JP3319139B2 - 生理状態判定方法及び装置 - Google Patents

生理状態判定方法及び装置

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JP3319139B2
JP3319139B2 JP07353394A JP7353394A JP3319139B2 JP 3319139 B2 JP3319139 B2 JP 3319139B2 JP 07353394 A JP07353394 A JP 07353394A JP 7353394 A JP7353394 A JP 7353394A JP 3319139 B2 JP3319139 B2 JP 3319139B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は生理状態判定方法及び装
置に関し、特に心電図のR波(心室の収縮に対応する電
位変化、周波数とも高く検出が容易な電圧パルス)によ
る生理状態判定方法及び装置に関するものである。尚、
本発明は当然、心電図のR波の代用として脈波、心音の
ピーク値等、心拍間隔を抽出し得るデータを用いる場合
にも適用可能なものである。
【0002】心拍のR波間隔より生成した心拍変動波形
の周波数解析を行うことにより、心拍変動性指標(以
下、HRVと略称することがある)と呼ばれる指標を得
ることができる。
【0003】このHRVは、交感・副交感神経系の活動
水準を反映しており、その周波数成分中の低周波(L
F)成分(又はMWSA成分と呼ばれる0.05〜0.15サイ
クル/ビートの周波数成分)、高周波(HF)成分(又
はRSA成分と呼ばれる0.15〜0.45サイクル/ビートの
周波数成分)のピークパワー値等を検討することで精神
的作業負荷、心的作業負荷、覚醒度、緊張度の定量化が
行える可能性が示唆されており、医学的に検討価値の高
い指標として知られている。
【0004】即ち、LF成分とは交換神経系を反映する
血圧変動性の成分が低周波であることから重要となって
いる成分であり、そのパワーは精神的緊張の増大、起立
性の刺激(姿勢の変化)などにより増大するものとして
認識されている。また、HF成分とは呼吸変動性の成分
が高周波であることから称されるものであり、安静状態
や睡眠中に高い値を示し緊張度の増大により消失傾向に
向かうことが知られているものである。
【0005】従って、被験者が安静状態に有るか否か、
言い換えれば覚醒度が低下しているか否かを判定できる
指標HRVにおけるHF成分を正確に判定することが期
待されている。
【0006】
【従来の技術】この様な指標HRVを求めるための従来
の方法及び装置について以下に説明する。
【0007】先ず、図12に示すように人体20に生体
用電極21〜23を張り付け、人体20の心臓活動に対
応する皮膚表面の電位を交流アンプ24により電極21
と23及び電極22と23の差電圧を求めて増幅し、出
力信号A,BとしてそれぞれA/D変換器25に送り、
ここでディジタル信号に変換した後、それぞれ演算部2
6に与えることにより、出力信号A−B間の電位差を心
電図として記録する。
【0008】この様な心電図のR波が図13(1)に示
されており、演算部26は、R波ピーク時点を検出し、
同図(2)に示すようにR波ピーク時点からR−R間隔
(以下、RRIと略称する)を計測する。例えば、同図
(1)に示すようにR波のピーク間隔RRI1が0.8
秒であれば、同図(2)に示すようにその間隔RRI1
を「0.8」とする。
【0009】なお、以下、このRRI波形は後述する種
々の処理を施した心拍変動波形と区別するため、原心拍
変動波形と称する。
【0010】図14には、このようなRRIデータを用
いて分散を求めることによりHRVの代用指標を算出す
るという従来例(例えば特開平3-272745号公報)の原理
が示されており、この分散を求める場合、同図(1)の
如くRRIデータを集めた波形(図13(2)に対応す
るもの)において拍数のサンプル点が多いと、分散が平
均値からの差の二乗和で表されるためRRIの変動の平
均値(図ではRRIのオーバーラインとして示されてい
るが、本明細書中では*RRIとして示す)に低周波の
変動の影響が入り込み、ひいては分散結果にも混入して
しまう。
【0011】これに対して、サンプル数が少ない場合、
RRI波形の変動の平均値*RRIが低周波の変動の影
響を受け難くなるため、図14(2)に示す例では、3
拍(点)づつサンプルして、平均値*RRIを求めてい
る。更に、8拍サンプルの場合も示されている。
【0012】この結果、同図(3)に示すように、あた
かもハイ・パス・フィルタを通した波形の分散を求めた
ものと同じ結果になることが示されている。
【0013】そして、このような分散を求めた後、HR
VのHF成分及びLF成分に相当する数値的指標を算出
することができる。
【0014】この数値的指標を用いれば、FFT等複雑
な計算を要することなく、HRVを高い時間追従性で算
出することができるため、例えば運転者の覚醒度等をモ
ニターし、覚醒度低下等を警告する装置を構成すること
ができる。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、実際に
観測される原心拍変動波形は、図14に示したような単
純な波形ではなく非定常成分等を多分に含むため、同図
(3)に示すようなハイ・パス・フィルタを通した波形
の分散に相当する値が得られるとは限らない。
【0016】即ち、図15(1)に示すようなHF成分
を多く含む波形の3点R1〜R3をサンプルしたときの
分散RRV31と、同図(2)に示すような線形的変動
が大きい全く異なった波形(これは例えば急激に心拍が
下がった状態を示す波形)の3点L1〜L3をサンプル
したときの分散RRV32とを比較すると、後者の方に
はHF成分が無いにも関わらず前者より後者の方が大き
くなってしまう。
【0017】図16には、図15に示した波形とこれか
ら求めた分散曲線とがシミュレーションによって示され
ており、図15(1)に対応するRRI波形部分Vaの
分散はある程度大きな分散を示すが、同図(2)に対応
するRRI波形部分Vb〜Vdのそれぞれの分散は極め
て大きくなっていることが分かる。
【0018】また、図17には、上記の従来例を用いた
HRVのHF成分代用指標を覚醒時と覚醒度が低下した
時に求めた実験結果が脳波α波と併せて示されており、
同図(2)に顕著に示すようにα波が小さな緊張時でも
HF成分が大きく覚醒度が低いと判定せざるを得ない結
果が得られる。
【0019】このように従来例による手法、即ちHF成
分の代用指標を少数のデータから算出した分散を基準に
算出する方法・装置を実車実路条件での心拍データにあ
てはめた場合、その変化は被験者の生理状態変化と対応
せず、ほとんどランダムな変化を示すという問題点があ
った。
【0020】従って本発明は、心拍の間隔から生成した
原心拍変動波形により被験者の生理状態を判定する方法
及び装置において、心拍変動波形中の高周波(HF)
成分を正確に表すHRV代用指標を求めることを目的と
する。
【0021】
【課題を解決するための手段及び作用】〔1〕本発明方
法(その1):図1乃至図3 上記の目的を達成するため、本発明に係る生理状態判定
方法によれば、図1に原理的に示すように、同図(1)
に示す原心拍変動波形(以下、RRI波形と称すること
がある)から同図(2)に示す相対変位心拍変動波形
(以下、RRI’波形と称することがある)を生成し、
該相対変位心拍変動波形の一定区間を切り出して求めた
所定データ数分の分散と該原心拍変動波形の所定点サン
プルにより求めた平均値から推定した同図(3)に示す
1/fゆらぎ成分波形の一定区間を切り出して求めた
定データ数分の分散との比を該原心拍変動波形中の高周
波成分の代用指標として被験者の生理状態を判定するこ
とを特徴としたものである。
【0022】即ち、本発明では、RRI’波形の分散を
用いることによりハイ・パス・フィルタ効果を生じさ
せ、ロー・パス・フィルタ効果により1/fゆらぎ成分
波形の分散を算出し、これらの比を取ることにより全体
として精度の高い原心拍変動波形中に含まれるHF成分
の代用値を求めている。
【0023】これをより具体的に説明すると、図2に示
すように、従来例の如くRRI波形から単純に分散をと
るのではなく、RRI波形から更に隣接するRRI値同
士の差分を波形データ(RRI(i)−RRI(i-1))とす
るRRI’波形から分散を求める。
【0024】これを数式で表すと、次式のようになる。
【0025】
【数1】
【0026】このRRI’波形における分散を算出する
ためのデータn番目の値RRI(n)から始まる所定区間
(データ数)lが図2(1)に示されている。なお、h
はこの算出区間からの遅れを示している。
【0027】また、これとは別に、RRI波形から1/
fゆらぎ成分波形を求め、さらにこの1/fゆらぎ成分
波形の分散を次式のように求める。
【0028】
【数2】
【0029】この1/fゆらぎ成分波形における分散を
算出するための所定区間(データ数)mが図2(2)に
示されており、hは0≦h≦m−lの範囲で任意に設定
される。
【0030】なお、式(2)における1/f(n) は、時
系列データRRIに、{(RRI(n+1)+RRI(n)+R
RI(n-1)}/3の平滑化処理をR回施した値の時系列
データであり、ロー・パス・フィルタを通した状態と同
等の作用を呈する。
【0031】また、RRI’波形は、RRI波形から1
/fゆらぎ成分波形を引いた成分で示すこともできる。
【0032】このようにして求めた上記の式(1)及び
(2)より本発明が目的とする原心拍変動波形RRI波
形中のHF成分の比率を示すn番目の代用指標IRRV
(n)が次式のように求められる。
【0033】
【数3】
【0034】このようにして、図2(1)に示すような
RRI’波形の分散と同図(2)に示すような1/fゆ
らぎ成分波形の分散との比により、RRI’波形中に含
まれるHF成分の比率を求め、このHF成分が高ければ
安静度が高いと見做すことができる。
【0035】上記の式(3)においては、RRI’波形
の分散を求める際、1/fゆらぎ成分波形の分散算出期
間の任意の部分において設定されているが、これに限ら
ず、次式に示すように1/fゆらぎ成分波形の分散算出
区間中において、RRI’波形の分散を順次求め且つ積
分してもよい。
【0036】
【数4】
【0037】図3は、上記の式(4)を説明するための
図であり、同図(1)に示すように分散算出区間lの位
置を示すiを「1〜n」の範囲でlつづつ増加させ、区
間l毎に分散を求めて積分する場合と、同図(2)に示
すようにiを、「1〜n」の範囲で「a」づつ増加させ
て積分してもよく、ここでaは「1〜l」の範囲で任意
の値をとるものである。
【0038】〔2〕本発明方法(その2):図4 本発明の原理は、まず図4(1)に示すように、3点の
分散を求める場合、同図(a) に示すようにHF成分を含
む波形でも同図(b) に示すようにHF成分を含まない線
形的変動の大きい波形でもその分散は平均値からの差の
二乗によって算出されるため、共に大きな値を取ること
となる。
【0039】ここで、分散を算出した区間の両端のデー
タA,Cを考えると、同図(2)(a) に示すようにHF
成分が大きい波形ではその差が小さく、HF成分の無い
線形的変動の大きい波形では両端の差が大きいことが分
かる。
【0040】そこで、同図(1)の場合について分散を
求めた区間の両端区間の値を用いて分散を求めると、そ
の値は波形に含まれる線形的変動の大きさを簡易的に求
めることができることとなる。
【0041】従って本発明では、RRI波形から求めた
所定データ区間の分散と該RRI波形から求めた該所定
データ区間の両端の分散との差を該原心拍変動波形中の
高周波成分の代用指標として被験者の生理状態を判定す
ることを特徴としている。
【0042】この関係を式で表すと、次式のようにな
る。
【0043】
【数5】
【0044】この場合、上記の差の代わりに両者の比を
用いてもよく、この場合には次式のようになる。
【0045】
【数6】
【0046】なお、分散を用いることなく、区間pでの
平均値と区間pの両端の平均値の比又は差により、予め
求めた区間pでの分散を補正してもよい。
【0047】〔3〕本発明方法(その3):図5 本発明では、RRI波形の3点のデータを結んだ三角形
の面積を求め、該面積を該心拍変動波形中の高周波成分
の代用指標として被験者の生理状態を判定することを特
徴としたものである。
【0048】即ち、HF成分が大きい図5(2)に示す
ような波形では面積は大きくなり、逆にHF成分が小さ
い同図(3)に示すような波形では面積は小さくなる。
【0049】そこで、次式に従ってHF成分の代用指標
を求める。
【0050】
【数7】
【0051】但し、この式(7)の適用範囲は|A|<
|B|<|C|、または|A|>|B|>|C|が成立
しない場合、即ち|B|が|A|,|B|,|C|の内
で最大値となるときである。
【0052】同図(4)に示すように|B|が最大値で
ない場合には、次式に従ったHF成分の代用指標とな
る。
【0053】
【数8】
【0054】従って、まず|B|が最大値であるか否か
を判定し、そうであれば式(7)を用い、そうでなけれ
ば式(8)を用いることでHRVのHF成分振幅に比例
したIRRV値が得られる。
【0055】〔4〕本発明装置(その1): 上記の本発明方法(その1)を実現する本発明に係る生
体状態判定装置としては、心拍ピックアップと、該ピッ
クアップの出力信号を所定の周波数帯域について増幅す
る増幅器と、該増幅器の出力信号をディジタル信号に変
換するA/D変換器と、該ディジタル信号による心拍
よって生じたR波のピーク点間隔を計測して補間するこ
とにより原心拍変動波形を生成すると共に該原心拍変動
波形の隣接するピーク点の間隔差を求めて補間した相対
変位心拍変動波形の一定区間を切り出して求めた所定デ
ータ数分の分散と該原心拍変動波形の所定点サンプルに
より求めた平均値から推定した1/fゆらぎ成分波形の
一定区間を切り出して求めた所定データ数分の分散との
比に基づいて該原心拍変動波形中の高周波成分の代用指
標を生成する演算部と、を備えている。
【0056】この場合、演算部は、該ディジタル信号に
よるR波の間隔を求めて補間した原心拍変動波形を生成
する波形生成部と、該原心拍変動波形の隣接するピーク
点の間隔差を求めて補間した相対変位心拍変動波形を得
るためのハイ・パス・フィルタと、該原心拍変動波形
所定点サンプルにより求めた平均値から推定した1/f
ゆらぎ成分波形を得るためのロー・パス・フィルタと、
それぞれのフィルタの出力信号の振幅値を生成するため
の第1及び第2の整流器と、それぞれのフィルタの出力
信号とそれぞれの整流器の出力信号とから所定データ数
分の分散の代用値を生成するための第1及び第2の積分
器と、各積分器に各所定データ数を与えるための時間計
測器と、各積分器の出力信号の比を該原心拍変動波形中
の高周波成分の代用指標として生成する割り算器と、で
構成することができる。
【0057】また、上記のハイ・パス・フィルタの代わ
りに、該原心拍変動波形から該ロー・パス・フィルタの
出力信号を減算して相対変位心拍変動波形を得るための
減算器を用いてもよい。
【0058】更に上記の演算部は、該相対変位心拍変動
波形として、該原心拍変動波形から1/fゆらぎ成分を
引いた成分で示すことができる。
【0059】〔5〕本発明装置(その2): 本発明方法(その2)を実現する本発明に係る生体状態
判定装置では、心拍ピックアップと、該ピックアップの
出力信号を所定の周波数帯域について増幅する増幅器
と、該増幅器の出力信号をディジタル信号に変換するA
/D変換器と、該ディジタル信号による心拍によって生
じたR波のピーク点間隔を計測して補間することにより
原心拍変動波形を生成すると共に該原心拍変動波形の一
定区間を切り出して求めた所定データ数分の分散と該原
心拍変動波形から求めた該一定区間の両端区間所定デ
ータ数分の分散の和との差を該原心拍変動波形中の高周
波成分の代用指標として生成する演算部と、を備えてい
る。
【0060】上記の演算部は、該差の代わりに両者の比
を用いることができる。
【0061】〔6〕本発明装置(その3):本発明方法
(その3)を実現する本発明に係る生体状態判定装置で
は、心拍ピックアップと、該ピックアップの出力信号を
所定の周波数帯域について増幅する増幅器と、該増幅器
の出力信号をディジタル信号に変換するA/D変換器
と、該ディジタル信号によるR波の間隔を求めて原心拍
変動波形を生成すると共に該原心拍変動波形の3点のデ
ータを結んだ三角形の面積を求め、該面積を該原心拍変
動波形中の高周波成分の代用指標として生成する演算
部、とを備えている。
【0062】
【実施例】図は本発明に係る生理状態判定装置の共通
の一実施例を示したもので、基本的には図12に示した
装置構成と同様に、交流アンプ部24とA/D変換部2
5と演算部26とで構成されており、交流アンプ部24
の入力信号は図示していないが図12と同様に人体に張
り付けた生体用電極から得ている。
【0063】そしてこの実施例では、交流アンプ部24
を作動入力アンプ1とバンドパスフィルタ2との直列回
路で構成しており、バンドパスフィルタ2はR波のみを
抽出するために8〜18Hzの通過帯域に設定されてい
る。
【0064】また、A/D変換部25はバンドパスフィ
ルタ2に接続されたアンプ3とサンプルホールド回路4
とA/D変換器5とバッファメモリ6との直列回路で構
成されている。
【0065】更に、演算部26はバッファメモリ6に接
続されたデータバス7に相互接続されたRAM8と演算
アルゴリズム用ROM9とCPU10とこれらRAM8
及びCPU10と接続されてCPU10を経由せずにR
AM8にデータを格納させる為のDMAコントローラ1
1と、CPU10及びDMAコントローラ11に一定の
クロック信号を与えるための水晶発振回路12とで構成
されている。
【0066】尚、A/D変換部25には水晶発振回路1
2からのクロック信号を分周してA/D変換器5に与え
るための分周器13が設けられており、DMAコントロ
ーラ11はサンプルホールド回路4及びA/D変換器5
をも制御するようになっている。
【0067】図7は図6に示したCPU10における演
算処理手順であって上記の本発明方法・装置(その1)
に対応した実施例を示したもので、以下、この図7を参
照して図6の実施例の動作を説明する。
【0068】まず、心電図のR波、脈波、心音のピーク
値等の心拍間隔を検出する心拍ピックアップからの出力
信号は交流アンプ部24において差動入力アンプ1で増
幅されると共にバンドパスフィルタ2でR波のみが取り
出される。
【0069】このR波はA/D変換部25においてアン
プ3で増幅された後、DMAコントローラ11の制御下
のサンプルホールド回路4によりサンプルホールドされ
てA/D変換器5によりディジタル信号に変換され、バ
ッファメモリ6からデータバス7を介してCPU10に
取り込まれる。
【0070】CPU10では処理を開始するとR波形デ
ータを読み込み(ステップS1)、そのR波時刻を検出
する(ステップS2)。
【0071】この様にして求めたR波時刻より図1
(1)に示すような原心拍変動波形(RRI波形)を算
出する(ステップS3)。
【0072】この様にR波間隔を抽出した後、今度は隣
接したRRI同士の差RRI(n)−RRI(n-1) を演算
して(ステップS4)、図1(2),図2(1),図3
(1)に示す相対心拍変位変動波形(RRI’波形)を
生成する(ステップS4)。
【0073】この様に変換される前後のデータをそれぞ
れRRI(n) 及びRRI'(n)とすると、これらのデータ
RRI(n) 及びRRI'(n)をRAM8に格納しておく
(ステップS5)。
【0074】そして、CPU10はRAM8からデータ
RRI(n) を読み出して1/f(n)を算出する(ステッ
プS6)。これは、上述した通り時系列データRRI
(n) に、{(RRI(n+1)+RRI(n)+RRI(n-1)}/
3の平均化処理をR回施した値の時系列データであり、
ロー・パス・フィルタを通した状態と同等の作用を呈す
る。
【0075】このようにして求めたデータ1/f(n) は
やはりRAM8に格納する(ステップS7)。
【0076】そしてまた、CPU10はRAM8よりデ
ータRRI'(n)及び1/f(n) を読み出して上記の式
(1)及び(2)における分散V(RRI'(n))及びV(1/f
(n))を算出する(ステップS8)。
【0077】そして最後に、分散V(RRI'(n))及びV(1/
f(n))の比IRRVをHRVにおけるHF成分の代用指
標として算出する(ステップS9)。
【0078】上記の実施例では、CPU10によるソフ
トウェア処理によりHF成分の代用指標を算出している
が、RAM8、ROM9、CPU10、及びDMAコン
トローラ11の代わりに図8に示すようなハードウェア
構成を用いても実現することができる。
【0079】即ち、演算部26は、A/D変換器5から
のディジタル信号による心拍の間隔を求めて原心拍変動
波形を生成する波形生成部31と、該原心拍変動波形か
ら相対変位心拍変動波形を得るためのハイ・パス・フィ
ルタ(HPF)32と、該原心拍変動波形から1/fゆ
らぎ成分波形を得るためのロー・パス・フィルタ(LP
F)33と、それぞれのフィルタ32,33の出力信号
の振幅値を生成するための第1及び第2の整流器34,
35と、それぞれのフィルタ32,33の出力信号とそ
れぞれの整流器34,35の出力信号とから所定データ
数分の分散の代用値を生成するための第1及び第2の積
分器36,37と、各積分器36,37に各所定データ
数を与えるための時間計測器38と、各積分器38の出
力信号の比を該原心拍変動波形中の高周波成分の代用指
標として生成する割り算器39と、で構成することがで
きる。
【0080】この場合、RRI波形はフィルタ32でR
RI’波形となり、整流器34と積分器36とで式
(1)の分散を求めることに相当している。
【0081】また、RRI波形はフィルタ33で1/f
ゆらぎ成分波形となり、整流器35と積分器37とで式
(2)の分散を求めることに相当している。
【0082】更には、上記のハイ・パス・フィルタ32
の代わりに、RRI波形から該ロー・パス・フィルタ3
3の出力信号を減算してRRI’波形を得るための減算
器32’を用いてもよい。
【0083】図9は図6に示したCPU10における演
算処理手順であって上記の本発明方法・装置(その2)
に対応した実施例を示したもので、以下、この図9の処
理手順を説明する。
【0084】まずステップS1〜S3は図7に示した処
理手順と同じものである。
【0085】次にステップS11では、図4(1)に示
した区間pでの分散RRVPを算出する。
【0086】またステップS12では、図4(2)に示
した区間pの両端の分散RRVEを算出する。
【0087】ステップS13では、このようにして求め
られた分散RRVPとRRVEとの比に定数aを掛ける
ことにより式(6)によって示されるHF成分の代用指
標IRRVが得られる。
【0088】図10は図6に示したCPU10における
演算処理手順であって上記の本発明方法・装置(その
3)に対応した実施例を示したもので、以下、この図1
0の処理手順を説明する。
【0089】まずステップS1〜S3は図7に示した処
理手順と同じものである。
【0090】求められたデータRRI(n) をRAM8に
格納しておく(ステップS21)。
【0091】そして、RRI波形のサンプル点位置を示
すパラメータiの初期値を“1”に設定した後(ステッ
プS22)、パラメータi>nになるまでは処理を繰り
返すために(ステップS23)、ステップS24におい
て3点のiのデータRRI(n) をAM8から読み出
【0092】そして、RRI(i+1)≧RRI(i)且つRR
I(i+1)≧RRI(i+2)であるか否かを判定する(ステッ
プS25)。
【0093】これはサンプル点i+1が図5(1)〜
(3)に該当するのか、或いは同図(4)に該当するの
かを判定しており、この結果、前者の場合(B点が最大
値の場合)にはステップS26に進んで式(7)の演算
を実行し、後者の場合(A点又はC点が最大値の場合)
にはステップS27に進んで式(8)の演算を実行す
る。
【0094】これらのHF成分代用指標としての演算結
果IRRV1又はIRRV2はRAM8に格納される
(ステップS28)と共に、ステップS29でパラメー
タiを「2」だけインクリメントしてステップS23で
i>nとなるまで繰り返し、i>nとなった時点で処理
を終了する。
【0095】なお、本発明の応用例としては、RRI’
波形の正又は負の値にのみ本発明の構成を適用されるこ
ともでき、これにより心拍下降傾向(正の場合)や心拍
上昇傾向(負の場合)の変化を誇張して検出することが
可能である。
【0096】
【発明の効果】以上説明したように、本発明に係る生理
状態判定方法及び装置によれば、心拍の間隔から生成し
た原心拍変動波形から生成した相対変位心拍変動波形か
ら求めた分散と該原心拍変動波形から推定した1/fゆ
らぎ成分波形の分散との比、または該原心拍変動波形か
ら求めた分散と該原心拍変動波形から求めた同じ区間の
両端の分散との差、あるいは該原心拍変動波形の3点の
データを結んだ三角形の面積、を該原心拍変動波形中の
高周波成分の代用指標として被験者の生理状態を判定す
るように構成したので、原心拍変動波形から単に少デー
タサンプルによる分散を求める従来例に比べて遙かに正
確なHRVのHF成分の代用指標を与えることができ
る。
【0097】図11は図17の従来例に対応して得られ
た本発明の特性グラフであり、これによれば、脳波α波
の上昇によって覚醒度の低下が示されている状態では、
本発明の出力値も上昇しており、本発明の出力値により
覚醒度の低下を検知できることを確認することができ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る生理状態判定方法及び装置(その
1)を原理的に説明するための波形図である。
【図2】本発明に係る生理状態判定方法及び装置(その
1)において分散を求める区間を説明するためのグラフ
図(その1)である。
【図3】本発明に係る生理状態判定方法及び装置(その
1)において分散を求める区間を説明するためのグラフ
図(その2)である。
【図4】本発明に係る生理状態判定方法及び装置(その
2)を原理的に説明するための波形図である。
【図5】本発明に係る生理状態判定方法及び装置(その
3)を原理的に説明するための波形図である。
【図6】本発明に係る生理状態判定装置に共通な実施例
を示したブロック図である。
【図7】本発明に係る生理状態判定方法及び装置(その
1)の演算部における演算処理例を示したフローチャー
ト図である。
【図8】本発明に係る生理状態判定装置(その1)の演
算部の実施例を示したブロック図である。
【図9】本発明に係る生理状態判定方法及び装置(その
2)の演算部における演算処理例を示したフローチャー
ト図である。
【図10】本発明に係る生理状態判定方法及び装置(そ
の3)の演算部における演算処理例を示したフローチャ
ート図である。
【図11】本発明による覚醒時と覚醒低下時のHF成分
代用値特性を示したグラフ図である。
【図12】一般的な生理状態判定装置としての測定系を
示したブロック図である。
【図13】従来の心拍変動波形生成手順を示した波形図
である。
【図14】従来例の原理を説明するためのグラフ図であ
る。
【図15】従来例の問題点を説明するための原心拍変動
波形の拡大図である。
【図16】従来例の問題点を説明するための原心拍変動
波形及び分散値を示したグラフ図である。
【図17】従来例による覚醒時と覚醒低下時のHF成分
特性代用値を示したグラフ図である。
【符号の説明】
20 人体 21〜23 生体用電極 24 交流アンプ 25 AD変換部 26 演算部 8 RAM 9 ROM 10 CPU 31 原心拍変動波形生成部 32 ハイ・パス・フィルタ 33 ロー・パス・フィルタ 34,35 整流器 36,37 積分器 38 時計計測器 39 割り算器 図中、同一符号は同一または相当部分を示す。
フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) A61B 5/0452 - 5/0476 A61B 5/18

Claims (14)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 心拍によって生じたR波のピーク点間隔
    を計測して補間した原心拍変動波形により被験者の生理
    状態を判定する方法において、 該原心拍変動波形の隣接するピーク点の間隔差を求めて
    補間した相対変位心拍変動波形を生成し、該相対変位心
    拍変動波形の一定区間を切り出して求めた所定データ数
    分の分散と該原心拍変動波形の所定点サンプルにより求
    めた平均値から推定した1/fゆらぎ成分波形の一定区
    間を切り出して求めた所定データ数分の分散との比を該
    原心拍変動波形中の高周波成分の代用指標として被験者
    の生理状態を判定することを特徴とした方法。
  2. 【請求項2】 該相対変位心拍変動波形が、該原心拍変
    動波形から1/fゆらぎ成分波形を引いた成分で示され
    ることを特徴とした請求項1に記載の生理状態判定方
    法。
  3. 【請求項3】 該相対変位心拍変動波形に対する該一定
    区間が、該1/fゆらぎ成分波形に対する該一定区間に
    含まれることを特徴とした請求項1又は2に記載の生理
    状態判定方法。
  4. 【請求項4】 該相対変位心拍変動波形に対する該所定
    データ数分の分散が該1/fゆらぎ成分波形に対する該
    一定区間だけ積分されることを特徴とした請求項に記
    載の生理状態判定方法。
  5. 【請求項5】 心拍によって生じたR波のピーク点間隔
    を計測して補間した原心拍変動波形により被験者の生理
    状態を判定する方法において、 該原心拍変動波形の一定区間を切り出して求めた所定デ
    ータ数分の分散と該原心拍変動波形の一定区間の両端
    区間の分散の和との差を該原心拍変動波形中の高周波
    成分の代用指標として被験者の生理状態を判定すること
    を特徴とした生理状態判定方法。
  6. 【請求項6】 該差の代わりに両者の比を用いることを
    特徴とした請求項5に記載の生理状態判定方法。
  7. 【請求項7】 心拍の間隔から生成した原心拍変動波形
    により被験者の生理状態を判定する方法において、 該原心拍変動波形の3点のデータを結んだ三角形の面積
    を求め、該面積を該原心拍変動波形中の高周波成分の代
    用指標として被験者の生理状態を判定することを特徴と
    した生理状態判定方法。
  8. 【請求項8】 心拍ピックアップと、該ピックアップの
    出力信号を所定の周波数帯域について増幅する増幅器
    と、該増幅器の出力信号をディジタル信号に変換するA
    /D変換器と、該ディジタル信号による心拍によって生
    じたR波のピーク点間隔を計測して補間することにより
    原心拍変動波形を生成すると共に該原心拍変動波形の隣
    接するピーク点の間隔差を求めて補間した相対変位心拍
    変動波形の一定区間を切り出して求めた所定データ数分
    の分散と該原心拍変動波形の所定点サンプルにより求め
    た平均値から推定した1/fゆらぎ成分波形の一定区間
    を切り出して求めた所定データ数分の分散との比に基づ
    いて該原心拍変動波形中の高周波成分の代用指標を生成
    する演算部と、を備えたことを特徴とする生理状態判定
    装置。
  9. 【請求項9】 該演算部が、該ディジタル信号による心
    によって生じたR波のピーク点間隔を計測して補間す
    ることにより原心拍変動波形を生成する波形生成部と、
    該原心拍変動波形の隣接するピーク点の間隔差を求めて
    補間した相対変位心拍変動波形を得るためのハイ・パス
    ・フィルタと、該原心拍変動波形の所定点サンプルによ
    り求めた平均値から推定した1/fゆらぎ成分波形を得
    るためのロー・パス・フィルタと、それぞれのフィルタ
    の出力信号の振幅値を生成するための第1及び第2の整
    流器と、それぞれのフィルタの出力信号とそれぞれの整
    流器の出力信号とから所定データ数分の分散の代用値を
    生成するための第1及び第2の積分器と、各積分器に各
    所定データ数を与えるための時間計測器と、各積分器の
    出力信号の比を該原心拍変動波形中の高周波成分の代用
    指標として生成する割り算器と、で構成されていること
    を特徴とした請求項に記載の生理状態判定装置。
  10. 【請求項10】該ハイ・パス・フィルタの代わりに、該
    原心拍変動波形から該ロー・パス・フィルタの出力信号
    を減算して相対変位心拍変動波形を得るための減算器を
    用いることを特徴とした請求項9に記載の生理状態判定
    装置。
  11. 【請求項11】該演算部が、該相対変位心拍変動波形と
    して、該原心拍変動波形から1/fゆらぎ成分波形を引
    いた成分で示すことを特徴とした請求項8に記載の生理
    状態判定装置。
  12. 【請求項12】心拍ピックアップと、該ピックアップの
    出力信号を所定の周波数帯域について増幅する増幅器
    と、該増幅器の出力信号をディジタル信号に変換するA
    /D変換器と、該ディジタル信号による心拍によって生
    じたR波のピーク点間隔を計測して補間することにより
    原心拍変動波形を生成すると共に該原心拍変動波形の一
    定区間を切り出して求めた所定データ数分の分散と該原
    心拍変動波形から求めた該一定区間の両端区間所定デ
    ータ数分の分散の和との差を該原心拍変動波形中の高周
    波成分の代用指標として生成する演算部と、を備えたこ
    とを特徴とする生理状態判定装置。
  13. 【請求項13】該演算部が、該差の代わりに両者の比を
    用いることを特徴とした請求項12に記載の生理状態判
    定装置。
  14. 【請求項14】心拍ピックアップと、該ピックアップの
    出力信号を所定の周波数帯域について増幅する増幅器
    と、該増幅器の出力信号をディジタル信号に変換するA
    /D変換器と、該ディジタル信号によるR波の間隔を求
    めて原心拍変動波形を生成すると共に該原心拍変動波形
    の3点のデータを結んだ三角形の面積を求め、該面積を
    該原心拍変動波形中の高周波成分の代用指標として生成
    する演算部、とを備えたことを特徴とする生理状態判定
    装置。
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