JP3325126B2 - 原稿送り装置 - Google Patents

原稿送り装置

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榮治 丸山
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【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、原稿自体を移送する形
式の複写機またはプリンター、ファクシミリ等の画像形
成装置における原稿送り装置に関し、特には、駆動ロー
ラと従動ローラとからなる対の原稿送りローラを複数個
備え、これら駆動ローラと従動ローラとの間にシート状
原稿を挿通させて移送させる形式の原稿送り装置に関す
る。
【0002】
【従来の技術】複写機またはプリンター等の画像形成装
置においては、原稿読み取りのための露光走査を行うた
めに、複写すべき原稿を移動プラテン上に載置して該プ
ラテンを走査させ、あるいは原稿を固定プラテン上に載
置して光学系を走査させるなどの構成が採られていた。
近年において、かかる構成に代えて、複写すべき原稿自
体を移送させて走査を行う、いわゆる原稿移動型の構成
が実施化されている。原稿移動型の構成は、特にA0、
A1サイズといった大判の原稿を使用する装置において
特に有用であり、プラテンあるいは光学系などの重量の
ある装置を走査するための移動機構を不要とすることか
ら、装置の構成を簡単に且つ小型化することができるな
ど多くの利点を有している。
【0003】図1はこの種の原稿移動型の原稿送り装置
の一例を示し、原稿の移送路に沿って配置された複数個
の大径の駆動ローラ1と、駆動ローラ1を挟んでその上
下に駆動ローラ1と圧接するように配置された複数個の
従動ローラ2を有する。駆動ローラ1(および従動ロー
ラ2)はそれぞれ紙面と垂直の方向に、即ち移送すべき
原稿の幅方向にわたって複数個が同軸上にそれぞれ適当
な間隔を隔てて配置されている。
【0004】原稿は図の右手方向から左手に向かって挿
入され、駆動ローラ1と下部の従動ローラ2との間を通
って符号3で示す露光位置に運ばれ、そこを通過した
後、Uターン路4を通って駆動ローラ1と上部の従動ロ
ーラ2との間に送られ、装置の外部へと排出される。露
光位置3を通過する原稿は、その下に配置されたランプ
5および光学系6により画像露光され、その像は周知の
ように画像形成のために電子写真感光体7へ投射され
る。各駆動ローラ1と上部の従動ローラ2とのニップの
出口には、原稿移送路から退避した第1位置と、原稿の
移送路に突出する第2位置とに位置切り替えが可能な複
数の爪8が配置され、これら爪8は、常態においては原
稿移送路から退避した第1位置にあり、オペレータによ
る選択信号に基づき第2位置へと切り替えられて、その
爪先を原稿移送路内に突出させ、上部搬送路に沿って送
られてくる原稿を再び下部搬送路へと案内して次の画像
露光のために循環させる。
【0005】図より明らかなように、原稿はその画像面
を下に向けた状態で挿入される。このため従動ローラ2
は原稿の画像面と接触してそれを移送することとなり、
例えば、図面などの鉛筆書きの原稿を多数枚移送する場
合には画像の鉛筆粉が従動ローラの周面に付着して蓄積
され、この蓄積された鉛筆粉が次に挿通される原稿に転
移して画像面を汚してしまうことがある。このような汚
れは、上記のように原稿を繰り返して循環させる場合に
特に顕著に現れる。
【0006】従動ローラへの鉛筆粉の付着を解消するた
めに、例えば特開昭60−132850号公報では、従
動ローラの表面を鉛筆粉が付着しない樹脂膜にてコーテ
ィングさせた構成を提案している。かかる装置は、円筒
の従動ローラの軟質発泡体層の外周面をゴム弾性体にて
被覆し、更にその表面を鉛筆粉が付着しない樹脂でコー
ティングしたもので、樹脂被覆はゴム弾性体の幅に一致
して、即ち両側縁が切り立つようにしてコーティングさ
れている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】かかる従動ローラは、
それ以前の樹脂被覆を有しないローラに比較して鉛筆粉
による汚れの発生が低いという効果を有するが、樹脂被
覆の両側縁がゴム弾性体の縁部により強く原稿に押圧さ
れ、その結果、樹脂被覆の幅方向中央部においては鉛筆
粉が付着しないものの、ローラの両側縁において鉛筆粉
が付着し、これが蓄積されて原稿上にローラの両側縁に
沿った線状の鉛筆粉の汚れ跡が生じるという問題を有し
ている。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記した樹脂
被覆の両側縁による線状の汚れを解消することを目的と
するもので、駆動ローラと従動ローラとからなる対の原
稿送りローラを複数個備え、シート状原稿を駆動ローラ
と従動ローラとの間に挿通させて移送させる原稿送り装
置において、少なくとも駆動ローラまたは従動ローラの
いずれか原稿の画像面と接触する側のローラを幅方向両
側が縮径した断面略太鼓状の弾性体または発泡体ローラ
とし、その周面に鉛筆粉が付着しないまたはし難い性質
の樹脂被覆を設けたことを特徴とする。
【0009】好適には前記樹脂被覆は、フッ素樹脂、ポ
リエステル樹脂、ポリイミド樹脂、またはポリ塩化ビニ
ル樹脂からなることを特徴とする。
【0010】また、鉛筆粉の付着を確実に防止するため
に、樹脂被覆は、特には、表面粗さ1〜3μm(Ra)、
摩擦係数0.2〜0.6μ、厚さ3〜20μmのものが良
く、他方の弾性ローラはゴム硬度19〜29°あること
が好ましく、また、駆動ローラと従動ローラとのニップ
圧は5〜15g/mm2であることが好ましい。
【0011】
【作用】上記した手段において太鼓状のローラはその両
幅縁に向かって徐々に原稿とは離れる形状であるため、
樹脂被覆の両側縁に原稿上の鉛筆粉が付着することが防
止される。
【0012】
【実施例】以下、本発明の好適な実施例を添付図面を参
照として説明する。本発明による原稿送り装置は、複数
個の駆動ローラと、この駆動ローラにそれぞれ圧接され
た従動ローラとを含み、これら駆動ローラと従動ローラ
との間にシート状の原稿を挿通させて移送する構成より
なる。この一例として図1に示すように原稿の循環送り
を可能とした上述した構成があるが、本発明はかかる構
成に限定されるものではなく、例えば、原稿をUターン
させることなく、装置の前方から後方へと直進して排出
させるようにした構成であっても良く、この場合、駆動
ローラが下に従動ローラが上にとなるように駆動ローラ
と従動ローラとの上下位置を図1の例とは逆にし、原稿
の画像面と接触する下側のローラを駆動ローラとしても
良い。
【0013】以下に説明するローラは、このような駆動
ローラ(または従動ローラ)のいずれか原稿の画像面と
接する側のローラの構造として使用される。しかしなが
ら、原稿の画像面と接触しない側のローラについても同
様にかかる構造のローラを用いても良い。
【0014】図1乃至図3に示すように上記した駆動ロ
ーラまたは従動ローラ(以下、送りローラという)10
は、ニトリルゴム、ウレタンゴム、シリコンゴムなどの
弾性ローラ11を基体として有する。弾性ローラ11は
原稿をしわを生じることなく移送するに適切な弾力を持
つゴム硬度(好ましくは21±2〜29±2 °)を有
し、周面11aが比較的滑らかな断面円弧を描く形状
(図2)、または平筒の両縁部のみを縮径したタイヤ形
状(図3)をなし(以下これら図2、図3に示す形状を
含め、幅方向両側が縮径した形状を総称して、断面略太
鼓状という)をなし、その中心を支軸12に固定されて
いる。支軸12は移送すべき原稿の幅方向(図1の紙面
と垂直の方向)に延びており、上記したように複数個の
送りローラ10が軸方向に適当な間毎に設けられてい
る。支軸12は適当な駆動源に連結されており原稿移送
のために送りローラ10を回転させる。
【0015】送りローラ10の周面への鉛筆粉の付着や
蓄積を防止するために、弾性ローラ11の周面に、鉛筆
粉が付着しないまたは付着し難い性質の樹脂被覆13が
ディッピング法などのコーティングによりほぼ一様に被
覆されている。樹脂被覆13としては、コーティングの
他、フィルム状のものを弾性ローラ11の周面に接着し
て設けても良く、または、熱収縮性のフィルムチューブ
を用い、これを熱収縮させて予め接着剤を塗布した弾性
ローラ11の周面上に密着させ被覆させるものであって
も良い。いずれの方法によっても、樹脂被覆13の幅方
向両縁は弾性ローラ11の縮径部分にまで延びており、
樹脂被覆の両縁が原稿の画像面に接触しないように形成
されている。
【0016】鉛筆粉が付着しないまたは付着し難い性質
を有する樹脂としては、これらに限定するものではない
が、フッ素樹脂の他、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹
脂、ポリ塩化ビニル樹脂、等を用いることができる。
【0017】また、樹脂被覆13は、表面粗さが1〜3
μm(Ra)(最適には1〜2μm(Ra))、摩擦係数0.
2〜0.6μ(最適には0.3〜0.5μ)の範囲のもの
が良好に鉛筆粉の付着を防止する。また、鉛筆粉の付着
現象については、弾性ローラ11のゴム硬度や樹脂被覆
の厚さ等にも幾分か影響される。樹脂被覆13は、材質
の機械的特性にも依るが、厚さ3〜20μm(最適には
5〜10μm)のものが好適である。
【0018】更に、鉛筆粉の付着を防止し且つ良好な原
稿の送りを行うために、駆動ローラと従動ローラとのニ
ップ圧は5〜15g/mm2(最適には6〜10g/mm2)であ
ることが好ましい。
【0019】本発明において重要な特徴の一つは、樹脂
被覆13の両側縁が原稿の画像面に接触しないように、
前述したように弾性ローラ11の両側縁が漸次に縮径し
た断面太鼓状のローラとすることにあり、これにより従
来の如きローラの両側縁による鉛筆粉の線状汚れを解消
することができる。このことは後述する実験において顕
著に確認される。
【0020】なお、上記した例においてはローラの基体
を弾性ローラとしたが、ゴムまたは合成樹脂等の軟質発
泡体などから形成される発泡体ローラでも良く、また、
ローラは単層のローラに限定されず、発泡体層上に弾性
体層を設けるなどの積層型のローラであっても良い。
【0021】本発明による原稿送りローラは、これに限
定されるものではないが、例えばニトリルゴムよりなる
断面略太鼓状の弾性ローラを用い、その外周面に付着す
る紙粉、埃等の不純物をアルコールランプ等の火を用い
て焼失させて不純物のない滑らかな円筒面とした後、そ
の外周面にディッピング法によりフッ素樹脂塗布液をコ
ーティングして作製される。コーティングは、1回のデ
ィッピングによるよりも、好ましくは2回以上ディッピ
ングを繰り返して重ねることにより被覆表面が極めて滑
らかなローラを形成することができる。
【0022】実験例1 ゴム硬度21±2 °のニトリルブタジエンゴム(NB
R)よりなる図1の断面略太鼓状の弾性ローラを上記の
ように不純物除去処理をした後、ディッピング法により
厚さ5〜10μmのフッ素樹脂被覆を形成し、原稿送り
ローラを作製した。樹脂被覆の表面粗さは1〜2μm(R
a)、摩擦係数は0.3〜0.4μであり、かかるローラ
をニップ圧5〜8g/mm2で圧接させ、その間に鉛筆書き
の画像を有するトレーシングペーパを複数回往復動させ
ローラへの鉛筆粉の付着を調べた。この結果、ローラへ
の鉛筆粉の付着は認められず、またトレーシング上の鉛
筆画像のこすれ等の乱れも認められなかった。
【0023】実験例2 実験例1と同じ材料、性質からなる、幅方向両側に縮径
部を有しない従来の平筒状の弾性ローラに実験例1と同
じ方法で同じ表面粗さ、摩擦係数の樹脂被覆を形成し、
これを実験例1と同じ条件で実験を行ったところ、ロー
ラの両側縁に鉛筆粉の蓄積が認められ、またトレーシン
グ上に線状の鉛筆汚れが認められた。
【0024】実験例3 断面略太鼓状の弾性ローラとして、ゴム硬度27±2 °
のニトリルブタジエンゴムを用い、実験例1と同じ方法
により、厚さ5〜10μm、表面粗さ1〜2μ(Ra)、
摩擦係数0.3〜0.5μのフッ素樹脂被覆を形成し、こ
のローラを実験例1と同じ条件により実験を行ったとこ
ろ、ローラへの鉛筆粉の付着は認められず、またトレー
シング上の鉛筆画像のこすれ等の乱れも認められなかっ
た。
【0025】実験例4 実験例1と同じ弾性ローラ上に、表面粗さが6〜7μ(R
a)である点を除き、その他が同じである樹脂被覆を形
成し、実験例1と同じ条件により実験を行ったところ、
ローラへの鉛筆粉の付着が幾分か認められ、十分な鉛筆
粉の付着防止が達成されなかった。
【0026】上記の実験並びにその他の実験等により、
ローラへの鉛筆粉の付着がなく、また原稿上の鉛筆画像
のこすれを生じることなく原稿を搬送するために、樹脂
被覆は、表面粗さ1〜3μm(Ra)、摩擦係数0.2〜
0.6μ、厚さ3〜20μmのものが良く、弾性ローラの
ゴム硬度は21±2〜29±2 °、また駆動ローラと従
動ローラとのニップ圧は5〜15g/mm2であることが好
ましい。
【0027】
【発明の効果】以上述べた構成により、本発明によれ
ば、従来のローラにおいて生じた、両側縁による鉛筆粉
線状汚れを解消することができ、またローラによる原稿
上の鉛筆粉のこすれ等を生じることなく原稿の搬送を行
うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 原稿送り装置の一例を示す斜視図。
【図2】 本発明による原稿送り装置に使用する送りロ
ーラの断面図。
【図3】 同じく送りローラの別の例を示す断面図。
【符号の説明】
1 駆動ローラ 2 従動ローラ 10 送りローラ 11 弾性ローラ 12 支軸 13 樹脂被覆
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平5−147751(JP,A) 特開 昭60−61741(JP,A) 特開 昭62−275753(JP,A) 特開 昭56−81855(JP,A) 実開 昭62−26349(JP,U) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B65H 5/06 G03G 15/00

Claims (6)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 駆動ローラと従動ローラとからなる対の
    原稿送りローラを複数個備え、シート状原稿を駆動ロー
    ラと従動ローラとの間に挿通させて移送させる原稿送り
    装置において、少なくとも駆動ローラまたは従動ローラ
    のいずれか原稿の画像面と接触する側のローラを幅方向
    両側が縮径した断面略太鼓状の弾性体または発泡体ロー
    ラとし、その周面に鉛筆粉が付着しないまたはし難い性
    質の樹脂被覆を設けてなり、前記樹脂被覆がフッ素樹脂
    またはポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、またはポリ
    塩化ビニル樹脂であって、前記樹脂被覆の表面粗さが1
    〜3μm(Ra)であることを特徴とする原稿送り装置。
  2. 【請求項2】 前記樹脂被覆表面が0.2〜0.6μの
    (対紙)低摩擦係数の面であることを特徴する請求項1
    記載の原稿送り装置。
  3. 【請求項3】 前記弾性体ローラがゴム硬度19〜29
    °であって、前記樹脂被覆が3〜20μmの厚さである
    ことを特徴とする請求項1または2記載の原稿送り装
    置。
  4. 【請求項4】 前記駆動ローラと従動ローラとのニップ
    圧が5〜15g/mm であることを特徴とする請求項1乃
    至3記載の原稿送り装置。
  5. 【請求項5】 断面略太鼓状の弾性体または発泡体ロー
    ラの表面不純物を焼失させ、次いで鉛筆粉が付着しない
    または付着し難い性質の樹脂被覆をコーティングしてな
    る原稿送りローラ。
  6. 【請求項6】 前記樹脂被覆がフッ素樹脂またはポリエ
    ステル樹脂、ポリイミド樹脂、またはポリ塩化ビニル樹
    脂からなることを特徴とする請求項5記載の原稿送りロ
    ーラ。
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