JP2001158954A - 貫通気孔のない溶射皮膜の形成方法およびその溶射皮膜を有する部材 - Google Patents

貫通気孔のない溶射皮膜の形成方法およびその溶射皮膜を有する部材

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JP2001158954A JP37610299A JP37610299A JP2001158954A JP 2001158954 A JP2001158954 A JP 2001158954A JP 37610299 A JP37610299 A JP 37610299A JP 37610299 A JP37610299 A JP 37610299A JP 2001158954 A JP2001158954 A JP 2001158954A
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Takao Sato
隆夫 佐藤
Takuya Tsuda
拓也 津田
Yoshiro Takano
吉郎 高野
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Nippon Steel Hardfacing Corp
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TAKAYOSHI KK
Nippon Steel Hardfacing Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 貫通気孔のない溶射皮膜形成方法の提供 【解決手段】 溶射用の前加工をした基材表面に、ガラ
ス質形成成分を溶解または懸濁した液(A液)を刷毛塗
りまたは噴霧により塗布し、常温乾燥または必要に応じ
て900℃以下の温度で焼成することにより下地ガラス
質となる皮膜を形成し、該下地ガラス質用皮膜上に、前
記A液にSiおよび金属の酸化物セラミックス粉末を、
ガラス質皮膜形成後の皮膜体積比で5〜80%の割合と
なる量で含有させた液(B液)を刷毛塗りまたは噴霧に
より塗布し、常温乾燥または900℃以下の温度で焼成
することにより皮膜を形成し、この皮膜上にSiまたは
その他金属の酸化物からなるセラミックス皮膜形成材料
を溶射し、貫通気孔のない複合皮膜を得る。 【効果】 溶融金属、酸、アルカリあるいは腐食性
ガスに対して優れた耐食性を示し、これらの環境に使用
する基材の使用寿命が著しく向上される。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、腐食性溶液に曝さ
れたり腐食性ガスに曝されても、耐食性があり、かつ耐
摩耗性が要求される溶射皮膜、特に酸、アルカリ等の薬
品水溶液、海水等の塩化物含有液、硫化物含有液や腐食
性ガスに対して強い抵抗力を持ち、かつ耐高電圧性や耐
コロナ放電性の皮膜となりうる貫通気孔のない溶射皮膜
の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】本発明は先に提案された、a.特開平8
−158034号公報記載の発明をさらに改善したもの
である。
【0003】また、使用目的を特定した貫通気孔のない
皮膜を得る方法として、b.特開平9−291376号
公報がある。この先行例に開示された発明は、基材表面
に形成された酸化防止金属皮膜と、この酸化防止皮膜上
に融着形成されたガラス状物質の皮膜と、このガラス皮
膜の上に金属、金属合金、金属酸化物、金属炭化物から
なる群から選択される材料で被覆されたコーティング層
からなるガラス皮膜ロールである。
【0004】c.特表平7−502071公報(国際公
開番号WO92/22676)(この番号のような公告
公報は見当らない。)では、金属表面にガラス質エナメ
ル被覆を施し、その上に高温時に微軟化する金属または
合金層を吹き付け形成することが提案された。この方法
はガラスエナメル被覆をを施すことが目的で、その上に
金属または合金の吹き付け層を設けて強度を確保しよう
とするものである。したがって、ガラスエナメル層に金
属を密着させるため、ガラス質エナメル溶射層を、基材
を高温にして吹き付けを行うこと、その後ピーニングを
行うか、更にガラスエナメル質の第2被覆をすることで
目的を達成しようとしていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】前記先行技術におい
て、a.発明は最終厚みに達するまでの溶射皮膜形成段
階において、皮膜に対する封孔処理を行い、さらに溶射
皮膜形成を継続するもので、従来法に比べれば耐食性の
向上はあるものの苛酷な使用条件かではまだ十分な効果
は期待できなかった。またb.発明ではガラス皮膜の形
成を溶射によることを前提としており、ガラス皮膜の貫
通気孔を皆無にできない欠点があった。また、ガラス状
物質の皮膜は、主として金属酸化物から成り立っている
が、その上の金属、金属合金、金属酸化物、金属炭化物
からなる溶射材とは、溶射による結合力に乏しくて溶射
歩留まりが悪く皮膜が剥離しやすい欠点があった。そし
て、ガラス皮膜を溶射によって形成する前に基材の酸化
を防ぐため、下地に金属、サーメット等の溶射皮膜をア
ンダーコートすることが必須であり、コスト的に高価と
なる欠点があった。そしてc.発明ではガラスエナメル
質あるいは琺瑯質のこの皮膜は前記のとおり酸化物が主
体であり、金属とは親和性がないので界面での密着性が
十分でなく、被覆層全体としての強度が劣るものであっ
た。本発明は前記従来技術における問題点を解消し、安
価な貫通気孔のないガラス質皮膜を使って、緻密な溶射
皮膜を形成する方法を提供することを目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するた
め、本発明者等は鋭意研究を重ねた結果、必要に応じて
アンダーコートを設けた基材表面へSiおよび金属の酸
化物セラミックス粉末がまじった緻密なガラス質皮膜を
形成し、その表面にセラミックス溶射皮膜を形成して複
合皮膜とするが有効であることを知見し、本発明を完成
するに至った。
【0007】前記の知見に基づいてなされた本発明は、
溶射用の前加工をした基材表面に、ガラス質形成成分を
溶解または懸濁した液(A液)を刷毛塗りまたは噴霧に
より塗布し、常温乾燥または必要に応じて900℃以下
の温度で焼成することにより下地ガラス質となる皮膜を
形成し、該下地ガラス質用皮膜上に、前記A液にSiお
よび金属の酸化物セラミックス粉末を、ガラス質皮膜形
成後の皮膜体積比で5〜80%の割合となる量で含有さ
せた液(B液)を刷毛塗りまたは噴霧により塗布し、常
温乾燥または900℃以下の温度で焼成することにより
皮膜を形成するか、または、基材表面上にはじめからA
液にSiおよび金属の酸化物セラミックス粉末を、ガラ
ス質皮膜形成後の皮膜体積比で5〜80%の割合となる
量で含有させた液(B液)を刷毛塗りまたは噴霧により
塗布し、常温乾燥または900℃以下の温度で焼成する
ことにより皮膜を形成し、これらの皮膜上にSiおよび
その他金属の酸化物からなるセラミックス皮膜形成材料
を溶射し、貫通気孔のない複合皮膜を得ることを特徴と
する貫通気孔のない溶射皮膜の形成方法を要旨としてい
る。
【0008】
【発明の実施の形態】本発明の構成と作用を説明する。
本発明においては、最外層のセラミックス皮膜溶射前
に、基材表面にガラス質皮膜を形成するものであり、ガ
ラス質形成原料を溶媒に溶かした溶液を使用し、刷毛塗
り、噴霧機等でコーティングする。さらにこのガラス質
形成成分液(A液)にSiおよび金属の酸化物セラミッ
クス粉末を、ガラス質皮膜形成後の皮膜体積比で5〜8
0%の割合となる量で含有させた液(B液)を刷毛塗り
または噴霧により塗布し、そして、それを必要に応じて
乾燥し、焼成する。焼成手段としては、赤外線ランプ加
熱、炉加熱、バーナー加熱等が使用でき、ガラス質の材
料、被コーティング物の形状等により選択する。こうし
て形成されたガラス質皮膜は貫通気孔がなく、ミクロ割
れのないものとすることができる。この場合、焼成温度
はガラス形成材料によって変わってくるので、その材料
に応じた温度を選択するが、900℃以下であって、ガ
ラス質あるいは琺瑯質の皮膜は乾燥または加熱で脱溶媒
処理される。また、溶融状態となったり化学変化をして
基材表面を貫通気孔のない、しかもこのあと溶射するセ
ラミックスとも親和性の高い皮膜で覆うことができる。
この場合皮膜厚さは後続の溶射処理により破壊されない
程度であることが必要であり、薄すぎるとガラス質皮膜
形成の意義がなくなるので好ましくは5〜500μmと
なるように処理する。とくに塗布による皮膜形成が貫通
気孔がなく皮膜を薄くできると共に後盛り層との結合力
を改善できることがわかった。5μm未満ではガラス質
皮膜の効果がなく、500μmを超えると溶射時の加熱
冷却による内部応力が増加し、皮膜破壊の傾向が大きく
なる。
【0009】ガラス質皮膜の基材への密着性を高める必
要がある場合は、基材表面の粗度を安定して形成するた
めにアンダーコートとして、セラミックスと金属の混合
したサーメットまたは金属層の溶射を行う。基材の熱膨
張係数が大きく、熱応力が大きくなったり、腐食性の高
い環境の場合にはこのアンダーコートが効果を発揮す
る。アンダーコート皮膜形成材料として好ましいものは
Ni、Cr、Co、Al、Y、Feの内の1種以上から
なる単一金属または合金、またはこれら単一金属または
合金と、Cr、Al、TiO、Cr
、WC、ZrB、WB、CrBの1種以上と不可
避不純物からなるサーメット材料である。
【0010】ガラス質皮膜形成液の塗布、乾燥または焼
成処理を単独にまたは組み合わせて複数回行うことによ
って皮膜の緻密性を完全なものにすることができる。好
ましいガラス質皮膜形成液(A液)としては、主として
ガラスライニング用の各種酸化物を形成する原料からな
るもので、ガラス質100%のもの、未溶融固形分を懸
濁したガラスと懸濁セラミックスからなるもの、または
単味金属あるいは合金を70質量%以下ガラス質に混合
または溶融させたものからなっている。
【0011】ガラス質皮膜形成液(A液)の構成成分と
しては、焼成後にSiO:30〜80モル%、Al
:8モル%以下、ZrO:10モル%以下、Ti
:15モル%以下、B:25モル%以下、R
:15〜10モル%(ただしRはアルカリ金属、
アルカリ土類金属、Cr、Pbのうち1種以上を、Oは
酸素を示し、x、yは原子数を示す。)となるようにさ
れている。
【0012】すなわち、ガラス質のコーティング材料の
成分は、 ガラスマトリックス主成分形成剤であるSiO 中間成分であるAl、ZrO、TiO、B
、その他MoO、WO マトリックスへの付加成分である1価アルカリ金属酸
化物(RO)のNaO、KO、LiO等、2価
アルカリ土類金属酸化物(RO)のMgO、ZnO、S
rO、BaO等その他Cr、B、PbO等
の3成分系から各々少なくとも1種類以上のガラス成分
を選びこれらを主成分として構成する。
【0013】これら酸化物はSiOを主成分として融
点および軟化温度の低いガラス質を形成し、上層溶射粒
子による破壊を受けにくくするために選定される。ガラ
ス質皮膜を形成する塗布剤の成分は供用する雰囲気、環
境などにより調整する。例えばアルカリ溶液用に供する
部材では、ZnOあるいはZrOを加えればよい。ま
た、耐熱性を求める場合にはSiOの比率を高くする
か、アルカリ金属およびアルカリ土類金属酸化物の量を
少なくする。酸性溶液への供用の場合には全般的に耐酸
性は十分あるが、Al、B等は少なめの方
がよい結果が得られる。
【0014】またガラス質皮膜形成液(A液)の構成成
分としては、Siまたは金属成分がアルコキシドとなっ
てアルコール中に溶解したような有機金属化合物溶液、
あるいは無機系、有機系ポリマーに金属成分が結合した
ポリマー溶液、さらにこれらに微粒子が懸濁したゲル状
液も適当である。微粒子分が多い場合には、均質なガラ
ス質皮膜ができないので、微粒子分は80質量%以下と
する。ゲル状液の生成は溶質分を過飽和にすることで容
易に得ることができ、この方法が簡便である。
【0015】また上記の溶液が有機金属ポリマーからな
る液であって、有機金属ポリマーおよび無機金属ポリマ
ーが化学的に結合した状態のものを主成分とし、これを
塗布したのち、400℃以下のような比較的低温で加熱
し、重合反応を起こさせるか、またはあらかじめ加えて
おいた硬化剤の作用により常温で重合反応を起こさせ、
一部の有機成分がセラミックスと化学的に結合した状態
のガラス質皮膜が形成されるものも有効である。
【0016】また基材上へ金属あるいはサーメットのア
ンダーコート溶射を行なわず、直接ガラス質を製膜し、
その上にセラミックス層を中盛りし、ついで表層の金属
またはサーメット溶射を行ない、仕上げ層とする場合
も、またアンダーコート溶射を行なう場合も本発明に含
まれるもので、いずれの場合も、ガラス質皮膜の接着性
を向上させるために、CoOやNiO等の酸化物を含む
ガラス質形成塗布剤を塗布してからガラス質皮膜を形成
するとよい場合がある。
【0017】前記ガラス質皮膜形成後に、その表面に金
属酸化物セラミックス層を溶射して形成する。第2層と
なる金属酸化物セラミックス溶射材料は、ガラス質皮膜
の溶融温度より溶融温度が高く、両者の接合面はお互い
に親和性があり、いわゆるセラミックスののり付け状態
になるように材料成分を選定し、かつ、適切な耐熱性と
熱膨張係数となるように選定する。
【0018】またガラス皮膜層にミクロ割れが発生しな
いように溶射条件を選定することも重要であり、高速ガ
ス溶射機よりもプラズマ溶射機の方が適している。セラ
ミックス溶射が強力すぎる場合にはガラス質皮膜を剥離
してしまうので、とくにセラミック材料成分とし初層溶
射条件の選定は重要である。このセラミック層の厚さ
は、後続の金属またはサーメットの溶射層との結合力、
剥離性に影響するので、10〜200μmの範囲とす
る。
【0019】前記セラミックス皮膜を構成する酸化物の
形態としては、Al、Al−TiO
ZrO−Y、CaO−SiO、Al
ZrO、Cr−Al、Crのいず
れかであるもの、またはそれが95質量%以上の主成分
であるもの、Al、Ti、Cr、Feの内の1種以上
とSc、Yおよび希土類金属の1種以上とからなる複酸
化物からなるもの、前記複酸化物を5質量%以上含有
し残部はの酸化物からなり、その他不可避不純物より
なるものである。
【0020】上記酸化物はあらかじめ溶射材料でこの種
酸化物を形成しておけば、溶射時の高温でも複酸化物の
形をとりうるし冷却後の皮膜中でも複酸化物の形態とな
っており、それぞれの酸化物が溶射中に一部この形とな
り、この場合多くは溶融温度が低く、とくに希土類酸化
物との結合により皮膜強度が向上するためで、5モル%
以上の複酸化物含有により効果が現れる。
【0021】必要に応じ、前記セラミックス皮膜上に、
最表層を構成する単一金属または合金または金属とセラ
ミックスからなるサーメットの溶射皮膜を形成して複合
皮膜とする。これにより下部のガラス質皮膜には気孔が
ないので、皮膜表面より基材に貫通する気孔は生成しな
いようにすることができる。この最表層は変形能がある
ため、皮膜厚さは比較的任意に選定できる。しかし、厚
すぎる場合には熱膨張、収縮力が大きくなりすぎ、下層
皮膜を破壊する傾向があるため、全膜厚は20〜700
μmの範囲が適当である。
【0022】最表層皮膜形成材料としては、Ni、C
r、Mo、Fe、Co、Mn、W、Y、Ti、Nb、A
lの1種以上からなる単一金属または合金、または前記
単一金属または合金とAl、TiO、Zr
、Cr、Y、WC、Cr、Nb
C、WB、CrB、TiB、MoB、ZrBの1種
以上と不可避不純物で構成されるサーメットである。
【0023】好ましい金属成分は使用環境にもよるが、
Ni、Cr、Co、Y、Al等である。セラミックス成
分はどちらかといえば金属成分と反応性のある炭化物、
硼化物が好ましい。
【0024】複合皮膜を形成後、セラミックス形成材料
を含む封孔剤あるいは有機系封孔剤の溶液を用いて、塗
布、乾燥あるいは焼成して封孔処理を行ってもよい。そ
の結果表面層は一段と緻密化され、本発明の目的が容易
に達成される。封孔剤としては、金属のアルコキシドア
ルコール系溶液、クロム酸系、水ガラス系、これらのコ
ロイド分散液、樹脂系のものなどが使用される。
【0025】
【発明の効果】以上説明したように、本発明により形成
された複合皮膜は、基材に施されるガラス質皮膜上に、
セラミック溶射皮膜が形成され、場合によりさらに仕上
層として金属またはサーメット溶射皮膜がコーティング
されているから、貫通気孔がなく、塩、酸、アルカリ等
の腐食性液あるいは腐食性ガスに対して優れた耐食性を
示し、これらの環境に使用する基材の使用寿命が著しく
向上されて工業的価値が大きく、産業上極めて有用であ
る。
【0026】
【実施例】前記した本発明の優れた効果について実施例
により具体的に説明するが、これによって本発明が限定
されることはない。 実施例 後述する実施例に示すように、ガラス質皮膜例、溶射皮
膜例および封孔処理例の組合せサンプルを用意し、実験
に供した。
【0027】ガラス質皮膜例(化学成分は質量%) (1)ガラス質皮膜例1(G−1) シリコン系金属アルコキシドおよびジルコニア系金属ア
ルコキシドを3:1の割合で混合した30%エタノール
溶液に、イットリウム安定化ZrOの粉末(10〜4
0μm径)10%加えたものをスプレー塗布したのち乾
燥し、500℃、1時間焼成する。これを3回繰り返し
て50μm厚の皮膜を形成 (2)ガラス質皮膜例2(G−2) SiOおよびAlとエポキシ系有機化合物が化
合してなる有機金属ポリマー(商品名TX−300:
[株]タカヨシ社製)にアミン系硬化剤1.5%を加
え、シンナーを10%添加して希釈し、エアスプレーに
より100μm/回の厚さにコーティングする。乾燥後
20℃/時間で昇温後、180℃、4時間焼成。これを
2回繰り返し200μm厚、3回繰り返し300μm
厚、5回繰り返し500μm厚の皮膜を形成後さらに上
記TX−300にAl粉末(5〜30μm粒径)
を20体積%加えてよく混合したのち、アミン系硬化剤
1.5%とシンナー10%を加えて希釈し、エアスプレ
ーにより100μmの厚さにコーティングし、乾燥後2
0℃/時間で昇温し、180℃で4時間焼成して皮膜を
形成
【0028】(3)ガラス質皮膜例3(G−3) ジフェニルオキシド基をもつシリコンポリマーからなる
有機金属ポリマーの有機溶媒溶液に、層状珪酸塩鉱物粉
末を加えて混合したコーティング剤(商品名TX−40
0:[株]タカヨシ社製)に硬化剤を加え、シンナーを
15%添加して希釈し、エアスプレーにより100μm
/回の厚さにコーティングする。常温で4時間乾燥後、
同様にして2層目100μm/回、3層目100μmに
ついては、TX−400にSiO粉末(1〜10μm
粒径)を10体積%加えてよく混合したのち、アミン系
硬化剤1.5%とシンナー10%を加えて希釈し、エア
スプレーにより100μmの厚さにコーティングをした
後、3日間常温で乾燥硬化させて皮膜を形成 (4)耐高温ガス腐食用ガラスコーティングフリット
(G−4) Na0、KO:17モル%、MgO、CaO:9モ
ル%、Al:4モル%、ZrO:4モル%、B
:15モル%、SiO:44モル%その他7モ
ル%となるように原料粉末を配合し、スリップ粘性調整
添加剤と水を加え、湿式ミルにて混合し、ミル引きした
もの(商品名TX−800:[株]タカヨシ社製)を5
0μm厚にスプレー塗布、乾燥後、さらにTX−800
にSiO粉末(1〜40μm粒径)を10体積%加え
てよく混合したものを厚さ20μmにスプレー塗布乾燥
したのち800℃、1時間焼成
【0029】(5)耐酸用ガラスコーティングフリット
(G−5) Na0、KO:17.5モル%、MgO、CaO:
2.5モル%、Al:0.5モル%、ZrO
2.5モル%、B:9モル%、SiO:63モ
ル%その他5モル%となるように原料粉末を配合し、ス
リップ粘性調整添加剤と水を加え、ミル引きしたものを
50μm厚にスプレー塗布、乾燥後、さらに上記コーテ
ィングフリットにイットリウム安定化ZrO粉末(1
0〜40μm粒径)を15体積%加えてよく混合したも
のを厚さ20μmにスプレー塗布乾燥したのち870℃
で1時間焼成 (6)耐熱用ガラスコーティングフリット(G−6) Na0、KO:17.5モル%、MgO、CaO:
2.5モル%、Al:0.5モル%、ZrO
2.5モル%、B:9モル%、SiO:63モ
ル%その他5モル%となるように原料粉末を配合し、ス
リップ粘性調整添加剤に20%のCr(15〜4
5μm粒径)と水を加え、湿式ミルにより混合したもの
を皮膜70μm厚にスプレー塗布、乾燥後、870℃で
1時間焼成 (7)ガラス質皮膜例7(G−7) ポリシランからポリカルボシランを熱分解転位反応で製
造する際に、チタニア系金属アルコキシドを加えてポリ
チタノカルボシランをつくり、有機溶剤を加えた40%
溶液を刷毛塗りして70μm厚にコーティング後、乾燥
し、さらに上記溶液に10体積%のAl粉末(5
〜30μm粒径)を加えてよく混合したものを刷毛塗り
で30μm厚にコーティング後、乾燥し、830℃に加
熱焼成
【0030】溶射皮膜例(化学成分は質量%) (1)アンダーコート溶射例1(U−1) WC−12%Co−30%WB 粒度10〜50μm、スプレー造粒パウダーを高速ガス
溶射により50μm膜厚となるように溶射 (2)アンダーコート溶射例2(U−2) Cr−25%NiCr 粒度10〜45μm、スプレー造粒パウダーを高速ガス
溶射により50μm膜厚となるように溶射 (3)アンダーコート溶射例3(U−3) CoNiCrAlY(32%Ni、21%Cr、8%A
l、0.5%Y、残部Coの市販品) 粒度10〜50μm、スプレー造粒パウダーを高速ガス
溶射により50μm膜厚となるように溶射 (4)アンダーコート溶射例4(U−4) 8%Y入り部分安定化ジルコニア(8YZ)市販
品をプラズマ溶射により50μm膜厚となるように溶射 (5)アンダーコート溶射例5(U−5) Ni−5%Al、ニッケル粒のそと側をアルミニウムで
被覆した市販のパウダーをプラズマ溶射により50μm
膜厚となるように溶射 (6)アンダーコート溶射例6(U−6) Al−3%TiO市販品(通称グレイアルミ
ナ)の溶射粉末をプラズマ溶射により30μm膜厚とな
るように溶射
【0031】(7)トップコート溶射例1(T−1) CrとYを同モルずつ混合し、成形後、酸
化雰囲気中で1600℃、4時間焼成し、これを粉砕分
級して粒度10〜45μmの粉末にした溶射材料をプラ
ズマ溶射機により30μm膜厚となるように溶射 (8)トップコート溶射例2(T−2) Al−10%TiO(市販品) 上記溶射材料をプラズマ溶射機により50μm膜厚とな
るように溶射 (9)トップコート溶射例3(T−3) Cr−20%YCrOの溶射 トップコート溶射例1のYCrO粉末を得る場合、C
とYを5:1のモル比で混合し製造した
粉末を、プラズマ溶射機により30μm膜厚となるよう
に溶射 この粉末のX線回折による分析では、YCrOとCr
以外のピークは認められていない。
【0032】(10)トップコート溶射例4(T−4) Cr−25%NiCrの溶射 アンダーコート溶射例2(U−2)と同じパウダーで同
様の溶射 (11)トップコート溶射例5(T−5) Alの溶射 市販のホワイトアルミナのプラズマ溶射用粉末を用い
て、プラズマ溶射機により、それぞれの膜厚に溶射(1
00、300、600μm)
【0033】(12)トップコートなし溶射例1(C−
1) トップコート溶射例1(T−1)と同じパウダーで同様
のプラズマ溶射機により50μmまたは100μm膜厚
となるように溶射 (13)トップコートなし溶射例2(C−2) Al−10%TiO(市販品) 上記溶射材料をプラズマ溶射機により50μm膜厚とな
るように溶射 (14)トップコートなし溶射例3(C−3) Cr−25%NiCrの溶射 (U−2),(T−4)と同じパウダーで同様の溶射 (15)トップコートなし溶射例4(C−4) CoNiCrAlY(32%Ni、21%Cr、8%A
l、0.5%Y、残部Coの市販品)の溶射 (U−4)と同じパウダーで同様の溶射
【0034】封孔処理例(化学成分は質量%) (1)封孔処理例1(F−1) 主成分が6%重クロム酸水溶液を溶射皮膜に含浸後、4
50℃、1時間加熱処理して封孔 (2)封孔処理例2(F−2) 主成分がエポキシ系樹脂の有機溶剤溶液を、刷毛塗り、
含浸後、常温で2時間放置して封孔 (3)封孔処理例3(F−3) 封孔剤の無機化合物コロイド液が、SiO:30%、
NaO:0.5%残部水からなる溶液と、NaO:
10%、SiO:30%残部水からなる無機バインダ
ー溶液とを質量比1:1で混合した封孔液を溶射皮膜に
含浸後、450℃、1時間加熱処理して封孔 (4)封孔処理例4(F−4) 主成分が嫌気硬化性アクリル系樹脂の有機溶剤溶液を刷
毛塗り含浸後、常温で2時間放置してのち、80℃に昇
温、1時間保持
【0035】実施例1 溶融亜鉛に対する耐食性調査 溶融亜鉛浴中で使用するめっき用ロールの表面は、鋼板
と接するため耐摩耗性があること、亜鉛に対する耐食性
を必要とする。本発明皮膜の溶融亜鉛に対する耐食性を
確認するために以下の試験を行った。基材(材質:SU
S316L、寸法30mmφ×300mm)に、本発明
例および比較例の皮膜を形成した。この場合トップコー
トの膜厚は50μm、また、ガラス質皮膜の厚みは10
0μmとした。本発明例および比較例の試験片を450
℃溶融亜鉛浴中に20日、40日、80日浸漬後取り出
して、耐食性、皮膜剥離の有無を比較した。試験結果を
表1に示す。No.1および2は本発明例、No.3〜
6は比較例である。
【0036】
【表1】
【0037】表1から、本発明の皮膜は従来技術による
比較例より格段に優れていることがわかる。前記実施例
は溶融亜鉛めっき浴に浸漬した結果であるが、溶融アル
ミニウムメッキ浴や、溶融亜鉛−50%アルミニウムメ
ッキ浴に適用しても同様な結果が得られた。また、溶射
皮膜形成後封孔処理をすることによって、寿命はさらに
長くなることを確認した。
【0038】実施例2 希硫酸等の酸性水溶液に対する耐食性調査 各種プロセスロール(製紙用ロール、腐食液使用ライン
製鉄用ロール、化学薬品処理化学工業用ロール等)に対
して、耐摩耗性と共に酸に対する耐食性が必要とされ
る。SS400基材、寸法50mm×30mm×5mm
tの試験片に、本発明例および比較例としての皮膜例を
形成した。これら試験片を10質量%硫酸溶液に浸漬
し、溶射皮膜が剥離するまでの日数を比較した。結果を
表2に示す。No.7〜11は本発明例、No.12〜
14は比較例である。
【0039】
【表2】
【0040】この結果、皮膜が剥離するまでの日数は本
発明のものが長くなっており、耐食性のよいことがわか
る。比較例では、溶射皮膜が封孔処理で緻密化されてい
ても、時間の経過とともに酸が徐々に浸透し基材のSS
材が腐食して剥離が生ずるのに対し、本発明例のごとく
下地にガラス質皮膜をコーティングすれば、複合効果に
より酸性水溶液の浸透が起こりにくくなるためである。
【0041】なお、同様のサンプルについて10質量%
食塩水+0.3質量%酢酸水溶液による塩水噴霧試験を
行った結果でも本発明例サンプルは耐久性が良好であっ
た。溶射皮膜を形成したうえに封孔処理を行うとさらに
寿命が長くなることも確かめられている。
【0042】実施例3 400℃以下の腐食性ガスに対する耐食性調査 400℃以下で比較的低温であるが、腐食性ガスに接触
する部分でさらに耐摩耗性を要求されるために溶射を施
す部材について、皮膜の耐食性を検討した。SS400
基材、寸法50mm×30mm×5mmtの試験片に、
本発明例および比較例の皮膜例を形成した。これら試験
片をClガス1000ppmを含むN雰囲気ガス
中、350℃に加熱保持し、7日間、14日間、28日
間、42日間、56日間経過後の表面状況を比較検討し
た。その結果を表3に示す。No.15〜18は本発明
例、No.19および20は比較例である。
【0043】
【表3】
【0044】表3に示されるように、Clガスが存在
する腐食性ガス中で加熱した場合でも、本発明例が長時
間耐久性を保持できることがわかる。また、溶射皮膜形
成後に適切な封孔剤で封孔処理をすると、さらに寿命が
延びることも確認した。
【0045】実施例4 耐高電圧放電テスト 製鉄設備のうち、鋼板に電気めっきを行うラインのロー
ルでは、鋼板通板時に耐摩耗性があってしかも絶縁性の
高いものが必要とされる箇所がある。そこで最表面にセ
ラミックスを溶射することを前提に本発明の有効性を検
討した。SS400基材、寸法50mm×30mm×5
mmtの試験片に、本発明例および比較例の皮膜例を形
成し、皮膜の耐圧性を調べた。その結果を表4に示す。
No.21〜24は本発明例、No.25〜27は比較
例である。
【0046】
【表4】 絶縁性の高いセラミックスはAlであり、その溶
射セラミックス皮膜があるが、溶射皮膜の場合には気孔
があるためかなり低い電圧で放電が起こる。これに対
し、表面に封孔処理を行うと耐電圧は多少上がるがその
効果は大きくない。本発明例では下地に絶縁性の高いガ
ラス質皮膜コーティングをしているので、その厚さを大
きくすれば高い耐電圧性が得られることがわかる。溶射
皮膜上への封孔処理はその耐電圧性効果がさらに大きく
なる。試験には、基材と皮膜面に接した電極間に電圧を
かけ、、放電が起こった場合の電圧で比較した。
【0047】実施例5 高温耐酸化性調査 空気中またはCOや水分の多い雰囲気中で600℃以
上の比較的高温に加熱される部材で、耐摩耗性向上のた
め表面にセラミックスまたはサーメットを溶射する部材
を対象に本発明の適用性を検討した。所に使用されて耐
熱性が要求される場合についての調査 SUS304基材、寸法50mm×30mm×5mmt
の試験片に、本発明例および比較例の皮膜を形成して、
これら試験片を下記条件下で試験し、酸化剥離が発生す
るまでの時間を比較した。その結果を表5に示す。N
o.28〜32は本発明例、No.33〜35は比較例
である。 ガス組成 O:7% CO:12% HO:8
% N:残部 処理温度 800℃
【0048】
【表5】
【0049】表5の結果から、本発明による複合皮膜
は、長時間雰囲気ガス中の使用に耐えることがわかる。
また、溶射皮膜に適当な封孔処理を施すとさらに寿命が
延びることもわかる。
【0050】実施例6 皮膜の密着強度調査 図1に示す25.4mmφ×50mmLのSS400基
材製の試験体円形断面に、所定の溶射等の皮膜を形成
し、もう一つの同型の基材の円形断面と図2に示すよう
にアラルダイトAT−1で接着して、これを引張試験機
で引張りテストを行い、皮膜の密着強度(kg/c
)を調べた。 No.1 Cr−25%NiCr(U−2)上に、ガラス質
皮膜例2(G−2)のガラス皮膜を形成後、Al
−10%TiO(C−2)を溶射したもの No.2 前記No.1のガラス皮膜を形成するにあたり、Al
を加えない液を使用し、形成されたガラス皮膜上に
Al−10%TiO(C−2)を溶射したもの No.3 Cr−25%NiCr(U−2)上に、ガラス質
皮膜例「耐高温ガス腐食用ガラスコーティングフリッ
ト」(G−4)のガラス皮膜を形成後、YCrO「ト
ップコートなし溶射例1」(C−1)を溶射したもの No.4 Cr−25%NiCr(U−2)上に、ガラス質
皮膜例「耐高温ガス腐食用ガラスコーティングフリッ
ト」(G−4)のガラス皮膜を形成するに際して、Si
粉末を加えない液のみにより皮膜を形成後、YCr
「トップコートなし溶射例1」(C−1)を溶射し
たもの試験結果は次のとおりであった。
【0051】
【表6】
【0052】表6の結果から、本発明による複合皮膜
は、基材に対する密着強度に優れていることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明で形成される皮膜密着強度を測定する
ために使用する試験体の側面図である。
【図2】 皮膜密着強度を測定する試験体の状態を示す
側面図である。
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成12年3月13日(2000.3.1
3)
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】発明の名称
【補正方法】変更
【補正内容】
【発明の名称】 貫通気孔のない溶射皮膜の形成方法
およびその溶射皮膜を有する部材
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】特許請求の範囲
【補正方法】変更
【補正内容】
【特許請求の範囲】
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0004
【補正方法】変更
【補正内容】
【0004】c.特表平7−502071公報(国際公
開番号W092/22676)は、金属表面にガラス
質エナメル被覆を施し、その上に高温時に微軟化する金
属または合金層を吹き付け形成することが提案された。
この方法はガラスエナメル被覆をを施すことが目的で、
その上に金属または合金の吹き付け層を設けて強度を確
保しようとするものである。したがって、ガラスエナメ
ル層に金属を密着させるため、ガラス質エナメル溶射層
を、基材を高温にして吹き付けを行うこと、その後ピー
ニングを行うか、更にガラスエナメル質の第2被覆をす
ることで目的を達成しようとしていた。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】変更
【補正内容】
【0006】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するた
め、本発明者等は鋭意研究を重ねた結果、必要に応じて
アンダーコートを設けた基材表面へSiまたは金属の酸
化物セラミックス粉末がまじった緻密なガラス質皮膜を
形成し、その表面にセラミックス溶射皮膜を形成して複
合皮膜とするが有効であることを知見し、本発明を完成
するに至った。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正内容】
【0007】前記の知見に基づいてなされた本発明は、
溶射用の前加工をした基材表面に、ガラス質形成成分を
溶解または懸濁した液(A液)を刷毛塗りまたは噴霧に
より塗布し、常温乾燥または必要に応じて900℃以下
の温度で焼成することにより下地ガラス質となる皮膜を
形成し、該下地ガラス質用皮膜上に、前記A液にSi
たは金属の酸化物セラミックス粉末を、ガラス質皮膜形
成後の皮膜体積比で5〜80%の割合となる量で含有さ
せた液(B液)を刷毛塗りまたは噴霧により塗布し、常
温乾燥または900℃以下の温度で焼成することにより
皮膜を形成するか、または、基材表面上にはじめからA
液にSiまたは金属の酸化物セラミックス粉末を、ガラ
ス質皮膜形成後の皮膜体積比で5〜80%の割合となる
量で含有させた液(B液)を刷毛塗りまたは噴霧により
塗布し、常温乾燥または900℃以下の温度で焼成する
ことにより皮膜を形成し、これらの皮膜上にSiおよび
その他金属の酸化物からなるセラミックス皮膜形成材料
を溶射し、貫通気孔のない複合皮膜を得ることを特徴と
する貫通気孔のない溶射皮膜の形成方法を要旨としてい
る。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正内容】
【0008】
【発明の実施の形態】本発明の構成と作用を説明する。
本発明においては、最外層のセラミックス皮膜溶射前
に、基材表面にガラス質皮膜を形成するものであり、ガ
ラス質形成原料を溶媒に溶かした溶液を使用し、刷毛塗
り、噴霧機等でコーティングする。そして常温乾燥また
は必要に応じて900℃以下の温度で焼成する。さらに
このガラス質形成成分液(A液)にSiまたは金属の酸
化物セラミックス粉末を、ガラス質皮膜形成後の皮膜体
積比で5〜80%の割合となる量で含有させた液(B
液)を刷毛塗りまたは噴霧により塗布し、そして、それ
を必要に応じて乾燥し、焼成する。焼成手段としては、
赤外線ランプ加熱、炉加熱、バーナー加熱等が使用で
き、ガラス質の材料、被コーティング物の形状等により
選択する。こうして形成されたガラス質皮膜は貫通気孔
がなく、ミクロ割れのないものとすることができる。こ
の場合、焼成温度はガラス形成材料によって変わってく
るので、その材料に応じた温度を選択するが、900℃
以下であって、ガラス質あるいは琺瑯質の皮膜は乾燥ま
たは加熱で脱溶媒処理される。また、溶融状態となった
り化学変化をして基材表面を貫通気孔のない、しかもこ
のあと溶射するセラミックスとも親和性の高い皮膜で覆
うことができる。この場合皮膜厚さは後続の溶射処理に
より破壊されない程度であることが必要であり、薄すぎ
るとガラス質皮膜形成の意義がなくなるので好ましくは
5〜500μmとなるように処理する。とくに塗布によ
る皮膜形成が貫通気孔がなく皮膜を薄くできると共に後
盛り層との結合力を改善できることがわかった。5μm
未満ではガラス質皮膜の効果がなく、500μmを超え
ると溶射時の加熱冷却による内部応力が増加し、皮膜破
壊の傾向が大きくなる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 津田 拓也 東京都中央区八重洲一丁目3番8号 日鉄 ハード株式会社内 (72)発明者 高野 吉郎 三重県松阪市小黒田町460−1 株式会社 タカヨシ内 Fターム(参考) 4K031 AA02 AB05 AB08 AB09 BA05 CB11 CB14 CB21 CB22 CB23 CB24 CB26 CB27 CB39 CB42 CB44 CB45 CB48 DA04 FA07 FA08

Claims (14)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 溶射用の前加工をした基材表面に、ガラ
    ス質形成成分を溶解または懸濁した液(A液)を刷毛塗
    りまたは噴霧により塗布し、常温乾燥または必要に応じ
    て900℃以下の温度で焼成することにより下地ガラス
    質となる皮膜を形成し、該下地ガラス質用皮膜上に、前
    記A液にSiおよび金属の酸化物セラミックス粉末を、
    ガラス質皮膜形成後の皮膜体積比で5〜80%の割合と
    なる量で含有させた液(B液)を刷毛塗りまたは噴霧に
    より塗布し、常温乾燥または900℃以下の温度で焼成
    することにより皮膜を形成するか、または、基材表面上
    にはじめからA液にSiおよび金属の酸化物セラミック
    ス粉末を、ガラス質皮膜形成後の皮膜体積比で5〜80
    %の割合となる量で含有させた液(B液)を刷毛塗りま
    たは噴霧により塗布し、常温乾燥または900℃以下の
    温度で焼成することにより皮膜を形成し、これらの皮膜
    上にSiおよびその他金属の酸化物からなるセラミック
    ス皮膜形成材料を溶射し、貫通気孔のない複合皮膜を得
    ることを特徴とする貫通気孔のない溶射皮膜の形成方
    法。
  2. 【請求項2】 セラミックス皮膜を溶射形成した最上層
    に、さらに単一金属または合金または金属とセラミック
    スからなるサーメットの溶射皮膜を形成して複合皮膜と
    する請求項1記載の貫通気孔のない溶射皮膜の形成方
    法。
  3. 【請求項3】 ガラス質形成成分液塗布前の基材表面
    に、アンダーコートとして金属皮膜形成材料又はサーメ
    ット皮膜形成材料を溶射する請求項1または2記載の貫
    通気孔のない溶射皮膜の形成方法。
  4. 【請求項4】 ガラス質皮膜形成液の塗布、乾燥および
    焼成処理として、同種液を単独に繰り返し塗布含浸する
    か、または異種液を組み合わせて繰り返し塗布含浸する
    か、あるいはこれに焼成処理を組み合わせて繰り返し行
    う請求項1、2または3記載の貫通気孔のない溶射皮膜
    の形成方法。
  5. 【請求項5】 複合皮膜を形成後、有機系または無機系
    封孔剤液を塗布、乾燥硬化または焼成して封孔処理する
    請求項1ないし4のいずれかに記載の貫通気孔のない溶
    射皮膜の形成方法。
  6. 【請求項6】 下地ガラス質皮膜形成成分の塗布液(A
    液)が、ガラスライニング用の各種酸化物を形成する原
    料からなるもの、ガラスライニング用の各種酸化物を主
    成分とするもの、またはこれらを加熱し、ガラス化した
    のち粉砕し、微粉化した粉体を含み、ガラス質皮膜形成
    成分はガラス質100質量%、またはセラミックス、サ
    ーメット、金属または合金、天然鉱物または天然鉱物の
    加工物のいずれかの粉末を合計で70体積%以下塗布液
    (A液)中に含有し、さらに下地ガラス質皮膜の上に形
    成するガラス質成分の塗布液(B液)が、A液にSiお
    よび金属の酸化物セラミックス粉末を、ガラス質皮膜形
    成後の皮膜体積比で5〜80%の割合となる量で含有さ
    せた液(B液)である請求項1ないし5のいずれかに記
    載の貫通気孔のない溶射皮膜の形成方法。
  7. 【請求項7】 下地ガラス質皮膜形成後のガラス質皮膜
    成分中の各種主成分酸化物が、SiO:30〜80モ
    ル%、Al:8モル%以下、ZrO:10モル
    %以下、TiO:15モル%以下、B:25モ
    ル%以下、R:15〜10モル%(ただしRはア
    ルカリ金属、アルカリ土類金属、Cr、Pbのうち1種
    以上を、Oは酸素を示し、x、yは原子数を示す。)で
    ある請求項1ないし6のいずれかに記載の貫通気孔のな
    い溶射皮膜の形成方法。
  8. 【請求項8】 下地ガラス質皮膜形成の液(A液)が、
    金属アルコキシド等の有機金属化合物含有溶液または有
    機または無機金属ポリマーのどちらかを含有する溶液あ
    るいはその両方を含む溶液またはこれらにセラミック
    ス、サーメットまたは単一金属または合金または天然鉱
    物等の微細無機質粉末を70体積%以下含有させた液で
    あり、さらにその上にコーティングするB液がそのA液
    にSiおよび金属の酸化物セラミックス粉末を、ガラス
    質皮膜形成後の皮膜体積比で5〜80%の割合となる量
    で含有させた液(B液)である請求項1ないし5のいず
    れかに記載の貫通気孔のない溶射皮膜の形成方法。
  9. 【請求項9】 形成されたガラス質皮膜の厚さが5〜5
    00μmである請求項1ないし8のいずれかに記載の貫
    通気孔のない溶射皮膜の形成方法。
  10. 【請求項10】 ガラス質皮膜形成後、上盛りするSi
    およびその他金属の酸化物からなるセラミックス皮膜
    が、Al、Al−TiO、ZrO
    、CaO−SiO、Al−ZrO
    Cr−Al、Crのいずれかである
    もの、またはそれが95質量%以上の主成分であるも
    の、Al、Ti、Cr、Feの内の1種以上とSc、
    Yおよび希土類金属の1種以上とからなる複酸化物から
    なるもの、前記複酸化物を5質量%以上含有し残部は
    の酸化物からなり、その他不可避不純物よりなるる請
    求項1ないし9のいずれかに記載の貫通気孔のない溶射
    皮膜の形成方法。
  11. 【請求項11】 ガラス質形成成分液塗布前の基材表面
    に溶射するアンダーコート用皮膜材料主成分が、Ni、
    Cr、Co、Al、Y、Feの内の1種以上からなる単
    一金属または合金、またはこれら単一金属または合金と
    Cr、Al、TiO、Cr、W
    C、ZrB、WB、CrBの1種以上とからなるサ
    ーメット材料である請求項3ないし10のいずれかに記
    載の貫通気孔のない溶射皮膜の形成方法。
  12. 【請求項12】 セラミックス溶射層の上の最上層に溶
    射される皮膜形成材料主成分が、Ni、Cr、Mo、F
    e、Co、Mn、W、Y、Ti、Nb、Alの1種以上
    からなる単一金属または合金、または前記単一金属また
    は合金とAl、TiO、ZrO、Cr
    、Y、WC、Cr、NbC、WB、
    CrB、TiB、MoB、ZrBの1種以上と不可
    避不純物で構成されるサーメットである請求項2ないし
    11のいずれかに記載の貫通気孔のない溶射皮膜の形成
    方法。
  13. 【請求項13】 基材上に形成された全皮膜の厚さが合
    計20〜700μmである請求項1ないし12のいずれ
    かに記載の貫通気孔のない溶射皮膜の形成方法。
  14. 【請求項14】 下地ガラス質皮膜形成の液(A液)
    が、有機金属ポリマーからなる液で、かつ有機金属ポリ
    マーおよび無機金属ポリマーが化学的に結合した状態の
    液を主成分とし、これをコーティングしたのち、比較的
    低い温度で加熱するか、またはあらかじめ加えた硬化剤
    による常温での重合反応により一部の有機成分がセラミ
    ックスと化学的に結合した状態のガラス質皮膜が形成さ
    れる請求項1ないし5または8ないし13のいずれかに
    記載の貫通気孔のない溶射皮膜の形成方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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WO2004070076A1 (ja) * 2003-01-28 2004-08-19 Tosoh Corporation 耐蝕性部材及びその製造方法
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