JP3334557B2 - パワーステアリング装置及び産業車両 - Google Patents

パワーステアリング装置及び産業車両

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JP3334557B2
JP3334557B2 JP10930497A JP10930497A JP3334557B2 JP 3334557 B2 JP3334557 B2 JP 3334557B2 JP 10930497 A JP10930497 A JP 10930497A JP 10930497 A JP10930497 A JP 10930497A JP 3334557 B2 JP3334557 B2 JP 3334557B2
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steering angle
angle
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steering wheel
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和男 石川
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Toyota Industries Corp
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、操舵輪の操舵角に
対する目標ハンドル角とハンドルの実ハンドル角とのず
れを補正するパワーステアリング装置及び同パワーステ
アリング装置を備えた産業車両に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来より、例えばフォークリフト等の産
業車両には、油圧シリンダ(ステアリングシリンダ)に
て操舵輪を操舵する全油圧式パワーステアリング装置が
使用されている。つまり、ハンドルの操舵量に基づき、
ステアリングユニットがその操舵量に比例する量の作動
油をステアリングシリンダに供給する。すると、ハンド
ルの操舵量に基づき、ステアリングシリンダにて操舵輪
が操舵される。
【0003】ところが、ステアリングユニットが供給す
る作動油の流量は、ハンドルの操舵速度にも依存してい
る。特に、操舵速度が遅いときには、ステアリングユニ
ットが供給する作動油量が操舵量に対して少なくなる。
又、ステアリングシリンダ等の油圧系には、オイルリー
クがある。従って、ハンドル操作に伴って、ハンドルの
実際のハンドル角と操舵輪の実際の操舵角との関係がず
れることになる。
【0004】フォークリフトではハンドルに設けたノブ
にてハンドル操作を行っており、そのノブは車両が直進
状態のとき、すなわち、操舵角が「0°」のときに所定
位置に配置されるようにしている。この所定位置は、荷
の積み下ろし作業を行う際に車両の向きを微調整し易い
位置である。
【0005】そこで、このようにパワーステアリング装
置に発生するハンドル角と操舵角との関係のずれを解消
するためのパワーステアリング装置用ハンドル角補正装
置が、例えば特公平3−30544号公報や特公平4−
24270号公報にて提案されている。
【0006】図12は、特公平4−24270号公報に
て開示された、ハンドル角補正装置を備えたパワーステ
アリング装置を示している。このパワーステアリング装
置では、ハンドル90が操舵されるとステアリングユニ
ット91からハンドル90の操舵量に応じた作動油が右
操舵側供給管92あるいは左操舵側供給管93を介して
ステアリングシリンダ94の右操舵側油室95あるいは
左操舵輪油室96に供給され図示しない操舵輪がハンド
ル90の操舵量に基づく操舵角だけ右操舵あるいは左操
舵される。
【0007】このとき、実際のハンドル角θHAがハンド
ル角センサ97にて検出されるとともに、ステアリング
シリンダ94の実際のストローク位置Sxがストローク
センサ98にて検出される。制御装置99は、検出した
ハンドル角θHAに対するステアリングシリンダ94の正
規のストローク位置である目標ストローク位置Sgを求
める。そして、制御装置99は、この目標ストローク位
置Sgと実際のストローク位置Sxとの偏差が許容範囲
を越えるときにはハンドル操舵時に両供給管92,93
間に設けられた電磁制御弁100を制御して、ハンドル
操作に基づいてステアリングユニット91から一方の油
室95(96)に供給される作動油の一部をステアリン
グユニット91に還流させる。すると、ハンドル90が
操舵されてもステアリングシリンダ94にはハンドル9
0の操舵量に比例する量の作動油が供給されないため、
そのハンドル操作によるストローク量が本来のストロー
ク量に対して小さくなる。このようにしてストローク位
置Sxを目標ストローク位置Sgに一致させることによ
り、ハンドル角と操舵角とのずれを解消するようにして
いる。
【0008】製造時に、操舵輪が直進状態であるときに
ストロークセンサ98が出力する検出信号の値が所定値
となるように同ストロークセンサ98の取り付け状態を
調整している。そして、ストロークセンサ98からこの
所定値の検出信号が出力されるときに、制御装置99が
設定する目標ストローク位置Sgがハンドル90のノブ
位置が所定位置となるハンドル角に対応するように設定
している。従って、車両が直進状態のときには、ノブが
所定位置に配置されるようになっている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】ところが、操舵輪は、
そのアライメントが経年変化により製造時の状態からず
れていく。一方、ストロークセンサ98は、操舵輪のア
ライメントのずれに拘らずステアリングシリンダ94の
ストローク位置Sxに基づく検出信号を出力する。従っ
て、アライメントがずれたときに、操舵輪の直進状態に
対応してストロークセンサが出力する検出信号の値も、
当初の所定値からずれることになる。又、制御装置99
は、操舵輪のアライメントの変化に関係なく、ストロー
クセンサ98から出力された検出信号の値に対応する目
標ストローク位置Sgを求め、ストローク位置Sxをそ
の目標ストローク位置Sgに補正する制御を行う。
【0010】例えば、図13に示すように、操舵輪の実
際の操舵角θTに対して出力されるストロークセンサ9
8の検出信号Vsの値が、操舵輪のアライメント変化に
より当初の所定値から高い方にシフトしたとすると、操
舵角θT=0°で出力される検出信号Vs の値Vs1は
製造時の所定値Vs2よりも高くなる。制御ユニット9
9は、この検出信号Vsの値Vs2に基づいて目標スト
ローク位置Sgを設定するため、直進状態におけるハン
ドル角は操舵角θTがθxのときのハンドル角に補正さ
れることになる。このため、直進状態におけるノブ位置
が所定位置からずれる問題があった。
【0011】本発明は、上記問題点を解決するためにな
されたものであって、その目的は、ハンドルの実ハンド
ル角を操舵輪の操舵角に対応する目標ハンドル角に補正
制御するハンドル角補正装置を備えたパワーステアリン
グ装置及び同パワーステアリング装置を備えた産業車両
において、操舵輪のアライメントの変化により操舵角検
出手段にて検出される操舵角検出値が変化しても実ハン
ドル角を操舵角に対応する目標ハンドル角に補正制御す
ることができるようにすることにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】上記問題点を解決するた
め、請求項1に記載の発明は、作動油を供給する作動油
供給手段と、作動油が供給される一対の油室を備え、一
方の油室に作動油が供給されるとともに他方の油室から
作動油を排出することにより操舵輪を右又は左操舵する
操舵用油圧シリンダと、前記作動油供給手段から供給さ
れる作動油を前記操舵用油圧シリンダの一方の油室に供
給するとともに他方の油室から排出される作動油を同作
動油供給手段に還流させる作動油供給制御手段と、前記
作動油供給手段の供給側と還流側とを連通可能に設けら
れた電磁制御弁と、ハンドルの実ハンドル角をハンドル
がその全操舵範囲で車両の直進時の操舵角に対応した正
規の操舵状態と同一となる各操舵状態からのハンドル操
舵角にて検出するハンドル角検出手段と、操舵輪の操舵
角を検出し、その操舵角に基づく操舵角検出値を出力す
る操舵角検出手段と、操舵角検出値に対応して予め設定
された目標ハンドル角から、出力された操舵角検出値に
対する目標ハンドル角を決定する目標ハンドル角決定手
段と、実ハンドル角と目標ハンドル角とのずれが許容値
以上であるときに前記電磁制御弁を制御して前記作動油
供給手段から供給される作動油を還流させるハンドル角
補正手段と、車両が直進状態であることを検出する直進
状態検出手段と、車両が直進状態であるときに前記操舵
角検出手段が出力する操舵角検出値を車両の直進時にお
ける操舵角に対する操舵角検出値として設定し、この基
準操舵角検出値に基づき各操舵角検出値からそのときの
操舵角に対する正規の目標ハンドル角が設定されるよう
に操舵角検出値を補正する操舵角検出値補正手段とを備
えた。
【0013】請求項2に記載の発明は、請求項1に記載
の発明において、前記直進状態検出手段は、車両のヨー
レートを検出するヨーレート検出手段と、ヨーレート検
出手段にて検出されるヨーレートが車両の直進状態に対
応した所定値以下であるか否かを判断する直進状態判定
手段とを備えた。
【0014】請求項3に記載の発明は、請求項2に記載
の発明において、前記直進状態検出手段は、車両の車速
を検出する車速検出手段を備え、前記直進状態判定手段
は、検出された車速が前記ヨーレートの検出精度が高く
なる所定車速以上のときに検出されたヨーレートが車両
の直進状態に対応した所定値以下であるか否かを判断す
る。
【0015】請求項4に記載の発明は、請求項1〜請求
項3のいずれか一項に記載の発明において、前記操舵角
検出値補正手段は、前記直進状態検出手段にて車両が直
進状態であると判断されたときに前記操舵角検出手段が
出力した所定複数回の各操舵角検出値を平均化した平均
化操舵角検出値を車両の直進時における操舵角に対する
基準操舵角検出値とする。
【0016】請求項5に記載の発明は、請求項4に記載
の発明において、前記操舵角検出値補正手段は、所定時
間内に前記所定複数回だけ車両が直進状態であることが
判断されたときにのみ前記平均化操舵角検出値を直進時
における操舵角に対する基準操舵角検出値とする。
【0017】請求項6に記載の発明は、産業車両には請
求項1〜請求項5のいずれか一項に記載のパワーステア
リング装置を備えた。
【0018】請求項7に記載の発明は、請求項6に記載
の発明において、前記産業車両は、フォークリフトであ
る。請求項8に記載の発明は、作動油を供給する作動油
供給手段と、作動油が供給される一対の油室を備え、一
方の油室に作動油が供給されるとともに他方の油室から
作動油を排出することにより操舵輪を右又は左操舵する
操舵用油圧シリンダと、前記作動油供給手段から供給さ
れる作動油を前記操舵用油圧シリンダの一方の油室に供
給するとともに他方の油室から排出される作動油を同作
動油供給手段に還流させる作動油供給制御手段と、前記
作動油供給制御手段の供給側と還流側とを連通可能に設
けられた電磁制御弁と、ハンドルの実ハンドル角を検出
するハンドル角検出手段と、操舵輪の操舵角を検出し、
その操舵角に基づく操舵角検出値を出力する操舵角検出
手段と、操舵輪の全操舵範囲における操舵角に対する各
操舵角検出値に対応して予め設定された目標ハンドル角
から、出力された操舵角検出値に対する目標ハンドル角
を決定する目標ハンドル角決定手段と、実ハンドル角と
目標ハンドル角とのずれが許容値以上であるときに前記
電磁制御弁を制御して前記作動油供給制御手段から前記
操舵用油圧シリンダに供給される作動油を還流させるハ
ンドル角補正手段と、車両が直進状態であることを検出
する直進状態検出手段と、車両が直進状態であるときに
前記操舵角検出手段が出力する操舵角検出値を車両の直
進時における操舵角に対する基準操舵角検出値として設
定し、この基準操舵角検出値に基づき各操舵角検出値か
らそのときの操舵角に対する正規の目標ハンドル角が設
定されるように操舵角検出値を補正する操舵角検出値補
正手段とを備え、前記操舵角検出値補正手段は、前記直
進状態検出手段にて車両が直進状態であると判断された
ときに前記操舵角検出手段が出力した所定複数回の各操
舵角検出値を平均化した平均化操舵角検出値を車両の直
進時における操舵角に対する基準操舵角検出値とした
【0019】(作用) 請求項に記載の発明によれば、作動油供給制御手段が
作動油供給手段から供給される作動油をハンドルの操舵
方向に応じてその操舵量に基づく油量だけ操舵用油圧シ
リンダの一方の油室に供給するとともに他方の油室から
排出される作動油を作動油供給手段に還流させる。する
と、操舵用油圧シリンダがハンドルの操舵方向にその操
舵量に対応する分だけ作動し、操舵輪がハンドルの操舵
量に対応する操舵角だけ右又は左操舵される。このと
き、操舵角検出手段が操舵輪の全操舵範囲における各操
舵角を検出して出力する操舵角検出値に基づいて、各操
舵角に対する目標ハンドル角が決定される。決定された
目標ハンドル角とハンドル角検出手段にて検出された実
ハンドル角とにずれがあるときには、ハンドル角補正手
段にて電磁制御弁が制御され作動油供給制御手段から供
給される作動油の一部が還流される。すると、操舵用油
圧シリンダに供給される作動油の量が少なくなりハンド
ルの操舵量に基づく操舵輪の操舵量が小さくなるため、
実ハンドル角と目標ハンドル角とのずれが解消される。
【0020】一方、直進状態検出手段にて車両が直進状
態であることが検出される。車両が直進状態であるとき
には、操舵輪が直進時の操舵角となる。従って、設定さ
れた基準操舵角検出値は、そのときの操舵輪のアライメ
ント状態での直進時における操舵輪の操舵角に対する操
舵角検出値となる。そして、操舵角検出値補正手段に
て、そのとき操舵角検出手段から出力される操舵角検出
値が直進時の操舵角に対する基準操舵角検出値として設
定され、この基準操舵角検出値に基づき各操舵角検出値
からそのときの操舵角に対する正規の目標ハンドル角が
決定されるように操舵角検出値が補正される。この補正
された操舵角検出値に基づき目標ハンドル角決定手段に
て各操舵角検出値に対する目標ハンドル角が決定され
る。
【0021】従って、操舵輪のアライメント変化により
操舵角検出手段から出力される操舵角検出値がずれて
も、各操舵角検出値からそのときの操舵角に対する正規
の目標ハンドル角が決定される。
【0022】請求項に記載の発明によれば、請求項
に記載の発明の作用に加えて、車両の直進状態がヨーレ
ートにて検出されるため、操舵輪の直進時の操舵角に対
する操舵角検出値が簡単かつ確実に検出される。
【0023】請求項に記載の発明によれば、請求項
に記載の発明の作用に加えて、車速がヨーレートの検出
精度が高くなる所定車速以上のときに検出されたヨーレ
ートにて車両の直進状態が判断されるため、操舵輪の直
進時の操舵角に対する操舵角検出値が高い精度で検出さ
れる。従って、各操舵角に対する操舵角検出値が、操舵
角に対する正規の目標ハンドル角を設定する操舵角検出
値に高い精度で補正される。
【0024】請求項に記載の発明によれば、請求項
〜請求項いずれか一項に記載の発明の作用に加え
て、車両が直進状態であると判断されたときの所定複数
回の各操舵角検出値を平均化した平均化操舵角検出値が
車両の直進時における操舵角に対する基準操舵角検出値
として各操舵角検出値に対する目標ハンドル角が決定さ
れる。従って、操舵角検出手段等の検出誤差が小さくな
り、車両直進時における操舵輪の操舵角に対して出力さ
れる正確な操舵角検出値に基づいて各操舵角検出値に対
する目標ハンドル角が決定される。
【0025】請求項に記載の発明によれば、請求項
に記載の発明の作用に加えて、所定時間内に前記所定複
数回車両が直進状態であることが判断されたときにのみ
前記平均化操舵角検出値が直進時における操舵角に対す
る基準操舵角検出値とされる。従って、直進状態が所定
時間継続したときの操舵角角検出値を基準として各操舵
角検出値に対する目標ハンドル角が設定される。
【0026】請求項に記載の発明によれば、産業車両
の操舵輪が請求項1〜請求項いずれか一項に記載の
パワーステアリング装置にて操舵される。請求項に記
載の発明によれば、請求項に記載の発明において、フ
ォークリフトの操舵輪が操舵される。請求項に記載の
発明によれば、操舵角検出手段が操舵角に応じて出力す
る操舵角検出値から決定される目標ハンドル角と実ハン
ドル角とのずれが解消される。車両が直進状態であると
きに検出された操舵角検出値が直進時の操舵角に対する
操舵角検出値とされ、この操舵角検出値を基準として各
操舵角検出値からそのときの操舵角に対する目標ハンド
ル角が決定される。従って、操舵輪のアライメント変化
により操舵角検出手段が操舵角に対して出力する操舵角
検出値がずれても、各操舵角検出値からそのときの操舵
角に対する正規の目標ハンドル角が決定される。また、
車両が直進状態であると判断されたときの所定複数回の
各操舵角検出値を平均化した平均化操舵角検出値が車両
の直進時における操舵角に対する基準操舵角検出値とし
て各操舵角検出値に対する目標ハンドル角が決定され
る。従って、操舵角検出手段等の検出誤差が小さくな
り、車両直進時における操舵輪の操舵角に対して出力さ
れる正確な操舵角検出値に基づいて各操舵角検出値に対
する目標ハンドル角が決定される。
【0027】
【発明の実施の形態】以下、本発明を産業車両としての
フォークリフトのパワーステアリング装置に具体化した
一実施の形態を図1〜図10に従って説明する。
【0028】図2に示すフォークリフト1は、前輪駆動
及び後輪操舵の四輪車である。フォークリフト1の車体
1aの前部にはアウタマスト2が傾動可能に支持され、
同アウタマスト2にはインナマスト3が昇降可能に支持
されている。インナマスト3には、フォーク4が昇降可
能に支持されている。インナマスト3の上端にはスプロ
ケットホイール5が設けられている。アウタマスト1の
上端とフォーク4との間は、スプロケットホイール5に
掛装された図示しないチェーンにて連結されている。車
体1aの前部にはティルトシリンダ6が連結され、その
ピストンロッド6aの先端はアウタマスト2に連結され
ている。アウタマスト2の後側にはリフトシリンダ7が
配設され、その図示しないピストンロッドの先端はイン
ナマスト3の上端に連結されている。車体1aの前部左
右に設けられた各前輪8は、デフリングギア9及び図示
しない変速機を介してエンジン10に作動連結されてい
る。車体の後部上面には、ヨーレート検出手段としての
ヨーレートセンサ11が設けられている。ヨーレートセ
ンサ11としては、例えば、ジャイロスコープが使用さ
れる。
【0029】図1に示すように、車体1aに支持された
後輪車軸12には複動両ロッド型油圧シリンダからなる
操舵用油圧シリンダとしてのステアリングシリンダ13
が配設されている。ステアリングシリンダ13のシリン
ダチューブ14内にはピストン15が配設され、該ピス
トン15にてシリンダチューブ14内が油室R1及び油
室R2に区画されている。ピストン15の両面には操舵
ロッド16がそれぞれ取着され、各操舵ロッド16はシ
リンダチューブ14の各端部から延出されている。各操
舵ロッド16の端部には、後輪車軸12の両端において
回動可能に支持されたキングピン17にて支持されるナ
ックル18がレバー19を介して連結されている。各ナ
ックル18には、それぞれ操舵輪20が回動可能に支持
されている。各操舵輪20は、ステアリングシリンダ1
3の作動に基づき直進状態を操舵角θT=0°として、
右操舵又は左操舵される。
【0030】後輪車軸12の一方には、キングピン17
の回動位置を検出する操舵角検出手段としての操舵角セ
ンサ21が設けられている。この操舵角センサ21とし
ては、例えば、ポテンショメータが使用される。又、デ
フリングギア9のそばには、同ギア9の歯を検出する車
速検出手段としての車速センサ22が配設されている。
本実施の形態では、車速センサ22として磁気センサが
使用されている。
【0031】一方、車体1aにはステアリングシャフト
23が回動可能に支持され、ステアリングシャフト23
にはハンドル24が取着されている。ハンドル24には
ノブ25が設けられている。ハンドル24は、車両の直
進状態に対応する操舵輪20の操舵角θT =0°のとき
の操舵位置を実ハンドル角θH =0°として、右操舵又
は左操舵される。ステアリングシャフト23にはハンド
ル角検出手段としての回転変位検出センサが設けられて
いる。本実施の形態では、回転変位検出センサとして、
ロータリエンコーダ26が使用されている。このロータ
リエンコーダ26は、回転板26a及び検出部26bに
て構成されている。すなわち、ステアリングシャフト2
3には回転板26aが一体回動可能に取着され、回転板
26aの外周側には同回転板26aの回動量を検出する
検出部26bが配設されている。回転板26aには40
個のスリットが同一周上に等角度間隔に形成されてい
る。又、回転板26aには、回転板26aの回転の基準
位置を検出するための1個のスリットが前記40個のス
リットと異なる周上に形成されている。検出部26b
は、図示しない3個の受光素子及び発光素子を備えてい
る。各受光素子は、各スリットを介して検出する発光素
子から光に基づいてパルス信号をそれぞれ出力する。こ
のとき、各受光素子は、両パルス信号の位相が90°ず
れるように配設されている。1個の受光素子は、1個の
スリットを検出可能な位置に配設されている。受光素子
は、例えば、フォトトランジスタであり、発光素子は、
発光ダイオードである。ステアリングシャフト23は、
作動油供給制御手段としてのステアリングユニット27
に連結されている。
【0032】ステアリングユニット27は、バルブ部2
8とリリーフ弁29とからなる作動油供給装置である。
バルブ部28にはステアリングシャフト23が連結さ
れ、該ステアリングシャフト23の時計方向及び反時計
方向の回動に基づきその回動量に応じた油量の作動油を
各方向毎に区別された一対の給排ポートe,fの一方か
ら供給するとともに、その供給分だけ外部から戻される
作動油を他方の給排ポートe,fから受け入れる。又、
バルブ部28は、外部から供給される作動油を導入する
導入ポートg及びいずれかの給排ポートe,fに戻され
た作動油を排出する排出ポートhを備えている。導入ポ
ートgに接続された管路30と排出ポートhに接続され
た管路31との間には、導入ポートg側を流入側として
リリーフ弁29が接続されている。リリーフ弁29は、
管路30から導入ポートgに供給される作動油の油圧を
所定圧に制限する。
【0033】管路30にはエンジン10にて駆動される
油圧ポンプ32が接続され、管路31にはリリーフ弁2
9から排出される作動油を回収する油タンク33が接続
されている。本実施の形態では、リリーフ弁29、油圧
ポンプ32及び油タンク33にて作動油供給手段が構成
されている。
【0034】バルブ部28は、一方の給排ポートeが管
路34にてステアリングシリンダ13の油室R1に連通
され、他方の給排ポートfが管路35にて油室R2に連
通されている。管路34と管路35とは、バイパス管3
6にて接続されている。バイパス管36には、電磁制御
弁37及び絞り弁38が設けられている。電磁制御弁3
7は、ノーマルクローズ型2位置2ポート切換弁であ
り、i,jポートの2ポ37と、遮断位置37a及び連
通位置37bとを備えている。電磁制御弁37は、電磁
ソレノイド39が励磁されない非作動時には両ポート
i,j間を遮断する遮断位置37aとなる。又、電磁制
御弁37は、電磁ソレノイド39が励磁された作動時に
は両ポートi,j間を連通する連通位置37bに切り換
わる。絞り弁38は、電磁制御弁37が故障で連通位置
37bに固定されたままの状態になったときに、バイパ
ス管36を流れる作動油の流量を制限することでハンド
ル24による操舵を可能にする。
【0035】車体1aには、各センサ11,21,2
2,26からの各検出信号に基づいて電磁ソレノイド3
9を励磁制御する制御ユニット40が設けられている。
次に、パワーステアリング装置の電気的構成を図4に示
す電気ブロック図に従って説明する。
【0036】ヨーレートセンサ11、操舵角センサ2
1、車速センサ22及びロータリエンコーダ26は、そ
れぞれ制御ユニット40に電気的に接続されている。
又、電磁ソレノイド39は、制御ユニット40に電気的
に接続されている。
【0037】制御ユニット40は、A/Dコンバータ4
1,42、マイコン43、励磁回路44を備えている。
本実施の形態では、マイコン43にて目標ハンドル角決
定手段、ハンドル角補正手段、操舵角検出値補正手段、
直進状態判定手段が構成されている。又、ロータリエン
コーダ26及びマイコン43にてハンドル角検出手段が
構成されている。又、ヨーレートセンサ11、車速セン
サ22及びマイコン43にて直進状態検出手段が構成さ
れている。又、操舵角センサ21及びA/Dコンバータ
42にて操舵角検出手段が構成されている。
【0038】ヨーレートセンサ11は、車両走行時に車
両に働くヨーレートωを検出し、そのヨーレートωに基
づくヨーレート信号SωをA/Dコンバータ41に出力
する。A/Dコンバータ41は、ヨーレート信号Sωを
8ビットのAD値(0〜255)からなるヨーレートデ
ータDωに変換してマイコン43に出力する。
【0039】操舵角センサ21は、操舵輪20の操舵角
θT に対応したキングピン17の回動位置に基づく操舵
角信号ShをA/Dコンバータ42に出力する。操舵角
センサ21が出力する操舵角信号Shは電圧信号であ
り、操舵輪20が左操舵時の最大操舵角から右操舵時に
最大操舵角までの間の操舵角範囲に対応する電圧範囲の
電圧信号を出力する。本実施の形態では、0.5V〜
4.5Vの範囲の電圧信号を出力するようになってい
る。
【0040】A/Dコンバータ42は、操舵角センサ2
1が出力する0.5V〜4.5Vの範囲の電圧信号から
なる操舵角信号Shを、8ビットのAD値(0〜25
5)の操舵角データDT に変換してマイコン43に出力
する。操舵角データDT は、操舵角θT 「0°」がAD
値「128」に対応され、右操舵時の最大操舵角がAD
値「255」に、左操舵時の最大操舵角がAD値「0」
に対応されている。
【0041】車速センサ22は、車速vに対応して回転
するデフリングギア9の歯を検出した車速信号Svを入
力インターフェース45に出力する。ロータリエンコー
ダ26は、ハンドル24の1回転につきそれぞれ40パ
ルスからなる互いに90度位相がずれたA,B2相のパ
ルス信号SA ,SB を出力する。ロータリエンコーダ2
6が出力する各パルス信号SA ,SB は、ハンドル24
の回転方向により位相のずれ関係が反転する。つまり、
ハンドル24が右操舵されるときには、A相のパルス信
号SA に対してB相のパルス信号SB は位相が90°進
む。反対に、ハンドル24が左操舵されるときには、A
相のパルス信号SA の位相に対してB相のパルス信号S
B は位相が90°遅れる。ハンドル24の1回転につき
それぞれ40パルスからなる互いに90度位相がずれた
A,B2相の各パルス信号SA ,SB のレベル変化は、
ハンドル24の1回転に対して「160」となる。従っ
て、各パルス信号のレベル変化に基づき、ハンドル24
の1回転が「160」の分解能で検出される。
【0042】又、ロータリエンコーダ26は、1パルス
の基準位置信号SC を出力する。この基準信号Scは、
ハンドル24が中立位置にあるときに出力するようにな
っている。ハンドル24の中立位置とは、操舵輪20の
操舵角θT が「0°」のときのハンドル24の正規の位
置である。但し、ハンドル24は右操舵時には時計方向
に、左操舵時には反時計方向にそれぞれ中立位置から2
回転半弱回転するようになっているため、ロータリエン
コーダ26は、ハンドル24の全操舵範囲内で5回基準
位置信号SC を出力することになる。
【0043】励磁回路44は、マイコン43からの制御
信号に基づいて電磁ソレノイド39に励磁信号Seを出
力する。マイコン43は、入力インターフェース45、
中央演算処理装置(CPU)46、読み取り専用メモリ
(ROM)47、書き込み及び読み取り可能なメモリ
(RAM)48、第1カウンタ49、第2カウンタ50
及び出力インターフェース51等から構成されている。
【0044】入力インターフェース45は、車速センサ
22、ロータリエンコーダ26及びA/Dコンバータ4
1,42が出力する各データを入力しCPU46に出力
する。RAM48は、CPU46の演算結果を一時的に
記憶する。第1カウンタ49は、CPU46からの制御
信号によりそのカウント値C1をインクリメント又はデ
クリメントする。第2カウンタ50は、CPU46から
の制御信号によりそのカウント値C2をインクリメント
又はデクリメントする。出力インターフェース51は、
CPU46が出力する制御信号を励磁回路44に出力す
る。
【0045】ROM47には、操舵角補正処理を実行す
るためのプログラムが記憶されている。この操舵角補正
処理は、ヨーレートセンサ11にて検出するヨーレート
ω及び車速センサ22にて検出する車速vに基づき車両
が直進状態であること、すなわち、操舵輪20の操舵角
θT が「0°」であることを判断し、そのとき操舵角セ
ンサ21が出力する操舵角信号Shに対する操舵角デー
タDT を操舵角θT が「0°」のときの操舵角信号Sh
に対する操舵角データDT として新たに設定するための
処理である。
【0046】CPU46は、ROM47に記憶されてい
るプログラムに基づき、所定周期(例えば20ミリ秒)
毎に操舵角補正処理を繰り返し実行する。操舵角検出処
理として、CPU46は、車速データDv及びヨーレー
トデータDωに基づき、車速vが所定速度以上でありか
つヨーレートωが所定値以下であるか否かを判定する。
本実施の形態では、車速vが10km以上でありかつヨ
ーレートωが0であるか否かを判断するようにしてい
る。CPU46は、車速vが10km以上であってかつ
ヨーレートωが0であるときは、車両が直進状態であ
る、すなわち、操舵輪20の実際の操舵角θT が「0
°」であると判断する。ここで、車速vが10km以上
のときにヨーレートωが0であるか否かを判定するよう
にしたのは、ヨーレートωの検出精度を高めるためであ
る。CPU46は、操舵角補正処理の実行毎にこの条件
が正立した回数をカウントするために第2カウンタ50
のカウント値C2をインクリメントする。
【0047】次に、CPU46は、今回の操舵角補正処
理で新たに読み込んだ操舵角検出値としての操舵角デー
タDT =Dnと、前回の操舵角補正処理で保存した操舵
角データDT =Df1とから、操舵角データDT の平均
化操舵角検出値としての平均化操舵角データDf2を次
式(1)を用いて算出する。
【0048】 Df2=(Dn+7×Df1)/8 … (1) つまり、CPU46は、前回の操舵角補正処理で保存し
た操舵角データDf1に対する重みを「7」とし、今回
の操舵角補正処理で新たに読み込んだ操舵角データDn
に対する重みを「1」として平均化した平均化操舵角デ
ータDf2を操舵角補正処理の実行毎に算出する。そし
て、CPU46は、新たに算出した平均化操舵角データ
Df2を、次回の操舵角補正処理で操舵角データDf1
として使用するために保存する。つまり、各操舵角補正
処理で保存する平均化操舵角データDf2を、次の操舵
角補正処理において(1)式で使用する操舵角データD
f1とする。
【0049】CPU46は、操舵角補正処理の実行毎
に、車速vが10km以上でかつヨーレートωが0であ
る条件が成立する度、つまり、新たな平均化操舵角デー
タDf2を算出する毎に第2カウンタ50のカウント値
C2をインクリメントする。そして、CPU46は、カ
ウント値C2が所定回数となるまで操舵角補正処理の実
行毎に読み込んだ操舵角データDf1を用いて平均化操
舵角データDf2を算出する。本実施の形態では、CP
U46はカウント値C2が所定回数である100を越え
るまで平均化操舵角データDf2を算出するようにして
いる。つまり、CPU46は、最終的に、操舵角補正処
理の実行毎に車速vが10km以上でかつヨーレートω
が0である条件が成立したときの操舵角データDnを1
00回分平均化した操舵角データDf2を算出する。
【0050】そして、CPU46は、車速vが10km
以上でかつヨーレートωが0である条件が成立するとき
の操舵角データDf1を100回分平均化することによ
り、操舵角センサ21の検出ばらつき等を小さくして、
操舵角θT =0°に対して操舵角センサ21が出力する
正確な平均化操舵角データDf2を求めるようにしてい
る。CPU46は、100回の平均化処理で求めた最終
的な平均化操舵角データDf2を操舵角0°に対する基
準操舵角検出値としての基準操舵角データDfとして保
存する。
【0051】又、ROM47には、ハンドル24の中立
位置を検出するための割り込みプログラムが記憶されて
いる。この割り込みプログラムは、ハンドル24が中立
位置にあるとき、すなわち、ロータリエンコーダ26か
ら基準位置信号SC が出力されるときの第1カウンタ4
9のカウント値C1を「80」に較正するものである。
ハンドル24の操舵に伴ってロータリエンコーダ26か
ら出力されるA,B2相の各パルス信号のレベル変化が
ハンドル24の1回転に対して「160」となることか
ら、ハンドル24が中立位置にあるときのカウント値C
1を「160」の中央値である「80」とするようにし
ている。CPU46は、ロータリエンコーダ26から基
準位置信号SC を入力する度に、ハンドル24が中立位
置であると判断して第1カウンタ49のカウント値C1
を「80」に較正する。
【0052】又、ROM47には、ハンドル角検出処理
を実行するためのプログラムが記憶されている。このハ
ンドル角検出処理は、ハンドル24の操舵に伴いロータ
リエンコーダ26から入力される各パルス信号SA ,S
B のレベル変化に基づいてハンドル24の操舵方向及び
実ハンドル角θH を検出する制御処理である。
【0053】CPU46は、ROM47に記憶されてい
るプログラムに基づき、ロータリエンコーダ26から入
力するA,B2相の内のいずれかのパルス信号SA ,S
B のレベルが変化する度に、ハンドル角検出処理を割り
込みで実行する。
【0054】ハンドル角検出処理として、CPU46
は、ロータリエンコーダ26から入力するA,B2相の
パルス信号SA ,SB に基づき、ハンドル24の操舵方
向を判定する。CPU46は、ハンドル24の操舵方向
が右方向であるときには、操舵方向フラグFHDを
「1」とするとともに第1カウンタ49のカウント値C
1をインクリメントする。反対に、CPU46は、ハン
ドル24の操舵方向が左方向であるときには、操舵方向
フラグFHDを「0」とするとともにカウント値C1を
デクリメントする。但し、CPU46は、インクリメン
トする前のカウント値C1が「159」であるときに
は、カウント値C1を「0」とする。一方、CPU46
は、デクリメントする前のカウント値C1が「0」であ
るときには、カウント値C1を「159」とする。
【0055】つまり、CPU46は、ハンドル24が中
立位置にあって基準位置信号SC が入力されるときのカ
ウント値C2「80」を基準としてハンドル24が18
0°近傍まで右操舵されるときに入力されるA,B2相
の各パルス信号SA ,SB の79回のレベル変化毎にカ
ウント値Cをインクリメントすることにより、カウント
値C1を「81」から「159」までカウントアップす
る。反対に、CPU46は、中立位置におけるカウント
値C1=「80」を基準としてハンドル24が180°
まで左操舵されるときに入力されるA,B2相の各パル
ス信号SA ,SB の79回のレベル変化毎にカウント値
C1をデクリメントすることにより、カウント値C1を
「79」から「0」までカウントダウンする。
【0056】そして、CPU46は、ハンドル24が中
立位置から180°右操舵されたとき新たにカウント値
C1を「0」とし、ハンドル24が180°右操舵され
た位置からさらに360°弱右操舵されるとカウント値
C1を「0」から「159」までインクリメントする。
従って、ハンドル24が当初の中立位置から360°右
操舵されると、カウント値C1は再び「80」となる。
同様に、ハンドル24が当初の中立位置から180°と
1カウント分左操舵されたとき新たにカウント値C1を
「159」とし、ハンドル24が180°と1カウント
分左操舵された位置からさらに360°左操舵されると
カウント値C1を「159」から「0」までデクリメン
トする。従って、ハンドル24が当初の中立位置から3
60°左操舵されると、カウント値C1は再び「80」
となる。つまり、CPU46は、ハンドル角θH をハン
ドル24の全操舵範囲においてハンドル24が中立位置
と同じ操舵状態となる各操舵位置から右方向及び左方向
にそれぞれ180°の操舵角として検出する。
【0057】ROM47には、ハンドル角補正処理を実
行するためのプログラムが記憶されている。このハンド
ル角補正処理では、操舵角センサ21にて検出された操
舵角θT に対応する目標ハンドル角θgを求め、ロータ
リエンコーダ26にて検出された実ハンドル角θH の目
標ハンドル角θgに対するずれ量Δθを検出する。そし
て、実ハンドル角θT と目標ハンドル角θgとのずれ量
Δθの大きさに拘らず、180°以内のハンドル操作範
囲でずれ量Δθが解消されるときに限ってハンドル角の
補正を行う。CPU46は、ROM47に記憶されてい
るプログラムに基づき、例えば、操舵角補正処理を実行
する毎にハンドル角補正処理を繰り返し実行する。ハン
ドル角補正処理として、CPU46は、操舵角補正処理
で新たに設定された操舵角θT =「0°」のときの基準
操舵角データDfに対する今回読み込んだ操舵角データ
DT の偏差ΔDT (=DT −Df)を算出する。そし
て、CPU46は、この偏差ΔDT から操舵角Dθに対
応する目標ハンドル角θgをROM47に記憶されてい
るマップMから求める。
【0058】ROM47に記憶されたマップMは、操舵
角θT に対応する目標ハンドル角θGを求めるためのも
のである。目標ハンドル角θgは、操舵角θT に対する
正規のハンドル角であり、操舵角θT が「0°」のとき
にハンドル24が中立位置となりノブ25が所定位置に
配置される。このマップMは、図3に示すように、右側
の操舵輪20の全操舵範囲における操舵角θT (θT L
〜θT R)に対応する偏差ΔDT にて横軸が設定され、
目標ハンドル角θg(−180°〜+180°)に対応
する目標カウント値Cg(0〜159)にて縦軸が設定
されている。つまり、このマップMは、操舵角補正処理
で新たに設定された操舵角0°に対する操舵角データD
fを基準として、操舵角センサ21が操舵角θT に応じ
て出力する操舵角データDT の相対値(すなわち、偏差
ΔDT )から操舵角θT に対する目標ハンドル角θgを
求めるようになっている。
【0059】操舵角θT に対する目標ハンドル角θg
は、ハンドル24の全操舵範囲においてハンドル24が
中立位置と同一の操舵状態となる各操舵位置を基準とす
る操舵角度で設定されている。つまり、「θL1〜θR
1」の範囲の操舵角θT に対して、目標ハンドル角θg
が「−180°〜+180°」の範囲で設定されてい
る。ここで、ハンドル24の右操舵範囲及び左操舵範囲
はそれぞれ2回転半弱であるため、操舵角θT がθL
2,θL2,θR2,θR4であるときにハンドル24
が中立位置にある状態と同一の状態となる。そして、操
舵角θT が「θR1〜θR3」である操舵範囲に対し
て、目標ハンドル角θgが「−180°〜+180°」
の範囲で設定されている。又、操舵角θT が「θR3〜
θTR」である操舵範囲に対して、目標ハンドル角θg
が「−180°〜0°+γ」の範囲で設定されている。
ここで、操舵角θT が「θTR」である操舵状態は、ハ
ンドル24の右操舵時における最大操舵位置である。
【0060】同様に、操舵角θT が「θL3〜θL1」
である操舵範囲に対して、目標ハンドル角θgが「−1
80°〜+180°」の範囲で設定されている。又、操
舵角θT が「θTL〜θL3」である操舵範囲に対し
て、目標ハンドル角θgが「−180°〜0°+γ」の
範囲で設定されている。ここで、操舵角θT が「θT
L」である操舵状態は、ハンドル24の左操舵時におけ
る最大操舵位置である。
【0061】又、ROM46には、ハンドル角補正を行
うときのハンドル24の操舵方向を決定するためのカウ
ント値「80」が記憶されている。ROM47には、実
ハンドル角θH と目標ハンドル角θgとのずれ量Δθが
ハンドル角を補正するべき大きさであるか否かを判定す
るための許容値ΔC0がそれぞれ記憶されている。
【0062】CPU46は、求めた目標カウント値Cg
と、実ハンドル角θH に対応するカウント値C1とのと
のずれ量ΔC=|C1−Cg|を算出し、このずれ量Δ
Cが操舵角範囲180°に相当するカウント値「80」
以下であるか否かを判定する。
【0063】CPU46は、ずれ量ΔCがカウント値
「80」以下であるときには、目標ハンドル角θgと実
ハンドル角θH とのずれを最小の操舵量で補正可能な補
正ずれ量CcがCc=ΔC(=|C1−Cg|)である
と判断する。つまり、CPU46は、図5(a)に示す
ように、実ハンドル角θH に対応する実ノブ位置と目標
ハンドル角θgに対応する目標ノブ位置とのずれ量Δθ
が180°以下であるときにはずれ量ΔCがカウント値
「80」以下であることから、そのずれ量Δθに対応し
たカウント値ΔC(=|C1−Cg|)を最小の操舵量
で実ハンドル角θH を目標ハンドル角gに一致させるこ
とができる補正ずれ量Ccとする。
【0064】さらに、CPU46は、ずれ量ΔCがカウ
ント値「80」以下であるときに、カウント値C1が目
標カウント値Cgよりも小さいか否か判定する。CPU
46は、カウント値C1が目標カウント値Cgよりも小
さいときにはハンドル24を右操舵することにより実際
のずれ量ΔCが補正ずれ量Ccだけの操舵で解消される
と判断し、補正方向フラグFCDを「1」とする。反対
に、CPU46は、カウント値C1が目標カウント値C
gよりも大きいときにはハンドル24を左操舵すること
によりずれ量ΔCが補正ずれ量Ccだけの操舵で解消さ
れると判断し、補正方向フラグFCDを「0」とする。
【0065】一方、CPU46は、ずれ量ΔCがカウン
ト値「80」を越えるときには、実ハンドル角θH と目
標ハンドル角θgとのずれを最小の操舵量で補正可能な
補正ずれ量CcがCc=160−ΔCと判断する。つま
り、CPU46は、図5(b)に示すように、実ハンド
ル角θH に対応する実ノブ位置と目標ハンドル角θgに
対応する目標ノブ位置とのずれ量Δθが180°を越え
るときには、ずれ量ΔCがカウント値「80」を越える
ことから、(360°−Δθ)に対応したカウント値
(160−ΔC)を最小の操舵量で実ハンドル角θH を
目標ハンドル角θgに一致させることができる補正ずれ
量Ccとする。
【0066】さらに、CPU46は、ずれ量ΔCがカウ
ント値「80」を越えるときに、カウント値C1が目標
カウント値Cgよりも小さいか否か判定する。CPU4
6は、カウント値C1が目標カウント値Cgよりも小さ
いときにはハンドル24を左操舵することによりずれ量
ΔCが補正ずれ量Ccだけの操舵で解消されると判断
し、補正方向フラグFCDを「0」とする。反対に、C
PU46は、カウント値C1が目標カウント値Cgより
も大きいときにはハンドル24を右操舵することにより
ずれ量ΔCが補正ずれ量Ccだけの操舵で解消されると
判断し、補正方向フラグFCDを「1」とする。
【0067】又、CPU46は、ずれ量ΔCが許容値Δ
C0以下であるか否かを判定する。CPU46は、ずれ
量ΔCが許容値ΔC0以下であるときには、ハンドル角
θHの目標ハンドル角θgに対するずれ量Δθが許容範
囲内でありハンドル角の補正が必要でない状態であると
判断し、電磁ソレノイド39に励磁信号Seを出力せず
電磁制御弁37を遮断位置37aとする。
【0068】さらに、CPU46は、操舵方向フラグF
HDと補正方向フラグFCDとが一致するか否かを判定
する。CPU46は、両フラグFHD,FCDが一致す
るときには、ハンドル24の操舵方向がずれを最小操舵
量で補正可能な方向であると判断し、ハンドル角の補正
を行うために電磁ソレノイド39に励磁信号Seを出力
し電磁制御弁37を連通位置37bとする。反対に、C
PU46は、両フラグFHD,FCDが一致しないとき
には、ハンドル24の操舵方向がずれを最小操舵範囲で
補正可能な方向と反対方向であると判断し、ハンドル角
の補正を行わないために電磁ソレノイド39に励磁信号
Seを出力せず電磁制御弁37を遮断位置37aとす
る。
【0069】次に、以上のように構成された産業車両用
パワーステアリング装置の作用を図7〜10に示すフロ
ーチャートに従って説明する。エンジン10が始動され
ると制御ユニット40が起動する。ハンドル24が操舵
されると、ステアリングユニット27からその操舵量に
対応した量の作動油がステアリングシリンダ13の操舵
方向に対応する方の油室R1(R2)側に供給される。
このとき、電磁制御弁37が遮断位置37aであるた
め、一方の油室R1(R2)に作動油が供給されるとス
テアリングシリンダ13が作動し、他方の油室R2(R
1)から作動油が排出される。従って、ステアリングシ
リンダ13の操舵ロッド16が操舵方向にハンドル24
の操舵量に対応した量だけ変位し、操舵輪20が実ハン
ドル角θH に対する操舵角θT となるように操舵され
る。
【0070】ハンドル24の操舵に伴ってロータリエン
コーダ26から基準位置信号SC が出力される度に、C
PU46は第1カウンタ49のカウント値C1を「8
0」に較正する処理を実行する。このため、ハンドル2
4が中立位置に操舵されたときの第1カウンタ49のカ
ウント値C1が「80」に較正される。CPU46は、
ロータリエンコーダ26から入力するA,B2相のパル
ス信号SA ,SB のレベルが変化する毎に、図9のフロ
ーチャートで示すハンドル角検出処理を実行する。
【0071】ハンドル角検出処理において、CPU46
は、先ずステップ(以下、S)400で、A,B2相の
パルス信号SA ,SB に基づきハンドル24の操舵方向
を判定する。CPU46は、S400で、操舵方向が右
操舵であると判断したときにはS410で操舵方向フラ
グFHDを「1」とした後、S420で第1カウンタ4
9のカウント値C1をインクリメントして当該処理を終
了する。
【0072】一方、CPU46は、S400で、操舵方
向が左操舵であると判断したときにはS430で操舵方
向フラグFHDを「0」とした後、S440で第1カウ
ンタ49のカウント値C1をデクリメントして当該処理
を終了する。
【0073】車両の走行中には、CPU46は図10の
フローチャートで示す操舵角補正処理を所定周期毎に繰
り返し実行する。操舵角補正処理において、CPU46
は、S100で、車速データDv及びヨーレートデータ
Dωを読み込むとともに、操舵角データDT を読み込
む。そして、CPU46は、S110で、車速データD
vに基づき車速vが10km以上でかつヨーレートωが
0であるか否かを判定する。CPU46は、S110
で、車速vが10km未満あるいはヨーレートωが0で
なかったときには当該処理を終了する。
【0074】一方、CPU46は、S110で、車速v
が10km以上でかつヨーレートωが0であったときに
は、S120で第2カウンタ50のカウント値C2をイ
ンクリメントした後、S130を実行する。CPU46
は、S130で、前回の操舵角補正処理で保存した操舵
角データDf1と今回の操舵角補正処理で読み込んだ操
舵角データDnとから(1)式を用いて平均化操舵角デ
ータDf2を算出する。
【0075】次に、CPU46は、S140で、第2カ
ウンタ50のカウント値C2が100を越えたか否かを
判定する。CPU46は、S140で、カウント値C2
が、100以下であるときには当該処理を終了する。
【0076】一方、CPU46は、S140でカウント
値C2が100を越えたときには、S150を実行す
る。CPU46は、S150で、その前のS130で求
めた平均化操舵角データDf2を操舵角θT =0に対す
る新たな基準操舵角データDfとして保存する。そし
て、CPU46は、S160で、カウント値C2をリセ
ットして当該処理を終了する。
【0077】又、車両の走行中に、CPU46は図7及
び図8のフローチャートで示すハンドル角補正処理を所
定周期毎に繰り返し実行する。ハンドル角補正処理にお
いて、CPU46は、S200で、実ハンドル角θH に
対応するカウント値C1を読み込む。そして、CPU4
6は、S210で、操舵角補正処理にて設定された基準
操舵角データDfに対する操舵角データDnの偏差ΔD
T を算出する。CPU46は、S220で、マップMか
ら偏差ΔDT に対応する目標カウント値Cgを求める。
【0078】次に、CPU46は、S230で、カウン
ト値C1と目標カウント値Cgとのずれ量ΔC=|C1
−Cg|を算出し、S240でこのずれ量ΔCが判定値
「80」以下であるか否かを判定する。CPU46は、
S240で、ずれ量ΔCが判定値「80」以下であると
きには、S250で、補正ずれ量CcをCc=ΔCとし
た後、S260を実行する。一方、CPU46は、S2
40でずれ量ΔCが判定値「80」を越えるときには、
S270で、補正ずれ量CcをCc=160−ΔCとし
た後S260を実行する。
【0079】CPU46は、S260で、カウント値C
が目標カウント値Cgよりも小さいか否かを判定する。
CPU46は、S260で、カウント値Cが目標カウン
ト値Cgよりも小さいときには、S280で補正方向フ
ラグFCDを「1」とした後S290を実行する。一
方、CPU46は、S260で、カウント値Cが目標カ
ウント値Cgよりも大きいときには、S300で補正方
向フラグFCDを「0」とした後S290を実行する。
【0080】CPU46は、S290で、ずれ量ΔCが
許容値ΔC0以上であるか否かを判定する。CPU46
は、S290で、ずれ量ΔCが許容値ΔC0以上である
ときには、S310で、操舵方向フラグFHDと補正方
向フラグFCDとが一致するか否かを判定する。CPU
46は、S310で、両フラグFHD,FCDが一致す
るときには、S320で電磁ソレノイド39に励磁信号
Seを出力し電磁制御弁37を連通位置37bとして当
該処理を終了する。
【0081】従って、車両が直進状態のときに操舵角セ
ンサ21が出力する操舵角検出信号Shの各操舵角デー
タDnから得られた平均化操舵角データDf2が、操舵
角θT =「0°」に対する基準操舵角データDfとされ
て各操舵角データDnに対する目標ハンドル角θgが設
定される。例えば、図6に示すように、操舵輪20のア
ライメントの変化により、操舵角θT =0°のときの操
舵角センサ21の検出値が当初の2.5VからSh1に
変化すると、基準操舵角データDfが2.5Vに対応し
た当初の「128」からSh1に対応する「DT 1」に
更新される。そして、操舵角センサ21から出力される
各操舵角信号Shに対する操舵角データDT と、この更
新された基準操舵角データDfとの偏差ΔDT から目標
ハンドル角θgが設定される。そして、実ハンドル角θ
H がこの目標ハンドル角θgに補正制御される。
【0082】又、実ハンドル角θH の目標ハンドル角θ
gに対するずれ量Δθが許容値以上となったときにハン
ドル角が補正される。このとき、ハンドル24が操舵さ
れる方向が、ずれ量Δθを最小操舵範囲で補正すること
ができる方向であるときに限りハンドル角の補正が行わ
れる。
【0083】CPU46は、S290で、偏差ΔCが許
容値ΔC0未満であるときには、S330を実行する。
CPU46は、S330で、電磁ソレノイド39に励磁
信号Seを出力しないようにして当該処理を終了する。
【0084】従って、実ハンドル角θT の目標ハンドル
角θGに対するずれ量Δθが許容範囲内であるときに
は、ハンドル角の補正が行われない。又、CPU46
は、S310で、両フラグFHD,FCDが一致しない
ときには、S330を実行する。
【0085】従って、ハンドル24が操舵される方向
が、180°以下の操舵範囲でハンドル角の補正を行う
ことができる方向でないときにはハンドル角の補正が行
われない。
【0086】以上詳述したように、本実施の形態のパワ
ーステアリング装置によれば、以下の効果を得ることが
できる。 (a) 操舵輪20が直進時における操舵角θT である
ときに操舵角検出手段(操舵角センサ21)が出力する
操舵角検出値(操舵角データDT )を基準操舵角検出値
(基準操舵角データDf)とし、この基準操舵角検出値
に基づいて各操舵角検出値からそのときの操舵角θT に
対する目標ハンドル角を決定する。そして、直進状態検
出手段にて車両が直進状態であること、すなわち、操舵
輪20が直進時における操舵角θT であることを検出
し、そのとき操舵角検出手段が出力する操舵角検出値を
新たな基準操舵角検出値として更新する。
【0087】従って、操舵輪20のアライメント変化に
より操舵角θT に対して操舵角検出手段が出力する操舵
角検出値がずれても、そのアライメント状態で操舵輪2
0が直進時の操舵角θT に対する基準操舵角検出値に基
づいて各操舵角検出値からそのときの操舵角θT に対す
る目標ハンドル角θgが決定される。その結果、操舵輪
20のアライメント変化により操舵角に対して操舵角検
出手段が出力する操舵角検出値が変化しても、実ハンド
ル角θH が操舵角θT に対応する目標ハンドル角θgに
補正制御される。そして、直進状態ではハンドル24の
ノブ25が所定位置に配置される。
【0088】(b) 車両の直進状態をヨーレートωに
て判断するようにしたので、操舵輪20が直進時の操舵
角θT であることが簡単に検出される。従って、簡単な
構成で実施することができる。
【0089】(c) 車両の直進状態を、車速vがヨー
レートωの検出精度が高くなる所定値(10km)以上
のときに検出されたヨーレートωが所定値以下となると
きとしたので、操舵輪20が直進時の操舵角θT である
ことが高い精度で検出される。従って、直進時における
操舵輪20の操舵角θT に対する操舵角検出値が高い精
度で検出されるため、各操舵角θT に対して正規の目標
ハンドル角θgが高い精度で設定される。その結果、実
ハンドル角θH を操舵角θT に対する正規の目標ハンド
ル角θgに高い精度で補正制御することができるため、
ハンドル24の操作性を高い精度で当初の状態に維持す
ることができる。
【0090】さらに、本実施の形態では、車速vが10
km以上のときにヨーレートωが「0」となるときを直
進状態と判断するようにしたので、操舵輪20が直進時
の操舵角検出値を一層高い精度で検出することができ
る。
【0091】(d) 車両が直進状態であると所定複数
回(100回)判定されたときの各操舵角データDnを
平均化した平均化操舵角データDfが車両の直進時にお
ける操舵角θT に対する基準操舵角データDfとして各
操舵角データDT に対する目標ハンドル角θgが決定さ
れる。従って、操舵角センサ21等の検出誤差が小さく
なり、車両が直進状態のときの操舵輪20の操舵角θT
に対して出力される正確な操舵角信号Shに基づいて各
操舵角信号Shに対する目標ハンドル角θgが決定され
る。その結果、実ハンドル角θH を操舵角θT に対する
正規の目標ハンドル角θgに高い精度で補正制御するこ
とができるため、ハンドル24の操作性を高い精度で当
初の状態に維持することができる。
【0092】(e) 電磁制御弁37をノーマルクロー
ズ型としたので、制御ユニット40が故障して電磁制御
弁37が遮断位置37aに固定されたままの状態になっ
たときにステアリングシリンダ13に供給される作動油
がバイパスされなくなる。従って、制御ユニット40の
故障時にはハンドル角の補正が禁止されたままとなるた
め、同故障状態での旋回時に操舵輪20の制御性を維持
することができる。
【0093】(f) 実ハンドル角θH をハンドル24
の全操舵範囲の中立位置と同一となる各操舵状態からの
ハンドル操舵角として検出するとともに、操舵角θT に
対応する目標ハンドル角θgをその目標ハンドル角θg
に対応するように設定した。そして、実ハンドル角θH
と目標ハンドル角θgとのずれ量Δθをハンドル角補正
で補正するようにした。このため、実際のずれ量Δθが
ハンドル24の整数回転分、すなわち、360°の整数
倍を越えたときにはその整数回転分がずれ量Δθからキ
ャンセルされるため、実際にハンドル角の補正が行われ
るずれ量Δθが常に1回転分以下となる。このため、ハ
ンドル角の補正時にハンドル24と操舵輪20とが連動
しない操舵範囲が常にハンドル24の1回転以下となる
ため、旋回時における操舵輪20の制御性が改善され
る。
【0094】(g) 実ハンドル角θH と目標ハンドル
角θgとのずれ量Δθが180°を越えたときには、実
際にハンドル角の補正を行うためのずれ量を(360°
−Δθ)として実際のずれ量Δθが補正される方向と反
対方向にハンドル24が操舵されるときに補正を行うよ
うにした。従って、ハンドル角の補正をその実際のずれ
量Δθに拘らず常に180°以下の操舵量で行うことが
できる。このため、ハンドル24と操舵輪20とが連動
しない操舵範囲が常に180°以下となるため、旋回時
における操舵輪20の制御性が一層改善される。
【0095】(h) フォークリフト1の操舵輪20を
操舵するパワーステアリング装置に実施したので、フォ
ークリフト1の旋回時における操舵輪の制御性を維持し
たままでハンドル角の補正を行うことができる。
【0096】尚、上記各実施の形態は以下のように変更
してもよい。 ○ 図11のフローチャートで示すように、所定周期毎
に実行する各操舵角補正処理において、車速vが10k
m以上でかつヨーレートωが0となる条件が成立しなか
ったときに、第2カウンタ50のカウント値C2をリセ
ットするようにしてもよい。この構成では、例えば20
ミリ秒の周期で繰り返し実行される操舵角補正処理が1
00回実行される所定時間(20ミリ秒×100回)の
間車速vが10km以上でヨーレートωが0である状態
で継続しなかったときには、操舵輪20の操舵角θT が
「0°」であるときの操舵角データDfが設定されな
い。従って、直進状態が所定時間以上継続したときの操
舵角検出値が基準操舵角検出値とされるため、直進時に
おける操舵角θT に対する正確な操舵角検出値が基準操
舵角検出値とされる。このため、操舵角θT に対する目
標ハンドル角θgが高い精度で設定される。その結果、
操舵輪20のアライメント変化により操舵角θT に対し
て操舵角検出手段が出力する操舵角検出値がずれても、
実ハンドル角θH が操舵角θT に対応する目標ハンドル
角θgに高い精度で補正制御される。
【0097】○ 直進状態検出手段を構成するヨーレー
ト検出手段は、ジャイロコスープに限らず、加速度セン
サ、方位センサ等であってもよい。加速度センサにて構
成する場合には、車両に働く横加速度が0となる状態を
直進状態と判断する。方位センサにて構成する場合に
は、車速vが所定値以上で方位が所定時間変化しない状
態とすればよい。
【0098】○ ヨーレートωが0となるときに車両が
直進状態であると判断するようにしたが、0より大きな
所定値以下となるときに車両が直進状態であるとみなす
ようにしてもよい。この構成によれば、基準操舵角検出
値が更新される回数が多くなるため、操舵輪20のアラ
イメント変化により操舵角検出手段が操舵角θT に対し
て出力する操舵角検出値が変化しても、操舵角θT に対
して設定される目標ハンドル角θgが正規の目標ハンド
ル角θgからずれにくくなる。
【0099】○ ハンドル角検出手段は、ロータリエン
コーダ26以外のデジタル方式の回転変位センサである
レゾルバ、磁気式回転センサ等であってもよく、又、ア
ナログ方式の回転変位センサであるポテンショメータ、
差動変圧器等であってもよい。
【0100】同様に、操舵角センサ21は、ポテンショ
メータ以外の上記各回転変位センサであってもよい。 ○ 実ハンドル角θH を操舵輪20の直進状態に対応し
た中立位置からの絶対操舵角度で検出するようにしたパ
ワーステアリング装置としてもよい。
【0101】○ ノブ25がないハンドル24を備えた
産業車両のパワーステアリング装置に実施してもよい。 ○ フォークリフト1以外のパワーステアリング装置を
備えた産業車両に実施してもよい。
【0102】以下、特許請求の範囲に記載された技術的
思想の外に前述した各実施の形態から把握される技術的
思想をその効果とともに記載する。 (1) 請求項1に記載のパワーステアリング装置にお
いて、前記ハンドル角検出手段は、ハンドルがその全操
舵範囲で車両の直進時の操舵角に対応した正規の操舵状
態と同一となる各操舵状態からのハンドル操舵角を実ハ
ンドル角として検出し、前記目標ハンドル角決定手段
は、操舵角検出値から前記ハンドル角検出手段が検出す
る各操舵状態からのハンドル操舵角に対応する目標ハン
ドル角を決定し、前記ハンドル角補正手段は、実ハンド
ル角と目標ハンドル角とのずれが180°未満であると
きには、ハンドルの操舵方向が実ハンドル角に対する目
標ハンドル角のずれ方向を解消する方向であるときに作
動油を作動油を還流させ、実ハンドル角と目標ハンドル
角とのずれが180°以上であるときには、ハンドルの
操舵方向が実ハンドル角に対する目標ハンドル角のずれ
方向を解消する方向と反対方向であるときに作動油を還
流させるようにした。
【0103】このような構成によれば、ハンドル1回転
以上のずれがキャンセルされるとともにずれの補正を1
80°未満の操舵範囲で終了することができる。尚、本
明細書において、発明の構成に係る手段及び部材は以下
のように定義されるものとする。
【0104】(1) 産業車両とは、各種アタッチメン
トを備えたフォークリフトに限らず、操舵輪がパワース
テアリング装置にて操舵されるショベルローダ、高所作
業車等の産業車両をも含むものとする。
【0105】
【発明の効果】以上詳述したように、請求項1〜請求項
に記載の発明によれば、操舵輪のアライメント変化に
より操舵角検出手段にて検出される操舵角検出値が変化
しても、実ハンドル角を操舵角に対応する目標ハンドル
角に補正制御することができる。しかも、1回転以上の
ずれをキャンセルすることができ、ハンドル角の補正時
にハンドルと操舵輪とが連動しない操舵範囲が常にハン
ドルの1回転以下となるので、車両旋回時における操舵
輪の制御性を改善することができる。
【0106】請求項に記載の発明によれば、車両の直
進状態を簡単な構成で確実に検出することができる。請
求項に記載の発明によれば、車両直進時の操舵角に対
する操舵角検出値を高い精度で検出することができるた
め、実ハンドル角を操舵角に対応する目標ハンドル角に
高い精度で補正制御することができる。
【0107】請求項に記載の発明によれば、車両直進
時の操舵角に対する正確な操舵角検出値を基準操舵角検
出値として設定することができるため、実ハンドル角を
操舵角に対応する目標ハンドル角に高い精度で補正制御
することができる。
【0108】請求項に記載の発明によれば、直進状態
が継続したときの直進時の操舵角に対する正確な操舵角
検出値を基準操舵角検出値として設定することができる
ため、実ハンドル角を操舵角に対応する目標ハンドル角
に高い精度で補正制御することができる。
【0109】請求項に記載の発明によれば、産業車両
の操舵輪が請求項1〜請求項のいずれかに記載の効果
をなすパワーステアリング装置にて操舵される。請求項
に記載の発明によれば、フォークリフトの操舵輪が請
求項1〜請求項のいずれかに記載の効果をなすパワー
ステアリング装置にて操舵される。請求項に記載の発
明によれば、操舵輪のアライメント変化により操舵角検
出手段にて検出される操舵角検出値が変化しても、実ハ
ンドル角を操舵角に対応する目標ハンドル角に補正制御
することができる。しかも、車両直進時の操舵角に対す
る正確な操舵角検出値を基準操舵角検出値として設定す
ることができるため、実ハンドル角を操舵角に対応する
目標ハンドル角に高い精度で補正制御することができ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】 パワーステアリング装置の模式図。
【図2】 フォークリフトの側面図。
【図3】 目標ハンドル角決定用のマップ。
【図4】 電気的構成を示すブロック図。
【図5】 (a),(b)共にハンドル角の補正ずれ量
を示す模式図。
【図6】 操舵角センサの検出特性を示すグラフ。
【図7】 ハンドル角補正処理のフローチャート。
【図8】 ハンドル角補正処理のフローチャート。
【図9】 ハンドル角検出処理のフローチャート。
【図10】 操舵角補正処理のフローチャート。
【図11】 別例の操舵角補正処理のフローチャート。
【図12】 従来例のパワーステアリング装置の模式
図。
【図13】 ストロークセンサの検出特性を示すグラ
フ。
【符号の説明】
1…産業車両としてのフォークリフト、11…直進状態
検出手段を構成するヨーレート検出手段としてのヨーレ
ートセンサ、13…操舵用油圧シリンダとしてのステア
リングシリンダ、20…操舵輪、21…操舵角検出手段
としての操舵角センサ、22…直進状態検出手段を構成
する車速検出手段としての車速センサ、24…ハンド
ル、26…ハンドル角検出手段を構成するロータリエン
コーダ、27…作動油供給制御手段としてのステアリン
グユニット、29…作動油供給手段を構成するリリーフ
弁、32…同じく油圧ポンプ、33…同じく油タンク、
37…電磁制御弁、42…操舵角検出手段を構成するA
/Dコンバータ、43…ハンドル角検出手段及び直進状
態検出手段を構成する、目標ハンドル角決定手段、ハン
ドル角補正手段、操舵角検出値補正手段及び直進状態判
定手段としてのマイコン、Df1,Df2…平均化操舵
角検出値としての平均化操舵角データ、Df…基準操舵
角検出値としての基準操舵角データ、θg…目標ハンド
ル角、θH …実ハンドル角、Dn…操舵角検出値として
の操舵角データ、θT …操舵角。

Claims (8)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 作動油を供給する作動油供給手段と、 作動油が供給される一対の油室を備え、一方の油室に作
    動油が供給されるとともに他方の油室から作動油を排出
    することにより操舵輪を右又は左操舵する操舵用油圧シ
    リンダと、 前記作動油供給手段から供給される作動油を前記操舵用
    油圧シリンダの一方の油室に供給するとともに他方の油
    室から排出される作動油を同作動油供給手段に還流させ
    る作動油供給制御手段と、 前記作動油供給制御手段の供給側と還流側とを連通可能
    に設けられた電磁制御弁と、 ハンドルの実ハンドル角をハンドルがその全操舵範囲で
    車両の直進時の操舵角に対応した正規の操舵状態と同一
    となる各操舵状態からのハンドル操舵角にて検出するハ
    ンドル角検出手段と、 操舵輪の操舵角を検出し、その操舵角に基づく操舵角検
    出値を出力する操舵角検出手段と、 操舵輪の全操舵範囲における操舵角に対する各操舵角検
    出値に対応して予め設定された目標ハンドル角から、出
    力された操舵角検出値に対する目標ハンドル角を決定す
    る目標ハンドル角決定手段と、 実ハンドル角と目標ハンドル角とのずれが許容値以上で
    あるときに前記電磁制御弁を制御して前記作動油供給制
    御手段から前記操舵用油圧シリンダに供給される作動油
    を還流させるハンドル角補正手段と、 車両が直進状態であることを検出する直進状態検出手段
    と、 車両が直進状態であるときに前記操舵角検出手段が出力
    する操舵角検出値を車両の直進時における操舵角に対す
    る基準操舵角検出値として設定し、この基準操舵角検出
    値に基づき各操舵角検出値からそのときの操舵角に対す
    る正規の目標ハンドル角が設定されるように操舵角検出
    値を補正する操舵角検出値補正手段とを備えたパワース
    テアリング装置。
  2. 【請求項2】 前記直進状態検出手段は、車両のヨーレ
    ートを検出するヨーレート検出手段と、ヨーレート検出
    手段にて検出されるヨーレートが車両の直進 状態に対応
    した所定値以下であるか否かを判断する直進状態判定手
    段とを備えた請求項1に記載のパワーステアリング装
    置。
  3. 【請求項3】 前記直進状態検出手段は、車両の車速を
    検出する車速検出手段を備え、前記直進状態判定手段
    は、検出された車速が前記ヨーレートの検出精度が高く
    なる所定車速以上のときに検出されたヨーレートが車両
    の直進状態に対応した所定値以下であるか否かを判断す
    る請求項2に記載のパワーステアリング装置。
  4. 【請求項4】 前記操舵角検出値補正手段は、前記直進
    状態検出手段にて車両が直進状態であると判断されたと
    きに前記操舵角検出手段が出力した所定複数回の各操舵
    角検出値を平均化した平均化操舵角検出値を車両の直進
    時における操舵角に対する基準操舵角検出値とする請求
    項1〜請求項3のいずれか一項に記載のパワーステアリ
    ング装置。
  5. 【請求項5】 前記操舵角検出値補正手段は、所定時間
    内に前記所定複数回車両が直進状態であることが判断さ
    れたときにのみ前記平均化操舵角検出値を直進時におけ
    る操舵角に対する基準操舵角検出値とする請求項4に記
    載のパワーステアリング装置。
  6. 【請求項6】 請求項1〜請求項5のいずれか一項に記
    載のパワーステアリング装置を備えた産業車両。
  7. 【請求項7】 前記産業車両は、フォークリフトである
    請求項6に記載の産業車両。
  8. 【請求項8】 作動油を供給する作動油供給手段と、 作動油が供給される一対の油室を備え、一方の油室に作
    動油が供給されるとともに他方の油室から作動油を排出
    することにより操舵輪を右又は左操舵する操舵用油圧シ
    リンダと、 前記作動油供給手段から供給される作動油を前記操舵用
    油圧シリンダの一方の油室に供給するとともに他方の油
    室から排出される作動油を同作動油供給手段に還流させ
    る作動油供給制御手段と、 前記作動油供給制御手段の供給側と還流側とを連通可能
    に設けられた電磁制御弁と、 ハンドルの実ハンドル角を検出するハンドル角検出手段
    と、 操舵輪の操舵角を検出し、その操舵角に基づく操舵角検
    出値を出力する操舵角検出手段と、 操舵輪の全操舵範囲における操舵角に対する各操舵角検
    出値に対応して予め設定された目標ハンドル角から、出
    力された操舵角検出値に対する目標ハンドル角を決定す
    る目標ハンドル角決定手段と、 実ハンドル角と目標ハンドル角とのずれが許容値以上で
    あるときに前記電磁制御弁を制御して前記作動油供給制
    御手段から前記操舵用油圧シリンダに供給される作動油
    を還流させるハンドル角補正手段と、 車両が直進状態であることを検出する直進状態検出手段
    と、 車両が直進状態であるときに前記操舵角検出手段が出力
    する操舵角検出値を車両の直進時における操舵角に対す
    る基準操舵角検出値として設定し、この基準操舵角検出
    値に基づき各操舵角検出値からそのときの操舵角に対す
    る正規の目標ハンドル角が設定されるように操舵角検出
    値を補正する操舵角検出値補正手段とを備え、 前記操舵角検出値補正手段は、前記直進状態検出手段に
    て車両が直進状態であると判断されたときに前記操舵角
    検出手段が出力した所定複数回の各操舵角検出値を平均
    化した平均化操舵角検出値を車両の直進時における操舵
    角に対する基準操舵角検出値とするパワーステアリング
    装置。
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