JPH05116992A - 光彩防止透明体 - Google Patents

光彩防止透明体

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JPH05116992A
JPH05116992A JP4101628A JP10162892A JPH05116992A JP H05116992 A JPH05116992 A JP H05116992A JP 4101628 A JP4101628 A JP 4101628A JP 10162892 A JP10162892 A JP 10162892A JP H05116992 A JPH05116992 A JP H05116992A
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Takuji Oyama
卓司 尾山
Yasuhiko Akao
安彦 赤尾
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Abstract

(57)【要約】 【目的】短時間で形成できる、色ムラの防止された大面
積透明積層体を提供する。 【構成】透明基体上50上に屈折率が1.6以上、膜厚
0.15μm以上の透明薄膜51が形成され、透明基体
50と透明薄膜51の界面に吸収性の下地層52、かつ
/または、透明薄膜51上に吸収性の上地層53を形成
する。例えば、ガラス基板/TiN(下地層)/ITO
(透明薄膜)/TiN(上地層)とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は光彩防止透明体に関する
ものである。
【0002】
【従来の技術】従来より、ガラス表面に透明導電膜を形
成し、表示用の電極や、低放射ガラス(Low-Emissivity
Glass)として用いることが行なわれている。例えば、
イオンプレーティング法によりガラス基板上に形成され
たインジウム・スズ酸化物(ITO)は液晶等の表示素
子の透明電極として多く用いられている。またスプレー
法によりガラス基板上に形成されたフッ素ドープ酸化ス
ズ(SnO2 :F)膜は、住宅用の低放射ガラスとして
用いられている。また、最近透明導電膜の新たな用途と
して、建築用の電磁遮蔽ガラスや自動車用の電熱風防
窓、民生用の太陽電池用透明導電基板などが考えられる
ようになってきた。これらはいずれも大面積ガラス基板
が要求される用途である。
【0003】ところが、透明導電膜を構成する材料に
は、ITO,SnO2 :F,やアルミニウムドープ酸化
亜鉛(ZnO:Al)等があるが、これらの透明酸化物
材料はいずれも屈折率が1.6〜2.3とガラスに比べ
て大きいため、干渉条件を満たす波長での反射率が大き
くなってしまう。即ち、これらの透明酸化物をガラス基
板上にある程度以上の膜厚に形成した場合、分光反射
(透過)スペクトルに極大極小の波(リップル)が現わ
れるのである。このため、大面積のガラス基板にこれら
の薄膜を形成した場合、面内の膜厚変動(ムラ)により
反射(透過)極大の波長がずれ、反射(透過)色の光
彩、即ち色ムラ(iridescence) となって目に感知される
ことになる。
【0004】ガラス面上での膜厚分布は、膜の形成手法
にもよるが例えば1m×1mのガラスを考えた場合、蒸
着やCVD(Chemical vapor deposition )では±5%
以内に抑えることは極めて高度な技術要するのが現状で
ある。我々の研究によれば、この程度の膜厚分布を仮定
すると、前記の透明薄膜が約0.15μm以上ガラス基
板上に形成された場合、面内の色ムラが問題となるレベ
ルに達する。一方、膜厚を厚くしてゆくと、反射(透
過)色の彩度が減少しはじめる。約0.6μm以上の厚
みで鮮やかさは減少してゆくが、色ムラとして判別され
るレベルを超えるためには3μm以上、好ましくは5μ
m以上の膜厚が必要である。
【0005】また、たとえ、膜厚分布を極めて均一にコ
ントロールすることができたとしても、分光スペクトル
における大きなリップルは残るので、3μm以下の膜厚
では鮮やかな色彩として目に感知されることになる。こ
れが大面積ガラスに形成されると、ガラス面と視線のな
す角(視角)により、極大反射(透過)波長がずれ、色
彩が変化するためやはり色ムラとして感知されることに
なる。従って分光スペクトルにおけるリップル自体を小
さく抑えることが望ましいのである。
【0006】膜厚が0.15μmよりも薄い場合には、
±5%の膜厚分布を仮定すると膜厚分布の変化量が±7
5Å程度となるので膜厚変動による面内の色ムラはほと
んど感知されないが、視角による色ムラはやはり問題と
なる。
【0007】このように透明薄膜をガラス基板上へある
程度以上厚く形成する場合、面内の膜厚変動や視角の変
化により、ガラスに色ムラが観測され、商品性を著しく
損なう場合がある。
【0008】これを防止するためにこれまでにいくつか
の提案がなされている。例えば、透明薄膜とガラス基板
との間に屈折率n=1.7〜1.8の透明層を1/4 波
長に相当する厚みに形成する方法が知られている(特公
昭63−39535号参照)。また、透明薄膜とガラス
基板との間にn=1.6〜1.7の 1/4 波長に相当す
る厚みの透明層とn=1.8〜1.9の1/4 波長に相
当する厚みの透明層をガラス基板側からこの順に連続し
て形成する方法も知られている。
【0009】また、透明薄膜とガラス基板との間にn=
1.7〜1.8の層を形成する現実的な手段としてSi
Cx Oy 膜を形成する手法が知られている(特開平1−
201046号参照)。これは板ガラスの製造工程とし
てフロート法を想定し、溶融スズ窯中でシランと不飽和
炭化水素化合物と二酸化炭素の混合ガスをガラス表面に
当てるというもので、基本的には常圧CVDにより中間
屈折率透明膜を形成する方法である。
【0010】いずれの場合も透明薄膜の下地となる透明
層の膜厚は、可視光の1/4 波長に相当する膜厚が最低
でも必要である。このため、いずれの場合も形成手段
は、常圧CVDである。常圧CVDによる成膜は大量の
ガラスを製造プロセス中に連続で(いわゆるオンライン
で)処理する場合に、特にコストの点で非常に有力な手
法であると言われている。しかし、一方で、多品種少量
生産や多層成膜には不向きという欠点がある。
【0011】このため、現在の建築用や自動車用の熱線
反射ガラスはスパッタリング方式による製造方式をとる
場合が多い。また、表示用の透明導電基板の場合も品質
の点から真空プロセスをとるのが普通である。真空プロ
セスによる利点は、高品質、多品種少量生産や多層成膜
が容易、膜厚の制御性に優れるなどが挙げられるが、大
面積基板への均一コーティングを考えた場合、インライ
ンのスパッタリング方式が最も優れているといえる。ま
た、蒸着やプラズマCVDなど他の真空プロセスとの組
み合わせが装置設計上容易という利点もある。このた
め、前記のような下地層は、スパッタリング方式により
形成できることが望ましいのである。
【0012】一方、スパッタリング法の欠点は、成膜速
度が遅いことで、スパッタリングの成膜速度を向上させ
るための研究が盛んに行なわれているのが現状である。
中でも酸化物被膜を金属ターゲットからの反応性スパッ
タリングにより形成する際の成膜速度が著しく遅いのが
この方式の最大の欠点である。我々は、別に安定で耐久
性に優れかつ成膜速度の速い中間屈折率透明材料を見い
出し、これを上記の下地層として用いること(特開平3
−164449号)や、下地層を低高屈折率の2層に分
割すること(特願平2−275240号)を提案してい
るが、それでもなお、生産タクト上問題なしとはなしえ
なかった。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、前述の問題
点を解決し、真空プロセス、特にスパッタリング法によ
り、従来よりも短時間で形成できる、色ムラの防止され
た大面積透明導電性積層体を新規に提供することを目的
とするものである。
【0014】
【課題を解決するための手段】即ち、本発明は、透明基
体上に屈折率が1.6以上で、膜厚0.15μm以上の
透明薄膜が形成され、該透明薄膜と透明基体との界面に
下地層が形成された光彩防止透明体であって、該下地層
は消衰係数kが0でない吸収性の膜であることを特徴と
する光彩防止透明体を提供するものである。
【0015】また、本発明は、透明基体上に屈折率が
1.6以上で膜厚0.15μm以上の透明薄膜が形成さ
れ、該透明薄膜上に上地層が形成された光彩防止透明体
であって、該上地層は消衰係数kが0でない吸収性の膜
であることを特徴とする光彩防止透明体を提供するもの
である。
【0016】本発明における透明基体としては、各種ガ
ラス基板、プラスチックフィルムやプラスチック基板等
を用いることができ、その屈折率が1.4〜1.6であ
ることが望ましく、特にガラスやプラスチックの代表的
な屈折率としては1.51が挙げられる。
【0017】本発明の透明薄膜は、屈折率が1.6以
上、特に好ましくは1.8〜2.3で、膜厚が0.15
μm以上の透明な薄膜である。本発明において「透明な
膜」とは、消衰係数kが、光学計算の際kを無視できる
程度の小さな値(k≒0)である膜をいう。具体的には
k<0.01の膜をいう。膜の材料は特に限定されない
が、代表的なものとしては、ITO,SnO2 :F,Z
nO:Al等の透明導電性の材料や、ZnO等の導電性
のないものが挙げられる。これらは、建築用ヒートミラ
ー、電磁遮蔽ガラス、自動車用電熱風防ガラス、紫外線
カットガラス等として利用することができる。
【0018】そもそも光彩、即ち色ムラの発現する原因
は透明基板上に該基板より充分大きな屈折率、具体的に
は1.6以上、特に1.8以上の屈折率を有する透明薄
膜が形成された場合の該高屈折率透明薄膜の上下界面に
おける光の干渉作用である。このため分光スペクトル中
に反射(透過)率の極大極小(リップル)を生じる。こ
こで、該高屈折率透明薄膜の膜厚が変化すると、この極
大極小の位置(波長)が変化し色調の変化となって観測
されるのである。あるいは視角が変化した場合も同様
に、分光スペクトル中の極大極小の位置(波長)の変化
が色調の変化となって観測される。
【0019】透明薄膜の干渉作用による反射率は、振幅
反射率rについては、
【0020】
【数1】
【0021】と表される。ここでrA は空気/透明薄膜
界面のフレネル係数、rB は透明薄膜/基板界面のフレ
ネル係数、δは透明薄膜層内での位相差で、
【0022】
【数2】
【0023】と表される。ここで、nは透明薄膜の屈折
率、dは透明薄膜の膜厚、θは透明薄膜内の光の進行方
向と基板面の法線とのなす角、λは真空中での光の波
長、である。測定にかかる反射率Rはエネルギー反射率
であり、それは振幅反射率rの絶対値の2乗である。こ
こで|rA rB|<<1が成立する場合には分母を1と近似
して、
【0024】 R=|r |2〜|rA+rB exp (−iδ)|2 =|rA|2+|rB |2 +2|rA||rB|cosδ
【0025】と書ける。これは、膜厚変動による(即ち
δの変化による)リップルの大きさが4|rA||rB|で
あることを示している。つまり、リップルの大きさは透
明薄膜の上下界面におけるフレネル係数の積に比例する
のである。従って上下どちらかの界面におけるフレネル
係数をゼロにすることができればリップルは消失するこ
とになる。界面のフレネル係数をゼロにすることはこの
界面を反射防止することにほかならない。
【0026】今、透明基板上に透明薄膜が形成されてい
るとすると、この上下界面を反射防止するための最も単
純な方法は単層の反射防止膜を形成することであり、こ
れは、界面を形成している2種類の材料(下界面の場合
は透明基板と透明薄膜、上界面の場合は透明薄膜と空
気)の屈折率の積の平方根の屈折率を有する透明材料
を、反射防止したい波長の 1/4 の光学的厚みに形成す
ることにより達成される。これが前記した従来技術にお
ける光彩防止透明体に用いられている下地層の意味であ
る。
【0027】本発明者らは既にこの中間屈折率の 1/4
λ層の代わりに低/高・屈折率の透明2層膜とすること
により、全体の膜厚を薄くすることを提案している(特
願平2−275240号)。この提案により、大面積の
均一性に優れるスパッタ法によりこれらの透明膜を形成
するのに要する時間を半分程度に短縮することが可能に
なった。本発明では、この反射防止層として吸収膜を用
いることにより、成膜に要する時間を更に大幅に短縮す
ることを狙ったものである。本発明において「吸収膜」
とは、消衰係数kが0でない膜、光学計算の際無視でき
ない程度の消衰係数kを有する膜を指す。具体的にはk
≧0.01、より好ましくはk≧0.1、特に好ましく
はk≧0.2の膜をいう。
【0028】本発明で用いられる吸収性下地層として
は、図5を例にして説明すると、該下地層により、可視
光線領域の設計波長λにおいて透明基体30/下地層3
2/透明薄膜31の複合界面における透明薄膜31側の
合成反射フレネル係数の絶対値が、下地層32を挿入し
ない場合の透明基体30/透明薄膜31の界面における
透明薄膜31側の反射フレネル係数の絶対値より小さく
なるように、下地層32の屈折率n、消衰係数k、膜厚
dが選択されていなければならない。これを式で表現す
ると、いま問題にしている波長λにおける吸収性下地層
32の屈折率をn、消衰係数をk、膜厚をdとして、透
明基体30の屈折率をns 、透明薄膜31の屈折率をn
f としたとき次のようになる。
【0029】
【数3】
【0030】ここで、
【0031】
【数4】
【0032】
【数5】
【0033】
【数6】
【0034】である。
【0035】つまり、数3を満たすように吸収性下地層
32のn,k,dを選ぶことが必要となる。このために
は実際に吸収性下地層のn,kを測定し、数3を満たす
膜厚を計算して、その膜厚の吸収性下地層を形成すれば
よい。また、こうして形成された吸収性下地層が数3を
満たしているかどうかは吸収性下地層32を挿入した試
料と挿入しない試料を作成し、両方の試料の透明薄膜3
1側の分光反射率を測定し、両方のリップルの大きさを
比較してみれば一目瞭然である。即ち、数3が満たされ
ている場合には、吸収性下地層32を挿入した試料の方
がリップルが小さくなる。
【0036】ところで、リップルは、設計波長λ付近で
最も小さくなり、λからはなれるほど顕著に表われる。
設計波長λは可視光線領域(3600Å〜8300Å)内の波長
であるが、人間の目は5500Å(グリーン)〜6000Å
(赤)に対して最も敏感なので、λはこの範囲内にする
のが好ましい。
【0037】ここで数3を満たす(n,k,d)の範囲
はかなり広範囲に亘るが、本発明者は鋭意研究した結
果、吸収性下地層32の(n,k)の望ましい値として
は、図1に示した、曲線A−直線H−直線I−曲線F−
直線Gで囲まれた領域の内部(境界線を含む)、特に望
ましい値としては、図2に示した、曲線A′−直線H−
曲線F′−直線Gで囲まれた領域の内部(境界線を含
む)であることが望ましいことを見出した。これは、下
地層の(n,k)がこの範囲にあれば適当な膜厚dを選
ぶことによって、数3の左辺の値が充分小さく、反射防
止効果=リップル抑制効果を大きくすることができるた
めである。逆に、(n,k)がこの範囲にないとどんな
膜厚dを選んでも、数3の左辺の値を充分に小さくして
やることは難しい。
【0038】数3の左辺を|r|、右辺を|r0 |とす
ると、図1及び図2の曲線C及びDは、|r|≒0とな
るような下地層の(n,k)の値を示す。
【0039】また、図1の曲線A,B,E及びFは、|
r|=0.5|r0 |となるような値を示し、また、図
2の曲線A′,B′,E′及びF′は、|r|=0.2
|r0 |となるような値を示す。(ただし、曲線E,F
のk<1の部分は、曲線E,Fのk≧1の部分(|r|
=0.5|r0 |)の延長線であり、実用的な膜厚を考
慮して定めたものである。また、曲線E′,F′のk<
1の部分は、曲線E′,F′のk≧1の部分(|r|=
0.2|r0|)の延長線であり、実用的な膜厚を考慮
して定めたものである。)
【0040】ここでの|r|は、透明基体(ns =1.
515)/下地層(n,k)/透明薄膜の複合界面にお
ける透明薄膜側の合成反射フレネル係数の絶対値(いず
れもλ(設計波長)=5500Åとしたときの値)である。
図1の曲線A,C,E及び図2の曲線A′,C,E′
は、透明薄膜の屈折率nf=1.6の場合であり、図1
の曲線B,D,F及び図2の曲線B′,D,F′は、透
明薄膜の屈折率nf =2.3の場合を示している。従っ
て、λ=5500Åにおいて、透明基体の屈折率nsが1.
515の場合には、曲線Aの右下、かつ、曲線Fの左上
の領域に下地層の(n,k)が含まれることが好まし
い。
【0041】また、k≧0.2(直線G)としているの
は吸収性下地層の膜厚が薄くてすむようにとの考慮の結
果である。即ち、k<0.2であると、膜が透明に近づ
いていき、下地層としての機能を果たすための膜厚が大
きくなってしまう。また、k>6.0(直線H)及びn
>9.0(直線I)では、反対に下地層としての機能を
果たすための膜厚が小さくなりすぎ、そのような膜を実
際に形成するのが困難となる。
【0042】従って、λ=5500Å、透明基体の屈折率n
f が1.515の場合には、下地層の(n,k)の値
は、図1の曲線A−直線H−直線I−曲線F−直線Gで
囲まれた領域の内部(境界線を含む)であることが好ま
しく、さらに、図2の曲線A′−直線H−曲線F′−直
線Gで囲まれた領域の内部(境界線を含む)であること
が好ましい。
【0043】図14及び図15は、数3の左辺を|r|
としたとき、λ=6328Åにおける|r|≒0となるよう
な下地層の(n,k)の値を示すグラフである。図14
は、透明基体の屈折率ns が1.4の場合、図15は、
透明基体の屈折率ns が1.6の場合である。曲線は、
透明薄膜の屈折率nf が0.1ずつ異なる場合、それぞ
れに対する(n,k)の値を示しており、図14の左上
の曲線Uはnf =1.6の場合、図15の左上の曲線W
はnf が1.6よりごくわずかに大きい場合、図14及
び図15の曲線V及びYはnf =2.3の場合である。
【0044】図14及び図15から、透明基体の屈折率
ns や透明薄膜の屈折率nf が各々、ns =1.4〜
1.6、nf =1.6〜2.3の範囲で変化しても下地
層として好ましい(n,k)の値はあまり変化しないこ
とがわかる。従って、図1及び図2の(n,k)の値
も、透明基体の屈折率ns や透明薄膜の屈折率nf が変
ってもあまり変化しない。
【0045】また、以上の吸収性下地層の膜厚は、吸収
性下地層のn,kの値をもとに数3を満たすように選択
されるが、具体的には10〜500Åの間にあることが
リップル抑制効果及び生産性の点から望ましい。
【0046】更に、本発明で用いられる吸収性下地層の
材料としては金属単体、窒化物、炭化物、またはこれら
の金属、窒化物、炭化物の複合体が挙げられ、好ましく
は、チタン、クロム、ジルコニウムのうち少なくとも一
種の金属単体、またはこれらの金属の窒化物、炭化物、
またはこれらの複合体を主成分とする単層膜がリップル
抑制効果と経済性の点から望ましい。なかでもチタンの
窒化物は耐久性に優れており、この点で実用上好まし
い。この場合チタン窒化物の膜厚はリップル抑制の観点
から20〜200Åであることが好ましい。
【0047】以上のような下地層を形成することによ
り、透明薄膜に、透明基体の反対側から入射し、透明基
体の反対側に出射していく光に関して、透明薄膜の上下
界面における干渉によって生ずるリップルを低減するこ
とができる。
【0048】以上、本発明の下地層を吸収膜の単層構成
とした場合について述べたが、該下地層は複数の層から
構成されていてもよい。この場合、本発明の条件を示す
数3〜数6はより複雑な形となるが、該複数層からなる
下地層を全て考慮した結果の合成の反射フレネル係数を
考えれば、全く同様の議論が成立する。特に条件を満た
すか否かの、分光反射率による実際的な判定の方法は単
層膜の場合と全く同様に適用することができる。
【0049】一方、上地層の場合にも、下地層と全く同
様の議論が成立する。即ち、図6を例にして説明する
と、該上地層により、可視光線領域の設計波長λにおい
て、透明薄膜41/上地層43/空気、の複合界面にお
ける透明薄膜41側の合成反射フレネル係数の絶対値が
上地層43を形成しない場合の透明薄膜41/空気界面
における透明薄膜41側の反射フレネル係数の絶対値よ
り小さくなるように、上地層43の屈折率n、消衰係数
k、膜厚dが選択されていなければならない。
【0050】これを式で表現すると、いま問題にしてい
る波長λにおける吸収性上地層43の屈折率をn、消衰
係数をk、膜厚をd、空気の屈折率を1.0、透明薄膜
41の屈折率をnf としたとき次のようになる。
【0051】
【数7】
【0052】ここで、
【0053】
【数8】
【0054】
【数9】
【0055】
【数10】
【0056】である。
【0057】つまり、数7を満たすように吸収性上地層
43のn,k,dを選ぶことが必要となる。このために
は実際に吸収性上地層43のn,kを測定し、数7を満
たす膜厚を計算してその膜厚の吸収性上地層を形成すれ
ばよい。また、こうして形成された吸収性上地層43が
数7を満たしているかどうかは吸収性上地層43を形成
した試料と上地層43のない試料を作成し、両方の試料
の透明薄膜41側の分光反射率を測定し、両者のリップ
ルの大きさを比較してみれば一目瞭然である。即ち、数
7が満たされている場合には、吸収性上地層43を形成
した試料の方がリップルが小さくなる。
【0058】ここで数7を満たす(n,k,d)の範囲
はかなり広範囲に亘るが、我々は鋭意研究した結果吸収
性上地層43の(n,k)の望ましい値としては、図3
に示した、曲線J−直線S−直線T−曲線Q−直線Rで
囲まれた領域の内部(境界線を含む)、特に望ましい値
としては、図4に示した、曲線J′−直線S−曲線Q′
−直線Rで囲まれた領域の内部(境界線を含む)である
ことが望ましいことを見出した。これは上地層の(n,
k)がこの範囲にあれば適当な膜厚dを選ぶことによっ
て、数7の左辺の値が充分に小さく反射防止効果=リッ
プル抑制効果を大きくすることができるためである。逆
に(n,k)がこの範囲にないとどんな膜厚dを選んで
も、数7の左辺の値を充分に小さくすることは難しい。
【0059】数7の左辺を|r|、右辺を|r0 |とす
ると、図2の曲線J及びKは、|r|≒0となるような
上地層の(n,k)の値を示す。
【0060】また、図3の曲線J,K,P及びQは、|
r|=0.5|r0 |となるような値を示し、また、図
4の曲線J′,K′,P′及びQ′は、|r|=0.2
|r0 |となるような値を示す。(ただし、曲線P,Q
のk<1の部分は、曲線P,Qのk≧1の部分(|r|
=0.5|r0 |)の延長線であり、実用的な膜厚を考
慮して定めたものである。また、曲線P′,Q′のk<
1の部分は、曲線P′,Q′のk≧1の部分(|r|=
0.2|r0|)の延長線であり、実用的な膜厚を考慮
して定めたものである。)
【0061】ここでの|r|は、透明薄膜/上地層
(n,k)/空気の複合界面における透明薄膜側の合成
反射フレネル係数の絶対値(いずれもλ(設計波長)=
5500Åとしたときの値)である。図3の曲線J,L,P
及び図4のJ′,L,P′は、透明薄膜の屈折率nf =
1.6の場合であり、図3の曲線K,M,Q及び図4の
K′,M,Q′は、透明薄膜の屈折率nf =2.3の場
合を示している。従って、λ=5500Åにおいて、曲線J
の右下、かつ、曲線Qの左上の領域に上地層の(n,
k)が含まれることが好ましい。
【0062】また、k≧0.2(直線R)としているの
は吸収性上地層の膜厚が薄くてすむようにとの考慮の結
果であり、直線S及び直線Tについても、吸収性下地層
の場合と同様である。
【0063】従って、λ=5500Åにおいて、上地層の
(n,k)の値は、図3の曲線J−直線S−直線T−曲
線Q−直線Rで囲まれた領域の内部(境界線を含む)で
あることが好ましく、さらに、図4の曲線J′−直線S
−曲線Q′−直線Rで囲まれた領域の内部(境界線を含
む)であることが好ましい。
【0064】上述の吸収性上地層の膜厚は、吸収性上地
層のn,kの値をもとに数7を満たすように選択される
が、具体的には20〜500Åの間にあることがリップ
ル抑制効果及び生産性の点から望ましい。
【0065】更に、本発明で用いられる上地層の材料と
しては金属単体、窒化物、炭化物、またはこれらの複合
体が挙げられ、好ましくは、チタン、クロム、ジルコニ
ウムのうち少なくとも一種の金属単体、またはこれらの
金属の窒化物、炭化物またはこれらの複合体を主成分と
する単層膜がリップル抑制効果と経済性の点から望まし
い。なかでもチタンの窒化物は耐久性に優れており、こ
の点で実用上好ましい。この場合チタン窒化物の膜厚は
リップル抑制の観点から80〜300Åであることが好
ましい。
【0066】以上のような上地層を形成することによ
り、透明薄膜に、透明基体側から入射し、透明基体側に
出射していく光に関して、透明薄膜の上下界面における
干渉によって生ずるリップルを低減することができる。
【0067】以上、本発明の上地層を吸収膜の単層構成
とした場合について述べたが、該上地層が複数の層から
構成されていてもよいのは先に下地層について述べた通
りである。
【0068】また、上記上地層の上に第2の透明基体を
積層して、第1の透明基体/透明薄膜/上地層/第2の
透明基体、という構造の光彩防止透明体を形成すること
もできる。この場合、可視光線領域の設計波長におい
て、透明薄膜/上地層/第2の透明基体の複合界面にお
ける透明薄膜側の合成反射フレネル係数の絶対値が、該
上地層が形成されない場合の透明薄膜/第2の透明基体
の界面における透明薄膜側の反射フレネル係数の絶対値
より小さい値となっていることが必要である。
【0069】このような上地層を形成することにより、
透明薄膜に、第1の透明基体側から入射し、第1の透明
基体側に出射していく光に関して、透明薄膜の上下界面
における干渉によって生ずるリップルを低減することが
できる。第2の透明基体としては、第1の透明基体と同
様のものが使用できる。
【0070】一例として、図8のように、透明基体60
/(下地層62)/透明薄膜61/上地層63、という
構成の薄膜が形成されている側を内側にして、ポリビニ
ルブチラール(PVB)等からなるプラスチック中間膜
64を介してもう1枚のガラス基板60と積層した合わ
せガラスとして、本発明の光彩防止透明体を構成するこ
ともできる。この場合、中間膜64とガラス基板の屈折
率が同じであれば、上地層63は、上述の、透明基体と
透明薄膜との間の下地層と同様の条件を満たす必要があ
る。
【0071】即ち、可視光線領域の設計波長λにおい
て、透明薄膜61/上地層62/中間膜(第2の透明
体)64の複合界面における透明薄膜側61側の合成反
射フレネル係数の絶対値が、上地層62が形成されてい
ない場合の透明薄膜61/中間膜64の界面における透
明薄膜61側の反射フレネル係数の絶対値より小さい値
であるのが好ましい。
【0072】透明膜(非吸収性の膜)による反射防止と
大きく異なる点は、吸収膜の場合、片側からの反射率は
反対側からの反射率と異なることである。このため、透
明膜による反射防止層を上地層または下地層として形成
した場合には、透明基板側の反射と空気側の反射の両方
におけるリップルを同時に抑制することができるのに対
し、吸収膜を用いた場合には例えば本発明による下地層
を形成した場合、空気側の反射リップルは抑制される
が、透明基板側の反射リップルはかえって増大してしま
うことが起こり得る。逆に本発明による上地層を形成し
た場合には、透明基板側の反射リップルは抑制される
が、空気側の反射リップルはかえって増大してしまうと
いうことが起こり得る。
【0073】従って本発明を用い、かつ、両側からの反
射リップルを共に抑制したい場合には、本発明による下
地層52と上地層53を共に形成して、透明基体50/
下地層52/透明薄膜51/上地層53という図7のよ
うな構成や、図8のような構成とすることが大いに有効
となる。
【0074】本発明の光彩防止透明体においては、上述
のような下地層や上地層を形成することにより、分光反
射率のリップルが小さくなり、色むらが低減される。色
ムラ低減の程度は、次のような分光反射率のリップル率
を尺度として表しやすい。
【0075】「リップル率」とは、分光反射率曲線にお
いて、各極大同志をなめらかに結んだ包絡線(曲線Aと
する)及び各極小同志をなめらかに結んだ包絡線(曲線
Bとする)の、ある波長における曲線Aの値をa、その
波長における曲線Bの値をbとすると、 リップルRi =a−b(%) リップル率Rr =((a−b)/(a+b))×100
(±%) により、その波長におけるリップルRi とリップル率R
r を定義する。
【0076】かかる「リップル率」は、反射率の大きさ
に対するリップルの影響を考慮した値であるので、実際
に人間の目に感知される色むらの程度を表すことができ
るものである。
【0077】本発明においては、下地層や上地層が形成
されることにより下地層や上地層が形成されない場合と
比べ、リップル率が小さくなっている。本発明の光彩防
止透明体の色ムラ低減の程度としては、可視光線領域の
全波長におけるリップル率の値の最小値が、±30%以
下、特に±10%以下であることが望ましい。リップル
率の最小値が±30%を超えていると、色ムラからなり
目立ってくるためである。
【0078】特に、透明薄膜について透明基体側から測
定した、本発明の光彩防止透明体の分光反射率と、透明
薄膜について透明基体とは反対側から測定した、本発明
の光彩防止透明体の分光反射率の各々について、可視光
線領域のリップル率の最小値が±30%以下であること
が望ましい。
【0079】
【実施例】
実施例1 ガラス基板(屈折率1.51)を真空槽内にセットし、
1×10-5Torrまで排気した後、ArとN2 の混合ガス
を導入し、3×10-3Torrの圧力中でチタンのターゲッ
トをDC(直流)スパッタしてチタンの窒化物の膜をガ
ラス基板上に300Å形成した。この膜の光学定数を求
めたところ、6328Åの波長でn=1.98、k=
1.53であった。これらのnとkの値から、次に形成
する光彩防止透明体の下地層の厚さを80Åとすること
にした。
【0080】次に別のガラス基板30を真空槽内にセッ
トし、同様の手順でチタンの窒化物からなる下地層32
を80Å形成した。この上にイオンプレーティングによ
りITOからなる透明薄膜31を1.0μm形成した。
これをサンプル1とした(図5の構成)。このサンプル
の膜面側の分光反射率曲線を図9の71に示した。
【0081】実施例2〜6 実施例1と同様にして下地層と透明薄膜の組合わせを表
1の通りとした(実施例1も合わせて示す)。
【0082】
【表1】
【0083】実施例7 実施例1と同様のガラス基板40を真空槽内にセット
し、イオンプレーティングにより、ITOからなる透明
薄膜41を1μm形成した。この上にDCスパッタリン
グにより、チタンの窒化物からなる上地層43を150
Å形成した(図6の構成)。これをサンプル2とした。
このサンプルのガラス面側の分光反射率曲線を図10の
82に示した。
【0084】実施例8〜12 実施例7と同様にして上地層と透明薄膜の組合わせを表
2の通りとした(実施例7も合わせて示す)。
【0085】
【表2】
【0086】実施例13 実施例1と同様のガラス基板50上に、実施例1と同様
にして、チタンの窒化物からなる下地層52(約80
Å)、及びITOからなる透明薄膜51(1.0μm)
を形成し、その上に、チタンの窒化物からなる上地層5
3を150Å形成した(図7の構成)。これをサンプル
3とした。このサンプルの膜面側及びガラス面側の分光
反射率曲線を図11の91(膜面側)及び92(ガラス
面側)に示した。
【0087】実施例14〜16 実施例13と同様にして下地層と上地層の組合わせを表
3の通りとした。このとき透明薄膜はイオンプレーティ
ングによるITO膜でその厚みは1.0μmであった。
【0088】
【表3】
【0089】実施例17 実施例1と同様にして、ガラス基板60上に、チタン窒
化物からなる下地層62、及びITOからなる透明薄膜
61を形成し、その上に、DCスパッタリングによりチ
タンの窒化物からなる上地層63を80Å形成し、これ
をPVBの中間膜64(屈折率1.51)を介してもう
1枚のガラス基板60と接着し、合わせガラスとした
(図8の構成)。これをサンプル4とした。このサンプ
ルの両面側の分光反射率曲線を図12の101(側面
側)及び102(ガラス面側)に示した。
【0090】比較例1 ガラス基板を真空槽内にセットし、1×10-5Torrまで
排気した後、イオンプレーティングによりITO膜を1
μm形成した。このサンプルの膜面側の分光反射率曲線
を図13の111に示した。ガラス面側については図示
していないが、可視域ではほとんど膜面側と変わらない
分光反射率曲線であった。
【0091】比較例2 ガラス基板を真空槽内にセットし、1×10-5Torrまで
排気した後、Zr:Si=1:2の合金ターゲットを用
いArと酸素の混合雰囲気の3×10-3Torrの圧力中で
DCスパッタリングにより、ZrSiX OY の膜を90
0Å形成した。この膜の屈折率は1.74であった。こ
の上にイオンプレーティングによりITO薄膜を800
0Å形成した。
【0092】比較例3 ガラス基板を真空槽内にセットし、1×10-5Torrまで
排気した後、Arと酸素の混合ガスを導入し、3×10
-3Torrの圧力中でチタンのターゲットをDCスパッタリ
ングしてTiO2 の膜を120Å形成した。次いで同じ
くArと酸素の混合ガス中でZr:Si=1:9の合金
ターゲットを用い、DCスパッタリングによりZrSi
X OY の膜を400Å形成した。この上にイオンプレー
ティングによりITOの膜を8000Å形成した。
【0093】図9〜13の分光反射曲線を比べると、単
にガラス基板上に透明薄膜を形成した場合(比較例1、
図11の111)に比べ、本発明による下地層を形成し
た場合の膜面側の分光反射曲線(実施例1、図9の7
1)、本発明による上地層を形成した場合のガラス面側
の分光反射曲線(実施例7、図10の82)、本発明に
よる上地層と下地層を共に形成した場合の膜面及びガラ
ス面側の分光反射曲線(実施例13、図11の91及び
92)、本発明による下地層及び上地層を上下に形成し
た合わせガラスの場合の膜面及びガラス面側の分光反射
曲線(実施例17、図12の101及び102)のいず
れにおいても可視域におけるリップルがかなり小さくな
っていることがわかる。
【0094】可視域におけるリップルの最小値及びリッ
プル率の最小値をまとめたのが表4である。表4におい
て「膜面側」とは、透明薄膜に関してガラス基板とは反
対側から測定した値、「ガラス面側」とは、透明薄膜に
関してガラス基板側から測定した値である。
【0095】
【表4】
【0096】実施例1〜17について、合成反射フレネ
ル係数の絶対値(λ=6328Åにおける計算値)を一例と
して表5に示す。また、比較例について、反射フレネル
係数の絶対値(λ=6328Åにおける計算値)を表6に示
す。また、表5、表6の計算のために使用した、各種材
料の屈折率n、消衰係数kの値(λ=6328Åにおける測
定値)を表7に示す。
【0097】
【表5】
【0098】
【表6】
【0099】
【表7】
【0100】全ての実施例にわたり、狙いとする側の分
光反射率のリップルは比較例1に比べかなり小さいこと
がわかる。
【0101】比較例2,3は透明膜(非吸収膜)による
リップル抑制層を形成した場合であり、この場合にはリ
ップルは両側面ともに小さくなっているが、形成すべき
下地層の膜厚が本発明に比べ5倍が10倍大きいことが
わかる。これは実用上の大きな障害となりうる。これに
対し本発明では下地層または上地層の膜厚が小さくて良
い上に一般に形成速度を透明膜よりも速くできるので、
形成に要する時間は膜厚の比以上に短かくすることがで
き、従って生産性に優れているということができる。
【0102】
【発明の効果】以上、実施例からも明らかなように、本
発明は透明基板に高屈折率の透明薄膜をある程度以上の
厚みに形成した場合に、分光反射スペクトルに発現する
リップルを抑制する効果がある。特に本発明による下地
層を形成した場合には、膜面側(透明基体と反対側)の
分光反射スペクトルにおけるリップルを抑制する効果が
あり、本発明による上地層を形成した場合には透明基体
側の分光反射スペクトルにおけるリップルを抑制する効
果がある。
【0103】また、特に本発明による下地層と上地層を
共に形成することにより、透明基体側と、反対側の各々
の分光反射スペクトルにおけるリップルを共に抑制する
効果が得られる。これにより、高屈折率透明薄膜の膜厚
ムラや視角変化による色ムラ(光彩)を防止する効果が
得られる。このことは、特に大面積のガラス基板に本発
明が適用された場合に顕著な効果を有するものである。
【0104】また、本発明においては、リップル抑制層
として吸収膜を用いているため、全体としてのガラス構
造物の透過率が下がるので、ビルなどに施工された場
合、窓を通して室内に侵入する太陽エネルギーを抑制
し、冷房負荷を軽減する効果もある。また、反射率を高
くすることができるので、建造物の外観の意匠性を高め
ることもできる。
【0105】また、本発明の大きな効果の一つは、先に
我々が提案した無光彩ガラス(特開平3−164449
号及び特願平2−275240号)に比べリップル抑制
層を吸収膜として、膜厚を薄くすることができるため
に、実用上大きな問題であるところの生産に要する時間
が大巾に短縮できるということである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の下地層の屈折率n及び消衰係数kの好
ましい範囲を示すグラフ。
【図2】本発明の下地層の屈折率n及び消衰係数kのさ
らに好ましい範囲を示すグラフ。
【図3】本発明の上地層の屈折率n及び消衰係数kの好
ましい範囲を示すグラフ。グ図4】本発明の上地層の屈
折率n及び消衰係数kのさらに好ましい範囲を示すグラ
フ。
【図5】本発明の実施例の模式的断面図。
【図6】本発明の実施例の模式的断面図。
【図7】本発明の実施例の模式的断面図。
【図8】本発明の実施例の模式的断面図。
【図9】実施例1のサンプル1の分光反射曲線を示すグ
ラフ。
【図10】実施例7のサンプル2の分光反射曲線を示す
グラフ。
【図11】実施例13のサンプル3の分光反射曲線を示
すグラフ。
【図12】実施例17のサンプル4の分光反射曲線を示
すグラフ。
【図13】比較例1のサンプルの分光反射曲線を示すグ
ラフ。
【図14】本発明の下地層の屈折率n及び消衰係数kの
例を示すグラフ。
【図15】本発明の下地層の屈折率n及び消衰係数kの
例を示すグラフ。
【符号の説明】
30,40,50,60:透明基体(ガラス基板) 31,41,51,61:透明薄膜 32,52,62 :下地層 43,53,63 :上地層

Claims (23)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】透明基体上に屈折率が1.6以上で膜厚
    0.15μm以上の透明薄膜が形成され、該透明薄膜と
    透明基体との界面に下地層が形成された光彩防止透明体
    であって、該下地層は消衰係数kが0でない吸収性の膜
    であることを特徴とする光彩防止透明体。
  2. 【請求項2】透明薄膜に関して透明基体の反対側から測
    定した、光彩防止透明体の分光反射率曲線のリップル率
    の可視光線領域における最小値が±30%以下であるこ
    とを特徴とする請求項1の光彩防止透明体。
  3. 【請求項3】可視光線領域のある波長において、透明基
    体/下地層/透明薄膜の複合界面における透明薄膜側の
    合成反射フレネル係数の絶対値が、該下地層が形成され
    ない場合の透明基体/透明薄膜の界面における透明薄膜
    側の反射フレネル係数の絶対値より小さい値であること
    を特徴とする請求項1の光彩防止透明体。
  4. 【請求項4】可視光線領域の設計波長において、該下地
    層の複素屈折率n−ikの屈折率n及び消衰係数kが図
    1の、曲線A−直線H−直線I−曲線F−直線Gで囲ま
    れる領域内(境界線を含む)にあることを特徴とする請
    求項1の光彩防止透明体。
  5. 【請求項5】該下地層が、チタン、クロム、ジルコニウ
    ムのうち少なくとも1種の金属、これらの金属のうち少
    なくとも1種の窒化物、上記金属のうち少なくとも1種
    の炭化物、またはこれらの複合体を主成分とする膜を少
    なくとも1層含むことを特徴とする請求項1の光彩防止
    透明体。
  6. 【請求項6】該下地層の膜厚が10Å以上500Å以下
    であることを特徴とする請求項1の光彩防止透明体。
  7. 【請求項7】透明基体上に屈折率が1.6以上で膜厚
    0.15μm以上の透明薄膜が形成され、該透明薄膜上
    に上地層が形成された光彩防止透明体であって、該上地
    層は消衰係数kが0でない吸収性の膜であることを特徴
    とする光彩防止透明体。
  8. 【請求項8】透明薄膜に関して透明基体側から測定し
    た、光彩防止透明体の分光反射率曲線のリップル率の可
    視光線領域における最小値が±30%以下であることを
    特徴とする請求項7の光彩防止透明体。
  9. 【請求項9】可視光線領域の設計波長において、透明薄
    膜/上地層/空気の複合界面における透明薄膜側の合成
    反射フレネル係数の絶対値が、該上地層が形成されない
    場合の透明薄膜/空気の界面における透明薄膜側の反射
    フレネル係数の絶対値より小さい値であることを特徴と
    する請求項7の光彩防止透明体。
  10. 【請求項10】可視光線領域の設計波長において、該上
    地層の複素屈折率n−ikの屈折率n及び消衰係数kが
    図3の、曲線J−直線S−直線T−曲線Q−直線Rで囲
    まれた領域内(境界線を含む)にあることを特徴とする
    請求項7の光彩防止透明体。
  11. 【請求項11】該上地層の膜厚が20Å以上500Å以
    下であることを特徴とする請求項7の光彩防止透明体。
  12. 【請求項12】該上地層が、チタン、クロム、ジルコニ
    ウムのうち少なくとも1種の金属、これらの金属のうち
    少なくとも1種の窒化物、上記金属のうち少なくとも1
    種の炭化物、またはこれらの複合体を主成分とする膜を
    少なくとも1層含むことを特徴とする請求項7の光彩防
    止透明体。
  13. 【請求項13】第1の透明基体上に屈折率が1.6以上
    で膜厚0.15μm以上の透明薄膜が形成され、該透明
    薄膜上に上地層、及び該上地層上に第2の透明基体が積
    層された光彩防止透明体であって、該上地層は消衰係数
    kが0でない吸収性の膜であることを特徴とする光彩防
    止透明体。
  14. 【請求項14】透明薄膜に関して第1の透明基体側から
    測定した、光彩防止透明体の分光反射率曲線のリップル
    率の可視光線領域における最小値が±30%以下である
    ことを特徴とする請求項13の光彩防止透明体。
  15. 【請求項15】該上地層の上に第2の透明基体が積層さ
    れており、可視光線領域の設計波長において、第1の透
    明薄膜/上地層/第2の透明基体の複合界面における透
    明薄膜側の合成反射フレネル係数の絶対値が、該上地層
    が形成されない場合の透明薄膜/第2の透明基体の界面
    における透明薄膜側の反射フレネル係数の絶対値より小
    さい値であることを特徴とする請求項13の光彩防止透
    明体。
  16. 【請求項16】該上地層の膜厚が10Å以上500Å以
    下であることを特徴とする請求項13の光彩防止透明
    体。
  17. 【請求項17】第1の透明基体がガラス基板であり、第
    2の透明基体がプラスチック中間膜であって、該プラス
    チック中間膜の透明薄膜とは反対側に、もう一枚のガラ
    ス基板が積層され、合せガラス構造とされていることを
    特徴とする請求項13の光彩防止透明体。
  18. 【請求項18】透明基体上に屈折率が1.6以上で膜厚
    0.15μm以上の透明薄膜が形成され、該透明薄膜と
    透明基体との界面に下地層が形成され、該透明薄膜上に
    上地層が形成された光彩防止透明体であって、該下地層
    及び上地層は、消衰係数kが0でない吸収性の膜である
    ことを特徴とする光彩防止透明体。
  19. 【請求項19】透明薄膜に関して下地層側から測定し
    た、光彩防止透明体の分光反射率曲線のリップル率の可
    視光線領域における最小値、及び透明薄膜に関して上地
    層側から測定した、光彩防止透明体の分光反射率曲線の
    リップル率の可視光線領域における最小値が、各々±3
    0%以下であることを特徴とする請求項18の光彩防止
    透明体。
  20. 【請求項20】可視光線領域の設計波長において、透明
    基体/下地層/透明薄膜の複合界面における透明薄膜側
    の合成反射フレネル係数の絶対値が、該下地層が形成さ
    れない場合の透明基体/透明薄膜の界面における透明薄
    膜側の反射フレネル係数の絶対値より小さい値であり、
    かつ、可視光線領域の設計波長において、透明薄膜/上
    地層/空気の複合界面における透明薄膜側の合成反射フ
    レネル係数の絶対値が、該上地層が形成されない場合の
    透明薄膜/空気の界面における透明薄膜側の反射フレネ
    ル係数の絶対値より小さい値であることを特徴とする請
    求項18の光彩防止透明体。
  21. 【請求項21】該下地層及び上地層が共にチタンの窒化
    物からなる膜であることを特徴とする請求項18の光彩
    防止透明体。
  22. 【請求項22】該下地層の膜厚が20Å以上200Å以
    下、かつ、該上地層の膜厚が80Å以上300Å以下で
    あることを特徴とする請求項18の光彩防止透明体。
  23. 【請求項23】該透明薄膜が、スズを含む酸化インジウ
    ム(ITO)を主成分とする膜であることを特徴とする
    請求項18の光彩防止透明体。
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WO2022163546A1 (ja) * 2021-01-27 2022-08-04 Agc株式会社 光学薄膜積層体及びその製造方法

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