JP3304313B2 - 造花とその製作方法 - Google Patents

造花とその製作方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、造花とその製作方
法、特に花弁または葉とその製作方法に関するものであ
る。
【0002】
【従来の技術】造花には、大別して布帛のみで作成され
たアートフラワー系の布造花と、粘土のみで成形された
粘土造花が知られている。しかしながら、前者は湿度に
弱く形くずれを起こし易い。また先染めのため、完成後
に着色することができない。一方、後者は湿度には強い
が、いったん乾燥すると固く欠けやすく、後に変形、手
直しする柔軟性に乏しい。
【0003】これらの欠点を改良するものとして、従
来、紙、繊維破砕物を粘土状にしたものを使用し、これ
をのばして葉片、花弁状に形成し、水溶性樹脂塗料を塗
布し、アクリル系樹脂塗料で着色したもの(特開昭52
−15778号公報)、紙、布、皮革、粘土、竹などに
より成形した花弁、葉に熱硬化性の不飽和ポリエステル
を塗布して、硬質のガラス状風合いに仕上げたもの(特
開昭55−132703号公報)、紙等の吸水性資材を
用いて花弁、葉を作り、不飽和ポリエステル樹脂で硬化
させ、空気中の水分の影響を受けることのないように、
耐久、強靱性を付与したもの(特開昭55−14820
1号公報)等が知られている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、紙粘土
を用いた特開昭52−15778号公報所載の発明で
は、花弁や葉状に成形していったん乾燥固化したあとで
は柔軟性に欠け、細やかな表情をもたせる変形加工が容
易でなく、特に薄い花弁や葉における形態保持性に難が
あった。成形後熱硬化性不飽和ポリエステルを塗布、硬
化した特開昭55−132703号公報、あるいは特開
昭55−148201号公報所載の発明では、形態保持
性にはすぐれているが、完成品を随時変形、手直しする
といった柔軟性は全くない。
【0005】本発明は、前記のごとき課題を解決したも
ので、布造花のような柔軟性と粘土造花のような形態保
持性を有する花弁または葉をもった造花とその製作方法
を提供することを目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】前記目的を達成した本発
明の造花は、花弁または葉状に成形された粘土と、粘土
の表裏に接着剤を介して貼着された布帛とからなる花弁
または葉を有することを特徴としている。
【0007】成形された粘土とその表裏に貼着された布
帛は、同一形状、同一サイズでもよいが、布帛を樹脂粘
土の周縁から数mm程度はみ出させて、花弁または葉の
周縁端面において産毛のごとき外観を呈するようにする
とともに、花弁または葉に天然物同様の自然な柔らかさ
を付与するのが望ましい。
【0008】前記目的を達成した本発明の造花の製作方
法は、粘土を練りのばし、花弁または葉状に切りとり、
切り取られ粘土の表裏に接着剤を介して同種または異種
の布帛を貼着し、布帛を実質的に粘土の形状にそってわ
ずかにはみ出すように裁断し、次いで花弁または葉状に
立体的に成形または組み付けして乾燥し、花弁または葉
を得ることを特徴としている。
【0009】前記目的を達成した本発明の造花の異なっ
た製作方法は、布帛の上に溶き粘土を塗着し、溶き粘土
の上に同種または異種の布帛を重ね、乾燥したのち花弁
または葉状に切りとり、立体的に成形または組み付けし
て、花弁または葉を得ることを特徴としている。
【0010】
【発明の実施の形態】先ず本発明における比較的厚肉の
花弁または葉の製作に好適な実施態様について説明す
る。この実施態様では、原料粘土として、紙粘土、石粉
粘土、木質粘土等いずれでも使用できるが、展延性、変
形加工性、軽量性あるいは布帛との接着性を考慮する
と、樹脂粘土が望ましい。樹脂粘土には、石粉、粘土等
の粘土材料と、カルボキシメチルセルロース等の糊材か
らなる、例えばハーティクレイ(商品名、株式会社パジ
コ社製)を好適に用いることができる。
【0011】樹脂粘土はまず十分に練り、のばし棒を用
いて所望の厚さまでのばす。のばされた樹脂粘土を、セ
ロファン紙またはそれに類するシートの上に置き、所望
の花弁または葉の形に切り取る。花弁または葉の形に切
り取られた樹脂粘土に溶きボンドを塗布し、日本タオル
のごとき吸水性のシート上にあらかじめ載置された布帛
に、溶きボンドを塗布した側を下にして置く。布帛に
は、絹、木綿、化学繊維等の素材及び着色の有無等適宜
選択使用すればよく、織布が望ましい。使用する布帛
は、花や葉の種類に応じて、シルクオーガンジー、シル
クジョーゼット、ガーセ、チーズクロスのような薄地の
ものから、通常のジョーゼットやサテンのような中厚の
もの、ビロードやシールなどの厚地のものまで使用可能
である。また、このとき花弁または葉の周縁部樹脂部を
薄くのばす。次いで上側に溶きボンドを塗布して、同種
または異種の布帛を貼着する。溶きボンドには、手芸
用、造花用、木工用ボンドなど特に種類を問わず使用で
きるが、例えば酢酸ビニール系のアートフラワーボンド
(商品名、松村工芸株式会社製)を、ボンド1に対して
水10程度、ややトロミがでるように希釈したものが望
ましい。組み付け用のワイヤーは、造花や葉の種類によ
っては必ずしも必要ではないが、ワイヤーを用いる場合
は、ワイヤーに防錆用のフローラテープを巻いて、希釈
していない原ボンドを塗布し、樹脂粘土上に載置し、そ
の上に布帛をおいて固定する。樹脂粘土の表裏両面に布
帛を貼着後、樹脂粘土の形状に沿って布帛を裁断する。
この場合、樹脂粘土1の周縁から表裏の布帛2が数mm
程度、その種類や大きさに比例するが、一般的には2〜
5mm程度はみ出すように裁断すると、裁断端面のほつ
れた繊維が産毛のように立ち、天然の花弁または葉に似
た繊細な風合いを付与できる。
【0012】得られた花弁または葉には、生または生乾
き状態の時に、指または簡単な細工棒等による表情付け
加工で、所望の形状を付与する。表情付け加工の容易さ
も、本発明の特徴のひとつである。最後に複数枚の花弁
をひとつの花房に組み付けたり、葉とともに茎に組み付
ける。組み付け後は、室温で風乾すればよいが、乾燥後
いつでも蕾状の花房を開いたり、開いた花房を蕾状に閉
じたりできるので、彩色も一枚づつ自由にできる。また
個々の花弁または葉の形状をさらに変形加工すしたり、
製作後何年経ってもアクリル絵の具により色付けでき
る。
【0013】図1は、こうして得られた花弁または葉を
示す。同図に示すように、布帛2に織布を用いる場合
は、花弁または葉状に成形された樹脂粘土1の根本から
先端にいたる仮想線Xが、布帛2の織り目Yに対して約
45度の正バイアスになるように貼りあわせるのが望ま
しい。これにより、のばしたり変形したりして、花弁ま
たは葉にさまざま表情をもたせる仕上げ加工が一層容易
になる。布帛2の周縁はみ出し部2aは、溶きボンドで
接着されているが、ほつれた繊維が産毛のように立ち、
天然の花弁または葉に似た繊細な風合い、外観を与え
る。また、布帛の織り目も、例えば花弁の筋や葉の葉脈
を思わせる効果がある。
【0014】次に、本発明における薄肉、あるいは透明
感のある花弁または葉の製作に好適な実施態様について
説明する。この実施態様で用いる原料樹脂粘土として
は、例えば、重量比でハーティクレイ(商品名、株式会
社パジコ社製)1に対して、湯または水5と、95%変
性アルコール0.4の割合で混ぜた溶き粘土を用いる。
溶き粘土には、必要に応じて所望の着色料を混ぜる。
【0015】先ず、ガラス板あるいは厚手のセロファン
シート上に前述の布帛を置き、溶き粘土を塗着する。ワ
イヤーを要する場合は、前記同様に錆止めフローラテー
プを巻いたワイヤーに非希釈原ボンドを塗布して、溶き
粘土を塗着する前に布帛の上に載置し固定する。次い
で、溶き粘土の上に同種または異種の布帛を貼着する。
溶き粘土は、2枚の布帛にサンドイッチされる。溶き粘
土と布帛が一体となったものを乾燥し、花弁または葉状
に切り取るとともに、立体的な仕上げ加工をする。樹脂
粘土を溶いたもので2枚の布帛を接着し固めてあるの
で、花弁または葉にさまざまな表情を自由に付けること
ができ、形態保持性にも優れている。
【0016】図3及び図4は、こうして得られた花弁ま
たは葉をしめす。この花弁または葉6は、図1で示す花
弁または葉3とは異なり、溶き粘土4の表裏に貼着され
た布帛5のはみ出し部はない。花弁または葉6は、造花
の花房として組み付けたり、あるいは葉とともに茎に組
み付ける。多くの場合、厚肉の花弁や葉の部分には、図
1の花弁または葉3を用い、薄肉あるいは透明感のある
花弁や葉の部分には、図3の花弁または葉3を用いる。
また、これらの厚肉、薄肉の花弁または葉は、同様にガ
クなどにも使用できる。
【0017】図5は、本発明の造花の一例を示す。同図
において、花弁には、図1の厚肉花弁3aを用いてい
る。ワイヤーは使用していない。ワイヤーを使用した花
弁の場合は、ワイヤーを裏面側に設け、表面からワイヤ
ーが見えないようにする。2aは、布帛のはみ出し部で
ある。葉には、図3の薄肉葉6aを用いている。葉6a
はワイヤー7を介して茎9に固定されている。8はガク
である。造花の種類により、厚肉花弁または葉3と薄肉
花弁または葉6は適宜使い分ける。
【0018】
【発明の効果】本発明の造花及び製作方法には、以下の
利点があり、これまでになく多様な種類の造花とその製
作に適用できる。 (1)布造花のような柔らかさと、粘土造花のような形
態保持性をあわせ備えている。 (2)布帛の織り目は、花弁の筋、葉の葉脈を浮き出さ
せるとともに、そのはみだし部では、花弁または葉の周
縁端面でほつれた繊維が、天然の産毛のような繊細な外
観を呈する。 (3)加工に電気鏝等を要せず、作業者の指や簡単な用
具のみでのばしたり変形したりして、複雑微妙な表情付
けができる。 (4)完成後の花弁や葉の変形再加工はもとより、彩色
も生、生乾き、乾燥後いつでも可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の比較的厚肉の花弁または葉を模式的に
示す平面図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】本発明の比較的薄肉の花弁または葉を模式的に
示す平面図である。
【図4】図3のA−A断面図である。
【図5】図1及び図3の花弁または葉を組み付けた造花
の一例を模式的に示す斜視図である。
【符号の説明】
1……粘土 2……布帛 2a……はみ出し部 3……厚肉の花弁または葉 3a……花弁 4……溶き粘土 5……布帛 6……薄肉の花弁または葉 6a……葉 7……ワイヤー 8……ガク 9……茎 X……花弁または葉の根本から先端に至る仮想線 Y……布帛の織り目

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 樹脂粘土を練りのばし、花弁または葉状
    に切りとり、切り取られた樹脂粘土の表裏に接着剤を介
    して同種または異種の布帛を貼着し、布帛を実質的に
    粘土の形状にそってわずかにはみ出すように裁断し、
    次いで花弁または葉状に立体的に成形または組み付けて
    乾燥し、花弁または葉を得ることを特徴とする造花の製
    作方法。
  2. 【請求項2】 布帛の上に溶き粘土を塗着し、溶き粘土
    の上に同種または異種の布帛を重ね、乾燥したのち花弁
    または葉状に切りとり、立体的に成形または組み付けし
    て、薄い花弁または葉を得ることを特徴とする造花の製
    作方法。
  3. 【請求項3】 布帛が織布であり、花弁または葉状に成
    形された樹脂粘土の根本から先端にいたる仮想線が、布
    帛の折り目に対して約45度の正バイアスになるよう
    に、成形された樹脂粘土と織布とを重ね合わせることを
    特徴とする請求項1または請求項2記載の造花の製作方
    法。
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