JP3303391B2 - 容器に充填した固体有機金属の精製方法 - Google Patents

容器に充填した固体有機金属の精製方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、容器に充填した常温で
固体の有機金属の精製方法に関する。さらに詳細にはII
I −V族化合物半導体分野に於いて、結晶成長に寄与す
る気相での純度を高めた有機金属の提供を目的とする、
容器に充填した固体有機金属の精製方法に関するもので
ある。
【0002】
【従来の技術】近年、有機金属の化学的気相成長法(以
下MOCVDと略す)によって各種の化合物半導体が製
造され、マイクロ波素子やレーザー素子及び発光ダイオ
ード等として、通信、音響、映像、表示等の分野で広く
利用されている。従来からこのような目的に使用される
有機金属は高純度であることが要求されており、各種の
精製法が提案されている。例えばシリコンは混入し易い
上に影響が大きい不純物であるため、原料中のシリコン
量を限定したもの(特公昭51−29880号公報)、
有機金属から選択的にシリコンを除去する方法(特開昭
62−132888号公報)等が提案されている。
【0003】一方、酸素不純物の影響についても古くか
ら関心が持たれ、ジャーナル オブクリスタル グロー
ス〔J. Cryst.Growth,68(1984)〕第157 頁にはAlGaAsの
成長において気相中に水蒸気または酸素を導入すると、
ホトルミネッセンス発光が著しく低減することが開示さ
れている。また第53回応用物理学会学術講演会予稿
集、(1992)第233 頁、17p−ZE−6では、AlGaInP
の非発光再結合中心として働く深い準位が酸素に起因す
るものであることが開示されている。更にまた特開平3
−266421号公報ではトリメチルアルミニウム(以
下TMAと略す)の一部をジメチルメトキシアルミニウ
ムと成した有機金属を用いることによって高抵抗なGaAl
As結晶を成長させる事ができることを開示している。こ
れらの状況は特別な目的に用いる場合を除いて、酸素及
び酸素化合物は化合物半導体とりわけ光半導体にとって
極めて不都合な存在であることを示唆している。
【0004】このような問題を解決するために、有機金
属中の酸素化合物を除去する方法として、水素化金属化
合物などの還元剤を添加し、蒸留または昇華分離する方
法(特開平2−67230号公報)及びハロゲン化アル
ミニウムで処理した後、蒸留分離する方法(特開平3−
112991号公報)が提案されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】周知のごとく有機金
属、とりわけII族II1 族の有機金属は極めて反応性が高
く、水や酸素と激しく反応することが知られている。通
常、少量の酸素が有機金属と接触した場合には、酸素原
子が金属原子とアルキル基の間に挿入され、所謂アルコ
キシ基が形成される。それらの混入源は有機金属の製造
設備や製造時の操作を介して大気から取り込む酸素が原
因であり、細心の注意をもって製造した有機金属といえ
どもこれらをゼロにすることは極めて困難である。上記
したような不純物の除去操作を行い、仮に貯槽中の製品
が無酸素で有ったとしても、これをMOCVDに用いる
容器に充填する際には同様の酸素汚染に曝されることと
なり、この容器に充填された有機金属を原料として用い
る場合には成長結晶への影響は免れない。かかる状況に
鑑み、本発明者らはIII −V族化合物半導体分野に於い
て、結晶成長に寄与する気相での純度を高めた、より具
体的には酸素または酸素化合物の含有量の低い有機金属
の提供を目的とし鋭意検討した結果、本発明を完成する
に至った。
【0006】
【課題を解決するための手段】即ち本発明は、容器に充
填した常温で固体の有機金属を、化学的気相成長用原料
として使用する前に、予め該容器に充填した有機金属の
一部を昇華、除去することを特徴とする、容器に充填し
た固体有機金属の精製方法を提供するものである。
【0007】有機金属が常用温度で固体の場合、充填時
に混入した酸素によって生成した酸素化合物は、元の有
機金属に比べて蒸気圧が低いと予想される。これを確認
するために本発明者らはトリメチルインジウム(以下T
MIと略す)を意図的に空気酸化した試料を容器に充填
した後、これにキャリアガスを導入して昇華させ、一定
量毎に捕集してこの中の酸素化合物をメトキシ基として
定量した結果、図1に示すような特異的な現象を見い出
した。
【0008】即ち生成した酸素化合物の一部は蒸発初期
に相対的に高濃度でTMIと共に昇華するということで
ある。これは従来全く知られていない現象である。この
現象を利用すれば容器に充填した後の固体有機金属を一
定量昇華除去した後には、気相中に酸素化合物を実質的
に含まない高純度な有機金属ガスを得ることが出来る。
【0009】本発明において対象とする常温で固体の有
機金属としてはTMI以外、例えばジメチルインジウム
クロライド、トリメチルインジウム・トリメチルホスフ
ィンアダクト、エチルシクロペンタジエニル亜鉛、ジメ
チルガリウムクロライド、メチルガリウムジクロライ
ド、ジメチルガリウムブロマイド等を挙げることができ
る。
【0010】これらの常温で固体の有機金属は通常昇華
時の気相濃度を安定させるために、結晶を細分化してい
るため表面活性が高く酸化を受け易い。従ってその一部
を昇華除去するに際しては、新たな酸素の取り込みを完
全に無くすよう設備や操作を配慮しなければならない。
この点のみ注意すれば昇華、除去する方法は通常一般に
行われる処方が採用でき、例えば減圧で一定時間吸引す
るとか、高純度の不活性ガスをキャリアガスとして一定
流量で一定時間吹き流す等の方法がある。とりわけ後者
が簡便且つ効果的である。この場合、有機金属容器を適
度に加熱することは何等差し支えないが少なくとも融点
以下で、本処理に要する時間との関連で温度を選べば良
い。ただし不純物の熱拡散を考慮すれば温度は低い方が
好ましい。
【0011】昇華、除去すべき有機金属の量は有機金属
の種類、酸素化合物の含有量を考慮して決定されるべき
であり、一概に言えないが、通常は充填量に対して約3
重量%〜約30重量%、好ましくは約5重量%〜約20
重量%の範囲である。
【0012】かくして処理した後の有機金属はMOCV
Dにおいて使用初期から特性の優れた結晶を得ることが
できる。特にTMAを併用する結晶成長に対して好適に
使用される。これは有機金属中の酸素化合物がTMAの
対酸素活性によって一旦TMAと気相反応し、その後結
晶に取り込まれるためであると推察されるが、定かでは
ない。
【0013】
【発明の効果】以上詳述した本発明方法によれば、容器
に充填した有機金属の一部を昇華、除去するという極め
て簡単な操作により、薄膜半導体、就中、光半導体にと
って極めて有害な酸素不純物の含有量が少ない有機金属
ガスの提供可能であり、更に共存する他の揮発性不純物
もその蒸気圧によっては同時に除去されるという効果も
あり、その産業上の利用価値は頗る大である。
【0014】
【実施例】以下、実施例により本発明を更に詳細に説明
する。なお本実施例では酸素化合物の分析を以下のよう
に行った。酸素化合物の分析;完全に空気を遮断した容
器に捕集した常温で固体の有機金属試料をドデカンに希
釈した後、これを加水分解してアルコキシ基をアルコー
ルとなし、水相をガスクロマトグラフィーで分析して有
機金属の重量に対する−OR換算重量で表す。
【0015】実施例1 −OMe(メトキシ基)の初期濃度が230ppm と分析
されたTMI充填容器に、マスフローコントローラーを
介して400ccm の超高純度アルゴンを流し、これを深
冷トラップに導き32時間で10.3gを捕集した。こ
れは初期充填量の17重量%に相当する。次いで深冷ト
ラップに替えて、出入り口共にコックを備えた加水分解
用容器を接続し、系内を完全にアルゴン置換した後同様
に約1.5gのTMIを捕集した。このTMIの−OM
e分析を行ったところ、32ppmであった。
【0016】実施例2 超高純度アルゴンに替えて精製器を経た水素ガスを用い
た他は実施例1と同様に行い、−OMeの初期濃度37
5ppm のTMIを20重量%除去後、31ppmとなっ
た。
【0017】実施例3 −OMeの初期濃度が320ppm と分析されたTMI充
填容器を、50℃、30mmHg、5時間の減圧処理により
昇華除去した。昇華量は初期充填量の13重量%であっ
た。この後超高純度アルゴンガスで昇華、捕集した1.
54gのTMIについて−OMe分析を行ったところ、
92ppm であった。
【0018】実施例4 TMIに替えてジメチルインジウムクロライド(DMI
Cと略す)を用い、100℃、1mmHg、3時間で初期充
填量の8重量%にあたる2.3gを昇華除去した後、超
高純度アルゴンガスにより昇華、捕集した1.35gの
DMICについて−OMe分析を行い、初期値180pp
m に対し<30ppm を得た。
【図面の簡単な説明】
【図1】トリメチルインジウム中の金属酸化物の蒸発挙
動を示した図である。
フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C07F 5/00 C07B 63/00

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 容器に充填した常温で固体の有機金属
    を、化学的気相成長用原料として使用する前に、予め該
    容器に充填した有機金属の一部を昇華、除去することを
    特徴とする、容器に充填した固体有機金属の精製方法。
  2. 【請求項2】 予め該容器より昇華、除去する有機金属
    の量が、充填量に対して3〜30重量%であることを特
    徴とする請求項1記載の容器に充填した固体有機金属の
    精製方法。
  3. 【請求項3】 前記有機金属がトリメチルインジウムで
    あるあることを特徴とする請求項1記載の容器に充填し
    た固体有機金属の精製方法。
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JP2016145170A (ja) * 2015-02-09 2016-08-12 宇部興産株式会社 固体有機金属化合物の製造方法及び製造装置

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