JP3357087B2 - 光彩防止透明体 - Google Patents

光彩防止透明体

Info

Publication number
JP3357087B2
JP3357087B2 JP10162892A JP10162892A JP3357087B2 JP 3357087 B2 JP3357087 B2 JP 3357087B2 JP 10162892 A JP10162892 A JP 10162892A JP 10162892 A JP10162892 A JP 10162892A JP 3357087 B2 JP3357087 B2 JP 3357087B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
transparent
film
thin film
transparent thin
substrate
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP10162892A
Other languages
English (en)
Other versions
JPH05116992A (ja
Inventor
卓司 尾山
安彦 赤尾
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
AGC Inc
Original Assignee
Asahi Glass Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Asahi Glass Co Ltd filed Critical Asahi Glass Co Ltd
Priority to JP10162892A priority Critical patent/JP3357087B2/ja
Publication of JPH05116992A publication Critical patent/JPH05116992A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP3357087B2 publication Critical patent/JP3357087B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は光彩防止透明体に関す
る。
【0002】
【従来の技術】従来より、ガラス表面に透明導電膜を形
成し、表示用の電極や、低放射ガラス(Low−Emi
ssivity Glass)として用いることが行な
われている。例えば、イオンプレーティング法によりイ
ンジウム・スズ酸化物(ITO)膜が形成されたガラス
基板は液晶等の表示素子の透明電極として多く用いられ
ている。またスプレー法によりフッ素ドープ酸化スズ
(SnO 2 :F)膜が形成されたガラス基板は、住宅用
の低放射ガラスとして用いられている。また、最近透明
導電膜の新たな用途として、建築用の電磁遮蔽ガラス
自動車用の電熱風防窓、民生用の太陽電池用透明導電基
板などが考えられるようになってきた。これらはいずれ
も大面積ガラス基板が要求される用途である。
【0003】ところ、透明導電膜を構成する材料に
は、ITO、SnO 2 :F、アルミニウムドープ酸化亜
鉛(ZnO:Al)等があるが、これらの透明酸化物材
料はいずれも屈折率が1.6〜2.3とガラスに比べて
大きいため、干渉条件を満たす波長での反射率が大きく
。即ち、これらの透明酸化物をガラス基板上にある
程度以上の膜厚に形成した場合、分光反射(透過)スペ
クトルに極大極小の波(リップル)が現われる。このた
め、大面積のガラス基板にこれらの薄膜を形成した場
合、面内の膜厚変動(ムラ)により反射(透過)極大の
波長がずれ、反射(透過)色の光彩、即ち色ムラ(ir
idescence)となって目に感知される。
【0004】ガラス面上での膜厚分布は、膜の形成手法
にもよるが例えば1m×1mのガラスを考えた場合、蒸
着やCVD(Chemical vapor depo
sition)では±5%以内に抑えることは極めて
である。我々の研究によれば、この程度の膜厚分布を
仮定すると、前記の透明薄膜が約0.15μm以上の
何学的膜厚でガラス基板上に形成された場合、面内の色
ムラが問題となるレベルに達する。一方、膜厚を厚く
と、反射(透過)色の彩度が減少しはじめる。約0.
6μm以上の厚みで彩度は減少する。色ムラとして認識
されないためには3μm以上、好ましくは5μm以上の
膜厚が必要である。
【0005】また、たとえ、膜厚分布を極めて均一に
できたとしても、分光スペクトルにおける大きなリッ
プルは残るので、3μm以下の膜厚では鮮やかな色彩と
して目に感知されることになる。また、大面積ガラスに
形成されると、ガラス面と視線のなす角(視角)によ
り、極大反射(透過)波長がずれ、色彩が変化するため
やはり色ムラとして感知されることになる。したがって
分光スペクトルにおけるリップル自体を小さく抑えるこ
とが望ましいのである。
【0006】幾何学的膜厚が0.15μmよりも薄い場
合には、±5%の膜厚分布を仮定すると膜厚分布の変化
量が±75Å程度となるので膜厚変動による面内の色ム
ラはほとんど感知されないが、視角による色ムラはやは
り問題となる。
【0007】このように透明薄膜をガラス基板上へある
程度以上厚く形成する場合、面内の膜厚変動や視角の変
化により、ガラスに色ムラが観測され、商品性を著しく
損なう場合がある。
【0008】これを防止するためにこれまでにいくつか
の提案がなされている。例えば、透明薄膜とガラス基板
との間に屈折率n=1.7〜1.8の透明層を可視光の
1/4波長に相当する光学厚み形成する方法が知ら
れている(特公昭63−39535号参照)。また、透
明薄膜とガラス基板との間に、屈折率n=1.6〜1.
で可視光の1/4波長に相当する光学厚みの透明層
屈折率n=1.8〜1.9で可視光の1/4波長に
相当する光学厚みの透明層をガラス基板側からこの順
順次形成する方法も知られている。
【0009】また、透明薄膜とガラス基板との間にn=
1.7〜1.8の層を形成する現実的な手段としてSi
x y 膜を形成する法が知られている(特開平1−
201046号参照)。これは板ガラスの製造工程とし
てフロート法を想定し、溶融スズ窯中でシランと不飽和
炭化水素化合物と二酸化炭素の混合ガスをガラス表面に
当てるもので、基本的には常圧CVDにより中間屈折率
透明膜を形成する方法である。
【0010】いずれの場合も透明薄膜の下地となる透明
層の膜厚は、可視光の1/4波長に相当する光学膜厚
以上が必要である。このため、いずれの場合も形成手段
は、常圧CVDである。常圧CVDによる成膜は大量の
ガラスを製造プロセス中に連続で(いわゆるオンライン
で)処理する場合に、特にコストの点で非常に有効であ
るが、多品種少量生産や多層成膜には不向きという欠点
がある。
【0011】このため、現在の建築用や自動車用の熱線
反射ガラスはスパッタリング方式による製造方式をとる
場合が多い。また、表示用の透明導電基板の場合も品質
の点から真空プロセスをとるのが普通である。真空プロ
セスによる利点は、高品質、多品種少量生産や多層成膜
が容易、膜厚の制御性に優れるなどが挙げられるが、大
面積基板への均一コーティングを考えた場合、インライ
ンのスパッタリング方式が最も優れているといえる。ま
た、蒸着やプラズマCVDなど他の真空プロセスとの組
み合わせが装置設計上容易という利点もある。このた
め、前記のような下地層は、スパッタリング方式により
形成されることが望ましい。
【0012】一方、スパッタリング法の欠点は成膜速度
が遅いことである。中でも酸化物被膜を金属ターゲット
からの反応性スパッタリングにより形成する際の成膜速
度が著しく遅い。我々は、安定で耐久性に優れかつ成膜
速度の速い中間屈折率透明材料を見い出し、これを上記
の下地層として用いること(特開平3−164449
号)や、下地層を低高屈折率の2層に分割すること(特
願平2−275240号)を提案しているが、それでも
なお、生産タクト上問題なしとはえなかった。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、前述の問題
点を解決し、真空プロセス、特にスパッタリング法によ
り、従来よりも短時間で形成できる、色ムラの防止され
大面積透明導電性積層体として好適な)光彩防止透
明体を新規に提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】即ち、本発明は、透明基
体上に屈折率が1.6以上で幾何学的膜厚が0.15μ
m以上の透明薄膜が形成され、該透明薄膜と透明基体と
の界面に下地層が形成された光彩防止透明体であって、
該下地層は消衰係数k≧0.01である吸収性の膜であ
る光彩防止透明体を提供する。
【0015】また、本発明は、透明基体上に屈折率が
1.6以上で幾何学的膜厚が0.15μm以上の透明薄
膜が形成され、該透明薄膜上に上地層が形成された光彩
防止透明体であって、該上地層は消衰係数k≧0.01
である吸収性の膜である光彩防止透明体を提供する。
【0016】本発明における透明基体としては、各種ガ
ラス基板、プラスチックフィルムやプラスチック基板等
使用でき、その屈折率が1.4〜1.6であることが
望ましい。ガラスやプラスチックの代表的な屈折率とし
ては1.51が挙げられる。
【0017】本発明における透明薄膜は、屈折率が1.
6以上、特に好ましくは1.8〜2.3で、幾何学的
厚が0.15μm以上の透明な薄膜である。本発明にお
いて「透明な膜」とは、消衰係数kが、光学計算の際k
を無視できる程度の小さな値(k≒0)である膜をい
い、k<0.01の膜であることが好ましい。膜の材料
は特に限定されないが、代表的なものとしては、IT
O、SnO 2 :F、ZnO:Al等の透明導電性の材料
や、ZnO等の導電性のないものが挙げられる。上記し
た透明薄膜は、建築用ヒートミラー、電磁遮蔽ガラス、
自動車用電熱風防ガラス、紫外線カットガラス等
きる。
【0018】そもそも光彩、即ち色ムラの発現する原因
は透明基板上に該基板より充分大きな屈折率、具体的に
は1.6以上、特に1.8以上の屈折率を有する透明薄
膜が形成された場合の該透明薄膜の上下界面における光
の干渉作用である。このため分光スペクトル中に反射
(透過)率の極大極小(リップル)を生じる。ここで、
該透明薄膜の膜厚が変化すると、この極大極小の位置
(波長)が変化し色調の変化となって観測される。視
が変化した場合も同様に、分光スペクトル中の極大極小
の位置(波長)の変化が色調の変化となって観測され
る。
【0019】透明薄膜の干渉作用による反射率は、振幅
反射率rについては、
【0020】
【数1】
【0021】と表される。ここでr A は空気/透明薄膜
界面のフレネル係数、r B は透明薄膜/基板界面のフレ
ネル係数、δは透明薄膜層内での位相差で、
【0022】
【数2】
【0023】と表される。ここで、nは透明薄膜の屈折
率、dは透明薄膜の膜厚、θは透明薄膜内の光の進行方
向と基板面の法線とのなす角、λは真空中での光の波
長、である。通常測定される反射率Rはエネルギー反射
率であり、それは振幅反射率rの絶対値の2乗である。
ここで|r A r B |<<1が成立する場合には数1の分母を
1と近似して、
【0024】 R=|r | 2 |r A +r B exp (−iδ)| 2 =|r A | 2 +|r B | 2 +2|r A ||r B |cos δ
【0025】と書ける。これは、膜厚変動による(即ち
δの変化による)リップルの大きさが4|r A ||r B |で
あることを示している。つまり、リップルの大きさは透
明薄膜の上下界面におけるフレネル係数の積に比例す
る。したがって上下どちらかの界面におけるフレネル係
数をゼロにすることができればリップルは消失する。
面のフレネル係数をゼロにすることはこの界面による
防止することにほかならない。
【0026】今、透明基板上に透明薄膜が形成されてい
るとすると、この上下界面による反射防止するための
最も単純な方法は単層の反射防止膜を形成することであ
り、これは、界面を形成している2種類の材料(下界面
の場合は透明基板と透明薄膜、上界面の場合は透明薄膜
と空気)の屈折率の積の平方根の屈折率(中間屈折率)
を有する透明材料を、反射防止したい波長の1/4の光
学的厚み(λ/4)に形成することにより達成される。
これが前記した従来技術における光彩防止透明体に用い
られている下地層の意味である。
【0027】本発明者らは既にこのλ/4の光学膜厚の
中間屈折率の代わりに低/高・屈折率の透明2層膜と
することにより、全体の膜厚を薄くすることを提案して
いる(前記特願平2−275240号)。この提案によ
り、大面積の均一性に優れるスパッタリング法によりこ
れらの透明膜を形成するのに要する時間を半分程度に短
縮することが可能になった。本発明では、この反射防止
層として吸収膜を用いることにより、成膜に要する時間
を更に大幅に短縮することを狙ったものである。本発明
において「吸収膜」とは、消衰係数kが0でない膜、
ち、光学計算の際無視できない程度の消衰係数kを有す
る膜を指す。好ましくはk≧0.01、より好ましくは
k≧0.1、特に好ましくはk≧0.2の膜である
【0028】本発明で用いられる吸収性下地層として
は、図5を例にして説明すると、該下地層により、可視
光線領域の設計波長λにおいて透明基体30/下地層3
2/透明薄膜31の複合界面(透明基体と下地層との界
面、および下地層と透明薄膜との界面)における透明薄
膜31側からの入射光の合成反射フレネル係数の絶対値
が、下地層32を挿入しない場合の透明基体30/透明
薄膜31の界面における透明薄膜31側からの入射光
反射フレネル係数の絶対値より小さくなるように、下地
層32の屈折率n、消衰係数k、膜厚dが選択されてい
ることが好ましい。これを式で表現すると、いま問題に
している波長λにおける吸収性下地層32の屈折率を
n、消衰係数をk、膜厚をdとして、透明基体30の屈
折率をn s 、透明薄膜31の屈折率をn f としたとき次
のようになる。
【0029】
【数3】
【0030】ここで、
【0031】
【数4】
【0032】
【数5】
【0033】
【数6】
【0034】である。
【0035】つまり、数3を満たすように吸収性下地層
32のn、k、dを選ぶことが好ましい。このためには
実際に吸収性下地層のn、kを測定し、数3を満たす膜
厚を計算して、その膜厚の吸収性下地層を形成すればよ
い。また、こうして形成された吸収性下地層が数3を満
たしているかどうかは吸収性下地層32を挿入した試料
と挿入しない試料を作成し、両方の試料の透明薄膜31
側の分光反射率を測定し、両方のリップルの大きさを比
較してみれば一目瞭然である。即ち、数3が満たされて
いる場合には、吸収性下地層32を挿入した試料の方が
リップルが小さくなる。
【0036】ところで、リップルは、設計波長λ付近で
最も小さくなり、λかられるほど顕著にれる。設計
波長λは可視光線領域(3600Å〜8300Å)内の
波長であるが、人間の目は5500Å(グリーン)〜6
000Å(赤)に対して最も敏感なので、λはこの範囲
内にするのが好ましい。
【0037】ここで数3を満たす(n、k、d)の範囲
はかなり広範囲に亘るが、本発明者は鋭意研究した結
果、吸収性下地層32の(n、k)の望ましい値として
は、図1に示した、曲線A−直線H−直線I−曲線F−
直線Gで囲まれた領域の内部(境界線を含む)、特に望
ましい値としては、図2に示した、曲線A′−直線H−
曲線F′−直線Gで囲まれた領域の内部(境界線を含
む)であることを見出した。これは、下地層の(n、
k)がこの範囲にあれば適当な膜厚dを選ぶことによっ
て、数3の左辺の値が充分小さく、反射防止効果=リッ
プル抑制効果を大きくすることができるためである。逆
に、(n、k)がこの範囲にないとどんな膜厚dを選ん
でも、数3の左辺の値を充分に小さくることは難し
い。
【0038】数3の左辺を|r|、右辺を|r 0 |とす
ると、図1および図2の曲線CおよびDは、|r|≒0
となるような下地層の(n、k)の値を示す。
【0039】また、図1の曲線A、B、EおよびFは、
|r|=0.5|r 0 |となるような値を示し、また、
図2の曲線A′、B′、E′およびF′は、|r|=
0.2|r 0 |となるような値を示す。なお、曲線E、
Fのk<1の部分は、曲線E、Fのk≧1の部分(|r
|=0.5|r 0 |)の延長線であり、実用的な膜厚を
考慮して定めたものである。また、曲線E′、F′のk
<1の部分は、曲線E′、F′のk≧1の部分(|r|
=0.2|r 0 |)の延長線であり、実用的な膜厚を考
慮して定めたものである
【0040】ここでの|r|は、透明基体(n s =1.
515)/下地層(n、k)/透明薄膜の複合界面にお
ける透明薄膜側の合成反射フレネル係数の絶対値(いず
れもλ(設計波長)=5500Åとしたときの値)であ
る。図1の曲線A、C、Eおよび図2の曲線A′、C、
E′は、透明薄膜の屈折率n f =1.6の場合を示し
図1の曲線B、D、Fおよび図2の曲線B′、D、F′
は、透明薄膜の屈折率n f =2.3の場合を示してい
る。したがって、λ=5500Åにおいて、透明基体の
屈折率n s が1.515の場合には、曲線Aの右下、か
つ、曲線Fの左上の領域に下地層の(n、k)が含まれ
ることが好ましい。
【0041】また、k≧0.2(直線G)としているの
は吸収性下地層の膜厚が薄くてすむようにとの考慮の結
果である。即ち、k<0.2であると、膜が透明に近づ
いていき、下地層としての機能を果たすための膜厚が大
きくなる。また、k>6.0(直線H)およびn>9.
0(直線I)では、反対に下地層としての機能を果たす
ための膜厚が小さくなりすぎ、そのような膜を実際に形
成するのが困難となる。
【0042】したがって、λ=5500Å、透明基体の
屈折率n f が1.515の場合には、下地層の(n、
k)の値は、図1の曲線A−直線H−直線I−曲線F−
直線Gで囲まれた領域の内部(境界線を含む)であるこ
とが好ましく、さらに、図2の曲線A′−直線H−曲線
F′−直線Gで囲まれた領域の内部(境界線を含む)で
あることが好ましい。
【0043】図14および図15は、数3の左辺を|r
|としたとき、λ=6328Åにおける|r|≒0とな
るような下地層の(n、k)の値を示すグラフである。
図14は、透明基体の屈折率n s が1.4の場合、図1
5は、透明基体の屈折率n s が1.6の場合である。曲
線は、透明薄膜の屈折率n f が0.1ずつ異なる場合、
それぞれに対する(n、k)の値を示しており、図14
の左上の曲線Uはn f =1.6の場合、図15の左上の
曲線Wはn f が1.6よりごくわずかに大きい場合、図
14および図15の曲線VおよびYはn f =2.3の場
合である。
【0044】図14および図15から、透明基体の屈折
率n s や透明薄膜の屈折率n f が各々、n s =1.4〜
1.6、n f =1.6〜2.3の範囲で変化しても下地
層として好ましい(n、k)の値はあまり変化しないこ
とがわかる。したがって、図1および図2の(n、k)
の値も、透明基体の屈折率n s や透明薄膜の屈折率n f
が変ってもあまり変化しない。
【0045】また、以上の吸収性下地層の膜厚は、吸収
性下地層のn、kの値をもとに数3を満たすように選択
されるが、具体的には10〜500Åの間にあることが
リップル抑制効果および生産性の点から望ましい。
【0046】発明で用いられる吸収性下地層の材料と
しては金属単体、窒化物、炭化物、またはこれらの金
属、窒化物、炭化物の複合体が挙げられ、チタン、クロ
ム、ジルコニウムのうち一種以上の金属、前記一種以
の金属の窒化物、前記一種以上の金属の炭化物、また
はこれらの複合体を主成分とする単層膜がリップル抑制
効果と経済性の点から望ましい。なかでもチタンの窒化
物は耐久性に優れており、この点で実用上好ましい。こ
の場合チタン窒化物の膜厚はリップル抑制の観点から2
0〜200Åであることが好ましい。
【0047】以上のような下地層を形成することによ
り、透明薄膜に、透明基体の反対側から入射し、透明基
体の反対側に出射していく光に関して、透明薄膜の上下
界面における干渉によって生ずるリップルを低減で
る。本発明においては、透明薄膜に関して透明基体の反
対側から測定した、光彩防止透明体の分光反射率曲線の
リップル率の可視光線領域における最小値が±30%以
下であることが好ましい。
【0048】以上、本発明の下地層を吸収膜の単層構成
とした場合について述べたが、該下地層は複数の層から
構成されていてもよい。この場合、本発明の条件を示す
数3〜数6はより複雑な形となるが、該複数層からなる
下地層を全て考慮した結果の合成の反射フレネル係数を
考えれば、全く同様の議論が成立する。特に条件を満た
すか否かの、分光反射率による実際的な判定の方法は単
層膜の場合と全く同様に適用できる。
【0049】一方、上地層の場合にも、下地層と全く同
様の議論が成立する。即ち、図6を例にして説明する
と、該上地層により、可視光線領域の設計波長λにおい
て、透明薄膜41/上地層43/空気、の複合界面にお
ける透明薄膜41側の合成反射フレネル係数の絶対値が
上地層43を形成しない場合の透明薄膜41/空気界面
における透明薄膜41側の反射フレネル係数の絶対値よ
り小さくなるように、上地層43の屈折率n、消衰係数
k、膜厚dが選択されていることが好ましい
【0050】これを式で表現すると、いま問題にしてい
る波長λにおける吸収性上地層43の屈折率をn、消衰
係数をk、膜厚をd、空気の屈折率を1.0、透明薄膜
41の屈折率をn f としたとき次のようになる。
【0051】
【数7】
【0052】ここで、
【0053】
【数8】
【0054】
【数9】
【0055】
【数10】
【0056】である。
【0057】つまり、数7を満たすように吸収性上地層
43のn、k、dを選ぶことが必要となる。このために
は実際に吸収性上地層43のn、kを測定し、数7を満
たす膜厚を計算してその膜厚の吸収性上地層を形成すれ
ばよい。また、こうして形成された吸収性上地層43が
数7を満たしているかどうかは吸収性上地層43を形成
した試料と上地層43のない試料を作成し、両方の試料
の透明薄膜41側の分光反射率を測定し、両者のリップ
ルの大きさを比較してみれば一目瞭然である。即ち、数
7が満たされている場合には、吸収性上地層43を形成
した試料の方がリップルが小さくなる。
【0058】ここで数7を満たす(n、k、d)の範囲
はかなり広範囲に亘るが、我々は鋭意研究した結果
収性上地層43の(n、k)の望ましい値としては、図
3に示した、曲線J−直線S−直線T−曲線Q−直線R
で囲まれた領域の内部(境界線を含む)、特に望ましい
値としては、図4に示した、曲線J′−直線S−曲線
Q′−直線Rで囲まれた領域の内部(境界線を含む)で
あることを見出した。上地層の(n、k)がこの範囲に
あれば適当な膜厚dを選ぶことによって、数7の左辺の
値が充分に小さく反射防止効果=リップル抑制効果を大
くでる。逆に(n、k)がこの範囲にないとどんな
膜厚dを選んでも、数7の左辺の値を充分に小さくする
ことは難しい。
【0059】数7の左辺を|r|、右辺を|r 0 |とす
ると、図2の曲線JおよびKは、|r|≒0となるよう
な上地層の(n、k)の値を示す。
【0060】また、図3の曲線J、K、PおよびQは、
|r|=0.5|r 0 |となるような値を示し、また、
図4の曲線J′、K′、P′およびQ′は、|r|=
0.2|r 0 |となるような値を示す。なお、曲線P、
Qのk<1の部分は、曲線P、Qのk≧1の部分(|r
|=0.5|r 0 |)の延長線であり、実用的な膜厚を
考慮して定めたものである。また、曲線P′、Q′のk
<1の部分は、曲線P′、Q′のk≧1の部分(|r|
=0.2|r 0 |)の延長線であり、実用的な膜厚を考
慮して定めたものである
【0061】ここでの|r|は、透明薄膜/上地層
(n、k)/空気の複合界面における透明薄膜側の合成
反射フレネル係数の絶対値(いずれもλ(設計波長)=
5500Åとしたときの値)である。図3の曲線J、
L、Pおよび図4のJ′、L、P′は、透明薄膜の屈折
率n f =1.6の場合を示し、図3の曲線K、M、Q
び図4のK′、M、Q′は、透明薄膜の屈折率n f
2.3の場合を示している。したがって、λ=5500
Åにおいて、曲線Jの右下、かつ、曲線Qの左上の領域
に上地層の(n、k)が含まれることが好ましい。
【0062】また、k≧0.2(直線R)としているの
は吸収性上地層の膜厚が薄くてすむようにとの考慮の結
果であり、直線Sおよび直線Tについても、吸収性下地
層の場合と同様である。
【0063】したがって、λ=5500Åにおいて、上
地層の(n、k)の値は、図3の曲線J−直線S−直線
T−曲線Q−直線Rで囲まれた領域の内部(境界線を含
む)であることが好ましく、さらに、図4の曲線J′−
直線S−曲線Q′−直線Rで囲まれた領域の内部(境界
線を含む)であることが好ましい。
【0064】上述の吸収性上地層の膜厚は、吸収性上地
層のn、kの値をもとに数7を満たすように選択される
が、具体的には20〜500Åの間にあることがリップ
ル抑制効果および生産性の点から望ましい。
【0065】発明で用いられる上地層の材料としては
金属単体、窒化物、炭化物、またはこれらの複合体が挙
げられ、チタン、クロム、ジルコニウムのうち一種
の金属、前記一種以上の金属の窒化物、前記一種以上
の金属の炭化物またはこれらの複合体を主成分とする単
層膜がリップル抑制効果と経済性の点から望ましい。な
かでもチタンの窒化物は耐久性に優れており、この点で
実用上好ましい。この場合チタン窒化物の膜厚はリップ
ル抑制の観点から80〜300Åであることが好まし
い。
【0066】以上のような上地層を形成することによ
り、透明薄膜に、透明基体側から入射し、透明基体側に
出射していく光に関して、透明薄膜の上下界面における
干渉によって生ずるリップルを低減できる。本発明にお
いては、透明薄膜に関して透明基体側から測定した、光
彩防止透明体の分光反射率曲線のリップル率の可視光線
領域における最小値が±30%以下であることが好まし
い。
【0067】以上、本発明の上地層を吸収膜の単層構成
とした場合について述べたが、該上地層が複数の層から
構成されていてもよいのは先に下地層について述べのと
同様である。
【0068】また、上記上地層の上に第2の透明基体を
積層して、第1の透明基体/透明薄膜/上地層/第2の
透明基体、という構造の光彩防止透明体を形成すること
もできる。この場合、可視光線領域の設計波長におい
て、透明薄膜/上地層/第2の透明基体の複合界面にお
ける透明薄膜側の合成反射フレネル係数の絶対値が、該
上地層が形成されない場合の透明薄膜/第2の透明基体
の界面における透明薄膜側の反射フレネル係数の絶対値
より小さい値となることが好ましい
【0069】このような上地層を形成することにより、
透明薄膜に、第1の透明基体側から入射し、第1の透明
基体側に出射していく光に関して、透明薄膜の上下界面
における干渉によって生ずるリップルを低減できる。
地層の膜厚は10〜500Åであることが好ましい。
発明においては、透明薄膜に関して第1の透明基体側か
ら測定した、光彩防止透明体の分光反射率曲線のリップ
ル率の可視光線領域における最小値が±30%以下であ
ることが好ましい。第2の透明基体としては、第1の透
明基体と同様のものが使用できる。
【0070】一例として、図8のように、透明基体(ガ
ラス基板)60/下地層62/透明薄膜61/上地層6
3、という構成の薄膜が形成されている側を内側にし
て、ポリビニルブチラール(PVB)等からなるプラス
チック中間膜64を介してもう1枚のガラス基板60と
積層した合わせガラスとして、本発明の光彩防止透明体
を構成することもできる。この場合、中間膜64とガラ
ス基板の屈折率が同じであれば、上地層63は、上述
の、透明基体と透明薄膜との間の下地層と同様の条件を
満たす必要がある。
【0071】即ち、可視光線領域の設計波長λにおい
て、透明薄膜61/上地層6/中間膜(第2の透明
体)64の複合界面における透明薄膜側61側の合成反
射フレネル係数の絶対値が、上地層6が形成されてい
ない場合の透明薄膜61/中間膜64の界面における透
明薄膜61側の反射フレネル係数の絶対値より小さい値
であるのが好ましい。
【0072】透明膜(非吸収性の膜)による反射防止と
大きく異なる点は、吸収膜の場合、片側からの反射率は
反対側からの反射率と異なることである。このため、透
明膜による反射防止層を上地層または下地層として形成
した場合には、透明基板側の反射と空気側の反射の両方
におけるリップルを同時に抑制できるのに対し、吸収膜
を用いた場合には例えば本発明による下地層を形成した
場合、空気側の反射リップルは抑制されるが、透明基板
側の反射リップルはかえって増大することが起こり得
る。逆に本発明による上地層を形成した場合には、透明
基板側の反射リップルは抑制されるが、空気側の反射リ
ップルはかえって増大することが起こり得る。
【0073】したがって本発明を用い、かつ、両側から
の反射リップルをともに抑制したい場合には、本発明に
よる下地層52と上地層53をともに形成して、透明基
体50/下地層52/透明薄膜51/上地層53という
図7のような構成や、図8のような構成とすることが大
いに有効となる。この場合、可視光線領域の設計波長に
おいて、透明基体/下地層/透明薄膜の複合界面(透明
基体と下地層との界面、および下地層と透明薄膜との界
面)における透明薄膜側からの入射光の合成反射フレネ
ル係数の絶対値が、該下地層が形成されない場合の透明
基体/透明薄膜の界面における透明薄膜側からの入射光
の反射フレネル係数の絶対値より小さい値であり、か
つ、可視光線領域の設計波長において、透明薄膜/上地
層/空気の複合界面(透明薄膜と上地層との界面、およ
び上地層と空気との界面)における透明薄膜側からの入
射光の合成反射フレネル係数の絶対値が、該上地層が形
成されない場合の透明薄膜/空気の界面における透明薄
膜側からの入射光の反射フレネル係数の絶対値より小さ
い値であることが好ましい。 また、下地層および上地層
はともにチタンの窒化物からなる膜であることが好まし
い。また、下地層の膜厚は20〜200Åで、かつ、上
地層の膜厚が80〜300Åであることが好ましい。ま
た、透明薄膜はITOを主成分とする膜であることが好
ましい。 本発明においては、透明薄膜に関して下地層側
から測定した、光彩防止透明体の分光反射率曲線のリッ
プル率の可視光線領域における最小値、および透明薄膜
に関して上地層側から測定した、光彩防止透明体の分光
反射率曲線のリップル率の可視光線領域における最小値
が、各々±30%以下であることが好ましい。
【0074】本発明の光彩防止透明体においては、上述
のような下地層や上地層を形成することにより、分光反
射率のリップルが小さくなり、色むらが低減される。色
ムラ低減の程度は、次のような分光反射率のリップル率
を尺度として用いることが好ましい。
【0075】光反射率曲線において、各極大同志をな
めらかに結んだ包絡線(曲線Aとする)および各極小同
志をなめらかに結んだ包絡線(曲線Bとする)の、ある
波長における曲線Aの値をa、その波長における曲線B
の値をbとすると、 リップルR i =a−b(%) リップル率R r =((a−b)/(a+b))×100(%) により、その波長におけるリップルR i とリップル率R
r を定義する。
【0076】リップル率」は、反射率の大きさに対す
るリップルの影響を考慮した値であるので、実際に人間
の目に感知される色むらの程度を表すことができる。
【0077】本発明においては、下地層や上地層が形成
されることにより下地層や上地層が形成されない場合と
比べ、リップル率が小さくなっている。本発明の光彩防
止透明体の色ムラ低減の程度としては、可視光線領域の
全波長におけるリップル率の最小値が、±30%以下、
特に±10%以下であることが望ましい。リップル率の
最小値が±30%を超えていると、色ムラがかなり目立
ってくる。
【0078】特に、透明薄膜について透明基体側から測
定した、本発明の光彩防止透明体の分光反射率と、透明
薄膜について透明基体とは反対側から測定した、本発明
の光彩防止透明体の分光反射率の各々について、可視光
線領域のリップル率の最小値が±30%以下であること
が望ましい。
【0079】
【実施例】実施例1 ガラス基板(屈折率1.51)を真空槽内にセットし、
1×10 -5 Torrまで排気した後、ArとN 2 の混合
ガスを導入し、3×10 -3 Torrの圧力中でチタンの
ターゲットをDC(直流)スパッタリングしてチタンの
窒化物の膜をガラス基板上に300Å形成した。この膜
の光学定数を求めたところ、6328Åの波長でn=
1.98、k=1.53であった。これらのnとkの値
から、次に形成する光彩防止透明体の下地層の厚さを8
0Åとすることにした。
【0080】次に別のガラス基板30を真空槽内にセッ
トし、同様の手順でチタンの窒化物からなる下地層32
を80Å形成した。この上にイオンプレーティングによ
りITOからなる透明薄膜31を1.0μm形成した。
これをサンプル1とした(図5の構成)。このサンプル
の膜面側の分光反射率曲線を図9の71に示した。
【0081】実施例2〜6 実施例1と同様にして下地層と透明薄膜の組合わせを表
1の通りとした(表1には実施例1も合わせて示す)。
【0082】
【表1】
【0083】実施例7 実施例1と同様のガラス基板40を真空槽内にセット
し、イオンプレーティングにより、ITOからなる透明
薄膜41を1μm形成した。この上にDCスパッタリン
グにより、チタンの窒化物からなる上地層43を150
Å形成した(図6の構成)。これをサンプル2とした。
このサンプルのガラス面側の分光反射率曲線を図10の
82に示した。
【0084】実施例8〜12 実施例7と同様にして上地層と透明薄膜の組合わせを表
2の通りとした(表2には実施例7も合わせて示す)。
【0085】
【表2】
【0086】実施例13 実施例1と同様のガラス基板50上に、実施例1と同様
にして、チタンの窒化物からなる下地層52(約80
Å)、およびITOからなる透明薄膜51(1.0μ
m)を形成し、その上に、チタンの窒化物からなる上地
層53を150Å形成した(図7の構成)。これをサン
プル3とした。このサンプルの膜面側およびガラス面側
の分光反射率曲線を図11の91(膜面側)および92
(ガラス面側)に示した。
【0087】実施例14〜16 実施例13と同様にして下地層と上地層の組合わせを表
3の通りとした(表3には実施例13も合わせて示
す)。このとき透明薄膜はイオンプレーティングによる
ITO膜でその厚みは1.0μmであった。
【0088】
【表3】
【0089】実施例17 実施例1と同様にして、ガラス基板60上に、チタン窒
化物からなる下地層62、およびITOからなる透明薄
膜61を形成し、その上に、DCスパッタリングにより
チタンの窒化物からなる上地層63を80Å形成し、こ
れをPVBの中間膜64(屈折率1.51)を介しても
う1枚のガラス基板60と接着し、合わせガラスとした
(図8の構成)。これをサンプル4とした。このサンプ
ルの両面側の分光反射率曲線を図12の101(側面
側)および102(ガラス面側)に示した。
【0090】比較例1 ガラス基板を真空槽内にセットし、1×10 -5 Torr
まで排気した後、イオンプレーティングによりITO膜
を1μm形成した。このサンプルの膜面側の分光反射率
曲線を図13の111に示した。ガラス面側については
図示していないが、可視域ではほとんど膜面側と変わら
ない分光反射率曲線であった。
【0091】比較例2 ガラス基板を真空槽内にセットし、1×10 -5 Torr
まで排気した後、Zr:Si=1:2の合金ターゲット
を用いArと酸素の混合雰囲気の3×10 -3 Torrの
圧力中でDCスパッタリングにより、ZrSi x y
膜を900Å形成した。この膜の屈折率は1.74であ
った。この上にイオンプレーティングによりITO薄膜
を8000Å形成した。
【0092】比較例3 ガラス基板を真空槽内にセットし、1×10 -5 Torr
まで排気した後、Arと酸素の混合ガスを導入し、3×
10 -3 Torrの圧力中でチタンのターゲットをDCス
パッタリングしてTiO 2 の膜を120Å形成した。次
いで同じくArと酸素の混合ガス中でZr:Si=1:
9の合金ターゲットを用い、DCスパッタリングにより
ZrSi x y の膜を400Å形成した。この上にイオ
ンプレーティングによりITOの膜を8000Å形成し
た。
【0093】図9〜13の分光反射曲線を比べると、単
にガラス基板上に透明薄膜を形成した場合(比較例1、
図11の111)に比べ、本発明による下地層を形成し
た場合の膜面側の分光反射曲線(実施例1、図9の7
1)、本発明による上地層を形成した場合のガラス面側
の分光反射曲線(実施例7、図10の82)、本発明に
よる上地層と下地層をともに形成した場合の膜面およ
ガラス面側の分光反射曲線(実施例13、図11の91
および92)、本発明による下地層および上地層を上下
に形成した合わせガラスの場合の膜面およびガラス面側
の分光反射曲線(実施例17、図12の101および1
02)のいずれにおいても可視域におけるリップルがか
なり小さいことがわかる。
【0094】可視域におけるリップルの最小値およびリ
ップル率の最小値をまとめたのが表4である。表4にお
いて「膜面側」とは、透明薄膜に関してガラス基板とは
反対側から測定した値、「ガラス面側」とは、透明薄膜
に関してガラス基板側から測定した値である。
【0095】
【表4】
【0096】実施例1〜17について、合成反射フレネ
ル係数の絶対値(λ=6328Åにおける計算値)を一
例として表5に示す。また、比較例について、反射フレ
ネル係数の絶対値(λ=6328Åにおける計算値)を
表6に示す。また、表5、表6の計算のために使用し
た、各種材料の屈折率n、消衰係数kの値(λ=632
8Åにおける測定値)を表7に示す。
【0097】
【表5】
【0098】
【表6】
【0099】
【表7】
【0100】全ての実施例にわたり、分光反射率のリッ
プルは比較例1に比べかなり小さいことがわかる。
【0101】比較例2、3はリップルを抑制する層とし
透明膜(非吸収膜)を形成した場合であり、この場合
にはリップルは両側面ともに小さくなっているが、形成
すべき下地層の膜厚が本発明に比べ5倍が10倍大きい
ことがわかる。これは実用上の大きな障害となりうる。
これに対し本発明では下地層または上地層の膜厚が小さ
くてい上に一般に形成速度を透明膜よりも速くできる
ので、形成に要する時間は膜厚の比以上に短でき、
たがって生産性に優れている。
【0102】
【発明の効果】以上、実施例からも明らかなように、本
発明は透明基板に高屈折率の透明薄膜をある程度以上の
厚みに形成した場合に、分光反射スペクトルに発現する
リップルを抑制する効果がある。特に本発明による下地
層を形成した場合には、膜面側(透明基体と反対側)の
分光反射スペクトルにおけるリップルを抑制する効果が
あり、本発明による上地層を形成した場合には透明基体
側の分光反射スペクトルにおけるリップルを抑制する効
果がある。
【0103】また、特に本発明による下地層と上地層を
ともに形成することにより、透明基体側と、反対側の各
々の分光反射スペクトルにおけるリップルをともに抑制
する効果が得られる。本発明によれば、高屈折率透明
薄膜の膜厚ムラや視角変化による色ムラ(光彩)を防止
する効果が得られる。特に大面積のガラス基板に本発明
が適用された場合に顕著な効果を有する。
【0104】また、本発明においては、リップル抑制
する層として吸収膜を用いているため、全体としてのガ
ラス基板を用いた積層体の透過率が下がるので、ビルな
どに施工された場合、窓を通して室内に侵入する太陽エ
ネルギーを抑制し、冷房負荷を軽減する効果もある。ま
た、反射率を高くすることができるので、建造物の外観
の意匠性を高めることもできる。
【0105】また、本発明の大きな効果の一つは、先に
我々が提案した無光彩ガラス(前記特開平3−1644
49号および特願平2−275240号)に比べリップ
ル抑制層を吸収膜として、膜厚を薄くできるために、実
用上大きな問題であるところの生産に要する時間が大巾
に短縮できるということである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明における下地層の屈折率nおよび消衰係
数kの好ましい範囲を示すグラフ。
【図2】本発明における下地層の屈折率nおよび消衰係
数kのさらに好ましい範囲を示すグラフ。
【図3】本発明における上地層の屈折率nおよび消衰係
数kの好ましい範囲を示すグラフ。
【図4】本発明における上地層の屈折率nおよび消衰係
数kのさらに好ましい範囲を示すグラフ。
【図5】本発明の実施例の模式的断面図。
【図6】本発明の実施例の模式的断面図。
【図7】本発明の実施例の模式的断面図。
【図8】本発明の実施例の模式的断面図。
【図9】実施例1のサンプル1の分光反射曲線を示すグ
ラフ。
【図10】実施例7のサンプル2の分光反射曲線を示す
グラフ。
【図11】実施例13のサンプル3の分光反射曲線を示
すグラフ。
【図12】実施例17のサンプル4の分光反射曲線を示
すグラフ。
【図13】比較例1のサンプルの分光反射曲線を示すグ
ラフ。
【図14】本発明における下地層の屈折率nおよび消衰
係数kの例を示すグラフ。
【図15】本発明における下地層の屈折率nおよび消衰
係数kの例を示すグラフ。
【符号の説明】
30、40、50、60:透明基体(ガラス基板) 31、41、51、61:透明薄膜 32、52、62 :下地層 43、53、63 :上地層

Claims (8)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】透明基体上に屈折率が1.6以上で幾何学
    的膜厚が0.15μm以上の透明薄膜が形成され、該透
    明薄膜と透明基体との界面に下地層が形成された光彩防
    止透明体であって、該下地層は消衰係数k≧0.01で
    ある吸収性の膜である光彩防止透明体。
  2. 【請求項2】該下地層の幾何学的膜厚が10〜500Å
    である請求項1に記載の光彩防止透明体。
  3. 【請求項3】透明基体上に屈折率が1.6以上で幾何学
    的膜厚が0.15μm以上の透明薄膜が形成され、該透
    明薄膜上に上地層が形成された光彩防止透明体であっ
    て、該上地層は消衰係数k≧0.01である吸収性の膜
    である光彩防止透明体。
  4. 【請求項4】該上地層の幾何学的膜厚が20〜500Å
    である請求項3に記載の光彩防止透明体。
  5. 【請求項5】第1の透明基体上に屈折率が1.6以上で
    幾何学的膜厚が0.15μm以上の透明薄膜が形成さ
    れ、該透明薄膜上に上地層、および該上地層上に第2の
    透明基体が積層された光彩防止透明体であって、該上地
    層は消衰係数k≧0.01である吸収性の膜である光彩
    防止透明体。
  6. 【請求項6】第1の透明基体がガラス基板であり、第2
    の透明基体がプラスチック中間膜であって、該プラスチ
    ック中間膜の透明薄膜とは反対側に、もう1枚のガラス
    基板が積層され、合わせガラス構造とされている請求項
    5に記載の光彩防止透明体。
  7. 【請求項7】透明基体上に屈折率が1.6以上で幾何学
    的膜厚が0.15μm以上の透明薄膜が形成され、該透
    明薄膜と透明基体との界面に下地層が形成され、該透明
    薄膜上に上地層が形成された光彩防止透明体であって、
    該下地層および該上地層は、それぞれ消衰係数k≧0.
    01である吸収性の膜である光彩防止透明体。
  8. 【請求項8】該下地層の幾何学的膜厚が20〜200Å
    であり、かつ、該上地層の幾何学的膜厚が80〜300
    Åである請求項7に記載の光彩防止透明体。
JP10162892A 1991-04-04 1992-03-27 光彩防止透明体 Expired - Fee Related JP3357087B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP10162892A JP3357087B2 (ja) 1991-04-04 1992-03-27 光彩防止透明体

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP9963491 1991-04-04
JP3-99634 1991-04-04
JP10162892A JP3357087B2 (ja) 1991-04-04 1992-03-27 光彩防止透明体

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPH05116992A JPH05116992A (ja) 1993-05-14
JP3357087B2 true JP3357087B2 (ja) 2002-12-16

Family

ID=26440744

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP10162892A Expired - Fee Related JP3357087B2 (ja) 1991-04-04 1992-03-27 光彩防止透明体

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP3357087B2 (ja)

Families Citing this family (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2022163546A1 (ja) * 2021-01-27 2022-08-04 Agc株式会社 光学薄膜積層体及びその製造方法

Also Published As

Publication number Publication date
JPH05116992A (ja) 1993-05-14

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US5772862A (en) Film comprising silicon dioxide as the main component and method for its productiion
US6165598A (en) Color suppressed anti-reflective glass
JP3902676B2 (ja) 日光及び/又は赤外線に作用する薄い皮膜の積層を備えた透明な基材
JP4739470B2 (ja) 薄層積重体を備えた基材を含むグレージング集成体
KR101739563B1 (ko) 증가된 흡광도 또는 색조를 제공하는 태양광 제어 코팅
EP0548972B1 (en) A transparent film-coated substrate
US6602541B1 (en) Method of preparing vaporized antimony precursors
JP6950103B2 (ja) Ir反射層(複数可)及び酸窒化ケイ素ジルコニウム層(複数可)を有するコーティングされた物品並びにその作製方法
US20130070340A1 (en) Antireflective coating and substrates coated therewith
JPH05193994A (ja) 虹色防止透明嵌込み窓ガラス物品
JPH05502310A (ja) 酸化ニオブを含むdc反応性スパッタリングされた光学被覆
JPH05193995A (ja) 傾斜屈折率を有する虹色防止被覆透明嵌込み窓ガラス物品
JP2000233947A (ja) 薄膜の積層体を具備した透明基材
WO2023116878A1 (zh) 一种镀膜玻璃及夹层玻璃
JP7470133B2 (ja) 高い可視光反射率及び無彩色を有する物品
TW200306287A (en) Reflective, solar control coated glass article
JP2002529356A (ja) ソーラーコントロールコーティング及び被覆物品
JPH05254887A (ja) 透明な積層基板、その使用方法および積層方法、基材への積層方法および装置、ならびに酸化窒化ハフニウム
JP2001523632A (ja) 太陽光制御窓ガラス
JPS63206333A (ja) 単板熱線反射ガラス
JPH0522657B2 (ja)
JP2917456B2 (ja) 無光彩ガラス
US5298312A (en) Non-iridescent transparent product
JPH04154647A (ja) 透明導電性積層体
JPH08304601A (ja) 高視感透過率、低ソーラーファクター及び反射における中性外観を有する被覆基体

Legal Events

Date Code Title Description
LAPS Cancellation because of no payment of annual fees