れたホーロー密着性が得られる。96重量%未満で
はホーロー密着性が劣化する。上限は特に設けず、上層
部のアルミニウムが96重量%以上100重量%未満で
優れたホーロー密着性を得ることができる。
【0009】すなわち下地鋼板に接した部分では鋼板か
らの赤錆発生を防止するための犠牲防食作用を有する亜
鉛を存在せしめ、ホーロー層との界面にはホーロー密着
性に優れたアルミニウムを多く存在せしめることで優れ
たホーロー密着性と耐端面錆性、曲げ加工部の赤錆発生
防止効果の双方を兼ね備えたプレコートホーロー鋼板を
得ることができる。ここで上層部とは表層約20Å深さ
までの範囲のことをいい、上層部の各成分の組成は、オ
ージエ電子分光法によりマッピング像を得て面積比率を
求め比重をかけて重量%として評価する。アルミニウム
亜鉛合金めっき層の上層部を96重量%以上アルミニウ
ムとする方法としては、酸浸漬処理、陽極電解処理、ア
ルミニウムイオンを含む溶液の塗布、酸化アルミニウム
(または酸化アルミニウムの入ったゾル等)の塗布、金
属アルミニウムを擦り付ける等がある。亜鉛は酸に溶解
しやすいがアルミニウムは酸に溶解しにくい性質がある
ので酸浸漬処理により上層部を96重量%以上アルミニ
ウムとすることが可能となる。また陽極処理の場合、亜
鉛は溶解するがアルミニウムは、表面に貴な酸化アルミ
ニウムがあるため溶解しにくいため、上層部がアルミニ
ウムに富むことになる。酸浸漬処理と陽極処理を組み合
わせることにより、より容易に上層部がアルミニウム化
し、表面形状もアンカー効果の高いものが形成され、さ
らに金属アルミニウムは溶解しないが酸化されて酸化ア
ルミニウム皮膜の形成が促進されるため、ホーローとの
密着性が極めて良好となる。
【0010】本発明に用いるホーロー被覆層の組成は特
に限定されないが、例えばホーロー焼成時間にもよる
が、焼成時間が5分の場合600℃を越えると下地層の
アルミニウム亜鉛合金めっき層は完全にホーロー層に混
入してしまうため、アルミニウム亜鉛合金めっきの優れ
た防錆性、犠牲防食性等が著しく低下する。従ってホー
ロー被覆層に600℃未満の低融点釉薬を用いることが
好ましい。さらにアルミニウム亜鉛合金めっき層は、5
40℃を越えるとめっきの溶融が始まり、ホーロー層に
混入する形となるため、特にホーロー被覆層を片面のみ
形成させる場合にはホーロー焼成温度を540℃以下と
するのが好ましい。本発明のホーロー鋼板は防錆性、犠
牲防食性に優れたアルミニウム亜鉛合金めっき鋼板をホ
ーロー下地として用いるため裏面には必ずしもホーロー
被覆層を必要としない。表側にのみホーロー層を形成さ
せる場合には、釉薬が片面分ですむためコストも低減で
きる。しかしこの場合裏面にはアルミニウム亜鉛合金め
っき層を有することが好ましい。この場合このめっき層
が損傷しないホーロー焼成条件としてできるだけ低温で
焼成することが好ましい。めっきの融点をこえた温度で
焼成するとホーロー焼成中に炉内にめっきが流れ、設備
にも悪影響を及ぼし、製品としても裏面のめっきも、損
傷を受け防錆性、犠牲防食性が失われ、赤錆発生を引き
起こすからである。ホーロー被覆層のない裏面側に存在
するアルミニウム亜鉛合金めっき層は前述の特定の上層
部を有しないものであるが、上層部を有していてもかま
わない。
【0011】融点が600℃未満の低融点釉薬組成とし
ては、主にPbOを主体としたホウ酸鉛系、ホウケイ酸
鉛系、P2 5 を主体としたりん酸亜鉛系、りん酸鉛
系、Na2 Oを主体としたソーダガラスなどが適用でき
る。これら基本組成に数種ないし数10種の酸化物を添
加した組成とすることができる。
【0012】特に釉薬として、P2 5 :45〜65重
量%、Sb2 3 :5〜15重量%、Al2 3 :2〜
10重量%、B2 3 :0.5〜5重量%、7重量%≦
Na2 O+K2 O+Li2 O<15重量%、7重量%≦
ZnO+BaO+CaO+SrO≦20重量%、1重量
%≦TiO2 +SiO2 +ZrO2 ≦10重量%、の範
囲からなる組成である場合には、鉛を含有せずに540
℃以下のホーロー焼成が可能となり、好ましい。釉薬組
成はそれぞれ下記の理由でこの範囲であるのが好まし
い。
【0013】まずP2 5 は、本発明でのホーローのガ
ラスを構成するもので、網目状に形成される。P2 5
は単体二重結合酸素を含むため、そのままでは化学耐久
性が低く、揮発性も強い。そこで以下の元素を添加する
ことによって、ホーローに必要な特性を発現することが
出来る。P2 5 は低温でのホーロー焼き付けの点か
ら、45〜65重量%の範囲が好ましい。すなわち、4
5重量%未満になるとガラスの焼き付け温度が高くな
り、540℃以下での焼き付けが出来なくなる。逆に6
5重量%を超えるとスリップ作製におけるボールミル粉
砕時にスリップの固化が発生する。
【0014】次にSb2 3 は、ホーローの化学的抵抗
性に影響を及ぼす組成であり、5〜15重量%の範囲が
好ましい。すなわち、5重量%未満になるとホーローの
焼成温度が高くなり、540℃以下の低温焼き付けがで
きず、逆に15重量%を超えるとホーローの耐酸性が発
揮されない。またAl2 3 は、ホーローの機械的性
質、化学的抵抗性に影響を及ぼす組成であり、2〜10
重量%の範囲が好ましい。すなわち、2重量%未満にな
るとホーローの機械的性質、化学的抵抗性が発揮されな
い。逆に10重量%を超えるとホーローの焼き付け温度
が高くなり、540℃以下での焼き付けが出来なくな
る。
【0015】次にB2 3 は、ホーローの低温化、熱膨
張率、光沢に影響を及ぼす組成であり、0.5〜5重量
%の範囲が好ましい。すなわち、0.5重量%未満にな
るとホーローの光沢が減少し、また焼き付け温度が高く
なり540℃以下での焼き付けが出来なくなる。逆に5
重量%を超えるとホーローの耐酸性が劣る。またNa2
O、K2 O、Li2 Oは、ホーローの低温化、光沢、化
学的抵抗性に影響を及ぼす組成であり、これらから選ば
れる1種以上を含有することが好ましい。つまり7≦N
2 O+K2 O+Li2 O<15重量%の範囲が好まし
い。すなわち、7重量%未満になるとホーローの光沢が
減少し、また焼き付け温度が高くなり540℃以下での
焼き付けが出来なくなる。逆に15重量%以上では、ホ
ーローの化学的抵抗性が減少してしまう。
【0016】次にZnO、BaO、CaO、SrOは、
ホーローの化学的抵抗性、機械的性質、熱膨張率に影響
を及ぼす組成であり、これらから選ばれる1種以上を含
有することが好ましい。つまり7重量%≦ZnO+Ba
O+CaO+SrO≦20重量%の範囲が好ましい。す
なわち、7重量%未満になるとホーローの化学的抵抗
性、機械的性質が発揮されない。逆に20重量%を超え
るとホーローの焼き付け温度が高くなり、540℃での
焼き付けが出来なくなる。また、ホーローの熱膨張率を
増加させ鋼板とのミスマッチを生じ、ホーローに亀裂が
発生する。最後にTiO2 、SiO2 、ZrO2 は、ホ
ーローの化学的抵抗性、機械的性質に影響を及ぼす組成
であり、これらから選ばれる1種以上を含有することが
好ましい。つまり1重量%≦TiO2 +SiO2 +Zr
2 ≦10重量%の範囲が好ましい。すなわち、1重量
%未満になるとホーローの化学的抵抗性、機械的性質が
発揮されない。逆に10重量%を超えるとホーローの焼
き付け温度が高くなり、540℃以下での焼き付けが出
来なくなる。
【0017】本発明の低温ホーロー釉薬を構成する組成
の原料としては、焼成により前記成分の酸化物もしくは
それらの酸化物の混合物を生じる原料であれば、どのよ
うなものでも良い。例えば、リン酸一水素アンモニウ
ム、リン酸二水素アンモニウム、酸化アルミニウム、酸
化アンチモン、(無水)ホウ酸、炭酸ナトリウム、ケイ
酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、酸化亜
鉛、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウ
ム、酸化チタン、(無水)ケイ酸、酸化ジルコニウム、
ジルコン等が挙げられる。
【0018】特に、鉛は有毒であり、ホーロー用スリッ
プの廃棄にも問題が生じる。特にスプレー方式によりホ
ーロー被覆層を形成させる場合には周囲への飛散が大き
く、作業環境とスリップの廃棄の双方で問題となる。ま
たホーロー鋼板として製品となった後、リサイクルでき
ない等の問題を生じるため前記の様な鉛を用いない釉薬
が好ましい。
【0019】さらにこれらの釉薬からなるフリットに着
色顔料としての酸化物を混合したものを作って前述の下
地層(アルミニウム亜鉛合金めっきの上層部)上に施釉
し、その後炉内で焼成し、ホーロー層を形成させる。施
釉方法はスプレー方式、コーター方式、静電方式のいず
れを用いてもよい。
【0020】本発明のホーロー被覆層の膜厚は特に限定
されない。通常ホーローの膜厚は50μm以上である。
しかし特に曲げ加工用として使用される場合には、ホー
ロー膜厚は50μm以下とすることによりホーロー密着
性がさらに良好となる。鋼板とホーローは熱膨張係数が
異なるため、鋼板表面はホーロー焼成直後の冷却に際し
ホーローとの界面に応力を受ける。ホーロー膜厚が厚い
ほどその応力が大きくなり界面の密着性が低下する。さ
らに曲げ加工される場合には、ホーロー膜厚が厚いほど
表面のホーローの加工率が大きくなる。この2つの理由
から、膜厚を50μm以下とすると曲げ加工用として好
ましい。しかし特にこのような要求のない用途では膜厚
50μmを超えてもよい。
【0021】本発明のホーロー鋼板はホーロー焼成後加
工される用途に用いられることが好ましい。後曲げ加工
用として優れた密着性、耐食性を有する。また、もちろ
ん焼成後加工することなく平板のまま用いられてもよ
い。さらに、本発明のホーロー鋼板は、帯状のホーロー
鋼帯であってもよい。
【0022】
【実施例】次に本発明の効果を実施例に基づいて具体的
に説明する。
【0023】(実施例)板厚0.35mm、アルミニウ
ム亜鉛合金めっき付着量が片面当たり75g/m2 (A
l含有率55重量%、Si含有量1.6重量%)のアル
ミニウム亜鉛合金めっき層を有するガルバリウム鋼帯
(AZ150)及びアルミニウムめっき鋼帯(Si含有
量1.6重量%)無塗油材を、表1に示す種々の前処理
を行った後、連続的に施釉工程へと導き、表2に示す釉
薬を用いてスプレー方式でスリップを施釉し、5分焼成
した。得られたホーロー鋼帯の性能は表3の通りであっ
た。
【0024】
【0025】
【0026】以下に各種試験方法とその評価方法につい
て記する。 (めっき表面のアルミニウム重量%)オージェ電子分光
法によりめっき層の上層部(最表面から約20Å以内)
のAl,Znのマッピング像を得、面積比率を求め、そ
れぞれに比重をかけて重量%に換算した。また、環境保
全の観点から、釉薬中の鉛の有無を表3に示した。裏面
外観として、ホーロー被覆焼成後の裏面の外観を焼成時
の加熱によるめっきの流れによる劣化状況について評価
した。
【0027】(曲げ加工密着性)90度曲げ加工するベ
ンダーを用いて0.5mmRの加工率で曲げ加工した。
曲げ加工後にセロテープ剥離試験を行った後、ホーロー
層の剥離状況を目視にて観察した。 [判定] ◎:優 剥離無し ○:良 極わずか剥離有り(剥離面積1%未満) △:悪 剥離面積1%以上10%未満 ×:劣 剥離面積10%以上
【0028】(接着引張試験)ホーロー層の密着強度を
測定した。2枚のホーロー鋼板を熱硬化型エポキシ系接
着剤で接着面積3cm2 となるように貼り合わせ、17
0℃、20分の熱処理をした。接着剤硬化後貼り合わせ
た2枚のホーロー鋼板をそれぞれ反対側の端から引張り
剥がれた時の強度を測定した。
【0029】(曲げ加工部耐食性)前述の曲げ加工を行
ったホーロー鋼板に、純水噴霧(35℃、4h)→乾燥
(60℃、2h)→湿潤(50℃、2h)を繰り返すサ
イクル試験を行い1ヶ月後の赤錆発生状況を観察した。
【0030】(耐端面錆性)ホーロー鋼板を、37℃、
95RH%の恒温恒湿箱に1ヶ月保管し、端面の赤錆発
生状況を観察した。
【0031】(耐酸性)JIS R 4301−197
8「ほうろう製品の品質基準」に規定された、クエン酸
による常温スポット試験(10%クエン酸、15分スポ
ット)に基づき、表面浸食度を、同試験法で規定された
AA,A,B,C,Dの5段階で評価した。 (耐アルカリ性)JIS R 4301−1978「ほ
うろう製品の品質基準」に規定された、耐アルカリ試験
(10%炭酸ナトリウム、15分スポット)に基づき、
下記基準に基づき評価した。 ○:変色なく、鉛筆の線マークも見えない。 △:変色か、鉛筆の線マークのいずれかが見える。 ×:変色、鉛筆の線マークの両者が見える。
【0032】
【表1】
【0033】
【表2】
【0034】
【表3】
【0035】
【表4】
【0036】
【発明の効果】本発明によって従来法に求め得ない省設
備、低コストで耐食性とホーロー密着性を兼ね備えたホ
ーロー鋼板が得られ、後曲げ加工用の曲げ加工密着性と
曲げ加工部耐食性に優れたホーロー鋼板を提供すること
ができる。これにより工業的効果が大きいばかりでな
く、内装材の衛生向上にも貢献する。また本発明を用い
れば後曲げ加工しない製品であってもホーロー密着性、
耐端面錆性に優れるため従来のホーロー鋼板では得られ
ないホーロー鋼板寿命が得られる。これにより耐久性が
向上し、ひいては地球資源の節約に貢献するものであ
る。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 福島 康雅 千葉県千葉市中央区川崎町1番地 川崎 製鉄株式会社技術研究所内 (72)発明者 鈴木 利英 千葉県千葉市中央区川崎町1番地 川崎 製鉄株式会社技術研究所内 (72)発明者 渡辺 浩司 千葉県習志野市東習志野2−18−13 川 鉄建材株式会社技術研究所内 (72)発明者 永石 博 千葉県習志野市東習志野2−18−13 川 鉄建材株式会社技術研究所内 (72)発明者 冨樫 房夫 千葉県習志野市東習志野2−18−13 川 鉄建材株式会社技術研究所内 (56)参考文献 特開 昭60−169571(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C23D 3/00 C23C 28/00 C23D 5/00

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】鋼板表面にアルミニウム亜鉛合金めっき層
    を有し、該アルミニウム亜鉛合金めっき層の上層部のア
    ルミニウムが96重量%以上であり、該アルミニウム亜
    鉛合金めっき層上にホーロー被覆層を有することを特徴
    とするホーロー鋼板。
  2. 【請求項2】前記ホーロー被覆層が、P2 5 :45〜
    65重量%、Sb2 3 :5〜15重量%、Al
    2 3 :2〜10重量%、B2 3 :0.5〜5重量
    %、 7重量%≦Na2 O+K2 O+Li2 O<15重量%、 7重量%≦ZnO+BaO+CaO+SrO≦20重量
    %、 1重量%≦TiO2 +SiO2 +ZrO2 ≦10重量
    %、 を含有する請求項1に記載のホーロー鋼板。
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CN103974469A (zh) * 2013-01-31 2014-08-06 海尔集团公司 一种带有涂层的金属加热元件及其制备方法
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