JP3300393B2 - 四輪駆動車用駆動力伝達装置 - Google Patents

四輪駆動車用駆動力伝達装置

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JP3300393B2
JP3300393B2 JP30343391A JP30343391A JP3300393B2 JP 3300393 B2 JP3300393 B2 JP 3300393B2 JP 30343391 A JP30343391 A JP 30343391A JP 30343391 A JP30343391 A JP 30343391A JP 3300393 B2 JP3300393 B2 JP 3300393B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、四輪駆動車の駆動軸
と被駆動軸との間に介在して駆動力を伝達する四輪駆動
車用駆動力伝達装置に関する。
【0002】
【従来の技術】四輪駆動車は、悪路走破性に優れている
だけでなく、一般道においても加速性や走行安定性に優
れていることから、急速に普及してきている。四輪駆動
車は、基本的には、前後輪を直結することにより実現で
きるが、このようにした場合、強固な四輪駆動状態が得
られるという利点がある一方、旋回走行時に前、後輪間
に生じる回転速度差が吸収できないため、いわゆるタイ
トコーナーブレーキング現象が発生し、旋回性能が悪化
するという難点がある。従って実用化されている四輪駆
動車は、前後輪間や左右輪間に適宜の差動装置を介装
し、この差動装置を介して、前後輪を連結するようにし
ている。
【0003】但し、差動回転を許容するだけでは、差回
転が大きくなり過ぎて、車両を走行させることができな
くなる場合がある。そこでこの種の差動装置としては、
従来より、差動手段としてのギヤ機構を収容するデファ
レンシャルケース内に、多板クラッチを組み込んで所要
時に一対の被駆動軸を連結すると共に、所定の条件で差
動回転を制限するLSD(リミテッド・スリップ・デフ
ァレンシャル)が使用されていた。
【0004】このLSDは、上記多板クラッチのプレー
トどうしを直接圧接させて、駆動側と被駆動側とを直結
するので、小型で高トルクの伝達が行える反面、回転速
度差に対する伝達トルク特性がリニアーであるため、A
BS(アンチスキッド・ブレーキ・システム)との併用
時に、当該ABSとのマッチングが悪いという難点があ
った。即ちABSは、制動時に車輪ロックが生じた場合
にロック状態にある車輪に加わる制動力を減じ、ロック
状態を解除させるように動作するものであるが、LSD
は、ロック状態にある車輪への駆動力を増大させるよう
に動作するため、ABSが制動力を低下させる前にLS
Dが駆動力を増大させる結果、ABSによる本来の制動
動作が妨げられ、ロック車輪の適正な減速が阻害される
という不具合がある。
【0005】このような問題を解決するべく、油の剪断
抵抗によってトルクを伝達するビスカス・カップリング
をデファレンシャル内に組み込んで、LSDとして使用
することが試みられている。ところが、上記のビスカス
・カップリングを組み込んだ場合、いわゆるハンプ現象
によって高トルクの伝達が行えるという利点がある一
方、油の剪断抵抗を介してトルクを伝達するので、伝達
トルク特性の調整が困難であり、従ってABSとのマッ
チングを良好にすることが困難であるという問題が残存
していた。
【0006】また、内部に発生する油圧によってトルク
を伝達する油圧ポンプ(例えば、特開平1−16462
8号参照)をデファレンシャル内に組み込んで、LSD
として使用することも試みられている。しかしその場合
には、発生油圧の調整によって伝達トルク特性の調整が
容易に行え、ABSに対して容易にマッチングさせるこ
とができるという利点がある一方、ビスカス・カップリ
ングのハンプ時のような高トルク伝達を実現するには、
装置が大型化するという問題があった。
【0007】以上のような不具合を解決するために、本
件出願人は、特願平2−281474号において、入力
側のデファレンシャルケースと、差動回転制限用の油圧
ポンプとを連動回転させると共に、油圧ポンプによる伝
達トルクの増大に伴って、油圧ポンプを差動制限用の多
板クラッチ側へ移動させるカム機構とを具備する構成を
提案した。
【0008】上記構成によれば、小型で高トルクの伝達
が行え、しかもABSに対して容易にマッチングさせる
ことが可能になる。そして上記構成を具体化するに当た
り、デファレンシャルケースや油圧ポンプのサイドプレ
ートを鋳物で構成すると共に、カム機構をこの鋳物製の
デファレンシャルケースとサイドプレートとの間に介在
させている。そして駆動軸側と被駆動軸側とに所定の回
転速度差が生じた場合に、デファレンシャルケースとサ
イドプレートとの間に相対的な捩じれを発生させ、上記
捩じれによって作用する円周方向の剪断力を所定のカム
部材を介して軸方向の付勢力に変換し、この付勢力によ
って多板クラッチを接続するようにしていた。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】ところが上記の構成で
は、円周方向に作用する剪断力を軸方向の付勢力に変換
させる際に、カム部材を鋳物製のデファレンシャルケー
スやサイドプレートと大きな荷重でこじらせる必要があ
る結果、デファレンシャルケースやサイドプレートのカ
ム部材との摩擦面が、このこじれによって損傷しやすい
という不具合があった。また、カム部材がデファレンシ
ャルケースやサイドプレート自身に一体形成されている
場合にも、鋳物製の部材を直接こじらせる必要があるこ
とから、同様の不具合があった。
【0010】このため特に大型の四輪駆動車において
は、上記構成の駆動力伝達装置を採用することができな
かった。この発明は上記不具合に鑑みてなされたもの
で、小型で高トルクの伝達が行え、ABSに対して容易
にマッチングさせることができ、しかも大型の四輪駆動
車にも採用することのできる四輪駆動車用駆動力伝達装
置を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】上記問題を解決するため
のこの発明の四輪駆動車用駆動力伝達装置は、駆動軸と
連動回転するデファレンシャルケース内に、一対の被駆
動軸どうしの差回転を吸収する差動装置を備えた四輪駆
動車用駆動力伝達装置において、軸方向に移動する鋳物
よりも硬質の部材で構成され、筒状部分を有する断続操
作用の作動部材と、 上記作動部材の筒状部分の径方向外
方に設けられ上記一方の被駆動軸とデファレンシャルケ
ースとの間に介在する多板クラッチと、上記作動部材
筒状部分の径方向内方で、上記作動部材に対して相対回
転可能な状態で出力側を上記一対の被駆動軸のうちの何
れか一方の被駆動軸と一体回転可能に連結する鋳物より
も硬質の部材で構成された筒状の連結部材と、 上記作動
部材の筒状部分の径方向内方において上記連結部材に外
装され、上記一方の被駆動軸とテファレンシャルケース
との間に介在、両者間の回転速度差に応じて発生させ
た油圧を介して両者間の差動を制限する油圧ポンプと、
上記連結部材一端から径方向外向きに連設された円盤状
部分と、上記作動部材の筒状部分の一端から上記円盤状
部分と対向するように径方向内向きに連設された円盤状
部分とにそれぞれ形成されたカム面を含み、油圧ポンプ
による伝達トルクの増大に伴って上記作動部材を多板ク
ラッチ接続方向に押し付けるカム機構とを具備すること
を特徴とするものである。
【0012】
【作用】上記構成の四輪駆動車用駆動力伝達装置によれ
ば、油圧ポンプは、駆動軸側のデファレンシャルケース
即ち駆動軸側と一方の被駆動軸との間に生じた回転速度
差に応じて発生させた油圧によって、駆動軸側と上記一
方の被駆動軸との差動を制限することにより、差動装置
による両被駆動軸の差動を制限することができ、両被駆
動軸への適正なトルク配分を行うことができる。さらに
駆動軸側と一方の被駆動軸との回転速度差が著しく増大
し、油圧ポンプによる伝達トルクが増大すると、カム機
構が作動部材を軸方向に付勢して多板クラッチを接続す
ることにより、デファレンシャルケースと両被駆動軸と
を一体的に回転させて、伝達トルクを急激に増大させ、
差動を略完全に抑制することができる。
【0013】そして、本発明においては、鋳物よりも硬
質に形成されている作動部材と連結部材とにそれぞれ形
成されたカム面を含むカム機構を設けて、両部材の回転
速度差によって作用する円周方向の剪断力を軸方向の付
勢力に変換し、多板クラッチを接続することができる。
【0014】
【実施例】以下、実施例を示す添付図面に基づいて説明
する。図2は、この発明の一実施例としての四輪駆動車
用駆動力伝達装置を示す概略断面図であり、以下の説明
において図の左右を左右という。同図を参照して、この
実施例における四輪駆動車用駆動力伝達装置は、リヤ側
のデファレンシャルとなるものであり、推進軸からなる
駆動軸(図示せず)と、左側後輪と一体的に回転する左
側被駆動軸L、及び右側後輪と一体的に回転する右側被
駆動軸Rとの間のトルク伝達を行うものである。左側被
駆動軸Lの右端には、スプラインL1が一体に形成され
ている。また右側被駆動軸Rの左端には、小径の第1ス
プラインR1が一体に形成されていると共に、第1スプ
ラインR1の右側に第2スプラインR3が一体に形成さ
れている。
【0015】駆動軸側とドライブギア11を介して連動
回転するデファレンシャルケース1内に、遊星ギア機構
からなる差動装置2、油圧ポンプとしてのベーンポンプ
3、多板クラッチ4、カム機構5、及び連結部材として
の中空の回転筒軸6が設けられている。上記デファレン
シャルケース1は、鋳物製の左側ケース片12と右側ケ
ース片13とをいわゆる印籠嵌合させて装置の外郭を形
成しており、両ケース片12、13の接合部には、連結
用のフランジ1a、1bがそれぞれ一体に形成されてい
る。両フランジ1a、1bは、平頭ボルト14によって
一体的に連結されていると共に、ボルト15によって上
記ドライブギヤ11と共締めされている。
【0016】差動装置2は、右側被駆動軸Rの第1スプ
ラインR1に一体回転可能にスプライン嵌合されたサン
ギア20と、デファレンシャルケース1の左側ケース片
12内周に一体に形成されたリングギア21と、リング
ギア21及びサンギア20にそれぞれ噛合し、両者の差
回転に応じて公転する遊星ギア22、23の組みと、左
側被駆動軸Lと一体回転すると共に、上記遊星ギア2
2、23を自転自在に保持するキャリア24とを備えて
いる。差動装置2は、デファレンシャルケース1の回転
速度を平均速度が等しくなるように各被駆動軸L、Rに
駆動力を分配すると共に、両被駆動軸L、Rどうしの差
回転を許容するものであり、これが可能となるように、
各ギア20、21、22、23の歯数が設定されてい
る。キャリア24は、そのボス部24aの右端部の外径
方向にフランジ部24bを延設している。遊星ギア2
2、23の回転軸27、28は、フランジ部24bと支
承板26との間に架設されている。
【0017】上記遊星ギア22、23の組みは、例え
ば、図3に示すように周方向に3等配してある。半径方
向内側に位置しサンギア20に噛合する遊星ギア22
と、外側に位置しリングギア21に噛合する遊星ギア2
3とは相互に噛合させてある。このように2個1組の遊
星ギア22、23を用いてあるのは、サンギア20及び
リングギア21の回転方向、即ち両被駆動軸L、Rの回
転方向を同方向とするためであり、これらの回転方向が
逆方向であっても良い場合には、サンギア20とリング
ギア21との間に双方に噛合する遊星ギアを配すれば良
い。また、遊星ギア22、23の回転軸27、28をサ
ンギア20及びリングギア21の半径方向に対して傾斜
する線上に配することにより、リングギア21の外径寸
法を小さくして、差動装置2の小型化を図ってある。
【0018】図1および図4(A)(B)も参照して、
ベーンポンプ3は、ロータ31と、このロータ31を内
包すると共に、一対のサイドプレート9、10によって
挟持されて、ロータ31との間に複数のポンプ室を形成
したカムリング32と、ロータ31の外周の溝から突出
し、コイルばね33(図1にのみ図示)によってカムリ
ング32の内面に押圧され、上記ポンプ室を作動室H
1、H2に仕切る複数のベーン34とにより構成されて
いる。ロータ31は、回転筒軸6の外周にスプライン嵌
合しており、回転筒軸6と一体回転可能に連結されてい
る。ここで回転筒軸6は、焼入れによる硬化処理の施さ
れた炭素鋼或いはD40等の焼結材からなる鋳物よりも
硬質の部材で形成されており、後述する多板クラッチ4
の受け部材45に回転自在に支持されている。そして、
後述するカム機構5から多板クラッチ4の作動部材43
を介して、上記ロータ31を右側被駆動軸Rに対し一体
回転可能に連結している。なお図1に示すように、右側
被駆動軸Rには、環状溝R4が形成されており、この環
状溝R4には、上記回転筒軸6が右側被駆動軸Rに対し
て左方へ相対移動するのを規制するスナップリングR5
が嵌入されている。
【0019】他方、両サイドプレート9、10は、上記
回転筒軸6の外周に、それに対して相対回転自在に軸支
されており、サイドプレート9、10及びカムリング3
2は、六角孔ボルト38(図2にのみ図示)によって一
体回転可能に連結され、ベーンポンプ3のケーシング3
0を構成している。なお各サイドプレート9、10の内
周にはシール部材64、65がそれぞれ配設されてい
る。
【0020】各ベーン34を収容した収容溝の下部を互
いに連通させるように、ロータ31の両側面にリング状
の溝部31a、31bが設けられている。これらの溝部
31a、31bは、左側のサイドプレート9に形成され
た、各別の油路38a、38b(図1、図4にのみ図
示)を介して作動室H1、H2とそれぞれ連通されてい
る。各油路38a、38bには、ベーン34下部側への
オイルの流通のみを許容するチェックバルブ36、35
がそれぞれ配設されている。即ち、図4(A)(B)に
示すように、作動室H1、H2のうちの高圧となった側
の作動室H1(H2)からの圧油が、ベーン34をカム
リング32の内周壁に向かって押し付けるように働き、
カムリング32内周壁に対するベーン34の密着性が高
められている。なおこの時、作動室H1、H2のうちの
低圧側の作動室H2(H1)と溝部31a、31bとを
結ぶ油路38bに設けられているチェックバルブ35
(36)は閉じ、低圧側の作動室H2(H1)の圧力が
高くなるのを防止している。
【0021】図1、図2を参照して、多板クラッチ4
は、右側ケース片13の内周面にスプライン結合された
複数のアウタプレート41と、右側被駆動軸Rにそれと
スプライン結合され且つ軸方向に移動自在な作動部材4
3と、作動部材43に加工されたインボリュート溝など
のスプライン溝43eに嵌め合わされ、上記アウタプレ
ート41に交互に組み合わされたインナプレート42
と、右側ケース片13と作動部材43との間に介在し、
両プレート41、42が離反する方向に付勢する皿ばね
44と、差動装置2の支承板26とベーンポンプ3の左
側のサイドプレート9との間に介在し、支承板26に対
して相対回転自在であり且つスナップリング46によっ
て差動装置2側への移動が止められた受け部材45とを
有している。なお上記受け部材45の内周にはボス部4
5aが形成されており、このボス部45aに上記支承板
26の内周の右側が軸支されている。また受け部材45
の外周には係止部45bが形成されており、右側ケース
片13の内周壁に係止することによりデファレンシャル
ケース1と一体的に回転可能に配設されている。さらに
受け部材45には、ベーンポンプ3の六角孔ボルト38
の頭部が貫通しており、ベーンポンプ3のケーシング3
0と一体回転可能に連結されている。
【0022】作動部材43は、焼入れによる硬化処理の
施された炭素鋼或いはD40等の焼結材からなる、鋳物
よりも硬質の部材により形成されている。また作動部材
43のスプライン溝43eには、内周部にスプライン部
を有する止め輪40が嵌め合わされており、スプライン
溝43eの左方の行き止まりの部分に当接している。こ
の止め輪40は、右側ケース片13との間で、上記交互
に組み合わされたインナプレート42およびアウタプレ
ート41を挟持しており、作動部材43の右方への移動
に伴って、インナプレート42およびアウタプレート4
1の両者を圧接させるためのものである。なお、上記ス
プライン溝43eを加工する前の、作動部材43の外周
を、フランジ等のないフラットな円筒面により構成して
いるので、フランジ等のある場合に比較して、溝加工を
容易に行うことができ、ひいては加工コスト等の低減を
図ることができる。
【0023】作動部材43の内周部には、スプライン歯
43fが形成されており、スプライン歯43fは、右側
被駆動軸Rの第2スプラインR3にスプライン嵌合して
いる。作動部材43は、回転筒軸6とは相対的に回転す
ることになる。そして、上述したように作動部材43と
回転筒軸6とは、カム機構5を介して回転トルクが伝達
可能な状態で連結されている。
【0024】このカム機構5は、作動部材43側に形成
された、少なくとも周方向に傾斜するカム面51と、回
転筒軸6の右端部に一体形成されたフランジ部52のカ
ム面52aとの間に、複数個のボール53を配置して構
成されている。作動部材43のカム面51とフランジ部
52のカム面52aとは、両者に円周方向の相対変位が
発生することによりボール53をこじらせて、作動部材
43を軸方向に移動させるように作用する。なおカム機
構5としては、円周上に沿って波形に起伏し、上記カム
面51とフランジ部52とに一体に形成されて対をなす
カム面のみで構成してもよい。
【0025】次に上記実施例の動作について説明する。
図2を参照して、先ずドライブギヤ11に動力が伝達さ
れると、その回転力はデファレンシャルケース1に伝達
され、差動装置2のリングギヤ21から遊星ギヤ22、
23に伝達される。そして、遊星ギヤ22、23に伝達
されたトルクは、キャリア24を介して左側被駆動軸L
に伝達されると共に、サンギヤ20を介して右側被駆動
軸Rに伝達される。ここで、両被駆動軸L、Rの回転負
荷が等しい場合には、両被駆動軸L、Rの平均回転数は
デファレンシャルケース1と等しく、従って差動は生じ
ていない。
【0026】他方、デファレンシャルケース1に伝達さ
れた回転トルクは、受け部材45を介してベーンポンプ
3のケーシング30、即ち両サイドプレート9、10、
およびカムリング32に伝達されると共に、右側被駆動
軸Rの第2スプラインR3から作動部材43、カム機構
5、回転筒軸6を介して、ロータ31にも伝達される。
ここで、両被駆動軸L、Rの回転数が等しい場合には、
右側被駆動軸Rとデファレンシャルケース1の回転数も
等しいことから、上記カムリング32の回転数とロータ
31の回転数も等しくなる結果、ベーンポンプ3の各差
動室H1、H2(図4参照)の油圧も等しいため、油圧
による差動の制限は行なわれない。
【0027】また、油圧によって差動を制限する方向の
力がロータ31に働かない状態では、回転筒軸6と作動
部材43の回転数も等しくなる。従ってカム機構5を構
成するカム面51とフランジ部52との間には、捩れが
生じないので、作動部材43は、皿ばね44の付勢力に
よって多板クラッチ4の遮断方向に押し付けられたまま
の状態になっている結果、多板クラッチ4は、遮断され
たままである。
【0028】次に例えば車両が旋回走行した場合等によ
り、何れか一方の被駆動軸L(R)が他方R(L)に対
して早く回転した場合、遊星ギヤ22、23またはサン
ギヤ20の何れか一方に負荷がかかる結果、一方の被駆
動軸L(R)が増速(又は減速)された分だけ他方の被
駆動軸R(L)が減速(又は増速)される。従って両被
駆動軸L、Rは所定の回転速度差を有した状態で回転
し、車両を滑らかに旋回走行させることができる。
【0029】上記差動が生じた場合、右側被駆動軸Rの
回転数が、デファレンシャルケース1の回転数とも異な
ることになるが、両者の回転速度差が比較的小さい場合
には、上記カムリング32の回転数とロータ31との回
転数の差も作動油によって吸収される結果、ベーンポン
プ3は、上記差動を許容する。また、上記差動が許容さ
れた状態においては、油圧によって差動を制限する方向
の力がロータ31に働かないので、回転筒軸6と作動部
材43の回転数も等しくなる。従って上記差動が許容さ
れた状態では、多板クラッチ4は、依然、遮断されたま
まである。
【0030】次に、例えば、制動時に片輪がロックしか
けた状態等のように、一方の被駆動軸L(R)と他方の
被駆動軸R(L)の回転速度差が所定の値を越えて回転
した場合、上記カムリング32の回転数とロータ31の
回転数との差も比較的大きくなる結果、ベーン34によ
って区画される作動室H1、H2(図4参照)の油圧差
も大きくなる。
【0031】例えば、図4(A)に示すように、右側被
駆動軸Rが左側被駆動軸Lよりも早く回転している場
合、ロータ31は、デファレンシャルケース1(図2参
照)と一体的に回転するカムリング32よりも速く回転
する結果、ベーン34が一方の作動室H1を圧縮する。
このとき、ベーン34に設けられたオリフィス34aが
小径のため、オイルは一方の作動室H1から他方の作動
室H2に流出抵抗をもって移動する。その結果、一方の
作動室H1内に高圧力が発生し、この高圧力は、ベーン
34とカムリング32とで囲まれた一方の作動室H1に
ピストン圧として作用し、トルク伝達媒体となってロー
タ31からカムリング32へトルクが伝達される。従っ
て、ロックしていない側の車輪からのブレーキトルク
が、ロックしそうな側の車輪にも伝達されることにな
り、路面に対する制動力が確保される。なお、上記の圧
力は、ロータ31とカムリング32との間の回転速度差
が大きいほど大きく、駆動軸と右側被駆動軸Rとの間に
は、両者間の回転速度差に応じたトルクが伝達される。
【0032】一方、図4(B)に示すように、左側駆動
軸Lが右側被駆動軸Rよりも早く回転した場合には、カ
ムリング32がロータ31よりも速く回転する結果、ベ
ーン34が他方の作動室H2を圧縮するので、他方の作
動室H2内に高圧力が発生し、この高圧力を介して、駆
動軸から右側被駆動軸Rへトルクが伝達される。上記ベ
ーンポンプ3の作用により、デファレンシャルケース1
と一方の被駆動軸L(R)との差動が制限され、両被駆
動軸L、Rへの適正なトルク配分を行うことができる。
【0033】上記ベーンポンプ3の動作中、油圧によっ
て差動を制限する方向の力がロータ31に働くと、この
力によってロータ31と一体回転する回転筒軸6と、右
側被駆動軸Rと一体回転する作動部材43との間にも差
動が発生する。そのため、カム機構5を構成するカム面
51とカム面52aとの間に捩れが生じようとするが、
両者を捩る荷重が所定の値に達するまでは、皿ばね44
の付勢力によって相対的な捩れが阻止される。従って作
動部材は、依然、多板クラッチ4の遮断方向に押し付け
られたままの状態になっている。
【0034】次に、例えば左右輪の一方が脱輪して空転
し、他方が停止してしまった場合等で、油圧によって差
動を制限する方向の力がより増大してロータ31に働く
と、この力によってロータ31と一体回転する回転筒軸
6と、右側被駆動軸Rと一体回転する作動部材43との
間に作用する捩じり方向の力も大きくなる。そのため、
回転筒軸6のフランジ部52が作動部材43のカム面5
1に対して捩れようとする力が皿ばね44の付勢力に打
ち勝ち、作動部材43がカム機構5によって多板クラッ
チ4の接続方向に押し付けられる。
【0035】従ってこの段階では、多板クラッチ4が接
続することにより、デファレンシャルケース1の回転ト
ルクが、多板クラッチ4から作動部材43を介して右側
被駆動軸Rに直結される。これにより、右側被駆動軸R
の第1スプラインR1に嵌合している差動装置2のサン
ギヤ20が、デファレンシャルケース1の左側ケース片
12に一体形成されたリングギヤ21と同一回転数で回
転しようとする結果、差動装置2による両被駆動軸L、
Rの差動が完全に抑制される。
【0036】そして、本実施例においては、鋳物よりも
硬質に形成されている作動部材43に形成されたカム面
51と、回転筒軸6に形成されたカム面52aとを含む
カム機構5を設けて、両部材43、6の回転速度差によ
って生じる円周方向の剪断力を軸方向の付勢力に変換
し、多板クラッチ4を接続することができる。従って本
実施例によれば、鋳物で形成されているデファレンシャ
ルケース1やベーンポンプ3のケーシング30等が、カ
ム機構5のこじれによって損傷するおそれはない。従っ
て、大型の四輪駆動車に本発明の駆動力伝達装置を採用
しても、充分に実用に耐えることができるという顕著な
効果を奏する。
【0037】さらに本実施例によれば、ベーンポンプ3
が、デファレンシャルケース1と右側被駆動軸Rとの間
に生じた回転速度差に応じて発生させた油圧によって、
駆動軸側と右側被駆動軸Rとの差動を制限することによ
り、差動装置2による両被駆動軸L、Rの差動を制限す
ることができ、両被駆動軸L、Rへの適正なトルク配分
を行うことができる。
【0038】また、上記ベーンポンプ3の発生油圧特性
は、オリフィス34aの調整や、油路に設けたバルブの
調整によって、所望の油圧特性を容易に得ることができ
る。且つ、皿ばね44の付勢力を調整すること等によ
り、作動部材43の多板クラッチ4への押圧力を自由に
変更して設定することができ、これにより、容易に伝達
トルクの立ち上がり特性を調整することができる。これ
らベーンポンプ3の発生油圧特性及びカム機構5の伝動
特性を適宜調整することによって、伝達トルクの特性を
容易に調整できるので、ABSとのマッチングを容易に
行うことができる。
【0039】さらに、上記トルクの急激な増大は、カム
機構5によって機械的に行うようにしており、ビスカス
・カップリングのような爆発的な内圧上昇によって行う
ものではないので、ビスカス・カップリングのような耐
久性の低下というおそれもない。また、多板クラッチ4
の、両プレート41、42を、ベーンポンプ3の径方向
外方位置に配置しているので、装置全体の軸方向の寸法
を短くすることができ、装置全体を一層小型化できる。
【0040】なお、この発明は、上記実施例に限定され
るものではなく、例えば、この発明の四輪駆動車用駆動
力伝達装置を片輪側のデファレンシャルに適用すること
等、この発明の要旨を変更しない範囲で種々の設計変更
を施すことができる。
【0041】
【発明の効果】以上説明したようにこの発明の四輪駆動
車用駆動力伝達装置によれば、鋳物よりも硬質に形成さ
れている連結部材と作動部材とにそれぞれ形成されたカ
ム面を含むカム機構を設けて、両部材の回転速度差によ
って作用する円周方向の剪断力を軸方向の付勢力に変換
し、多板クラッチを接続することができるので、鋳物で
形成されているデファレンシャルケース等が、カム機構
のこじれによって損傷するおそれはない。従って、大型
の四輪駆動車に本発明の駆動力伝達装置を採用しても、
充分に実用に耐えることができるという顕著な効果を奏
する。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施例としての四輪駆動車用駆動
力伝達装置の要部拡大断面図である。
【図2】上記四輪駆動車用駆動力伝達装置の断面図であ
る。
【図3】差動装置を示す概略断面図である。
【図4】ベーンポンプの働きを示す模式的断面図であ
る。
【符号の説明】
1 デファレンシャルケース 2 差動装置 3 ベーンポンプ 4 多板クラッチ 5 カム機構 6 回転筒軸(連結部材) 43 作動部材 51 カム面 52a カム面 L 被駆動軸 R 被駆動軸
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) F16H 48/00 - 48/30 B60K 17/28 - 17/36

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】駆動軸と連動回転するデファレンシャルケ
    ース内に、一対の被駆動軸どうしの差回転を吸収する差
    動装置を備えた四輪駆動車用駆動力伝達装置において、 軸方向に移動する鋳物よりも硬質の部材で構成され、筒
    状部分を有する断続操作用の作動部材と、 上記作動部材の筒状部分の径方向外方に設けられ 上記一
    方の被駆動軸とデファレンシャルケースとの間に介在
    多板クラッチと、 上記作動部材の筒状部分の径方向内方で、上記作動部材
    に対して相対回転可能な状態で出力側を上記一対の被駆
    動軸のうちの何れか一方の被駆動軸と一体回転可能に連
    結する鋳物よりも硬質の部材で構成された筒状の連結部
    と、 上記作動部材の筒状部分の径方向内方において上記連結
    部材に外装され、 上記一方の被駆動軸とテファレンシャ
    ルケースとの間に介在、両者間の回転速度差に応じて
    発生させた油圧を介して両者間の差動を制限する油圧ポ
    ンプと、 上記連結部材一端から径方向外向きに連設された円盤状
    部分と、上記作動部材の筒状部分の一端から上記円盤状
    部分と対向するように径方向内向きに連設された円盤状
    部分とにそれぞれ形成されたカム面を含み、油圧ポンプ
    による伝達トルクの増大に伴って上記作動部材を多板ク
    ラッチ接続方向に押し付けるカム機構とを具備すること
    を特徴とする四輪駆動車用駆動力伝達装置。
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