JP3286831B2 - ビタミンb2含有医薬 - Google Patents

ビタミンb2含有医薬

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ビタミンB2を含有
するトキシンショック予防治療剤に関する。更に詳しく
は、本発明はビタミンB2を含有する細菌由来のトキシン
ショック予防治療剤に関する。
【0002】
【従来技術】ビタミンB2は、リボフラビン及びその誘導
体の別名であり、天然には肝臓、ビール酵母、牛乳、
肉、卵、緑色野菜等に多く含まれる物質である。薬物と
しては口角炎、口唇炎、舌炎、急・慢性湿疹、脂漏性湿
疹、ペラグラ等の疾患の予防治療剤として用いられる。
ビタミンB2は生体内では結合型すなわち、フラビンモノ
ヌクレオチド(FMN)、フラビンアデニンジヌクレオチド
(FAD) の形で存在し、フラビン蛋白質又はフラビン酵素
と呼ばれる酸化還元酵素の補欠分子族として機能し、
糖、脂質、アミノ酸の酸化的分解やミトコンドリアやミ
クロソームの電子伝達において中心的役割を果たしてい
る。また、近年、免疫賦活・感染防御剤としての作用も
見いだされている(特開平5ー201864号公報)。
【0003】トキシン(毒素)はヒトや動物に対して毒
性を有し、かつ抗原性をもつ物質のことである。その起
源に由来して、動物由来毒素、植物由来毒素及び細菌由
来毒素〔菌体内毒素(エンドトキシン)、菌体外毒素
(エンテロトキシン)〕に分類される。腸内細菌の菌体
抗原、すなわちO抗原(O特異多糖抗原)はエンドトキ
シン(内毒素、菌体内毒素)と呼ばれ、細菌の細胞壁の
一部を構成する高分子毒性物質であって、多糖体と、脂
質と、タンパク質との複合体である。しかして、菌が動
物体内で分解したとき、遊離し、ショックすなわち、エ
ンドトキシンショックを示す。換言すれば、エンドトキ
シンショックは大腸菌、変型菌、緑膿菌などの菌体内毒
素(エンドトキシン)を産生するグラム陰性桿菌の感染
によって起こるショック状態を意味する。そして、病状
が進行すると、低循環状態に移行し、DIC(Dissemin
ated Intravascular Coagulation、播種性血管内血液凝
固症候群)を併発しやすい。一方、細菌の産生する毒素
のうち、菌体外に遊出する毒素は菌体外毒素(エンテロ
トキシン)と呼ばれる。菌体外毒素(外毒素)は、高分
子タンパク質で熱に不安定であり、毒性が極めて強い。
【0004】エンドトキシンショックの治療は、感染源
の手術的除去をまず行い、感染菌に感受性を有する抗生
物質または広範囲抗菌スペクトルを有する抗生物質を投
与する方法がまずとられる。また、近年、抗エンドトキ
シン作用を有する化合物の開発も盛んに行われ、例え
ば、特開昭60ー158172号公報、特開昭61ー2
93954号公報、特開昭60ー243047号公報、
特開平2ー131467号公報等として開示されてい
る。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】従来の治療は、感染し
た菌に有効な抗生物質を探索するのに多大な時間と労力
を要した。また、抗エンドトキシン作用を有する薬剤は
その安全性及び効果の面から十分ではなく、更に有効な
薬剤及びエンドトキシンとエンテロトキシンとの両者に
有効な薬剤の開発が求められている。
【0006】本発明者は、上記問題点を解決するため鋭
意検討した結果、以下に示す手段により問題を解決でき
ることを見い出し本発明を完成した。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は、ビタミンB2
含有するトキシンショック予防治療剤である。更に詳し
くはビタミンB2を含有する細菌由来のトキシンショック
予防治療剤である。
【0008】本発明にかかるビタミンB2とは、リボフラ
ビン、リン酸リボフラビンナトリウム、フラビンモノヌ
クレオチド(FMN) またはフラビンアデニンジヌクレオチ
ド(FAD) である。本発明においてビタミンB2の投与量
は、体重1kgあたり、0.1mgから100mg であり、好ま
しくは0.5mg から50mgであり、より好ましくは1mg から
25mgである。ビタミンB2の投与方法は、特に限定されな
いが、重篤なショック状態の場合は注射剤として投与す
ることが好ましく、症状が軽い場合は経口又は直腸から
も投与できる。
【0009】ビタミンB2は、投与による過剰症は知られ
ておらず、非常に安全性の高いビタミンである。
【0010】
【発明の実施の形態】本発明にかかるビタミンB2を注射
剤、錠剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤等とするには従来
用いられる技術により製造することができる。しかし
て、本発明にかかるビタミンB2のうち、リボフラビンを
注射剤とするには、リボフラビンが水に難溶性であるた
め、ニコチン酸アミド等の溶解補助剤、合成界面活性剤
又はレシチン等を用いて注射剤とする必要がある。
【0011】本発明は、トキシンショック予防治療剤で
あるが、トキシンショックにより誘発されるDICの予
防治療剤としても有効である。DICとは播種性血管内
血液凝固症候群若しくは広汎性血液凝固症候群とも呼ば
れ、感染症などの基礎疾患を背景に、組織トロンボプラ
スチンの血中への放出や、血管内皮障害などによる凝固
系の活性化をトリガーとして起こり、全身性に微小血栓
が多発し、臓器障害を起こすとともに、線溶系の活性化
が亢進され、顕著な出血傾向を示す疾患である。また、
本発明の予防治療剤は、グラム陰性菌によるエンドトキ
シンショックだけではなく、グラム陽性菌によるエンテ
ロトキシンショックにも有効である。
【0012】
【発明の効果】本発明にかかるビタミンB2を含有するト
キシンショック予防治療剤の作用機序は明らかではな
い。トキシンショックは、生体内でインターロイキン
1、インターロイキン6及び腫瘍壊死因子(TNF) などが
過剰に放出され、ショック死に至るとされている。トキ
シン投与後に産生される血清中の過剰な腫瘍壊死因子産
生は、ビタミンB2の投与によって抑制されることから、
ビタミンB2は、これらサイトカイン(cytokine、細胞間
の情報の伝達を担う蛋白性の化学物質)が過剰に放出さ
れるのを抑制することが示唆される。
【0013】
【実施例】以下に本発明にかかるエンドトキシンショッ
ク予防治療剤及びエンテロトキシンショック予防治療剤
の効果を実施例によって詳細に説明する。ただし、本発
明はこれらの実施例のみに限定されない。
【0014】実施例1 動物としてはSLC:ICR 雄性マウスを用いた。エンドトキ
シンとしては、大腸菌Esherichia coli血清型0127-B8
由来リポポリサッカライド(シグマ社製:以下LPS と称
す)を使用し、注射用生理食塩水に溶解して使用した。
また、ビタミンB2としては、リン酸リボフラビンナトリ
ウムを用い、注射用蒸留水に溶解後、0.22μm のフィル
ターにより滅菌濾過して5w/v %の注射液を得た(以下
本試料と称する)。対照試料として注射用蒸留水を用い
た。
【0015】マウスにエンドトキシンの50mg/kg の接
種を本試料又は対照試料の投与前24時間及び投与と同
時並びに投与後にそれぞれ静脈内投与した。そして、投
与4日後の生存率を測定した。効果はχ2 検定により統
計学的に比較した。それらの結果を、表1及び表2に示
した。
【0016】
【表1】 * : P<0.05 **: P<0.01
【0017】
【表2】 * : P<0.05 **: P<0.01
【0018】表1より、本試料の1.25, 2.5, 5, 10, 20
mg/kg の各投与量をLPS 投与24時間前、同時、3時
間、6時間及び24時間後に投与すると、対照群の生存
率が20%であるのに対し、本試料を投与するといずれ
の投与量も生存率の上昇を示した。特に、5,10及び20mg
/kg の投与では、有意な生存率の上昇を示し、顕著な強
いエンドトキシンショック予防効果が認められた。
【0019】また、表2より、本試料の0.5, 5, 50mg/k
g の各投与量をLPS 投与24時間前又は6時間後に投与
すると、対照群の生存率20%に対し、いずれの投与量
及び投与タイミングでも高い生存率を示した。特に、LP
S 投与6時間後の本試料50mg/kg 投与においても有意な
生存率の上昇を示したことから、本発明にかかる試料が
エンドトキシンショックに対して治療効果を有すること
が明らかである。
【0020】実施例2 硫酸アトロピン(0.05 mg/kg, i.m.)、ベントバルビター
ルNa(25mg/kg, i.v.)にて全身麻酔を行い、臭化バンク
ロニウム(0.2mg/kg, i.v.)を投与した後、調節呼吸下で
実験を行った。供試犬は、ビーグル犬(15頭)を薬剤
投与量により3群に分け用いた。実験は、供試犬に対し
て大動脈、肺動脈及び左心室内にカテーテルを留置した
後、循環動脈が安定した段階でエンドトキシン投与前値
の測定を行い、引き続きエンドトキシンを0.1mg/kg/hr
の速度で持続点滴投与を6時間行いエンドトキシンショ
ックモデルを作成した。治療I群(5頭)には、エンド
トキシン投与開始直前及び開始後180分にビタミンB2
5mg/kg を静脈内投与した。治療II群(5頭)には、エ
ンドトキシン投与開始24時間前、直前及び開始後18
0分にビタミンB2 20mg/kgを静脈内投与した。対照群
(5頭)には、同量の生理食塩水(コントロール)を投
与した。測定は、エンドトキシン投与開始後360分ま
で行った。
【0021】ビタミンB2投与による平均大動脈圧の変
化、心拍出量(心臓から排出される血液の量)の変化、
心拍数(心臓の鼓動数)の変化及び平均肺動脈圧の変化
を、それぞれ、図1、図2、図3及び図4に示す。
【0022】これら図1〜図4からビタミンB2 20mg/kg
投与により、エンドトキシンショック時の循環動態例え
ば平均大動脈圧、心拍出量などを有意に改善することが
認められ、エンドトキシンショック時の予防治療薬とし
ての有効性が示された。
【0023】実施例3 供試動物としてslc:ICR雄マウス(5〜6週令、
体重28〜32g)を日本エスエルシー(株)より購入
し、馴化後使用した。マウスを一群10匹用い、生理食
塩水で溶解させたリン酸リボフラビンナトリウム(B2N
a)を20mg/kgの割合で、黄色ブドウ球菌由来エンテロ
トキシン(SEB)の接種24時間前、接種直後および
3時間後の3回静注投与した。一方、対照群として、生
理食塩水を同容量投与した。SEB(30μg/マウ
ス)は、 D−ガラクトサミン(40mg/マウス)と混合
して腹腔内に接種した。接種後4日後の生存率を測定す
ることによって、B2Naのトキシンショックに対する防御
効果を判定した。その結果を表3に示した。
【0024】
【表3】 ** P<0.01
【0025】表3より、黄色ブドウ球菌由来エンテロト
キシンによるショック死に対して、対照群の生存率が1
0%に対し、B2Naの投与(20mg/kg)では、80%と有意
な生存率の上昇が認められた。このことからB2Naはグラ
ム陽性菌である黄色ブドウ球菌のエンテロトキシンショ
ックに対しても防御効果を示すことが認められた。
【図面の簡単な説明】
【図1】ビタミンB2投与による平均大動脈圧の変化を示
すグラフ図である。
【図2】ビタミンB2投与による心拍出量の変化を示すグ
ラフ図である。
【図3】ビタミンB2投与による心拍数の変化を示すグラ
フ図である。
【図4】ビタミンB2投与による平均肺動脈圧の変化を示
すグラフ図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI // A61P 9/00 A61P 9/00 39/02 39/02 C07D 487/04 147 C07D 487/04 147 C07H 19/207 C07H 19/207 (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) A61K 31/525 A61K 9/08 A61K 31/675 ADD A61K 31/70 AGZ A61K 47/16 C07D 487/04 147 C07H 19/207 CA(STN) REGISTRY(STN)

Claims (7)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ビタミンB2を含有するトキシンショック
    予防治療剤。
  2. 【請求項2】 ビタミンB2が、リボフラビン、リン酸リ
    ボフラビンナトリウム、フラビンモノヌクレオチド及び
    フラビンアデニンジヌクレオチドである請求項1記載の
    トキシンショック予防治療剤。
  3. 【請求項3】 トキシンが細菌由来トキシンである請求
    項1記載のトキシンショック予防治療剤。
  4. 【請求項4】 細菌由来トキシンが菌体内トキシン又は
    菌体外トキシンである請求項3記載のトキシンショック
    予防治療剤。
  5. 【請求項5】 ビタミンB2 を注射剤、錠剤、顆粒剤、
    散剤又はカプセル剤の形態とする請求項1記載のトキシ
    ンショック予防治療剤。
  6. 【請求項6】 リボフラビンを、溶解補助財、界面活性
    剤又はレシチンによって注射剤とする請求項1記載のト
    キシンショック予防治療剤。
  7. 【請求項7】 溶解補助剤がニコチン酸アミドである請
    求項6記載のトキシンショック予防治療剤。
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