JP3319692B2 - 半導体レーザ装置 - Google Patents

半導体レーザ装置

Info

Publication number
JP3319692B2
JP3319692B2 JP22813796A JP22813796A JP3319692B2 JP 3319692 B2 JP3319692 B2 JP 3319692B2 JP 22813796 A JP22813796 A JP 22813796A JP 22813796 A JP22813796 A JP 22813796A JP 3319692 B2 JP3319692 B2 JP 3319692B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
layer
light
current
thickness
active layer
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP22813796A
Other languages
English (en)
Other versions
JPH09135052A (ja
Inventor
徹 高山
修 今藤
正昭 油利
雅博 粂
昭男 吉川
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Panasonic Corp
Panasonic Holdings Corp
Original Assignee
Panasonic Corp
Matsushita Electric Industrial Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Panasonic Corp, Matsushita Electric Industrial Co Ltd filed Critical Panasonic Corp
Priority to JP22813796A priority Critical patent/JP3319692B2/ja
Publication of JPH09135052A publication Critical patent/JPH09135052A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP3319692B2 publication Critical patent/JP3319692B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Semiconductor Lasers (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は光ディスク等の光源
として好適である、低非点隔差、低雑音特性及び低動作
電流特性を実現できる半導体レーザ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】以下、従来の半導体レーザ装置について
説明する。
【0003】図20は、特開平6−196801号に示
されている第1の従来例に係る半導体レーザ装置の断面
図である。図20に示すように、n型のガリウムヒ素
(GaAs)よりなる半導体基板1の上に、n型のGa
Asよりなるバッファ層2、n型のガリウムアルミニウ
ムヒ素(Ga0.5 Al0.5 As)よりなるクラッド層
3、アンドープ型Ga0.85Al0.15Asよりなる活性層
4、p型のGa0.5 Al0. 5 Asよりなる第1光ガイド
層5、及びp型のGa0.8 Al0.2 Asよりなる第2光
ガイド層6が順次形成されている。注入される電流を狭
窄するために、第2光ガイド層6の上における電流チャ
ンネルとなるストライプ領域7a以外の部分には、n型
のGa0.4 Al0.6 Asよりなる電流ブロック層7が形
成されている。ストライプ領域7a及び電流ブロック層
7の上には、Ga0.8 Al0.2 Asよりなる保護層8、
p型のGa0.5 Al0.5 Asよりなるクラッド層9、及
びp型GaAsよりなるコンタクト層10が順次形成さ
れている。
【0004】図20に示す第1の従来例に係る半導体レ
ーザ装置において、p型のGaAsよりなるコンタクト
層10から注入される電流は、ストライプ領域7a内に
有効に閉じ込められ、ストライプ領域7aの下側のGa
0.85Al0.15Asよりなる活性層4においてレーザ発振
が生じる。このとき、n型のGa0.4 Al0.6 Asより
なる電流ブロック層7の屈折率は、p型のGa0.5 Al
0.5 Asよりなるクラッド層9の屈折率よりも小さくな
っており、レーザ光もストライプ領域7a内に有効に閉
じ込められ、780nm帯の単一横モードのレーザ発振
が生じる。
【0005】また、n型のGa0.4 Al0.6 Asよりな
る電流ブロック層7の禁制帯幅は、Ga0.85Al0.15
sよりなる活性層4の禁制帯幅よりも十分に大きいの
で、n型のGa0.4 Al0.6 Asよりなる電流ブロック
層7はレーザ光に対して透明となり、内部損失の小さい
低動作電流の半導体レーザが得られる。
【0006】また、n型のGa0.4 Al0.6 Asよりな
る電流ブロック層7はレーザ光に対して透明であるの
で、電流ブロック層7のAlAs組成や第1光ガイド層
5の膜厚などの構造パラメータを調整することにより、
レーザ光をストライプ領域7aの外部に拡げることが可
能となる。これにより、可飽和吸収領域を容易に形成で
き、セルフパルセーション(自励発振)状態を誘導し易
いと共に低雑音特性が得られる半導体レーザ装置を実現
することが可能である。
【0007】また、図21は、特開平6−196810
号公報に示されている自励発振する第2の従来例に係る
半導体レーザ装置の断面構造を示しており、図21に示
すように、n型のガリウムヒ素(GaAs)よりなる半
導体基板21の上に、n型ガリウムアルミヒ素(GaA
lAs)よりなる第1クラッド層22、n型GaAlA
sよりなる第1可飽和吸収層23、n型GaAlAsよ
りなる第2クラッド層24、アンドープ型GaAlAs
よりなる活性層25、p型GaAlAsよりなる第3ク
ラッド層26、p型GaAlAsよりなる第2可飽和吸
収層27が順次形成されている。また、第2可飽和吸収
層27の上における中央部にp型GaAlAsよりなり
0.5μm〜1μmの高さと4μmの下面幅とを持ちス
トライプ状に延びるリッジ状の第4クラッド層28が形
成され、第4クラッド層28の上にはp型GaAsより
なる膜厚0.15μmのキャップ層29が形成されてい
る。また、第2可飽和吸収層27の上における第4クラ
ッド層28及びキャップ層29の両側にはn型GaAs
よりなる膜厚0.8μmの電流ブロック層30が形成さ
れ、電流ブロック層30及びキャップ層29の上にはp
型GaAsよりなる膜厚4μmのコンタクト層31が形
成されている。
【0008】図21に示す、第2の従来例に係る半導体
レーザ装置においては、コンタクト層31から注入され
た電流はストライプ状に延びるリッジ状の第4クラッド
層28内に有効に閉じ込められ、活性層25における第
4クラッド層28の下側の領域でレーザ発振が生じる。
この場合、電流ブロック層30がレーザ光を吸収するの
で、発振したレーザ光は第4クラッド層28内に有効に
閉じ込められる。また、第1及び第2の可飽和吸収層2
3,27のバンドギャップエネルギーを活性層25のバ
ンドギャップエネルギーと略等しくして、第1及び第2
の可飽和吸収層23,27に発振レーザ光に対する可飽
和吸収効果を持たせることにより自励発振を行なわせて
いる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】ところで、図20に示
す第1の従来例に係る半導体レーザ装置を光ディスクに
適用するに際して十分な低雑音特性を得るために、スペ
クトルを多モード化してセルフパルセーションを生じさ
せる場合がある。この場合には、光分布を水平方向に広
げ、電流ブロック層7の下側の活性層4を可飽和吸収領
域とする構成が必要になるため、ストライプ領域7aの
内外の実効屈折率差をかなり小さくする必要があった。
【0010】しかしながら、レーザ発振時にはプラズマ
効果によりストライプ領域7a内において屈折率の低下
があるので、高出力時においても安定な横モードを得る
ためには、ストライプ領域7aの内外の実効屈折率差と
しては6×10-3以上が必要である。ところが、第1の
従来例において、セルフパルセーションを得るために
は、実効屈折率差を3×10-3程度に設定する必要があ
る。従って、セルフパルセーションを得ようとすると、
高出力時に横モードが変形してしまうだけでなく、活性
層4における損失の大幅な増大を招き、動作電流の上昇
を引き起こすという問題があった。
【0011】また、電流ブロック層7の下側の活性層4
よりなる可飽和吸収領域の光吸収損失により、導波路を
伝搬する波面に曲がりが生じ、レンズによりレーザビー
ムを集光した場合に10μm以上の非点隔差が生じると
いう問題があった。
【0012】横モードの変形やレーザ光を集光した場合
における非点隔差の存在は、光ディスクへの応用におい
て、スポットを小さく絞れない原因となるので、大きな
問題となる。
【0013】次に、図21に示す第2の従来例に係る半
導体レーザ装置においては、レーザ発振光を電流ブロッ
ク層30の内側のストライプ領域に閉じこめるため、レ
ーザ発振光を吸収するGaAsを電流ブロック層30と
して用いている。しかしながら、電流ブロック層30が
レーザ発振光を吸収するため、その光吸収損失により、
導波路を伝搬する波面に曲がりが生じ、10μm以上の
非点隔差が生じるという問題があった。また、低光出力
時において、電流−光出力特性に非線形性が生じるの
で、光ディスク等の光ピックアップ装置の光源として用
いる際には実用上重大な問題がある。すなわち、光ディ
スク等の情報の読み出し時における光出力としては3m
W程度が好ましいが、レーザ発振後の注入電流の僅かな
増加により光出力が5mW程度にまで急激に増大してし
まうので、読み出しに必要な光出力を一定の大きさに保
つことが困難になるという問題が存在する。
【0014】また、光ディスク等の情報の読み出しには
3mW程度の光出力が好ましく、情報の書き込みには3
0mW程度の光出力が好ましいが、図21に示す第2の
従来例に係る半導体レーザ装置を光源として用いる光ピ
ックアップ装置においては、3mW〜30mWの光出力
の範囲において線形性に優れた電流−光出力特性が得ら
れないので、光ピックアップ装置に用いることは困難で
あった。
【0015】また、書き換え型の光ディスクの光ピック
アップ装置においては、光利用効率を大きくするべく、
レンズのレーザ側のNA(Numerical Aperture)はCD
(Compact Disk)のNAに比べて大きく設計されている
ので、非点隔差の影響が出やすい。このため、3mWの
光出力による読み出し時の非点隔差の値と30mWの光
出力による書き込み時の非点隔差の値との差が大きくな
ってしまうので、半導体レーザ装置からの出射光をレン
ズにより集光した場合にスポット状に小さく絞れないと
いう問題がある。そこで、非点隔差を補正するための光
学部品が必要になるが、非点隔差を補正する光学部品
は、光ピックアップ装置の小型化及び低コスト化を阻害
する要因になる。非点隔差を補正する光学部品を用いな
いようにするためには、半導体レーザ装置の非点隔差を
5μm以下に抑制する必要があるが、図20及び図21
に示す第1及び第2の従来例に係る半導体レーザ装置に
おいては、非点隔差は10μm以上と大きいので、非点
隔差を補正する光学部品の使用は避けられない。
【0016】以上説明したように、従来の半導体レーザ
装置においては、横モードが安定で、非点隔差がなく、
線形性に優れた電流−光出力特性を有する低雑音で高出
力動作が可能な半導体レーザ装置を実現することはでき
なかった。
【0017】本発明は、前記の問題を解決し、低雑音特
性を有し、高出力時においても横モードが安定であり、
非点隔差が無く、低光出力時においても光出力の制御が
容易な高出力半導体レーザ装置を提供することを目的と
する。
【0018】
【課題を解決するための手段】前記の目的を達成するた
めに、本発明に係る第1の半導体レーザ装置は、活性層
上の光ガイド層に、活性層の禁制帯幅以下の禁制帯幅を
有する半導体層を形成し、該半導体層を可飽和吸収領域
として作用させることにより、ストライプ領域の共振器
方向に可飽和吸収領域を形成すると共に、レーザ発振光
を吸収しない電流ブロック層を用いて、レーザ発振光を
ストライプ領域に閉じこめることにより、非点隔差の小
さい低雑音の高出力レーザを容易に得るものである。
【0019】また、本発明に係る第2の半導体レーザ装
置は、損失変化層の膜厚を5nm以上にすると自励発振
すると共に、損失変化層の膜厚を活性層の膜厚の5分の
1の膜厚に5nmを加えた膜厚以下にすると低光出力時
において光出力制御の容易な線形性に優れた電流−光出
力特性が得られるということを見出だし、該知見に基づ
いてなされたものである。
【0020】本願発明に係る半導体レーザ装置は、活性
層と、前記活性層の上に形成され且つ溝を有する電流ブ
ロック層と、前記ブロック層の溝に形成されたクラッド
層と、前記活性層と前記電流ブロック層との間に、前記
電流ブロック層の下に形成された半導体層を介して形成
され、前記活性層の禁制帯幅以下の禁制帯幅を有する損
失変化層とを備えているものである。
【0021】この構成により、活性層の禁制帯幅以下の
禁制帯幅を有する損失変化層が可飽和吸収領域として働
くので、活性層における電流ブロック層の下側の領域を
可飽和吸収領域として作用させる必要がない。このた
め、活性層において発振したレーザ光を水平方向に拡げ
る必要がないと共に、ストライプ領域の下側で且つ活性
層の外部に、セルフパルセーション特性を得るために必
要な可飽和吸収領域を形成することができる。
【0022】本発明に係る半導体レーザ装置は、さらに
電流ブロック層が前記活性層により発信されたレーザ光
に対して透明であることが好ましい。
【0023】本願発明に係る半導体レーザ装置は、さら
に前記半導体層が前記活性層の禁制帯幅よりも大きな禁
制帯幅を有する光ガイド層であることが好ましい。
【0024】
【0025】
【0026】
【0027】
【0028】
【0029】
【0030】
【0031】
【0032】
【0033】
【0034】
【0035】
【0036】
【0037】
【0038】
【0039】
【0040】
【0041】
【0042】
【0043】
【0044】
【0045】
【0046】
【0047】
【0048】
【0049】
【0050】
【0051】
【0052】
【0053】
【0054】
【0055】
【0056】
【0057】
【0058】
【0059】
【0060】
【0061】
【0062】
【0063】
【0064】
【0065】
【0066】
【0067】
【0068】
【0069】
【0070】
【0071】
【0072】
【0073】
【0074】
【0075】
【発明の実施の形態】以下、本発明の各実施形態に係る
半導体レーザ装置について、図面を参照しながら説明す
る。
【0076】(第1の実施形態)図1は本発明の第1の
実施形態に係る半導体レーザ装置の断面図である。
【0077】図1に示すように、n型のGaAsよりな
る半導体基板51の上に、n型のGaAsよりなるバッ
ファ層52、n型のGa0.5 Al0.5 Asよりなるクラ
ッド層53、Ga0.85Al0.15Asよりなる活性層54
(バンドギャップエネルギー:1.611eV)が順次
形成されている。活性層54の上には、該活性層54の
禁制帯幅よりも小さい禁制帯幅を有するp型のGa0.86
Al0.14Asよりなる損失変化層55a(バンドギャッ
プエネルギー:1.5989eV)を有するp型のGa
0.5 Al0.5 Asよりなる第1光ガイド層55、p型の
Ga0.8 Al0. 2 Asよりなる第2光ガイド層56が順
次形成されている。注入された電流を狭窄するために、
第2光ガイド層56の上におけるストライプ領域57a
以外の領域にはn型のGa0.35Al0.65Asよりなる電
流ブロック層57が形成されている。ストライプ領域5
7a及び電流ブロック層57の上にはp型のGa0.5
0.5 Asよりなる第3光ガイド層58が形成され、該
第3光ガイド層58の上にはp型のGaAsよりなるコ
ンタクト層59が形成されている。
【0078】第1の実施形態の特徴として、安定な単一
横モード発振を得るために、電流ブロック層57のAl
As混晶比を、p型のGa0.5 Al0.5 Asよりなる第
3光ガイド層58のAlAs混晶比よりも高く設定して
いる。もし、電流ブロック層57のAlAs混晶比が第
3光ガイド層59のAlAs混晶比と同様である場合、
プラズマ効果によるストライプ領域57a内の屈折率の
低下があり、アンチガイドの導波路となって、単一な横
モード発振は得られない。また、電流ブロック層57の
AlAs混晶比がp型のGa0.5 Al0.5 Asよりなる
第3光ガイド層59のAlAs混晶比よりも低い場合に
は、横モードは確実に不安定になる。
【0079】そこで、第1の実施形態においては、電流
ブロック層57のAlAs混晶比を、p型のGa0.5
0.5 Asよりなる第3光ガイド層58のAlAs混晶
比よりも0.15高くして0.65としている。この構
成により、ストライプ領域57aの内外に6×10-3
上の実効屈折率差が形成され、屈折率導波機構が達成さ
れる。これにより、安定した横モードだけでなく、電流
ブロック層57への光の拡がりを抑制して低非点隔差特
性を得ることが可能となる。。
【0080】この構造において、p型のGaAsよりな
るコンタクト層59から注入される電流はストライプ領
域57a内に閉じ込められ、ストライプ領域57aの下
側のGa0.85Al0.15Asよりなる活性層54において
780nm帯のレーザ発振が生じる。ここで、p型のG
0.5 Al0.5 Asよりなる第1光ガイド層55のAl
As混晶比を、活性層54のAlAs混晶比もより十分
に高くして、活性層54へキャリアを有効に閉じ込め、
780nm帯の発振を可能としている。具体的に、78
0nm帯のレーザ発振を得るためには、AlAs混晶比
は0.45以上が必要であり、第1の実施形態において
は0.5に設定した。
【0081】また、AlAs混晶比の低いp型のGa
0.8 Al0.2 Asよりなる第2光ガイド層56上に再成
長を行なうので、表面酸化の問題は全くない。具体的
に、第2光ガイド層6のAlAs混晶比としては、再成
長が容易な0.15以下に設定し、第2光ガイド層56
がレーザの発振波長に対して透明であることが望まし
い。従って、第1の実施形態においては、第2光ガイド
層56のAlAs混晶比を0.2としている。
【0082】さらに、第2光ガイド層56の膜厚は、光
分布にあまり影響を与えない0.05μm以下が望まし
い。第1の実施形態においては、第2光ガイド層56の
膜厚を0.03μmとしている。
【0083】以上のように、第1の実施形態において
は、キャリアを閉じ込める層(第1光ガイド層55)
と、再成長される層(第2光ガイド層56)とを別々に
形成することにより、780nm帯の発振を可能として
いるのである。
【0084】また、n型のGa0.35Al0.65Asよりな
る電流ブロック層57の禁制帯幅は、Ga0.85Al0.15
Asよりなる活性層54の禁制帯幅よりも大きいので、
電流ブロック層57による光吸収がなく、導波路の損失
の小さい低動作電流の半導体レーザ装置が得られる。
【0085】この構造において、高出力動作時にレーザ
端面が自らの光により破壊されるCOD(catastrophic
optical damage )を生じないようにするために、活性
層4の薄膜化、つまり、活性層54の膜厚を40nm以
下にする必要がある。本実施形態においては、活性層5
4の膜厚は35nmとした。
【0086】低雑音特性を得るためにスペクトルを多モ
ード化してセルフパルセーションを生じさせる場合、従
来の構造では、水平方向に光分布を拡げ、電流ブロック
層57の下側の活性層54を可飽和吸収領域とする構成
を必要とするため、ストライプ領域57a内外の実効屈
折率差を3×10-3程度に設定していた。そのため、高
出力動作時には、横モードが変形してしまうだけでな
く、活性層54における損失の大幅な増大を招き、動作
電流の上昇を引き起こすという問題があった。
【0087】これに対して、第1の実施形態では、活性
層54において発生したレーザ光は、Ga0.85Al0.15
Asよりなる活性層54(バンドギャップエネルギー
1.611eV)の禁制帯幅よりも小さい禁制帯幅を有
するp型のGa0.86Al0.14Asよりなる損失変化層5
5a(バンドギャップエネルギー1.5989eV)に
より吸収されるが、GaAlAsよりなる損失変化層5
5aの吸収が飽和するため、該損失変化層55aは可飽
和吸収領域として作用するので、ストライプ領域57a
内の共振器方向において活性層54以外の領域に可飽和
吸収領域を形成することが可能となる。このため、活性
層54が薄膜化され且つ6×10-3以上の実効屈折率差
が形成された屈折率導波機構を有する半導体レーザ装置
においても、容易にセルフパルセーション特性を得るこ
とができる。
【0088】さらに、セルフパルセーションに伴う活性
層54における損失の増大は起こらないため、動作電流
の増大を抑制できるので、横モードの安定化は言うまで
もなく実現できる。
【0089】尚、GaAlAsよりなる損失変化層55
aを可飽和吸収領域として効果的に作用させるために
は、該損失変化層55aのAlAs組成、膜厚及び活性
層54からの距離が重要な構造パラメータとなる。
【0090】損失変化層55aの膜厚については、膜厚
が厚すぎると、吸収が飽和しないため単なる飽和吸収領
域として作用するにとどまり、セルフパルセーション特
性が得られないだけでなく、閾値電流の増大や発光効率
の低下、さらには電流−光出力特性において線形性が失
われる。このため、GaAlAsよりなる損失変化層5
5aの膜厚を0.02μm以下にする必要がある。
【0091】また、一般に、高出力動作が必要な半導体
レーザ装置においては、レーザ端面に誘電体膜等を用い
て、前面を低反射率で、後面を高反射率にした非対称コ
ーティングを実施するため、低出力動作時に共振器内部
の光密度が低下する。よって、GaAlAsよりなる損
失変化層55aを可飽和吸収領域として作用させるため
に、該損失変化層55aを薄膜化して量子効果が得られ
るようにする。このようにすると、エネルギー準位の数
が少なくなるため、吸収飽和を起こしやすくなる。第1
の実施形態では、GaAlAsよりなる損失変化層55
aの膜厚を量子効果が得られる0.01μmとしたが、
GaAlAsよりなる吸収損失層55aを0.01μm
よりも薄膜化した場合、エネルギー準位数がより減少
し、吸収飽和を起こしやすくなるので、損失変化層55
aを、その層数が2層以上である多重量子井戸構造にす
ることにより、セルフパルセーションの周波数を制御す
ることが可能となる。
【0092】活性層54から損失変化層55aまでの距
離については、活性層54からの距離が小さすぎると、
活性層54からのキャリアのオーバーフローの影響を強
く受けるため、GaAlAsよりなる損失変化層55a
が吸収領域として作用しなくなる。一方、活性層54か
ら損失変化層55aまでの距離が大きすぎると、光の電
界強度が減少し、GaAlAsよりなる損失変化層55
aの吸収が飽和しないという状況を招く。これらの点を
考慮し、第1の実施形態においては、活性層54から損
失変化層55aまでの距離を0.05μmとした。
【0093】AlAs組成については、活性層54にお
いて発振されたレーザ光を吸収することにより可飽和吸
収効果を得るため、活性層54の禁制帯幅以下の禁制帯
幅になるようにGaAlAsよりなる損失変化層55a
のAlAs組成を設定する必要がある。そこで、第1の
実施形態では、GaAlAsよりなる損失変化層55a
のAlAs組成として0.14を採用した。なお、Ga
AlAsよりなる損失変化層55aが量子効果を有する
場合は、発振波長に寄与するエネルギー準位以下の禁制
帯幅を有するようにAlAs組成を決定すればよい。
【0094】図2は、第1の実施形態に係る半導体レー
ザ装置の電流−光出力特性図である。共振器長が400
μmの半導体レーザにおいて、最大光出力100mWが
得られている。また、室温で35mWの光出力を得るた
めに必要な動作電流は75mAである。
【0095】従来構造の低雑音レーザ装置では、可飽和
吸収領域をストライプ領域57aの外側の電流ブロック
層57の下の活性層54内に形成しているため、活性層
54における損失が大きくなり、動作電流の増大を招い
ている。これに対して、第1の実施形態においては、可
飽和吸収領域を活性層54の外部に設けているため、活
性層54における損失の増大が抑制され、低動作電流駆
動を実現している。
【0096】第1の実施形態によると、光出力3mWに
おけるスペクトルは780nm帯のセルフパルセーショ
ン特性を備えており、0〜10%の戻り光率の範囲で−
135dB/Hzの相対雑音強度値を得ており、光ディ
スクへの応用に十分な低雑音特性が得られた。
【0097】図3は、第1の実施形態に係る半導体レー
ザ装置の水平拡がり角の光出力依存性を示している。従
来の低雑音レーザ装置では、セルフパルセーション特性
を得るために、光分布をストライプ領域の外部に大きく
広げ、可飽和吸収領域を電流ブロック層の下に大きく形
成する必要があるので、ストライプ領域内外の実効屈折
率差を3×10-3程度に小さくしなければならなかっ
た。このため、プラズマ効果により、電流を注入したと
きにストライプ内部において屈折率の低下が生じて、光
分布が変化してしまうため、水平拡がり角が光出力の増
大に伴って大きく変化するという問題があった。これに
対して、第1の実施形態においては、セルフパルセーシ
ョン特性を得るための可飽和吸収領域を活性層の外部に
形成するため、プラズマ効果に伴う屈折率低下の影響を
受けないので、安定な光分布を得るために必要な6×1
-3以上という実効屈折率差の場合でも、容易にセルフ
パルセーション特性を得ることができる。従って、光出
力の変化に依存することなく基本横モードの安定化を図
ることができる。
【0098】図4は、第1の実施形態に係る半導体レー
ザ装置の非点隔差の光出力依存性を示している。従来の
低雑音レーザ装置においては、可飽和吸収領域を電流ブ
ロック層の下に形成していたため、電流ブロック層の下
の活性層において損失が生じ、電流ブロック層の下を導
波するレーザ光の位相がストライプ領域を導波するレー
ザ光に対して遅れを生じる。このため、レーザ光の等位
相面が湾曲し、非点隔差が20μmと大きくなるのみな
らず、電流を注入したときに電流ブロック層の下側の活
性層の損失が大きく変化するため、光出力の変動に伴い
非点隔差が変化するという問題があった。これに対し
て、第1の実施形態においては、セルフパルセーション
特性を得るための可飽和吸収領域をストライプ領域に形
成し、屈折率導波機構によりストライプ領域にレーザ光
を強く閉じ込め、電流ブロック層の下側へのレーザ光の
広がりを抑制することにより、非点隔差の光出力依存性
を解消し、非点隔差を1μm以下に安定化させることが
できる。
【0099】このような第1の実施形態に係る、非点隔
差の小さい低雑音の高出力半導体レーザ装置を光ディス
クの光源として用いると、読み出し時に低雑音化を図る
ための高周波重畳回路や非点隔差を補正するためのレン
ズが不要になるので、光ピックアップの大幅な小型化及
び低コスト化が実現できる。
【0100】(第2の実施形態)図5は第2の実施形態
に係る半導体レーザ装置の断面構造を示しており、図5
に示すように、n型のGaAsよりなる半導体基板10
1の上に、n型のGaAsよりなる厚さ0.5μmのバ
ッファ層102、n型のGa0.5 Al0.5 Asよりなる
厚さ2.0μmの第1光ガイド層103、Ga0.85Al
0.15Asよりなる厚さ0.06μmの活性層104、p
型のGa0.5 Al0.5 Asよりなる厚さ0.1μmの第
2光ガイド層105及びp型のGa0.86Al0.14Asよ
りなる厚さ0.01μmの損失変化層106が順次形成
されている。損失変化層106の上における中央部には
p型のGa0.5 Al0.5 Asよりなり電流チャネルを形
成するための幅2.5μmのストライプ領域107が形
成されていると共に、損失変化層106の上におけるス
トライプ領域107の両側にはn型のGa0.35Al0. 65
Asよりなる厚さ1.0μmの電流ブロック層108が
形成されている。ストライプ領域107及び電流ブロッ
ク層108の上には、p型のGa0.5 Al0.5Asより
なる厚さ2.0μmの第3光ガイド層109がストライ
プ領域107と一体に形成され、第3光ガイド層109
の上にはp型のGaAsよりなる厚さ2.0μmのコン
タクト層110が形成されている。
【0101】電流ブロック層108は、安定した単一横
モード発振を得るために、第1光ガイド層103よりも
屈折率が低く、レーザ発振光に対して透明であるGa
0.35Al0.65Asにより構成している。このとき、電流
ブロック層108の屈折率が第1〜第3の光ガイド層1
03、105、109の屈折率よりも低いため、電流ブ
ロック層108の下側の光強度分布のピークは第1光ガ
イド層103側、つまり半導体基板101側に押しやら
れるので、電流ブロック層108の下側の光分布の実効
屈折率が低下する。このため、ストライプ領域107の
下側の光分布の実効屈折率が、電流ブロック層108の
下側の光分布の実効屈折率よりも高くなるので、実屈折
率導波機構が得られ、光分布は安定して電流チャネル内
に閉じこめられる。
【0102】以下、半導体レーザ装置が自励発振するた
めに必要な損失変化層106の膜厚について説明する。
【0103】損失変化層106の膜厚が余り小さい場合
には、損失変化層106における可飽和吸収効果が小さ
くなるので、自励発振が生じなくなる。従って、動作電
流値の大幅な増大を招くことなく自励発振を生じさせ、
対称性の良い垂直方向遠視野像を得るためには、損失変
化層106の膜厚としては5nm以上が必要である。そ
こで、第2の実施形態においては損失変化層106の膜
厚を10nmとしている。
【0104】以下、発振スペクトル特性と、禁制帯幅波
長差Δλ(損失変化層106の禁制帯幅波長−活性層1
04の禁制帯幅波長)及び損失変化層106の膜厚との
関係について説明する。
【0105】図6は、第2の実施形態において、第2光
ガイド層105の膜厚が、安定な基本横モード発振を得
ることができる0.1μmであって、活性層104の膜
厚が0.035μmの場合における、発振スペクトル特
性の禁制帯幅波長差Δλ及び損失変化層106の膜厚に
対する依存性、並びに電流−光出力特性における非線形
性の有無の実験結果を示している。
【0106】電流−光出力特性における非線形性とは、
図7に示すように、電流−光出力特性の線形性が劣化
し、レーザ発振後に光出力が急激に増大する特性のこと
である。電流−光出力特性の線形性に劣化が生じた場合
には、光ディスクの情報を再生するために必要な低光出
力時において光出力を一定に保つためのAPC(Automa
tic Power Control )駆動が不可能になって、実用上非
常な支障をきたすことになる。
【0107】図6に示すように、電流−光出力特性の非
線形性は、禁制帯幅波長差Δλを10nmよりも大きく
した場合及び損失変化層106の厚さを12nmよりも
大きくした場合に生じることが分かる。これは以下に示
す理由による。すなわち、禁制帯幅波長差Δλが10n
mよりも大きくなったり、損失変化層106の厚さが1
2nmよりも大きくなったりすると、損失変化層106
における光吸収損失が増大するので、レーザ発振に必要
な注入電流量が増大する。この場合、活性層104の注
入キャリア密度も増大していくが、活性層104のキャ
リア密度が高くなると、活性層104の持つ微分利得の
低下が生じ、電流注入量を増大させた場合に導波光が受
ける利得の増加量の割合も低下する。また、注入電流に
起因する半導体レーザ装置の発熱により、活性層104
の持つ微分利得はますます低下する。このため、レーザ
発振させるために注入電流量をさらに増加する必要が生
じる。この結果、活性層104の持つ微分利得が一層低
下すると共に、発熱の影響に伴って活性層104の微分
利得がより一層低下するので、導波光の受ける利得が損
失を上回ることは困難になる。このようにして、発振し
きい値電流は急激に高まっていく。ところが、注入電流
値がさらに増大していくと、ある注入電流値において導
波光が受ける利得が損失を上回り、レーザ発振が生じて
光出力が急激に高まる。この際、損失変化層106にお
いて発振レーザ光によりキャリアが励起され、光吸収効
果が急激に小さくなるため、導波光が受ける光吸収損失
は急激に小さくなる。この結果、導波光の受ける利得が
損失をはるかに上回ることになり、レーザ発振後の光出
力が急激に増加し、電流−光出力に非線形性が生じてし
まうのである。前記のような電流−光出力の非線形性
は、実用上重大な支障をきたすので避けなければならな
い。
【0108】第2の実施形態によると、前述したよう
に、第2光ガイド層105の上に発振レーザ光を吸収し
可飽和吸収効果を生じさせる損失変化層106が設けら
れていると共に、損失変化層106の膜厚を5nm以上
で且つ12nm以下に設定しているため、レーザ発振特
性においてマルチモードスペクトルが生じるような自励
発振を実現することができ、低雑音特性を得ることがで
きると共に、線形性に優れた電流−光出力特性を得るこ
とができる。すなわち、活性層104の持つ微分利得に
飽和傾向が現れない注入キャリア密度状態においてレー
ザ発振を生じさせることができる。
【0109】また、活性層104の膜厚が35nmであ
るのに対して損失変化層106の膜厚を12nm以下に
しているため、損失変化層106自体の体積が増大しな
いので、活性層104において生じる発振レーザ光に対
する損失変化層106の光吸収の飽和が困難になること
がない。このため、活性層104において導波光が受け
る利得を大きくする必要がないので、電流注入量を増大
させる必要がなくなり、動作電流値の大幅な増大を防止
でき、半導体レーザ装置の発熱量の増大ひいては信頼性
の低下を防止することができる。また、損失変化層10
6の膜厚が小さいために、垂直方向の光分布に変形が生
じないので、遠視野像における垂直方向のビームパター
ンに非対称性が生じず、これにより、半導体レーザ装置
からの出射光とレンズとの結合効率の低下を回避でき
る。
【0110】ところで、線形性に優れた電流−光出力特
性を得るための損失変化層106の膜厚は活性層104
の膜厚により変化する。すなわち、活性層104の膜厚
がより大きい場合には、動作キャリア密度が低下し、よ
り微分利得の高い動作点で半導体レーザ装置を動作させ
ることになり、活性層104への光の閉じこめ係数が増
大するため、注入電流の増加に対する導波光の受ける利
得の増加の割合が増大するので、電流−光出力特性に非
線形性は生じ難くなる。
【0111】図8は、活性層104の膜厚が50nmで
ある場合における、発振スペクトル特性の禁制帯幅波長
差Δλ及び損失変化層106の膜厚に対する依存性の実
験結果、並びに電流−光出力特性における非線形性の有
無の実験結果を示している。尚、図8は、第2光ガイド
層105の膜厚が安定な基本横モード発振をすることが
できる0.1μmの場合の特性を示している。
【0112】図8から分かるように、活性層104の膜
厚が大きくなると、電流−光出力特性に非線形性を生じ
させることなく自励発振する領域は増大する。これは、
前述のように、活性層104の膜厚を大きくすると、注
入電流の増加に対する導波光の受ける利得の増加割合が
増大するので、電流−光出力特性に非線形性が生じ難く
なるからである。活性層104の膜厚が50nmの場
合、損失変化層106の膜厚としては5nm以上で16
nm以下に設定する必要のあることが分かる。
【0113】図9は、活性層104の膜厚と、電流−光
出力特性に非線形を生じないための損失変化層106の
最大膜厚との関係を示している。図9において斜線で示
す領域に損失変化層106の膜厚を設定すると、電流−
光出力特性に非線形性を生じさせることなく自励発振を
得ることができる。
【0114】以上の検討から、活性層104の膜厚が通
常採用されている20nm以上で67nm以下の場合に
は、損失変化層106の膜厚を活性層104の膜厚の5
分の1の膜厚に5nmを加えた膜厚以下に設定すると、
電流−光出力特性に非線形を生じないことが分かる。
【0115】尚、損失変化層106が複数層設けられて
いる場合には、複数の損失変化層106の合計膜厚を活
性層104の膜厚の5分の1の膜厚に5nmを加えた膜
厚以下に設定すると、また、損失変化層106が量子井
戸構造を有している場合には、各井戸層の合計膜厚を活
性層104の膜厚の5分の1の膜厚に5nmを加えた膜
厚以下に設定すると、電流−光出力特性に非線形が生じ
ない。
【0116】以下、横方向の光分布及び非点隔差につい
て検討する。
【0117】横方向の光分布は、電流チャネルの幅Wと
電流チャネルの内外実効屈折率差Δnとによって決定さ
れる。
【0118】第2の実施形態においては、電流ブロック
層108において高出力時の横モード発振を抑えると共
に基本横モード発振を得、さらに発振しきい電流値を低
減するために、電流チャネル幅Wを2.5μmとしてい
る。
【0119】また、電流チャネルの内外実効屈折率差Δ
nは、第2光ガイド層105と損失変化層106との合
計膜厚dpにより決定される。図10は、内外実効屈折
率差Δnの合計膜厚dpに対する依存性についての計算
結果を示している。この計算において、損失変化層10
6の膜厚は10nmとしている。図10に示すように、
合計膜厚dpが小さくなれば内外実効屈折率差Δnは大
きくなることが分かる。電流注入によるプラズマ効果に
起因する電流チャネル内部の実効屈折率の低下によっ
て、導波機構が屈折率導波機構から反屈折率導波機構に
変化することを防ぎ、低出力時から高出力時までに亘っ
て安定な基本横モード発振を得るためには、内外実効屈
折率差Δnとしては6×10-3以上の値が必要である。
従って、第2光ガイド層105と損失変化層106との
合計膜厚dpの値は0.15μm以下にしなければなら
ないことが分かる。
【0120】第2光ガイド層105と損失変化層106
との合計膜厚dpの値が0.15μm以下になるように
半導体レーザ装置を作製すれば、安定した基本横モード
発振を得ることができると共に、横方向の光分布の電流
チャネル内への閉じこめが強くなって、導波光が活性層
104における電流ブロック層108の下側部分におい
て受ける光吸収損失を低減することができ、これによ
り、発振しきい値電流の低減と導波光の横方向の等位相
面の湾曲の低減とを実現できる。等位相面の湾曲は非点
隔差をもたらし、出射光をレンズによりスポット状に集
光させることを困難にするため、実用上支障をきたす。
従って、第2光ガイド層105と損失変化層106との
合計膜厚dpの値が0.15μm以下になるように半導
体レーザ装置を作製すれば、発振しきい値電流の低減と
1μm以下の非点隔差の実現とを図ることができる。
【0121】尚、図10に示す内外実効屈折率差Δnの
合計膜厚dpに対する依存性の計算においては、損失変
化層106の膜厚を10nmとしているが、損失変化層
106の膜厚が12nm以下であれば、損失変化層10
6の膜厚が非常に小さいので光分布は殆ど影響を受け
ず、第2光ガイド層105と損失変化層106との合計
膜厚dpが0.15μm以下の場合、内外実効屈折率差
Δnは6×10-3以上となることは言うまでもない。
【0122】また、図10に示す内外実効屈折率差Δn
の合計膜厚dpに対する依存性の計算においては、活性
層104の厚さが35nmである場合を前提としたが、
活性層104の厚さが通常採用されている20nm以上
で67nm以下の場合については、前述した説明が妥当
することは言うまでもない。
【0123】また、活性層104と電流ブロック層10
8との間に損失変化層106が複数層存在する場合、又
は活性層104と電流ブロック層108との間に損失変
化層106が設けられていない場合でも、活性層104
と電流ブロック層108との間に存在する半導体層の合
計膜厚が0.15μm以下であれば、前述した説明が成
り立つことは言うまでもない。
【0124】第2の実施形態においては、第2光ガイド
層105と損失変化層106との合計膜厚dpが0.1
1μmと小さいために、電流ブロック層107の下側の
光分布は半導体基板101側に押しやられるので、電流
ブロック層107の下側の光分布の実効屈折率が低下す
る。このため、電流チャネル内外の実効屈折率差Δnと
しては8×10-3と大きい値を実現できるので、光の横
方向の分布を電流チャネル内に閉じ込めることができ
る。このため、光分布の電流チャネル外へのしみだしが
小さくなり、導波光が電流ブロック層108及び活性層
104におけるストライプ領域107の下側部分におい
て受ける光吸収損失が少なくなると共に非点隔差が小さ
くなる。
【0125】図11(a)は第2の実施形態に係る半導
体レーザ装置の電流−光出力特性を示し、図11(b)
は損失変化層を有する従来の自励発振型の半導体レーザ
装置の電流−光出力特性を示している。測定に用いた各
半導体レーザ装置の共振器長は400μmである。
【0126】従来の半導体レーザ装置においては、レー
ザ発振後、光出力が5mW程度に達するまでは光出力が
急激に増大していることが分かる。このような特性が出
る場合、光ディスクの情報を読み出す際に必要な3mW
程度の光出力のときに、光出力を一定に保つためにAP
C駆動が不可能となり、実用上非常な支障をきたしてい
た。
【0127】ところが、第2の実施形態に係る半導体レ
ーザ装置においては、発振しきい値電流は35mAであ
って、最大光出力は100mWが得られている。また、
電流−光出力特性にはAPC駆動を不可能にさせる非線
形性は現れておらず直線性に優れた特性が得られてい
る。また、横モードは安定な基本モードで発振した。ス
ペクトルは780nm帯のセルフパルセーションを生じ
るマルチモードで発振しており、0〜10%の戻り光率
の範囲内で−130dB/Hz以下のRINの値を得て
おり、低雑音特性が得られた。さらに、非点隔差は0.
3μmであって低非点隔差の特性が得られた。
【0128】以下、第2の実施形態に係る半導体レーザ
装置を構成する各層の混晶比について説明する。
【0129】まず、第1〜第3の光ガイド層103、1
05、109の各AlAs混晶比と活性層104のAl
As混晶比との関係について説明する。
【0130】光ディスク等の光ピックアップ装置に使用
される780nm帯の波長のレーザ光を用いるに際し、
注入されたキャリアの活性層104からのオーバーフロ
ーを防ぎ、キャリアを活性層104に有効に閉じ込める
ために、第2の実施形態においては、第1〜第3の光ガ
イド層103、105、109の各AlAs混晶比を
0.5としている。もっとも、第1〜第3の光ガイド層
103、105、109の各AlAs混晶比が活性層1
04のAlAs混晶比である0.15よりも少なくとも
0.3以上大きければ、キャリアを活性層104に有効
に閉じ込めることができることは言うまでもない。
【0131】以下、損失変化層106の禁制帯幅波長
(禁制帯幅のエネルギーに相当する光の波長)について
説明する。
【0132】損失変化層106にレーザ光を吸収させて
可飽和吸収効果を得るためには、損失変化層106の禁
制帯幅波長を活性層104の禁制帯幅波長よりも長くす
る必要がある。損失変化層106の禁制帯幅波長と活性
層104の禁制帯幅波長との差である禁制帯幅波長差Δ
λ(損失変化層106の禁制帯幅波長−活性層104の
禁制帯幅波長)が2nmよりも小さい場合には、損失変
化層106は活性層104から発振するレーザ光により
キャリアが励起されて簡単にレーザ光に対して透明とな
ってしまう。このため、1mW以下の低光出力時におい
て損失変化層106の可飽和吸収効果が弱まってしま
い、1mW以上の光出力時において自励発振は生じなく
なる。
【0133】一方、禁制帯幅波長差Δλが10nmより
も大きい場合には、損失変化層106の光吸収は大きく
なり過ぎ、光の吸収飽和が生じ難くなる。この場合にレ
ーザ発振させるためには、損失変化層106の光吸収損
失を補うべく注入電流量を増加させて活性層104にお
いて導波光が受ける利得を増大させる必要がある。とこ
ろが、注入電流量を大きくすると、発振しきい値電流の
大幅な増大と外部微分量子効率の低下とがもたらされ
る。
【0134】従って、発振しきい値電流の大幅な増大を
招くことなく自励発振を得るためには、禁制帯幅波長差
Δλの値が2nm以上で且つ10nm以下の範囲内にな
るように、半導体レーザ装置を作製する必要がある。そ
こで、第2の実施形態においては、禁制帯幅波長差Δλ
を6nmとするため、損失変化層106のAlAs混晶
比を活性層104のAlAs混晶比よりも0.01だけ
小さい0.14に設定している。
【0135】以下、第2の実施形態に係る半導体レーザ
装置の製造方法について、図12(a)〜(c)を参照
しながら説明する。
【0136】まず、図12(a)に示すように、n型の
GaAsよりなる半導体基板101の上に、n型のGa
Asよりなる厚さ0.5μmのバッファ層102、n型
のGa0.5 Al0.5 Asよりなる厚さ2.0μmの第1
光ガイド層103、Ga0.85Al0.15Asよりなる厚さ
0.06μmの活性層104、p型のGa0.5 Al0. 5
Asよりなる厚さ0.1μmの第2光ガイド層105、
p型のGa0.86Al0. 14Asよりなる厚さ0.01μm
の損失変化層106及びn型のGa0.35Al0. 65Asよ
りなる厚さ1.0μmの電流ブロック層108を順次形
成する。
【0137】次に、図12(b)に示すように、フォト
リソグラフィ技術を用いて電流ブロック層108に対し
てエッチングを行なうことにより、ストライプ領域10
7となる幅2.5μmの順メサ形状の凹状溝を形成す
る。凹状溝の形状は逆メサ形状よりも順メサ形状の方が
好ましい。その理由は、逆メサ形状の場合には、順メサ
形状の場合に比べて、凹状溝における結晶成長が困難と
なり、特性の低下に起因する歩留りの低下を招く恐れが
あるためである。実際に、逆メサ形状の凹状溝を形成し
たところ、ストライプ領域107の側部においてGaA
lAsの結晶性が損なわれ、得られた半導体レーザ装置
のしきい値電流は、順メサ形状の場合に比べて約10m
A高くなった。
【0138】次に、図12(c)に示すように、MOC
VD法又はMBE法により、損失変化層106の上にp
型のGa0.5 Al0.5 As層を成長させて、損失変化層
106の上における中央部に幅2.5μmのストライプ
領域107を形成すると共に、ストライプ領域107及
び電流ブロック層108の上にp型のGa0.5 Al0. 5
Asよりなる厚さ2.0μmの第3光ガイド層109を
形成する。その後、第3光ガイド層109の上にp型の
GaAsよりなる厚さ2.0μmのコンタクト層110
を再成長法により形成する。この場合、第3光ガイド層
109を構成するp型のGa0.5 Al0.5 As層のドー
パントにZnを使用する場合には、Znのストライプ領
域107への成長中の拡散による特性への影響を防止す
るために、少なくとも再成長界面においてキャリア濃度
を1018cm-3以下にする必要がある。第2の実施形態
においては、キャリア濃度を7×1017cm-3とした。
尚、ドーパントとしては、カーボン等のように拡散性の
低いものを用いてもよい。その後、図示は省略している
が、半導体基板101の下面及びコンタクト層110の
上面にそれぞれ電極を形成する。
【0139】(第3の実施形態)以下、本発明の第3の
実施形態に係る半導体レーザ装置について図13を参照
しながら説明する。
【0140】図13は第3の実施形態に係る半導体レー
ザ装置の断面構造を示しており、図13に示すように、
n型のGaAsよりなる半導体基板201の上に、n型
のGaAsよりなるバッファ層202、n型のGa0.5
Al0.5 Asよりなる第1光ガイド層203、p型のG
0.86Al0.14Asよりなる損失変化層204及びn型
のGa0.5 Al0.5 Asよりなる第1光ガイド層20
5、Ga0.85Al0.15Asよりなる活性層206及びp
型のGa0.5 Al0.5 Asよりなる第2光ガイド層20
7が順次形成されている。第2光ガイド層207の上に
おける中央部にはp型のGa0.5 Al0.5 Asよりなる
ストライプ領域208が形成されていると共に、第2光
ガイド層207の上におけるストライプ領域208の両
側にはn型のGa0.35Al0.65Asよりなる電流ブロッ
ク層209が形成されている。ストライプ領域208及
び電流ブロック層209の上には、p型のGa0.5 Al
0.5Asよりなる第3光ガイド層210がストライプ領
域208と一体に形成され、第3光ガイド層210の上
にはp型のGaAsよりなるコンタクト層211が形成
されている。第3の実施形態においては、損失変化層2
04の膜厚は、5nm以上で且つ活性層206の膜厚の
5分の1の膜厚に5nmを加えた膜厚以下に設定されて
おり、第2光ガイド層207の膜厚は0.15μm以下
に設定されている。
【0141】(第4の実施形態)図14は第4の実施形
態に係る半導体レーザ装置の断面構造を示しており、図
14に示すように、n型のGaAsよりなる半導体基板
301の上に、n型のGaAsよりなるバッファ層30
2、n型のGa0.5 Al0.5 Asよりなる第1光ガイド
層303、p型のGa0.86Al0.14Asよりなる損失変
化層304及びn型のGa0.5 Al0.5 Asよりなる第
1光ガイド層305、Ga0.85Al0.15Asよりなる活
性層306、p型のGa0.5 Al0.5 Asよりなる第2
光ガイド層307及びp型のGa0.8 Al0.2 Asより
なる第3ガイド層308が順次形成されている。第3光
ガイド層308の上における中央部にはp型のGa0.5
Al0.5 Asよりなるストライプ領域309が形成され
ていると共に、第3光ガイド層308の上におけるスト
ライプ領域309の両側にはn型のGa0.35Al0.65
sよりなる電流ブロック層310が形成されている。ス
トライプ領域309及び電流ブロック層310の上に
は、p型のGa0.5 Al0.5 Asよりなる第4光ガイド
層311がストライプ領域309と一体に形成され、第
4光ガイド層311の上にはp型のGaAsよりなるコ
ンタクト層312が形成されている。第4の実施形態に
おいては、損失変化層304の膜厚は、5nm以上で且
つ活性層306の膜厚の5分の1の膜厚に5nmを加え
た膜厚以下に設定されていると共に、第2光ガイド層3
07と第3光ガイド層308との合計膜厚は0.15μ
m以下に設定されている。
【0142】(第5の実施形態)図15は第5の実施形
態に係る半導体レーザ装置の断面構造を示しており、図
15に示すように、n型のGaAsよりなる半導体基板
401の上に、n型のGaAsよりなるバッファ層40
2、n型のGa0.5 Al0.5 Asよりなる第1光ガイド
層403、Ga0.85Al0.15Asよりなる活性層40
4、p型のGa0.5Al0.5 Asよりなる第2光ガイド
層405、p型のGa0.86Al0.14Asよりなる損失変
化層406及びp型のGa0.5 Al0.5 Asよりなる第
2光ガイド層407が順次形成されている。第2光ガイ
ド層407の上における中央部にはp型のGa0.5 Al
0.5 Asよりなるストライプ領域409が形成されてい
ると共に、第2光ガイド層407の上におけるストライ
プ領域409の両側にはn型のGa0.35Al0.65Asよ
りなる電流ブロック層410が形成されている。ストラ
イプ領域409及び電流ブロック層410の上には、p
型のGa0.5 Al0.5 Asよりなる第3光ガイド層41
1がストライプ領域409と一体に形成され、第3光ガ
イド層411の上にはp型のGaAsよりなるコンタク
ト層412が形成されている。第5の実施形態において
は、損失変化層406の膜厚は、5nm以上で且つ活性
層404の膜厚の5分の1の膜厚に5nmを加えた膜厚
以下に設定されていると共に、2層の第2光ガイド層4
05,407及び両者間に介在する損失変化層406の
合計膜厚は0.15μm以下に設定されている。
【0143】(第6の実施形態)図16は第6の実施形
態に係る半導体レーザ装置の断面構造を示しており、図
16に示すように、n型のGaAsよりなる半導体基板
501の上に、n型のGaAsよりなるバッファ層50
2、n型のGa0.5 Al0.5 Asよりなる第1光ガイド
層503、Ga0.85Al0.15Asよりなる活性層50
4、p型のGa0.5Al0.5 Asよりなる第2光ガイド
層505、p型のGa0.86Al0.14Asよりなる損失変
化層506、p型のGa0.5 Al0.5 Asよりなる第2
光ガイド層507及びp型のGa0.8 Al0.2 Asより
なる第3光ガイド層508が順次形成されている。第3
光ガイド層508の上における中央部にはp型のGa
0.5 Al0.5 Asよりなるストライプ領域509が形成
されていると共に、第3光ガイド層508の上における
ストライプ領域509の両側にはn型のGa0.35Al
0.65Asよりなる電流ブロック層510が形成されてい
る。ストライプ領域509及び電流ブロック層510の
上には、p型のGa0.5 Al0.5 Asよりなる第4光ガ
イド層511がストライプ領域509と一体に形成さ
れ、第4光ガイド層511の上にはp型のGaAsより
なるコンタクト層512が形成されている。第6の実施
形態においては、損失変化層506の膜厚は、5nm以
上で且つ活性層504の膜厚の5分の1の膜厚に5nm
を加えた膜厚以下に設定されていると共に、2層の第2
光ガイド層505,507、両者間に介在する損失変化
層506及び第3の光ガイド層508の合計膜厚は0.
15μm以下に設定されている。
【0144】(第7の実施形態)図17は第7の実施形
態に係る半導体レーザ装置の断面構造を示しており、図
17に示すように、n型のGaAsよりなる半導体基板
601の上に、n型のGaAsよりなるバッファ層60
2、n型のGa0.5 Al0.5 Asよりなる第1光ガイド
層603、Ga0.85Al0.15Asよりなる活性層604
及びp型のGa0. 5 Al0.5 Asよりなる第2光ガイド
層605が順次形成されている。第2光ガイド層605
の上における中央部にはp型のGa0.5 Al0.5 Asよ
りなるストライプ領域606が形成されていると共に第
2光ガイド層605の上における中央部を除く領域には
n型のGa0.35Al0.65Asよりなる電流ブロック層6
07が形成されている。電流ブロック層607の上には
p型のGa0.5 Al0.5 Asよりなる第3光ガイド層6
08がストライプ領域606と一体に形成され、ストラ
イプ領域606及び第3光ガイド層608の上にはp型
のGa0.86Al0.14Asよりなる損失変化層609が形
成され、損失変化層609の上にはp型のGa0.5 Al
0.5 Asよりなる第3光ガイド層610が形成され、第
3光ガイド層610の上にはp型のGaAsよりなるコ
ンタクト層611が形成されている。第7の実施形態に
おいては、損失変化層609の膜厚は、5nm以上で且
つ活性層604の膜厚の5分の1の膜厚に5nmを加え
た膜厚以下に設定されていると共に、第2光ガイド層6
05の膜厚は0.15μm以下に設定されている。
【0145】(第8の実施形態)図18は第8の実施形
態に係る半導体レーザ装置の断面構造を示しており、図
18に示すように、n型のGaAsよりなる半導体基板
701の上に、n型のGaAsよりなるバッファ層70
2、n型のGa0.5 Al0.5 Asよりなる第1光ガイド
層703、Ga0.85Al0.15Asよりなる活性層70
4、p型のGa0.5Al0.5 Asよりなる第2光ガイド
層705及びp型のGa0.8 Al0.2 Asよりなる第3
ガイド層706が順次形成されている。第3光ガイド層
706の上における中央部にはp型のGa0.5 Al0.5
Asよりなるストライプ領域707が形成されていると
共に第3光ガイド層706の上における中央部を除く領
域にはn型のGa0.35Al0.65Asよりなる電流ブロッ
ク層708が形成されている。電流ブロック層708の
上にはp型のGa0.5 Al0.5 Asよりなる第4光ガイ
ド層709がストライプ領域707と一体に形成され、
ストライプ領域707及び第4光ガイド層709の上に
はp型のGa0.86Al0.14Asよりなる損失変化層71
0が形成され、損失変化層710の上にはp型のGa
0.5 Al0.5 Asよりなる第4光ガイド層711が形成
され、第4光ガイド層711の上にはp型のGaAsよ
りなるコンタクト層712が形成されている。第8の実
施形態においては、損失変化層710の膜厚は、5nm
以上で且つ活性層704の膜厚の5分の1の膜厚に5n
mを加えた膜厚以下に設定されていると共に、第2光ガ
イド層705と第3光ガイド層706との合計膜厚は
0.15μm以下に設定されている。
【0146】尚、前記各実施形態においては、n型の半
導体基板を用い、n型の電流ブロック層を形成する場合
のみを示したが、これに代えて、p型の半導体基板を用
い、p型の電流ブロック層を形成してもよい。
【0147】また、前記各実施形態においては、電流ブ
ロック層が活性層よりも上側に位置する場合つまり活性
層から見て電流ブロック層が半導体基板と反対側に位置
する場合のみを示したが、活性層から見て電流ブロック
層が半導体基板と同じ側に位置する場合でも、同じ効果
が得られる。また、電流ブロック層が活性層の上下両側
に設けられるダブルコンファイメント構造にすると、漏
れ電流が少なくなるので、一層の低動作電流化が図れる
ことは言うまでもない。
【0148】また、前記各実施形態において、活性層を
多重量子井戸(MQW)構造にすると、発振しきい値電
流が低減して動作電流値が低減する。
【0149】図19は、第2の実施形態に係る半導体レ
ーザ装置において、780nm帯のレーザ発振をする、
10nmの厚さを持つGa0.95Al0.05Asよりなる3
層のウェル層と4nmの厚さを持つGa0.7 Al0.3
sよりなる4層のバリア層とからなるマルチカンタムウ
ェル(MQW)構造を有する活性層を用いたときの電流
−光出力特性を示している。図19に示すように、活性
層をMQW構造にすると100mW以上の光出力が得ら
れた。
【0150】活性層を多重量子井戸構造にすると、活性
層の持つ微分利得がさらに増大するため、電流−光出力
特性に非線形性を生じさせることなく自励発振が生じる
領域がさらに広くなる。活性層が多重量子井戸構造を有
している場合において、損失変化層が複数層設けられて
いるときには、複数の損失変化層の合計膜厚を活性層の
井戸層の合計膜厚の5分の1の膜厚に5nmを加えた膜
厚以下に設定し、損失変化層が量子井戸構造を有してい
るときには、損失変化層の井戸層の合計膜厚を活性層の
井戸層の合計膜厚の5分の1の膜厚に5nmを加えた膜
厚以下に設定すると、電流−光出力特性において非線形
性が一層生じ難くなる。
【0151】また、活性層としては、シングルカンタム
ウェル(SQW)構造、ダブルカンタムウェル(DQ
W)構造、トリプルカンタムウェル(TQW)構造、グ
リン(GRIN)構造、又はセパレートコンファインメ
ントヘテロストラクチャー(SCH)構造等の他の多重
量子井戸構造を採用することもできる。
【0152】また、再成長を容易にする半導体層、すな
わちAlAs混晶比の小さい半導体層の上に電流ブロッ
ク層を作製すれば、AlAs混晶比の低い半導体層の上
への再成長となるため、再成長界面の酸化を防ぐことが
できるので、界面抵抗の低減につながることは言うまで
もない。
【0153】さらに、前記各実施形態においては、Ga
AlAs系の半導体材料を用いた場合を示したが、他の
材料系、例えば、InP系、InGaAsP系、InG
aP系、InGaAlP系、ZnSe系、ZnCdSS
e系、ZnMgSSe系、GaN系、InGaN系又は
AlGaN系等の化合物半導体材料を用いてもよいこと
は言うまでもない。
【0154】
【発明の効果】本発明に係る半導体レーザ装置による
と、ストライプ領域の下側で且つ活性層の外部に、セル
フパルセーション特性を得るために必要な可飽和吸収領
域を形成することができるため、活性層の構造パラメー
タに依存することなく、容易にセルフパルセーション特
性を有する半導体レーザ装置を高歩留りで作成すること
ができる。
【0155】また、電流ブロック層は活性層により発振
されたレーザ光に対して透明であるため、内部損失の小
さい低動作電流の半導体レーザ装置が得られる。
【0156】高出力動作が可能であり且つセルフパルセ
ーション特性を有する請求項1の発明に係る半導体レー
ザ装置は、書き換え可能な光ディスク用の光源として重
要である。すなわち、セルフパルセーションによりレー
ザ発振時における発振スペクトルが多モード化し、光デ
ィスクからの反射光に影響されない低雑音特性が得られ
るため、従来発振スペクトルをマルチモード化させるた
めに必要であった高周波電流を重畳する回路が不要とな
るので、光ピックアップの大幅な小型化及び低コスト化
を図ることができる。
【0157】
【0158】
【0159】
【0160】
【0161】
【0162】
【0163】
【0164】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る半導体レーザ装
置の断面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る半導体レーザ装
置の電流−光出力特性図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る半導体レーザ装
置の水平拡がり角の光出力依存性図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る半導体レーザ装
置の非点隔差の光出力依存性図である。
【図5】本発明の第2の実施形態に係る半導体レーザ装
置の断面図である。
【図6】本発明の第2の実施形態において、活性層の膜
厚が35nmであるときの発振スペクトル特性の禁制帯
幅波長差Δλ及び損失変化層の膜厚に対する依存性、並
びに電流−光出力特性における非線形性の有無の実験結
果を示す図である。
【図7】半導体レーザ装置における電流−光出力特性の
非線形性を説明する図である。
【図8】半導体レーザ装置において、活性層の膜厚が5
0nmである場合のときの発振スペクトル特性の禁制帯
幅波長差Δλ及び損失変化層の膜厚に対する依存性、並
びに電流−光出力特性における非線形性の有無の実験結
果を示す図である。
【図9】半導体レーザ装置において、活性層の膜厚と、
電流−光出力特性に非線形を生じないための損失変化層
の最大膜厚との関係を示す図である。
【図10】半導体レーザ装置において、内外実効屈折率
差Δnの、第2光ガイド層と光吸収膜との合計膜厚dp
に対する依存性についての計算結果を示す図である。
【図11】(a)は第2の実施形態に係る半導体レーザ
装置の電流−光出力特性を示し、(b)は損失変化層を
有する従来の自励発振型の半導体レーザ装置の電流−光
出力特性を示す図である。
【図12】(a)〜(c)は第1の実施形態に係る半導
体レーザ装置の製造方法の各工程を示す断面図である。
【図13】本発明の第3の実施形態に係る半導体レーザ
装置の断面図である。
【図14】本発明の第4の実施形態に係る半導体レーザ
装置の断面図である。
【図15】本発明の第5の実施形態に係る半導体レーザ
装置の断面図である。
【図16】本発明の第6の実施形態に係る半導体レーザ
装置の断面図である。
【図17】本発明の第7の実施形態に係る半導体レーザ
装置の断面図である。
【図18】本発明の第8の実施形態に係る半導体レーザ
装置の断面図である。
【図19】第2の実施形態に係る半導体レーザ装置にお
いて、マルチカンタムウェル構造を有する活性層を用い
たときの電流−光出力特性を示す図である。
【図20】第1の従来例に係る半導体レーザ装置の断面
図である。
【図21】第2の従来例に係る半導体レーザ装置の断面
図である。
【符号の説明】
1 半導体基板 2 バッファ層 3 クラッド層 4 活性層 5 第1光ガイド層 6 第2光ガイド層 7a ストライプ領域 7 電流ブロック層 8 保護層 9 クラッド層 21 半導体基板 22 第1クラッド層 23 第1可飽和吸収層 24 第2クラッド層 25 活性層 26 第3クラッド層 27 第2可飽和吸収層 28 第4クラッド層 29 キャップ層 30 電流ブロック層 31 コンタクト層 50 コンタクト層 51 半導体基板 52 バッファ層 53 クラッド層 54 活性層 55 第1光ガイド層 55a 損失変化層 56 第2光ガイド層 57 電流ブロック層 57a ストライプ領域 58 第3光ガイド層 59 コンタクト層 101 半導体基板 102 バッファ層 103 第1光ガイド層 104 活性層 105 第2光ガイド層 106 損失変化層 107 ストライプ領域 108 電流ブロック層 109 第3光ガイド層 110 コンタクト層 201 半導体基板 202 バッファ層 203 第1光ガイド層 204 損失変化層 205 第1光ガイド層 206 活性層 207 第2光ガイド層 208 ストライプ領域 209 電流ブロック層 210 第3光ガイド層 211 コンタクト層 301 半導体基板 302 バッファ層 303 第1光ガイド層 304 損失変化層 305 第1光ガイド層 306 活性層 307 第2光ガイド層 308 第3ガイド層 309 ストライプ領域 310 電流ブロック層 311 第4光ガイド層 401 半導体基板 402 バッファ層 403 第1光ガイド層 404 活性層 405 第2光ガイド層 406 損失変化層 407 第2光ガイド層 409 ストライプ領域 410 電流ブロック層 411 第3光ガイド層 412 コンタクト層 501 半導体基板 502 バッファ層 503 第1光ガイド層 504 活性層 505 第2光ガイド層 506 損失変化層 507 第2光ガイド層 508 第3ガイド層 509 ストライプ領域 510 電流ブロック層 511 第4光ガイド層 512 コンタクト層 601 半導体基板 602 バッファ層 603 第1光ガイド層 604 活性層 605 第2光ガイド層 606 ストライプ領域 607 電流ブロック層 608 第3光ガイド層 609 損失変化層 610 第3光ガイド層 611 コンタクト層 701 半導体基板 702 バッファ層 703 第1光ガイド層 704 活性層 705 第2光ガイド層 706 第3ガイド層 707 ストライプ領域 708 電流ブロック層 709 第4光ガイド層 710 損失変化層 711 第4光ガイド層 712 コンタクト層
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 粂 雅博 大阪府高槻市幸町1番1号 松下電子工 業株式会社内 (72)発明者 吉川 昭男 大阪府高槻市幸町1番1号 松下電子工 業株式会社内 (56)参考文献 特開 平2−226780(JP,A) 特開 平6−196801(JP,A) 特開 平7−86676(JP,A) 特開 平6−196810(JP,A) 特開 平9−214058(JP,A) 特表 平10−505960(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H01S 5/00 - 5/50

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 活性層と、前記活性層の上に形成され且
    つ溝を有する、Al x Ga 1-x As(0<x≦1)より
    なる電流ブロック層と、前記ブロック層の溝に形成され
    たクラッド層と、前記活性層と前記電流ブロック層との
    間に前記電流ブロック層下に形成された、Al y Ga 1-y
    As(0<y<1)よりなる半導体層を介して形成され
    た、前記活性層の禁制帯幅以下の禁制帯幅を有する損失
    変化層とを備え、前記電流ブロック層は、前記活性層に
    より発振されたレーザ光に対して透明であり、前記半導
    体層は、前記活性層の禁制帯幅よりも大きく且つ前記電
    流ブロック層の禁制帯幅よりも小さい禁制帯幅を有する
    光ガイド層であることを特徴とする半導体レーザ装置。
JP22813796A 1995-09-05 1996-08-29 半導体レーザ装置 Expired - Fee Related JP3319692B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP22813796A JP3319692B2 (ja) 1995-09-05 1996-08-29 半導体レーザ装置

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP22808095 1995-09-05
JP7-228080 1995-09-05
JP22813796A JP3319692B2 (ja) 1995-09-05 1996-08-29 半導体レーザ装置

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPH09135052A JPH09135052A (ja) 1997-05-20
JP3319692B2 true JP3319692B2 (ja) 2002-09-03

Family

ID=26528035

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP22813796A Expired - Fee Related JP3319692B2 (ja) 1995-09-05 1996-08-29 半導体レーザ装置

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP3319692B2 (ja)

Families Citing this family (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2001284708A (ja) * 2000-01-24 2001-10-12 Matsushita Electric Ind Co Ltd 半導体レーザ装置

Also Published As

Publication number Publication date
JPH09135052A (ja) 1997-05-20

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US5974068A (en) Semiconductor laser and a method for producing the same
US5383214A (en) Semiconductor laser and a method for producing the same
US5608752A (en) Semiconductor laser device and method of designing the same
JP3468612B2 (ja) 半導体レーザ装置
US5751756A (en) Semiconductor laser device for use as a light source of an optical disk or the like
JP4077348B2 (ja) 半導体レーザ装置およびそれを用いた光ピックアップ装置
JP3319692B2 (ja) 半導体レーザ装置
US20040264532A1 (en) Semiconductor laser diode with higher-order mode absorption layers
JPH10144991A (ja) 半導体レーザー
JP2842465B2 (ja) 半導体レーザ装置およびその製造方法
JP3236208B2 (ja) 半導体レーザ装置および光ピックアップ装置
JP3998492B2 (ja) 半導体レーザ素子
JP3505379B2 (ja) 半導体レーザ素子
JP3341425B2 (ja) 半導体レーザ
JPH08316563A (ja) 半導体レーザ装置
JP3785429B2 (ja) 半導体レーザー素子及びその製造方法
JP3503715B2 (ja) 半導体レーザ素子
JP4067289B2 (ja) 半導体レーザ素子
JPH09270563A (ja) 半導体レーザ素子およびその製造方法
JP3710313B2 (ja) 半導体レーザ素子
JPH098414A (ja) 半導体レーザ装置及びその製造方法
JPS59172287A (ja) 半導体レ−ザ素子
JP3008830B2 (ja) 半導体レーザ
JP3194237B2 (ja) 半導体レーザ装置およびその製造方法
JPH11214792A (ja) 半導体レーザ

Legal Events

Date Code Title Description
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20020604

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20080621

Year of fee payment: 6

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20090621

Year of fee payment: 7

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20100621

Year of fee payment: 8

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20100621

Year of fee payment: 8

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110621

Year of fee payment: 9

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120621

Year of fee payment: 10

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120621

Year of fee payment: 10

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130621

Year of fee payment: 11

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees