JP3315832B2 - 抗菌材の製造方法 - Google Patents

抗菌材の製造方法

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JP3315832B2 JP07679795A JP7679795A JP3315832B2 JP 3315832 B2 JP3315832 B2 JP 3315832B2 JP 07679795 A JP07679795 A JP 07679795A JP 7679795 A JP7679795 A JP 7679795A JP 3315832 B2 JP3315832 B2 JP 3315832B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、生鮮食品等の食品の鮮
度保持等に用いられる抗菌材の製造方法に関するもので
ある。
【0002】
【従来の技術】従来より、殺菌作用を有する銀等の金属
およびその金属塩の強い抗菌性、耐熱性が着目され、特
開平5-154号公報に記載されているように、上記金属お
よびその金属塩を合成樹脂等に混合し成形して安全に長
時間抗菌性を有する成形物を得るため、生理的に不活性
な無機担体に抗菌性銀化合物を吸着担持させた抗菌性組
成物、あるいはゼオライトにイオン交換により抗菌性金
属イオンを担持させた抗菌性ゼオライト組成物などが知
られている。
【0003】また、抗菌組成物として、特公平4-28646
号公報に開示されているように、上記金属およびその金
属イオンを無機担体、例えばゼオライトに吸着またはイ
オン交換により担持したものが知られている。
【0004】同様な抗菌組成物として、リン酸三、四お
よび八カルシウムに抗菌剤としてヨードホルム、クロル
ヘキシジン等を混合した抗菌組成物が、特開昭62-19508
号公報、特開平4-29907号公報に開示されている。
【0005】さらに、近年、リン酸カルシウム系として
最も多く使用されているハイドロキシアパタイト〔化学
式:Ca10(PO4)6(OH)2 〕に抗菌性金属およびその金属イ
オンを担持させた抗菌組成物が、特開平2-180270号公
報、特開平2-273165号公報、特開平3-47118号公報、特
開平3-137298号公報、特開平3-218765号公報、特開平4
-13605号公報、特開平5-154号公報に開示されている。
【0006】これらに開示された抗菌組成物としては、
ハイドロキシアパタイトに抗菌性金属およびその金属イ
オンを吸着担持させた後、 800℃を越えた温度で焼成す
ることにより抗菌性金属およびその金属イオンをハイド
ロキシアパタイトに結合させたアパタイト複合粒子が用
いられている。また、特開平3-90007号公報、特開平3-
271209号公報では、ハイドロキシアパタイトスラリー中
で抗菌性金属イオンを吸着させてアパタイト複合粒子が
作製されている。
【0007】ところが、上記従来の抗菌性ゼオライトお
よび抗菌性のリン酸三、四および八カルシウムは、溶融
した合成樹脂に対して混練した場合、熱により変性する
ことにより安定した抗菌特性が得られないという問題を
有している。
【0008】一方、抗菌性金属および金属イオンを吸着
担持したハイドロキシアパタイトではスラリー中に添加
して得たものは水中で使用したり、水分を多く有する物
質に接触したりすると抗菌性金属が溶出して抗菌性が劣
化すると共に太陽光や蛍光灯の光が当たると黄色や茶色
等に変色するという問題を有している。
【0009】また、前述したアパタイト複合粒子は、高
温で処理すると、抗菌性金属の溶出を防止されたものと
なるが、高温で処理されたアパタイト複合粒子では、抗
菌力が低下し、特に、高い安全性を有するが黄色ブドウ
球菌等に対する抗菌力の低い銀のような抗菌性金属を用
いた場合、上記アパタイト複合粒子の抗菌効果が劣ると
いう問題を生じている。
【0010】そこで、本願発明者らは、上記各問題を回
避するために、種々検討した結果、銀イオン等の抗菌性
金属イオンを担持させる担体として、非晶質リン酸カル
シウムを用いた抗菌材が有効であることを見出した。
【0011】このような抗菌材の製造方法としては、水
酸化カルシウムの懸濁液に水溶性高分子分散剤を添加し
たものに対し、リン酸水溶液を滴下して、上記懸濁液の
pHを10程度に調整して非晶質リン酸カルシウムを得た
後、銀イオン等の抗菌性金属イオンを添加して上記抗菌
性金属イオンを担持した非晶質リン酸カルシウムからな
る抗菌材を得る方法が考えられた。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】ところが、上記方法に
ついて、本願発明者らが検討した結果、pHを調整した
後の懸濁液のろ液に抗菌性金属イオンがかなり多く残存
していることから、上記抗菌性金属イオンを非晶質リン
酸カルシウムに担持させる収率が低いことが判った。し
たがって、上記方法では、懸濁液に対する抗菌性金属イ
オンの添加量を、非晶質リン酸カルシウムに担持させる
抗菌性金属イオンの量より予めかなり多く添加する必要
があり、抗菌材の製造コストの上昇を招来しているとい
う問題を生じている。
【0013】
【課題を解決するための手段】本発明の抗菌材の製造方
法は、以上の課題を解決するために、非晶質リン酸カル
シウム(Amorphous Calcium Phosphate :以下、ACP
と略す)のスラリーに銀イオン等の抗菌性金属イオンを
添加して混合物スラリーを調製した後、上記混合物スラ
リーを塩酸によってpH6〜9に調整して抗菌材を得る
ことを特徴としている。
【0014】上記ACPのスラリーは、攪拌下の水酸化
カルシウム懸濁液に、水溶性高分子の有機系分散剤、例
えばトリアクリル酸アンモニウム塩を 0.1〜10重量%添
加し、好ましくは 0.1〜3重量%添加して混合溶液を得
た後、攪拌下の上記混合溶液をリン酸水溶液の滴下によ
ってpH11〜10に調整することにより、粒径約0.1μm
以下のACP粒子を含むものとして得られる。
【0015】上記ACP粒子は、粉末X線回折法によ
り、その回折パターンからリン酸カルシウム〔Ca3(PO4)
2 ・nH2O〕であり、また、そのパターンがブロードであ
ることから、非晶質なリン酸カルシウムであることが確
認される。
【0016】このようなACPを含むスラリー中に、上
記ACPに対して50重量%以下となるように抗菌性金属
を混合することにより、上記ACPに対し抗菌性金属イ
オンが担持された混合物スラリーが得られる。
【0017】上記抗菌性金属イオンとしては、金、銀、
亜鉛、銅、錫、鉛、砒素、白金、鉄、アンチモン、ニッ
ケル、アルミニウム、バリウム、カドミウム、マンガン
の抗菌性金属群の中から少なくとも一種の金属、または
それらの混合物、あるいはそれらの金属塩等の金属化合
物の水溶液が用いられる。
【0018】続いて、上記混合物スラリーに対して 0.0
01〜10%の塩酸水溶液を滴下して、上記混合物スラリー
のpHを6〜9の範囲内に調整して調整スラリーを得た
後、上記調整スラリーから、pH調整後の抗菌性ACP
を、ろ取、乾燥、粉砕して粒状の抗菌材としての抗菌性
ACPを得る。
【0019】なお、抗菌性金属イオンを効率よくACP
に担持させるために、混合物スラリーのACP粒子は、
その粒径が 0.1μm以下であることが望ましい。このた
めには、前記有機系分散剤の添加が好ましい。
【0020】また、調整スラリーを、噴霧乾燥造粒法等
により造粒して造粒粒子である抗菌性ACPとしての抗
菌材を得てもよい。得られた造粒粒子が大きな比表面積
を備えるために、調整スラリーにおけるACP粒子が90
重量%を越えると、調整スラリーの粘度が高くなるの
で、造粒に不適となる一方、1重量%未満となると調整
スラリー中の溶媒を除去するのに手間取り、造粒化が不
経済となる。なお、調整スラリーにおけるACP粒子の
含量を1〜90重量%の範囲で変えることにより、所望の
平均粒径を有する造粒粒子を得ることができる。
【0021】また、造粒法としては、得られる造粒粒子
が、多孔質、かつ、平均粒径 200μm以下、さらに好ま
しくは50μm以下の略球状で、かつ、その比表面積を大
きくできるものであれば特に限定されるものではない
が、前記の噴霧乾燥造粒法の他にフリーズドライ後に粉
砕してなる造粒法、また、高速撹拌型造粒法を用いても
よい。
【0022】
【実施例】本発明における抗菌材の製造方法の各実施例
について説明すれば以下の通りである。 〔実施例1〕本発明の抗菌材の製造方法では、非晶質リ
ン酸カルシウム(以下、ACPという)のスラリーに抗
菌性金属イオンを添加して混合物スラリーを調製した
後、上記混合物スラリーを塩酸水溶液によってpH6〜
9に調整して調整スラリーを得、続いて、上記調整スラ
リーのろ過によって、抗菌性金属イオンを担持したAC
Pを得た後、上記ACPを乾燥・粉砕して抗菌材が得ら
れる。
【0023】まず、上記スラリーは、攪拌下の水酸化カ
ルシウムの懸濁液に対し水溶性高分子の有機系分散剤と
してのトリアクリル酸アンモニウム塩を 0.5重量%添加
して混合溶液を得た後、上記の水酸化カルシウムの重量
の 0.925倍となるリン酸(85重量%溶液)を8重量%に
希釈したリン酸水溶液を攪拌下の前記混合溶液に対し滴
下することにより、平均粒径約 0.1μm以下のACP粒
子を含むものである。
【0024】上記スラリーをイオン交換水により希釈し
て、ACPの濃度が5重量%となるように調製したAC
Pスラリーを得た。そのACPスラリーに対して、AC
Pの固形分重量の2%となる重量の無水硝酸銀粉末をイ
オン交換水に溶解した硝酸銀水溶液を混合し、攪拌モー
タで1時間攪拌して混合物スラリーを得た。
【0025】さらに、上記混合物スラリーに対し、1%
塩酸水溶液を添加して、上記混合物スラリーのpHを
8.0に調整して、銀イオン担持ACPを含有する調整ス
ラリーを得た。この調整スラリーをろ過して銀イオン担
持ACPを得た後、上記銀イオン担持ACPを乾燥・粉
砕することにより、粒状の銀イオン担持ACPからなる
抗菌材を得た。
【0026】〔実施例2〕上記実施例1におけるpHを
8.0に代えて、7.5とし、他は上記実施例1と同様
の条件にて操作することにより、粒状の銀イオン担持A
CPからなる抗菌材を得た。
【0027】〔実施例3〕上記実施例1におけるpHを
8.0に代えて、7.0とし、他は上記実施例1と同様
の条件にて操作することにより、粒状の銀イオン担持A
CPからなる抗菌材を得た。
【0028】〔実施例4〕上記実施例2におけるリン酸
(85重量%溶液)を、水酸化カルシウム重量の 0.925倍
とする代わりに 0.920倍に設定し、他は上記実施例2と
同様の条件にて操作することにより、粒状の銀イオン担
持ACPからなる抗菌材を得た。
【0029】〔実施例5〕上記実施例4におけるpHを
7.5に代えて、7.0とし、他は上記実施例4と同様
の条件にて操作することにより、粒状の銀イオン担持A
CPからなる抗菌材を得た。
【0030】〔実施例6〕上記実施例1におけるリン酸
(85重量%溶液)を、水酸化カルシウム重量の 0.925倍
とする代わりに 0.915倍に設定し、他は上記実施例1と
同様の条件にて操作することにより、粒状の銀イオン担
持ACPからなる抗菌材を得た。
【0031】〔実施例7〕上記実施例6におけるpHを
8.0に代えて、7.5とし、他は上記実施例6と同様
の条件にて操作することにより、粒状の銀イオン担持A
CPからなる抗菌材を得た。
【0032】〔実施例8〕上記実施例6におけるpHを
8.0に代えて、7.0とし、他は上記実施例6と同様
の条件にて操作することにより、粒状の銀イオン担持A
CPからなる抗菌材を得た。
【0033】上記各実施例において得られた銀イオン担
持ACPについて、粉末X線回折法により、上記各銀イ
オン担持ACPの生成相を調べたところ、得られた銀イ
オン担持ACPは、リン酸カルシウムと銀との複合体で
あると同定され、また、上記X線回折パターンがブロー
ドであることから、リン酸カルシウムが非晶質であるこ
とが判る。また、複合体とされた銀は塩化銀であると同
定され、上記ACPの微結晶表面に取り込まれていると
考えられる。
【0034】次に、前記実施例1にて得られた抗菌材
(銀イオン担持量約2重量%)を試料1とし、上記試料
1の抗菌力を測定した。比較例1として市販の抗菌性粒
子である銀イオンを担持したアパタイト粒子(銀イオン
担持量2重量%)を用いた。
【0035】試験方法 1.菌液の調製 寒天培地で37℃、18時間培養した試験菌体をリン酸
緩衝液(1/15M、pH7.2)に浮遊させ108 cells/mlの
懸濁液である原液を調整し、その原液を適宜希釈して試
験に用いた。
【0036】2.抗菌性試験(シェークフラスコ法) 試料1および比較例1としてのアパタイト粒子を、 0.1
gそれぞれ秤量し、上記リン酸緩衝液 100mlの入った 2
00ml三角フラスコに入れ、これに、試験菌懸濁液を約10
5 cells/mlになるように加えた後、この三角フラスコを
25℃±5℃に保ちながら振とうし、経時的に上記三角フ
ラスコ内の菌数を測定した。使用菌株は次の通り。
【0037】 使用菌株 Escherichia coli(大腸菌) IFO-12734 Staphylococcus aureus (黄色ブドウ球菌) IFO-12732 Psedomonas aeruginosa (緑膿菌) IFO-12689 Candida albicans(カンジダ) IFO-1060 使用培地 細菌:Mueller Hinton 2 (BBL) 真菌:ポテトデキストロース寒天培地(栄研) 上記の測定結果を表1〜4に示した。
【0038】
【表1】
【0039】
【表2】
【0040】
【表3】
【0041】
【表4】
【0042】このように上記実施例の抗菌材は、黄色ブ
ドウ球菌に対しても抗菌性が劣化しておらず、従来の抗
菌材として市販されている前記アパタイト粒子より抗菌
作用が大きいことが示された。
【0043】これは、上記実施例の抗菌材が、ACPを
主成分として含むことから、表面が帯電している菌体を
吸着し易いものであるためと想定される。
【0044】また、このような抗菌材は、例えば噴霧造
粒した場合、真球状となるから、生鮮食品を載せる発泡
プラスチックトレイ等の樹脂成形品等にブレンドすると
きにも均一に分散され易いものであり、溶融時の樹脂成
形品に対する混合性を従来より改善できるものとなって
いる。
【0045】次に、上記各実施例における塩酸によるp
H調整を省いて得られた銀イオン担持ACPを、比較例
2〜4として調製した。
【0046】〔比較例2〕前記実施例1において硝酸銀
水溶液の混合後の塩酸水溶液によるpH調整を省いた他
は、上記実施例1と同様にして銀イオン担持ACPを得
た。
【0047】〔比較例3〕前記実施例4において硝酸銀
水溶液の混合後の塩酸水溶液によるpH調整を省いた他
は、上記実施例4と同様にして銀イオン担持ACPを得
た。
【0048】〔比較例4〕前記実施例6において硝酸銀
水溶液の混合後の塩酸水溶液によるpH調整を省いた他
は、上記実施例6と同様にして銀イオン担持ACPを得
た。
【0049】次に、銀イオンが銀イオン担持ACPに対
してどの程度取り込まれているかを、各実施例1〜8お
よび比較例2〜4における調整スラリーのろ液および乾
燥・粉砕粒子にそれぞれ含まれる銀イオン濃度を測定す
ることにより確認した。銀イオン濃度の測定にはICP
(プラズマ発光分光分析:SEIKO ICP PPS
−4000)を用いた。それらの結果を表5に示した。
【0050】測定試料の調製方法は、銀イオン量(Ag
量)では、試料約0.10gを、conc.塩酸(和光純薬精密
分析用)10mlに溶解し、20mlにメスアップした試料溶液
を用い、カルシウム/リンの比(Ca/P比)では、上記試
料溶液をさらに10倍に希釈した希釈試料溶液を用いた。
【0051】測定条件としては下記の通りである。 波 長 : Ca(317.933nm),P(213.618nm) ,Ag(328.028nm) 積分回数 : 3回(2秒〜Agのみ1秒) 積算1回〜BG補正ナシ ホトマル 電圧: High 高周波電力: 1.30kW 測光 高さ: 12.0mm ,10.0mm ,12.0mm フ゜ラス゛マ 流量: 16.0L/min キャリア 流量: 1.0L/min 補助 流量: 0.5L/min 使用分光器: A B B
【0052】
【表5】
【0053】このように上記各実施例の銀イオン担持A
CPでは、銀イオン添加後の塩酸によるpH調整によ
り、添加した銀イオンの83重量%以上がACPに担持
されたことが判った。一方、塩酸によるpH調整を省い
た場合、調整スラリーからのろ液中のAg濃度が、塩酸
によるpH調整を行ったときと比べて非常に高くなり、
無駄の抑制された安定したAg担持が困難であることが
判った。
【0054】また、塩酸によるpH調整を省いた方法で
は、Agイオンの一部がACP中のCaイオンとイオン
交換反応することにより、ACP微結晶の内部にAgイ
オンが取り込まれることが考えられた。この場合、添加
したAgイオンの全てが抗菌効果を示すとは考え難く、
抗菌効果には表面に露出したAgイオンが大きく寄与し
ているものと考えられた。したがって、十分な抗菌性を
発揮するためにAgイオン添加量を増加させる必要があ
ることから、高価なAgイオンを多く用いることになり
経済性が低下するという問題を生じている。
【0055】それに対し、本願発明の方法では、塩酸の
添加によりろ液中のAgイオンがAgCl結晶(難水溶
性)としてACPに担持されていると考えられ、このと
き、結晶となることで、ACP微結晶内部に取り込まれ
る可能性が低減されてAg化合物がACP微結晶の表面
に析出し、よって、添加したAgイオンの多くをACP
表面上に担持させることができることから、Agイオン
の抗菌効果をより効果的に発揮できる抗菌材を得ること
ができる。
【0056】さらに、上記方法では、pH調整により、
pHを7〜8と中性から弱アルカリ性に設定したことに
より、調整を省いた場合のアルカリ性となる抗菌材と異
なり、例えば皮膚等への刺激の少ない抗菌材を得ること
ができ、よって、汎用性をより向上した抗菌材を得るこ
とができる。
【0057】ところで、ACPの表面上にAgCl結晶
を生成するために塩素イオンを調整スラリーに添加する
方法としてはCaCl2 を用いることが考えられた。し
かしながら、上記の場合、下記のような問題を生じるこ
とが判った。
【0058】すなわち、第1に、CaCl2 は水溶性で
あり、CaイオンとClイオンに解離するので、上記C
aイオンがACP組成比に影響することが考えられ、C
aCl2 中のCaイオンにより目標とするACP組成を
得ることが困難となる。
【0059】第2に、CaCl2 は水溶性であるが、温
度による溶解度が異なるので、CaCl2 が不十分な溶
解状態であると、CaCl2 が残留する可能性があり、
よって、Clイオンの不足によって、添加したAgイオ
ンが必ずしも安定に担持されないことがある。さらに、
CaCl2 を十分に溶解させるためには相当量の溶媒が
必要となる。このような多量の溶媒を用いる方法では、
生産性が低下するので、生産性を向上させるために考え
られた抗菌材の製造方法には適さないものとなってい
る。
【0060】第3に、添加したCaCl2 が何らかの理
由(例えば、CaCl2 の溶解が不十分であること、ま
た、一度溶解したCaCl2 が乾燥工程などで再度結晶
として析出することなど)により抗菌材中に残留した場
合、CaCl2 の潮解性、吸湿性が得られた抗菌材に影
響を与えることが考えられる。例えば、樹脂等への練り
込み等に上記抗菌材を用いる場合、その吸着水分の蒸発
により樹脂を発泡させることが問題となる。また、吸湿
水分によるAgイオンの溶出量の増大が考えられる。
【0061】しかしながら、本願発明の方法では、上記
の各問題を回避でき、かつ、添加したAgイオンを効率
よくACPに担持させることができて、Agイオンの添
加量を抑制できる経済性に優れた抗菌材を得ることが可
能となる。
【0062】また、上記各抗菌材は、生鮮食品を載せる
発泡プラスチックトレイ等の白色であるトレイを製造す
るための例えばプラスチックシートに配合されて用いら
れることが想定される。このことから、配合された抗菌
性粒子が有色であったり、加工時の熱や、光による経時
変化により変色したりした場合、上記トレイにゴミや汚
れが付着しているとユーザーに誤認される虞がある。
【0063】そこで、上記抗菌材としての試料1につい
て、2週間、自然光に曝された状態における色差測定を
JIS−K7105に基づいて行った。まず、比較のため、
JIS−K7105に基づく標準白色面としての標準板と上
記試料1とを、積分球方式の色差計(ND-100P 、日本電
色工業製)により測定し、それらの結果を表6に示し
た。なお、黄色度については、標準黄色面を用い、黄変
度については上記標準黄色面に対する相違点にて評価し
た。
【0064】
【表6】
【0065】さらに、上記試料1および比較例1のアパ
タイト粒子を、溶融したポリスチレン樹脂に対して1重
量%となるようにそれぞれ混練し( 200℃、5分間)、
その混練物からシート状にプレス成形法によって成形し
た成形物をそれぞれ得た。それらの成形物の黄色度を、
上記と同様にJIS−K7105に基づいて透過法によって
それぞれ測定した。なお、基準として、上記と同様にし
てポリスチレン樹脂のみからなるシート状の基準成形物
であるブランクを作製し、そのブランクについても黄色
度を、上記と同様に測定した。それらの結果を表7に示
した。
【0066】
【表7】
【0067】表6および表7から明らかなように、本発
明の抗菌材は、標準板より、白色度が若干低下するもの
の、実用上では白色であること、および熱や光等による
黄変度が従来のものより小さく、熱や光等によって黄変
等の変色が抑制され、かつ、前述の混練程度の加熱に対
しても変性しない安定なものであることが判った。
【0068】これにより、本発明の抗菌材は、無色であ
る白色度が高く、その上、黄変を抑制できるものである
から、市販されているプラスチックス容器やシート状プ
ラスチック等の製造時に樹脂原料中に練り込んだり、混
合して成形したりして用いても、上記抗菌材が汚れ等と
して誤認される虞を、加工時においても経時的にも防止
できるものとなっている。
【0069】このことから、上記抗菌材は、プラスチッ
クス容器等に用いた場合、その外観の悪化を防止できる
と共に、その容器の内表面に露出させて用いても、熱や
光や紫外線等による経時的な外観の劣化を回避すること
ができるものとなっており、その上、上記プラスチック
ス容器に載置された食品との接触面において、抗菌性を
有する銀イオンによって上記食品における雑菌の増殖を
抑制できるものとなっている。
【0070】また、プラスチック容器の表面をコーティ
ングするためのラミパック等に用いた場合でも、コーテ
ィングされたプラスチック容器に載置された食品上にお
ける雑菌の増殖を抑制できると共に、上記プラスチック
容器の外観の経時的な劣化も回避できるものとなってい
る。
【0071】これにより、上記抗菌材は、魚や肉といっ
た生鮮食品の日持ち向上を図ることができるものである
と共に、雑菌の増殖した食品による食中毒の防止効果を
有し、さらに、きのこ類や果物等の農産物の鮮度保持効
果も有することができるものである。
【0072】この結果、上記抗菌材は、抗菌性に優れ、
かつ、外観の劣化も回避できるものであるから、生鮮食
品等の食品の載置トレイ等に好適に使用されるものとな
っている。
【0073】
【発明の効果】本発明の抗菌材の製造方法は、以上のよ
うに、非晶質リン酸カルシウムのスラリーに抗菌性金属
イオンを添加して混合物スラリーを調製した後、上記混
合物スラリーを塩酸によってpH6〜9に調整して抗菌
材を得る方法である。
【0074】それゆえ、上記方法では、高い抗菌性を有
する上に、無色で、かつ黄変等の変色を抑制できる抗菌
材を得ることができるので、上記抗菌材を用いた容器の
外観の劣化を軽減できて生鮮食品等の食品の載置トレイ
等に好適に用いられる抗菌材を得ることができる。
【0075】その上、上記方法では、混合物スラリー内
において、抗菌性を発揮するための抗菌性金属イオンを
非晶質リン酸カルシウムに担持させる収率を向上でき
て、上記抗菌性金属イオンを設定量担持させるために、
上記設定量より過剰に抗菌性金属イオンを上記混合物ス
ラリーに添加することを抑制できるので、上記抗菌材の
製造コストを軽減できるという効果を奏する。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平5−148116(JP,A) 特開 平7−51039(JP,A) 特開 平8−173120(JP,A) 特開 平6−285151(JP,A) 特開 平3−257006(JP,A) 特開 平2−34507(JP,A) 特開 昭56−21649(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) A01N 25/08 A01N 59/00 A23L 3/358 C01B 25/32 CA(STN) REGISTRY(STN) JICSTファイル(JOIS)

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】非晶質リン酸カルシウムのスラリーに抗菌
    性金属イオンを添加して混合物スラリーを調製した後、
    上記混合物スラリーを塩酸によってpH6〜9に調整し
    て抗菌材を得ることを特徴とする抗菌材の製造方法。
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