JP3320893B2 - 表面外観に優れた電気亜鉛めっき鋼板の製造方法 - Google Patents

表面外観に優れた電気亜鉛めっき鋼板の製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は優れた外観を有し、特に
家電製品などに用いられる表面処理鋼板として好適な電
気亜鉛めっき鋼板の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】鉄鋼製品に対する要求品質は年々高度化
し、特に自動車や家電用とを中心に耐食性向上ニーズが
高く、これに伴って表面処理鋼板の需要が増大してい
る。表面処理鋼板としては、自動車用ではZn系めっき
やこれに有機皮膜を付与した有機複合めっき鋼板が、家
電用途では耐食性だけでなく行程省略などのニーズから
様々な後処理を施す表面処理鋼板が開発実用化されてい
る。家電用途における後処理としては、クロメート処理
やさらに有機皮膜を付与する有機複合処理が中心である
が、下地めっきとしては電気亜鉛めっきが採用される場
合が多い。電気亜鉛めっきは自動車用に開発されたZn
系合金めっきに比べれば、同一付着量での耐食性では見
劣りするものの、製造がしやすくコスト面でも有利であ
り、クロメート処理との相性が良いなどの利点がある。
このため、下地めっきは電気亜鉛めっきに固定し、ニー
ズに応じた後処理をこれに適用し、家電分野における耐
食性や行程省略などの多様化するニーズに応えている。
【0003】こうした状況の下に家電用途ではこれら後
処理鋼板を組み立て加工してそのまま使用することが多
くなり、それに伴って外観品質への要求が厳しくなり、
これまで見過ごされてきた微小な外観汚れも無視できな
くなりつつある。優れた外観を有する電気亜鉛めっき鋼
板の製造方法としては、特開平4−74887号、74
888号公報に伝導度助剤を含有する酸性電気めっき浴
で下層めっきを形成し、次いで伝導度助剤を含有しない
別の亜鉛めっき浴で上層めっきを形成する方法が開示さ
れているが、微小な外観汚れを皆無にするまでには至っ
ていない。また下地鋼板の影響を受けにくい金属、例え
ばNiを予め付着させ、亜鉛めっき組織の均一性を保つ
方法が開示されているが、用いる金属が高価なため製造
コスト上昇を引き起こしている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】外観上の問題は、後処
理を含む電気亜鉛めっき行程で発生するものと原板起因
とに区別される。特に原板起因の場合には、その製造工
程が極めて複雑であるため特定することが困難な場合が
多く、原因が特定出来たとしても抜本的な解決にはなか
なか至らないのが現状である。また明らかに原板起因で
あっても、原板段階では確認できず、電気亜鉛めっきを
行うことにより初めて確認できるという類の問題も多
い。このため、電気亜鉛めっき工程の中で耐食性などの
本来の品質特性を損なうことなく、原板状態に左右され
ずに安定して良好な表面外観が得られる製造方法が必要
となった。本発明は、上記課題を解決するためのもので
あり、表面外観に優れた電気亜鉛めっき鋼板の製造方法
を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、原板で確
認できない微小な疵や汚れに起因して発生する電気亜鉛
めっき鋼板の外観不良は、亜鉛析出の競合反応である水
素発生反応の程度が下地の汚れ、偏析元素の影響等で変
化し、めっき初期に鋼板表面近傍でのpHが他の部分と
異なり、結果として亜鉛の初期電析に影響を与えるため
であることをつきとめた。そこで、亜鉛の初期電析の均
一化について鋭意検討した結果、水素発生反応を抑制し
場所によるpHの差を小さくした状態で初期の電析を行
なう、すなわちめっき下層を形成することが有効である
ことをつきとめ本発明に至った。その要旨は以下の通り
である。
【0006】本発明は鋼板に電気亜鉛めっきを施すにあ
たって、鋼板表面での水素発生反応を抑制する物質をめ
っき浴に添加あるいは予め鋼板に吸着させ、電流密度4
0〜200A/dm2、相対流速0.5m/s以上で鋼
板に1g/m2以上の下層めっき層を形成し、次いで前
記下層めっき層の上に所望目付量の上層めっき層を形成
することを特徴とする表面外観に優れた電気亜鉛めっき
鋼板の製造方法にある。
【0007】ここで言う水素発生反応を抑制する物質と
は、めっき時に鋼板表面に吸着し水素イオンの放電反応
を妨害する物質で、ポリオキシアルキレン誘導体、テト
ラブチルアンモニウム塩、チオ尿素、Pb,Sn,Sb
等の水素発生交換電流密度の低い金属イオンをさす。ポ
リオキシアルキレン誘導体は一般的にR2−O−(R1
O)n−Hおよび、あるいはR2−(R1−O)n−Hで示
される化合物を指す。ここでR1:アルキレン基、R2
H、アルキレン基、フェニル基、ナフチル基および、あ
るいはその誘導体、n=1〜2000で具体的にはポリ
オキシエチレン(ポリエチレングリコール)、アルキル
ポリオキシエチレンエーテル、アルキルフェニルポリオ
キシエチレンエーテル、アルキルナフチルポリオキシエ
チレンエーテル、ポリオキシプロピレン(ポリプレング
リコール)、アルキルポリオキシプロピレンエーテル、
アルキルフェニルポリオキシプロピレンエーテル、アル
キルナフチルポリオキシプロピレンエーテル、ポリオキ
シメチレン誘導体、α−エトキシレーテッドナフトー
ル、エトキシレーテッド−α−ナフトールスルフォン酸
を指す。
【0008】
【作用】本発明は電気亜鉛めっきを施すにあたって、電
析初期過程において電解液に鋼板表面での水素発生反応
を抑制する物質を添加等適用することを特徴とする。そ
の作用効果としては、鋼板表面の微小なスケールきずや
汚れに由来して電気亜鉛めっき後に発生する外観不良を
改善する点にある。外観不良部は目視では色調が異な
り、ミクロ観察を行なうとめっき結晶の大きさや配向性
が正常部とは異なっている。 亜鉛の電析は多くの研究
者が指摘するように、水酸化亜鉛(Zn(OH)2)を
反応中間体とする電気化学反応で、析出した亜鉛の形態
は中間体の生成程度に大きく依存する。微小なスケール
疵や汚れ部では偏析元素や表面形状が異なるため、亜鉛
析出の競合反応である水素発生反応の進行程度に差が生
じ、めっき初期段階における鋼板表面近傍でのpHが他
の部分と異なってくる。このため中間体生成速度が大き
く異なり、結果として亜鉛の初期電析機構が変化し、析
出亜鉛の大きさや配向性が他の部分と異なってくるため
外観不良となる。
【0009】これに対し水素発生反応を抑制する物質を
めっき浴中に添加、あるいは鋼板表面に吸着させた場合
には水素発生反応の進行速度が全体的に抑制され、鋼板
表面近傍でのpHのばらつきが小さくなる。そのため析
出亜鉛結晶の大きさや配向性の均一化が促進され、表面
外観に優れた電気亜鉛めっき鋼板の製造が可能となる。
特にこの操作は電析初期過程において重要であり、一旦
均一な亜鉛層で鋼板表面が覆われると下地鋼板不均一性
の影響はなくなる。そのため添加物使用によるめっきセ
ル電圧上昇、電流効率低下を考え合わせるとめっき初期
のみ上記操作を行なうのが好ましく、下層めっきの目付
量は1g/m2以上で好ましくは10g/m2以下が良
い。1g/m2以下では、均一な亜鉛層で鋼板表面を覆
うには不充分であり、また10g/m2を越えると全体
の電流効率の低下が著しくなってしまうからである。
【0010】また下層めっきを行なうときの相対流速と
しては0.5m/s以上が良い。0.5m/s以下では
外観汚れに対する効果が小さく場合によっては樹枝状の
亜鉛(デンドライト)が成長してしまうからである。こ
こで相対速度とは、液の流れ方向と鋼板の通板方向を考
慮した液流速と通板速度の差であり、鋼板の進行方向に
対して液を逆向きに流すと相対流速が大きくなり有利で
あるが、例えば竪型浸漬タイプのめっき漕でめっき液を
数m/min程度の低流速で循環する場合であっても、
鋼板の通板速度を充分に大きくし、相対流速として0.
5m/s以上が確保されていれば、本発明の効果が発揮
される。
【0011】図1に純鉄中に偏析元素であるSiが1a
t%存在した場合の水素発生反応の違いと、これに水素
発生抑制元素であるテトラブチルアンモニウムイオン
(硫化水素テトラブチルアンモニウムとして添加)を1
mmol/l添加した場合の効果を示す。電解液はNa
2SO4 100g/l、H2SO4 25g/l含んだもの
で、水素発生挙動を調べるためZnイオンは含まない液
を用いた。電極電位を10mV/sでカソード方向へ変
化させ、水素発生に費やされた電流を調べたものであ
る。無添加の場合(図1(A))はSiが偏析した部位
の水素発生電流が他の部位に比べ極端に小さいのに対
し、添加物を用いた場合(図1(B))には共に水素発
生が抑制され両者の違いは殆ど認められなくなる。
【0012】さらに外観不良に対する効果を確めるた
め、Siを1at%の濃度で幅1mm、長さ3cmのパ
ターンを5mm間隔で偏在させ、これに電気亜鉛めっき
を施し、むらとして観察されるか否かを確認した。電気
亜鉛めっきはZnイオン1.2mol/l、pH1.
2、浴温55℃の硫酸酸性めっき浴を用い、めっき液相
対流速1.5m/s、電流密度80A/dm2で行なっ
た。添加物を入れためっき液で下層めっきを2g/m2
行ない、その後添加物を含まないめっき液を用い全体の
付着量が20g/m2となるよう上層めっきを行なっ
た。同一条件で10枚処理し外観不良発生率を調査し
た。
【0013】図2に下層めっき液添加物濃度を変えた場
合の外観不良発生比率を示すが、添加物濃度が10−6
mol/1の場合には殆ど効果が認められないのに対
し、10−5 mol/1以上で効果が現われはじめ10
−4 mol/1でほぼ完全な作用が認められる。更に濃
度を増しても外観不良抑制効果は維持されるが、1mo
/1以上の添加ではめっき層の密着性が劣化するため
かえって悪影響が出る。このように用いる添加物に応じ
た適正な添加濃度範囲が存在する。また電流密度は40
A/dm以下では生産性を著しく阻害し、また200
A/dm以上ではめっき焼けが発生し商品価値が殆ど
なくなってしまう。
【0014】
【実施例】
実施例1 板厚4mmの低炭素鋼の熱間圧延材をスケールが薄く残
る様に酸洗した後、冷間圧延し板厚1mmとしこれを焼
鈍してめっき原板とした。これに硫酸浴を用いて、電気
亜鉛めっきを行なったときの下層・上層めっき毎の浴組
成、めっき条件および得られためっきの外観不良率を表
1および表2に示す。ここで外観不良率とは、同一方法
で10枚めっき処理を行ない外観不良が発生した枚数比
率を指す。本発明に従う実施例1〜5はいずれも均一性
にすぐれ、外観の良好なめっきが得られた。比較例6〜
8は添加物を全く含有しない場合(No.6)と、本発
明の請求範囲を外れた場合(No.7、8)である。
【0015】
【表1】
【0016】
【表2】
【0017】実施例2 実施例1と同じ原板を用い、めっき処理前にチオ尿素1
mol/1水溶液に浸漬/引き上げ後、空気ブローを
施し電気亜鉛めっきに供した。用いためっき液は実施例
1の上層めっき液と同じであり、めっき液流速1.5m
/s、電流密度100A/dmで目付量が20g/m
になる様に電気亜鉛めっきを行なった。10枚の試験
で外観不良が生じたものは皆無であった。
【0018】
【発明の効果】以上説明した様に、本発明方法によれば
従来の電気亜鉛めっき法に比べ、表面外観の均一性に優
れた電気亜鉛めっき鋼板の製造が可能となり、意匠性を
要求される家電、建材等への使用で不良材の割合を減少
することが可能となり、製造コストの削減効果が享受が
できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】添加物を用いない場合と添加した場合の偏析元
素(Si)の存在による水素発生挙動の違いを示す図、
【図2】添加物濃度と外観不良発生比率との関係を示す
図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平4−124295(JP,A) 特開 平1−129991(JP,A) 特開 平3−294496(JP,A) 特開 平4−110487(JP,A) 特開 平6−2193(JP,A) 特開 平4−110489(JP,A) 特開 平3−53096(JP,A) 特開 昭61−127891(JP,A) 特開 昭54−58635(JP,A) 特開 昭63−83293(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C25D 5/26 C25D 5/10 C25D 3/22 C25D 5/36

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 鋼板に電気亜鉛めっきを施すにあたっ
    て、鋼板表面での水素発生反応を抑制する物質をめっき
    浴に添加、あるいは予め鋼板に吸着させ、電流密度40
    〜200A/dm2、相対流速0.5m/s以上で鋼板
    に1g/m2以上の下層めっき層を形成し、次いで前記
    下層めっき層の上に所望目付量の上層めっき層を形成す
    ることを特徴とする電気亜鉛めっき鋼板の製造方法。
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