JP3347994B2 - 耐衝撃圧壊特性に優れた高強度鋼板部材 - Google Patents
耐衝撃圧壊特性に優れた高強度鋼板部材Info
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Description
用される高強度鋼板部材に関する。
ー類は加工性と強度との2つの相反する特性が要求され
る。すなわち、メンバー類を自動車ボディ曲線に添わせ
るように成形するためには、素材鋼板には優れた成形加
工性が必要であり、一方走行中の衝突事故に対して優れ
た防護作用を発揮させるためには、圧壊方向に対して高
強度であることが要求される。
材には、プレス成形性の良好な、鋼板強度が440N/
mm2 級の鋼板が使用されているが、メンバー類のよう
に、耐衝撃圧壊特性を向上させるためには、鋼板強度を
1グレード上げて590N/mm2 級以上の強度の鋼板を
使用したい。しかし、鋼板の強度が590N/mm2 級以
上になると、プレス成形性が低下するため加工が困難に
なる。このように、メンバー類等の部材には、成形性は
鋼板強度が440N/mm2 級で、衝撃圧壊特性に対して
は590N/mm2 級以上の特性を有するものが望まれ
る。
術として、例えば特開平4一72010号公報や特開平
7−26319号公報には、鋼板をプレス成形した鋼板
部材にレーザ照射を行って焼入強化部(焼入硬化部)を
形成し、鋼板強度を部分的に向上させ、引いては鋼板部
材の圧壊強度を上昇させる技術が開示されている。
の技術では、レーザ照射による焼入強化部の本数を増加
することにより静的な圧壊強度が上昇することが示され
ているものの、レーザ照射本数を増加すると、生産性を
大きく低下させ、また耐食性も低下するという問題があ
る。また、鋼板組成に関して、前者の技術ではC含有量
以外には言及されておらず、加工性を確保しつつ所期の
強度向上効果を得るには、いかなる成分の鋼板を用いる
べきかが不明瞭である。一方、後者の技術では鋼板組成
が明らかにされているものの、極低C鋼板に限定されて
いるため、部分焼入強化による強化能が不十分である。
で、良好なプレス成形性を確保しつつ、少ない焼入強化
部の形成により、耐衝撃圧壊特性を効果的に向上させる
ことができる耐衝撃圧壊特性に優れた高強度鋼板部材を
提供する。
加工性を確保しつつ、部分焼入強化によりプレス成形部
材の耐衝撃圧壊特性を向上させる手段を鋭意研究した結
果、プレス成形された鋼板部材の特定の部位に焼入強化
部を形成することにより、衝撃圧壊時の吸収エネルギー
を効果的に向上させることに成功したものであり、引い
ては焼入強化部の形成を可及的に減少させることができ
るものである。
量%で、C:0.05〜0.3%、Mn:0.5〜3.
0%を含有する鋼板がプレス成形された鋼板部材であっ
て、該鋼板部材の横断面において折り曲げコーナ部外周
面上の中心(コーナ部中心)からコーナ部を形成する二
面の内の少なくとも一面上にコーナ部外周面の半径(コ
ーナ部半径)をRとしたとき(R+7)mmの基準範囲を
設定し、該基準範囲内でコーナ部に沿って1又は複数の
焼入強化部(焼入硬化部)を形成するものであり、さら
には鋼板部材の全コーナを構成する全ての面について、
前記基準範囲内における焼入強化部の幅合計の基準範囲
合計長に対する占有率を20%以上とするものである。
て述べる。単位は重量%(mass%)である。
上するが、焼入強化部における十分な硬化量を得るため
には、0.05%以上の添加が必要である。一方、0.
3%を超えて多量に添加すると冷間加工性、溶接性およ
び靱性が著しく劣化するようになる。従って、C添加量
の下限を0.05%、上限を0.3%とする。
分焼入強化に必須の元素である。その添加量に応じて強
度は上昇するが、焼入強化でのMn添加の効果を有効に
発揮させるためには0.5%以上の添加が必要である。
一方、あまり多量に添加すると鋼板の冷間加工性を劣化
させるので、その上限を3.0%とする。
じて、冷間加工性、焼入硬化性を損なわない範囲で適宜
添加することができるが、Si、P、Alは下記の範囲
に止めるのがよい。
入強化の一手段であるレーザ照射の際の処理性改善のた
めに添加されるが、2.0%を超えて添加すると表面肌
荒れを起こすようになるので、その上限を2.0%とす
る。
向上させることができるが、強度向上作用を有するた
め、鋼板の要求強度に応じて添加される。しかし、多量
に添加すると結晶粒界強度が低下して2次加工脆化が著
しくなるので、その上限を0.2%とする。
多量に添加すると、経済的に不利であるばかりか、C系
介在物が多量に生成して表面庇の原因となるので、その
上限を0.1%とする。
C、Mn、Si、P、Alからなる基本成分のほか、さ
らに下記B、Cr、Mo、Ti、Nb、Zr、V、W、
Cu、Ni、Caの内から1種以上を必要に応じて含有
することができる。すなわち、下記(1) 〜(1) の鋼組成
とすることができる。
02〜0.003%、Cr:2.5%以下、Mo:1.
0%以下の内から1種以上 (2) 基本成分又は前記(1) の成分のほか、さらにTi、
Nb、Zr、V、W:各0.1%以下の内から1種以上 (3) 基本成分、前記(1) 又は(2) の成分のほか、さらに
Cu:2.5%以下、Ni:1.5%以下の内から1種
以上 (4) 基本成分、前記(1) 、(2) 又は(3) の成分のほか、
さらにCa:0.02%以下
性を増大させ、焼入強化に非常に有効な元素であるが、
0.003%を超えると効果が飽和するとともに鋼材の
延性を著しく劣化させるので、その上限を0.003%
とする。
元素であるが、多量に添加しても効果が飽和するととも
に冷間加工性を劣化させるので、その上限を2.5%と
する。
ても、その効果は飽和するので、その上限を1.0%と
する。
下 Ti、Nb、Zr、V、Wは鋼板の強度向上に有効であ
るが、多量に添加しても効果が飽和するので、経済的観
点から、その上限を0.1%とする。
度の増大にも有効である。しかし、多量に添加すると鋼
板に表面疵を生じさせるので、2.5%以下に止める。
なお、Niとの複合添加によって、表面性状の改善を図
ることが推奨される。
とNiを複合添加する場合でも、経済的観点から、1.
5%以下とする。
とができ、鋼板の加工性や靱性の向上に有効であるが、
多量に添加すると介在物量が増加して鋼板の冷間加工性
や靱性を劣化させるので、その上限を0.02%とす
る。
板、めっき鋼板のいずれであってもよい。めっき鋼板と
しては、例えば、溶融亜鉛めっき鋼板、電気亜鉛めっき
鋼板などの各種表面処理を施した鋼板を使用することが
できる。
入強化部占有率の限定理由を下記の調査結果に基づいて
説明する。
響について説明する。下記のハット型圧壊試験材の一端
面を固定し、他端面に約50km/hの速度で重りを落
下衝突させる落重試験を行い、この際、試験材に吸収さ
れた衝撃圧壊吸収エネルギーを求めた。
に、引張強さが440N/mm2 級、590N/mm2 級、
780N/mm2 級の3種類の鋼板を用いてU字状にプレ
ス成形したハット型鋼板部材1を製作し、その開口を塞
ぐように開口縁部のフランジに平板2をスポット溶接
し、その両端に端板(200×200mm)3,3を固着
したものである。ハット型鋼板部材1の寸法は、板厚t
=1.6mm、高さh=80mm、上幅W1=120mm、下
幅W2=160mm、長さL=450mm、コーナ部半径R
=3mm(図3(b) 参照)である。
板引張強さが440N/mm2 レベルから590N/mm2
レベルに増加することにより、吸収エネルギーは約10
%向上することが分かる。従って、焼入強化部の形成に
より、衝撃圧壊吸収エネルギーを10%向上させること
が出来れば、鋼板強度を1グレード増加させるのと同様
の効果が得られる。
ネルギーを効果的に向上させることができる部位につい
て説明する。ハット型鋼板部材1の折り曲げコーナ部近
傍にコーナ部に沿って長さ方向に焼入強化部を形成した
ハット型圧壊試験材を用いて、前記落重試験を行い、焼
入強化部の最適部位を調べた。
は、図3に示すように、成形後のハット型鋼板部材1
が、各コーナ部においてコーナ部中心Pから所定距離D
離れた上面および両側面上に焼入強化部4が6箇所形成
されるように、成形前の鋼板に対してレーザ照射により
焼入強化部を形成し、その後プレス成形して製作したも
のであり、寸法は鋼板板厚を1.4mmとし、コーナ部半
径R=3,5,10mmの3種としたほかを除き、前記寸
法と同様である。
Si:0.02%、Mn:1.02%、P:0.02
%、Al:0.04%、残部:Feおよび不可避的不純
物からなる冷延鋼板である。また、レーザ照射条件は炭
酸ガスレーザ装置を用いて、出力=3kW、走査速度=
3m/分で、レーザ焦点位置は板内として溶融凝固相が
板厚を貫通するようにした。
心Pからの距離Dと衝撃圧壊吸収エネルギーとの関係を
示すものであり、コーナ部中心Pから(R+7)mmを超
えて離れると衝撃圧壊時の吸収エネルギー上昇率が小さ
くなり、Pから(R+7)mm以内ではPに接近するに従
って吸収エネルギーの上昇率が大きくなり、吸収エネル
ギーはやがて一定となる。従って、コーナ部中心Pから
(R+7)mmの位置は吸収エネルギー曲線の変曲点に相
当し、Pから(R+7)mm以内に焼入強化部を形成する
ことが効果的であることが分かる。
試験材の横断面においてコーナ部中心から折り曲げコー
ナを形成する上面および両側面上に(R+7)=10mm
の基準範囲(図3(b)でD=10mmの範囲)を設定
し、該基準範囲に対する焼入強化部の幅が衝撃圧壊吸収
エネルギーに及ぼす影響を調べた。この場合、ハット型
鋼板部材1の4つのコーナを構成する8面(1コーナに
ついて2面)の内の6面について、高周波加熱処理によ
り焼入強化部を形成し、焼入領域を変化させることで、
焼入強化部の幅を種々変化させた。なお、焼入強化部の
幅は、板厚表面から板厚の1/4位置で測定した。
ナ構成面における前記基準範囲合計長に対して焼入強化
部の幅の合計が占める占有率%と衝撃圧壊吸収エネルギ
ー向上率との関係を示したもので、焼入強化部の占有率
の増加にともない衝撃圧壌吸収エネルギー向上率も増加
するが、10%以上の吸収エネルギー向上率を得るため
には強化部占有率は20%以上必要であることが分か
る。
コーナを構成する全ての面について、すなわちN個のコ
ーナを構成する2N面(1コーナについて2面と計算)
について、コーナ部中心から(R+7)mmの基準範囲に
おける焼入強化部の幅合計Wmmの基準範囲合計長(R+
7)×2Nmmに対する占有率(W/(R+7)×2N)
×100%を20%以上とすることにより、10%以上
の吸収エネルギーの向上率を得ることができ、1ランク
上の強度レベルの鋼板を使用したのと同様の効果を得る
ことができる。
すると、成形前の鋼板に対して、成形後の部材の所定の
位置に対応する部位に部分焼入処理を行い、その後に所
定形状の鋼板部材にプレス加工を行うことが推奨される
が、鋼板を予め所定形状に成形加工した後、所定部位に
対して焼入強化を行ってもよい。
ス成形された鋼板部材1Aの折り曲げコーナ部に沿って
長さ方向に所定の条件の下で焼入強化部4Aを形成する
ものであるが、衝撃圧壊時に高い応力を受ける部分を強
化すればよく、折り曲げコーナ部の全長にわたって焼入
強化部を形成する必要はない。また、本発明では、折り
曲げコーナ部中心からコーナ部半径をRとしたとき(R
+7)mm以内の焼入強化部の幅合計の占有率を規定する
ものであり、(R+7)mmを越えた部位の強化部の占有
率は特に規定しない。
車部材に限らず、加工性を損なうことなく、高強度が要
求される鋼板部材に対して広く利用することができる。
なお、メンバー等は、図3のハット型鋼板部材1よう
に、箱型にプレス成形され、4つのコーナを有するのが
通例である。
よび合金化溶融亜鉛めっき鋼板(各鋼板の板厚1.4m
m)を用いて、レーザ照射または高周波加熱により、プ
レス成形後にコーナ部中心からコーナ部半径をRとした
とき(R+7)mmの基準範囲内になるように、鋼板に対
してコーナ予定部に沿って複数本の焼入強化部を形成し
た後、ハット型鋼板部材をプレス成形し、ハット型衝撃
圧壊試験材を製作した。実施例で使用したハット型鋼板
部材の横断面形状を図7に示す。図中の数字は各コーナ
を構成する面の識別番号である。図7(B)の形状のも
のは、表2中の試料No.15及び18に用いたものであ
り、他の試料は図7(A)のものを用いた。表2および
表3に、各試料の鋼種、鋼板の種類、強化方法、コーナ
部半径、焼入強化部の形成位置、各コーナ構成面におけ
る強化部の幅及び幅合計の占有率を示す。同表中の強化
幅欄の「1〜12」の記号は図7に示す各コーナの構成
面に対応している。また、比較のため、部分焼入強化を
行わない鋼板を用いて、同様にして衝撃圧壊試験材を製
作した。
験により衝撃圧壊吸収エネルギーを求め、部分焼入強化
を行っていないものに対する、部分焼入強化を行ったも
のの吸収エネルギーの向上率を求め、これにより耐衝撃
圧壊特性を評価した。表2および表3に部分強化による
吸収エネルギーの向上率を併せて示す。
明範囲の鋼成分を有し、焼入強化部を基準範囲内に形成
した試験材では10%以上の吸収エネルギーの向上が認
められる。これに対し、C、Mnが本発明範囲外の比較
例試料No. 1〜3では、吸収エネルギー向上率が5%以
下であり、部分強化の効果が不足していることが分か
る。
率が20〜21%である試料No. 1〜3,5,6,1
0,14,16,22,23,26,31,35のC量
とMn量による衝撃圧壊吸収エネルギーの向上率を整理
したものを図8に示す。同図から明らかなように、10
%以上の吸収エネルギー向上率を得るためには、C量が
0.05%以上かつMn量が0.5%以上必要であるこ
とが分かる。もっとも、既述の通り、鋼板のプレス成形
性や溶接性を著しく低下させないために、本発明ではC
量の上限を0.3%、Mnの上限を3.0%と規定して
いる。
する鋼板を用いて、鋼板部材の横断面においてコーナ部
外周面上のコーナ部中心からコーナ部半径をRとしたと
き(R+7)mmの基準範囲内に焼入強化部を形成するの
で、素材鋼板のプレス成形性を損なうことなく、少量の
焼入強化部の形成により、コーナに沿った方向の強度を
効果的に向上させることができ、耐衝撃破壊特性に優れ
た高強度鋼板部材を容易に得ることができ、また焼入強
化部の形成を軽減することができるため、生産性も良好
であり、耐食性の劣化も防止することができる。
の面について、前記基準範囲内における焼入強化部の幅
合計の占有率を20%以上とすることにより、強度レベ
ルが1ランク上の高強度鋼板を使用したのと同等以上の
耐衝撃破壊特性を得ることができる。
衝撃圧壊試験材の斜視図(a)及びA矢視断面図(b)
である。
響を示すグラフである。
えた衝撃圧壊試験材の横断面図(a)およびコーナ部拡
大図(b)である。
ギーとの関係を示すグラフである。
(強化部占有率)と衝撃圧壊吸収エネルギー向上率との
関係を示すグラフである。
示す斜視図である。
ある。
壊吸収エネルギーの向上率に及ぼす影響を示すグラフで
ある。
Claims (4)
- 【請求項1】 重量%で、C:0.05〜0.3%、M
n:0.5〜3.0%を含有する鋼板がプレス成形され
た鋼板部材であって、該鋼板部材の横断面において折り
曲げコーナ部外周面上の中心からコーナ部を形成する二
面の内の少なくとも一面上にコーナ部外周面の半径をR
としたとき(R+7)mmの基準範囲を設定し、該基準範
囲内でコーナ部に沿って1又は複数の焼入強化部が形成
された耐衝撃圧壊特性に優れた高強度鋼板部材。 - 【請求項2】 鋼板部材の全コーナを構成する全ての面
について、前記基準範囲内における焼入強化部の幅合計
の基準範囲合計長に対する占有率が20%以上である請
求項1に記載した耐衝撃圧壊特性に優れた高強度鋼板部
材。 - 【請求項3】 鋼組成が、重量%で、C :0.05〜
0.3%、Mn:0.5〜3.0%、Si:2.0%以
下、P :0.2%以下、Al:0.1%以下を含み、
残部がFeおよび不可避的不純物からなる請求項1又は
2に記載した耐衝撃圧壊特性に優れた高強度鋼板部材。 - 【請求項4】 鋼組成が更にB:0.0002〜0.0
03%、Cr:2.5%以下、Mo:1.0%以下、T
i、Nb、Zr、V、W:各0.1%以下、Cu:2.
5%以下、Ni:1.5%以下、Ca:0.02%以
下、のいずれか1種以上を含む請求項3に記載した耐衝
撃圧壊特性に優れた高強度鋼板部材。
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JP33500097A JP3347994B2 (ja) | 1997-11-18 | 1997-11-18 | 耐衝撃圧壊特性に優れた高強度鋼板部材 |
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1997
- 1997-11-18 JP JP33500097A patent/JP3347994B2/ja not_active Expired - Fee Related
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