JP3348662B2 - 2相ステンレス溶接鋼管の製造方法 - Google Patents

2相ステンレス溶接鋼管の製造方法

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JP3348662B2 JP30062598A JP30062598A JP3348662B2 JP 3348662 B2 JP3348662 B2 JP 3348662B2 JP 30062598 A JP30062598 A JP 30062598A JP 30062598 A JP30062598 A JP 30062598A JP 3348662 B2 JP3348662 B2 JP 3348662B2
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    • B23MACHINE TOOLS; METAL-WORKING NOT OTHERWISE PROVIDED FOR
    • B23KSOLDERING OR UNSOLDERING; WELDING; CLADDING OR PLATING BY SOLDERING OR WELDING; CUTTING BY APPLYING HEAT LOCALLY, e.g. FLAME CUTTING; WORKING BY LASER BEAM
    • B23K2103/00Materials to be soldered, welded or cut
    • B23K2103/02Iron or ferrous alloys
    • B23K2103/04Steel or steel alloys
    • B23K2103/05Stainless steel

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ラインパイプまた
は油井管等に好適な2相ステンレス鋼管の製造方法に関
するものである。
【0002】
【従来の技術】2相ステンレス鋼はフェライト相とオー
ステナイト相の2相組織からなり、耐応力腐食性に優
れ、かつ靭性および溶接性が良好なことから、油井用あ
るいは海水用等の材料として使用されている。また、耐
力、引張強さなどの強度がオーステナイト系およびフェ
ライト系に比べて大きいことが知られている。一般に、
2相ステンレス溶接鋼管は、素材鋼帯をオープンパイプ
状に成形し、対向する両エッジ突合せ部を高周波加熱し
て電縫溶接(以下、ERW法という)するか、あるいは
サブマージドアーク溶接(以下、SAW法という)など
のアーク溶接法によって製造されている。
【0003】しかし、SAW法は大気中で溶接フラック
スを用いるため、大気中からのO、N等のガスの混入が
避けられない。このため、溶接金属中に酸化物や窒化物
が生成し、これらが靭性レベルを低下させるという問題
点があった。その対策として、塩基性の高いフラックス
を用いて溶接金属中の酸素量の低減が図られている。こ
の高塩基性のフラックスの使用は、孔食の発生起点とな
りうる成分濃度の不均一性を防止するという耐食性の観
点からも最適である。しかし、高塩基性フラックスはフ
ラックスの融点が高いため溶接速度の高速化には不向き
である。さらに、高塩基性フラックスは溶接部にスラグ
巻込み、アンダカットなどの溶接欠陥が発生しやすい等
の問題を有している他、大入熱溶接法であるため、高温
割れ発生の度合いが高くなるという問題点も有してい
た。
【0004】これに比べ、ERW法は高生産性の点で有
利であるが、溶接時の加熱のため接合面となる鋼板エッ
ジ表面に酸化物が生成する。特に、2相ステンレス鋼で
は、Crを多く含有しているためペネトレーターと呼ば
れる酸化物欠陥として溶接部に残り易くなり、溶接部の
靭性および耐食性が低下する。
【0005】このため最近では、2相ステンレス鋼管の
溶接部品質向上および生産性向上の観点から、レーザー
ビームを用いた手法(以下、レーザー溶接法という)
が、特開平8−155663号公報、特開平9−170
050号公報および特開平9−220682号公報等で
提案されている。レーザー溶接法はレーザービームをレ
ンズあるいはミラーで集光して対象を局部的に溶解し、
同時に不活性ガスを噴出させてシールしながら溶接する
手法である。レーザー溶接法は、急速加熱冷却であるの
で溶接部の凝固組織が微細であり、強度、靭性レベルが
高く、耐高温割れ性が良好である。また、レーザー溶接
法は、SAW法と異なりフラックスを用いないためスラ
グ巻込み等の欠陥は発生せず、不活性ガス雰囲気中で溶
接を行うため溶接部の酸素濃度が母材並に抑えられ品質
の劣化がない。さらに、レーザー溶接前に両エッジ部を
ERW法で用いられているコンタクトチップを用いた電
気抵抗加熱法あるいは環状の誘導加熱法により加熱(予
熱)することにより、製造速度の高速化が図れるため、
他溶接法に比べ生産性に優れている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、鋼板エ
ッジを電気抵抗加熱法等により加熱(予熱)する場合、
後で詳述するが、2相ステンレス鋼等の高合金鋼では熱
伝導率が炭素鋼に比べ小さいため、炭素鋼に比べ鋼板最
エッジ部近傍のみが高温となる温度分布を生じ、これに
起因して鋼板最エッジ部のみが軟化し、スクイズロール
にて両エッジを加圧し突合わせる(以下、アップセット
という)際に、この最エッジの軟化部が僅かな上下方向
への外力によりずれ(滑り)変形を生じるため、図1の
(a)や(b)に示すいわゆるラップが炭素鋼に比べ非
常に生じやすい。このため、レーザー溶接法による2相
ステンレス溶接鋼管の製造時にはこのラップを防止する
ため、鋼板両エッジの予熱温度を下げたり、予熱をせず
に製造するなどしている。しかしながら、これは製造速
度の低速化による製造コストの上昇に繋がる。本発明
は、このような現状に鑑みてなされたものであり、ライ
ンパイプまたは油井管等に好適な2相ステンレス鋼管
を、レーザー溶接法にて高い生産性で製造する方法を提
供することを目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、2相ステ
ンレス鋼からなる鋼帯を用いて、複数のロール成形スタ
ンドにより連続的に順次円筒状に成形し、シーム部の接
合にレーザービームを用いて溶接管を製造する手法にお
いて、レーザー溶接前の両エッジを電気抵抗加熱法ある
いは誘導加熱法により加熱(予熱)し、両エッジの高さ
方向ギャップを計測しつつ、最終フィンパスロールとス
クイズロール間に配置された押上げロール装置を用いて
押上げ量を調節しながら突合せ溶接を行うことにより、
製造速度の高速化が実現でき、かつ、ラップも十分に抑
制でき、溶接不良の無い、安定した溶接部品質を持つ溶
接管が製造できることを究明した。
【0008】本発明の具体的構成は、2相ステンレス鋼
帯を複数のロール成形スタンドにより連続的に管状に成
形し、その成形された管状2相ステンレス鋼の突合わせ
部である両エッジ部を加熱してレーザー溶接する2相ス
テンレス溶接鋼管の製造方法であって、前記両エッジ部
の間隔を所定の距離に保持するフィンパスロールと、前
記両エッジ部を加圧し突合わせるスクイズサイドロール
とを備えるとともに、最終フィンパスロールと前記スク
イズサイドロールとの間に押上げロール装置を配置し、
前記押上げロール装置により、前記両エッジ部を下方か
ら押上げながら突合せ溶接を行う方法において、 (1)式で表されるエッジ収束領域L以内の任意の箇所
における前記両エッジの高さ方向ギャップGを計測し、
(2)式で表される条件を満足するように、前記押上げ
ロール装置による押上げ量を調節することを特徴とす
る。
【数3】 ここで、 L :スクイズサイドロールの中心から成形上流側のエッジ収束領 域 D :溶接管の外径 Df:スクイズサイドロールのフランジ外径 B :スクイズサイドロール中心間距離からスクイズサイドロール のフランジ外径を引いて2で割った距離
【数4】 ここで、 G:両エッジの高さ方向ギャップ(mm) R:スクイズサイドロールのアップセット量(mm) t:鋼帯の板厚(mm) a:計測位置による補正項であって、エッジ収束領域Lをスクイズ サイドロールの中心からギャップ計測位置までの距離で割った 値
【0009】
【0010】
【0011】
【0012】
【0013】
【0014】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を得ら
れた実験結果とともに詳述する。 1.素材帯鋼 素材鋼帯としては、通常、ラインパイプまたは油井管用
として用いられる2相ステンレス鋼からなる優れた耐食
性を有するものであればよく、特に制限されないが、例
えば、JISに規定されるSUS329J3LまたはS
US329J4L等の規格材であって、フェライト率が
ほぼ50%に調整された素材鋼帯を用いるのが望まし
い。
【0015】2.予熱温度 両エッジ部をレーザー溶接前に加熱(予熱)するには、
ERW法で用いられているコンタクトチップを用いた電
気抵抗加熱装置や環状の誘導加熱装置をスクイズサイド
ロールの手前に配置して、これらに対する投入電力を制
御して所望の温度に加熱する。レーザー溶接前の鋼板エ
ッジを予熱することによる溶接速度の増加効果を見極め
るため、レーザー出力を20kW一定の条件にて予熱温
度を室温から融点付近まで変化させて溶接を行い、貫通
溶接が可能な限界速度を調査した。
【0016】外径508mm×板厚12.7mmの炭素
鋼帯を、図2に示す造管ミルで、レーザー溶接前の両エ
ッジを高周波電気抵抗溶接(電縫溶接)装置のコンタク
トシュー4による直接通電で所望の温度まで加熱(予
熱)した後、レーザービーム装置5により溶接した結果
を図3に示す。図3から明らかなように、予熱温度の上
昇にともない貫通限界溶接速度が増加する傾向を示す。
しかし、予熱温度が500℃未満ではレーザー単独(予
熱なし)時の貫通限界溶接速度との比率で求められる溶
接速度の増加率が1.5倍以下と低くなり生産性に劣
る。このため、高生産性を得るにはレーザー前の予熱温
度を500℃以上に設定する必要がある。
【0017】しかし、2相ステンレス鋼を用いた場合に
レーザー溶接前の鋼板エッジの予熱温度を上昇させる
と、アップセット時にラップを非常に生じやすくなる。
そこで、本発明者らは、2相ステンレス鋼におけるラッ
プ現象と予熱温度との相関を追求するため、電気抵抗加
熱法等により加熱(予熱)した場合の鋼板エッジ部での
温度分布を数値計算から算出し、予熱による鋼板エッジ
部の挙動を考察した。
【0018】温度解析 まず、仮定として以下の3つの条件を満足するものとす
る。 1)1次元熱伝導 2)物性値は温度によらず一定 3)電流分布は温度によらず一定 次に、(3)式、(4)式に示す基礎方程式を基に鋼板
エッジ部の温度分布を求める。
【0019】
【数5】
【0020】ここで、 T:温度(℃)、t:時間(s)、α:熱拡散率(m2
/s)、Cp:比熱(J/kg・℃)、ρ:密度(kg
/m3 )、σ:比電気伝導率(Ω・m)、j,j0 :電
気密度(A/m2 )、δ:浸透深さ(m)
【0021】
【数6】
【0022】(3)、(4)式から
【0023】
【数7】
【0024】以下の式を変形し、(5)式に代入する。 λ=Cp・ρ・α ただし、λ:熱伝導率(W/m・℃) 従って、
【0025】
【数8】
【0026】(7)式を初期条件、境界条件の下で解く
ことにより、鋼板エッジでの温度分布が求まる。なお、
ここでは前進差分法にて解いた。図4に鋼板最エッジ温
度を750℃とした場合の炭素鋼および2相ステンレス
鋼における板厚中央での鋼板エッジからの温度分布を示
す。なお、ここで用いた鋼の物性値は表1に示す通りで
ある。
【0027】
【表1】
【0028】表1に示すように2相ステンレス鋼等の高
合金鋼では、熱伝導率が炭素鋼に比べ小さいため、図4
に示す如く炭素鋼に比べ鋼板最エッジ近傍のみが高温と
なる温度分布を生じる。
【0029】図5は上記計算により算出された各々の温
度から、その温度における鋼板強度と室温での鋼板強度
の比(以下、鋼板強度比という)で整理した図を示す。
図5に示す如く、鋼板最エッジ温度を750℃とした2
相ステンレス鋼では炭素鋼に比べ、鋼板最エッジ付近の
みで急激な強度の低下(軟化)を生じる。また、同様の
手法にて鋼板最エッジ温度を500℃とした2相ステン
レス鋼における鋼板強度比の分布を図6に示す。図6か
ら明らかなように、予熱温度が500℃程度まで下がれ
ば、図5で見られたような2相ステンレス鋼における最
エッジの局部的な軟化は認められない。
【0030】これらの結果から、2相ステンレス鋼を用
いて予熱温度を500℃以上の高温とした場合には、ア
ップセットの際に鋼板端面に発生する応力が端面垂直方
向成分以外に上下方向にも発生すると、その上下方向の
応力により最エッジの軟化部がずれ、変形を生じ、突合
せ面がずれる(ラップの発生)と考えられる。この考察
は2相ステンレス鋼管の製造において、レーザー溶接前
の予熱温度を下げることによりラップの発生を抑制でき
るという実操業で経験される現象とよく一致する。
【0031】しかし、前述の如くレーザー溶接前の予熱
温度が500℃未満ではレーザー単独(予熱なし)時の
貫通限界溶接速度との比率で求められる溶接速度の増加
率が1.5倍以下と低くなり生産性に劣るため、本発明
者らは、予熱温度500℃以上の最エッジの軟化部が存
在する状態でもラップを防止できる造管方法を検討し
た。
【0032】3.成形条件両エッジの挙動観察 一般に、ラップを生じる原因としては、第1に図7に示
すエッジウェーブ11が鋼板厚相当あるいはそれ以上に
大きく、両エッジを突合せることができない場合、第2
にエッジウェーブ11は鋼板厚に比して僅かであるが、
図2に示すスクイズサイドロール6への鋼板両エッジの
挿入状況が両エッジ部の曲げ成形状態の差、あるいは両
エッジ部のエッジウェーブ等により、アップセットの際
に鋼板端面に発生する応力が端面垂直方向成分以外に上
下方向にも発生し、その上下方向の応力により突合せ面
がずれる場合の2つが考えられる。
【0033】図8は下記の造管条件で溶接管を製造した
ときのオープンパイプ両エッジ部の高さ方向の変動を非
接触型のレーザー変位計により計測した結果であり、計
測位置と計測結果の相関図を示す。なお、両エッジの高
さ方向ギャップGの計測は、レーザー変位計により計測
された両エッジの計測値の差分量として算出した。 [造管条件] 溶接管外径×板厚 73.0mm×1.2mm 材質 冷延鋼板(SPCC相当) 成形機の構成 ブレークダウンロール 3段 ケージロールスタンド フィンパスロールスタンド 3段 スクイズロールスタンド 1段 スクイズロールスタンドの所用寸法 −スクイズサイドロールのフランジ外径Df:160m
m −スクイズサイドロール中心間距離からスクイズサイド
ロールのフランジ外径を引いて2で割った距離B:3m
【0034】スクイズサイドロール6は、スクイズロー
ル機構として使用されるもので、主に大径サイズの電縫
管を製造する場合には、このスクイズサイドロール6の
2ロールを、スクイズトップロールの2ロール、及びス
クイズボトムロールの1ロールとともに用い、主に小径
サイズの電縫管を製造する場合には、このスクイズサイ
ドロール6の2ロールのみを用いる。スクイズサイドロ
ールによる拘束は、スクイズトップロールによる拘束よ
りも極めて大きい。
【0035】図8から明らかなように、エッジ変動に関
する管軸方向(長手方向)の位置の影響は、以下の
(1)式で表される図9のエッジ収束領域L以内の領域
では、ほぼ一定値となる傾向を示す。これにより、両エ
ッジの高さ方向ギャップGはL以内では単調な減少を示
す。エッジ収束領域L以内でエッジ変動が一定となる原
因としては、オープンパイプが成形ロールで十分な拘束
を受けることにより自由変形がしにくくなり、素板材質
や素板のキャンパー等に由来する管全体の不均一オープ
ンパイプの自励振動等の外乱を排除できるためと考えら
れる。このため、両エッジの高さ方向ギャップGを計測
する位置としては、上述の如くエッジ変動が一定であ
り、かつ、ギャップGが単調に減少するエッジ収束領域
L以内が適切である。エッジ収束領域L以内では、ギャ
ップGは単調な減少を示すため、このギャップGにエッ
ジ収束領域Lを計測位置で割った値を掛けることにより
正当な評価ができる。また、ギャップGの計測箇所数と
しては複数でも良いが、ギャップGは単調に減少するこ
とから1カ所でも十分である。
【0036】
【数9】
【0037】ここで、 L :図9に示すスクイズサイ
ドロール6の中心から成形上流側のエッジ収束領域 D :図9に示す溶接管12’の外径 Df:図9に示すスクイズサイドロール6のフランジ外
径 B :図9に示すスクイズサイドロール6の中心間距離
からスクイズサイドロール6のフランジ外径を引いて2
で割った距離
【0038】図10は外径323.8mm×板厚6.2
mmの炭素鋼管を図2に示す成形機にて成形する際に、
冷間時の両エッジ突合せ部に鉛を挿入し、鉛を鋼板エッ
ジで圧延させることによりエッジの挙動を鉛に転写さ
せ、その転写面の断面検鏡結果からスクイズサイドロー
ル6中心直前の鋼板両エッジの挙動を観察した結果であ
る。図10から明らかなように、スクイズサイドロール
6中心直前、すなわち、アップセット直前の鋼板両エッ
ジは高さ方向でギャップGだけ離れ、一方は上方から下
方への押込みが強く、もう一方は側方からの押込みが強
く、両エッジはそれぞれ全く異なる挙動をしていること
がわかる。
【0039】この結果から、アップセットの際の鋼板端
面に発生する応力は、端面垂直方向だけに作用するので
はなく上下方向にも作用し、かつ、両エッジでその応力
方向が異なるために突合せ面でずれ変形を生じラップに
至ると推察できる。特に、2相ステンレス鋼のように予
熱温度500℃以上の高温で最エッジが極度に軟化して
いる場合、軟化部は容易にずれ変形するため、上述の異
なる方向性を持った応力によりラップを生じやすくなる
考えられる。
【0040】そこで、本発明者らは、2相ステンレス鋼
における高温加熱(予熱)時のラップ防止対策として、
図11に示すように、フィンパスロール群の最終フィン
パスロール3aとスクイズサイドロール6間に押上げロ
ール装置7を配置し、これによって両エッジ部を下方か
ら押上げることにより両エッジに張力を掛けつつ突合せ
状況を改善しつつ溶接を行うことを考案した。押上げロ
ール装置7の構造としては、本出願人らが先に出願した
特開平5−208213号公報や特開平9−1232号
公報によればよく、例えば、図12に示す如く、管1
2’のシーム部12’aを管内側から押上げるための左
右対向配置された1対の押上げロール8と、押上げロー
ル8を押上げる昇降装置9と、押上げロール装置7を管
内面で支えるための車輪10および押上げロール8の高
さ方向位置を検出するための押上げ高さ検出器(図示せ
ず)を備えている。
【0041】図13は外径323.8mm×板厚6.2
mmの炭素鋼管を、押上げロール装置7を用いて成形し
た際の、前記(1)式で表される両エッジ収束領域L以
内の鋼板両エッジの挙動を観察した結果である。図13
から明らかなように、スクイズサイドロール6中心直
前、すなわち、アップセット直前の鋼板両エッジの挙動
は押上げロール装置7を用いることにより矯正されて、
両エッジの高さ方向のギャップGも僅かとなり、両エッ
ジがほぼ同様な挙動をすることがわかる。このように、
最終フィンパスロール3aとスクイズサイドロール6間
に押上げロール装置7を配置し、この押上げロール装置
7により両エッジ部を下方から押上げ両エッジ部に張力
を掛けながら突合せ溶接を行うことにより、アップセッ
ト寸前の鋼板両エッジの挙動をほぼ同一となるよう矯正
して、アップセット時の鋼板両エッジ端面に発生する端
面垂直方向以外の応力成分を極力少なくすることができ
る。
【0042】押上げ量 図14は、後述する実施例により、2相ステンレス鋼板
を用いた場合のレーザー溶接前の両エッジ加熱温度を5
00℃以上とし、押上げ量を種々変化させて造管した場
合の、前述の(1)式で表されるエッジ収束領域L以内
の鋼板両エッジの高さ方向ギャップG、スクイズサイド
ロール6の通過前後の管周長差により求まるアップセッ
ト量R、鋼板板厚tがラップ発生の有無に及ぼす影響を
示したもので、横軸に以下の(2)式中の左辺で求めら
れる値を、縦軸にラップ発生の有無をとって示した図で
ある。
【0043】
【数10】
【0044】ここで、 G:両エッジの高さ方向ギャッ
プ(mm) R:スクイズサイドロールのアップセット量(mm) t:鋼板板厚(mm) a:計測位置の補正項であって、エッジ収束領域Lをス
クイズサイドロールの中心からギャップ計測位置までの
距離で割った値
【0045】なお、両エッジの高さ方向ギャップGの計
測は、図2で示したコンタクトシュー4の位置を(1)
式で求まるエッジ収束領域L以内に位置制御し、その上
下動を絶縁処理を施した接触式変位計により両側ともに
計測し、それぞれの計測値の差分値から算出した。図1
4から明らかなように、上記(2)式で求まる値が0.
25以下では、造管中のラップ発生は無くなっており、
したがって、上記(2)式を満足させるように押上げ量
を調節するとよいことがわかる。
【0046】押上げロール装置に取付ける押上げロール
は、図11の如く1段式でも良いが、図15に示すよう
な多段式としても良い。押上げロールを多段式とするこ
とにより、押上げ時に作用する押上げ反力を各段に分散
でき、押上げロールによる管内面のロールマークおよび
押上げロールの圧壊を防止することができる。これはま
た、見掛け上の押し上ロール径を大きくすることが可能
であるため、押上げによる局部的なストレッチをエッジ
に与えることもない。
【0047】
【実施例】次に本発明の実施例について説明する。な
お、ここでは、表2に示す成分組成の鋼を溶製し、熱間
圧延により種々の板厚・板幅の鋼帯を製造し、それらを
溶接管素板として用いた。
【0048】
【表2】
【0049】上記の鋼帯を使用し、図2に示す成形機に
て順次管状(又は円筒状)に成形した後、両エッジ突合
せ部をコンタクトシユー(直接通電装置)4に対する投
入電力を制御して所望の温度まで加熱し、さらに出力2
5kWのレーザー溶接機を用いて溶接して、肉厚・外径
の異なる溶接管を製造した。ここでは、図11に示す如
く、押上げロール装置7をフィンパスロール群の最終フ
ィンパスロール3aとスクイズサイドロール6との間に
設置する。押上げロール装置7を最終フィンパスロール
3とスクイズサイドロール6との間で一定の位置に保持
する機構としては、既に公開されている特開平5−20
8213号公報による技術を採用することができる。ま
た、押上げの位置は、既に公開されている特開平9−1
232号公報による技術を採用することにより決定でき
る。
【0050】両エッジの高さ方向ギャップGの計測は、
図2中のコンタクトシュー4の位置を前述の(1)式で
求まるエッジ収束領域L以内に位置制御し、その上下動
を絶縁処理を施した接触式変位計により両側ともに計測
することにより、それぞれの計測値の差分量から算出し
た。また、アップセット量はスクイズサイドロール6の
通過前後の管の外周長を測定し、その差から求めた。
【0051】効果の指標として、造管中にラップが発生
し溶接不良となった場合は×、ラップが発生せず良好な
溶接が行えた場合は○で表わすようにして、各種溶接管
の結果を表3に示した。なお、両エッジが完全に突合わ
さらないようなラップは目視による確認が可能である
が、図16に示すような鋼板厚以内でラップした場合に
は目視による観察は困難となるため、造管したサンプル
から長手方向の任意の50点を断面研磨により観察し、
図16に示す如く内面あるいは外面の両エッジの段差t
G が板厚tの10%を越える場合をラップの発生とし
た。また、ラップの確認を容易にするため、通常行われ
る内外面のビードカットを施さずに造管した。この結
果、表3に示す如く、本発明の方法で製造したものはラ
ップの発生が一切無く、安定した溶接品質を持つ溶接管
の製造が可能となることが確認された。
【0052】
【表3】
【0053】
【発明の効果】以上述べた如く、本発明によれば、造管
プロセス中におけるエッジ突合せ状態の安定化により、
ラインパイプや油井管等に好適な2相ステンレス鋼管
を、安定した溶接品質と高い生産性を有して製造するこ
とが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来の成形法による成形材エッジ部のラップを
示す説明図である。
【図2】溶接管の製造ラインを示す構成図である。
【図3】予熱温度と貫通限界溶接速度との関係を示す説
明図である。
【図4】熱伝導解析により、鋼板最エッジ温度を750
℃とした場合に生じる鋼板エッジからの距離と温度との
関係図である。
【図5】熱伝導解析より得られた鋼板最エッジ温度75
0℃における鋼板強度と室温における鋼板強度との比と
鋼板エッジからの距離との関係図である。
【図6】熱伝導解析より得られた鋼板最エッジ温度50
0℃における鋼板強度と室温における鋼板強度との比と
鋼板エッジからの距離との関係図である。
【図7】成形材シーム部に生じたエッジウェーブを示す
説明図である。
【図8】スクイズサイドロールの中心から上流側への距
離とエッジ変動及び両エッジのギャップとの関係図であ
る。
【図9】両エッジの高さ方向ギャップを計測する際の位
置関係を示す説明図である。
【図10】従来の成形法によるスクイズサイドロール近
傍の鋼板両エッジの挙動と両エッジの高さ方向ギャップ
を示す説明図である。
【図11】押上げロール装置を利用した本発明の実施の
形態を示す説明図である。
【図12】本発明に用いる押上げロール装置の構成例を
示す説明図である。
【図13】本発明の成形法によるスクイズサイドロール
近傍の鋼板両エッジの挙動と両エッジの高さ方向ギャッ
プを示す説明図である。
【図14】両エッジの高さ方向ギャップ、アップセット
量、鋼板板厚がラップ発生に及ぼす関係を示す説明図で
ある。
【図15】本発明に用いる多段式押上げロール装置を示
す説明図である。
【図16】ラップの良否判定方法を説明する説明図であ
る。
【符号の説明】
1 ブレークダウンロール群 2 ケージロールあるいはクラスタロール群 3 フィンパスロール群 3a 最終フィンパスロール 4 コンタクトシュー 5 レーザービーム溶接装置 6 スクイズサイドロール 7 押上げロール装置 8 押上げロール 9 昇降装置 10 車輪 12 鋼帯(又は鋼板) 12’鋼管 G 両エッジのギャップ R スクイズサイドロールによるアップセット量 t 鋼帯又は鋼板の板厚 tG 内面あるいは外面の両エッジの段差 L スクイズサイドロールの中心から成形上流側に配置
される変位計までの距離 a 計測位置の補正項であってエッジ収束領域Lをスク
イズサイドロールの中心からギャップ計測位置までの距
離で割った値 D 溶接管の外径 Df スクイズサイドロールのフランジ外径 B スクイズサイドロール中心間距離からスクイズサイ
ドロールのフランジ外径を引いて2で割った距離
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI B23K 103:04 B23K 103:04 (72)発明者 真保 幸雄 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日本鋼管株式会社内 (56)参考文献 特開 平10−166045(JP,A) 特開 平8−155663(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B23K 26/00 - 26/24 B21C 37/08

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 2相ステンレス鋼帯を複数のロール成形
    スタンドにより連続的に管状に成形し、その成形された
    管状2相ステンレス鋼の突合わせ部である両エッジ部を
    加熱してレーザー溶接する2相ステンレス溶接鋼管の製
    造方法であって、 前記両エッジ部の間隔を所定の距離に保持するフィンパ
    スロールと、前記両エッジ部を加圧し突合わせるスクイ
    ズサイドロールとを備えるとともに、最終フィンパスロ
    ールと前記スクイズサイドロールとの間に押上げロール
    装置を配置し、 前記押上げロール装置により、前記両エッジ部を下方か
    ら押上げながら突合せ溶接を行う方法において、 (1)式で表されるエッジ収束領域L以内の任意の箇所
    における前記両エッジの高さ方向ギャップGを計測し、
    (2)式で表される条件を満足するように、前記押上げ
    ロール装置による押上げ量を調節することを特徴とする
    2相ステンレス溶接鋼管の製造方法。 【数1】 ここで、 L :スクイズサイドロールの中心から成形上流側のエッジ収束領 域 D :溶接管の外径 Df:スクイズサイドロールのフランジ外径 B :スクイズサイドロール中心間距離からスクイズサイドロール のフランジ外径を引いて2で割った距離 【数2】 ここで、 G:両エッジの高さ方向ギャップ(mm) R:スクイズサイドロールのアップセット量(mm) t:鋼帯の板厚(mm) a:計測位置による補正項であって、エッジ収束領域Lをスクイズ サイドロールの中心からギャップ計測位置までの距離で割った 値
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