JP3281338B2 - セメントロータリーキルン用マグネシアスピネル質耐火物 - Google Patents

セメントロータリーキルン用マグネシアスピネル質耐火物

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【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はセメントロータリー
キルンの内張りなどに好適な塩基性耐火物に関するもの
である。
【0002】
【従来の技術】塩基性耐火物のうちでマグネシアクロム
質耐火物は、セメントロータリーキルン用の内張り耐火
物として耐用が良く、従来から広く使用されている。し
かしながら、使用後の耐火物中には少量ではあるが水に
溶出しうる6価のクロムが生成しており、公害防止の観
点から廃棄に際しては特別の配慮が必要であり、処分に
手間がかかる分費用も多く必要であるという問題を有し
ている。
【0003】このための対策として、特公昭60−34
513や米国特許4849383にはクロムを含まない
耐火物が開示されており、前者ではマグネシアスピネル
質耐火物中に適当量の酸化鉄を含むものが、後者ではカ
ルシウムジルコネート(CaZrO3)質のクリンカー
を配合したマグネシア質耐火物が示されている。
【0004】しかしながら、前者の耐火物は鉄分を含有
していることにより、耐熱性にやや難があり、ロータリ
ーキルンの焼成帯中の温度が高い真焼点に内張りとして
使用するとき十分な耐用が得られず、後者はZrO2
分を多く含んでいるだけ耐火物の比重が大きい他、耐熱
衝撃性が不十分であるなどの欠点を有している。
【0005】これらのセメントロータリーキルン用の耐
火物においては、耐火物を高温の炎による過熱から保護
して耐久性を確保するため、内張りした耐火物の表面に
半溶融状態のセメントクリンカー成分によるコーティン
グが形成されることが重要であり、コーティング層ので
きやすさが耐火物の耐用上必要な特性であるとされてい
る。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は従来技術によ
る耐火物の有している前述の欠点を解決した、セメント
ロータリーキルン用として好適な耐火物を提供しようと
するものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は前述の課題を解
決すべくなされたものであり、本発明のセメントロータ
リーキルン用マグネシアスピネル質耐火物は、骨材とし
5〜30重量%のマグネシアアルミナスピネルクリ
ンカー(MgAl24)と、CaO及びSiO 2 をそれ
ぞれ1〜3重量%含む電融マグネシアクリンカー10〜
50重量%とを含み、結合部に部分安定化されたジルコ
ニアを0.5〜10重量%含み、かつ、残部が主として
高純度焼結マグネシアクリンカーからなることを特徴と
する。
【0008】電融マグネシアクリンカーは耐熱性に優れ
ていることは勿論、結晶粒子が大きくて緻密であるた
め、特に耐侵食性に優れた耐火物を構成し、これらの特
性を有効ならしめるには電融マグネシアは10重量%以
上含有していることが必要であり、逆にあまり多く含有
せしめると耐熱衝撃性が低下するという問題があるため
50重量%以下とされている。
【0009】このクリンカーの組み合わせに部分安定化
されたジルコニアを0.5〜10重量%含有せしめるこ
とにより、半溶融のセメント成分に対する濡れ性、すな
わちコーティング付着性を良好にし、耐火物中の結合部
を構成しているマグネシア微粒子の結晶粒子成長を促進
して耐火物の耐侵食性を向上せしめ、かつ結合部の結合
強度を向上せしめて耐火物の熱的安定性を付与する。
【0010】これらの効果を付与するには少なくとも
0.5重量%の部分安定化ジルコニアを含有せしめる必
要があり、10重量%を超えて含有せしめるとこの分耐
火物の比重が大きくなる他、溶融状態のセメント成分に
対する耐食性が小さくなる傾向がある。この部分安定化
ジルコニアの含有量は、さらに好ましくは1〜3重量%
とすることにより、通気性が小さくコーティング付着性
の良好な耐火物が得られる。
【0011】本発明のセメントロータリーキルン用マグ
ネシアスピネル質耐火物では、電融マグネシアクリンカ
ーがCaO及びSiO2をそれぞれ1〜3重量%含むも
のであり、この場合には耐火物の半溶融状態のセメント
成分に対する濡れ性がさらに向上する他、電融マグネシ
アクリンカーの原料として精製を省略した安価なマグネ
シア、又はより安価な天然のマグネサイトを原料とする
ものも使用できて好都合である。
【0012】この場合、CaO及びSiO2はいずれも
耐火物に半溶融状態のセメント成分に対する濡れ性を付
与する効果があるが、両者は通常共存状態で含まれてお
り、一方だけ除くことは現実的でない。
【0013】しかし、あまり多く含まれていると耐火物
の耐火度を低下せしめるので3重量%以下であることが
好ましい。高純度マグネシアクリンカーとしては、例え
ば純度が99重量%以上の焼結マグネシアクリンカーが
ある。また、電融マグネシアクリンカーは、融剤として
CaO、SiO2などを含むため、高純度マグネシアク
リンカーとは、みなさない。
【0014】本発明のセメントロータリーキルン用マグ
ネシアスピネル質耐火物では、マグネシアアルミナスピ
ネルクリンカーの含有量が5重量%より少ないとヤング
率が大きくなって耐熱衝撃性が低下し、また30重量%
より多いと半溶融状態セメントクリンカー中のCaOと
反応しやすくなって、耐侵食性が低下する傾向がある。
【0015】本発明のセメントロータリーキルン用マグ
ネシアスピネル質耐火物は、特にセメントロータリーキ
ルンの内張り用耐火物として好適である。本発明のセメ
ントロータリーキルン用マグネシアスピネル質耐火物に
含まれる部分安定化ジルコニアとしては、MgOやY2
3で部分安定化せしめたものも候補として挙げられる
が、これらで部分安定化されたジルコニアは高温下にお
ける安定性が少し小さく、使用時に脱安定化しやすいの
で、特にCaOで部分安定化されたジルコニアであるこ
とが好ましい。
【0016】部分安定化の程度は、75〜95%のも
の、特には80〜90%のものを含有せしめることによ
り高温安定性と耐熱衝撃性に優れた耐火物が得られ、こ
の場合部分安定化ジルコニア中のCaOの含有量はおよ
そ3〜6重量%である。
【0017】
【実施例】以下本発明を実施例によってさらに詳しく説
明するが、本発明はこれらの実施例によってなんら限定
されるものではない。表1、表2に示した原料構成の耐
火物を合計8種類試作して試験を行い、比較試験を行っ
た。
【0018】すなわち、高純度のマグネシアクリンカー
(MgOの含有量99重量%で、粒径5mm以下のも
の)、電融マグネシアクリンカー(MgOの含有量97
重量%であってCaOを1.2重量%とSiO2を1.
5重量%含み、粒径1〜5mmのもの)及びマグネシア
アルミナ合成スピネルクリンカー(粒径5mm以下のも
の)などからなる骨材の組み合わせに、安定化されてい
ないジルコニアの粉末(平均粒径約30μm)、CaO
部分安定化ジルコニア(CaO含有量4.3重量%、安
定化度約89%、平均粒径約40μm)粉末及びMgO
部分安定化ジルコニア(MgO含有量3重量%、安定化
度約40%、平均粒径約40μm)粉末などを配合し、
20°Be(15重量%)の硫酸マグネシウム水溶液を
結合材として外掛けで3重量%混合後、1000kg/
cm2でプレス成形し、乾燥後1780℃で10時間焼
成して寸法が230mm×114mm×65mmのJI
S規格並型れんがを製作した。
【0019】製作した並型れんがを切り刻んで特性を調
べた結果を、表1と表2に調合条件と併せて示した。
【0020】表中、通気率は50mm×50mm×50
mm寸法の試験片を用いて通気断面積A(cm2)、試
料厚さL(=50mm)としたときの空気の圧力差ΔP
(cmH2O)と空気流量Q(cc/sec)を測定
し、K=(L×Q)/(A×ΔP)で計算して求めた値
であり、耐熱衝撃性はDIN法により並型れんがに片端
を1400℃に加熱した電気炉中で加熱後、空気中で放
冷する方法で試験体の頭部が少なくとも50%欠落する
までの回数を調べた。
【0021】また、コーティング付着性は変質層厚さ及
び寸法変化率とともに、40mm×25mm×15mm
の試験片の上にセメント生クリンカーを乗せて1530
℃に昇温して10時間保持し、クリンカーを溶かして材
料の状態を調べる通称ボタン法で評価した。熱サイクル
体積安定性は40mm×40mm×110mmの試験片
を電気炉中に入れ、電気炉の温度を上下させて700℃
と1300℃との間の加熱と冷却を300回繰り返した
後、試験片の体積の変化率を調べたものである。
【0022】
【表1】
【0023】
【表2】
【0024】次に、No.1、No.4及びNo.7の
調合でせり付きのれんが(230mm×114mm×6
5〜75mm)を製作した。これらをドラム回転式試験
炉に内張りとして組み込み、試験炉の内部にセメントの
生クリンカーを1時間おきに300g投入しながら、炉
内をバーナで約1530℃に加熱しつつ12時間保持
し、この間合計3600gのセメント生クリンカーを投
入した。
【0025】その結果No.4とNo.7のれんがはN
o.1のれんがと比べて初期からコーティングが良く付
着していた。
【0026】試験終了後の観察では、No.1れんがの
コーティング付着厚さが約1mmであったのに対し、N
o.7れんがでは約10mm、No.4れんがでは約6
mmであった。
【0027】また、セメントクリンカー中の酸化カルシ
ウムと酸化珪素を主成分とする液相成分のれんが中への
浸透深さを調べたところ、No.1れんがでは約30m
mであったのに対し、No.7れんがでは約15mmと
浸透深さが小さいことが分かった。以上の結果から、N
o.6、No.7、No.8の耐火物がセメントロータ
リーキルン内張り用耐火物として好ましい条件をほぼ備
えており、特にNo.7の耐火物が優れていると言え
る。
【0028】
【発明の効果】本発明のセメントロータリーキルン用マ
グネシアスピネル質耐火物は、セメントロータリーキル
ンの真焼点を含む焼成帯に使用される耐火物として要求
される特性、すなわち良好なコーティング付着性、耐侵
食性、耐熱衝撃性、耐構造スポール性等をすべて備え、
従来のクロムを含む塩基性耐火物と比べて性能が劣らな
いものであり、かつ公害の原因となるおそれのあるクロ
ム成分を含まない耐火物であって、使用後の耐火物の廃
棄に際して特別の保管場所や処理が不要となり、廃棄の
手間も費用もわずかで済むという効果が得られるもので
ある。

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】骨材として5〜30重量%のマグネシア
    アルミナスピネルクリンカー(MgAl24)と、Ca
    O及びSiO 2 をそれぞれ1〜3重量%含む電融マグネ
    シアクリンカー10〜50重量%とを含み、結合部に部
    分安定化されたジルコニアを0.5〜10重量%含み、
    かつ、残部が主として高純度焼結マグネシアクリンカー
    からなることを特徴とするセメントロータリーキルン用
    マグネシアスピネル質耐火物。
  2. 【請求項2】部分安定化されたジルコニアの含有量が1
    〜3重量%である請求項1に記載のセメントロータリー
    キルン用マグネシアスピネル質耐火物。
  3. 【請求項3】部分安定化されたジルコニアの安定化成分
    がCaOである請求項1又は2に記載のセメントロータ
    リーキルン用マグネシアスピネル質耐火物。
  4. 【請求項4】請求項1、2又は3に記載のセメントロー
    タリーキルン用マグネシアスピネル質耐火物が内張りさ
    れてなるセメントロータリーキルン。
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