JP3314521B2 - 心拍変動波形解析方法及び装置 - Google Patents

心拍変動波形解析方法及び装置

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は心拍変動波形解析方法及
び装置に関し、特に心電図のR波(心室の収縮に対応す
る電位変化、周波数とも高く検出が容易な電圧パルス)
による心拍変動波形解析方法及び装置に関するものであ
る。なお、本発明は当然、心電図のR波の代用として脈
波、心音のピーク値等、心拍間隔を抽出し得るデータを
用いる場合にも適用可能なものである。
【0002】心拍のR波間隔より生成した心拍変動波形
の解析を行うことにより、心拍変動性指標(以下、HR
Vと略称することがある)と呼ばれる指標を得ることが
できる。
【0003】このHRVは、交感・副交感神経系の活動
水準を反映しており、その周波数成分中の低周波(L
F)成分(又はMWSA成分と呼ばれる0.05〜0.15サイ
クル/ビートの周波数成分)、高周波(HF)成分(又
はRSA成分と呼ばれる0.15〜0.45サイクル/ビートの
周波数成分)のピークパワー値等を検討することで精神
的作業負荷、心的作業負荷、覚醒度、緊張度の定量化が
行える可能性が示唆されており、医学的に検討価値の高
い指標として知られている。
【0004】即ち、LF成分とは交換神経系を反映する
血圧変動性の成分が低周波であることから重要となって
いる成分であり、そのパワーは精神的緊張の増大、起立
性の刺激(姿勢の変化)などにより増大するものとして
認識されている。また、HF成分とは呼吸変動性の成分
が高周波であることからこのように称されるものであ
り、安静状態や睡眠中に高い値を示し緊張度の増大によ
り消失傾向に向かうことが知られているものである。
【0005】従って、被験者が安静状態に有るか否か、
言い換えれば覚醒度が低下しているか否かを容易に判定
できるHRV指標が望まれている。
【0006】
【従来の技術】この様なHRVに利用されるパワースペ
クトル(又は周波数成分)値を求めるための従来の方法
及び装置について以下に説明する。
【0007】先ず、図4に示すように人体20に生体用
電極21〜23を張り付け、人体20の心臓活動に対応
する皮膚表面の電位を交流アンプ24により電極21と
23及び電極22と23の差電圧を求めて増幅し、出力
信号A,BとしてそれぞれA/D変換器25に送り、こ
こでディジタル信号に変換した後、それぞれ演算部26
に与えることにより、出力信号A−B間の電位差を図5
(1)に示すような心電図として記録し且つそのパワー
スペクトル密度(PSD)を求めている。
【0008】図5においては、心拍変動波形(原心拍変
動波形=RRI波形)の生成手順が示されており、まず
同図(1)においてR波ピーク時点を検出し、同図
(2)に示すようにR波ピーク時点からR−R間隔(以
下、RRIと略称する)を計測する。例えば、同図
(1)に示すようにR波のピーク間隔RRI1が0.8
秒であれば、同図(2)に示すようにその間隔RRI1
を「0.8」とする。
【0009】この様にして心拍に応じて生成されたR波
間隔RRIは、同図(3)に示すように直線補間するこ
とにより横軸を拍数とし縦軸をR波間隔RRIとした原
心拍振変動波形が生成される。
【0010】なお、以下、このRRI波形は後述する種
々の処理を施した心拍変動波形と区別するため、原心拍
変動波形と称する。
【0011】この様に生成したRRI波形により図示の
如く一定の区間だけ切り出してサンプリング周波数5Hz
でFFT演算(高速フーリエ変換演算)またはAR(自
己回帰モデル)などにより求めたパワースペクトル密度
が図6に示されている。
【0012】この図6のパワースペクトル推定図から判
るように、推定されたパワーの殆どは0Hzを中心周波数
とするドリフト成分であり、これは図5(3)に示す原
心拍変動波形が多くの非周期性成分を含んでいるためで
ある。
【0013】この為、上述したようにHRVとして本来
の検討対象であるLF成分又はHF成分(ピークパワ
ー)の検出が困難となる。
【0014】そこで本発明者は、このような問題を解決
するために、HRVの差異を比較し得るような精度の良
い周波数成分結果が得られる方法及び装置を特願平5-18
9961号において既に開示した。
【0015】これを図7により原理的に説明すると、ま
ず、心電図からのR波時刻より同図(1)に示すように
R波間隔RRI1〜RRInを算出する。
【0016】この様にR波間隔を抽出した後、今度は隣
接したRRI同士の差を演算して同図(2)に示す波形
(以下、RRI’波形と称することがある)を生成す
る。
【0017】この様に生成されたRRIn−RRI(n-
1)の波形を図5(3)と同様に長時間にわたって生成す
ることにより図7(3)に示す様な横軸を拍数とする波
形RRIを得る。
【0018】この結果、スペクトル計算によって得られ
た特性は図8に示すようになり、この特性により、心拍
の非定常的でランダムな推移が異なる条件下でのLF成
分及びHF成分のピークパワー位置が比較的容易に推定
することが可能となる。
【0019】
【発明が解決しようとする課題】上記のような心拍変動
波形においては、実際の運転状況下で見られる心拍のよ
うに1拍の間にその心拍間隔が大きく異なるようなデー
タを用いたとき、周波数成分の解析上大きな誤差を生じ
ることとなる。
【0020】これを図9により説明すると、例えば同図
(1)(イ)に示すHF成分が大きいRRI波形からR
RI’波形を生成すると同図(ロ)に示す波形になる
が、同図(2)(イ)に示すHF成分が小さいが1拍の
間に心拍間隔が大きいRRI波形からRRI’波形を生
成すると、同図(ロ)に示すようにサンプル点e,f,
g,hに関する差分値(e−d),(f−e),(g−
f),(h−g)も図示の如く同時に大きくなってしま
う。
【0021】従って、同図(1)(ロ)及び(2)
(ロ)を周波数解析又は特開平5-42129号公報に示すよ
うな区間(p)での分散によるHRVのHF成分代用指
標の計算を行った場合、即ち周波数成分の推定を行った
場合、後者の方がHF成分が小さいにも関わらず、計算
上では前者よりHF成分比率が大きくなってしまう。
【0022】このように、本来、HRVのHF成分に相
当する指標を検討するとき、重要となるのは振幅の大き
さではなく、その出現頻度である筈であるにも関わら
ず、これまでの心拍変動波形では振幅の大きさの影響を
受け過ぎるため、実際には周波数成分を正確に推定する
ことができないという問題点があった。
【0023】従って本発明は、HRVの検討対象となる
HF成分の解析結果に、振幅ではなくその出現頻度が実
質的な影響を与えることができる心拍変動波形解析方法
及び装置を提供することを目的とする。
【0024】
【課題を解決するための手段及び作用】〔1〕本発明方法: 図1において、心拍の間隔から例えば同図(1)(イ)
に示すHF成分が大きい原心拍変動波形(RRI波形)
から上記のようにRRI波形の隣接する間隔差を求めて
補間した相対変位心拍変動波形(RRI’波形)を生成
すると図9の場合と同様に図1(ロ)に示す波形が得ら
れる。
【0025】一方、同図(2)(イ)に示すHF成分が
小さいが1拍の間に心拍間隔が大きいRRI波形からR
RI’波形を生成するときには、同図(ロ)に点線で示
すような大きな振幅値の波形を生成せず、実線で示す波
形に制限する。
【0026】即ち、RRI’波形が閾値kを越えている
ときには該RRI’波形部分を該閾値kに置き換えて制
限した後、その周波数成分を推定するようにしたもので
ある。
【0027】これにより、後の周波数解析やHF成分の
代用指標等の周波数成分推定においては、振幅ではなく
HF成分の頻度に比例した値の抽出が可能となり、ま
た、区間pでの分散は同図(1)(イ)の方が同図
(2)(ロ)より大きな値となり、HRVのHF成分の
代用指標としても適切な値を得ることができる。
【0028】〔2〕本発明装置:上記の本発明方法を実
現する本発明に係る心拍変動波形解析装置としては、心
拍ピックアップと、該ピックアップの出力信号を所定の
周波数帯域について増幅する増幅器と、上記の本発明方
法を演算する演算部とで構成することができる。
【0029】即ち、この演算部は、該増幅器の出力信号
をディジタル信号に変換するA/D変換器と、該ディジ
タル信号によるピーク値の間隔を計測して補間した原心
拍変動波形を生成し、さらに該原心拍変動波形の隣接す
ピーク点の間隔差を求めて補間した相対変位心拍変動
波形を生成し、該相対変位心拍変動波形の値が閾値を越
えているときには該相対変位心拍変動波形の値を該閾値
に置き換えた後、該相対変位心拍変動波形の一定区間を
切り出してパワースペクトルを求め、その周波数成分を
推定するものである。
【0030】
【実施例】図2は本発明に係る心拍変動波形解析装置の
一実施例を示したもので、基本的には図4に示した装置
構成と同様に、交流アンプ部24とA/D変換部25と
演算部26とで構成されており、交流アンプ部24の入
力信号は図示していないが図4と同様に人体に張り付け
た生体用電極から得ている。
【0031】そしてこの実施例では、交流アンプ部24
を作動入力アンプ1とバンドパスフィルタ2との直列回
路で構成しており、バンドパスフィルタ2はR波のみを
抽出するために8〜18Hzの通過帯域に設定されてい
る。
【0032】また、A/D変換部25はバンドパスフィ
ルタ2に接続されたアンプ3とサンプルホールド回路4
とA/D変換器5とバッファメモリ6との直列回路で構
成されている。
【0033】更に、演算部26はバッファメモリ6に接
続されたデータバス7に相互接続されたRAM8と演算
アルゴリズム用ROM9とCPU10とこれらRAM8
及びCPU10と接続されてCPU10を経由せずにR
AM8にデータを格納させる為のDMAコントローラ1
1と、CPU10及びDMAコントローラ11に一定の
クロック信号を与えるための水晶発振回路12とで構成
されている。
【0034】尚、A/D変換部25には水晶発振回路1
2からのクロック信号を分周してA/D変換器5に与え
るための分周器13が設けられており、DMAコントロ
ーラ11はサンプルホールド回路4及びA/D変換器5
をも制御するようになっている。
【0035】図3は図2に示したCPU10の処理手順
の実施例を示したもので、以下、この図3の処理手順及
び図1の波形図を参照して図2の実施例の動作を説明す
る。
【0036】まず、心電図のR波、脈波、心音のピーク
値等の心拍間隔を検出する心拍ピックアップからの出力
信号は交流アンプ部24において差動入力アンプ1で増
幅されると共にバンドパスフィルタ2でR波のみが取り
出される。
【0037】このR波はA/D変換部25においてアン
プ3で増幅された後、DMAコントローラ11の制御下
のサンプルホールド回路4によりサンプルホールドされ
てA/D変換器5によりディジタル信号に変換され、バ
ッファメモリ6からデータバス7を介してCPU10に
取り込まれる。
【0038】CPU10では処理を開始するとR波形デ
ータを読み込み(ステップS1)、そのR波時刻を検出
する(ステップS2)。
【0039】この様にして求めたR波時刻より図5
(2)に示したように原心拍変動波形RRI1〜RRI
nを算出する(ステップS3)。
【0040】この様にR波間隔RRIを抽出した後、今
度は隣接したRRI同士の差を演算して(ステップS
4)、図7(2)に示す波形を生成する。
【0041】この様に生成されたRRI(n-1) −RRI
nの波形を図5(3)と同様に長期間に渡って生成する
ことにより例えば図1(2)(イ)に示す様な横軸を拍
数とする波形を得る。
【0042】この変換されたデータをRRI’nとする
と、このデータRRI’nをRAM8に格納しておく
(ステップS5)。
【0043】次に、CPU10は、図1(1)(ロ)及
び(2)(ロ)に示した閾値k(定数)を設定する(ス
テップS6)。
【0044】この閾値kは、RRI’波形をこの値kに
制限した結果、周波数成分推定(周波数解析又は分散等
によるHF成分代用指標計算)が実際のHF成分に対応
して正確に行える値を予め実験等により求めておく。な
お、この閾値kは別の装置からの出力により自動的に設
定又は更新するようにしてもよい。
【0045】ここで、RRI’波形のサンプル点位置を
示すパラメータiの初期値を“1”に設定した後(ステ
ップS7)、パラメータi>nになるまでは処理を繰り
返すために(ステップS8)、ステップS9において点
iのデータRRI'iをRAM8から読み出す。
【0046】そして、RRI'i≧kであるか否かを判定
する(ステップS10)。
【0047】これはRRI’波形のサンプル点iの値が
図1に示すように周波数成分の推定に悪影響を及ぼす心
拍変化の異常を示す閾値kを越えているか否かを判定し
ており、この結果、RRI'i≧kであれば、異常である
としてこの点iのRRI’波形の値を閾値kで置き換え
てRAM8に格納する(ステップS11)。
【0048】ステップS11においてRRI'i<kであ
れば、ステップS11を実行せずにステップS12に進
み、パラメータiを「1」だけインクリメントしてステ
ップS8でi>nとなるまで繰り返し、i>nとなった
時点でRRI’nデータをRAM8から読み出して周波
数解析統計処理部(図示せず)等へ処理を移す。
【0049】
【発明の効果】以上説明したように、本発明に係る心拍
変動波形解析方法及び装置によれば、心拍の間隔から原
心拍変動波形を生成し、さらに該原心拍変動波形の隣接
する間隔差を求めて相対変位心拍変動波形を生成し、該
相対変位心拍変動波形部分が閾値を越えているときには
該相対変位心拍変動波形部分を該閾値に置き換えた後、
その周波数成分を推定するように構成したので、心拍変
動波形から生理状態の判定をする場合、その変動成分中
の検討価値のある指標を周波数成分推定(スペクトル解
析等の周波数解析または分散等の簡易型指標計算)によ
り抽出する際に振幅の影響を受け難い推定結果が得られ
る。
【0050】従って、例えば実路運転時における運転者
の心拍データから医学的に検討可能なHRVのLF/H
Fパワーを高精度に推定することが出来、正確な居眠り
運転等の警報を発することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る心拍変動波形解析方法及び装置の
動作原理を説明するための波形図である。
【図2】本発明に係る心拍変動波形解析装置の一実施例
を示したブロック図である。
【図3】本発明に係る心拍変動波形解析装置の演算部に
おける演算処理例を示したフローチャート図である。
【図4】一般的な心拍変動波形解析装置としてのパワー
スペクトルの測定系を示したブロック図である。
【図5】従来の心拍変動波形生成手順を示した波形図で
ある。
【図6】従来例によってパワースペクトル推定されたグ
ラフ図である。
【図7】特願平5-189961号による心拍変動波形解析方法
及び装置における動作原理を説明するための波形図であ
る。
【図8】特願平5-189961号による心拍変動波形解析方法
及び装置においてパワースペクトル推定した波形図であ
る。
【図9】従来例の問題点を説明するための波形図であ
る。
【符号の説明】
20 人体 21〜23 生体用電極 24 交流アンプ 25 AD変換部 26 演算部 8 RAM 9 ROM 10 CPU 図中、同一符号は同一または相当部分を示す。

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 心拍によって生じたR波のピーク点間隔
    を計測して補間した原心拍変動波形を生成し、さらに該
    原心拍変動波形の隣接するピーク点の間隔差を求めて
    間した相対変位心拍変動波形を生成し、該相対変位心拍
    変動波形の値が閾値を越えているときには該相対変位心
    拍変動波形の値を該閾値に置き換えた後、該相対変位心
    拍変動波形の一定区間を切り出してパワースペクトルを
    求め、その周波数成分を推定することを特徴とした心拍
    変動波形解析方法。
  2. 【請求項2】 心拍ピックアップと、該ピックアップの
    出力信号を所定の周波数帯域について増幅する増幅器
    と、該増幅器の出力信号をディジタル信号に変換するA
    /D変換器と、該ディジタル信号によるピーク値の間隔
    を計測して補間した原心拍変動波形を生成し、さらに該
    原心拍変動波形の隣接するピーク点の間隔差を求めて
    間した相対変位心拍変動波形を生成し、該相対変位心拍
    変動波形の値が閾値を越えているときには該相対変位心
    拍変動波形の値を該閾値に置き換えた後、該相対変位心
    拍変動波形の一定区間を切り出してパワースペクトルを
    求め、その周波数成分を推定する演算部と、を備えたこ
    とを特徴とする心拍変動波形解析装置。
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