JP3355412B2 - 味覚センサ及び味覚センサ用有機膜 - Google Patents
味覚センサ及び味覚センサ用有機膜Info
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Description
きる人工的なセンサに係り、とくに味覚という、従来は
人工的なセンサでは代行できないとされた、ヒトの感覚
に代わるセンサあるいはトランスデューサと呼ばれる電
子素子に関する。
味、酸味、うま味があると言われていて、それぞれに程
度の大小があるものとされている。人間の感覚で評価で
きるこれらの味の違いは、あるいは、塩味なら塩味につ
いての(同種の)味の違いは、物理的に計測可能な量と
して把握できるものとし、計測可能な味または味の違い
(比較又は対比的な味)をここでは「アジ」と称するこ
ととする。
にあるように複数の味覚センサの出力値から測定対象物
における各原味(基本味)成分すなわち選択された呈味
物質の濃度を算出し、各濃度値を人の味覚に合った各原
味の強さを表す値に補正することでアジを測定してい
た。しかし、前記公報にいう味覚センサとは各基本味を
呈する物質を選択的に検出する化学センサまたは物理セ
ンサであり、具体的には塩味は食塩濃度計で、酸味は水
素イオン指数計で、甘味は測定対象物の液体の屈折率を
利用した糖度計であった。これらのセンサは選択的であ
るから例えば塩味の強さを測定しようとしている食塩濃
度計は食塩の濃度の測定はできるが、塩味を呈する他の
物質の濃度は測定できず、人の味覚に合うように補正す
るといっても限界があり、正しく感覚量で示すことは不
可能であった。色に例えてこれをいえば、単一の色しか
検知しないセンサを用いてカラーの結果を得ようとする
ようなものであった。
の製造方法」について特許出願をすませた(特願平1−
190819号)。この出願の明細書及び図面には、疎水性の
部分と、親水性の部分とをもつ分子で成る脂質性物質
を、高分子のマトリックス内に定着させ、その表面に脂
質性分子の親水性部分が整列するような構造をもつ脂質
性分子膜が、アジのセンサ、すなわち、人間の味覚に代
わりうる味覚センサとなることを示した。
計法で使われている表現方法で表わしたものが図3であ
る。脂質性分子のうち円で示した球状部は親水基aすな
わち親水性部位aであり、それから原子配列が長く延び
る炭化水素の鎖構造b(例えばアルキル基)がある。図
ではいずれの場合も2本の鎖が延びて一つの分子を表わ
しており、全体で分子群を構成している。この炭化水素
の鎖の部分は、疎水性部位bである。このような脂質性
分子群6が、膜部材7の表面のマトリックス8(表面の
構造、平面的なひろがりをもったミクロな構造)の中
に、一部はマトリックス内部に溶け込ませた形(例えば
図3の6′)で収容されている。その収容のされ方は、
親水性部位が表面に配列するようなものとなっている。
ネルの味覚センサとしたものが図5(a),(b) である。本
図ではマルチチャンネルのアレイ電極のうち三つの感応
部が示されている。図示の例では、基材1に 0.5mmφの
孔を貫通して、それに銀の丸棒を差し込み電極2とし
た。脂質性分子膜3は緩衝層4を介して電極2に接触す
るように基材1に張りつけている。
たアジの測定系を図6に示す。呈味物質の水溶液を作
り、それを被測定溶液11とし、ビーカーのような容器12
に入れる。被測定溶液中に、前に述べたような、アクリ
ル板(基材)上に脂質膜と電極とを配置して作った味覚
センサアレイ13を入れた。使用前に、塩化カリウム 1m
mole/l 水溶液で電極電位を安定化した。図中、14−
1,……14−8は各々の脂質膜を黒点で示したものであ
る。測定の基準となる電位を発生する電極として参照電
極15を用意し、それを被測定溶液に入れる。味覚センサ
アレイ13と参照電極15とは所定の距離を隔てて設置す
る。参照電極15の表面には、緩衝層16として、塩化カリ
ウム 100m mole/l を寒天で固化したもので覆ってある
から、結局、電極系は銀2|塩化銀|脂質膜3(14)|被
測定溶液12|緩衝層(塩化カリウム 100m mole/l )16
|塩化銀|銀2という構成となっている。
ネルの信号となり、リード線17−1,……,17−8によ
ってそれぞれバッファ増幅器19−1,……,19−8に導
かれる。バッファ増幅器19の各出力は、アナログスイッ
チ(8チャンネル)20で選択されてA/D変換器21に加
えられる。参照電極15からの電気信号もリード線18を介
してA/D変換器21に加えられ、膜からの電位との差を
ディジタル信号に変換する。このディジタル信号はマイ
クロコンピュータ22で適当に処理され、またX−Yレコ
ーダ23で表示される。この例では、8チャンネルの味覚
センサが用いられ、各チャンネルは、人間の味覚を再現
できるような多くの味覚情報を得るために、それぞれア
ジに対して異なる応答特性を持つ表3に示すような脂質
を混入した脂質性分子膜で構成されている。
その製造方法」(特願平3−020450号)及び「センサ」
(特願平3−122636号)の特許出願も済ませた。これら
の出願の明細書及び図面で先の出願(特願平1−190819
号)よりさらに人の味覚器官に近い分子膜を示した。前
記「味覚センサおよびその製造方法」(特願平3−0204
50号)では、この分子膜の材料として親水基と疎水基と
を有する両親媒性物質(脂質も含まれる)と呼ばれるも
のあるいはアルカロイド等の苦味物質を利用可能な分子
膜の構造を示した。この構造は、図4に示すように基板
1に設けられたベース膜9に両親媒性分子群6あるいは
苦味物質の分子群6が円で示される親水性の部位を外に
向けて整列し、単分子膜を構成している。そして、「セ
ンサ」(特願平3−122636号)では、基板電極に疎水基
等を直に化学結合した構成を示し、耐久性の向上した、
蔗糖等の非電解質に対する感度の向上したセンサを示し
た。
ンサは正に味覚センサであって、人の味覚器官である舌
に近い物理化学的性質を持ち、呈味物質が異なっても同
様なアジであれば同様な出力が得られるし、異なるアジ
に対してもなんらかの出力が得られる。色に例えてこれ
をいえば、カラーで検出できるセンサである。
7252号公報にあるような、呈味物質を選択的に検出する
化学センサまたは物理センサを複数種類用いたアジの測
定では、被測定液に含まれる呈味物質を残らず検出する
のは困難であり、アジの検出がしきれないので、いかに
補正しても人の味覚に合うような測定結果は得られなか
った。
にかかわらず、アジを検出できる味覚センサを用いれ
ば、アジ検出の漏れはずっと少ないが、前記味覚センサ
の出力特性が非線形であるから、ある程度信号処理が複
雑で、学習データ数が膨大となり、ときに精度が悪い等
の問題があった。
方法」について特許出願をすませた(特願平3― 87598
号)。この出願の明細書及び図面では、前記味覚センサ
を用いたものでありながら、信号処理が簡単な、学習デ
ータ数が少なくて済む、精度の良いアジ測定方法を示
し、測定対象物に含まれる各基本味の強さを各基本味を
呈する物質を代表する代表呈味物質の濃度に換算した値
として求まることを示した。両親媒性物質または苦味物
質の分子膜を用いた味覚センサの出力は非線形であり、
それがために信号処理が複雑になるとされていたが、発
明者等は実験によりある限られた範囲内においては、各
基本味について味覚センサの出力が線形とみなせること
を発見した。この事実に基づいて下記の方法により前述
の課題を解決した。
を用いた味覚センサを複数使用し、 まず始めに、測定範囲内における各味覚センサの各
基本味に対する感度を求め、 次にで求めた感度を使って、各味覚センサの出力
からアジの強さを演算することとした。アジの強さは測
定対象物に含まれる各基本味について代表となる呈味物
質を決めて、その呈味物質の濃度に換算した値で求め
た。
について味覚センサの出力が線形とみなせるので、基準
液E0 と基準液E0 にある量の基本味Ai を呈する物質
Biを加えた感度測定用液を味覚センサSj で測定すれ
ば、それらの出力から加えた基本味(を呈する物質の濃
度)に対する味覚センサSj の感度Wijが求まる。
及び被測定サンプル液Es を測定し、味覚センサSj の
出力Vj0及びVjsと前記感度Wijを式(1) に代入して、
連立方程式を解けば各基本味(を呈する物質の濃度xi
)が求まる。 Vjs−Vj0=ΣWij・log ( xi /ri ) ………(1) (Σの範囲は i=1 から mまで) ここでri は基準液E0 中の基本味Ai を呈する物質B
i の濃度である。
4 )、味覚センサSj を8種類( j=1,2,3,4,5,6,7,8
)とすると、下記のような連立方程式が各被測定サン
プル液毎にたてられる。ここで、式(1)のlog ( xi
/ri )はXi と置く。 V1s−V10=W11X1 +W21X2 +W31X3 +W41X4 V2s−V20=W12X1 +W22X2 +W32X3 +W42X4 V3s−V30=W13X1 +W23X2 +W33X3 +W43X4 V4s−V40=W14X1 +W24X2 +W34X3 +W44X4 V5s−V50=W15X1 +W25X2 +W35X3 +W45X4 V6s−V60=W16X1 +W26X2 +W36X3 +W46X4 V7s−V70=W17X1 +W27X2 +W37X3 +W47X4 V8s−V80=W18X1 +W28X2 +W38X3 +W48X4 この連立方程式を最小二乗法で解いて各基本味を呈する
物質の濃度xi が求まる。
な味覚センサや測定方法を用いることで、アジの測定が
比較的簡単に、かつ、精度よくできるようになったもの
の、まだ次のような問題があった。すなわち、前記味覚
センサの甘味に対する感度は塩味や酸味、苦味に対する
感度に比べて低く、前記連立方程式中の甘味の項が占め
るウエイトが小さいため、前記連立方程式を解いて得ら
れる甘味を呈する物質の濃度の誤差が大きくなってしま
うことである。この発明の目的は、前記問題を解決し、
測定誤差の少ないアジ情報(特に甘味に対する)の得ら
れる味覚センサ及び味覚センサ用有機膜を実現すること
である。
に、酸味と塩味は電解質によって呈される味であり、味
覚センサはそれら電解質の陽イオンや陰イオンに反応す
ることで酸味や塩味を検出しているということを利用
し、電解質の陽イオンや陰イオンに対する反応が実質的
に零となるようにした。
の被測定溶液に接する側の面全体を覆って該電極に固定
され、かつ、被測定溶液に接する側に親水性部位を向け
た複数種類の両親媒性物質又は苦味物質の分子群とを備
えたものとし、前記複数種類の両親媒性物質又は苦味物
質の組合せと混合割合とを選ぶことにより、前記被測定
溶液に接する側に向けられた親水性部位の全電荷の和が
実質的に零となるように構成した。
と疎水性部位とを有する複数種類の両親媒性物質又は苦
味物質の分子群と、該両親媒性物質又は苦味物質の分子
群を収容し得るマトリックスを表面に有する膜とから構
成し、前記両親媒性物質又は苦味物質の分子群の少なく
とも一部は前記膜のマトリックス内にその親水性部位が
表面に配列するように収容され、かつ、前記複数種類の
両親媒性物質又は苦味物質の組合せと混合割合とを選ぶ
ことにより表面に配列した親水性部位の全電荷の和が実
質的に零となるように構成した。
り、味覚センサはそれら電解質の陽イオンや陰イオンに
反応することで酸味や塩味を検出している。従って、味
覚センサ用膜の表面の全電荷の和が零であれば、見掛け
上イオンには反応しない。つまり出力は零となる。
膜を図1及び図2に示す。先に挙げた図3、図4に示す
従来の味覚センサ及び味覚センサ用膜との違いは、水溶
液中で正に帯電する苦味物質または両親媒性物質の分子
群61(図1及び図2において親水性部位aを白丸で示
す)と負に帯電する両親媒性物質の分子群62(図1及
び図2において親水性部位aを黒丸で示す)とが味覚セ
ンサまたは味覚センサ用有機膜全体として電荷が実質的
に零となるような割合で含まれていることである。この
発明に用いられる苦味物質及び両親媒性物質の例を水溶
液中での帯電の極性と共に表1にまとめた。
は、図1〜図4の模式図に示したように、原子配列が長
手方向に延びる疎水性部位と、その長く延びた原子群の
一端部またはその近くに、親水性部位がある点を指摘で
きる。しかも、親水性部位として、リン酸基、アミノ
基、アンモニウム基、カルボキシル基、水酸基などが存
在する。
水溶液中で負に帯電するジオクチルフォスフェート(2
C8 POOH)と水溶液中で正に帯電するトリオクチル
メチルアンモニウムクロライド(TOMA)とを用いて
実験を行った。2C8 POOHとTOMAの混合比は
100:0、90:10、70:30、50:5
0、45:55、40:60、35:65、3
0:70とした。
容易に入手でき、取扱いも簡単な、熱可塑性のポリ塩化
ビニル(PVC)を用いた。PVCは、テトラヒドロフ
ラン(THF)、ニトロベンゼン、シクロヘキサノン等
に溶け、可塑剤との混合比を変えることにより、軟質に
も、硬質にもすることができるから、用途に応じて使い
分けができる便利さがある上に、品質の安定性、成形の
容易さも特徴とされる。
3:1の重量比で混合する。可塑剤を添加しないと出来
上がりの有機膜が白濁していたり、不均一になったりし
て好ましくない。また、両親媒性物質・可塑剤の選び
方、混合する比率、混合の仕方によっても、出来上がっ
た有機膜に白濁や不均一を生ずることがある。可塑剤と
してフタル酸ジオクチル(DOP)、ジオクチルフェニ
ルフォスフォネート(DOPP)あるいはリン酸トリク
レシル(TCP)を用い、前記混合比の両親媒性物質
(2C8 POOHとTOMA)とPVCとを混合したも
の約400mgを、THF10ccに溶解し、それを均
一な加熱された板上で約30°Cに保つこと約2時間、
THFを揮散させて、有機膜を形成した。こうして得ら
れた有機膜の厚さはほぼ200μmであった。THFを
揮散させるには、室温で減圧しても目的を達成すること
はできるが、多少の加熱をするほうが、良い膜が得られ
るようである。
水、あるいは塩化カリウム水溶液などの電解質溶液に1
分間ほど浸すと、両親媒性物質の持つ親水基が表面に整
列した分子配列が安定した状態で得られ、味覚センサと
しての機能を果たすものとなる。なお、苦味物質及び両
親媒性物質を固定するマトリックスを作る材料として
は、前記PVCの他に表2に掲げる物質がある。
チャンネル型の味覚センサとした。マルチチャンネル型
の味覚センサは図5(a) 、(b) のようなものであり、ま
た、このマルチチャンネル型の味覚センサを用いたアジ
の測定系は図6に示すものである。いずれも〔従来の技
術〕の欄に述べた通りである。
ンネルであり、1〜8チャンネルにはそれぞれ前記2C
8 POOHとTOMAの混合比100:0、90:
10、70:30、50:50、45:55、
40:60、35:65、30:70の有機膜を用
いている。被測定溶液としては、酸味を呈する物質とし
て酒石酸、塩味を呈する物質として塩化ナトリウムを選
び、それらの水溶液を用いた。
(b) に示す。図7(a) は酒石酸に対する応答パターンで
あり、図7(b) は塩化ナトリウムに対する応答パターン
である。これらは、濃度によるパターンの変化を示した
もので上方にあるパターンが高濃度のときのものであ
る。混合した両親媒性物質は前述のように、リン酸基を
親水基として持つジオクチルフォスフェート(2C8 P
OOH)とアンモニウム基を親水基として持つトリオク
チルメチルアンモニウムクロライド(TOMA)であ
る。水溶液中では2C8 POOHは負に帯電し、TOM
Aは正に帯電する。
(チャンネル1)は、酒石酸(酸味)の水素イオン、N
aCl(塩味)のナトリウムイオンいずれにも応答す
る。一方、2C8 POOHとTOMAを等量混入した膜
(チャンネル4)は水溶液中での表面電荷の和は零であ
るためナトリウムイオンにはわずかしか応答しない。し
かし、水素イオンは吸着性があるため膜電位を変化させ
る。図7(b) から2C8 POOHとTOMAの比を(4
7〜48):(53〜52)とすれば塩味に応答しない
有機膜が得られることがわかる。
製するときの苦味物質または両親媒性物質の種類と混合
比について述べる。2C8POOHとTOMAの例から
わかるように、水溶液中で負に帯電する両親媒性物質と
正に帯電する苦味物質または両親媒性物質とを等量混入
すれば塩味に応答しない有機膜を作製できるというわけ
ではない。例えば、苦味物質または両親媒性物質は種類
によって、水溶液中でイオンとなる割合(解離度)、解
離した苦味物質または両親媒性物質の単位量あたりの塩
味を呈する物質のイオンと結合する親水基の電荷の量、
苦味物質または両親媒性物質の有機膜表面への配列のし
易さ等が異なる。そして、有機膜の水溶液中での表面電
荷は、これらの要因が総合されて決定する。苦味物質ま
たは両親媒性物質が水溶液中で正に帯電するか、負に帯
電するかについては表1に挙げたように参考となるデー
タがあるが、他の要因についてのデータはないので、前
述のように苦味物質または両親媒性物質の混合比を変え
て実験し最適な混合比を求めることになる。
有機膜の水溶液中での表面電荷の和が零であればよいの
であるが、酸味に応答しない有機膜の場合は、酸味を呈
する物質がイオン化したとき陽イオンである水素イオン
はペアとなっていた陰イオンより約100倍位有機膜の
親水基と結びつく力が強いので、表面の電荷が水素イオ
ンの吸着する負の電荷1に対して、正の電荷約100と
なるように苦味物質または両親媒性物質の種類と混合比
を選ぶことになる。
同一出願人の先願「味覚センサ及びその製造方法」(特
願平1−190819号)の味覚センサ用脂質膜にこの発明を
適用したものであるが、同じく同一出願人の先願である
「味覚センサおよびその製造方法」(特願平3−020450
号)及び「センサ」(特願平3−122636号)で開示した
味覚センサにも適用することができる。
用の再現について併せて実験し、次のような事実を発見
した。いずれも有用な発明を生むものであり、ここに開
示する。まずはじめに考察すべきことは、人間が感じる
食品の味についてである。酸味と塩味は電解質によって
呈される味であるため、電位応答を測定する現在の味覚
センサでは、苦味とともに測定が容易な味質である。そ
こで、単独の味の質であれば、5基本味へのマルチチャ
ンネルセンサのパターンに適当な処理を施すことにより
定量化が可能である。しかしながら、我々が普段口にす
る食品の味は様々な味が混合されたものである。味物質
は混合することにより影響を及ぼしあい、各々を単独に
口にした場合とは味の強度が異なってしまう。このよう
な味の相互作用は、官能検査により検証されている。し
かし、大脳という最終段階の処理を経た後のあいまいな
感覚により定量化されるため、その相互作用の程度は検
査により様々な結果が得られており、一般法則はない。
つまり、単独味であればいくつかの定量化された尺度を
目安とすることができるが、混合味、即ち一般の食品に
対しては定量化の指標とすべき値や法則はない。そこで
次のような段階を踏むことによって味の定量化が可能と
なる。
により味を測定することが可能であることが示唆されて
いるので、まずこのセンサの膜電位応答のふるまいを生
物の味受容器応答電位に近づけることである。そのため
には、アジに対する特性の異なる複数の脂質を混合して
作製した脂質膜を使用し、膜電位応答のふるまいと生物
の味受容器応答電位との比較を行った。これが図8であ
り、混入した脂質はアゾレクチン(大豆より抽出したレ
シチン)と2C8 POOHである。比較に用いたものは
ラットの味細胞の受容器電位である。図8より、ここで
用いている膜が生体系と非常によく似たふるまいをして
おり、閾値なども生体系とほぼ一致していることがわか
る。このように、脂質膜の組成を調整することで、膜の
応答特性を受容器電位とほとんど同じにすることができ
る。ここでは、いずれもアゾレクチンと2C8 POOH
の混合膜を示したが、生物が持つ味受容細胞の受容特性
は非常に多様であり、このように膜組成の調整により生
物に対応する膜を作製することが可能であることが判明
した。このような組成を変えた脂質膜を多数用意するこ
とで、ラット以外の動物(ヒトを含む)の受容器レベル
の味の応答パターンと同じ情報をもつセンサの出力パタ
ーンを得ることが可能となる。
た膜を用いて酸味(酒石酸)と塩味(NaCl)を測定
した、前述の実験結果(図7(a) 、(b) )から、酸味の
特徴はチャンネル1〜4は横一直線のパターンとなり、
塩味はチャンネル1〜8で右下がりのパターンとなるこ
とがわかる。このパターンの特徴を利用することによ
り、酸味あるいは塩味の強さを計算した。ここで、チャ
ンネル1,4,8の電位をそれぞれV1 ,V4 ,V8 と
し、それらの値が酸味度あるいは塩味度を表しており、
それらの相乗平均を酸味度あるいは塩味度と仮に定義す
る。すなわち、 酸味度=√(V1 ・V4 )……………(2) 塩味度=√(V1 ・V8 )……………(3) とする。図9は酒石酸(酸味)とNaCl(塩味)の混
合溶液に対するパターンの一例であるが、式(2)を用
いて酸味度を求めると図10のようになる。図10より
塩味を加えた場合に、酸味は単独のときよりも強くなっ
ている。これは、ヒトの味覚において酸味と塩味が強調
しあうという味の相互作用の結果と一致する。また、図
11に式(2)より求めた種々の酸味物質の強さと、ヒ
トの感覚との対応を示す。図11より、センサとヒトの
感覚値が1対1に対応し、このセンサがヒトの味覚をか
なり再現できていることがわかる。
れる味であることに着目し、水溶液中で親水基が正の電
荷を持つ苦味物質、正の電荷を持つ両親媒性物質、負の
電荷を持つ両親媒性物質とを適当な割合で混合すること
で、その表面の電荷を調整した味覚センサ及び味覚セン
サ用有機膜が得られた。これらの味覚センサまたは味覚
センサ用有機膜を用いることで、アジに対する情報量が
増える。とりわけ、その測定が難しいとされる甘味に対
して有効であり、アジの情報を処理して各基本味の強さ
を求めようとするときに、酸味あるいは塩味に対して無
感度の膜を用いることで、例えば、アジの連立方程式中
の甘味の項のウエイトを大きくして、甘味の強さの測定
誤差を小さくすることができる。
式図。
図。
(b) は断面図。
(a) は酒石酸(酸味)、(b) は塩化ナトリウム(塩味)
の濃度によるパターンの変化を示す図。
応答とを比較した図であり、(a) は塩酸(酸味)、(b)
は塩化ナトリウム(塩味)、(c) は塩酸キニーネに対す
る電位応答の図。
する応答パターンを示す図。
た結果を示す図。
群 62 負に帯電する両親媒性物質の分子群
Claims (2)
- 【請求項1】 電極(2)と、 該電極の被測定溶液に接する側の面全体を覆って該電極
に固定され、かつ、水溶液中で正に帯電する苦味物質、
正に帯電する両親媒性物質、負に帯電する両親媒性物質
の分子群のうちの正に帯電する分子群と負に帯電する分
子群とが、被測定溶液に接する側に向けた親水性部位の
全電荷の和が実質的に零となる割合で含まれている有機
膜とを備えた味覚センサ。 - 【請求項2】 マトリックスを表面に有する膜(7)
と、 親水性部位(a)と疎水性部位(b)とを有し、前記膜
のマトリックス内に前記親水性部位が表面に配列するよ
うに収容された分子群とを備え、 前記分子群には、水溶液中で正に帯電する苦味物質、正
に帯電する両親媒性物質、負に帯電する両親媒性物質の
分子群のうちの正に帯電する分子群と負に帯電する分子
群とが、 表面に配列した親水性部位の全電荷の和が実質
的に零となる割合で含まれていることを特徴とする味覚
センサ用有機膜。
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---|---|---|---|
JP26954192A JP3355412B2 (ja) | 1992-09-12 | 1992-09-12 | 味覚センサ及び味覚センサ用有機膜 |
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JP26954192A Expired - Lifetime JP3355412B2 (ja) | 1992-09-12 | 1992-09-12 | 味覚センサ及び味覚センサ用有機膜 |
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1992
- 1992-09-12 JP JP26954192A patent/JP3355412B2/ja not_active Expired - Lifetime
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