JP3331748B2 - 形態の安定化された一方向炭素繊維プリプレグおよびその製造方法 - Google Patents

形態の安定化された一方向炭素繊維プリプレグおよびその製造方法

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JP3331748B2 JP13886794A JP13886794A JP3331748B2 JP 3331748 B2 JP3331748 B2 JP 3331748B2 JP 13886794 A JP13886794 A JP 13886794A JP 13886794 A JP13886794 A JP 13886794A JP 3331748 B2 JP3331748 B2 JP 3331748B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、一方向炭素繊維プリプ
レグに関するものである。更に詳細には、表面平滑性に
優れ、および内部の緻密性の高い炭素繊維強化複合材料
(以下、CFRPと略す)を与え得る粘着性の良好な一
方向炭素繊維プリプレグに関する。
【0002】
【従来の技術】炭素繊維とマトリックス樹脂からなるプ
リプレグから得られるCFRPは、特にその力学的特性
が優れていることから、ゴルフクラブ、テニスラケッ
ト、釣り竿などのスポーツ用途をはじめ、航空機や宇宙
往還機の構造材料といった最先端の分野に至る幅広い用
途に適用されてきている。
【0003】このようなCFRPは、積層工程において
中間基材であるプリプレグを複数枚積み重ねた後に、成
形工程でマトリックス樹脂を加熱硬化させることによっ
て作製することができる。この時、強化繊維が一定方向
に正確に引き揃えられた、かつボイドの少ない緻密な成
形品を得るためには、プリプレグが適度の粘着性とドレ
ープ性を有するハンドリング性の良いものであることが
必要である。
【0004】CFRPを作製するために用いられるプリ
プレグは、炭素繊維にエポキシ樹脂のような熱硬化性樹
脂を含浸することによって製造することができる。エポ
キシ樹脂自身が本来優れた粘着性を有しているため、強
化繊維にエポキシ樹脂を含浸したプリプレグも粘着性を
有する。しかし、プリプレグを製造する工程で押し潰さ
れた炭素繊維束が押しつぶす前の形態に経時的に戻ろう
とする、いわゆるスプリングバックが生じ、プリプレグ
の表面部分の樹脂がプリプレグの内部に潜り込む現象が
生じる。この結果、プリプレグ表面の樹脂層が薄くな
り、プリプレグの粘着性が経時的に低下する。また、複
合材料をより軽量化するために、プリプレグ中の繊維含
有率を大きくすることはしばしば行なわれることである
が、そのようなプリプレグでは、樹脂の含有量がもとも
と少ないために、上記した現象がより顕著に現れる。
【0005】また、エポキシ樹脂硬化物の靭性を改良し
たり、樹脂粘度を適正化するために、ポリエーテルスル
フォンやポリイミドなどの熱可塑性樹脂を配合した場
合、樹脂自身の粘着性が大幅に減少してしまうために、
得られるプリプレグの粘着性も著しく低下する。そこ
で、樹脂自体の粘着性を上げるために、樹脂中に粘着性
物質をブレンドして樹脂自身の粘着性を改善する方法や
プリプレグ表面に粘着性物質を塗布する方法などが考え
られているが、前者の方法では樹脂中に多量の粘着性物
質をブレンドすることが必要になり、後者の方法では成
形品のプリプレグ層間部分に脆弱層が介在することにな
り、いずれの方法においても複合材料の力学物性の低下
は避け得ないのが実状である。
【0006】一方、炭素繊維には繊維束を集束し、毛羽
を防止して取扱い性を向上するために、エポキシ樹脂や
熱可塑性樹脂がサイジング剤として付与されている。例
えば特公昭57−49675号公報や特公昭62−56
266号公報には、エポキシ樹脂等を炭素繊維用サイジ
ング剤として炭素繊維束の表面に塗布することが行なわ
れている。また、例えば特公平2−2990号公報で
は、ポリエーテルイミド樹脂でサイジング処理された炭
素繊維束が記載されているし、特公昭60−36510
号公報では、ポリアミド樹脂でサイジング処理された炭
素繊維束が記載されている。しかし、これら技術では炭
素繊維の毛羽を防止して取扱性を高めたり、複合材料に
おける炭素繊維とマトリックス樹脂との接着性を高めた
りすることはできても、炭素繊維束のスプリングバック
を防止することはできなかったのが実状である。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明は従来技術の上
記欠点を解決し、表面平滑性に優れた成形品を取得する
のに適した、粘着安定性に優れた炭素繊維プリプレグを
提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するた
め、本発明のプリプレグは以下の構成を有する。すなわ
ち、形態安定化剤が0.5〜10.0重量%付着し、か
つストランド捩り硬さが5〜40゜の範囲にある炭素繊
維とエポキシ樹脂組成物を必須成分とする一方向炭素繊
維プリプレグである。
【0009】また、上記課題を解決するため、本発明の
プリプレグの製造方法は以下の構成を有する。すなわ
ち、70℃以上のガラス転移温度を有する熱可塑性樹脂
を主成分とする形態安定化剤を、有機溶剤に溶解した溶
液中に、炭素繊維を浸漬せしめ、次いで溶剤を除去した
後、エポキシ樹脂組成物を含浸せしめることを特徴とす
る一方向炭素繊維プリプレグの製造方法、または形態安
定化剤がエポキシ樹脂と硬化剤を主成分としており、か
かる形態安定化剤を有機溶剤に溶解した溶液中に、炭素
繊維を浸漬せしめ、溶剤を除去した後または溶剤を除去
すると共に、加熱硬化処理をし、その後エポキシ樹脂を
含浸せしめることを特徴とする一方向炭素繊維プリプレ
グの製造方法、またはエポキシ樹脂用低温硬化型硬化剤
(A)が付着した炭素繊維束に、エポキシ樹脂組成物を
加熱、加圧して含浸し、含浸工程でエポキシ樹脂組成物
の一部を硬化剤(A)で硬化せしめることを特徴とする
一方向炭素繊維プリプレグの製造方法である。
【0010】以下、詳細に本発明について説明する。
【0011】本発明に適したマトリックス用エポキシ樹
脂としては、特に、アミン類、フェノール類、炭素炭素
二重結合を有する化合物を前駆体とするエポキシ樹脂が
好ましい。具体的には、アミン類を前駆体とするエポキ
シ樹脂としては、テトラグリシジルジアミノジフェニル
メタン、トリグリシジル−p−アミノフェノール、トリ
グリシジル−m−アミノフェノール、トリグリシジルア
ミノクレゾールの各種異性体が挙げられる。テトラグリ
シジルジアミノジフェニルメタンは航空機構造材として
の複合材料用樹脂として耐熱性に優れるため好ましい。
【0012】フェノール類を前駆体とするエポキシ樹脂
としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェ
ノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ
樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾー
ルノボラック型エポキシ樹脂、レゾルシノール型エポキ
シ樹脂が挙げられる。液状のビスフェノールA型エポキ
シ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂は低粘度であ
るために、他のエポキシ樹脂や添加剤と配合してエポキ
シ樹脂組成物の粘着性や粘度を調節するために好ましく
使用される。
【0013】また、これらのエポキシ樹脂は、単独で用
いてもよいし、適宜配合して用いてもよい。グリシジル
アミン型エポキシ樹脂とグリシジルエーテル型エポキシ
樹脂の組み合わせは、耐熱性、耐水性および作業性を併
せ持つため好ましく用いられる。
【0014】また、エポキシ樹脂は、エポキシ樹脂用硬
化剤と組み合わせてエポキシ樹脂組成物として用いられ
る。エポキシ樹脂用硬化剤は、エポキシ基と反応し得る
活性基を有する化合物であれば、これを用いることがで
きる。好ましくは、アミノ基、酸無水物基、アジド基を
有する化合物が適している。例えば、ジシアンジアミ
ド、ジアミノジフェニルスルホンの各種異性体、アミノ
安息香酸エステル類、各種酸無水物、フェノールノボラ
ック樹脂、クレゾールノボラック樹脂が挙げられる。ジ
シアンジアミドは、プリプレグの保存性に優れるため好
ましく用いられる。芳香族ジアミンを硬化剤として用い
ると、耐熱性の良好なエポキシ樹脂硬化物が得られる。
特に、ジアミノジフェニルスルホンの各種異性体は、耐
熱性の良好な硬化物を与えるため、本発明には最も適し
ている。その添加量は、エポキシ樹脂のエポキシ基とジ
アミノジフェニルスルホンの活性水素が化学量論におい
てほぼ当量となるように添加することが好ましい。
【0015】また、これらのエポキシ樹脂組成物中にポ
リエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリビニル
ホルマールなどの熱可塑性樹脂や、ニトリルゴムなどの
エラストマーといった高分子化合物を配合して使用する
ことも可能である。
【0016】本発明においては、炭素繊維束に形態安定
化剤を付与するため、プリプレグ中の炭素繊維束のスプ
リングバックが抑制され、プリプレグ表面のマトリクス
樹脂が炭素繊維束内部に沈降しにくくなるため、プリプ
レグの粘着性が長時間保持される。
【0017】形態安定化剤の付着量としては、0.5〜
10.0重量%の範囲であることが必要である。付着量
が0.5%より少ないと炭素繊維束の形態安定性は不十
分となり、プリプレグの粘着性や成形品の表面平滑性も
劣ってしまう。一方、付着量が10.0%を超えると、
炭素繊維束が剛直になり、得られるプリプレグのドレー
プ性が損なわれてしまう。
【0018】また、形態安定化剤が付着した炭素繊維束
の捩り硬さが5〜40゜の範囲にあることが必要であ
る。炭素繊維束の捩り硬さは、次のようにして測定され
る。2000〜4000フィラメントの炭素繊維束を約
15cm切り取り、荷重25gをかけて10回転の捩り
を与えた後放置し、捩りを与える前に対する捩れ角度を
測定する。捩れ角度が大きいほど、炭素繊維束の柔軟性
が低いことを示す。この様にして測定された捩り硬さ
は、プリプレグとしたときのドレープ性に影響する特性
であり、この値が大き過ぎるとプリプレグのドレープ性
が損なわれ、また小さ過ぎる場合は炭素繊維束の形態安
定性が不十分になる。すなわち、炭素繊維束の捩り硬さ
が5゜より小さいと、形態安定性は不十分となり、プリ
プレグの粘着性が劣るばかりか、得られる成形品の表面
平滑性も劣ってしまう。一方、炭素繊維束の捩り硬さが
40゜より大きいと、炭素繊維束が剛直になり、得られ
るプリプレグのドレープ性が損なわれてしまう。
【0019】従って、0.5〜10.0重量%の形態安
定化剤が付着し、かつ捩り硬さが5〜40゜の範囲にあ
る炭素繊維束を用いることが、プリプレグの粘着安定性
とプリプレグのドレープ性とを両立するためには必要で
ある。
【0020】形態安定化剤としては、複合材料用マトリ
ックス樹脂として使用される前記したエポキシ樹脂組成
物と同様のものを使用することができる。この場合、形
態安定化剤として用いるエポキシ樹脂組成物は、マトリ
ックス樹脂として用いるエポキシ樹脂組成物より硬化反
応が進んでいることにより、形態安定化剤としての目的
を達成することができる。具体的には、形態安定化剤と
して用いるエポキシ樹脂組成物のガラス転移温度が70
℃以上となるまで硬化が進んでいることが好ましい。形
態安定化剤としては、耐熱性の点からは以下に示したエ
ポキシ樹脂と硬化剤とを主成分とする組成物を用いるこ
とが好ましい。すなわち、本発明の形態安定化剤に適し
たエポキシ樹脂としては、特に、アミン類、フェノール
類、炭素炭素二重結合を有する化合物を前駆体とする前
記したエポキシ樹脂が好ましい。また、この場合のエポ
キシ樹脂用硬化剤としても、前記したマトリックスとし
て用いるエポキシ樹脂用硬化剤を用いることができる。
【0021】一般に、エポキシ樹脂硬化物は架橋密度が
大きくなるので、エポキシ樹脂組成物を形態安定化剤と
して使用した場合には、炭素繊維束の捩り硬さが大幅に
増大しすぎる場合がある。例えば、テトラグリシジルジ
アミン型エポキシ樹脂などのアミン類を前駆体とするエ
ポキシ樹脂とジアミノジフェニルスルホンなどの硬化剤
を主成分とするエポキシ樹脂組成物を形態安定化剤とし
て使用した場合には、炭素繊維束の捩り硬さは一般に大
きくなる。一方、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビ
スフェノールF型エポキシ樹脂などのフェノール型エポ
キシ樹脂とジシアンジアミドなどの硬化剤を主成分とす
るエポキシ樹脂組成物を形態安定化剤として使用した場
合や、ニトリルゴムなどのエラストマーを配合したエポ
キシ樹脂組成物を形態安定化剤として使用した場合に
は、炭素繊維束の捩り硬さは一般に小さくなる。したが
って、エポキシ樹脂と硬化剤の配合量を工夫したり、エ
ラストマーや熱可塑性樹脂などの第3成分を添加した
り、炭素繊維束への付着量を調整するなどして炭素繊維
束の捩り硬さを前記した範囲内とする必要がある。
【0022】さらに、種々の熱可塑性樹脂も本発明に用
いる形態安定化剤として使用可能である。熱可塑性樹脂
を形態安定化剤として用いる場合には、熱可塑性樹脂の
ガラス転移温度は70℃以上であることが好ましい。ガ
ラス転移温度が70℃より低いと、プリプレグ化の際の
熱履歴によって炭素繊維束の形態安定性が損なわれる場
合がある。具体的には、特にポリエーテルイミド、ポリ
スルホン、ポリエーテルスルホン等の耐熱性エンジニア
リングプラスチックが好ましく使用できる。
【0023】形態安定化剤の付着方法としては特に制限
はないが、その好ましい態様を以下に説明する。その一
つの方法は、形態安定化剤を有機溶剤に溶解した溶液中
に炭素繊維を浸漬させた後、溶剤を除去して形態安定化
剤を付着させる方法である。例えば、エポキシ樹脂と硬
化剤とを主成分とする系については、メチルエチルケト
ンやアセトンなどの低沸点溶剤が好ましく用いられ、溶
剤を除去した後または溶剤を除去すると共に加熱硬化処
理する。また、ポリエーテルイミドなどのエンジニアリ
ングプラスチックを形態安定化剤として使用する場合に
は、塩化メチレン等の塩素系溶剤やジメチルアセトアミ
ドやN−メチル−2−ピロリドンなどの極性非プロトン
性溶剤や、これらの混合溶剤が好ましく用いられる。形
態安定化剤の付着量は、溶液濃度や浸漬後にドクターナ
イフや絞りロール等を使用することによって調節でき
る。炭素繊維束の捩り硬さは、形態安定化剤が熱硬化性
樹脂成分を含有する場合には、加熱硬化処理時の加熱温
度と時間とを選択することによって調整できる。いずれ
にしても炭素繊維束の捩り硬さを前記した範囲内とする
ことが重要である。
【0024】形態安定化剤に乳化剤を添加して得られる
エマルジョンを用いて、形態安定化した炭素繊維を作製
することもできる。例えば、エポキシ樹脂と硬化剤の系
にポリビニルアルコールを添加したエマルジョンが好ま
しく使用される。この方法によれば、微粒子化した安定
化剤が繊維間に介在し、繊維間に微細な隙間を形成でき
るので、形態安定化とプリプレグの含浸性とを両立させ
ることができる。
【0025】本発明のプリプレグは、前記した炭素繊維
とエポキシ樹脂組成物とから構成される。このようなプ
リプレグの製造方法としては、形態の安定化された炭素
繊維を使用する以外は、常法により、マトリックス樹脂
を加熱・加圧下に含浸する、いわゆるホットメルト法、
あるいは有機溶剤に溶解したマトリックス樹脂の溶液を
使用して含浸する、いわゆるウェット法のいずれも適用
することができる。
【0026】本発明のプリプレグを製造するに適した別
の方法を以下説明する。すなわち、低温硬化型エポキシ
樹脂用硬化剤(A)が付着した炭素繊維束に、エポキシ
樹脂組成物を加熱、加圧して含浸することによりプリプ
レグを製造するに際して、その含浸工程で炭素繊維近傍
のエポキシ樹脂組成物の一部を硬化剤(A)で硬化させ
る方法である。
【0027】この方法によれば、予め形態の安定化した
繊維を使用してエポキシ樹脂組成物を含浸させる方法に
比べて、より穏やかな含浸温度あるいは圧力条件で含浸
性の優れたプリプレグを製造することが可能である。
【0028】この場合、炭素繊維に予め付着させるエポ
キシ樹脂用硬化剤(A)は、マトリックス樹脂としての
エポキシ樹脂組成物に含まれる硬化剤に比べて、より低
温でエポキシ樹脂を硬化し得る低温硬化型硬化剤を使用
することが必要である。エポキシ樹脂の硬化が高温で起
こる硬化剤を使用した場合、炭素繊維近傍のマトリック
ス樹脂を硬化させるためには、プリプレグを製造する通
常の条件より高温または長時間の加熱処理が必要とな
る。その結果、マトリックス樹脂中に含まれる硬化剤に
よってマトリックス樹脂全体の硬化が同時に進行し、プ
リプレグのドレープ性が損なわれてしまう。
【0029】本発明で使用される低温型硬化剤は、室温
以上100℃以下の温度でエポキシ樹脂が硬化する硬化
剤であり、その代表的な例として、ヘキサメチレンジア
ミン、ジエチレントリアミンなどの脂肪族アミン類、キ
シリレンジアミン、ピペラジン、イミダゾール化合物な
どが挙げられる。これらの低温型硬化剤の炭素繊維に対
する量は、硬化剤の種類や所望するプリプレグの性能の
度合いにより調整されるが、通常0.1〜1.0重量%
程度が適当である。
【0030】
【実施例】以下、実施例によって本発明をさらに詳細に
説明する。
【0031】(実施例1)エポキシ樹脂として油化シェ
ルエポキシ(株)社製“エピコート828”18.9
g、硬化剤としてピペラジン4.3gを、鹸化度90%
のポリビニルアルコールの2%水溶液1200g中に投
入し、ホモミキサーで激しく撹拌して、1.9%濃度の
形態安定化剤エマルジョンを得た。このエマルジョン中
に、東レ社製炭素繊維“T300B−3K−40B”
(3000フィラメントの炭素繊維ストランド)を浸漬
した後、熱風乾燥機で150℃×10分間乾燥した。こ
の時、エマルジョン付着量と捩り硬さは、それぞれ2.
1%、10°であった。
【0032】次に、下記エポキシ樹脂および硬化剤から
なるエポキシ樹脂組成物をニーダーで調製した。
【0033】 <エポキシ樹脂> ELM434(テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン)40重量部 EPC830(ビスフェノールF型エポキシ) 20重量部 EPC152(臭素化ビスフェノールA型エポキシ) 63重量部 EP828 (ビスフェノールA型エポキシ) 127重量部 <硬化剤> 4,4'-DDS(4,4’−ジアミノジフェニルスルホン) 80重量部 この樹脂組成物を80℃に加熱し、離型紙上にコーティ
ングして樹脂フィルムとした。
【0034】このようにして作製した樹脂フィルムをプ
リプレグマシンにセットし、一方向に引き揃えた前記し
た形態安定化炭素繊維の両面から樹脂含浸を行なった
(含浸温度100℃、含浸圧力4kgf/cm2 であり、樹脂
含有率38%)。
【0035】次にプリプレグの粘着性を、以下のように
して測定した。プリプレグを25℃、RH40%の雰囲
気中に10日間放置した後に、直径10mmのスチール
製円柱に、該プリプレグの繊維方向が円柱の長手方向に
対して45°の角度になるように2〜3層重ねて巻き付
けた。これを25℃、RH40%の雰囲気中に放置し
て、24時間経過後のプリプレグの巻き付き状況を観察
したところ、プリプレグは完全に密着しており粘着性が
良好であることが認められた。
【0036】(実施例2)樹脂組成物に三井東圧社製ポ
リエーテルスルホン“5003P”25重量部を追加し
た他は、実施例1と同様にしてプリプレグを作製した。
実施例1と同様にしてプリプレグの粘着性を測定したと
ころ、良好であることが認められた。
【0037】(実施例3)ピペラジン0.5重量%を溶
解した水溶液中に東レ社製炭素繊維“T300B−3K
−40B”を浸漬した後、熱風乾燥機で乾燥して繊維表
面にピペラジンを付着させた。実施例1または2で製造
したエポキシ樹脂フィルムを用いて、一方向に引き揃え
た上記の炭素繊維の上下両面に積層し、プリプレグ装置
を使用して温度100℃、含浸圧力4kgf/cm2 の条件で
含浸させた。得られたプリプレグの炭素繊維含有率は5
8重量%であり、適度なドレープ性および粘着性を有し
ていた。このプリプレグは、25℃、相対湿度40%の
雰囲気中に10日間放置した後もドレープ性、粘着性を
保持しており、実施例1と同様にして円柱巻きつけ試験
を行なったところ、良好な粘着性を示した。
【0038】また、このプリプレグのエポキシ樹脂組成
物をメチルエチルケトンを用いて抽出除去したところ、
一部のエポキシ樹脂組成物の硬化物が付着した炭素繊維
束が得られた。この硬化物の付着量を測定するために、
15cm長さの炭素繊維束を電気炉を使用して窒素雰囲
気で500℃で30分処理して硬化物を分解除去したと
ころ、2.1%の減量があった。さらに、この炭素繊維
束の捩り硬さは30゜であった。
【0039】(比較例1)形態安定化剤エマルジョンの
濃度を0.2%とした他は、実施例1と同様にして“T
300B−3K−40B”を処理したところ、形態安定
化剤の付着量と捩り硬さは、それぞれ0.3%、4°で
あった。次いで、実施例1と同様にしてプリプレグを作
製した。得られたプリプレグの粘着性は不足し、実施例
1と同様にして円柱巻きつけ試験を行なったところ、プ
リプレグは円柱から殆ど剥離してしまった。
【0040】(比較例2)形態安定化剤エマルジョンの
濃度を6.0%とした他は、実施例1と同様にして“T
300B−3K−40B”を処理したところ、形態安定
化剤の付着量と捩り硬さは、それぞれ12.2%、55
°であった。次いで、実施例1と同様にしてプリプレグ
を作製した。得られたプリプレグはドレープ性が不足
し、実施例1と同様にして円柱巻きつけ試験を行なった
ところ、プリプレグは円柱から殆ど剥離してしまった。
【0041】
【発明の効果】本発明のプリプレグは、炭素繊維束のス
プリングバックが防止されることにより、マトリックス
樹脂の有する粘着性がプリプレグの粘着性に反映され、
またそのプリプレグの粘着性が経時的に安定している。
また、本発明のプリプレグの製造方法により、より穏や
かな含浸温度あるいは圧力条件で前記した優れた粘着性
を有するプリプレグを製造することができる。さらに、
本発明のプリプレグを用いることによって優れた表面平
滑性および内部緻密性を有する炭素繊維強化複合材料を
製造することができる。
フロントページの続き (72)発明者 沖 信昭 愛媛県伊予郡松前町大字筒井1515番地 東レ株式会社愛媛工場内 審査官 森川 聡 (56)参考文献 特開 昭57−149515(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C08J 5/24

Claims (9)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】形態安定化剤が0.5〜10.0重量%付
    着し、かつ捩り硬さが5〜40°の範囲にある炭素繊維
    束と、エポキシ樹脂組成物を必須成分とする一方向炭素
    繊維プリプレグ。
  2. 【請求項2】形態安定化剤が熱可塑性樹脂を主成分とす
    ることを特徴とする請求項1記載の一方向炭素繊維プリ
    プレグ。
  3. 【請求項3】熱可塑性樹脂が70℃以上のガラス転移温
    度を有することを特徴とする請求項2記載の一方向炭素
    繊維プリプレグ。
  4. 【請求項4】形態安定化剤がエポキシ樹脂と硬化剤を主
    成分とした硬化物であることを特徴とする請求項1記載
    の一方向炭素繊維プリプレグ。
  5. 【請求項5】硬化物のガラス転移温度が70℃以上であ
    ることを特徴とする請求項4記載の一方向炭素繊維プリ
    プレグ
  6. 【請求項6】70℃以上のガラス転移温度を有する熱可
    塑性樹脂を主成分とする形態安定化剤を有機溶剤に溶解
    した溶液中に、炭素繊維を浸漬せしめ、次いで溶剤を除
    去した後、エポキシ樹脂組成物を含浸せしめることを特
    徴とする一方向炭素繊維プリプレグの製造方法。
  7. 【請求項7】形態安定化剤がエポキシ樹脂と硬化剤を主
    成分としており、かかる形態安定化剤を有機溶剤に溶解
    した溶液中に、炭素繊維を浸漬せしめ、溶剤を除去した
    後または溶剤を除去すると共に、加熱硬化処理をし、そ
    の後エポキシ樹脂組成物を含浸せしめることを特徴とす
    る一方向炭素繊維プリプレグの製造方法。
  8. 【請求項8】 加熱硬化処理後の硬化物のガラス転移温度
    が70℃以上であることを特徴とする請求項記載の一
    方向炭素繊維プリプレグの製造方法。
  9. 【請求項9】 エポキシ樹脂用低温硬化型硬化剤(A)が
    付着した炭素繊維束に、エポキシ樹脂組成物を加熱、加
    圧して含浸し、含浸工程でエポキシ樹脂組成物の一部を
    硬化剤(A)で硬化せしめることを特徴とする一方向炭
    素繊維プリプレグの製造方法。
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