JP3347491B2 - 球面収差補正静電型レンズ - Google Patents

球面収差補正静電型レンズ

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JP3347491B2
JP3347491B2 JP24620894A JP24620894A JP3347491B2 JP 3347491 B2 JP3347491 B2 JP 3347491B2 JP 24620894 A JP24620894 A JP 24620894A JP 24620894 A JP24620894 A JP 24620894A JP 3347491 B2 JP3347491 B2 JP 3347491B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、球面収差補正静電型レ
ンズに関し、特に、電子あるいはイオンビームに対する
軌道の途中にメッシュあるいはフォイルを配置して、±
数10°の入射角まで球面収差を補正した静電型レンズ
に関する。
【0002】
【従来の技術】通常、電子顕微鏡等に用いられる軸対称
なレンズでは、静電型、磁界型にかかわらず球面収差を
ゼロにすることができないことが証明されており、これ
はシェルツァーの定理と呼ばれている(0.Sherzer,Z.Ph
ysik 101,593(1936))。球面収差は装置の分解能あるい
は感度を決める最も重要な要因の1つであり、この収差
を補正する試みが現在まで多くなされている。
【0003】球面収差によるビームのボケは、図8を参
照にして、 Δr=CS3α0 3+CS5α0 5+CS7α0 7+…… の形に表される。ここで、α0 は物面でのビームの出射
角であり、CS3は3次、CS5は5次、・・・の球面収差
係数と呼ばれる。なお、5次以上の球面収差係数がゼロ
の場合、図8の状態は、3次の球面収差係数が正の状態
である。α0 が小さければ、CS3だけ考えればよいが、
α0 が大きくなると、それより高次の項も効いてくる。
通常、TEM、SEMでは、CS3しか考慮しないが、こ
れは、Δrが非常に小さな値しか許されず、球面収差の
影響が十分小さくなるまでα0 を絞らなけれならないか
らである(α0 :〜数10mrad)。したがって、結
果的にはCS3だけ考えれば十分ということになる。一
方、光学レンズ系では球面収差を完全に補正することが
可能であり、±45°あるいはそれ以上の角度まで利用
できるものがある。
【0004】さて、シェルツァーの定理では、ビームが
自由空間を通過することが仮定されている。そこで、途
中にビームが透過できるようなメッシュあるいはフォイ
ルを置いて、その周りに適当な電場を作ることにより、
球面収差を補正できる可能性がある。この方法はシェル
ツァー自身によって提案されたものであり(0.Sherzer,
Optik 2,114(1947) )、その後、ティプケ(D.Typke,Op
tik 34,573(1972))、ホッホ(H.Hoch,et al.,Optik 4
6,463(1976))、日比野(M.Hibino,et al.,J.Electoron
Microsc.,25,229(1976) )等によって理論的な解析及
び試作が行われている。
【0005】シェルツァーによる提案では、メッシュ
(あるいは、フォイル)は平面状のものを想定してい
る。この場合、CS3は理論上はゼロにできるが、より高
次の係数を同時に補正できない。先に述べたように、現
状のTEM、SEMでは装置の性能を決めているのはC
S3であり、これをゼロにできれば、それだけで飛躍的な
向上が望める。しかし、光学レンズと同等の大きな角度
まで利用しようとすると、CS3をゼロにするだけでは不
十分である。
【0006】そこで、メッシュを球面あるいは一般の曲
面(非球面)にした場合の解析がゴーカム(A.A.Gorku
m,J.Vac.Sci.Technol.B1(4)1312(1983))によって行わ
れ、メッシュが球面の場合は、平面の場合に比べてそれ
ほどの補正効果の向上はなく(数°まで)、非球面メッ
シュによって初めて±数10°の大きな角度まで球面収
差が補正できることが示された。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかし、非球面メッシ
ュあるいはフォイルを精度よく加工、設置することは、
非常に困難であり、これに対して、球面メッシュあるい
はフォイルで広い角度まで球面収差が補正が可能であれ
ば、現実的な面で非常に有利になる。
【0008】本発明はこのような従来技術の問題点に鑑
みてなされたものであり、その目的は、球面メッシュあ
るいはフォイルを用いて±数10°の角度まで球面収差
を補正した静電型レンズを提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成する本発
明の球面収差補正静電型レンズは、物面側に凹面形状の
光軸を中心軸とする回転体面からなるメッシュ又はフォ
イルであって、所定物面位置上の物体の負の球面収差を
有する拡大虚像を形成するように配置された単一のメッ
シュ又はフォイルと、その像面側に光軸に同軸に配置さ
れ、前記拡大虚像の実像を形成し正の球面収差を生じる
収束電場を形成する同心面からなる複数の電極とを備え
ていることを特徴とするものである。
【0010】この場合、上記の凹面形状は球面であるこ
とが望ましい。また、複数の電極は4段以上の電極から
なることが望ましい。さらに、複数の電極それぞれの電
極の相対電位を制御可能にする制御装置を備えているこ
とが望ましい。
【0011】本発明の球面収差補正静電型レンズは、ま
た、物面側に凹面形状の光軸を中心軸とする回転体面か
らなるメッシュ又はフォイルであって、所定物面位置上
の物体の負の球面収差を有する拡大虚像を形成するよう
に配置された単一のメッシュ又はフォイルと、その像面
側に光軸に同軸に配置され、前記拡大虚像の実像を形成
し正の球面収差を生じる収束電場を形成する同心面の抵
抗膜からなる電極とを備えているものによっても実現で
きる。
【0012】
【作用】本発明においては、物面側に凹面形状の光軸を
中心軸とする回転体面からなるメッシュ又はフォイルで
あって、所定物面位置上の物体の負の球面収差を有する
拡大虚像を形成するように配置された単一のメッシュ又
はフォイルと、その像面側に光軸に同軸に配置され、前
記拡大虚像の実像を形成し正の球面収差を生じる収束電
場を形成する同心面からなる複数の電極とを備ているの
で、±数10°の入射角まで球面収差を補正した集束レ
ンズを実現することが可能となる。
【0013】
【実施例】以下、本発明の球面収差補正静電型レンズの
原理と実施例について説明する。まず、本発明のレンズ
の基本的な原理を説明するが、その考え方は、光の光学
(以下、単に光学と言う。)のアナロジーから、従来、
シェルツァーの定理により回転対称なレンズによって負
の球面収差を発生させることができないとされていたの
を、球面状のメッシュによりこの負の球面収差を発生さ
せることができることを実証的に見出し、これに基づい
て、正の球面収差を発生させる静電型レンズをその球面
メッシュの後段に配置して、全体として球面収差を広い
角度にわたって補正するものである。以下、この原理に
ついて説明する。
【0014】光学においては、球面屈折面により、ある
1つの球面が幾何光学的収差なしに別の球面に結像可能
であることが知られている(M.Born and E.Wolf,Princi
plesof Optics sixth ed.,Pergamon Press,Oxford(198
0))。図2は、その状態を示している。物点P0 から発
生する角度α0 の光線は、半径Rの球面界面Sにより屈
折される。P0 の位置は、球面の前方からの距離s0
より表される。入射角Φ0 及び屈折角Φ1 の間の関係
は、スネルの法則から、n0 sin(Φ0 )=n1 si
n(Φ1 )により決定される。ここで、n0 及びn
1 (<n0 )は、それぞれ、球面Sの内側と外側とにお
ける屈折率である。s0 =R(1+n1 /n0)である
ときに、虚像P1 がα0 に関係なくs1 =R(1+n0
/n1 )に球面収差なしに形成されるということが、幾
何光学により証明されている。
【0015】系の対称性により、半径OP0 の球面上の
全ての物点は、球面収差なしに、半径OP1 の球面上の
対応する点に結像される。この結果、コマ収差が消え
る。このようなP0 とP1 とは不遊点(アプラナティッ
ク点)と呼ばれる。
【0016】s0 の変化に対して球面収差がどのように
変化するかを考察するために、3次の球面収差係数CS3
についての式を用いる。像位置s1 は、α0 のべき級数
として表現することができ、第2項までの式は次のよう
になる。
【0017】 s1 =s1G+CS3α0 2 (1) ここで、s1Gは、ガウス像の位置、すなわち、α0 →0
に対する像位置である。(ガウス像面における縦収差量
は、α0 3 に比例し、CS3は3次の球面収差係数と呼ば
れている。)s1GとCS3とは、以下の式にて与えられ
る。
【0018】 s1G=n1 0 R/[n0 R−(n0 −n1 )s0 ] (2) CS3=Q2 /2n1 ×s0 21G 2 (1/n0 0 −1/n1 1G)(3) 式(3)における量Qはアッベの不変量と呼ばれてお
り、次のようなものである。
【0019】 Q=n0 (1/R−1/s0 )=n1 (1/R−1/s1G) (4) n0 、n1 及びRを既知の定数と仮定して、s0 に対す
るCS3の符号の依存関係を考察する。CS3の符号は、式
(3)の最終項により決定され、これは式(2)を用い
て次のように表現される。
【0020】 (1/n0 0 −1/n1 1G)=1/n1 0 R×(n0 /n1 −1) ×[s0 −(1+n1 /n0 )R] (5) 以上から、CS3は、期待されていたように、s0 =R
(1+n1 /n0 )においてゼロになることが分かる。
重要な事実は、CS3の符号が物体位置s0 において変化
することができるということである。CS3は、上述の値
(不遊点)よりも大きなs0 において正であり、その反
対側において負である。
【0021】上記の系においては虚像のみが得られる
が、光線の発散角度は減少することができる。適当な配
置により別の屈折球面を付加することにより、次々と続
く虚像P2 、P3 、・・・が球面収差なしに結像させる
ことができ、そして、発散角度は、図3に示すように、
さらに減少させることができる。この原理は、高倍率顕
微鏡の対物レンズの構成に適用されている。
【0022】以上において、光学における不遊点前後で
3次の球面収差係数CS3の符号が変わることを示した
が、次に、電子光学の静電型電子レンズにおいてそのア
ナロジーが言えることを説明する。
【0023】静電型のレンズのための電子光学は、連続
分布を有する電気ポテンシャル分布Φ(x、y、z)を
光学における屈折率n(x、y、z)に対して、n
(x、y、z)=Φ1/2 (x、y、z)と置き換えるこ
とにより、光学の問題として処理することができる(W.
Glaser,Grundlagen der Electronenoptik,Springer,Vie
nna(1952) )。(Φのゼロ位置は、電子の運動エネルギ
ーがゼロとなる点と一致していなければならない)。し
たがって、静電型レンズにおける等ポテンシャル線は、
一連の光線の屈折面として考えることができる。屈折率
の急峻な変化を有する屈折面は、電子ビームに対する電
気二重層と対応している。このような電場は、微小距離
を有する二重メッシュにより発生されるが、2つ以上の
メッシュを用いることは、電子の透過性を考えると、不
利となる。
【0024】ある電気ポテンシャルの1つの球面メッシ
ュを設け、そして、別のポテンシャルを有するいくつか
の別の電極をそのメッシュの近傍に配置する場合には、
ある電場がメッシュの周囲に発生する。このような電場
は、別の電極の形状及びポテンシャルに従って異なった
形状となるが、メッシュ表面近傍における電場は、本質
的には球面対称となっている。したがって、メッシュ表
面近傍のみの電場を考慮する場合には、前記したように
光学のアナロジーから、ゼロ、もしくは、負の球面収差
を実現できることが期待される。
【0025】そこで、先ず、球面対称電場における球面
収差を調べる。このような場における電子軌道の光線追
跡の結果を図4、図5に示す。それぞれの図において、
0はメッシュ表面を示し、S1 は光線追跡の最終点に
対する境界を示している。物点P0 の位置は、メッシュ
表面S0 からそれぞれその直径の0.65、1.1にあ
る。虚像における球面収差の符号は、メッシュに近い物
点P0 に対して負であり(図4)、メッシュから遠くの
物点P0 に対しては正である(図5)。少なくとも3次
まで球面収差がゼロの条件は、図4と図5の間にある。
【0026】次に、図3のケースに一致する電場を試み
てみる。図3のケースにおいては、全ての屈折面は球面
であったが、このような等ポテンシャル線は、ラプラス
方程式の制限により、正確に実現することはできない。
半径Rの球面上でΦ=0の境界条件の下でのラプラース
の方程式の回転対称的な解は、球面座標ρ,θ,φにお
いて次の一般形をとる(H.Hoch,E.Kasper and D.Kern,O
ptik 46,463(1976) )。
【0027】 ここで、Pn (X)はルジャンドルの多項式を示してい
る。電場の球面対称成分は、n=0の項により示され
る、そして、n=1,2,・・の項は、この対称性から
の歪みをつくる。図3のケースにほぼ一致する電気ポテ
ンシャルの分布は、A1 /A0 >0を有するn=0とn
=1の項により得ることができる。このような場におけ
る光線追跡の例を図6に示す。図5と同じ物点P0 に対
して、非常に大きな負の球面収差が発生していることが
分かる。球面収差の符号と量は、物体の位置s0 と、展
開係数間の関係とにより制御することができる。
【0028】さて、このように球面収差が負のレンズが
実現できても、それは虚像を作るものでしかない。電子
ビームを収斂させかつ実像を形成するためには、メッシ
ュ面近傍の電場に収束性の電場が続くようにしなければ
ならない。メッシュ近傍の電場により結像される虚像の
球面収差の符号と量とは、上記の議論から分かるよう
に、制御することができる。したがって、収斂領域の収
差を虚像点の収差により相殺させることが可能となる。
【0029】収束電場における球面収差の符号について
簡単に述べる。よく知られた前記のシェルツァーの定理
に従うと、球面収差は、通常のメッシュあるいはフォイ
ルを含まないレンズの場合、レンズ全体(実の物体から
実の像まで)では、常に正でなければならない。しかし
ながら、球面収差の符号は、上記したように、静電型レ
ンズの発散領域のみに注目する場合には、局部的には負
となり得る。電子ビームを光軸から大きく離れないよう
にするためには、収束電場において収斂領域が支配的で
あることが好ましい。このケースにおいて、球面収差の
符号はそこでは正であり、しがって、負の球面収差が虚
像領域で発生されることが必要である。
【0030】式(6)により、収斂領域を含む全体のレ
ンズの電場分布を示すことができる。その場合の光線追
跡の1例を図7に示す。これは、n=0,1,2のみの
展開係数を用い、A1 /A0 =0.4、A2 /A0 =−
0.1にして、球面収差が可能な限り小さく減じるよう
に選択している。メッシュ近傍のポテンシャル分布は図
6のものに似ていることが分かる。このことは、メッシ
ュ近傍以外の残りの領域における収差の補正のために、
メッシュ近傍のポテンシャル分布により負の球面収差が
発生されていることを示している。全体の球面収差の量
は、通常の静電型レンズよりもはるかに小さく抑制され
ている。
【0031】図7に示したような電場分布に類似した電
場を形成することができれば、非常に小さな球面収差を
有するレンズが得られる。このような電場を得る最も直
接的な方法は、例えば、必要とされる境界ポテンシャル
分布を発生するために、光軸の周りで図7に示す線A−
A′を回転して形成される面に沿って電極面を設定し、
そこに多数の電極を並べて徐々に電位を変化させて行く
ことにより、このような場を実現できる。また、抵抗膜
を用いて電位を連続的に変化させるようにしてもよい。
【0032】しかしながら、この方法では電極の加工精
度や電源の複雑さ、あるいは、抵抗膜を用いた場合は、
電場の軸対称性等の問題があり、現実には実現が容易で
はない。そこで、なるべく少ない電極で同等の効果が得
られるように最適化する。
【0033】実際の設計の結果の1例を図1に示す。図
1は、電子を集めて取り出すためのレンズの設計例であ
り、球面メッシュMを含む電極EL1を含めて4つの軸
対称な電極EL1〜EL4からなる。球面メッシュMが
一体に設けられた電極EL1と、電極EL4とはアース
・ポテンシャルにある。電極EL2とEL3は、収束状
態と極小収差状態との両方を満足するように、適切なポ
テンシャルに設定される。図中、破線で光軸上ポテンシ
ャルを示す。像面でのビームのボケは、物点から像まで
の距離が500mm又はそれ以下に設定される場合に
は、60°の開口角度に対して直径で1mmよりもより
小さい(収差量と電極のスケールは、相互に比例してい
る。)。この収差量は、例えば電子スペクトロメータ用
のインプットレンズに適用するのに許容される量であ
る。収差量が上述の値よりもより小でなければならない
場合には、より多くの自由度、特に、より多くの電極が
必要となる。図7から、電極EL1〜EL4の内側面に
非常に近接した電子ビームに対して球面収差が補正され
るということが分かる。このような状態は、従来の通常
の電子レンズによっては決して実現され得ない。この特
徴は、レンズ系のための空間が厳しく規制される場合に
特に重要となる。
【0034】以上のことから、本発明に基づいて、球面
メッシュを用いて±数10°に至る広い入射角まで球面
収差を補正した静電型レンズは、図9に模式的に示した
ように、4段以上の同軸多段電極EL1〜ELnから構
成し、第一段電極に球面メッシュMを設け、第二段目以
降の電極EL2〜ELnの電圧を所定の値に設定できる
コントローラC(図6においては、各電極に接続した可
変電源)を設けたレンズシステムによって実現すること
ができる。
【0035】このようなレンズシステムでは、第二段目
以降の電極電圧についての自由度を用いて、図1の実例
のように、メッシュMの形状及び電極EL1〜ELnの
形状に対応して決まる最適ポテンシャル分布が得られる
ため、球面収差をほとんどなくして高い集束性を実現す
ることができる。
【0036】以上説明したように、球面メッシュと電極
形状を最適化した有限個の多段電極との構成により、多
段電極で生じる正の球面収差を球面メッシュで発生する
負の球面収差で打ち消し、±数10°の入射角まで球面
収差を補正した集束レンズを実現することができる。
【0037】ところで、上記においては、球面メッシュ
を用いるものとしたが、集束させる電子のエネルギーが
極めて高く透過可能であれば、メッシュの代わりにフォ
イルを用いてもよい。また、それらの形状は、球面以外
の物面側に凹面形状の回転体面であっても同様の効果を
達成し得る。さらに、後段の電極に関しては、図10に
示すように、入射エネルギーEO と出射エネルギーEP
の比が一定の場合には、2段目以降の電極EL2〜EL
nの電圧V1 、V2 、…VP はEO に比例して変化させ
ればよく、図のような抵抗分割の方法でも駆動可能であ
る。この場合、独立に変化させなければならない電源の
数が少なくできるので、単純で安価な構成で本発明のレ
ンズを実現することができる。
【0038】なお、前記したように、所望の電位分布が
達成できるよう製作された連続抵抗体が内面に塗布され
た単一の構造の電極であっても、同様の効果が期待でき
る。
【0039】以上、本発明の球面収差補正静電型レンズ
をその原理と実施例に基づいて説明してきたが、本発明
はこれら実施例に限定されずその原理に基づいて多くの
変形が可能である。
【0040】
【発明の効果】以上の説明から明らかなように、本発明
球面収差補正静電型レンズによると、物面側に凹面形状
の光軸を中心軸とする回転体面からなるメッシュ又はフ
ォイルであって、所定物面位置上の物体の負の球面収差
を有する拡大虚像を形成するように配置された単一のメ
ッシュ又はフォイルと、その像面側に光軸に同軸に配置
され、前記拡大虚像の実像を形成し正の球面収差を生じ
る収束電場を形成する同心面からなる複数の電極とを備
ているので、±数10°の入射角まで球面収差を補正し
た集束レンズを実現することが可能となる。このような
レンズをオージェ電子分光装置、X線光電子分光装置等
のインプットレンズとして使用すれば、感度の大幅な改
善が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の1実施例の球面収差補正静電型レンズ
の断面図である。
【図2】光学における球面での結像を示すための図であ
る。
【図3】光学において一連の球面で無収差のレンズが構
成できることを示すための図である。
【図4】1つの球面メッシュで負の球面収差が発生する
場合の配置を示す図である。
【図5】1つの球面メッシュで正の球面収差が発生する
場合の配置を示す図である。
【図6】図3のケースに一致する電場で負の球面収差が
発生する様子を示す図である。
【図7】メッシュを用いて正の球面収差と負の球面収差
を相殺させるための電場分布及び光線追跡の1例を示す
図である。
【図8】球面収差によるビームのボケを説明するための
図である。
【図9】本発明に基づいて球面メッシュと4段以上の同
軸多段電極を用いたレンズシステムの構成例を示す図で
ある。
【図10】レンズシステムの他の構成例を示す図であ
る。
【符号の説明】
0 …物点 S…球面界面 P1 、P2 、P3 …虚像 O…原点(中心) S0 …メッシュ表面 S1 …光線追跡の最終点に対する境界 M…球面メッシュ EL1〜ELn…電極 C…コントローラ
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭56−107463(JP,A) 特開 平1−117258(JP,A) 特公 昭44−587(JP,B1) 特公 昭48−22530(JP,B1) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H01J 37/153 H01J 37/12 H01J 37/252 H01J 49/06 H01J 3/18

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 物面側に凹面形状の光軸を中心軸とする
    回転体面からなるメッシュ又はフォイルであって、所定
    物面位置上の物体の負の球面収差を有する拡大虚像を形
    成するように配置された単一のメッシュ又はフォイル
    と、その像面側に光軸に同軸に配置され、前記拡大虚像
    の実像を形成し正の球面収差を生じる収束電場を形成す
    る同心面からなる複数の電極とを備えていることを特徴
    とする球面収差補正静電型レンズ。
  2. 【請求項2】 前記の凹面形状が球面であることを特徴
    とする請求項1記載の球面収差補正静電型レンズ。
  3. 【請求項3】 前記の複数の電極が4段以上の電極から
    なることを特徴とする請求項1又は2記載の球面収差補
    正静電型レンズ。
  4. 【請求項4】 前記の複数の電極それぞれの電極の相対
    電位を制御可能にする制御装置を備えていることを特徴
    とする請求項1から3の何れか1項記載の球面収差補正
    静電型レンズ。
  5. 【請求項5】 物面側に凹面形状の光軸を中心軸とする
    回転体面からなるメッシュ又はフォイルであって、所定
    物面位置上の物体の負の球面収差を有する拡大虚像を形
    成するように配置された単一のメッシュ又はフォイル
    と、その像面側に光軸に同軸に配置され、前記拡大虚像
    の実像を形成し正の球面収差を生じる収束電場を形成す
    る同心面の抵抗膜からなる電極とを備えていることを特
    徴とする球面収差補正静電型レンズ。
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