JP3307018B2 - ポリアリーレンスルフィド樹脂の製造方法およびポリフェニレンスルフィド樹脂 - Google Patents

ポリアリーレンスルフィド樹脂の製造方法およびポリフェニレンスルフィド樹脂

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JP3307018B2
JP3307018B2 JP24926693A JP24926693A JP3307018B2 JP 3307018 B2 JP3307018 B2 JP 3307018B2 JP 24926693 A JP24926693 A JP 24926693A JP 24926693 A JP24926693 A JP 24926693A JP 3307018 B2 JP3307018 B2 JP 3307018B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は従来の熱架橋ポリアリー
レンスルフィド樹脂とは異なる架橋型構造を有し、優れ
た靱性と延性を有するポリアリーレンスルフィド樹脂の
製造方法および前記した特徴を有するポリフェニレンス
ルフィド樹脂に関するものである。
【0002】脆くて延びないという従来の熱架橋型ポリ
アリーレンスルフィド樹脂の欠点を解消した本発明のポ
リアリーレンスルフィド樹脂は、熱架橋や合成反応のみ
の手段では達成が困難な、高粘度かつ高分子量で延性が
高い特性を有しており、押し出し成形、ブロー成形等等
の用途あるいは靱性の必要な射出成形法による各種自動
車部品、電子機器部品への用途に特に好適である。
【0003】
【従来技術】ポリフェニレンスルフィド樹脂(以下、P
PSと略す)をはじめとするポリアリーレンスルフィド
樹脂(以下、PASと略す)はそれ自体優れた耐熱性、
耐薬品性を有しており、ポリテトラフルオロエチレン樹
脂に匹敵する、優れた耐食性、耐薬品性、耐熱性を生か
して、射出成形法による各種自動車部品、電気電子機器
部品への応用、粉末PASを用いた金属へのコーティン
グ等の分野へ使用されている。従来、合成時に得られる
PASの分子量が低くそのままでは成形品の強度が不足
し使用できないため、酸化架橋することによりその分子
量を増大し実用に足る成形品強度を発現せしめてきた。
【0004】この酸化架橋は、一般的には、酸素含有雰
囲気下でPASを融点未満の固相状態で加熱するか、融
点以上の溶融状態で加熱することにより進行する。
【0005】PAS粉体を酸化架橋する方法としては、
特公昭45−3368号あるいは米国特許335412
9号に記載の強制熱風循環式乾燥機を使用する方法、米
国特許3717620号に記載の二重螺旋型固定型攪拌
翼を使用する方法、米国特許3793256号、特開昭
62−177027号に記載の流動層を使用する方法等
があり公知である。これらの方法で得られた高分子量化
ポリマーは直鎖状ではなく分岐構造を多く有するポリマ
ーであるために引張伸び率、アイゾット衝撃強度に代表
される延性、靱性に乏しいという問題点がある。
【0006】そこで重合反応工程を改善し重合助剤やい
わゆる水添加法によるPASポリマーの直鎖高分子量化
の方法が特公昭50−122240号や特公昭63−3
3775号などに開示されている。しかしこれらの製造
法は重合助剤の除去プロセスや反応溶媒の精製装置が必
要になるなど経済的ではない。
【0007】また特開昭62−197422号などに示
されるように、ある値以下のメルトフローレートすなわ
ちある値以上の分子量を有するPPSを酸化架橋する方
法や、特開平5−125186号や特開平4−3398
30号、特開平5−43692号などで示されるように
不活性雰囲気下の熱処理と酸化性雰囲気下での熱処理を
組み合わせる多段熱処理法あるいはある一定濃度の酸素
濃度雰囲気下で熱処理する方法が開示されている。しか
し分子量の向上度すなわち増粘度が十分でなく分子量を
増大させるという熱処理本来の目的を十分に達成できな
い等の重大な欠点があった。また特開平1−12132
7号も同様に20%以下の調節された酸素濃度雰囲気下
で酸化架橋する方法を開示しているが酸化架橋前の分子
量が低いため靱性あるいは延性が十分向上していない。
【0008】
【本発明が解決しようとする課題】本発明者らは従来の
酸化架橋の欠点であった架橋構造生成による分子量増大
ではなく、架橋構造の生成と共に直鎖状に分子量をバラ
ンスよく増大させることによって、従来の架橋型PAS
の欠点として知られてきた脆性を改良し、さらには従来
高分子量直鎖型ポリマ−でのみ可能であった延性、押し
出し加工性等に優れるPASの製造方法を提供するもの
である。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明者らはかかる問題
点に鑑み、鋭意検討した結果、ある特定のPASを特定
の条件で熱処理することにより、延性押し出し加工性に
優れるPASが得られることを見い出し、本発明に至っ
た。
【0010】すなわち本発明は、アセトン/水水溶液に
分散せしめたときのpHが7を越えるポリアリーレンス
ルフィド樹脂を融点未満、180℃以上で、実質的に非
酸化性雰囲気下、減圧下で加熱熱処理することを特徴と
するポリアリーレンスルフィド樹脂の製造方法にかかわ
る。
【0011】また、PPSをはじめとするPASもポリ
エチレンやポリエチレンテレフタレートなどの他のポリ
マーと同様その分岐構造の多寡は一般に溶液粘度(固有
粘度)と溶融粘度の関係で表され、例えば特開平4−1
12334号でも直鎖型PPSの固有粘度と溶融粘度の
関係式が開示されている。そこで本発明者らは従来の酸
化架橋の欠点を克服した架橋型PPSについて固有粘度
と溶融粘度との関連性も検討してみた。
【0012】ポリエチレンをはじめとする既存の各種汎
用樹脂の例にみられるように高分子材料における分子量
と分岐度を調節することにより高分子の特性を制御する
ことは工業的にも学術的にもよく知られている。すなわ
ち、その分子量を調節することにより延性、靱性、強度
を制御し、分岐度を制御することにより溶融粘弾性を主
とする成形加工性を制御することができる。例えば一般
に高分子の溶融粘度は、その分子量の3.5乗に比例し
(高分子学会編集「入門高分子物性」P34、共立出版
(株)1985刊)、また直鎖高分子の固有粘度[η]
はその直鎖部分の長さMのa乗に比例することが知られ
ている(高分子学会編集「高分子測定法 構造と物性
上」P7〜8、(株)培風館)。
【0013】さらに、分子量Mの分岐高分子においてそ
の分岐係数をgとすると、次の関係式(1)が成り立つ
ことも知られている。
【0014】[η]=k×(M/g)a (1) (但しk:比例係数である。またg=1のとき直鎖高分
子、分岐度が高いほどgは大きくなる。)参考文献:高
橋雅興 高分子38巻2月号P150〜153(198
9年)W.W.Graessley,et al:J.Polymer.Sci.,Symp.,VOL
71 P77-93(1984)
【0015】そしてこれらの関係式より分岐高分子の分
岐の度合いは、以下に示す固有粘度[η]とメルトフロ
ーレート(MFR)の関係式(2)で便宜的に表すこと
が出来る。
【0016】 [η]=k×(M/g)a=k1×(MFR)-b (2) ここでk1およびbは正の実数であり、これらの数値は
ポリマーの種類によりほぼ一定である。そして分岐高分
子においてはこれらの数値が小さいほど分岐度は大きい
といえる。
【0017】PPSにおいてはPPSの溶解性の乏しさ
故にこれらの知見は十分判明していないが、係数の多少
の違いは別として成立することが期待できる。本発明者
らが検討したところでは熱処理前のPPSは以下のよう
な関係式が成立した。
【0018】 [η]=A×(MFR0)-B (3) (ここで、A=0.9433±0.01、B=0.21
70±0.05であり、MFR0は熱処理前のメルトフ
ローレートを示す。)
【0019】そこでPPSの熱処理に関し、本発明者ら
はかかる基本概念に基づき鋭意検討した結果、前処理条
件と熱処理条件を調節することによりその分岐度を制御
でき、かつこれが延性や成形加工性と密接な関係にある
こと、さらにはメルトフローレート(MFR)と固有粘
度[η]の関係がある特定の条件式に合致したPPSで
は延性や成形加工性が優れることを見い出した。
【0020】即ち、本発明はメルトフローレート(MF
R)と固有粘度[η]との関係が、 [η]=A×(MFR0)-B×(MFR/MFR0)-C±
0.005 ここで、A=0.9433±0.01 B=0.2170±0.05 C≧0.150 (式中、MFR0は熱処理前のメルトフローレート、M
FRは熱処理後のメルトフローレートを示す。)を満た
すポリフェニレンスルフィド樹脂にもかかわる。
【0021】なお、上記のメルトフローレート(MF
R)は、ASTM D−1238−86に従い荷重5K
g、315.6゜Cで測定した10分あたりのg数であ
る。また固有粘度[η]は、0.4g/100mlのポ
リマー濃度のα-クロロナフタレン溶液を用いて206
℃で測定した相対粘度の対数をポリマー濃度で除した値
である。
【0022】
【構成】本発明におけるPASは、基本的には、周知の
方法である硫化アルカリ金属、ポリハロ芳香族化合物と
を有機極性溶媒中で製造される。たとえば、特公昭45
−3368号や特公昭50−122240号、特公昭5
7−14698号、特公昭63−33775号等に開示
されている方法等で得ることができる。
【0023】PASの製造に用いられる硫化アルカリ金
属としては、硫化リチウム、、硫化ナトリウム、硫化カ
リウム、硫化ルビジウム、硫化セシウムおよびこれらの
混合物が含まれる。かかる硫化アルカリ金属は水和物お
よび/あるいは水性混合物としてあるいは無水の形で用
いることができる。また硫化アルカリ金属のかわりに水
硫化アルカリ金属と水酸化アルカリ金属を共用すること
もできる。また通常硫化アルカリ金属中に微量存在する
水硫化アルカリ金属、チオ硫酸アルカリ金属と反応させ
るために小量の水酸化アルカリ金属を加えても差し支え
ない。
【0024】PASの製造に用いられるポリハロ芳香族
化合物は、芳香族に直接結合した2個以上のハロゲン原
子を有するハロゲン化芳香族化合物であり、具体的に
は、p−ジクロロベンゼン、m−ジクロロベンゼン、o
−ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、テトラクロ
ロベンゼン、ジクロロナフタレン、トリクロロナフタレ
ン、ジブロモベンゼン、トリブロモベンゼン、ジブロモ
ナフタレン、ジヨードベンゼン、トリヨードベンゼン、
ジクロロジフェニルスルホン、ジブロモジフェニルスル
ホン、ジクロロベンゾフェノン、ジブロモベンゾフェノ
ン、ジクロロジフェニルエーテル、ジブロモジフェニル
エーテル、ジクロロジフェニルスルフィド、ジブロモジ
フェニルスルフィド、ジクロロビフェニル、ジブロモビ
フェニル等、及びこれらの混合物があげられる。通常、
PASの合成ではジハロ芳香族化合物が使用されるが、
ポリマーに分岐構造をもたせ、粘度増大を図るために1
分子中に3個以上のハロゲン置換基をもつポリハロ芳香
族化合物を少量ジハロ芳香族化合物と併用させることも
できる。
【0025】重合反応において使用される溶媒は、その
温度および圧力において実質的に液状である有機極性溶
媒が好ましい。具体的には、ホルムアミド、アセトアミ
ド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルム
アミド、N,N−ジメチルアセトアミド、2−ピロリド
ン、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピ
ロリドン、ε−カプロラクタム、N−メチル−ε−カプ
ロラクタム、ヘキサメチルホスホルアミド、テトラメチ
ル尿素、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等の
アミド、尿素およびラクタム類;スルホラン、ジメチル
スルホラン等のスルホン類;ベンゾニトリル等のニトリ
ル類;メチルフェニルケトン等のケトン類;ポリエチレ
ングリコール類等およびこれらの混合物を挙げることが
できる。これらの溶媒のうちでは、アミド類、ラクタム
類あるいはスルホン類等の非プロトン性有機極性溶媒を
使用しすることが特に好ましい。
【0026】これらPASの代表的なものとして、ポリ
フェレンスルフィド、ポリフェニレンスルフィドケト
ン、ポリフェニレンスルフィドスルホン、これらのラン
ダム共重合体、ブロック共重合体、及びそれらの混合物
あるいは単独共重合体との混合物などがあげられる。P
ASの中でも、繰り返し単位の結合は芳香環に関して、
パラ位の構造が耐熱性や結晶性の面で好ましい。特に、
(−φ−S−)(但し、−φ−はp−フェニレン基を示
す。)を主たる繰り返し単位とするポリ−p−フェニレ
ンスルフィドは、物性面及び経済性の面で好適である。
【0027】さらに本発明に用いられるPASは反応終
了後、通常の方法よって分離させられたものでよい。例
えば、反応終了後の反応混合物のろ過、引き続く水洗に
より、または反応混合物の水による希釈、引き続きろ過
及び水洗する方法、あるいは溶媒を常圧または減圧にて
蒸留回収してから水洗及びろ過することによって、反応
混合物から分離させることができる。
【0028】しかしながら、本発明の目的を達成するた
めには本発明の熱処理方法に供するPASは、アセトン
/水混合系に分散させたポリマー分散液のpHが7を越
えることが絶対に必要である。pHが8以上であること
が好ましく、さらに9以上であることが特に好ましい。
なお、このpH測定は、具体的にはまずポリマー10部
をアセトン30部に分散させ、次いで水70部を添加し
たポリマー分散液のpHを測定して求める。
【0029】また本発明方法に供するPASは、好まし
くは反応後のスラリーより食塩を除去する水洗工程等に
おいてあらかじめ苛性ソーダ水溶液等で予備処理したも
のがよい。このアルカリ処理により熱処理工程における
ポリマーの重合活性を安定化・増大せしめることができ
ると考えられる。
【0030】アルカリ処理の際に使用するアルカリ性水
溶液としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水
酸化リチウム、水酸化セシウム、水酸化ルビジウムある
いは水酸化カルシウム等の水溶液あるいはこれにアセト
ン、エタノール等の水溶性有機溶剤混合液があげられ
る。
【0031】本発明の熱処理方法に供せられるPASは
いかなる粒度を有するものでも良い。例えば粒子径0.
1ミクロン〜1000ミクロンの粉状PAS、前記粉末
を機械的な圧縮により粒子密度を0.7以上にした造粒
PASのほか、通常の押し出し溶融成形によりペレット
化したPASペレットも用いることができる。表面積が
大きく熱処理の際に揮発成分が取り除き易い、粉末状P
ASの使用がより好ましい。
【0032】本発明における熱処理方法は、前記した特
定のポリアリーレンスルフィド樹脂を用い、これを融点
未満、180℃以上で、実質的に非酸化性雰囲気下、減
圧下で固相状態のままで加熱熱処理することによってな
される。
【0033】ここでいう実質的に非酸化性雰囲気下と
は、実質的に酸素を含まない雰囲気下であり、例えば窒
素等の不活性ガス雰囲気下をいう。
【0034】本発明方法における減圧条件としては、2
00mmHg以下がよく、特に100mmHg以下が好
ましい。
【0035】また本発明の熱処理方法に引き続き、さら
に従来の熱処理法を行ってポリアリーレンスルフィド樹
脂を製造してもよい。
【0036】本発明方法によって製造されたPPSに代
表されるPASは、射出成形用、圧縮成形用、フィルム
・繊維・シート・管・チューブなどの押出成形品及びブ
ロー成形品、トランジスタ・コンデンサ・IC等の電子
部品の封止に用いることができる。また本発明方法によ
って製造されたPASは、延性に優れるため押出成形用
特にパイプ、ブロー成形品、フィルム、繊維、シート等
に特に好適に用いることができる。また靱性・耐衝撃性
に優れるのでコネクタ等の電子部品にも好適に用いるこ
とができる。
【0037】本発明方法によって得られたポリマーに
は、必要によって、従来PAS樹脂に対して既に適宜添
加されていた充填剤、顔料、難燃剤、安定化剤及び他の
ポリマー等を配合することも好適である。例えば、機械
的強度及び耐熱性を向上させるために、ガラス繊維ある
いは炭素繊維等の強化充填剤を配合することもできる。
【0038】
【実施例】以下、本発明について実施例及び比較例によ
り具体的に説明するが、本発明はこれら実施例のみに限
定されるものではない。
【0039】実施例1 1M3オートクレーブにN−メチルピロリドン 440
Kgと硫化ナトリウム2.7水塩 132Kg(101
0モル)及び水酸化ナトリウム 500g(12.5モ
ル)を仕込み、窒素雰囲気200℃まで約2時間かけて
攪拌しながら昇温し、約260リットルの水を留出させ
た。反応器を密閉にし、p−ジクロルベンゼン 148
Kg(1010モル)及びN−メチルピロリドン 10
0Kg加え222℃で3時間、245℃で3時間反応さ
せた。重合終了時の内圧は8.1Kg/cm2ゲージ圧
であった。反応器を冷却後、内容物を濾別し、脱イオン
水で水洗および濾過を3回繰り返した後、濾過ケーキの
2/3を80℃の5%苛性ソーダ水溶液 1M3で洗浄
した後、100℃で真空乾燥し、MFR値610のPP
S粉末樹脂を得た。これを樹脂Aとする。本樹脂の固有
粘度は0.235であった。また、アセトン/水=30
/70の溶液 100部にこの粉末PPS10部を分散
せしめた液のpHは9.1であった。
【0040】上記の樹脂粉末A 3Kgを気体導入部、
気体排気部、および熱媒循環式ジャケットを備えた30
リットル容器回転型の2重円錐型加熱装置に仕込んだ。
次に回転数4rpmで容器の回転を開始したのち、窒素
ガスを20リットル/分で10分導入した後、減圧を開
始し4mmHgに容器内を保持した。さらにジャケット
に260℃の熱媒を循環させ昇温を開始した。昇温開始
後2、4、6時間後に容器内より50gずつPPS粉末
をサンプリング(サンプルNo.A1−1、A1−2、
A1−3)した。さらに昇温開始9.5時間後、熱媒を
冷却し容器を100℃まで冷却した後、容器内よりPP
S粉末を取り出した。このPPS粉末をサンプルNo.
A1−4とする。
【0041】比較例1 実施例1において窒素ガスのかわりに乾燥空気5リット
ル/分を熱処理の最初から最後まで導入する以外は実施
例1と同様に樹脂粉末Aを熱処理し、同様に2、4、6
時間後にサンプリング(サンプルNo.A2−1、A2
−2、A2−3)した。さらに昇温開始8時間後に実施
例1と同様冷却し容器内よりPPS粉末を取り出した。
このPPS粉末をサンプルNo.A2−4とする。
【0042】比較例2 実施例1において脱イオン水で水洗および濾過を3回繰
り返した後の残りの1/3の濾過ケーキを30℃の2%
塩酸水溶液50リットルを用いて洗浄した後、濾過し
た。この洗浄濾過をもう一度繰り返した後、100℃で
真空乾燥してPPS粉末樹脂を得た。これを樹脂A´と
する。アセトン/水=30/70の溶液100部にこの
粉末PPS 10部を分散せしめた液のpHは5.5で
あった。
【0043】引き続いて実施例1と同様の方法条件で熱
処理し同様に2、4、6時間後にサンプリング(サンプ
ルNo.A3−1、A3−2、A3−3)した。さらに
昇温開始7.5時間後に実施例と同様冷却し、容器内よ
りPPS粉末を取り出した。これをサンプルNo.A3
−4とする。
【0044】サンプリングした樹脂のMFRと固有粘度
を測定した。そのデータを表1にまとめる。また、MF
Rと固有粘度の関係図を図1に示す。
【0045】
【表1】
【0046】また、図1と以下に示す表2から明らかな
ように、本発明方法によるPPSはMFRと固有粘度の
関係において前記した関係式を満たすことがわかる。
【0047】
【表2】
【0048】実施例2 1M3オートクレーブにN−メチルピロリドン 440
Kgと硫化ナトリウム2.7水塩 132Kg(101
0モル)及び水酸化ナトリウム 1000g(25.0
モル)を仕込み、窒素雰囲気下200℃まで約2時間か
けて攪拌しながら昇温し、約260リットルの水を留出
させた。反応器を密閉にし、p−ジクロルベンゼン 1
52Kg(1040モル)及びN−メチルピロリドン
100Kg加え、222℃で3時間、245℃で3時間
反応させた。重合終了時の内圧は8.1Kg/cm2
ージ圧であった。反応器を冷却後、内容物を濾別し、脱
イオン水で水洗および濾過を3回繰り返した後、濾過ケ
ーキの2/3を80℃の5%苛性ソーダ水溶液 1M3
で洗浄した後、100℃で真空乾燥し、MFR値119
0のPPS粉末樹脂を得た。これを樹脂Bとする。本樹
脂の固有粘度は0.202であった。またアセトン/水
=30/70の溶液100部にこの粉末PPS10部を
分散せしめた液のpHは9.3であった。
【0049】樹脂粉末B 3Kgを実施例1と同様の操
作にて容器回転型の30リットルの2重円錐型加熱装置
を用い、熱媒温度250℃で熱処理した。昇温開始後
2、4、6時間後に容器内より50gずつPPS粉末を
サンプリング(サンプルNo.B1−1、B1−2、B
1−3)した。さらに昇温開始10.5時間後、熱媒を
冷却し容器を100℃まで冷却した後、容器内よりPP
S粉末を取り出した。このPPS粉末をサンプルNo.
B1−4とする。
【0050】比較例3 実施例2において窒素ガスのかわりに乾燥空気5リット
ル/分を熱処理の最初から最後まで導入する以外は実施
例2と同様に樹脂粉末Bを熱処理した。昇温開始2、
4、6時間後にサンプリング(サンプルNo.B2−
1、B2−2、B2−3)した。さらに昇温開始7.7
時間後に実施例2と同様冷却した後、容器内よりPPS
粉末を取り出した。このPPS粉末をサンプルNo.B
2−4とする。
【0051】比較例4 実施例2において脱イオン水で水洗および濾過を3回繰
り返した後の残りの1/3の濾過ケーキを30℃の2%
塩酸水溶液50リットルを用いて洗浄した後、濾過し
た。この洗浄濾過をもう一度繰り返した後、100℃で
真空乾燥しPPS粉末樹脂を得た。これを樹脂B´とす
る。アセトン/水=30/70の溶液100部にこの粉
末PPS10部を分散せしめた液のpHは5.5であっ
た。
【0052】引き続いて実施例2と同様に熱処理をおこ
なった。昇温開始2、4時間後にサンプリング(サンプ
ルNo.B3−1、B3−2)した。さらに昇温開始6
時間後に前記実施例と同様冷却した後、容器内より取り
出したPPS粉末をサンプルNo.B3−3とする。
【0053】サンプリングした樹脂のMFRと固有粘度
を測定した。そのデータを表3にまとめる。また、MF
Rと固有粘度の関係図を図2に示す。
【0054】
【表3】
【0055】また、図2と以下に示す表4から明らかな
ように、本発明方法によるPPSはMFRと固有粘度の
関係において前記した関係式を満たすことがわかる。
【0056】
【表4】
【0057】実施例3 1M3オートクレーブにN−メチルピロリドン 271
Kgと硫化ナトリウム2.7水塩 132Kg(101
0モル)及び水酸化ナトリウム 1000g(25.0
モル)を仕込み、窒素雰囲気下200℃まで約2時間か
けて攪拌しながら昇温し、約26リットルの水を留出さ
せた。反応器を密閉にし、p−ジクロルベンゼン153
Kg(1050モル)及びN−メチルピロリドン 50
Kg加え222℃で3時間、245℃で3時間反応させ
た。重合終了時の内圧は9.8Kg/cm2ゲージ圧で
あった。反応器を冷却後、内容物を濾別し、脱イオン水
で水洗および濾過を3回繰り返した後、濾過ケーキの2
/3を80℃の5%苛性ソーダ水溶液 1M3で洗浄し
た後100℃で真空乾燥し、MFR値2900のPPS
粉末樹脂を得た。これを樹脂Cとする。本樹脂の固有粘
度は0.167であった。またアセトン/水=30/7
0の溶液100部にこの粉末PPS10部を分散せしめ
た液のpHは9.3であった。
【0058】PPS粉末樹脂C 3Kgを気体導入部、
気体排気部、および熱媒循環式ジャケットを備えた30
リットル容器回転型の2重円錐型加熱装置に仕込んだ。
次に回転数4rpmで容器の回転を開始したのち、窒素
ガスを20リットル/分で10分導入した後、減圧を開
始し4mmHgに容器内を保持した。さらにジャケット
に260℃の熱媒を循環させ昇温を開始した。昇温開始
後2、4、6、8時間後に容器内より50gずつPPS
粉末をサンプリング(サンプルNo.C1−1、C1−
2、C1−3、C1−4)した。さらに12.2時間終
了後、熱媒を冷却し容器を100℃まで冷却した後、容
器内よりPPS粉末を取り出した。このPPS粉末をサ
ンプルNo.C1−5とする。
【0059】比較例5 実施例3において窒素ガスのかわりに乾燥空気5リット
ル/分を熱処理の最初から最後まで導入する以外は実施
例3と同様に樹脂粉末Cを熱処理し同様に2、4、6時
間後にサンプリング(サンプルNo.C2−1、C2−
2、C2−3)した。さらに昇温開始9.5時間後に実
施例2と同様冷却した後、容器内よりPPS粉末を取り
出した。このPPS粉末をサンプルNo.C2−4とす
る。
【0060】比較例6 実施例3において脱イオン水で水洗および濾過を3回繰
り返した後の残りの1/3の濾過ケーキを30゜Cの2
%塩酸水溶液50lを用い洗浄した後濾過した。この洗
浄濾過をもう一度繰り返した後100゜Cで真空乾燥し
PPS粉末樹脂を得た。これを樹脂C´とする。アセト
ン/水=50/50の溶液100部にこの粉末PPS1
0部を分散せしめた液のpHは5.5であった。
【0061】引き続いて実施例3と同様の方法条件で熱
処理をおこなった。昇温開始7.5時間後、上記実施例
と同様に容器内より取り出したPPS粉末をサンプルN
o.C3−4とする。
【0062】サンプリングした樹脂のMFRと固有粘度
を測定した。そのデータを表5にまとめる。また、MF
Rと固有粘度の関係図を図3に示す。
【0063】
【表5】
【0064】また、図3と以下に示す表6から明らかな
ように、本発明方法によるPPSはMFRと固有粘度の
関係において前記した関係式を満たすことがわかる。
【0065】
【表6】
【0066】実施例4 1M3オートクレーブにN−メチルピロリドン 440
Kg、硫化ナトリウム2.7水塩 132Kg(104
0モル)および水酸化ナトリウム 500g(12.5
モル)および無水酢酸ナトリウム 430Kg(520
モル)を仕込み、窒素雰囲気下で、200℃まで約2.
2時間かけて攪拌しながら昇温して28リットルの水を
留出させた。反応系を密閉にし、pージクロルベンゼン
153Kg(1010モル)およびNーメチルピロリ
ドン 100Kgを加え、230℃で3時間、ついで2
55℃で2時間反応させた。重合終了時の内圧は9.0
Kg/cm2であった。反応器を冷却後、内容物を濾別
し脱イオン水で水洗および濾過を3回繰り返した後、濾
過ケーキの2/3を80℃の5%苛性ソーダ水溶液1M
3で洗浄した後、100℃で真空乾燥し、MFR値15
2のPPS粉末樹脂を得た。これをPPS樹脂粉末Dと
する。本樹脂の固有粘度は0.318であった。またア
セトン/水=30/70の溶液100部にこの粉末PP
S10部を分散せしめた液のpHは9.1であった。
【0067】樹脂粉末D 3Kgを気体導入部、気体排
気部、および熱媒循環式ジャケットを備えた30リット
ル容器回転型の2重円錐型加熱装置に仕込んだ。次に回
転数4rpmで容器の回転を開始したのち、窒素ガスを
20リットル/分で10分導入した後、減圧を開始し4
mmHgに容器内を保持した。さらにジャケットに26
2℃の熱媒を循環させて昇温を開始した。昇温開始後
2、4、6時間後に容器内より50gずつPPS粉末を
サンプリング(サンプルNo.D1−1、D1−2、D
1−3)した。さらに9.7時間後に熱媒を冷却し、容
器を100℃まで冷却した後、容器内よりPPS粉末を
取り出した。このPPS粉末をサンプルNo.D1−4
とする。
【0068】比較例7 実施例4において窒素ガスのかわりに乾燥空気5リット
ル/分を熱処理の最初から最後まで導入する以外は実施
例4と同様に樹脂粉末Dを熱処理し、同様に2、4、6
時間後にサンプリング(サンプルNo.D2−1、D2
−2、D2−3)した。さらに昇温開始7.9時間後に
実施例4と同様冷却した後、容器内よりPPS粉末を取
り出した。このPPS粉末をサンプルNo.D2−4と
する。
【0069】比較例8 実施例4において脱イオン水で水洗および濾過を3回繰
り返した後の残りの1/3の濾過ケーキを30℃の2%
塩酸水溶液50リットルを用いて洗浄した後、濾過し
た。この洗浄濾過をもう一度繰り返した後、100℃で
真空乾燥しPPS粉末樹脂を得た。これを樹脂D´とす
る。アセトン/水=30/70の溶液100部にこの粉
末PPS10部を分散せしめた液のpHは5.5であっ
た。
【0070】引き続いて実施例4と同様に樹脂粉末D´
を熱処理し、同様に2、4、6時間後にサンプリング
(サンプルNo.D3−1、D3−2、D3−3)し
た。さらに昇温開始6.5時間後に実施例4と同様冷却
し、容器内より取り出したPPS粉末をサンプルNo.
D3−4とする。
【0071】サンプリングした樹脂のMFRと固有粘度
を測定した。そのデータを表7にまとめる。また、MF
Rと固有粘度の関係図を図4に示す。
【0072】
【表7】
【0073】また、図4と以下に示す表8から明らかな
ように、本発明方法によるPPSはMFRと固有粘度の
関係において前記した関係式を満たすことがわかる。
【0074】
【表8】
【0075】実施例5 実施例1と同様の条件で反応させた。反応器を冷却後、
内容物を濾別し脱イオン水で水洗および濾過を3回繰り
返した後、濾過ケーキを80℃の0.1%苛性ソーダ水
溶液1M3で洗浄した後、100℃で真空乾燥し、MF
R値620のPPS粉末樹脂を得た。これを樹脂Eとす
る。本樹脂の固有粘度は0.235であった。また、ア
セトン/水=30/70の溶液100部にこの粉末PP
S10部を分散せしめた液のpHは8.1であった。
【0076】PPS粉末樹脂E 3Kgを実施例1と同
様にて容器回転型の2重円錐型加熱装置を用い熱媒温度
250℃で熱処理した。昇温開始後2、4、6時間後に
容器内より50gずつPPS粉末をサンプリング(サン
プルNo.E1−1、E1−2、E1−3)した。さら
に10.7時間終了後、熱媒を冷却し容器を100℃ま
で冷却した後、容器内よりPPS粉末を取り出した。こ
のPPS粉末をサンプルNo.E1−4とする。サンプ
リングした樹脂のMFRと固有粘度を測定した。そのデ
ータを表9にまとめる。
【0077】
【表9】
【0078】また以下に示す表10から明らかなよう
に、本発明方法によるPPSはMFRと固有粘度の関係
において前記した関係式を満たすことがわかる。
【0079】
【表10】
【0080】応用例1 前述の実施例および比較例で得た各種PPSを2軸押出
機(TEM35B 東芝機械)を用いて、320℃のバ
レル温度で溶融押出しペレット化した。得られたペレッ
トを150℃で2時間乾燥した後、射出成形機(日精製
PS60E9ASE)で引っ張り試験用(ASTM I
V号ダンベル、厚み1.6mm)およびアイゾット衝撃
試験用(長さ63.5mm×幅12.7mm×厚み3.
01mm)テストピースを成形し、引っ張り試験および
アイゾット衝撃試験を行った。
【0081】また30mm1軸押出機に外径8.1mm
のチューブダイをつけ、真空サイジング法にて直径8.
3mmの円筒状のパイプを押し出し、成形性、外観を観
察した。結果を表11に併記する。
【0082】本発明のPPSは、延性に優れ、またこの
PPSを使用すると成形性は良好となる。このため得ら
れたPPS樹脂パイプは外観の優れたパイプであること
が解る。
【0083】
【表11】
【0084】(1)引っ張り速度:10mm/min、標線間隔:2
5mm
【0085】応用例2 前述の実施例および比較例で得た各種PPSを2軸押出
機(TEM35B 東芝機械)を用いて、314℃のバ
レル温度で溶融押出しペレット化した。得られたペレッ
トを150℃で2時間乾燥した後、射出成形機(日精製
PS60E9ASE)で引っ張り試験用(ASTM I
V号ダンベル、厚み1.6mm)およびアイゾット衝撃
試験用(長さ63.5mm×幅12.7mm×厚み3.
01mm)テストピースを成形し、引っ張り試験および
アイゾット衝撃試験を行った。結果を表12に併記す
る。本発明のPPSは、靱性に優れ、また成形性が良好
であることがわかる。
【0086】
【表12】
【0087】(1)引っ張り速度:10mm/min、標線間隔:2
5mm
【0088】
【発明の効果】本発明の熱処理法のよって得られるPA
Sは、従来の熱架橋ポリアリーレンスルフィド樹脂とは
異なる架橋型構造を有し、また優れた靱性と延性を有す
る。また、かかる特性を有するPPSはメルトフローレ
ート(MFR)と固有粘度[η]の関係が前記した条件
式に合致する。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、実施例1、比較例1及び比較例2にお
けるPPS樹脂のメルトフローレート(MFR)と固有
粘度[η]との関係図である。
【図2】図2は、実施例2、比較例3及び比較例4にお
けるPPS樹脂のメルトフローレート(MFR)と固有
粘度[η]との関係図である。
【図3】図3は、実施例3、比較例5及び比較例6にお
けるPPS樹脂のメルトフローレート(MFR)と固有
粘度[η]との関係図である。
【図4】図4は、実施例4、比較例7及び比較例8にお
けるPPS樹脂のメルトフローレート(MFR)と固有
粘度[η]との関係図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C08G 75/02 - 75/10 C08J 3/00

Claims (6)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 アセトン/水水溶液に分散せしめたとき
    のpHが7を越えるポリアリーレンスルフィド樹脂を融
    点未満、180℃以上で、実質的に非酸化性雰囲気下、
    減圧下で加熱熱処理することを特徴とするポリアリーレ
    ンスルフィド樹脂の製造方法。
  2. 【請求項2】 請求項記載の方法によるポリアリーレ
    ンスルフィド樹脂を含んでなる熱可塑性樹脂成形用組成
    物。
  3. 【請求項3】 請求項記載の熱可塑性樹脂成形用組成
    物からなる粉末成形品、押し出し成形品、ブロー成形
    品、射出成形品、圧縮成形品またはトランスファー成形
    品。
  4. 【請求項4】 メルトフローレート(MFR)と固有粘
    度[η]の関係が以下の式を満たすことを特徴とするポ
    リフェニレンスルフィド樹脂。 [η]=A×(MFR0)-Bラ(MFR/MFR0)-C±0.005 ここで、A=0.9433±0.01 B=0.2170±0.05 C≧0.150 (式中、MFR0は熱処理前のメルトフローレート、M
    FRは熱処理後のメルトフローレートを示す。)
  5. 【請求項5】 請求項記載のポリフェニレンスルフィ
    ド樹脂を含んでなる熱可塑性樹脂成形用組成物。
  6. 【請求項6】 請求項記載の熱可塑性樹脂成形用組成
    物からなる粉末成形品、押し出し成形品、ブロー成形
    品、射出成形品、圧縮成形品またはトランスファー成形
    品。
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