JP3310935B2 - アルカリ電池用セパレータ紙 - Google Patents

アルカリ電池用セパレータ紙

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JP3310935B2
JP3310935B2 JP21360098A JP21360098A JP3310935B2 JP 3310935 B2 JP3310935 B2 JP 3310935B2 JP 21360098 A JP21360098 A JP 21360098A JP 21360098 A JP21360098 A JP 21360098A JP 3310935 B2 JP3310935 B2 JP 3310935B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はアルカリマンガン電
池、銀電池、水銀電池、亜鉛空気電池等の各種アルカリ
電池に用いるセパレータ紙に関し、特には陽極活物質と
陰極活物質の接触による電池の内部短絡を防止するとと
もに、セパレータ紙に要求される他の諸特性をも改善す
るものであり、そのための、より緻密で、かつ、内部抵
抗の小さいアルカリ電池用セパレータ紙に関するもので
ある。
【0002】
【従来の技術】通常上記アルカリ電池には、陽極活物質
と陰極活物質を隔離するためのセパレータ紙が用いられ
ているが、このセパレータ紙として要求される特性は前
記陽極活物質と陰極活物質の接触による内部短絡を防止
し、水酸化カリウム等の電解液や二酸化マンガン等の減
極剤に対して収縮や変質を起さない優れた耐久性を有
し、かつ、起電反応を生ずるために必要にして充分な量
の電解液を保持するとともに、イオンの伝導を妨げずに
内部抵抗を小さくでき、かつ、電池内部に組み込まれた
場合の占有容積が小さく、両極活物質の量を増やすこと
ができることである。
【0003】従来セパレータ紙としては、ビニヨン繊維
(塩化ビニールと酢酸ビニールとの共重合体繊維)とレ
ーヨン繊維を混抄し、抄紙機のドライヤーあるいは後加
工により熱処理し、ビニヨン繊維を部分的に熱融着して
繊維を相互に結着したセパレータ紙、あるいはビニロン
繊維にリンターパルプ、レーヨン繊維等のセルロース繊
維を配合し、バインダーとしてポリビニルアルコール繊
維を添加して混抄し、前記ポリビニルアルコール繊維を
抄紙機ドライヤーで湿紙に含まれる水分で溶解、かつ、
乾燥して繊維を相互に結着したセパレータ紙等の合成繊
維とセルロース繊維より成る混抄紙が使用されている。
【0004】また特開昭62−154559号公報に
は、前記セパレータ紙を構成する繊維の一部又は全部を
従来の繊度1〜3デニールの太い繊維に代えて、繊度
0.8デニール以下の合成繊維としたアルカリ乾電池用
セパレータ紙、及び上記合成繊維とセルロース繊維を含
み、その重量比が15:85〜85:15であるように
したセパレータ紙、更に二層抄き合わせのセパレータ紙
でその一層が繊度0.8デニール以下の合成繊維、他の
層が繊度1.0デニール以上のセルロース系繊維によっ
て形成された、より一層緻密としたセパレータ紙の構成
が開示されている。
【0005】また、出願人は水銀添加が許容されていた
当時に、特開昭54−87824号により、低電気抵抗
で、緻密であり、両極活物質の内部短絡を防止するセパ
レータ紙として、CSFの値で510〜720mlの軽
度に叩解したマーセル化木材クラフトパルプを50%重
量以上になるように合成繊維と混抄して得られるセパレ
ータ紙を提供している。
【0006】
【課題を解決するための手段】しかしながら、このよう
な従来の合成繊維とセルロース繊維とを混抄して成るセ
パレータ紙は、電解液や減極剤に対する耐久性と電解液
の保持性は実用上問題ないが、セパレータ紙の孔径が大
きいため、両極活物質の接触による内部短絡を防止する
面で不充分であるという課題があった。これに対処する
ため、セパレータとして使用するに際して前記セパレー
タ紙を数層に積層して実質的な孔径を小さくしたり、あ
るいはセロファンフィルム、ポリエチレン多孔膜等の微
細な孔を有するセパレータ材と重ね合せて使用する等の
手段が採られている。
【0007】また亜鉛を陰極活物質とするアルカリ電池
にあっては、従来より放電反応を円滑に行うため、亜鉛
粒子の表面を水銀でアマルガム化して活物質とする手段
が用いられているが、近時水銀による環境汚染を防止す
る観点から水銀使用量の低減がはかられている。即ち我
国では水銀添加量の規制値が1985年3月以前は亜鉛
に対して9.0%であったものが、1985年3月以後
は亜鉛に対して3.0%となり、更に1987年9月以
後は亜鉛に対して単1,単2電池で1.0%、単3電池
で同1.5%となっている。そのため、上記水銀を低減
する目的で鉛、インジウム、ガリウム、アルミニウム等
を添加した亜鉛活物質が使用されているが、新たに発生
した問題点として電池を軽負荷で使用した場合、酸化亜
鉛の針状結晶(デンドライト)がセパレータ紙中に発生
し、長時間この状態が続くと内部短絡する惧れがある。
即ち、上記水銀量を減少させることによって、陰極活物
質である亜鉛が腐食し易くなり、その結果、導電性を有
する酸化亜鉛結晶を析出し、この結晶がセパレータ紙中
に移行して両極活物質を電気的に接触させて、内部短絡
を誘起するとともに、電池容量が減少してしまうという
難点を有している。
【0008】一方上記内部短絡を防止するために、セパ
レータ紙の厚さを厚くしたり、あるいはセパレータ紙の
積層枚数を増加すると、電池内部に占めるセパレータ紙
の容積が増加して、必然的に活物質の量が減少して電池
容量が減少してしまうことになる。またセロファンフィ
ルム等の微細な孔を有するセパレータ材と重ね合せる場
合には、薄いセパレータが得られて電池容量の点では都
合がよいが、他方においてセパレータ紙の電池への挿入
が困難となり、かつ、セロファンとセパレータ紙との電
解液中での寸法変化が異なるために、ボタン型電池のよ
うにセパレータ面積の小さいものでは適用することがで
きるものの、セパレータ面積の大きい円筒型電池では適
用することが困難であるという問題点がある。
【0009】また前記特開昭62−154559号公報
に記載されたように、セパレータ紙を構成する繊維の一
部又は全部を従来の太いデニールの繊維に代えて繊度
0.8デニール以下の合成繊維としたことによって、セ
パレータの緻密化を図る場合は、繊度の小さい合成繊維
を使用することにより、得られるシートの密度が高くな
り、又繊維が相互に熱融着あるいはバインダーで結着さ
れるので、繊度の小さいもの程結着面積が増加して、シ
ート密度の増加以上に電気抵抗が増加してしまうという
難点を有している。さらに該繊度の小さい合成繊維が高
価であるため、コストアップを招来してしまうこととな
る。
【0010】また、前記特開昭54−87824号によ
って得られるセパレータ紙の緻密度は気密度で示すと
0.2〜1.2秒/100mlの範囲であり、充分量の
水銀添加が許容されていた当時においては効果的に内部
短絡を防止することができたが、低水銀化の規制が強化
されている今日においては内部短絡を防止するためには
最早不充分なものとなっている。また、CSFの数値を
小さくして高度に叩解すると得られるセパレータ紙が高
密度となって電気抵抗が高くなるために、前記特開昭5
4−87824号においては叩解の程度をCSFの値で
510〜720mlと軽度のものとしている。そのた
め、内部短絡を防止するために上記気密度を得るために
はマーセル化木材クラフトパルプを50重量%以上に配
合する必要があった。
【0011】そこで本発明はこのような従来のアルカリ
電池用セパレータ紙が有している各種の課題を解消し
て、前記セパレータ紙を緻密化して該セパレータ紙の両
極活物質の接触、もしくは低水銀化に伴う導電性酸化亜
鉛結晶による内部短絡を防止するとともに、電気抵抗を
低く保って電池容量を確保することができるアルカリ電
池用セパレータ紙を得ることを目的とするものである。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明は上記目的を達成
するために、叩解可能な耐アルカリ性セルロース繊維と
合成繊維とを混抄して成るアルカリ電池用セパレータ紙
であって、該耐アルカリ性セルロース繊維を15重量%
40重量%の範囲で含有し、かつ、該耐アルカリ性セ
ルロース繊維の叩解の程度をCSFの値で400ml〜
50mlの範囲とすることにより、アルカリ電池用セパ
レータ紙の気密度を略3〜30秒/100mlとしたア
ルカリ電池用セパレータ紙を提供する。
【0013】
【0014】更に、前記合成繊維の一部あるいは全部が
ビニロン繊維である構成、前記合成繊維の一部あるいは
全部が複合繊維である構成、前記合成繊維の一部あるい
は全部が合成パルプである構成、前記耐アルカリ性セル
ロース繊維の一部あるいは全部が天然セルロース繊維を
マーセル化した繊維である構成を提供する。
【0015】上記構成の本発明によれば、得られたセパ
レータ紙は遊離状に叩解されてフィブリル化した微細な
セルロース繊維がセパレータ紙中に含有されるものであ
り、緻密性に秀れた気密度が高いものであって、アルカ
リ電池のセパレータ紙として使用した場合に両極活物質
の接触による内部短絡や低水銀化に伴う導電性酸化亜鉛
結晶による内部短絡の防止効果が大きく、かつ、電気抵
抗の小さな、かつ、活物質の充填量を増加することので
きるセパレータ紙を得ることができる。また細デニール
の合成繊維を使用したセパレータ紙と比較して、合成繊
維は全く電解液を吸収しないのに対し、セルロース繊維
は繊維自体が電解液を吸収して導電性に寄与し得るもの
であり、同一の細デニールの合成繊維を使用した場合で
も、本発明にかかるセパレータ紙は合成繊維の周囲に微
細なセルロース繊維が存在するために結着部分の導電性
に寄与しない面積が少なく、緻密性に秀れた気密度の高
いセパレータ紙としても電気抵抗を低く保つことができ
る。
【0016】更にマーセル化したセルロースを叩解して
使用する場合には、比較的高密度としても依然として十
分に短かいイオンの導電路を保持し、かつ、極めて秀れ
た緻密性と均一性を有しており、緻密性により内部短絡
を完全に防止するとともに、その十分に短かいイオンの
導電路によりイオンの伝導性を高め、電気抵抗を小さく
することができる。またマーセル化により繊維の断面が
偏平状のものから円形のものとなり、イオンの伝導性が
よくなる。さらにマーセル化によって繊維が固くなるた
め、叩解によって繊維が遊離状に叩解されて、より小さ
く分散されるため、叩解の程度を上げても密度が上がり
難くなるものである。
【0017】
【発明の実施の形態】以下本発明にかかるアルカリ電池
用セパレータ紙の各種実施例を説明する。先ず本発明で
用いるセルロース繊維は、耐アルカリ性に秀れた叩解可
能な繊維であり、このような繊維としては例えば針葉樹
木材パルプ、広葉樹木材パルプ、エスパルトパルプ、パ
イナップルパルプ、マニラ麻パルプ及びサイザル麻パル
プ等の天然セルロース繊維を冷アルカリ処理して得たマ
ーセル化したパルプを用いる。特に広葉樹木材パルプ、
エスパルトパルプ、パイナップルパルプのマーセル化パ
ルプは繊維径が小さいため、セパレータ紙の気密度を高
くすることができて好適である。
【0018】上記のマーセル化処理とは、上記天然セル
ロース繊維を冷アルカリ、例えば40%の水酸化カリウ
ム溶液中に3〜4時間浸漬して繊維を膨潤させ、よく洗
浄してパルプ中の崩壊し易いヘミセルロースを除去する
と同時に偏平であった繊維の断面を円形化したものであ
る。
【0019】またリンターパルプなどのα−セルロース
含有量が97%以上のパルプは耐アルカリ性に秀れ、マ
ーセル化しなくても使用できるものである。さらに再生
セルロース繊維にあっても、ポリノジックレーヨン繊維
及びキュプラ繊維等の再生セルロース繊維は叩解によっ
てフィブリル化を起こすため、本発明に使用することが
できる。
【0020】次に上記耐アルカリ性セルロース繊維に叩
解を施して、該セルロース繊維を遊離状に叩解してフィ
ブリル化させて微細な繊維とした後、この叩解後のセル
ロース繊維に合成繊維を混合し、必要に応じてポリビニ
ルアルコール繊維等のバインダーを添加混合し、混抄す
る。
【0021】セルロース繊維の含有量と叩解度は、電池
セパレータの要求する特性に合わせて適当な値に設定す
ることができるが、本発明の場合にあっては、セルロー
ス繊維の含有量が10重量%〜50重量%の範囲内であ
るようにしてあり、かつ、叩解度がCSF(カナダ標準
形口水度、CanadianStandardFreeness)で500ml〜
0mlの範囲であるようにしてある。即ちセルロース繊
維を50重量%以上含有するものでは、電解液を含浸し
た際に著しく膨潤し、該セルロース繊維の厚さが増加す
るために電池に組み込んだ際のセパレータ容積が大きく
なり、必然的に活物質の量を減少させなければならず、
電池容量が低下してしまうことになる。またセルロース
繊維の含有量が10重量%以下である場合は、電池に組
み込んだ際の電解液の保液性が不充分になり、電池の内
部抵抗が増加することになる。
【0022】更にセルロース繊維の叩解度が500ml
を上回る場合は、叩解による繊維のフィブリル化が不充
分であり、従来と同様に緻密性に劣るセパレータ紙しか
得られないことになり、又このような叩解の少ないセル
ロース繊維を含有したセパレータ紙は電解液中での膨潤
度が大きくなってしまうものである。逆にセルロース繊
維の叩解度を大きくしてCSFが0mlに到達したセル
ロース繊維を更に過度に叩解すると、抄紙する際にセル
ロース繊維が抄き網から流出することになり、歩留まり
が低下してしまうという結果を招く。
【0023】即ち、低水銀化の規制が強化されている今
日においては、前記した特開昭54−87824号の有
する緻密性では内部短絡を防止することができない。そ
のため、今日の低水銀の状況下においても内部短絡を防
止できる緻密性(気密度)としては、略3〜30秒/1
00ml程度の気密度が要求されており、この気密度を
実現するためにはCSFの数値で500ml〜10ml
と高度に叩解することが必要なのである。一方、このよ
うに高度に叩解した耐アルカリ性セルロース繊維の含有
量が50重量%を超えると、気密度が高くなり過ぎて電
気抵抗が高くなり使用に適さなくなる。
【0024】そのため、本発明では低水銀化の今日にお
いても効果的に内部短絡を防止し、セパレータ紙に適切
な保液性を与え、かつ、膨潤度を低く抑えることを考慮
して、耐アルカリ性セルロースの含有量は10重量%〜
50重量%とし、叩解度は500ml〜0mlとするの
が適当である。特に好ましくは含有量が15重量%〜4
0重量%で、叩解度は<400ml〜50mlの範囲に
するの適当である。
【0025】本発明に用いる合成繊維としては、耐アル
カリ性に優れた繊維が好ましく、このような合成繊維と
してはポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維、ポリア
ミド繊維、ビニロン繊維、ビニヨン繊維等の通常の合成
繊維の外、ポリプロピレン−ポリエチレン複合繊維、ポ
リプロピレン−ポリエチレン酢酸ビニル複合繊維及びポ
リプロピレン−ポリエチレンビニルアルコール複合繊維
等の複合繊維、ポリプロピレン合成パルプ及びポリエチ
レン合成パルプ等の合成パルプがある。これらの合成繊
維の中で複合繊維は繊維自体が抄紙機のドライヤーで相
互に結着する繊維であり、セルロース繊維と混合して抄
紙するだけでも充分な強度のセパレータ紙が得られるの
で好ましい。また合成パルプは合成樹脂をフィブリル化
したもので、枝分れした微細なフィブリルを有するパル
プ状物であり、叩解したセルロース繊維と混合すれば、
得られるセパレータ紙の緻密性を更に向上させることが
できる。
【0026】尚、ポリアミド繊維、ビニロン繊維等を合
成繊維として用い、セルロース繊維と混抄する場合には
通常ポリビニルアルコール繊維、ポリビニルアルコール
粉末等のバインダーを添加混合してセパレータ紙とする
が、上記バインダーの添加量は5重量%〜20重量%の
範囲であるのが好ましい。バインダーの添加量が5重量
%に足らない場合はセパレータ紙の強度が低下して好ま
しくない。またバインダーの添加量が20重量%を超え
ると繊維を相互に結着するばかりでなく、該バインダー
が繊維間隙に膜状に付着するために電気抵抗が大きくな
って好ましくない。尚、ポリビニルアルコール粉末はポ
リビニルアルコール繊維に比べて粒子径が小さいため、
前記合成繊維及びセルロース繊維間に均質に分布できる
ので、抄紙機のドライヤーで溶解、乾燥して繊維のバイ
ンダーとして作用した後でも繊維間に均質に分布して、
繊維間隙に膜状に付着しにくいために、電気抵抗をポリ
ビニルアルコール繊維を使用したセパレータ紙に比べて
小さくすることができる。
【0027】また本発明にかかるセパレータ紙の製造に
際して、前記セルロース繊維の1種あるいは2種以上を
水に分散させ、ビーターあるいはダブルディスクリファ
イナー等の製紙用叩解機で所定のCSFまで叩解し、こ
れに前記合成繊維の1種あるいは2種以上を混合して、
更にセパレータ紙の強度付与のために必要に応じてポリ
ビニルアルコール繊維、ポリビニルアルコール粉末等の
バインダーを添加混合して原料とし、丸網抄紙機あるい
は長網抄紙機等の抄紙機で抄紙する等の一般的な抄紙方
法が利用される。
【0028】以下本発明にかかるアルカリ電池用セパレ
ータ紙を製造する際の具体的な各種実施例と、この実施
例と比較するために従来例タイプのセパレータ紙を製造
する際の比較例を示す。
【0029】[実施例1]マーセル化された広葉樹木材
パルプの25重量部をダブルディスクリファイナーでC
SF200mlまで叩解した後、ビニロン繊維(0.5
d×2mm)65重量部とポリビニルアルコール繊維1
0重量部とを加えて混合して原料とした。この原料を丸
網抄紙機で抄紙して、厚さ100μm、坪量32.5g
/cm3のセパレータ紙を得た。
【0030】[実施例2]リンターパルプ15重量部を
ビーターでCSF30mlまで叩解した後、ビニロン繊
維(1d×3mm)70重量部とポリビニルアルコール
繊維15重量部とを加えて混合して原料とした。この原
料を丸網抄紙機で抄紙して、厚さ138μm、坪量3
5.8g/cm3のセパレータ紙を得た。
【0031】[実施例3]ポリノジックレーヨン繊維
(2d×8mm)30重量部をビーターでCSF400
mlまで叩解した後、ビニロン繊維(1d×3mm)6
0重量部とポリビニルアルコール繊維10重量部とを加
えて混合して原料とした。この原料を丸網抄紙機で抄紙
して、厚さ115μm、坪量31.9g/cm3のセパ
レータ紙を得た。
【0032】[実施例4]マーセル化された針葉樹木材
パルプ30重量部をダブルディスクリファイナーでCS
F380mlまで叩解した後、ビニロン繊維(0.5d
×2mm)50重量部とポリビニルアルコール粉末20
重量部とを加えて混合して原料とした。この原料を丸網
抄紙機で抄紙して、厚さ118μm、坪量32.2g/
cm3のセパレータ紙を得た。
【0033】[実施例5]マーセル化された針葉樹木材
パルプの40重量部をダブルディスクリファイナーでC
SF480mlまで叩解した後、ポリプロピレン−ポリ
エチレン酢酸ビニル複合繊維(2d×5mm)60重量
部を加えて混合して原料とした。この原料を丸網抄紙機
で抄紙して、厚さ254μm、坪量48.3g/cm3
のセパレータ紙を得た。
【0034】[実施例6]マーセル化された針葉樹木材
パルプの45重量部をダブルディスクリファイナーでC
SF160mlまで叩解した後、ポリエチレン合成パル
プ25重量部とポリプロピレン−ポリエチレン複合繊維
(0.7d×5mm)30重量部を加えて混合して原料
とした。この原料を丸網抄紙機で抄紙して、厚さ123
μm、坪量34.4g/cm3のセパレータ紙を得た。
【0035】[比較例1]末叩解のマーセル化広葉樹木
材パルプの25重量部(CSF680ml)にビニロン
繊維(0.5d×2mm)65重量部とポリビニルアル
コール繊維10重量部を加えて混合して原料とした。こ
の原料を丸網抄紙機で抄紙して、厚さ110μm、坪量
32.1g/cm3の前記実施例1に対応するセパレー
タ紙を得た。
【0036】[比較例2]軽度に叩解されたリンターパ
ルプ15重量部(CSF580ml)にビニロン繊維
(1d×3mm)70重量部とポリビニルアルコール繊
維15重量部を加えて混合して原料とした。この原料を
丸網抄紙機で抄紙して、厚さ140μm、坪量35.7
g/cm3の前記実施例2に対応するセパレータ紙を得
た。
【0037】[比較例3]ビスコースレーヨン繊維
(0.7d×5mm)30重量部にビニロン繊維(1d
×3mm)60重量部とポリビニルアルコール繊維10
重量部を加えて混合して原料とした。この原料を丸網抄
紙機で抄紙して、厚さ118μm、坪量31.5g/c
3の前記実施例3に対応するセパレータ紙を得た。
【0038】上記の実施例1〜実施例6と比較例1〜比
較例3によって得られたセパレータ紙に関し、そのCS
F(ml),厚さ(μm)、坪量(g/cm3)、引張強さ(k
g)、気密度(秒/100ml),膨潤度(%)及び電気抵
抗(mΩ)を夫々測定した。なお測定方法及び装置は次の
通りである。
【0039】(1)厚さ 厚さは得られたセパレータ紙の5ヵ所をダイヤルシック
ネスゲージで測定し、その平均値とした。
【0040】(2)坪量,引張強さ 坪量はJISP8124に規定された方法を採用し、同
じく引張強さはJISP8113に規定された方法を採
用した。
【0041】(3)気密度 気密度は、JISP8117(紙及び板紙の透気度試験
方法)のB型測定器の下部試験片取り付け部分に直径6
mmの円形絞りを取り付け、絞りの間にセパレータ紙を
挟み込み、セパレータ紙の直径6mm円形面を100m
lの空気が通過するのに要する時間(秒/100ml)
を測定した。
【0042】(4)膨潤度 膨潤度は、セパレータ紙を2枚重ねにして40%KOH
水溶液に30分浸漬し、浸漬前後のセパレータ紙の厚さ
をダイヤルシックネスゲージで測定し、次式で膨潤度を
求めた。 膨潤度(%)=(浸漬後の厚さ−浸漬前の厚さ)÷浸漬前の
厚さ×100
【0043】(5)電気抵抗 電気抵抗は3mmの間隔で平行した白金電極の間にセパ
レータ紙を挿入し、この挿入に伴う電極間の電気抵抗の
増加をセパレータ紙の電気抵抗とした。尚、電解液とし
ては40%KOH水溶液を使用して、電極間の電気抵抗
は1000Hzの周波数でESRメータを用いて測定し
た。このような測定手段を用いて前記各実施例及び比較
例のセパレータ紙を測定した結果を表1に示す。
【0044】
【表1】
【0045】表1の測定結果に示す通り、本発明にかか
るセパレータ紙は、従来のセパレータ紙に比較して、気
密度が顕著に高くなっており、一方電気抵抗及び膨潤度
は小さくなっている。例えば、実施例1はマーセル化し
たセルロース繊維をCSF200mlまで叩解したもの
を25重量部含有するセパレータ紙であり、従来の未叩
解のセルロース繊維を使用した比較例1に対応するもの
であるが、比較例1の気密度は1.2秒であって、緻密
性に欠け、内部短絡を生じ易いものであるのに対し、実
施例1の気密度は10.7秒であって、大幅に気密性が
高められ、緻密性が向上している。そして、電気抵抗も
比較例1が18.5mΩであるのに対し、実施例1は1
7.9mΩと改善されており、内部抵抗を小さくするこ
とができる。更に膨潤度も比較例1が26%であるのに
対し、実施例1は14%と小さくなっており、耐アルカ
リ性をも向上させることができる。
【0046】次に叩解の程度がCSF580mlである
比較例2と同一の原料をCSF30mlまで叩解した実
施例2を比較すると、比較例2の気密度は1.9秒であ
り、未叩解の比較例1に比して僅か改善されているが充
分ではなく、CSF500ml以下に叩解することが必
要である。そして同一の原料であっても実施例2のよう
にCSF30mlまで叩解すると気密度は15.8秒と
大幅に高められており、又電気抵抗及び膨潤度もそれぞ
れ小さくなっている。
【0047】以上の測定結果から本発明にかかるセパレ
ータ紙は前記した略3〜30秒/100ml程度の高い
気密度を実現することができており、従って緻密性に優
れており、アルカリ電池のセパレータ紙として使用した
場合に両極活物質の接触による内部短絡が防止され、更
に低水銀化に伴う導電性亜鉛結晶による内部短絡の防止
効果が大きく、しかも電気抵抗の小さなセパレータ紙で
あることが明らかである。また叩解を施すことによって
電解液中での膨潤度も減少するため、セパレータ紙の耐
アルカリ性も向上するものである。
【0048】なお、気密度は前記したようにJISP8
117(紙及び板紙の透気度試験方法)のB型測定器の
下部試験片取り付け部分に直径6mmの円形絞りを取り
付け、絞りの間にセパレータ紙を挟み込み、セパレータ
紙の直径6mm円形面を100mlの空気が通過するの
に要する時間(秒/100ml)を測定した。これはJ
ISP8117に規定される測定器の試験片空気通過面
積は645.16mm 2であり、これでは本発明にかか
るセパレータ紙も従来例のセパレータ紙も1秒/100
ml程度のレベルとなり、その差異を測定できないた
め、直径6mmの円形絞りを取り付けることにより、試
験片空気通過面積を28.26mm2として測定したも
のである。
【0049】次に前記実施例1〜実施例6と、比較例1
〜比較例3によって得られたセパレータ紙を用いて、低
水銀化亜鉛活物質を使用したアルカリマンガン電池(L
R−6)を試作して、75Ωで100時間の放電試験を
実施し、試験前後の前記電池の放電電圧を測定した結果
を測定した結果を表2に示す。
【0050】
【表2】
【0051】表2から明らかなように従来のセパレータ
紙を使用した比較例1,2,3の電池の場合、試験後の
放電電圧が全て0.9V以下となっているのに対して、
本発明にかかる実施例1〜6のセパレータ紙を使用した
電池は放電電圧が1.00V以上残存していることが確
認された。即ち比較例1〜3の場合、セパレータ紙の緻
密性が充分でないため、低水銀化亜鉛活物質の使用に伴
って発生した導電性酸化亜鉛結晶によって電池が内部短
絡を起したのに対して、実施例1〜6の場合は前記導電
性酸化亜鉛結晶がセパレータ紙によって充分に阻止され
て、電池の内部短絡を防止したためであると考えること
が出来る。
【0052】なお、本発明にかかるセパレータ紙のよう
に叩解して微細になったセルロース繊維を含むセパレー
タ紙は従来の叩解されていないセルロース繊維と合成繊
維を混抄したセパレータ紙に比べて、電解液の作用によ
って劣化を起し易いようにも思われる。しかしながら、
本発明のようにセルロース繊維の中でも耐アルカリ性に
秀れたセルロース繊維を叩解して使用した場合に得られ
るセパレータ紙は表2の測定結果に示す通り、電解液中
に長期間保存しても劣化は認められず、むしろ電解液中
での膨潤度が表1に示すように減少するため、耐アルカ
リ性は向上するものである。
【0053】
【発明の効果】以上詳細に説明した如く、本発明にかか
るアルカリ電池用セパレータ紙は、叩解可能な耐アルカ
リ性セルロース繊維と合成繊維とを混抄して成るアルカ
リ電池用セパレータ紙であって、該耐アルカリ性セルロ
ース繊維を15重量%〜40重量%の範囲で含有し、か
つ、該耐アルカリ性セルロース繊維の叩解の程度をCS
Fの値で400ml〜50mlの範囲とすることによ
り、アルカリ電池用セパレータ紙の気密度を略3〜30
秒/100mlとしたことを基本構成としているため、
以下に記す作用効果がもたらされる。即ち得られたセパ
レータ紙の孔径が小さいため、繊維が緻密化されるとと
もにセパレータ紙としての気密度が高く保持されるの
で、アルカリ電池のセパレータ紙として使用した場合に
両極活物質の接触による内部短絡を効果的に防止するこ
とができる。またセパレータ紙として使用するに際して
該セパレータ紙の積層枚数を少なくすることができるの
で、電池容量を増大することができる。
【0054】更に低水銀化に伴う導電性亜鉛結晶による
内部短絡の防止効果が大きく、かつ、電気抵抗の小さな
セパレータ紙を提供することが可能である。また得られ
たセパレータ紙を用いて低水銀化亜鉛活物質を使用して
試作したアルカリ電池は、前記導電性酸化亜鉛結晶がセ
パレータ紙によって充分に阻止されるので、電池の内部
短絡を防止されて長時間の放電試験後の電池の放電電圧
を高く保持することができるという大きな効果が得られ
る。
【0055】更にマーセル化したセルロース繊維を叩解
して使用する場合には、比較的高密度としても依然とし
て十分に短かいイオンの導電路を保持し、かつ、極めて
秀れた緻密性と均一性を有しており、緻密性により内部
短絡を完全に防止できるとともに、その十分に短かいイ
オンの導電路によりイオンの伝導性を高め、電気抵抗を
小さくすることができる。またセパレータ紙の電池への
挿入が容易であり、電池内のセパレータ面積の大小に影
響されないという利点を有している。
フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭61−128460(JP,A) 特開 昭62−154559(JP,A) 特開 昭54−34404(JP,A) 特開 平1−146249(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H01M 2/14 - 2/18

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 叩解可能な耐アルカリ性セルロース繊維
    と合成繊維とを混抄して成るアルカリ電池用セパレータ
    紙であって、該耐アルカリ性セルロース繊維を15重量
    %〜40重量%の範囲で含有し、かつ、該耐アルカリ性
    セルロース繊維の叩解の程度をCSFの値で400ml
    50mlの範囲とすることにより、アルカリ電池用セ
    パレータ紙の気密度を略3〜30秒/100mlとした
    ことを特徴とするアルカリ電池用セパレータ紙。
  2. 【請求項2】 前記合成繊維の一部あるいは全部がビニ
    ロン繊維である請求項記載のアルカリ電池用セパレー
    タ紙。
  3. 【請求項3】 前記合成繊維の一部あるいは全部が複合
    繊維である請求項記載のアルカリ電池用セパレータ
    紙。
  4. 【請求項4】 前記合成繊維の一部あるいは全部が合成
    パルプである請求項記載のアルカリ電池用セパレータ
    紙。
  5. 【請求項5】 前記耐アルカリ性セルロース繊維の一部
    あるいは全部が天然セルロース繊維をマーセル化した繊
    維である請求項1,2,3又は4記載のアルカリ電池用
    セパレータ紙。
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