JP3438215B2 - マグネシアスピネル質耐火物 - Google Patents

マグネシアスピネル質耐火物

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Description

【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、マグネシアスピネル質
耐火物に関し、特にセメント原料や石灰原料等を焼成す
るロ−タリ−キルンの内張り用煉瓦に好適なマグネシア
スピネル質耐火物に関する。 【0002】 【従来の技術】ロ−タリ−キルンの焼成帯、遷移帯に
は、各種のマグネシアクロム質耐火物、マグネシアスピ
ネル質耐火物などが使用されている。このうち、マグネ
シアクロム質耐火物は、その中に含有しているクロム成
分がアルカリ等の反応によって六価クロムが生成するの
で公害問題が発生し、問題となっている。 【0003】一方、耐火物中にクロム成分を含まない、
いわゆるノンクロム煉瓦は、これまで種々の耐火煉瓦が
開発されている。例えば、マグネシアスピネル質煉瓦や
この煉瓦の特性を改善したジルコニア含有マグネシアス
ピネル質耐火物などが知られている。 【0004】このうち、ジルコニア含有マグネシアスピ
ネル質耐火物としては、(1) MgO:29.5〜94.5重量%、A
l2O3:5.0〜70.0重量%、ZrO2:0.5〜17.0重量%、その
他5.0重量%以下のマグネシアアルミナ系スピネルクリ
ンカ−からなり、スラグに対する耐食性と耐スポ−リン
グ性に優れた耐火物(特開昭63−166750号公報参照)、
(2) 骨材として5〜30重量%のマグネシアアルミナスピ
ネル(MgAl2O4)クリンカ−と10〜50重量%の電融マグネ
シアクリンカ−を含み、結合部に部分安定化されたジル
コニアを0.5〜10重量%含むマグネシアスピネル質耐火
物であって、使用後の耐火物中に六価クロ−ムが生成し
ない、セメントロ−タリ−キルンの焼成帯用に好適な耐
用性に優れた耐火物(特開平4−310561号公報参照)、(3)
ZrO2とMgOとAl2O3とから主として構成され、それら3
成分の合計含有量が95重量%以上、ZrO2含有量が0.5〜2
0重量%よりなるジルコニア含有マグネシアアルミナ系
スピネルクリンカ−であって、耐スラグ侵食性を確保し
つつ、耐熱衝撃性を効果的に高め、耐消化性を向上さ
せ、水系による耐火物施工に好適に使用され得る耐火物
(特開平6−92722号公報、特開平6−92723号公報参照)、
が提案されている。 【0005】 【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来の
ノンクロム煉瓦は、操業温度が高い場合や熱負荷が高い
場合にその耐用性に問題があった。即ち、従来のノンク
ロム煉瓦は、マグネシアクロム煉瓦に比較し、熱間強度
やコ−チングの付着性について不十分であり、それらの
改良が必要であった。また、従来のノンクロム煉瓦とし
ては、スピネル煉瓦を改良したものであり、この種煉瓦
は、コ−チングの付着性、熱間強度について一般のスピ
ネル煉瓦より高めたものであるが、高温にさらされた場
合のクリ−プ性や該煉瓦中の鉄の影響による脆化性に問
題があった。 【0006】更に、前記(1)〜(3)のジルコニア含有マグ
ネシアスピネル質耐火物では、耐食性に問題があり、こ
れらの耐火物も、特にセメント原料や石灰原料等を焼成
するロ−タリ−キルンの内張り用耐火物として好適なも
のではなかった。即ち、従来のジルコニア含有マグネシ
アスピネル質耐火物は、原料中に外掛けでZrO2を添加す
るものであり、この場合には、ZrO2がマトリックス部に
も存在することになり、マトリックスを構成しているペ
リクレ−ス中のCaOとZrO2が反応してカルシウムジルコ
ネ−トを生成するため、外来成分による耐食性に問題が
あった。更に、ZrO2の膨張による煉瓦の脆化性にも問題
があった。 【0007】本発明者等は、六価クロム対策としてのノ
ンクロム質耐火物について鋭意研究を重ねた結果、本発
明を完成したものであって、その目的とするところは、 ・第1に、高熱間強度を有し、耐食性にも優れたマグネ
シアスピネル質耐火物を提供することにあり、 ・第2に、従来のマグネシアクロム耐火物と同等又はそ
れ以上の耐用性を有するノンクロム質耐火物を提供する
ことにあり、 ・第3に、特にセメント原料や石灰原料等を焼成するロ
−タリ−キルンの内張り用耐火物として好適なマグネシ
アスピネル質耐火物であって、ロ−タリ−キルンの低温
域〜高温域まで巾広いゾ−ンで使用可能なマグネシアス
ピネル質耐火物を提供することにある。 【0008】 【課題を解決するための手段】本発明は、ジルコニア含
有マグネシアスピネル質耐火物において、前記した従来
の(1)〜(3)のように原料としてジルコニア源、マグネシ
ア源、アルミナ源をそれぞれ各別に準備して各原料を所
定量配合するものではなく、所定量(3〜10重量%)のジ
ルコニアを含有するマグネシアスピネルクリンカ−を予
め準備し、これと高純度で大結晶径(MgO量が98重量%以
上で結晶径が50μm以上)の電融マグネシアクリンカ−
又は海水マグネシアクリンカ−とを所定量(50〜80重量
%)で配合することを特徴とし、これにより前記目的と
するマグネシアスピネル質耐火物を提供するものであ
る。 【0009】即ち、本発明は、「ZrO2を3〜10重量%含
んだスピネルクリンカ−15〜30重量%と、MgO量が98重
量%以上で結晶径が50μm以上の電融マグネシアクリン
カ−又は海水マグネシアクリンカ−を50〜80重量%有す
ることを特徴とするマグネシアスピネル質耐火物。」を
要旨とする。 【0010】以下、本発明に係るマグネシアスピネル質
耐火物について詳細に説明すると、本発明は、上記した
とおり、 ・ZrO2を3〜10重量%含んだスピネルクリンカ−を用
い、これを15〜30重量%含有する点、及び、 ・MgO量が98重量%以上で結晶径が50μm以上の電融マ
グネシアクリンカ−又は海水マグネシアクリンカ−を使
用し、これを50〜80重量%含有する点、を特徴とするも
のである。 【0011】まず、本発明で使用する「ZrO2を3〜10
%含んだスピネルクリンカ−」について説明すると、
本発明では、骨材を構成するスピネルクリンカ−中にZr
O2を予め含有した原料を用いることにより、焼成工程で
の焼結を促進させ、耐火物(耐火煉瓦)の熱間強度を高め
るようにしたものである。スピネルクリンカ−中のZrO2
含有量は、3重量%未満では耐火煉瓦に対する焼結効果
に乏しく、一方、10重量%を越えると逆に過焼結となっ
て煉瓦が溶融するため、3〜10重量%の範囲が望まし
い。 【0012】また、これまで提案されている前記(1)〜
(3)のジルコニア含有マグネシアスピネル質耐火物で
は、前記したとおり、原料中に外掛けでZrO2を添加する
ものであり、この場合には、ZrO2がマトリックス部にも
存在することになり、マトリックスを構成しているペリ
クレ−ス中のCaOとZrO2が反応してカルシウムジルコネ
−トを生成するため、外来成分による耐食性に問題が生
じる。また、ZrO2の膨張による煉瓦の脆化性にも問題が
あった。これに対して、本発明では、骨材であるスピネ
ルクリンカ−中に予めZrO2を含有する原料を用いるた
め、上記問題点が解消でき、耐食性に優れた耐火物を提
供することができる。 【0013】本発明において、ZrO2を含んだスピネルク
リンカ−は、その含有量として15〜30重量%が望まし
い。15重量%未満では熱間強度が低く、しかも耐食性が
劣るので好ましくない(後記比較例3参照)。逆に30重量
%を超えて配合すると、これに伴いマグネシアクリンカ
−が減少するとすれば耐食性が低下し、また、ZrO2を含
んだスピネルクリンカ−それ自体のコストが高く、これ
を多量に使用することはコスト高となり、実用的でな
い。なお、本発明では、ZrO2を含んだスピネルクリンカ
−の配合を必須とするものであるが、これとZrO2を含ま
ないスピネルクリンカ−を併用することもでき、これも
本発明に包含されるものである。 【0014】次に、本発明で使用する「MgO量が98重量
%以上で結晶径が50μm以上の電融マグネシアクリンカ
−又は海水マグネシアクリンカ−」について説明する
と、本発明は、耐火物(耐火煉瓦)中のマトリックス部分
を構成するペリクレ−スに対する外来成分の侵入を防止
し、しかも高温による溶融を防止するため、高純度で大
結晶径(MgO量が98重量%以上で結晶径が50μm以上)
電融マグネシアクリンカ−を使用するものであり(高温
操業の場合)、また、操業温度がそれ程高くない場合(通
常操業の場合)には、海水マグネシアクリンカ−を使用
するものである。 【0015】本発明は、前記したように、MgO量が98重
量%以上で結晶径が50μm以上の電融マグネシアクリン
カ−又は海水マグネシアクリンカ−を使用することを特
徴とする。MgO量が98重量%未満及び結晶径が50μm未
満では、いずれの場合も煉瓦の耐食性に問題が生じるの
で好ましくない。 【0016】また、本発明において、MgO量が98重量%
以上で結晶径が50μm以上の電融マグネシアクリンカ−
又は海水マグネシアクリンカ−は、その配合量が50重量
%未満の場合、外来成分による耐食性が不十分であり、
一方、80重量%を越えるとスポ−リングしやすくなる。
従って、この配合量としては、50〜80重量%が最適であ
る。 【0017】次に、本発明のマグネシアスピネル質耐火
物における他の添加成分について説明すると、本発明で
は、耐火物のクリ−プ性を抑制し、脆化性を防止するた
めに他の添加物(酸化鉄、酸化チタン)の使用量を減少さ
せたものである。他の添加成分を減少することにより、
一般に焼成成分のコ−チング付着性が減少するけれど
も、本発明では、マグネシアクリンカ−中のフラックス
成分及びスピネルクリンカ−中のZrO2がコ−チング付着
性を促進させる働きをするため、従来のこの種耐火物
(煉瓦)と同等以上のコ−チング付着による耐火物(煉瓦)
の保護を図ることができる。 【0018】他の添加成分のうち酸化鉄は、温度変化に
より2価→3価及び2価←3価と可逆的に変化し、その
ため、酸化鉄を大量に添加すると、耐火物(耐火煉瓦)が
脆化しやすくなる。また、酸化チタンを大量に添加する
と、耐火物(耐火煉瓦)の融点を下げるため、高温下でク
リ−プしやすくなるので好ましくない。従って、本発明
では、酸化鉄、酸化チタンの添加量を減少させたもので
あり、それらの添加量は、それぞれ0.2〜0.8重量%が好
ましく、0.5重量%程度が最適である。 【0019】 【作用】本発明のマグネシアスピネル質耐火物は、高温
操業下でも安定的に使用可能にするため、MgO量が98
%で結晶粒径が50μm以上の大結晶径を有する電融マ
グネシアクリンカ−を使用し、また、ZrO2を3〜10重量
%含んだスピネルクリンカ−を使用することにより、焼
結促進効果をもたせて熱強度を高めたものである。 【0020】即ち、本発明における「ZrO2を3〜10重量
%含んだスピネルクリンカ−」は、焼結促進効果が生
じ、熱強度を高める作用が生じる。即ち、マグネシア
スピネル質耐火物における骨材を構成するスピネルクリ
ンカ−中にZrO2を予め含有した原料を用いることによ
り、焼成工程中に焼結を促進させ、該耐火物の熱間強度
を高める作用が生じる。 【0021】また、本発明における「MgO量が98重量%
以上で結晶径が50μm以上の電融マグネシアクリンカ
−」は、耐火物中のマトリックス部分を構成するペリク
レ−スに対する外来成分の侵入を防止し、かつ高温によ
る溶融を防止する作用が生じる。なお、操業温度がそれ
程高くない場合には、上記電融マグネシアクリンカ−に
代えて海水マグネシアクリンカ−を使用することもでき
る。 【0022】 【実施例】次に、本発明の実施例を比較例と共に挙げ、
本発明を詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例に
限定されるものではない。 【0023】(実施例1〜6)表1に示す原料構成から
なるジルコニア含有マグネシアスピネル質耐火煉瓦(実
施例1〜6)を製造した。得られた各煉瓦試料に対して、
「見掛気孔率(%)」「かさ比重」「見掛比重」「圧縮強
度(MPa)」「熱間強度(MPa):at 1400℃」を測定し、そ
の測定結果を表1に示した。また、「耐食性」「コ−チ
ング付着性」「熱衝撃抵抗性」の各試験を行い、その試
験結果も表1に示した。 【0024】表1中の「耐食性」試験は、回転ドラムを
用いた侵食法で評価した。侵食剤は普通ポルトランドセ
メント90重量%及び硫酸カリウム10重量%からなる混合
物を使用し、温度は1600℃で実施した。この試験におけ
る評価方法として、ZrO2を含まないスピネル煉瓦(比較
例1)を100とし、その指数で表した。なお、指数の多
い方が耐食性に優れていることを示す。 【0025】「コ−チング付着性」試験は、煉瓦試料の
切断面上にポルトランドセメントを粉末状で5mmの高
さにのせ、これを1500℃に保持した電気炉中に挿入し、
15分間保持した後取り出し、空冷した。空冷後の煉瓦試
料面に島状に付着したコ−チングの付着強度を測定し
た。この試験における評価方法として、ZrO2を含まない
スピネル煉瓦(比較例1)を100とし、その指数で表し
た。なお、指数の多い方がコ−チング付着力に優れてい
ることを示す。 【0026】「熱衝撃抵抗性」試験は、“煉瓦試料を10
00℃に保持した電気炉内に送入し、15分間加熱した後取
り出し、3分間水冷し、12分間自然冷却する”を1サイ
クルとし、何回目のサイクルで亀裂が発生したかその亀
裂発生回(回目)を試験した。例えば実施例1における
“11”で説明すると、上記サイクルを繰り返し、11回目
に初めて亀裂が発生したことを示すものであり、この値
が大きい程スポ−リング抵抗性が良好であることを示
す。 【0027】(比較例1〜3) 比較のため、表1に示す原料構成からなるスピネル煉瓦
を製造した。即ち、比較例1は、ZrO2を含まないスピネ
ル煉瓦の例であり、比較例2は、本発明のように骨材で
あるスピネルクリンカ−中に予めZrO2を含有する原料を
用いず、外掛けでZrO2粉末(粒度:0.3mm未満)を1.0重量
%添加した例である。また、比較例3は、本発明で規定
する「ZrO2を含んだスピネルクリンカ−の含有量:15〜
30重量%」の範囲外である10重量%を配合した例であ
る。得られた煉瓦試料について、前記実施例と同様の耐
火物特性を試験し、その結果を表1に付記した。 【0028】 【表1】【0029】上記表1から明らかなように、ZrO2を含ん
だスピネルクリンカ−を使用した実施例1〜6の煉瓦で
は、高圧縮強度及び高熱間強度のものであり、しかも耐
食性、コ−チング付着性、熱衝撃抵抗性に優れたもので
あることが理解できる。また、酸化鉄粉末及び酸化チタ
ン粉末を微量配合した例えば実施例2、3は、これを配
合しない実施例1に比して耐食性、コ−チング付着性に
優れたものが得られた。 【0030】これに対して、ZrO2を含まない比較例1の
スピネル煉瓦では、圧縮強度、熱間強度とも低く、耐食
性、コ−チング付着性に劣るものであった。また、ジル
コニア含有マグネシアスピネル煉瓦であっても、本発明
のように骨材であるスピネルクリンカ−中に予めZrO2
含有する原料を用いず、外掛けでZrO2粉末を添加した比
較例2では、圧縮強度及び熱間強度が低く、しかも耐食
性、熱衝撃抵抗性に劣るものであった。 【0031】更に、本発明で規定する「ZrO2を含んだス
ピネルクリンカ−の含有量:15〜30重量%」の範囲外で
ある10重量%を配合した比較例3では、比較例2と同
様、圧縮強度及び熱間強度が低く、しかも耐食性、熱衝
撃抵抗性に劣るものであった。比較例1〜3で共通する
ところは、実施例1〜6に比較していずれも耐食性の点
で特に劣るものであった。 【0032】なお、実施例1〜6のうち、実施例4の煉
瓦は、その耐食性が特に優れているが、ZrO2を10重量
含んだスピネルクリンカ−を25重量%使用するものであ
るところから原料コストが高くなる。実用化し得るもの
としては、実際に使用する炉(ロ−タリキルン)の操業条
件に合わせて、実施例2の煉瓦(通常操業)又は実施例3
の煉瓦(高温操業)を使用するのが望ましい。 【0033】 【発明の効果】本発明は、以上詳記したとおり、ジルコ
ニア含有マグネシアスピネル質耐火物において、所定量
(3〜10重量%)のジルコニアを含有するマグネシアスピ
ネルクリンカ−と、高純度で大結晶径(MgO量が98重量%
以上で結晶径が50μm以上)の電融マグネシアクリンカ
−又は海水マグネシアクリンカ−を所定量(50〜80重量
%)有することを特徴とし、これにより従来のジルコニ
ア含有マグネシアスピネル質耐火物に比してより高熱間
強度を有し、耐食性にも優れたマグネシアスピネル質耐
火物を提供できる効果が生じる。そして、本発明に係る
マグネシアスピネル質耐火物によれば、ロ−タリ−キル
ンの低温域〜高温域までの巾広いゾ−ンで使用可能であ
り、特に高温域(焼成帯)では、従来のマグネシアクロム
煉瓦に代わって安定的に高耐用が得られ、ノンクロム化
の達成を可能にすることができるものである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C04B 35/043,35/443

Claims (1)

  1. (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 ZrO2を3〜10重量%含んだスピネルクリ
    ンカ−15〜30重量%と、MgO量が98重量%以上で結晶径
    が50μm以上の電融マグネシアクリンカ−又は海水マグ
    ネシアクリンカ−を50〜80重量%有することを特徴とす
    るマグネシアスピネル質耐火物。
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