JP3287776B2 - 小型モータ及びこの小型モータにおける電線の接続方法 - Google Patents

小型モータ及びこの小型モータにおける電線の接続方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は小型モータに係り、
特に、自動車用電装機器(以下、電装機器と記載),小
型カメラなど光学精密機器,VTRなど音響・映像機器
等に使用される小型モータ及びこのモータにおける電線
の接続方法に関する。
【0002】
【従来の技術】小型モータは、前記機器のほかあらゆる
分野で従来から広く使用されており、モータを製造する
際の、モータ製品の歩留りの向上及び製造工程の簡略化
等が求められている。小型モータにおいては、ケーシン
グの内周面に固定子を取付け、このケーシングの内部に
回転子を配設し、ケーシングに取付けられた軸受部によ
り回転子を回転自在に支持している。
【0003】小型モータのうち小型直流モータにおい
て、回転子は電機子と整流子を有しており、この整流子
とケーシングに取付けられたブラシとが摺動係合してい
る。電機子には、表面が絶縁被膜(以下、被膜と記載)
で被覆された電機子巻線(以下、巻線と記載)が巻回さ
れている。この巻線は、導体により形成された端子部材
を介して整流子に電気的に接続されている。整流子は複
数の整流子片を有しており、各整流子片には、巻線を掛
止して電気的に接続するための前記端子部材である一つ
のライザ片が突出して設けられている。
【0004】巻線をライザ片に溶着させて電気的に接続
するには、電気抵抗溶接装置を用いていわゆるフュージ
ング処理を行う場合が多い。このフュージング処理で
は、巻線をライザ片に掛止し、一方の電極をライザ片に
押し当て、他方の電極を整流子片の摺動面等に接触させ
る。そして、フュージング用電流を流すことにより、ジ
ュール熱で巻線の被膜を溶かして、巻線とライザ片とを
溶着する。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、この巻
線接続方法では、巻線とライザ片との接続部における被
膜が十分に除去されて導通状態になっているか否かを、
フュージング処理後に目視で確認することが困難であっ
た。そのため、被膜の除去不足による通電不良が生じる
ことがある。
【0006】この通電不良を防止する一つの対策とし
て、フュージング処理時に、ライザ片より外部に露出し
ている巻線の被膜の部分までも溶かす場合がある。そし
て、露出部分の巻線が除去されたか否かを目視で確認し
て通電不良を発見している。ところが、この場合には、
露出部分の巻線被膜までも溶かすために、巻線に過剰な
フュージング用電流が流れて、接続部で巻線が断線する
ことがあった。これら通電不良や断線といったトラブル
が発生すると、モータ製品の歩留りが低下してしまう。
【0007】ところで、巻線の接続状態を検査するため
に、通常は、フュージング処理後に検査用の微電流を回
転子に流して、巻線の接続部の電気抵抗の測定を全ての
回転子について行なっている。接続部における被膜の一
部分のみが除去された時には、巻線とライザ片とが点接
触をしているような中途半端な導通状態になる場合があ
る。このような導通状態の時に、抵抗検査で回転子に微
電流を流すと、「通電状態は良好」という検査結果にな
ってしまう。
【0008】ところが、かかる中途半端な導通状態の場
合には、完成したモータに正規の駆動用電流を流すと、
接続部における巻線の接触が不十分なため通電不良とな
り、モータを正常に回転させることができない。したが
って、フュージング処理後の回転子の抵抗検査では、前
記のような中途半端な導通状態を見つけ出すことは困難
であった。更に、この抵抗検査は全ての回転子について
行なう必要があるので、モータのコストアップの要因に
なっていた。
【0009】また、片方の電極を整流子片の摺動面に接
触させてフュージング処理をする時には、両電極を介し
て整流子片に大量のフュージング用電流が流れる。その
結果、整流子片が高温(例えば、約700℃乃至約80
0℃)に加熱されるので、整流子全体が高温になって熱
的な悪影響を受ける。例えば、整流子片の真円度や平面
度等の精度が低下する可能性があった。また、片方の電
極が接触する部分の摺動面に傷がついて、ブラシとの摺
動係合に支障を来す場合もあった。
【0010】特開平5−30710号公報には、巻線の
接続方法が開示されている。この方法では、整流子片に
一つのライザ片を設け、フュージング処理時には、ライ
ザ片に一方の電極を押し当て、ライザ片と一体的な副電
極部に、他方の電極を接触させている。したがって、整
流子片の摺動面に傷ができることはないが、両方の電極
の接触部の高さが違うので、両方の電極の高さ位置の調
整等が難しい。また、巻線とライザ片との接続部におけ
る巻線の被膜が十分に除去されたか否かを、目視で確認
するのが困難であった。
【0011】特公平6−12942号公報には巻線の接
続方法が開示されている。この方法では、巻線を整流子
片に直接溶着している。したがって、フュージング処理
時に、整流子片が高温に加熱されて熱的な悪影響を受け
る可能性があった。
【0012】特許番号第2,523,503号公報には、
巻線を整流子片に接続する技術が開示されている。ま
た、米国特許(USP.5,111,015号及びUS
P.5,264,674号)には、整流子片に一つのライ
ザ片を設け、この一つのライザ片にフュージング処理用
の二本の電極を接触させた技術が記載されている。しか
し、これらの技術の場合も、接続部の巻線の被膜が十分
に除去されたことを、フュージング処理後に目視で確認
するのが困難であった。
【0013】また、前記米国特許の技術では、ライザ片
の表面のうち電極に接触している部分には、フュージン
グ処理の際に凹凸ができる。そして、フュージング処理
後に、両方の電極を上昇させてライザ片から離そうとし
た時に、ライザ片の前記凸部が電極間に挟まれることが
ある。その結果、ライザ片が電極と一緒に持ち上げられ
たり、巻線とライザ片との溶着部が離れてしまったりす
る可能性があった。
【0014】上述のように、従来、小型モータにおける
巻線など電線と端子部材とを電気抵抗溶接により電気的
に接続する場合に、通電状態の良否を目視で確認するこ
とができない。そのため、接続部での電線の被膜の除去
不足による通電不良が発生する可能性があった。また、
電線に過剰なフュージング用電流が流れて電線が断線す
る恐れもあった。更に、フュージング処理時に、電線の
溶着には必要のない部分例えば整流子片の摺動面にまで
フュージング用電流が流れる場合には、整流子等が熱的
悪影響を受けて、モータがトラブルを起こす可能性もあ
った。
【0015】本発明は、このような課題を解決するため
になされたもので、電線と端子部材と接続する接続部
の通電状態が良好であることを目視で確認することがで
きる小型モータ及びこのモータにおける電線の接続方法
を提供することを目的とする。また、本発明の別の目的
は、電線の溶着には必要のない部分にまでフュージング
用電流が流れることを防止して、整流子等が熱的悪影響
を受けないようにすることである。
【0016】
【課題を解決するための手段】上述の目的を達成するた
め、本発明の小型モータは、ケーシングの内周面に取付
けられた固定子と、この固定子に対向し、前記ケーシン
グの内部に設けられて回転自在に支持された回転子とを
備え、表面が絶縁被膜で被覆された電線と、導体により
形成された端子部材とを電気的に接続した小型モータで
あって、前記端子部材は少なくとも二つの係止部を有す
るとともに、一方の前記係止部と他方の前記係止部とは
導通しており、前記電線は前記一方の係止部から前記他
方の係止部に掛け渡されて掛止され、電気抵抗溶接装置
の一方の電極を前記一方の係止部に押し当てるとともに
他方の電極を前記他方の係止部に押し当てて前記両係止
部を前記電線に圧接させ、前記両電極を介して電流を前
記一方の係止部から前記他方の係止部に流すとともに前
記両係止部の間の前記電線にも積極的に流して、前記両
係止部間の前記電線自体が電気抵抗となって内部からジ
ュール熱を発生して加熱されることにより前記両係止部
間の前記電線の前記絶縁被膜が除去,熱変形又は熱変色
した状態で、前記電線と前記端子部材とを電気的に接続
した。
【0017】なお、好ましくは、前記電線は前記回転子
の電機子巻線であり、前記回転子には複数の整流子片を
有する整流子が設けられ、この整流子と前記ケーシング
に取付けられたブラシとが摺動係合し、前記端子部材が
前記各整流子片に一体的に又は前記整流子片とは別体に
設けられ、前記各端子部材の前記二つの係止部に前記電
機子巻線が掛け渡されている。
【0018】一つの好ましい具体的態様として、本発明
の小型モータは、ケーシングの内周面に取付けられた永
久磁石と、この永久磁石に対向し、前記ケーシングの内
部に設けられて回転自在に支持されるとともに電機子及
び整流子を有する回転子とを備え、複数の整流子片を有
する前記整流子と前記ケーシングに取付けられたブラシ
とが摺動係合し、前記電機子に巻回されて表面が絶縁被
膜で被覆された電機子巻線を、導体により形成された端
子部材を介して前記整流子に電気的に接続した小型直流
モータである。そして、前記端子部材は二つのほぼU字
状の係止部を有して前記各整流子片に一体的に突出形成
され、前記電機子巻線は前記一方の係止部から前記他方
の係止部に掛け渡されて掛止され、電気抵抗溶接装置の
一方の電極を前記一方の係止部に押し当てるとともに他
方の電極を前記他方の係止部に押し当てて前記両係止部
を前記電機子巻線に圧接させ、前記両電極を介して電流
を前記一方の係止部から前記他方の係止部に流すととも
に前記両係止部の間の前記電機子巻線にも積極的に流し
、前記両係止部間の前記電機子巻線自体が電気抵抗と
なって内部からジュール熱を発生して加熱されることに
より前記両係止部間の前記電機子巻線の前記絶縁被膜が
除去,熱変形又は熱変色した状態で、前記電機子巻線を
前記端子部材に溶着させて電気的に接続している。
【0019】本発明に係る電線の接続方法は、ケーシン
グの内周面に固定子を取付け、前記ケーシングの内部に
設けられた回転子を回転自在に支持した小型モータにお
ける電線の接続方法であって、導体により形成された端
子部材には少なくとも二つの係止部を設けるとともに、
一方の前記係止部と他方の前記係止部とを導通させ、表
面が絶縁被膜で被覆された前記電線を前記一方の係止部
から前記他方の係止部に掛け渡して掛止し、電気抵抗溶
接用の一方の電極を前記一方の係止部に押し当てるとと
もに他方の電極を前記他方の係止部に押し当てて前記両
係止部を前記電線に圧接させ、前記両電極を介して電流
を前記一方の係止部から前記他方の係止部に流すととも
に前記両係止部の間の前記電線にも積極的に流すことに
より、前記両係止部で発生するジュール熱で接続部での
前記電線の前記絶縁被膜をその外面側から間接的に加熱
して除去し、その後、前記両係止部間の前記電線と前記
接続部の部分の前記電線とが発生するジュール熱で前記
接続部の前記絶縁被膜をその内面側からも直接的に加熱
して除去し、前記両係止部間の前記電線の前記絶縁被膜
が除去,熱変形又は熱変色した状態で、前記電線を前記
端子部材に溶着させて電気的に接続している。
【0020】
【発明の実施の形態】まず最初に、本発明の概要を説明
する。小型モータを製造する場合、このモータに使用さ
れる巻線(電機子巻線)など電線は、通常はフュージン
グ処理で端子部材に接続される。この接続作業時に、大
量のフュージング用電流が電線に流れると、この電線が
断線したり漏電などのトラブルの原因となる。すると、
モータ製品の歩留まりが低下してしまう。
【0021】そのため、従来は、電線の接続時には、電
線内をフュージング用電流が絶対に流れないように配慮
していた。そして、電極が接触し電線が掛止されたライ
ザ片等でジュール熱を発生させて、電線の被膜(絶縁被
膜)を、高温になったライザ片からの熱伝導により、被
膜の外面側から間接的に加熱し除去していた。
【0022】これに対して、本発明者は、フュージング
処理で電線を接続する場合に、電線の一部に積極的にフ
ュージング用電流を流すという全く新しい発想のもとで
本発明を完成させた。即ち、本発明では、電線を端子部
材の一方の係止部から他方の係止部に掛け渡し、フュー
ジング用電流を一方の係止部から他方の係止部に流す。
更に、この電流を、両係止部の間に掛け渡されて外部に
露出している係止部間の電線にも流す。
【0023】端子部材より外側の電線は非常に長いのに
対して、係止部間電線の長さは非常に短かい。そのた
め、端子部材の外側電線の抵抗値の方が、係止部間電線
の抵抗値より極めて大きい(例えば、約10,000倍
以上)。したがって、フュージング用電流は、係止部間
電線には流れるが、端子部材より外側の電線には殆ど流
れない。その結果、前記外側電線に関して断線や漏電等
のトラブルは生じない。
【0024】こうしてフュージング用電流を流すことに
より、この電線を掛止している係止部でジュール熱が発
生する。接続部での電線の被膜は、被膜の外面側からジ
ュール熱の熱伝導により間接的に加熱されるので溶けて
除去される。また、係止部間電線と接続部の部分の電線
とが発生するジュール熱により、接続部の被膜は、その
内面側からも直接的に加熱されて除去される。したがっ
て、接続部の被膜は、内面側と外面側の両側から加熱さ
れて全体的に除去されるので、電線と端子部材は十分に
溶着して電気的に接続される。
【0025】以下、本発明における実施の形態の一例
を、図1乃至図12を参照して説明する。図1は本発明
に係る小型モータの片側を断面で示す正面図、図2は図
1に示すモータの回転子の一部を示す外形図、図3は図
2の平面図である。小型モータは、例えば、燃料ポン
プ,ウォッシャーポンプ,電動ミラー,ドアロック機構
のアクチュエータなど自動車用電装機器(電装機器)や
光学精密機器等に使用される。小型モータが自動車に搭
載された時には、自動車用のバッテリーから供給される
駆動用電流により回転して電装機器を駆動する。
【0026】図1乃至図3に示すように、小型モータと
しての小型直流モータ1は、内周面2に固定子3が取付
けられたケーシング4と、固定子3に対向してケーシン
グ4の内部に配設された回転子5とを備えている。回転
子5の回転軸6は、ケーシング4に設けられた軸受部
7,8により回転自在に支持されている。
【0027】ケーシング4は、有底中空筒状に形成され
たハウジング9と、ハウジング9の開口部10に嵌合し
た蓋部材11とを備えている。ハウジング9は、例えば
軟鋼を素材とした冷間圧延鋼板のような金属材料によっ
て一体的に形成されている。蓋部材11は、例えば樹脂
材料又はその他の絶縁材料によって形成されている。軸
受部7,8は、ケーシング4の両端部にそれぞれ設けら
れている。一方の軸受部7はハウジング9に、他方の軸
受部8は蓋部材11に、それぞれ取付けられている。
【0028】固定子としての一対の永久磁石3は、ハウ
ジング9の内周面2の円筒状部に固着されて対向配置さ
れており、例えば、ハードフェライトのような磁性材料
によってアークセグメント状に形成されている。回転子
5は、回転中心となる中心軸線Cの方向に延びる回転軸
6と、回転軸6に取付けられた電機子14と、回転軸6
に取付けられた整流子15とを備えている。電機子14
は、回転軸6に取付けられたコア12に、電線としての
電機子巻線(巻線)13がコイル状に巻回されて構成さ
れている。コア12は、永久磁石3の内周面に対して所
定のギャップを介してその内方に配置されている。
【0029】蓋部材11には、金属又はカーボン等の導
体の材料により形成された複数組(例えば、二組)のブ
ラシ16が、整流子15と摺動係合して駆動用電流を流
すように設けられている。各ブラシ16にそれぞれ電気
的に接続された複数(例えば、一対)の入力端子17
が、蓋部材11に取付けられている。各入力端子17の
各端部が、蓋部材11から外方に突出して、電源(例え
ば、自動車のバッテリー)側の配線等に接続される。
【0030】本発明の小型モータでは、表面が絶縁被膜
で被覆された電線と、導体の材料例えば金属材料により
形成された端子部材とが電気的に接続されている。前記
電線としては、銅製の芯線にエナメル等の絶縁性樹脂の
皮膜が施された巻線13がある。また、前記端子部材と
しては、整流子15用の端子部材20がある。なお、前
記電線としては、モータ1に駆動用電流を供給するのに
使用され、表面にビニール系樹脂等からなる絶縁材が被
覆された給電線(図示せず)であってもよい。図示する
モータ1では、電機子14のコア12に巻回された巻線
13を、端子部材20を介して整流子15に電気的に接
続している。
【0031】図4は図2の拡大平面図で、回転子5の整
流子15側を中心軸線C方向から見た時の外観図、図5
は端子部材20が設けられた整流子15の部分拡大斜視
図である。図2乃至図5に示すように、整流子15は、
回転軸6に取付けられた絶縁性の保持体21と、保持体
21の外面に取付けられて保持される導電性の複数の整
流子片22とを備えている。
【0032】保持体21は筒状に形成されており、例え
ばポリアミド樹脂やポリアセタール樹脂のような絶縁性
の熱可塑性樹脂,又は、フェノール樹脂のような絶縁性
の熱硬化性樹脂からなっている。整流子片22は、銅合
金や銀合金のような金属により形成されている。保持体
21は全体を一体的に成型されており、回転軸6を挿入
するための貫通孔23が中心部に形成されている。保持
体21は、軸方向に長い円筒部24を有しており、円筒
部24の外周面25に整流子片22が固着されている。
【0033】本実施形態のモータ1は、5スロット,5
極構造を有しているので、整流子15には、互いに絶縁
された5個の整流子片22を備えている。なお、モータ
の構造が5極以外の場合には、整流子片の数も極数に対
応したものになる。整流子片22は円弧状に形成され、
その裏面26は、保持体21の円筒部外周面25とほぼ
同じ曲率半径を有している。これにより、整流子片22
を保持体21の円筒部24に取付けた時、裏面26が保
持体21の外周面25に密着する。整流子片22の長さ
は、保持体21の円筒部24の軸線方向長さ寸法とほぼ
同じか又は少し短かい。また、整流子片22の円周方向
寸法は、隣接する整流子片22間でほぼ均一な寸法dの
スリット27が確保できるような寸法になっている。
【0034】整流子片22が保持体21に固着された
後、整流子片22の表面は切削仕上げ加工される。即
ち、ブラシ16との接触状態を安定化させるために、ブ
ラシ16に接触するブラシ接触部28の表面が切削され
ている。ブラシ接触部28を切削加工することにより、
整流子15の真円度が向上するとともに表面が滑らかに
なって、ブラシ16と円滑に接触する。整流子片22の
表面のうちブラシ16に接触しないブラシ非接触部29
は切削されないので、接触部28と非接触部29との間
には段差30が形成されている。
【0035】各整流子片22にはそれぞれ端子部材20
が設けられており、端子部材20は少なくとも二つの係
止部31,32を備えている。一方の係止部31と他方
の係止部32とは導通しており、この係止部31,32
は「ライザ片」と呼ばれている。端子部材20は、整流
子片22に一体的に突出形成されている。両方の係止部
31,32はそれぞれほぼU字状をなしており、互いに
分離して独立した状態で、整流子片22の中心軸線側の
端面36から一体的に突出形成されている。
【0036】したがって、一方の係止部31と他方の係
止部32とは、整流子片22のブラシ非接触部29を介
して導通している。巻線13は、一方の係止部31から
他方の係止部32に掛け渡されて掛止されている。巻線
13を容易に掛け渡すことができるように、係止部3
1,32は、予めフック状に広がった形状に形成されて
いる。
【0037】巻線13と端子部材20は、電気抵抗溶接
装置40により電気的に接続される。電気抵抗溶接装置
40は、一方の係止部31に対向配置されたフュージン
グ用の一方の電極(例えば、+電極)41と、他方の係
止部32に対して対向配置され、一方の電極41とは逆
の極(例えば、−電極)のフュージング用の他方の電極
42と、両方の電極41,42に接続されて電気を供給
する電源43とを備えている。
【0038】電源43にはトランス等が使用される。な
お、前記説明とは逆に、一方の電極41を−極にし、他
方の電極42を+極にしてもよい。更に、電気抵抗溶接
装置40は進退駆動部44を有している。矢印Bに示す
ように、進退駆動部44は、となりあった一対の電極4
1,42を係止部31,32に対して同時に進退移動さ
せることにより、所定の押圧力で両方の係止部31,3
2をそれぞれ押圧する。
【0039】巻線13を端子部材20に結線する場合に
は、電気抵抗溶接装置40の一方の電極41を一方の係
止部31に押し当てるとともに、他方の電極42を他方
の係止部32に押し当てて、両係止部31,32を巻線
13に圧接させる。そして、電極41,42により、フ
ュージング用電流を一方の係止部31から他方の係止部
32に流す。また、この電流を、両係止部31,32の
間にあって外部に露出している巻線(以下、係止部間巻
線と記載)18にも流して、巻線13と端子部材20と
を電気的に接続している。係止部間巻線18も巻線13
の一部分である。
【0040】かかる構成のモータ1において、図1に示
すように、入力端子17からブラシ16,整流子15の
整流子片22,端子部材20を介して巻線13に駆動用
電流を流す。すると、一対の永久磁石3によって形成さ
れている磁界中に存在する回転子5に回転力が付与され
て、回転子5は回転運動をする。これにより、回転軸6
が回転して自動車用電装機器(図示せず)等を回転駆動
する。
【0041】図6は、本実施形態の第1の変形例に係る
端子部材20aが設けられた整流子15aの部分拡大斜
視図で、図5相当図である。この場合には、前記整流子
片22と全体的にほぼ同じ形状を有する整流子片22a
に、端子部材20aを一体的に突出形成している。
【0042】即ち、一方の係止部31aと他方の係止部
32aは、平行に配置されるとともに、整流子片22a
の中心軸線側の端面36から中心軸線方向外方に向けて
一体的に突出形成されている。両方の係止部31a,3
2aはいずれもほぼU字状をなしており、互いに分離し
て独立した状態で端面36に設けられている。巻線13
は、一方の係止部31aから他方の係止部32aに掛け
渡されて掛止されている。両方の係止部31a,32a
と整流子片22aとが一体化しているので、両方の係止
部31a,32aは整流子片22aを介して導通してい
る。
【0043】電気抵抗溶接装置40の一方の電極41
は、一方の係止部31aに対して進退移動してこれを押
圧する。また、他方の電極42は、他方の係止部32a
に対して進退移動してこれを押圧するようになってい
る。
【0044】図7は、本実施形態の第2の変形例に係る
端子部材20bが設けられた整流子15bの部分拡大斜
視図で、図5相当図である。この場合には、前記整流子
片22と全体的にほぼ同じ形状を有する整流子片22b
に、二股状の端子部材20bを一体的に設けている。端
子部材20bは、整流子片22bの中心軸線側の端面3
6に一体的に突出形成されている。
【0045】二股状の端子部材20bは、端面36から
前記中心軸線方向の外方に向けて一体的に突出形成され
た根元部34と、根元部34により互いに連結されて一
体化した一方の係止部31bと他方の係止部32bとを
有している。両方の係止部31b,32bは、前記中心
軸線方向を向き且つ平行に配置されて端面36に突出形
成されている。両方の係止部31b,32bはいずれも
ほぼU字状をなしている。
【0046】巻線13は、一方の係止部31bから他方
の係止部32bに掛け渡されて掛止されている。両方の
係止部31b,32bと整流子片22bとが一体化して
いるので、両方の係止部31b,32bは、根元部34
と整流子片22bを介して導通している。係止部31
b,32bは、それぞれ電極41,42により押圧され
るようになっている。
【0047】この二股状の端子部材20bは、両係止部
31b,32bを連結する根元部34を有しているの
で、端子部材全体の強度が増加する。したがって、巻線
13を係止部31b,32bに掛止する時に、係止部3
1b,32bが巻線13で引っ張られて曲がったり折れ
たりすることが少なくなる。
【0048】図5乃至図7に示す端子部材20,20
a,20bの場合には、端子部材を整流子片に固定する
ための溶接作業が不要なので、モータの部品点数が少な
くなり製造工程が簡略化される。
【0049】図8は、本実施形態の第3の変形例に係る
端子部材20cが設けられた整流子15cの部分拡大斜
視図で、図5相当図である。この場合には、端子部材2
0cを、整流子片22cとは別体にしてこの整流子片2
2cの表面に設けている。端子部材20cは、全体的に
一体化して二股状に形成されている。端子部材20c
は、整流子片22cのブラシ非接触部29の上面に電気
抵抗溶接又はレーザ溶接等により固定されている。端子
部材20cの一方の係止部31cと他方の係止部32c
は、互いに平行に且つほぼU字状に形成されている。
【0050】巻線13は、一方の係止部31cから他方
の係止部32cに掛け渡されて掛止されている。端子部
材20cが一体化しているので、両方の係止部31c,
32cは導通している。係止部31c,32cは、それ
ぞれ電極41,42により押圧されるようになってい
る。このように、端子部材20cの全体が一体的に形成
されているので、端子部材20cを整流子片22cに電
気抵抗溶接又はレーザ溶接等により容易に固定すること
ができる。
【0051】図9は、本実施形態の第4の変形例に係る
端子部材20dが設けられた整流子15dの部分拡大斜
視図で、図5相当図である。この場合には、端子部材2
0dを、整流子片22cとは別体にしてこの整流子片2
2cの表面に設けている。端子部材20dは、整流子片
22cのブラシ非接触部29の上面に、電気抵抗溶接又
はレーザ溶接等により固定されている。
【0052】端子部材20の両方の係止部31d,3
2dは、互いに分離して独立した状態で整流子片22c
に固定されている。したがって、一方の係止部31dと
他方の係止部32dとは、整流子片22cを介して導通
していることになる。一方の係止部31dと他方の係止
部32dは、互いに平行に且つほぼU字状に形成されて
いる。巻線13は、一方の係止部31dから他方の係止
部32dに掛け渡されて掛止されている。係止部31
d,32dは、それぞれ電極41,42により押圧され
るようになっている。
【0053】第3,第4の変形例の端子部材20c,2
0dのように、端子部材20c,20dと整流子片22
cとを別体にすれば、端子部材を整流子片に固定するた
めの溶接作業は必要であるが、整流子片22cの構造が
簡略化される。
【0054】次に、図1乃至図5に示すモータ1の端子
部材20を例にとって、巻線13の接続方法を説明す
る。図10は、巻線13の接続の原理及び手順を示す説
明図で、巻線13の接続部を拡大して示している。まず
最初に、図10の(A)に示すように、一本の巻線13
を一方の係止部31から他方の係止部32に掛け渡して
掛止する。
【0055】次に、図10の(B)に示すように、電気
抵抗溶接用の進退駆動部44を駆動して、矢印Bに示す
ように、電極41,42を同時に端子部材20側に移動
させる。そして、一方の電極41を一方の係止部31に
押し当てるとともに、他方の電極42を他方の係止部3
2に押し当てて、両係止部31,32を巻線13に圧接
させる。巻線13を掛止した状態のU字状の係止部3
1,32を更に押圧して、ブロック状に変形させる。
【0056】電極41,42が係止部31,32に接触
した瞬間に又は所定時間経過後に、電極41,42を短
時間のあいだオンして、電源43から大量のフュージン
グ用電流を端子部材20に流す。すると、この電流は、
一方の電極41から、一方の係止部31,整流子片2
2,他方の係止部32及び他方の電極42に至る第1の
通電経路46に従って流れる。
【0057】端子部材20は、銅合金などの導電材料に
より形成されているが、大きなフュージング用電流が端
子部材20に短時間のあいだ流れることにより、端子部
材20が抵抗となってジュール熱が発生し高温になる。
したがって、係止部31,32自体が抵抗になることに
よる発熱が生じる。更に、一方の係止部31から他方の
係止部32に巻き掛けられた巻線13と係止部31,3
2とが接触している接触部P1 ,P2 での接触抵抗によ
る発熱も生じる。この両方の発熱によって、接触部
1 ,P2 にある巻線13も高温になる。この時、係止
部31,32に掛止された接触部P1 ,P2 の巻線13
の絶縁被膜35が除去されないで、係止部31,32
と、巻線13の銅製の芯線33とが直接接触していない
間は、芯線33には電流は流れない。
【0058】接触部P1 ,P2 にある巻線13は、被膜
35の溶融温度以上の高温に更に加熱される。すると、
図10の(C)に示すように、両係止部31,32にお
ける接触部P1 ,P2 での巻線13の被膜35が溶けて
取り除かれる。これにより、巻線13の芯線33と、端
子部材20の係止部31,32とが、接触部P1 ,P2
で直接接触して溶着し導通する。このような接続が第1
段階の接続である。
【0059】図10の(D)に示すように、芯線33と
係止部31,32とが接触部P1 ,P2 で導通したこと
により、第2の通電経路47が形成される。第2の通電
経路47は、一方の係止部31から係止部間巻線18を
介して他方の係止部32に導通し、第1の通電経路46
と並列になる。係止部間巻線18が整流子片22の表面
に接触していても、巻線18の被膜35があるので、係
止部間巻線18の芯線33と整流子片22とは接触せず
に絶縁されている。
【0060】したがって、一方の電極41から供給され
たフュージング用電流は、今までと同様に、第1の通電
経路46を通って整流子片22を流れる。これに加え
て、フュージング用電流は、第2の通電経路47に従っ
て係止部間巻線18にも流れ始める。端子部材20より
外側の巻線13の長さが非常に長いのに対して、係止部
間巻線18の長さは非常に短かい。そのため、端子部材
20の外側の巻線13の抵抗値の方が、係止部間巻線1
8の抵抗値より極めて大きい。したがって、フュージン
グ用電流は、係止部間巻線18には流れるが、端子部材
20より外側にある巻線13には殆ど流れない。
【0061】その結果、一方の電極41から供給された
電流は、一方の係止部31から,係止部間巻線18,他
方の係止部32,他方の電極42に至る第2の通電経路
47に従って流れる。こうして大量のフュージング用電
流が係止部間巻線18を流れることにより、この係止部
間巻線18自体が電気抵抗となって、内部からジュール
熱を発生して高熱になる。
【0062】この発熱により、図10の(E)に示すよ
うに、係止部間巻線18の被膜35が溶融温度以上の高
温になって溶けて除去される。この被膜35が除去され
た後は、係止部間巻線18の芯線33と整流子片22と
の間に間隙部が形成されるので、芯線33は整流子片2
2には接触しない。したがって、第2の通電経路47を
流れる電流は、接触部P1 から係止部間巻線18の芯線
33を流れて接触部P2 に至る。
【0063】係止部31,32と巻線13とが接触する
接触部P1 ,P2 における巻線13の被膜35は、外面
側と内面側から加えられるジュール熱により、更に完全
に除去される。これにより、巻線13の芯線33と端子
部材20とが直接接触して溶着される。このような接続
が第2段階の接続である。
【0064】前記第1,第2段階の接続が行なわれてい
る間、電極41,42が係止部31,32を常時押圧し
ているので、巻線13は係止部31,32に強く密着す
る。これにより、巻線13の芯線33と端子部材20と
が溶着して、確実且つ十分に導通する。
【0065】係止部間巻線18の被膜35が除去されて
いれば、巻線13の芯線33と端子部材20とは溶着し
ていることを意味している。なぜなら、図10の(D)
に示すように、接触部P1 ,P2 における巻線13の被
膜35が除去されて、係止部31,32と芯線33とが
導通することにより、第2の通電経路47が形成され
る。その結果、係止部間巻線18にもフュージング用電
流が流れて、この巻線18が加熱されることにより被膜
35が除去されるからである。なお、係止部間巻線18
の被膜35は、必ずしも除去される必要はなく、例え
ば、この巻線18が加熱された結果、変形又は変色した
場合であってもよい。
【0066】したがって、巻線13の接続を行なう作業
者は、外部に露出している係止部間巻線18が高温にな
ってその被膜35が除去されたこと,又はその被膜35
が熱変形若しくは熱変色したことを目視で観察すればよ
い。これにより、接続部にある巻線13の芯線33と端
子部材20とが溶着されて確実に導通していることを容
易に確認することができる。
【0067】従来は、フュージング処理時に、整流子片
の摺動面に片方の電極を接触させていたので、溶接に関
しては不必要な部分にまで電流が流れていた。その結
果、整流子が高温に加熱されて、摺動面に傷がついたり
熱的悪影響を受ける場合があった。これに対して、本発
明では、フュージング処理時には、溶接のために必要最
小限の部分にのみ電流を流すことができる。
【0068】即ち、溶接時には整流子片22にもフュー
ジング用電流が流れるが、この電流の流れる場所として
は、整流子片全体のうち係止部31,32の間の場所に
限られるので加熱される部分は小さい。したがって、摺
動面に傷がつくことはなく、また整流子への熱的悪影響
は少ない。なお、溶接時に、過剰なフュージング用電流
が万一流れて係止部間巻線18が例え断線しても、巻線
13が係止部31,32に溶着されていれば、端子部材
20と巻線13との通電状態は確保できる。
【0069】次に、本発明に関する実験結果について説
明する。図11は、小型モータに本発明の端子部材又は
従来の端子部材を設けて、巻線を端子部材に接続する時
に実際に流れたフュージング用電流の検出結果を示すグ
ラフである。図11に示すように、電気抵抗溶接装置4
0の電源43(図4参照)として使用されたトランスの
最大容量に対して、このトランスの出力を42%と52
%にそれぞれ設定した場合について、巻線の接続の実験
を行なった。
【0070】テスト用の各小型モータm1 乃至m8 に、
本発明の端子部材20又は従来の端子部材を取付けた。
本発明の端子部材としては、図5に示すように、整流子
片22に二つの係止部31,32を取付け、従来の端子
部材としては、整流子片22に一つの係止部を取付け
た。各モータm1 乃至m8 における右側のデータD
1 は、本発明の端子部材を用いた場合の検出電流を、左
側のデータD2 は、従来の端子部材を用いた場合の検出
電流を、それぞれ示している。
【0071】このグラフから分かるように、トランス出
力が42%の場合には、巻線の溶接時に流れるフュージ
ング用電流が小さい。その結果、本発明及び従来のいず
れの場合も、巻線の係止部での加熱が不十分で、被膜を
完全に除去することができず接続不良であった。一方、
トランス出力を52%に設定してフュージング用電流を
増やした場合には、本発明及び従来のいずれの場合も、
接続部における巻線の被膜を十分に除去して、巻線を端
子部材に良好に固着させて接続することができた。
【0072】また、このグラフからは、トランス出力の
大小(すなわち、最大容量の42%と52%の場合)に
拘らず、従来の端子部材に比べて本発明の端子部材で
は、フュージング用電流が常に小さいことが分かる。即
ち、二つの係止部を有する本発明の端子部材を用いた場
合には、溶接を行なう時の電気抵抗が従来よりも常に高
くなって、小さなフュージング用電流で溶接が行なわれ
ている。その結果、本発明の端子部材を用いて、所定の
トランス出力に設定すれば、従来よりも小さなフュージ
ング用電流で、巻線を確実に端子部材に接続することが
できる。したがって、溶接時における整流子への熱的悪
影響が軽減される。
【0073】上述のように、二つの係止部を有する端子
部材を用いた方が、一つの係止部からなる従来の端子部
材の場合より、通電経路全体の電気抵抗が常に大きくな
っている。その理由は、二つの係止部の間に巻線を掛け
渡した場合には、巻線が一方の係止部と他方の係止部に
それぞれ接触し、更に、前記係止部間巻線自体が抵抗に
なっている。その結果、通電経路全体の初期の接触抵抗
が大きくなるからである。
【0074】図12は、本発明の端子部材と従来の端子
部材における、巻線の被膜の除去状態と導通状態のテス
ト結果を示すグラフである。図12中、横軸はトランス
出力[%]を、縦軸は電気抵抗溶接時のフュージング用
電流をそれぞれ示している。また、各符号「△,●,
□,◆」は、端子部材のテストピース毎のデータを示し
ており、下記のテスト条件及び結果を意味している。
【0075】 △(従来技術品):係止部が1個、被膜除去不十分 ……接続不良 ●(従来技術品):係止部が1個、被膜除去十分 ……接続良好 □(本発明品) :係止部が2個、被膜除去不十分 ……接続不良 ◆(本発明品) :係止部が2個、被膜除去十分 ……接続良好
【0076】図12のグラフから分かるように、係止部
が1個の従来の端子部材の場合には、トランス出力が5
0%以下(符号「△」参照)では、被膜の除去が不十分
で巻線が十分には導通していなかった。そのため、トラ
ンス出力を55%以上にして、大きなフュージング用電
流を流さないと、被膜の除去をして巻線を十分に導通さ
せることができなかった(符号「●」参照)。
【0077】これに対して、係止部が二つある本発明の
端子部材の場合には、トランス出力が45%以上であれ
ば、接続部での巻線の被膜を十分に除去して導通状態に
できることが分かった(符号「□,◆」参照)。その結
果、本発明では、電気抵抗溶接装置のトランス出力を低
めに設定して、小さなフュージング用電流により巻線を
端子部材に接続することができる。
【0078】図11及び図12のグラフから分かるよう
に、本発明の端子部材を用いれば、従来の端子部材より
も小さなフュージング用電流で、被膜を除去して、巻線
を端子部材に良好に溶着させることができる。これによ
り、過剰なフュージング用電流が流れることによる巻線
の断線及び漏電や、整流子の過熱による熱的悪影響等を
防止することができることになり、モータ製品の歩留り
を向上させることができる。
【0079】本実施形態では、巻線13を端子部材20
に接続する接続部P1 ,P2 における被膜35を十分に
除去して、巻線13を端子部材20に溶着することによ
り、通電状態を良好にできる。接続部P1 ,P2 が、従
来のような中途半端な導通状態にはならないので、モー
タを正常に回転させることができる。
【0080】また、外部に露出している係止部間巻線1
8における被膜35が除去されたか又は熱変形若しくは
熱変色したことを、作業者が目視で観察することにな
る。これにより、前記通電状態が良好であることを、容
易且つ短時間で正確に確認することができる。したがっ
て、製造工程が簡略化するとともに、フュージング処理
後の抵抗検査結果の信頼性が向上するので、モータのコ
ストダウンを実現でき、モータ製品の歩留まりが向上す
る。
【0081】なお、係止部は巻線を掛止できるようなほ
ぼU字状をなしていればよい。したがって、「U字状」
の形状の一例としては厳密にU字状でなくてもよく、こ
の「U字状」にはJ字状やV字状等やその他の形状も含
まれる。また、端子部材は少なくとも二つの係止部を有
していればよいので、係止部を三つ以上備えている場合
であってもよい。
【0082】本発明は、上述の直流モータのほか、交流
モータ,ステッピングモータ等の他の形式の小型モータ
における、巻線と端子部材との接続,及び給電線と端子
部材との接続等にも適用できる。なお、各図中同一符号
は同一又は相当部分を示す。
【0083】
【発明の効果】本発明は上述のように構成したので、電
線と端子部材とを接続する接続部の通電状態が良好であ
ることを目視で容易に確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1乃至図12は本発明の一実施形態を示す図
で、図1は小型モータの片側を断面で示す正面図であ
る。
【図2】図1に示すモータの回転子の一部を示す外形図
である。
【図3】図2の平面図である。
【図4】図2の拡大平面図である。
【図5】端子部材が設けられた整流子の部分拡大斜視図
である。
【図6】本実施形態の第1の変形例に係る端子部材が設
けられた整流子の部分拡大斜視図で、図5相当図であ
る。
【図7】本実施形態の第2の変形例に係る端子部材が設
けられた整流子の部分拡大斜視図で、図5相当図であ
る。
【図8】本実施形態の第3の変形例に係る端子部材が設
けられた整流子の部分拡大斜視図で、図5相当図であ
る。
【図9】本実施形態の第4の変形例に係る端子部材が設
けられた整流子の部分拡大斜視図で、図5相当図であ
る。
【図10】本実施形態における電機子巻線の接続の原理
及び手順を示す説明図である。
【図11】小型モータに本発明又は従来の端子部材を取
付けて電機子巻線を接続する時の、フュージング用電流
の検出結果を示すグラフである。
【図12】本発明と従来の端子部材における、電機子巻
線の絶縁被膜の除去状態と通電状態のテスト結果を示す
グラフである。
【符号の説明】
1 小型直流モータ(小型モータ) 2 内周面 3 永久磁石(固定子) 4 ケーシング 5 回転子 13 電機子巻線(電線) 15,15a,15b,15c,15d 整流子 16 ブラシ 18 両係止部の間の電機子巻線(電線) 20,20a,20b,20c,20d 端子部材 22,22a,22b,22c 整流子片 31,31a,31b,31c,31d 一方の係止
部 32,32a,32b,32c,32d 他方の係止
部 35 絶縁被膜 40 電気抵抗溶接装置 41 一方の電極 42 他方の電極 ,P 接続部
フロントページの続き (72)発明者 奥村 健 千葉県松戸市松飛台430番地 マブチモ ーター株式会社内 (72)発明者 角口 勇徳 千葉県松戸市松飛台430番地 マブチモ ーター株式会社内 (56)参考文献 特開 昭56−35658(JP,A) 特開 平5−30710(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H02K 13/00 - 13/14

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ケーシング(4)の内周面(2)に取付
    けられた固定子(3)と、この固定子に対向し、前記ケ
    ーシング(4)の内部に設けられて回転自在に支持され
    た回転子(5)とを備え、表面が絶縁被膜(35)で被
    覆された電線(13,18)と、導体により形成された
    端子部材(20,20a,20b,20c,20d)と
    を電気的に接続した小型モータ(1)であって、 前記端子部材は少なくとも二つの係止部を有するととも
    に、一方の前記係止部(31,31a,31b,31
    c,31d)と他方の前記係止部(32,32a,32
    b,32c,32d)とは導通しており、 前記電線は前記一方の係止部から前記他方の係止部に掛
    け渡されて掛止され、電気抵抗溶接装置(40)の一方
    の電極(41)を前記一方の係止部に押し当てるととも
    に他方の電極(42)を前記他方の係止部に押し当てて
    前記両係止部を前記電線に圧接させ、前記両電極を介し
    て電流を前記一方の係止部から前記他方の係止部に流す
    とともに前記両係止部の間の前記電線(18)にも積極
    的に流して、前記両係止部間の前記電線(18)自体が電気抵抗とな
    って内部からジュール熱を発生して加熱されることによ
    り前記両係止部間の前記電線(18)の前記絶縁被膜
    (35)が除去,熱変形又は熱変色した状態で、 前記電
    線(13)と前記端子部材とを電気的に接続したことを
    特徴とする小型モータ。
  2. 【請求項2】 前記電線は前記回転子の電機子巻線(1
    3,18)であり、前記回転子には複数の整流子片(2
    2,22a,22b,22c)を有する整流子(15,
    15a,15b,15c,15d)が設けられ、この整
    流子と前記ケーシングに取付けられたブラシ(16)と
    が摺動係合し、前記端子部材が前記各整流子片に一体的
    に又は前記整流子片とは別体に設けられ、前記各端子部
    材の前記二つの係止部に前記電機子巻線が掛け渡された
    ことを特徴とする請求項1に記載の小型モータ。
  3. 【請求項3】 ケーシングの内周面に取付けられた永久
    磁石(3)と、この永久磁石に対向し、前記ケーシング
    の内部に設けられて回転自在に支持されるとともに電機
    子(14)及び整流子(15,15a,15b)を有す
    る回転子(5)とを備え、 複数の整流子片(22,22a,22b)を有する前記
    整流子と前記ケーシングに取付けられたブラシ(16)
    とが摺動係合し、前記電機子に巻回されて表面が絶縁被
    膜(35)で被覆された電機子巻線(13,18)を、
    導体により形成された端子部材(20,20a,20
    b)を介して前記整流子に電気的に接続した小型直流モ
    ータ(1)であって、 前記端子部材は二つのほぼU字状の係止部を有して前記
    各整流子片に一体的に突出形成され、 前記電機子巻線は前記一方の係止部(31,31a,3
    1b)から前記他方の係止部(32,32a,32b)
    に掛け渡されて掛止され、電気抵抗溶接装置の一方の電
    極を前記一方の係止部に押し当てるとともに他方の電極
    を前記他方の係止部に押し当てて前記両係止部を前記電
    機子巻線に圧接させ、前記両電極を介して電流を前記一
    方の係止部から前記他方の係止部に流すとともに前記両
    係止部の間の前記電機子巻線(18)にも積極的に流し
    前記両係止部間の前記電機子巻線(18)自体が電気抵
    抗となって内部からジュール熱を発生して加熱されるこ
    とにより前記両係止部間の前記電機子巻線(18)の前
    記絶縁被膜(35)が除去,熱変形又は熱変色した状態
    で、 前記電機子巻線(13)を前記端子部材に溶着させ
    て電気的に接続したことを特徴とする小型モータ。
  4. 【請求項4】 ケーシングの内周面に固定子を取付け、
    前記ケーシングの内部に設けられた回転子を回転自在に
    支持した小型モータにおける電線(13,18)の接続
    方法であって、 導体により形成された端子部材(20,20a,20
    b,20c,20d)には少なくとも二つの係止部を設
    けるとともに、一方の前記係止部(31,31a,31
    b,31c,31d)と他方の前記係止部(32,32
    a,32b,32c,32d)とを導通させ、 表面が絶縁被膜(35)で被覆された前記電線を前記一
    方の係止部から前記他方の係止部に掛け渡して掛止し、 電気抵抗溶接用の一方の電極を前記一方の係止部に押し
    当てるとともに他方の電極を前記他方の係止部に押し当
    てて前記両係止部を前記電線に圧接させ、 前記両電極を介して電流を前記一方の係止部から前記他
    方の係止部に流すとともに前記両係止部の間の前記電線
    (18)にも積極的に流すことにより、前記両係止部で
    発生するジュール熱で接続部(P ,P )での前
    記電線(13)の前記絶縁被膜(35)をその外面側か
    ら間接的に加熱して除去し、その後、前記両係止部間の
    前記電線(18)と前記接続部の部分の前記電線(1
    3)とが発生するジュール熱で前記接続部の前記絶縁被
    膜(35)をその内面側からも直接的に加熱して除去
    し、前記両係止部間の前記電線(18)の前記絶縁被膜
    (35)が除去,熱変形又は熱変色した状態で、前記電
    線を前記端子部材に溶着させて電気的に接続することを
    特徴とする小型モータにおける電線の接続方法。
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