JP3327080B2 - 高強度で高耐摩耗性のダイヤモンド焼結体とその製造方法 - Google Patents

高強度で高耐摩耗性のダイヤモンド焼結体とその製造方法

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JP3327080B2
JP3327080B2 JP31071895A JP31071895A JP3327080B2 JP 3327080 B2 JP3327080 B2 JP 3327080B2 JP 31071895 A JP31071895 A JP 31071895A JP 31071895 A JP31071895 A JP 31071895A JP 3327080 B2 JP3327080 B2 JP 3327080B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、切削工具,掘削工
具,線引きダイス,耐摩部品などのための素材として用
いられるダイヤモンド焼結体とその製造方法に関し、特
に、強度と耐摩耗性の改善されたダイヤモンド焼結体と
その製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】ダイヤモンド焼結体は、他の材料に比べ
て一般に優れた耐摩耗性と高い強度を有するので、切削
工具,掘削工具,線引きダイスのように強度と耐摩耗性
が要求される分野で用いられている。このようなダイヤ
モンド焼結体は、たとえば特公昭52−12126に示
されているように、ダイヤモンド粉末をWC−Co超硬
合金製の容器に充填して、高温高圧下で超硬合金母材か
らCo−W−C共晶組成液相をダイヤモンド粉末中に溶
浸させて焼結することによって得ることができる。ま
た、特開昭54−114513に示されているように、
ダイヤモンド粉末と鉄族の溶媒金属を含む粉末とを予め
混合し、この混合粉末をダイヤモンドが得られる高温高
圧下で保持することによってダイヤモンド焼結体を得る
ことができる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】上述のような方法で得
られるダイヤモンド焼結体は、焼結の難しい条件の場
合、たとえばダイヤモンド原料粉末粒子が細かすぎる場
合や、混合される溶媒金属量が少ない場合などにおいて
は、溶媒金属の溶浸が困難となって焼結が不可能となっ
たり、ダイヤモンド粒子同士の接触部分が増加してダイ
ヤモンド粒子の凝集部分が局所的に焼結されないという
問題を有している。したがって、高密度のダイヤモンド
焼結体、すなわちダイヤモンド含有率の高い耐摩耗性に
優れたダイヤモンド焼結体を得ることが容易でない。
【0004】このような問題を解決しようとして、たと
えば特開昭63−190756,特開平6−3265
5,または無機材質研究所研究報告書第58号第38〜
48頁に記載されているように、ダイヤモンド粉末の個
々の粒子の表面に焼結助剤を被覆して、これらの被覆ダ
イヤモンド粉末を焼結することによって高密度のダイヤ
モンド焼結体を得る方法が提案されている。このような
方法によって得られるダイヤモンド焼結体は、高いダイ
ヤモンド含有率を有しているので、耐摩耗性に優れるも
のの、焼結体中のダイヤモンド粒子径が大きい場合に
は、ダイヤモンド焼結体の強度が低くなって実用上の使
用における信頼性が十分でないという問題がある。さら
に、このような方法で高密度のダイヤモンド焼結体を得
る場合、焼結助剤は少量しか加えることができないの
で、焼結助剤の組成や被覆の形態によっては、ダイヤモ
ンドが生成し得る領域の中でも比較的高い温度と圧力が
必要になる。そのような場合、ダイヤモンド焼結体中に
残留する歪みが大きくなるので、ダイヤモンド焼結体の
強度が低下して実用上の信頼性が不十分になる。
【0005】また、高温におけるダイヤモンド焼結体の
劣化を防ぐために、特公平6−6769に示されている
ように、ダイヤモンド粉末粒子の表面に遷移金属,B,
またはSiをコーティングして、これらのコーティング
されたダイヤモンド粉末を固相焼結させることによって
ダイヤモンド焼結体を得る方法が提案されている。しか
しこの場合、ダイヤモンド粒子同士は固相反応によって
炭化されるコーティング材料を介して結合すると考えら
れており、ダイヤモンド粒子同士が直接接合を起こすこ
とを可能にする鉄族金属を溶媒とする液相焼結によるダ
イヤモンド焼結体のほうが機械的強度の面で優れてい
る。
【0006】以上のような先行技術における課題に鑑
み、本発明は、高強度で高耐摩耗性のダイヤモンド焼結
体とその製造方法を提供することを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明による高強度で高
耐摩耗性のダイヤモンド焼結体は、その80容量%〜9
6容量%の焼結ダイヤモンド粒子と残部の焼結助剤およ
び不可避不純物とを含み、焼結ダイヤモンド粒子は実質
的に0.1μm〜8μmの範囲内の粒径を有していて互
いに直接接合しており、焼結助剤はその0.01〜40
重量%の範囲内のPdを含みかつ残部としてFe,C
o,およびNiから選択された少なくとも1つを含むこ
とを特徴としている。
【0008】本発明によるダイヤモンド焼結体において
は、鉄族元素を含む焼結助剤の存在の下に微細なダイヤ
モンド粒子が高密度で焼結されているので、高い強度と
高い耐摩耗性が実現され得る。
【0009】上述のような高強度で高耐摩耗性のダイヤ
モンド焼結体製造するためには、実質的に0.1μm
〜8μmの範囲内にある粒径を有するダイヤモンド粉末
を準備し、燒結助剤の一部としてPdをそのダイヤモン
ド粉末の各粒子の表面上に析出させた後に、無電解めっ
き法によってFe,Co,およびNiから選択された少
なくとも1つを焼結助剤の他の一部としてダイヤモンド
粉末の各粒子の表面に被覆して被覆ダイヤモンド粉末を
調製し、その被覆ダイヤモンド粉末の圧粉体を成形し、
その圧粉体をダイヤモンドが熱力学的に安定な高圧と高
温の条件の下で液相焼結することが好ましい
【0010】
【0011】また、上述のような高強度で高耐摩耗性の
ダイヤモンド焼結体製造するためには、実質的に0.
1μm〜8μmの範囲内にある粒径を有するダイヤモン
ド粉末を準備し、燒結助剤の第1の一部としてPdをそ
のダイヤモンド粉末の各粒子の表面上に析出させた後
に、無電解めっき法によってFe,Co,およびNiか
ら選択された少なくとも1つを焼結助剤の第2の一部と
してダイヤモンド粉末の各粒子の表面に被覆して被覆ダ
イヤモンド粉末を調製し、その被覆ダイヤモンド粉末の
圧粉体を成形し、Pd,Fe,Co,およびNiの少な
くとも1つを焼結助剤の第3の一部として圧粉体に接触
させ、ダイヤモンドが安定な高圧と高温の条件のもと
結助剤のその第3の一部を溶浸させながら圧粉体を液
相焼結してもよい
【0012】
【0013】まず本発明者達は、種々のダイヤモンド焼
結体における強度に関して調査を行なった。その結果、
ダイヤモンド焼結体の強度は、破壊の起点となる焼結体
中の欠陥の大きさに依存することが見出された。ここに
いう欠陥は、ダイヤモンド焼結体中のダイヤモンド粗大
粒子,溶媒金属などの焼結助剤のプール部分,空隙など
を意味し、これらの欠陥の大きさが小さければ小さいほ
どダイヤモンド焼結体の強度が増大する。
【0014】したがって、ダイヤモンド焼結体の強度を
向上させるためには、まずダイヤモンド粗大粒子を減少
させることが必要であり、許容されるダイヤモンド粒子
径は最大限でμmであることが見出された。また、次
に述べられるようにダイヤモンド粒子の表面に焼結助剤
の被覆処理を実施するためには、ダイヤモンド粉末が
0.1μm以上の粒径を有することが必要である。すな
わち、原料ダイヤモンド粉末は0.1μmμmの範
囲内の粒径を有することが求められる。
【0015】また、焼結体中における焼結助剤のプール
部分および空隙を減少させるためには、焼結助剤がダイ
ヤモンド粉末の各粒子の表面に被覆された被覆ダイヤモ
ンド粉末を液相焼結するのが好ましいことが見出され
た。焼結助剤は、Pdを含みかつ鉄族金属であるFe,
Co,およびNiから選択された少なくとも1つを含む
のが望ましいことが見出された。このような焼結助剤を
容量%〜20容量%の範囲内で含むように被覆ダイヤ
モンド粉末を調製し、ダイヤモンドが安定な高圧と高温
の条件の下でその被覆ダイヤモンド粉末を焼結すること
によって、ダイヤモンド粉末全体にわたって均一な焼結
助剤の液相が発生するので、焼結助剤のプールと空隙の
少ないダイヤモンド焼結体が得られることが見出され
た。
【0016】同様に、Pdを含みかつFe,Co,およ
びNiの少なくとも1つを含む焼結助剤を含むように被
覆ダイヤモンド粉末を調製し、Pd,Fe,Co,およ
びNiの少なくとも1つを含む付加的な焼結助剤を被覆
ダイヤモンド粉末の圧粉体に接触させれば、ダイヤモン
ドの安定な高圧と高温のもとにおいてダイヤモンド粉末
に被覆された焼結助剤を補うように被覆ダイヤモンド圧
粉体全体にわたって付加的な焼結助剤の均一な溶浸が生
じるので、焼結助剤のプールや空隙の少ないダイヤモン
ド焼結体が得られることが見出された。
【0017】すなわち、上述のような焼結助剤が被覆さ
れた被覆ダイヤモンド粉末を用いることによって、焼結
助剤の均一な溶融または溶浸が発生するので、通常の場
合には焼結性の悪い条件の下においても焼結が可能であ
って、ダイヤモンド含有率が高くて高強度で高耐摩耗性
のダイヤモンド焼結体が得られることが見出された。
【0018】ここで、Pd,Fe,Co,およびNi
は、それらのいずれか1つの単体でもダイヤモンド粉末
のための焼結助剤として用いられ得る。しかし、焼結助
剤がFe,Co,およびNiの少なくとも1つに加えて
Pdを含む場合に、焼結助剤の融点が降下してダイヤモ
ンド粉末の焼結性が著しく向上することが見出された。
このとき、焼結助剤中のPdの含有量が燒結助剤に対し
0.01重量%未満では焼結助剤の融点を降下させる
十分な効果を得ることができず、逆にPdの含有量が
結助剤に対して40重量%を超えれば焼結助剤の融点が
上昇する傾向を示してダイヤモンド粉末の焼結性が悪化
する。すなわち、焼結助剤中のPdの含有量は、燒結助
剤に対して0.01重量%〜40重量%の範囲内にある
ことが好ましい。
【0019】また、焼結助剤を被覆した被覆ダイヤモン
ド粉末を焼結する場合に、結果物のダイヤモンド燒結体
に対して4容量%以上の焼結助剤を含むことが望まれる
のは、焼結助剤が不足して実質的にダイヤモンド粉末の
焼結が不可能になることを防止するためである。他方、
焼結助剤が結果物のダイヤモンド燒結体に対して20容
量%以下であることが望まれるのは、ダイヤモンド焼結
体中の焼結助剤が結果物のダイヤモンド燒結体に対して
20容量%を超えればダイヤモンド含有率の低下によっ
て焼結体の耐摩耗性が著しく低下するからである。
【0020】
【0021】ところで、ダイヤモンド粉末の各粒子上に
焼結助剤の被覆を行なう方法としては、CVD法,PV
D法,または溶液沈澱法などを用いることが考えられ得
る。しかし、ダイヤモンド粒子表面に被覆される焼結助
剤の均一性が粉末の焼結性と焼結体の強度の向上に極め
て重要であることを考慮し、かつ経済性をも兼ね合わせ
て考慮すれば、無電解めっき法が最も好ましく用いられ
得る。
【0022】ここで、無電解めっき法によってダイヤモ
ンド粒子表面に焼結助剤を析出させる場合、焼結後に高
いダイヤモンド含有率を得るためには、焼結助剤中の不
純物の混入は可能なかぎり防止されることが望ましい。
また、無電解めっきの初期反応においては高い触媒作用
を有する触媒核がダイヤモンド粒子表面に存在すること
が必要であることを考慮すれば、焼結助剤としての作用
のみならずこの触媒作用をも発揮し得るPdがダイヤモ
ンド粒子表面に最初に被覆されることが好ましい。この
Pdを触媒核としてFe,Co,およびNiの少なくと
も1つを含む焼結助剤が被覆されることにより、不純物
の少ない焼結助剤で被覆された被覆ダイヤモンド粒子が
得られることが見出された。
【0023】
【0024】また、焼結助剤が鉄族金属に加えてSn,
PおよびBの少なくとも1つを含む場合、それらのS
n,PおよびBも焼結助剤の融点を降下させるように作
用し、焼結助剤で被覆されたダイヤモンド粉末の焼結性
を著しく向上させることが見出された。
【0025】鉄族元素に加えてPを析出させるために
は、無電解めっき溶液中の還元剤として次亜リン酸塩で
あるたとえば次亜リン酸ナトリウムを用い、そのめっき
溶液中の還元剤の濃度、めっき溶液のpH、およびめっ
き時の処理温度などを調節することによって所望のP濃
度を有する焼結助剤を析出させることができる。同様
に、鉄族元素に加えてBを析出させるためには、無電解
めっき溶液中の還元剤として水素化ホウ素ナトリウムな
どの水素化ホウ素化合物を用い、そのめっき溶液中の還
元剤の濃度、めっき溶液のpH、およびめっき時の処理
温度などを調節することによって所望のB濃度を有する
焼結助剤を析出させることができる。他方、Snはダイ
ヤモンド粉末粒子表面に対する吸着性に優れているの
で、塩化スズ溶液などからダイヤモンド粒子表面に直接
吸着させられ得る。また、無電解めっきの前処理として
ダイヤモンド粒子表面にSnを吸着させた後に、触媒核
となるPdを析出(センシタイジング・アクティベーテ
ィング法)させるか、またはSnと同時にPdを析出
(キャタリスト・アクセラレート法)させることは、ダ
イヤモンド粒子表面におけるPdの吸着性を助長するの
で好ましい。
【0026】このとき、焼結助剤中のSn,PおよびB
の合計含有量がその燒結助剤に対して0.01重量%未
満では焼結助剤の融点を降下させる効果を生ぜず、逆に
燒結助剤に対して30重量%を超えれば焼結時において
焼結助剤中の溶媒金属である鉄族金属へのダイヤモンド
の溶解が阻害されるので、ダイヤモンド粒子同士の結合
力が低下して焼結体強度を低下させたり、焼結体の熱的
特性を劣化させたりすることになる。そして、Sn,P
およびBの合計含有量が燒結助剤に対して0.01重量
〜11.5重量%の範囲内にあれば、より好ましい。
【0027】ところで、無電解めっき法でダイヤモンド
粒子に焼結助剤を被覆する場合、無電解めっきによって
析出する鉄族元素は、多くの場合に酸化物として析出す
る。酸化物を含む焼結助剤を用いて焼結を行なえば、そ
の酸化物に起因する酸素が焼結体中に空隙を形成した
り、溶媒となる焼結助剤中におけるダイヤモンドの溶解
析出反応を阻害するので、ダイヤモンド焼結体の性能を
劣化させる場合がある。このような酸素による悪影響を
防止するために、無電解めっき後の被覆ダイヤモンド粉
末は真空中または水素雰囲気中で熱処理することによっ
て還元されることが好ましい。
【0028】また、ダイヤモンド粉末に無電解めっき処
理を行なうとき、ダイヤモンド粉末を含むめっき溶液に
対して攪拌および超音波振動の少なくとも1つによる揺
動を与えることによって、ダイヤモンド粒子が焼結助剤
によってさらに均質に被覆され得ることが見出された。
【0029】さらに、より高密度のダイヤモンド焼結体
を得るためには、ダイヤモンドが不安定な条件下でダイ
ヤモンド粉末を高温処理することによってダイヤモンド
粒子を表面から部分的に黒鉛化させ、この部分的に黒鉛
化されたダイヤモンド粉末に焼結助剤の被覆処理を行な
って焼結を行なうか、またはダイヤモンド粉末に焼結助
剤の被覆処理をしてから被覆ダイヤモンド粒子の表面か
ら部分的に黒鉛化させた後に焼結することが好ましい。
なぜならば、ダイヤモンド粉末は塑性変形しにくいの
で、高圧下においてもダイヤモンド粒子間に空隙が残り
やすいが、ダイヤモンド粒子表面が黒鉛化されている場
合には、黒鉛部分が塑性変形を起こしやすいために実質
的に焼結体の密度を向上させるからである。また、焼結
時の焼結助剤中における炭素の溶解と再析出の反応を考
慮するとき、ダイヤモンドよりも黒鉛の方が反応速度が
大きいので、ダイヤモンド表面が黒鉛化されている場合
の方が焼結性が向上する。
【0030】これらの理由によって、ダイヤモンド表面
が部分的に黒鉛化されている場合に、より高密度のダイ
ヤモンド焼結体が得られやすいことがわかる。このと
き、ダイヤモンド粒子の黒鉛化が0.5容量%未満の場
合には、焼結体の密度の向上がほとんど改善されない。
他方、ダイヤモンド粒子の黒鉛化が80容量%を超える
場合には、ダイヤモンドが安定な高圧と高温の下での焼
結中に黒鉛のダイヤモンド化が不完全となって、ダイヤ
モンド焼結体中に黒鉛が残留するので好ましくない。す
なわち、ダイヤモンド粒子の部分的な黒鉛化の好ましい
範囲は、0.5容量%〜80容量%である。
【0031】ところで、上述のようなダイヤモンド焼結
体を得る場合、種々の微量物質の混入が考えられる。た
とえば、被覆ダイヤモンド粉末は一般に超硬合金製また
は高融点金属製の容器に充填されて焼結されるので、そ
の容器の成分であるW,Ta,Mo,Crおよびそれら
の炭化物が焼結体中に混入することがある。しかし、こ
れらの物質が焼結体中に混入しても、焼結体中のダイヤ
モンドの含有率がその燒結体に対して80容量%〜96
容量%の範囲内にあれば何ら問題を生じない。
【0032】同様に、被覆ダイヤモンド粉末中の焼結助
剤を補うために、その圧粉体に付加的な焼結助剤を接触
させて焼結中にその圧粉体内へ溶浸させても、焼結体の
ダイヤモンド含有率が80容量%〜96容量%の範囲内
にあれば何ら問題を生じない。このように圧粉体に接し
て配置される付加的な焼結助剤の組成としては、ダイヤ
モンド粒子の被覆に用いられる焼結助剤の組成と同様の
ものを用いることができる。
【0033】
【実施例】
(実施例1)
【0034】
【表1】
【0035】表1は、主に焼結助剤の付与方法,含有
量,および組成がダイヤモンド焼結体の機械的特性に及
ぼす影響を調べるために準備された種々の粉末試料の例
を示している。すなわち、表1における粉末試料1A〜
1Lにおいては、いずれも0.1μm〜4μmの範囲内
の粒度を有する原料ダイヤモンド粉末が用いられている
が、焼結助剤の付与方法,含有量,および組成が種々に
変えられている。
【0036】試料1A,1B,および1Cにおいては、
無電解めっきによって焼結助剤でダイヤモンド粉末粒子
を被覆するために以下の処理が行なわれた。まず、ダイ
ヤモンド粉末がアルコール中で脱脂処理された。脱脂処
理されたダイヤモンド粉末は、流水中での洗浄,5重量
%塩酸水溶液中での洗浄,および再度の流水中での洗浄
が行なわれた。このように洗浄されたダイヤモンド粉末
は前処理として常温状態の塩化第1スズと塩酸を含む溶
液中に1分間浸漬され、ダイヤモンド粒子表面のSnの
吸着(センシタイジング)が行なわれた。センシタイジ
ングが行なわれたダイヤモンド粉末は、水洗された後に
常温状態の塩酸塩化パラジウム溶液中で1分間浸漬され
ることによって、ダイヤモンド粒子表面にPdが析出
(アクティベーティング)させられた。
【0037】アクティベーティングされたダイヤモンド
粉末は、水洗された後に、硫酸コバルト,硫酸鉄,およ
び次亜リン酸ナトリウムを含み75℃に保持されたCo
−Fe−P無電解めっき液中に所定の時間だけ浸漬され
た。無電解めっき溶液中の浸漬時間が長いほど、ダイヤ
モンド粒子表面に被覆される焼結助剤の量が増大し、粉
末試料中の焼結助剤の含有量が増大する。この無電解め
っき工程中において、めっき前処理液およびめっき液に
は攪拌と同時に超音波振動が加えられた。このようにし
て無電解めっきされた被覆ダイヤモンド粉末は洗浄され
た後に1000℃の真空雰囲気中で60分間加熱される
ことによりダイヤモンド粒子表面の部分的な黒鉛化が行
なわれ、その後回収され、表1に示されているような焼
結助剤の含有量と組成を有する被覆粉末試料1A〜1C
が得られた。
【0038】試料1D〜1Fにおいては、焼結助剤が試
料1A〜1Cの場合と同じ組成を有しているが、焼結助
剤の被覆はアークイオンプレーティング法によって行な
われた。すなわち、1×10-2torrのアルゴン雰囲
気中において焼結助剤の組成に対応したターゲットと3
50Vのバイアス電圧を用いるアークイオンプレーティ
ング法によって、ダイヤモンド粉末粒子の表面に焼結助
剤が被覆された。
【0039】試料1G〜1Iにおいては、500Åの粒
径を有する超微粒Co粉末が焼結助剤として用いられ
た。ダイヤモンド粉末と所定の含有量に相当する超微粒
Co粉末とが、テフロン製混合用ボールを内蔵するテフ
ロン製ボールミル容器に投入され、これらの粉末を4時
間混合することによって混合粉末試料1G〜1Iが得ら
れた。
【0040】試料1J〜1Lの調製においては、WC−
Coの超硬合金製の混合用ボールと容器を備えたボール
ミル内にダイヤモンド粉末が投入され、所定の時間だけ
そのボールミルが駆動された。超硬合金製ボールミルの
駆動の間に、混合用ボールや容器から削り取られた超硬
合金粉末が焼結助剤としてダイヤモンド粉末内に混入す
る。ダイヤモンド粉末内に混合される超硬合金粉末の含
有量は、超硬合金製ボールミルの駆動時間を変えること
によって調整することができる。
【0041】表1に示された粉末試料1A〜1Lの各々
がタンタル製の容器に密閉され、ベルト型高圧装置を用
いて50kbの圧力と1400℃の温度の下に10分間
保持することによって焼結された。表2は、こうして得
られたダイヤモンド焼結体試料におけるダイヤモンド含
有率と耐摩耗性を示している。
【0042】
【表2】
【0043】表2における焼結体試料2A〜2Lは、そ
れぞれ、表1における粉末試料1A〜1Lを焼結して得
られたものである。なお表2からわかるように、試料2
G,2J,および2Kにおいては、焼結助剤が少なくか
つ不均一に分布していて、ダイヤモンド粉末全体におい
て焼結助剤の均一な溶融が起こらないために焼結が不完
全となり、完全な焼結体を得ることができなかった。
【0044】他方、完全な焼結体が得られた試料は切削
工具に加工され、次に示す切削条件の下に性能の評価が
行なわれた。
【0045】被削材:軸方向に沿って表面に6つの溝を
有するAl−16重量%Si丸棒 被削材の周表面速度:500(m/min) バイトの切込み深さ:0.6(mm) バイト送り速さ:0.12(mm/rev) 切削時間:3(min) この切削試験の結果として、工具の逃げ面摩耗量が、表
2に示されている。表2からわかるように、本発明に属
する焼結体試料2Aと2Bにおいては、焼結助剤の量が
少なくても焼結が可能であるので、ダイヤモンド含有率
が高くて耐摩耗性の優れた工具が得られる。また、これ
らの焼結体試料2Aと2Bは均質な焼結体組織を有して
いるために強度が高く、切削工具としての耐欠損性にお
いても優れていることが明らかとなった。
【0046】これに対して、ダイヤモンド含有率の低い
焼結体試料2Cと2Lにおいては耐摩耗性が劣っている
ことが明らかである。また、試料2D,2E,2F,2
Hおよび2Iの焼結体組織中には、PVD法における焼
結助剤の不均一部分、または超微粒Co粉末の凝集に起
因するCoプール部分が観察され、これらが焼結体の強
度低下の原因となって切削中に焼結体の欠損が発生し、
切削工具としての焼結体の使用が不能となった。
【0047】(実施例2)
【0048】
【表3】
【0049】表3は、焼結助剤の付与方法や組成および
無電解めっき条件などが焼結体の機械的特性に及ぼす影
響を調べるために準備された種々の粉末試料の例を示し
ている。
【0050】試料3A〜3Cにおいては、ダイヤモンド
粉末粒子を無電解めっきによって焼結助剤で被覆するた
めに予め1450℃の真空雰囲気中で30分間加熱さ
れ、ダイヤモンド粒子表面が部分的に黒鉛化された後
に、表1の場合と同様にダイヤモンド粉末の脱脂処理や
酸洗などの後に表面活性化処理が行なわれた。その後、
硫酸ニッケルと次亜リン酸ナトリウムを含み60℃に保
持されたNi−P無電解めっき液内へダイヤモンド粉末
が浸漬された。この無電解めっき工程の間に、めっき前
処理液およびめっき液には攪拌と超音波振動によって揺
動が与えられた。そして、焼結助剤の組成はめっき液中
のpHを変化させることによって調製された。
【0051】試料3D〜3Fは、試料3A〜3Cの場合
と類似の無電解めっきによって調製されたが、無電解め
っき溶液には攪拌と超音波振動による揺動が与えられな
かった。
【0052】試料3Gにおいては、テフロン製混合用ボ
ールを内蔵するテフロン製ボールミル容器内へダイヤモ
ンド粉末が200Åの粒径の超微粒Ni粉末とともに投
入され、4時間の混合処理が行なわれた。
【0053】表3中の粉末試料の各々はMo製の容器に
密閉され、ベルト型高圧装置を用いて45kbの圧力と
1350℃の温度の下で15分間焼結された。こうして
得られた焼結体試料の種々の特性が表4に示されてい
る。
【0054】
【表4】
【0055】表4における焼結体試料4A〜4Gは、そ
れぞれ、表3中の粉末試料3A〜3Gから得られたもの
である。しかし、試料4Gにおいては、表2中の試料2
Dの場合と同様に部分的に未焼結領域を生じて完全な焼
結体が得られなかった。
【0056】完全な焼結体が得られた試料の各々は、6
×3×0.3mmの棒状試片に加工された後に、スパン
距離4mmの3点曲げ試験によって強度が評価された。
その結果、表4からわかるように、試料4A〜4Cの強
度が試料4D〜4Fに比べて向上していることが明らか
である。すなわち、ダイヤモンド粉末に無電解めっきを
行なう場合に攪拌と超音波振動をめっき液に付与するこ
とによって、ダイヤモンド粒子上に焼結助剤の均一な被
膜が形成されて、ダイヤモンド焼結体中の欠陥が減少し
て焼結体の強度が著しく向上することが明らかとなっ
た。
【0057】また、試料4Aと4Bの強度が試料4Cと
4Fに比べて高いという事実などからして、焼結助剤が
PおよびSnを含む場合にそれらの合計の含有量が0.
01重量%〜30重量%以下であることが望ましいこと
がわかった。また、焼結助剤がBを含む場合にも、その
望ましい含有量が0.01重量%〜30重量%であるこ
とも確認された。
【0058】(実施例3)
【0059】
【表5】
【0060】表5は、被覆ダイヤモンドの圧粉体に接触
させた付加的な焼結助剤を焼結時にその圧粉体内に溶浸
する場合に、付加的な焼結助剤の組成が焼結体の強度に
及ぼす影響を調べるために準備された種々の粉末試料の
例を示している。
【0061】試料5A〜5Eにおいては、ダイヤモンド
粉末粒子上に無電解めっきによって焼結助剤を被覆する
ために、表1の場合と同様にダイヤモンド粉末の脱脂処
理と酸洗いが行なわれた。その後、無電解めっきの前処
理として塩化パラジウム,塩化第一スズ,および塩酸を
含む溶液中に常温で2分間浸漬することによってキャタ
リストを行ない、続いてこれらの粉末を常温の硫酸水溶
液中で2分間浸漬することによってダイヤモンド粉末の
アクセレレートが行なわれた。
【0062】前処理の終わった粉末は、水洗いの後に塩
化ニッケルと水酸化ホウ素ナトリウムを含むNi−Bめ
っき溶液中で90℃において2分間浸漬することによっ
て、表5に示されているような組成と量の被覆焼結助剤
を含む被覆ダイヤモンド粉末が得られた。なお、これら
のアルカリ脱脂,酸洗い,前処理,およびめっきの工程
において、ダイヤモンド粉末を溶液中に浸漬している間
に、溶液に対して攪拌と超音波による揺動が与えられ
た。
【0063】これらの被覆ダイヤモンド粉末は圧粉体に
成形された後に、表5に示された組成を有する金属板が
付加的な焼結助剤として積層されて、Ta製の容器内に
密封された。このTa製容器は、ガードル型高圧装置を
用いて60kbの圧力と1550℃の温度の下で10分
間保持され、表6に示されているような焼結体試料が得
られた。
【0064】
【表6】
【0065】表6における焼結体試料6A〜6Eは、そ
れぞれ、表5における粉末試料5A〜5Eから得られた
ものである。これらの焼結体試料の各々は、6×3×
0.3mmの棒状試験片に加工された後に、スパン距離
4mmの3点曲げ試験によって強度が評価された。
【0066】表6からわかるように、試料6B,6Cお
よび6Dの強度が試料6Aおよび6Eに比べて向上して
いることが明らかである。すなわち、付加的な焼結助剤
がBを含む場合、その含有量は0.01重量%〜30重
量%の範囲内にあるのが好ましいことがわかる。また、
付加的な焼結助剤がPおよびSnを含む場合にも、その
好ましい含有量は0.01重量%〜30重量%であるこ
とも確認された。
【0067】(実施例4)
【0068】
【表7】
【0069】表7は、原料ダイヤモンド粉末粒度や焼結
助剤の付与方法および組成などが焼結体の機械的特性に
与える影響を調べるために準備された種々の粉末試料の
例を示している。
【0070】試料7A〜7Cにおいては、ダイヤモンド
粉末上に無電解めっきによって焼結助剤を被覆するため
に、実施例3の場合と同様に無電解めっき用の触媒層が
ダイヤモンド粉末粒子表面に付与された。
【0071】その前処理されたダイヤモンド粉末は、水
洗された後に、塩化コバルトと塩化ヒドラジニウムを含
み80℃に保持されたCo無電解めっき液中に浸漬さ
れ、これによって、ダイヤモンド粒子表面にCoが被覆
された。なお、この無電解めっきに関する前処理とめっ
き処理の間、これらの処理液はダイヤモンド粉末ととも
に攪拌と超音波振動によって揺動が与えられた。無電解
めっきされたダイヤモンド粉末は、洗浄された後に回収
され、その後に真空中で1250℃において60分間加
熱することによって焼結助剤の還元とダイヤモンド粒子
の表面からの部分的な黒鉛化が行なわれ、表7に示され
ているような焼結助剤の含有率と組成を有する粉末試料
7A〜7Cが得られた。なお、試料7A〜7Cの粉末中
に含まれる酸素量は0.05重量%であった。
【0072】試料7D〜7Fにおいては、試料7A〜7
Cと同じ焼結助剤の組成を有する被覆ダイヤモンド粉末
がマイクロ波プラズマCVD法を用いて作製された。
【0073】試料7G〜7Iにおいては、テフロン製の
混合用ボールを内蔵するテフロン製ボールミル容器内に
ダイヤモンド粉末が超微粒Co粉末の所定量とともに投
入され、3時間混合された。また、試料7J〜7Lにお
いては、超硬合金製の混合用ボールを内蔵する超硬合金
製ボールミル容器内にダイヤモンド粉末を投入し、この
超硬合金製ボールミルを所定の時間だけ駆動することに
よって超硬合金粉末と混合されたダイヤモンド粉末が得
られた。前述のように、この超硬合金粉末は、超硬合金
製のボールと容器から削り取られてダイヤモンド粉末内
に混入したものである。
【0074】表7に示された粉末試料7A〜7Lの各々
は圧粉体に成形され、その圧粉体はCo板が積層された
後に超硬合金製の容器内に密閉された。その超硬合金製
容器はベルト型高圧装置を用いて50kbの圧力と15
00℃の温度の下で15分間保持され、積層されたCo
板を溶解させて圧粉体内に溶浸させながら焼結が行なわ
れ、その結果として表8に示されているような焼結体試
料が得られた。
【0075】
【表8】
【0076】表8における焼結体試料8A〜8Lは、そ
れぞれ、表7における粉末試料7A〜7Lから得られた
ものである。
【0077】試料8Gにおいては、表7に示されている
ように原料ダイヤモンド粉末が微粒であるために粒子間
の隙間が狭く、かつ混合したCo粉末が不均一に分布す
るので、混合粉末の圧粉体に積層したCo板を溶浸させ
てもその圧粉体内で溶浸が不均一に進行した。したがっ
て、試料8Gにおいては部分的に未焼結部分が発生し、
完全な焼結体を得ることができなかった。
【0078】完全な焼結体が得られた試料は切削工具に
加工された後に、次に示す切削条件によってその性能が
評価された。
【0079】被削材:軸方向に沿って4つの溝を有する
Al−10重量%Si丸棒 被削材の周表面速度:500(m/min) バイトの切込み深さ:1.5(mm) バイト送り速さ:0.2(mm/rev) 切削時間:160(min) この切削試験における焼結体試料の逃げ面摩耗量が表8
に示されている。
【0080】表8からわかるように、焼結助剤のプール
部分を含む焼結体試料8D,8E,8F,8H,および
8Iは、切削の初期に欠損が生じて切削の続行が不可能
となった。他方、ダイヤモンド粉末の粒度が大きな焼結
体試料8Cと8Lは、切削試験中に工具刃先部分にチッ
ピングが生じていることが確認された。また、ダイヤモ
ンド含有率の低い焼結体試料8Jと8Kにおいては、欠
損は生じなかったものの、大きな逃げ面摩耗が発生し、
実用に供することは不可能である。
【0081】他方、本発明の範囲に属する焼結体試料8
Aと8Bにおいては、原料ダイヤモンド粉末の粒度が小
さくかつCoプールや空隙のない均質な焼結体組織が得
られるので、焼結体の強度が高くチッピングや欠損が生
じなかった。また、試料8Aと8Bは十分なダイヤモン
ド含有率をも有しているので、表8に示されているよう
な十分な耐摩耗性を有していることも明らかとなった。
【0082】(実施例5)
【0083】
【表9】
【0084】表9は、ダイヤモンド粉末の黒鉛化度が焼
結体中のダイヤモンド含有率に及ぼす影響を調べるため
に準備された種々の粉末試料の例を示している。
【0085】試料9A〜9Cにおいては、5μm〜10
μmの粒径を有する原料ダイヤモンド粉末が真空中で表
9に示される熱処理条件のもとに粒子表面から部分的な
黒鉛化が行なわれた。部分的に黒鉛化されたダイヤモン
ド粒子は、実施例1の場合と同様の方法によって、焼結
助剤が被覆された。
【0086】試料9D〜9Fにおいては、5μm〜10
μmの粒径を有する原料ダイヤモンド粉末粒子が実施例
1と同様の方法によって焼結助剤で被覆され、その後に
真空中で表9に示された熱処理条件のもとに被覆ダイヤ
モンド粒子が表面から部分的に黒鉛化された。
【0087】こうして部分的に黒鉛化された被覆ダイヤ
モンド粉末は、圧粉体に成形された後に100%Coの
金属板が付加的な焼結助剤として積層され、Mo製の容
器内に密閉されて50kbの圧力のもとに1550℃で
10分間焼結された。こうして得られた焼結体試料のダ
イヤモンド含有率が表10に示されている。
【0088】
【表10】
【0089】表10における焼結体試料10A〜10F
は、それぞれ、表9中の粉末試料9A〜9Fから得られ
たものである。表10からわかるように、焼結体試料1
0A,10B,10E,および10Fのダイヤモンド含
有率は試料10Dに比べて高いことが明らかである。一
方、試料10Cには部分的に残留黒鉛(Gr)を含み、
完全な焼結体を得ることはできなかった。
【0090】すなわち、被覆ダイヤモンド粉末中の黒鉛
化度は、0.5容量%〜50容量%の範囲内にあること
が好ましい。
【0091】(参考例
【0092】
【表11】
【0093】表11は、Pdの付与量が無電解めっきに
おける触媒性能や焼結時におけるダイヤモンド粉末の焼
結性に及ぼす影響を調べるために準備された種々の粉末
試料の例を示している。
【0094】試料11A〜11Eにおいては、ダイヤモ
ンド粉末粒子を無電解めっきによって焼結助剤で被覆す
るために、実施例4の場合と同様の方法によってダイヤ
モンド粒子表面にPdが付与された。その後、パラジウ
ムテトラクロライドを含む無電解めっき液を用いて、ダ
イヤモンド粉末粒子がPdで無電解めっきされた。さら
に、ヒドラジンを含む無電解めっき液を用いて、ダイヤ
モンド粉末粒子はCoによって被覆された。
【0095】その結果、表11に示されているように、
試料11Aにおいてはダイヤモンド粉末粒子上における
Pdの吸着量が少なかったので、Pdによる触媒作用が
不足してダイヤモンド粒子表面におけるCoの析出が困
難となった。
【0096】Coによって被覆された粉末試料11B〜
11Eの各々は、圧粉体に成形されて超硬合金製の容器
内に密閉された。その超硬合金製容器はベルト型高圧装
置を用いて50kbの圧力と1500℃の温度のもとで
15分間保持されて焼結が行なわれた。その結果、Pd
を多く含む試料11Eは、焼結助剤の溶融が発生しなか
ったために完全な焼結体を得ることができなかった。他
方、試料11B〜11Dにおいては、完全な焼結体を得
ることができた。
【0097】すなわち、焼結助剤中のPdの含有量は
0.01〜40重量%の範囲内にあることが好ましい。
【0098】
【発明の効果】以上のように、本発明によれば、高強度
と高耐摩耗性の両方を具備したダイヤモンド焼結体が提
供され、それは切削工具,掘削工具,線引きダイス,お
よび耐摩部品などの用途に好ましく用いることができ
る。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 中井 哲男 兵庫県伊丹市昆陽北一丁目1番1号 住 友電気工業株式会社 伊丹製作所内 (56)参考文献 特開 昭63−190756(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C22C 26/00 C22C 29/00 - 29/18 C22C 1/05

Claims (17)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 80容量%〜96容量%の焼結ダイヤモ
    ンド粒子と残部の焼結助剤および不可避不純物とを含
    み、 前記焼結ダイヤモンド粒子は実質的に0.1μmμ
    mの範囲内の粒径を有していて互いに直接接合してお
    り、 前記焼結助剤はその燒結助剤に対して0.01重量%
    40重量%の範囲内のPdを含みかつ残部としてFe,
    Co,およびNiから選択された少なくとも1つを含む
    ことを特徴とする高強度で高耐摩耗性のダイヤモンド焼
    結体。
  2. 【請求項2】 前記焼結助剤はSn,PおよびBの少な
    くとも1つをさらに含むことを特徴とする請求項1に記
    載の高強度で高耐摩耗性のダイヤモンド焼結体。
  3. 【請求項3】 前記焼結助剤はその燒結助剤に対して
    0.01重量%〜30重量%の範囲内でSn,Pおよび
    Bの少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項2に
    記載の高強度で高耐摩耗性のダイヤモンド焼結体。
  4. 【請求項4】 請求項1に記載されたダイヤモンド燒結
    体を製造するための方法であって、 実質的に0.1μm〜8μmの範囲内にある粒径を有す
    るダイヤモンド粉末を準備し、前記燒結助剤の一部として Pdを前記ダイヤモンド粉末
    の各粒子の表面上に析出させた後に、無電解めっき法に
    よってFe,Co,およびNiの少なくとも1つを前記
    焼結助剤の他の一部として前記ダイヤモンド粉末の各粒
    子の表面に被覆して被覆ダイヤモンド粉末を調製し、 ダイヤモンドが熱力学的に安定な高圧と高温の条件の下
    で、前記被覆ダイヤモンド粉末を液相焼結することを特
    徴とする高強度で高耐摩耗性のダイヤモンド焼結体の製
    造方法。
  5. 【請求項5】 前記焼結助剤はSn,PおよびBの少な
    くとも1つをさらに含むことを特徴とする請求項4に記
    載の高強度で高耐摩耗性のダイヤモンド焼結体の製造方
    法。
  6. 【請求項6】 前記焼結助剤はその燒結助剤に対して
    0.01重量%〜30重量%の範囲内でSn,Pおよび
    Bの少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項5に
    記載の高強度で高耐摩耗性のダイヤモンド焼結体の製造
    方法。
  7. 【請求項7】 ダイヤモンドが熱力学的に不安定な高温
    条件下で熱処理することによって前記ダイヤモンド粉末
    の各粒子の0.5容量%〜80容量%が表面から黒鉛化
    された後に前記焼結助剤が被覆されることを特徴とする
    請求項4ないし6のいずれかの項に記載された高強度で
    高耐摩耗性のダイヤモンド焼結体の製造方法。
  8. 【請求項8】 ダイヤモンドが熱力学的に不安定な高温
    条件下で熱処理することによって前記被覆ダイヤモンド
    粉末の各粒子の0.5容量%〜80容量%が表面から黒
    鉛化された後に前記液相焼結が行なわれることを特徴と
    する請求項4ないし6のいずれかの項に記載された高強
    度で高耐摩耗性のダイヤモンド焼結体の製造方法。
  9. 【請求項9】 前記無電解めっき法において、前記ダイ
    ヤモンド粉末が浸漬されるめっき溶液に攪拌と超音波振
    動の少なくとも一方による揺動が付与されることを特徴
    とする請求項4ないし8のいずれかの項に記載された高
    強度で高耐摩耗性のダイヤモンド焼結体の製造方法。
  10. 【請求項10】 請求項1に記載されたダイヤモンド燒
    結体を製造するための方法であって、 実質的に0.1μm〜8μmの範囲内にある粒径を有す
    るダイヤモンド粉末を準備し、前記燒結助剤の第1の一部として Pdを前記ダイヤモン
    ド粉末の各粒子の表面上に析出させた後に、無電解めっ
    き法によってFe,Co,およびNiの少なくとも1つ
    前記焼結助剤の第2の一部として前記ダイヤモンド粉
    末の各粒子の表面に被覆して被覆ダイヤモンド粉末を調
    し、 前記被覆ダイヤモンド粉末の圧粉体を成形し、 Pd,Fe,Co,およびNiの少なくとも1つを前記
    焼結助剤の第3の一部として前記圧粉体に接触させ、 ダイヤモンドが熱力学的に安定な高圧と高温の条件のも
    とで、前記焼結助剤の前記第3の一部を溶浸させながら
    前記圧粉体を液相焼結することを特徴とする高強度で高
    耐摩耗性のダイヤモンド焼結体の製造方法。
  11. 【請求項11】 前記ダイヤモンド粒子に被覆された前
    記焼結助剤はSn,PおよびBの少なくとも1つをさら
    に含むことを特徴とする請求項10に記載の高強度で高
    耐摩耗性のダイヤモンド焼結体の製造方法。
  12. 【請求項12】 前記ダイヤモンド粒子に被覆された前
    記焼結助剤はその燒結助剤に対して0.01重量%〜3
    重量%の範囲内でSn,PおよびBの少なくとも1つ
    を含むことを特徴とする請求項11に記載の高強度で高
    耐摩耗性のダイヤモンド焼結体の製造方法。
  13. 【請求項13】 ダイヤモンドが熱力学的に不安定な高
    温条件下で熱処理することによって前記ダイヤモンド粉
    末の各粒子の0.5容量%〜80容量%が表面から黒鉛
    化された後に前記焼結助剤が被覆されることを特徴とす
    る請求項10ないし12のいずれかの項に記載された高
    強度で高耐摩耗性のダイヤモンド焼結体の製造方法。
  14. 【請求項14】 ダイヤモンドが熱力学的に不安定な高
    温条件下で熱処理することによって前記被覆ダイヤモン
    ド粉末の各粒子の0.5容量%〜80容量%が表面から
    黒鉛化された後に前記液相焼結が行なわれることを特徴
    とする請求項10ないし12のいずれかの項に記載され
    た高強度で高耐摩耗性のダイヤモンド焼結体の製造方
    法。
  15. 【請求項15】 前記付加的な焼結助剤はSn,Pおよ
    びBの少なくとも1つをさらに含むことを特徴とする請
    求項10ないし14のいずれかの項に記載された高強度
    で高耐摩耗性のダイヤモンド焼結体の製造方法。
  16. 【請求項16】 前記付加的な焼結助剤はその付加的な
    焼結助剤に対して0.01〜30重量%の範囲内でS
    n,PおよびBの少なくとも1つをさらに含むことを特
    徴とする請求項15に記載の高強度で高耐摩耗性のダイ
    ヤモンド焼結体の製造方法。
  17. 【請求項17】 前記無電解めっき法において、前記ダ
    イヤモンド粉末が浸漬されるめっき溶液に攪拌と超音波
    振動の少なくとも一方による揺動が付与されることを特
    徴とする請求項10ないし16のいずれかの項に記載さ
    れた高強度で高耐摩耗性のダイヤモンド焼結体の製造方
    法。
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