JP3360792B2 - 走査型プローブ顕微鏡 - Google Patents

走査型プローブ顕微鏡

Info

Publication number
JP3360792B2
JP3360792B2 JP02329897A JP2329897A JP3360792B2 JP 3360792 B2 JP3360792 B2 JP 3360792B2 JP 02329897 A JP02329897 A JP 02329897A JP 2329897 A JP2329897 A JP 2329897A JP 3360792 B2 JP3360792 B2 JP 3360792B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
scanning
sample
deviation signal
probe
signal
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP02329897A
Other languages
English (en)
Other versions
JPH10206440A (ja
Inventor
高史 森本
健 村山
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Hitachi Construction Machinery Co Ltd
Original Assignee
Hitachi Construction Machinery Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Hitachi Construction Machinery Co Ltd filed Critical Hitachi Construction Machinery Co Ltd
Priority to JP02329897A priority Critical patent/JP3360792B2/ja
Publication of JPH10206440A publication Critical patent/JPH10206440A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP3360792B2 publication Critical patent/JP3360792B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Length Measuring Devices With Unspecified Measuring Means (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は走査型プローブ顕微
鏡に関し、特に、制御系の制御偏差を積極的に利用し、
比較的高速に探針を走査し、試料表面の情報を素早く捕
らえるのに適した走査型プローブ顕微鏡に関する。
【0002】
【従来の技術】走査型プローブ顕微鏡(以下「SPM」
とも記す)は、先端の尖った探針(プローブ)を、試料
に対してナノメートル(nm)オーダまで接近させ、そ
のとき探針と試料との間に生じる原子間力等の物理的な
相互作用を測定することにより、試料表面の形状などを
原子寸法レベルで計測する装置である。その中でも走査
型原子間力顕微鏡(以下「AFM」とも記す)に代表さ
れる力顕微鏡は、カンチレバーと呼ばれる非常にバネ定
数の低い片持ち梁を用い、カンチレバー先端に備えた探
針と試料の間に作用する原子間力によるカンチレバーの
たわみ変形による変位量を検出することにより、試料表
面の凹凸形状を測定する装置である。
【0003】図5を参照して従来のAFMの代表的な機
械的要部の構成および制御系の構成を説明する。このA
FMは一般的なコンタクトモードのAFMである。この
AFMにより試料表面の形状を測定するときの動作は次
の通りである。
【0004】先端に探針51を有するカンチレバー52
で生じる変位は、レーザ光源53と光検出器54からな
る光テコと呼ばれる光学的変位検出装置により計測され
る。光テコは、AFMのカンチレバーの変位検出手段と
して一般的に広く用いられているものである。またトラ
イポッド55は、試料56を載置する試料台57を支持
する3軸(直交するX,Y,Zの各軸)方向の圧電素子
58a,58b(Y軸圧電素子は図示せず)を備え、X
Y方向の走査、および探針・試料間(またはカンチレバ
ー・試料間)の距離を制御するZ軸方向の動作を行うた
めの3次元アクチュエータである。
【0005】試料56の表面形状を測定するときには、
探針51を備えるカンチレバー52を、図示しない接近
・退避機構により、試料56に対し原子間力が作用する
領域まで接近させる。その時、探針51が試料56の表
面から力を受け、カンチレバー52にたわみ変形が生じ
る。カンチレバー52にたわみ変形が生じると、減算器
59と制御回路60によって、光テコにより検出された
カンチレバー52のたわみ変形による変位量(探針51
の変位量)を表す変位信号s1と予め設定された設定値
s0との間の差としての偏差信号Δsが0となるよう
に、トライポッド55のZ軸方向の動作が制御される。
すなわち、カンチレバー52のたわみ変形による変位量
は常に設定値s0に一致するように制御され、そのた
め、探針51は試料56に対して一定の力で押しつけら
れた状態に保たれる。当該押し付け力が一定になるよう
に制御を行いながら、XY走査回路61によりトライポ
ッド55の各圧電素子を駆動して試料56の表面を走査
すると、Z軸方向の制御信号s2は試料表面の凹凸に応
じて変化する。その制御信号s2とXY走査回路61の
出力信号に基づいて、信号処理装置62で試料表面の凹
凸形状の情報を得ることができ、これによって表示装置
63に測定像を表示できる。
【0006】なお実際の装置では、上記制御信号s2の
変化する値を、試料56における走査範囲での各点の高
さ情報とし、高さに応じて例えば濃淡のコントラストを
付して表示画面に表示することにより、試料の測定領域
の形状を視覚的に表現するようにしている。
【0007】またSPMの1つである走査型トンネル顕
微鏡(STM)では、探針・試料間の距離に応じて変化
するトンネル電流を検出し、このトンネル電流の値が予
め設定された値に一致するように探針・試料間の距離を
制御する。検出する物理量は異なるが、AFMと制御信
号は類似し、測定の原理はほぼ同一である。その他の種
類の走査型プローブ顕微鏡でも同様である。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】試料表面を観察する
際、従来のSPMでは、まず比較的大きな走査範囲で素
早く観察を行って目的とする観察場所を見つけ、その目
的の場所をより小さな走査範囲でより高い分解能で観察
し、必要に応じてさらに走査範囲を小さくし分解能をさ
らに高くして詳細な観察を行うといった手法が用いられ
ていた。このことは、一般的な光学顕微鏡に置き換えて
考えてみると、まず低倍率の対物レンズで広く大まかに
観察して目的とする場所を捕らえ、倍率を高くして、観
察目的の箇所の分解能を高めていく作業(ズーミング)
に相当する。
【0009】しかしながら、従来のSPMの制御系の構
成では、大きな走査範囲を高速に走査しようとすると、
探針と試料表面との距離を一定に保つ制御が試料表面の
凹凸の変化に追従できないという可能性が高くなる。探
針・試料間距離を一定に制御する制御信号を用いて試料
表面の情報を得るように構成された従来のSPMによれ
ば、制御が追従できないときには正確な測定を行うこと
はできない。場合によっては、試料表面の大まかな形状
を捕らえることすらできないこともあり得る。従って、
そのようなときには、走査速度を小さくし、ゆっくりと
時間をかけて測定しなければならず、大きな走査範囲を
素早く観察するといった目的を達成できない。
【0010】またSPMにおいて、試料が傾いて試料台
に載置されるようなことは、ごく一般に起こり得ること
である。従来のSPMでは、試料表面の凹凸も、試料を
載置したときの傾きも、高さの変化に対応した制御信号
の変化として同じように計測される。従って、試料表面
の凹凸と試料の傾斜の両方を含んだ高さ情報が、例えば
白黒の濃淡情報として表示される。観察しようとする試
料表面の凹凸の大きさに対して試料の傾斜の方が相対的
に大きい場合には、観察結果として表示される像から
は、試料の傾斜のみが認識でき、表面の凹凸を反映した
濃淡のコントラストが認識できなくなり、問題である。
一般的にSPMで観察しようとする試料の凹凸は大きく
ても数μmであり、またnmレベルの凹凸を観察したい
場合も多い。従って、載置する試料の傾斜が試料表面の
凹凸よりも相対的に大きくなることは容易に起こり得る
ことである。
【0011】上記の問題に対処するために、従来では、
試料台に傾斜機構を備え、測定結果に基づいて試料の傾
斜をなくして再度測定するか、あるいは、測定終了後に
ソフトウェア的に試料の傾斜を補正する処理を行ってい
た。しかしながら、光学顕微鏡のズーミングを例にとっ
て説明したように、大きな走査範囲を素早く観察すると
いった目的のためには、そのような対策は適当でない。
【0012】さらに、SPMにおいて測定するのは3次
元の情報であり、従来では、前述の通り、所定の走査位
置における高さ情報に例えば白黒の濃淡を対応づけて表
示画面上に表示していた。その場合、表示のための特別
な演算処理などを必要としないため、走査しながらリア
ルタイムに測定結果を表示することができるという利点
があった。しかし、測定者が直感的に3次元の形状を認
識づらいという欠点があった。そこで、3次元の立体表
示を行い、直感的に形状を認識できるようにすることが
望まれる。
【0013】また大きな凹凸の中に相対的に小さな凹凸
が含まれるような形状を測定したとき、小さな凹凸に対
する濃淡のコントラストがほとんど認識できなくなり、
大きな凹凸しか認識できないような場合がある。
【0014】そこで従来は、測定終了後にソフトウェア
的に処理し、対応させて表示することにより3次元的な
立体表示を行っていた。例えば、測定された表面形状に
或る方向から光を照射した場合の光と影の状態を演算
し、陰影処理をして立体表示するというような処理が採
用された。そのような処理は一般的に用いられる手法で
あるので説明を省略するが、多くの演算を必要とするの
で、走査しながらリアルタイムで表示するのは困難であ
り、やはり光学顕微鏡のズーミングを例にとって説明し
たように、大きな走査範囲を素早く観察するといった目
的のためには適さない。
【0015】本発明の目的は、前述の各問題点を解決
し、大きな走査範囲を素早く観察することができ、さら
に3次元的な立体表示を簡易にかつ短時間に行える走査
型プローブ顕微鏡を提供することにある。
【0016】
【課題を解決するための手段および作用】本発明(請求
項1に対応)に係る走査型プローブ顕微鏡は、上記の目
的を達成するため、試料に対向する探針と、試料と探針
の間の距離を変化させる変位手段(トライポッド等)
と、試料の表面に対して探針を相対的に移動させる走査
手段(XY走査回路)と、探針と試料の間に生じる物理
量に起因して探針に生じる変化量を検出する検出手段
(光テコの検出装置)と、当該変化量と基準設定値の差
を求め偏差信号を出力する演算手段(減算器)と、偏差
信号を入力し、当該偏差信号が適切条件を満たすように
変位手段の動作を制御する制御手段(制御回路)と、走
査手段と制御手段の各々から出力される信号を信号処理
し表示手段(表示装置)の画面に測定像を表示する信号
処理手段(信号処理装置の測定像作成処理部)を備えた
走査型プローブ顕微鏡であり、偏差信号と走査手段から
出力される信号とを用いて測定像を作成し、この測定像
を表示手段の画面に表示する偏差信号像作成手段(信号
処理装置の偏差信号像作成処理部)を備えるように構成
される。
【0017】上記の構成において、さらに好ましくは、
偏差信号の値の大小を色情報に対応させて測定像を作成
し、表示する。
【0018】上記の構成において、さらに、走査手段
は、制御手段による制御が追従不可状態となり、偏差信
号が生じるような高速な走査速度で走査を行うものであ
る。
【0019】走査型プローブ顕微鏡では、通常、大きな
走査範囲を高速に走査し、その結果制御が追従できない
場合には、制御信号を用いて測定像を得ても、測定誤差
が大きく十分に有効な情報を得られない。他方、測定誤
差として、表面形状に応じた制御に係る偏差信号が生じ
る。そこで本発明の走査型プローブ顕微鏡では、この偏
差信号を積極的に利用し、当該偏差信号を用いて試料表
面の形状が反映した測定像を作成し、表示する構成を備
えるようにした。例えば、所定の走査位置における偏差
信号の大小を色情報に対応させて表示するようにした。
より具体的に説明すると、例えば試料表面の走査範囲内
に何らかの凹凸があった場合には、大きく急峻な凹凸で
あれば大きな制御偏差(偏差信号)が生じ、小さくなだ
らかな凹凸であれば相対的に小さな制御偏差となり、ま
た平坦な所では制御偏差は生じない。従って、大きな走
査範囲を高速に走査した場合でも、本発明の走査型プロ
ーブ顕微鏡によれば、偏差信号を利用することにより、
表面の凹凸に対応した測定像を得ることができる。
【0020】また試料が傾いて載置された場合でも、例
えば走査範囲内に全く凹凸がなく平坦であったときに
は、高速に走査しても、試料の傾きは緩やかに変化する
信号成分であるので、制御は追従でき、制御偏差は生じ
ず、理論的には常に0である。従って本発明による走査
型プローブ顕微鏡では、傾き成分は表示されず、キャン
セルされ、傾きがなくかつ凹凸のない平坦な像として表
示される。また試料が傾いて載置され、その表面に何ら
かの凹凸があった場合でも、同様な理由により傾き成分
は表示されず、キャンセルされ、試料表面の凹凸に対応
した測定像のみを得ることができる。
【0021】さらに、例えば単純な左右対称の凸形状を
走査した場合に生じる制御偏差について考察してみる。
凸形状の立ち上がりの部分(仮に左側とする)で生じる
制御偏差と、凸形状の立ち下がりの部分(仮に右側とす
る)で生じる制御偏差の符号は反対で、理論的には同じ
大きさの制御偏差が生じる。さらに凸形状の上の平坦な
部分および凸形状以外の平坦な部分では制御が追従でき
るので、理論的には制御偏差は0になる。本発明では、
そのように生じる制御偏差の信号値の大小を、例えば白
黒の濃淡に対応づけて表示すると、凸形状の左側は相対
的に白く、右側は相対的に黒く、それ以外の平坦な部分
はそれらの中間の濃度というコントラストがついて表示
される。そのような表示は、測定された凸形状の左側か
ら光を照射した(白く光って見えるはず)場合の状態を
演算し、右側が暗く影になっているような処理をして立
体表示するという従来の処理を行った像に実質的に等し
くなる。つまり本発明によれば、偏差信号を利用して従
来と同様に測定像を作成するだけで、そのような演算を
行うことなく、あたかも陰影処理を施したような測定像
を得ることができる。
【0022】
【発明の実施の形態】以下に、本発明の好適な実施形態
を添付図面に基づいて説明する。
【0023】図1は本発明に係るSPMの実施形態を示
す。本実施形態のSPMは、一例としてカンチレバーを
備えた力検出式のものであり、特に、コンタクトモード
のAFMの例を示している。またこのAFMでは、カン
チレバーのたわみ変形によって生じる変位量は一般的な
光テコの検出原理を利用して検出される。
【0024】図1において、試料11は、トライポッド
12に支持された試料台13の上に載置される。トライ
ポッド12は、試料台13を支持する3軸方向の圧電素
子すなわちX軸圧電素子14aとY軸圧電素子(図示せ
ず)とZ軸圧電素子14bを備え、XY方向の走査およ
び探針・試料間(またはカンチレバー・試料間)の距離
を制御するZ軸方向の駆動を行うための3次元アクチュ
エータである。試料11の上側には、当該試料11に対
向する探針15を先端に備えるカンチレバー16が配置
される。カンチレバー16の上方にはレーザ光源17と
光検出器18からなる光テコ(光学的変位検出装置)が
配置される。レーザ光源17から出射されたレーザ光1
7aはカンチレバー16の背面(鏡面)で反射され、光
検出器18に入射する。試料11と探針15は、試料1
1の表面と探針15の間で原子間力が作用する程度まで
接近した状態に保持されており、試料・探針間の距離が
変化すると原子間力が変化し、当該原子間力に応じてカ
ンチレバー16がたわみ変形する。カンチレバー16の
たわみ変形によりカンチレバー16で生じる変位量は、
光テコにより計測される。
【0025】図1において、試料11の表面の形状を測
定するときには、探針15を、周知の接近・退避機構
(図示せず)により試料11に対し原子間力が作用する
領域まで接近させる。そのとき、探針15が試料表面か
ら力を受け、カンチレバー16にたわみ変形が生じる。
光テコにより検出されたカンチレバー16の変位量(探
針15の変位量)は、光検出器18から変位信号s1と
して取り出される。減算器19では、予め設定された基
準となる設定値s0と上記変位信号s1の差が偏差信号
Δsとして演算される。当該偏差信号Δsは制御回路2
0に供給される。制御回路20は、トライポッド12の
Z軸方向の動作すなわちZ軸圧電素子14bを制御する
ものであり、減算器19から出力される上記偏差信号Δ
sが0になるように、制御信号s2を生成し、出力す
る。すなわち、この制御系では、カンチレバー16のた
わみ変形による変位量が常に設定値s0に一致するよう
に制御が行われる。これによって、探針15は試料11
の表面に対し一定の力で押付けられた状態に保たれる。
このように探針15を試料11に対して押付け力を一定
に保持する制御を行いながら、XY走査回路21により
トライポッド12を駆動して試料11の表面を探針15
で走査すると、Z軸方向の制御信号s2は試料11の表
面の凹凸形状に応じて変化する。
【0026】XY走査回路21は走査速度を決定する走
査駆動信号を出力する。従って、XY走査回路21は走
査速度を決定する働きを有する。
【0027】信号処理装置22は、コンピュータ等で構
成され、内部に用意されたプログラムによって機能手段
として実現された測定像作成処理部22aと偏差信号像
作成処理部22bを備えている。
【0028】上記の制御信号s2とXY走査回路21か
ら出力される走査駆動信号は信号処理装置22に入力さ
れ、さらに測定像作成処理部22aに入力される。測定
像作成処理部22aは、制御信号s2によって試料表面
の高さ情報を得ると共に、走査駆動信号から走査範囲に
おける位置情報(座標情報)を得、これらの情報に関す
るデータを組み合わせることにより測定像を描くための
データを作成し、このデータを用いて表示装置23の画
面に試料表面の凹凸情報に関する画像すなわち測定像を
表示する。当該測定像は測定者が視覚的に把握しやすい
ように作成され、表示される。例えば、制御信号s2に
よって得られる試料表面の凹凸の高さを白黒の濃淡に対
応づけて画面に表示する。
【0029】さらに、本実施形態によるSPMの構成で
は、偏差信号ΔsとXY走査回路21から出力される走
査駆動信号が信号処理装置22の偏差信号像作成処理部
22bに入力されるように構成される。偏差信号像作成
処理部22bは、偏差信号Δsと走査駆動信号を用いて
偏差信号像を作成し、表示装置23に表示する。
【0030】偏差信号Δsの値は、基準となる設定値s
0から、実際のカンチレバー16のたわみ変形による変
位量、すなわち変形量を引いた値であり、測定誤差に相
当する。偏差信号Δsは、カンチレバー16の変形量偏
差ということができる。また制御系がアナログ制御系で
あれば、扱う信号は電圧信号であり、偏差信号Δsは電
圧信号となる。偏差信号Δsは、制御系による制御が追
従できない場合に生じる。
【0031】図2は、或る試料をAFMにより実際に測
定し、信号処理装置22の測定像作成処理部22aによ
って、各測定点における制御信号s2の値の大小に応じ
て白黒の濃淡を対応づけて測定像を作成し、当該作成像
を表示装置23の画面に表示したものである。走査範囲
内の最も高い点に白を、最も低い点に黒を対応づけ、そ
の間を高さに応じた階調をつけて表示している。従来の
一般的なAFMでは、制御信号s2を利用してこのよう
な測定像が得られる。試料の表面には、縦0.3μm、
横0.6μmの楕円形の凹形状(窪み)があり、その窪
みの底面と窪み以外の部分はほぼ平坦である。従って、
楕円形の内側は黒く、それ以外の部分は白く表示されて
いる。また、この試料は、図中で左下より右上の方が
0.3μm程度低く傾いた状態で載置されている。従っ
て、左下は白く、右上は相対的に黒く表示されている。
【0032】図3は、図2の測定像を作成するために測
定データを用いて、図中右下の方向から光を照射した場
合の光と影の状態と、その時の視点が真上ではなく、や
や右下側に傾いた視点から見た場合の見え方とを演算
し、陰影処理をして立体表示したものである。右下から
光を照射した場合であるので、窪み部分の左側斜面が白
く光って見え、右側斜面の部分が黒く影になっている。
また載置した試料が左上から右下に向かって傾斜してい
る様子が分かる。さらには、図2では分かりづらかった
が、窪みの上側の部分に、僅かに凸部分(盛り上がり)
があることが、図3では十分に認識できる。それ以外に
も、左端に非常に小さな突起があること、窪みの斜面部
分の微妙な形状についても、図2では全く認識できない
が、図3では認識することができる。従来のAFMは、
以上述べたような、測定データを元にソフトウェア的に
処理して3次元表示する機能を一般的に備えている。そ
のような機能は、試料の表面形状を認識するのに非常に
有効である。
【0033】本実施形態では、前述の通り、信号処理装
置22内に偏差信号像作成処理部22bを備える。偏差
信号像作成処理部22bは偏差信号Δsを入力し、この
偏差信号Δsと、XY走査回路21の走査駆動信号と用
いて、表示装置23の画面に表示する。偏差信号像作成
処理部22bでは、各測定点における偏差信号Δsの値
の大小に応じて白黒の濃淡を対応づけ、偏差信号像を表
示するためのデータを作成する。偏差信号像を作成する
処理は、制御信号s2を用いて行っていた従来の測定像
作成処理と実質的に同様であり、特別に複雑な演算を必
要とするようなものではない。従って、従来の制御信号
s2に基づく測定像と同様、走査しながらリアルタイム
に制御系で生じる偏差信号Δsに基づく測定像を作成
し、表示することができる。
【0034】前述の説明では、説明の便宜上、制御信号
s2を利用する測定像作成処理部22aと偏差信号Δs
を利用する偏差信号像作成処理部22bとを別の処理手
段として説明したが、処理の内容は同じであるので、測
定像作成処理部22aに偏差信号を入力できるように構
成して、測定像作成処理部22aに、偏差信号像作成処
理の機能を持たせるように構成することもできる。
【0035】図4は、前述の或る試料を本実施形態のA
FMにより測定し、信号処理装置22の偏差信号像作成
処理部22bによって、各測定点における偏差信号Δs
の値の大小に応じて白黒の濃淡を対応づけて偏差信号像
を作成し、当該像を表示装置23の画面に表示したもの
である。走査範囲内の最も偏差信号の大きい点に白を、
最も偏差信号の小さい点に黒を対応づけ、その間を高さ
に応じた階調をつけて表示している。この場合にも、偏
差信号像は、図2で示した測定像と同様にリアルタイム
で表示される。特に、このような偏差信号像が作成・表
示できる場合は、比較的高速に走査し、そのために制御
回路20等からなる制御系が追従できず、制御偏差(偏
差信号Δs)が生じている場合である。
【0036】偏差信号Δsを利用して作られる測定像に
は、次のような特徴がある。窪み形状の底面および窪み
以外の部分は平坦であるので、制御は追従でき、従って
偏差信号Δsはほぼ0である。また、窪みの左側斜面の
部分は、高さの変化が急激であるため制御が追従でき
ず、制御偏差が生じており、右側斜面の部分でも同様に
制御偏差が生じているが、偏差信号Δsの符号は左側斜
面のときと反対になる。何故ならば、左側斜面を走査し
ているとき(この場合、左から右に走査している)は高
さが急激に減少するが、右側斜面では高さが急激に増加
するからである。従って、図4では、左側斜面の部分が
白く、右側斜面の部分が黒く、制御偏差がほぼ0になる
平坦部では、白と黒の中間の階調になっている。このよ
うな表示は、あたかも右側から光を照射した場合の光と
影の状態を演算して表示しているように見えるはずであ
る。実際のところ、図4は図3における立体表示と非常
に近い表示になっている。また、図2では分かりづらか
った窪みの上側の部分の僅かな凸部分(盛り上がり)
や、左側の小さな突起も、図3と同様に、図4でもはっ
きりと認識できる。さらに、試料の傾斜成分について
は、走査範囲全体に渡るゆるやかな高さ変化であるた
め、制御が追従でき、従って図4では傾斜成分はキャン
セルされている。
【0037】なお本実施形態では、制御信号s2に基づ
く測定像と、偏差信号Δsに基づく測定像(偏差信号
像)を、同時にリアルタイムに表示する場合を示してい
るが、どちらか一方のみを選択的に表示できるようにす
るのは容易である。
【0038】
【発明の効果】以上の説明で明らかなように本発明によ
れば、SPMの測定において制御系で生じる偏差信号を
利用し、例えば偏差信号の大小を色情報に対応させて像
を作成し、表示するようにしたため、高速な走査を行っ
て試料表面の凹凸情報を得ることができる。特に、本来
の制御が追従できず、制御偏差が生じるような高速な走
査の場合に、試料表面の情報を得ることができるという
効果がある。偏差信号を利用して作成される測定像は、
試料表面の形状に対応した像を、あたかも3次元表示し
たような形状を認識しやすい像として、特別な演算をす
ることなく、リアルタイムに表示することができる。従
って、比較的大きな走査範囲で素早く観察を行い、目的
とする観察場所を見つけることが容易になる。また試料
を載置したときの傾斜部分も特別な処理をすることなく
キャンセルすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による走査型プローブ顕微鏡の実施形態
を示す構成図である。
【図2】 本発明の走査型プローブ顕微鏡で制御信号を
用いて得られた測定像の一例を示す、ディスプレー上に
表示した中間調画像の写真である。
【図3】 図2に示した測定像のデータを利用して傾斜
を有する3次元立体像をソフト的に作成し、ディスプレ
ー上に表示した中間調画像の写真である。
【図4】 本発明の走査型プローブ顕微鏡で偏差信号を
用いて得られた測定像の一例を示す、ディスプレー上に
表示した中間調画像の写真である。
【図5】従来の走査型プローブ顕微鏡の一例を示す構成
図である。
【符号の説明】
11 試料 12 トライポッド 13 試料台 15 探針 16 カンチレバー 17 レーザ光源 18 光検出器 22 信号処理装置 22a 測定像作成処理部 22b 偏差信号像作成処理部 23 表示装置
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) G01N 13/10 - 13/24 G12B 21/00 - 21/24 G01B 21/30 H01J 37/28 JICSTファイル(JOIS)

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 試料に対向する探針と、前記試料と前記
    探針の間の距離を変化させる変位手段と、前記試料の表
    面に対して前記探針を相対的に移動させる走査手段と、
    前記探針と前記試料の間に生じる物理量に起因して前記
    探針に生じる変化量を検出する検出手段と、前記変化量
    と基準設定値の差を求め偏差信号を出力する演算手段
    と、前記偏差信号を入力し、当該偏差信号が適切条件を
    満たすように前記変位手段の動作を制御する制御手段
    と、前記走査手段と前記制御手段の各々から出力される
    信号を信号処理し表示手段の画面に測定像を表示する信
    号処理手段を備えた走査型プローブ顕微鏡において、 前記偏差信号と前記走査手段から出力される信号とを用
    いて測定像を作成し、この測定像を前記表示手段の画面
    に表示する偏差信号像作成手段を備えたことを特徴とす
    る走査型プローブ顕微鏡。
  2. 【請求項2】 前記偏差信号の値の大小を色情報に対応
    させて前記測定像を作成し、表示したことを特徴とする
    請求項1記載の走査型プローブ顕微鏡。
  3. 【請求項3】 前記走査手段は、前記制御手段による制
    御が追従不可状態となり、前記偏差信号が生じるような
    高速な走査速度で走査を行うことを特徴とする請求項1
    または2記載の走査型プローブ顕微鏡。
JP02329897A 1997-01-22 1997-01-22 走査型プローブ顕微鏡 Expired - Fee Related JP3360792B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP02329897A JP3360792B2 (ja) 1997-01-22 1997-01-22 走査型プローブ顕微鏡

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP02329897A JP3360792B2 (ja) 1997-01-22 1997-01-22 走査型プローブ顕微鏡

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPH10206440A JPH10206440A (ja) 1998-08-07
JP3360792B2 true JP3360792B2 (ja) 2002-12-24

Family

ID=12106702

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP02329897A Expired - Fee Related JP3360792B2 (ja) 1997-01-22 1997-01-22 走査型プローブ顕微鏡

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP3360792B2 (ja)

Families Citing this family (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2008275538A (ja) * 2007-05-02 2008-11-13 Olympus Corp 三次元形状測定器及び試料画像構築装置

Also Published As

Publication number Publication date
JPH10206440A (ja) 1998-08-07

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP4174357B2 (ja) 走査型プローブ顕微鏡
US5524479A (en) Detecting system for scanning microscopes
US20070220958A1 (en) Optical detection alignment/tracking method and apparatus
JPH04233404A (ja) 原子間力顕微鏡
KR20060097601A (ko) 주사형 프로브 현미경
WO2006098123A1 (ja) 走査型プローブ顕微鏡とその測定方法
EP0843175B1 (en) Scanning probe microscope and signal processing apparatus
JP6135820B2 (ja) 走査型プローブ顕微鏡
JP3360792B2 (ja) 走査型プローブ顕微鏡
JPH08233836A (ja) 走査型プローブ顕微鏡、並びにその高さ方向較正用基準器および較正方法
TW202111665A (zh) 圖案高度資訊修正系統及圖案高度資訊的修正方法
JP2002031589A (ja) 走査型プローブ顕微鏡
CN110082566B (zh) 扫描探针显微镜
WO2005098869A1 (en) Scanning probe microscope with integrated calibration
WO2017221423A1 (ja) 走査型プローブ顕微鏡用データ処理装置
JPH09166607A (ja) 走査型プローブ顕微鏡およびその測定方法
JP3560095B2 (ja) 走査型プローブ顕微鏡
JP2003014611A (ja) 走査型プローブ顕微鏡
JP5226837B2 (ja) 走査型プローブ顕微鏡用の光学式変位検出機構のスポット光の位置合わせ方法
JP3377918B2 (ja) 走査型プローブ顕微鏡
JP7281841B2 (ja) 走査プローブ顕微鏡
JPH08285865A (ja) 走査型プローブ顕微鏡
JP2003215017A (ja) 走査プローブ顕微鏡
JPH11326347A (ja) 走査型プローブ顕微鏡
US20210316986A1 (en) Scanning probe microscope and method for measuring physical quantity using scanning probe microscope

Legal Events

Date Code Title Description
FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20071018

Year of fee payment: 5

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20081018

Year of fee payment: 6

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20091018

Year of fee payment: 7

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20091018

Year of fee payment: 7

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20101018

Year of fee payment: 8

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20101018

Year of fee payment: 8

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20111018

Year of fee payment: 9

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20111018

Year of fee payment: 9

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20121018

Year of fee payment: 10

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees