JP3277618B2 - グラフト共重合体、その製造方法及び該共重合体を有効成分とする可塑剤 - Google Patents

グラフト共重合体、その製造方法及び該共重合体を有効成分とする可塑剤

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、新規なグラフト共重合
体、その製造方法及び該共重合体を有効成分とする可塑
剤に関するものである。さらに、詳しくはエチレン−飽
和カルボン酸ビニルエステル共重合体けん化物にアルキ
レンオキシド及び環状エステルをグラフト共重合してな
る新規グラフト共重合体、そのグラフト共重合体の製造
方法及び該共重合体を有効成分とする可塑剤に関するも
のである。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】一般
に、合成樹脂や合成繊維は、分子構造的に疏水性または
親水性のいづれかである場合が多く、これらの基本特徴
を生かした用途展開が成されてきている。
【0003】一方、近年ニーズが多様化し、樹脂等自体
が有する特定の機能だけでは満足しない分野が多くなっ
てきたこと、あるいは新しい材料の開発などの目的で、
不足する機能を補うべく種々の方策がとられている。
【0004】例えば、ポリマーアロイのように複数の樹
脂の混合による新しい特性を有する樹脂を製造する際に
用いる相溶化剤、樹脂表面の帯電しやすい問題を解決す
るための帯電防止剤、さらに蒸散性の少ない可塑剤の使
用などが例示できる。
【0005】エチレン−飽和カルボン酸ビニルエステル
共重合体けん化物、例えばエチレン−酢酸ビニル共重合
体のけん化物は、エチレン含有量、けん化率等をコント
ロールすることによって酸素ガスバリヤー性樹脂、ガラ
ス接着剤または繊維製品の芯地用接着剤等に実用化され
ている。
【0006】またエチレン−飽和カルボン酸ビニルエス
テル共重合体けん化物にアルキレンオキシドをグラフト
重合したものが高分子論文集第36巻第7号489頁
(1979年)に紹介されており、また特開平3−22
7307号公報にも記載されている。例えば、エチレン
−酢酸ビニル共重合体(以下、EVAと称する)のけん
化物(以下、EVOHと称する)は、高分子量物質であ
り、しかも主鎖はポリメチレン構造を主体としているこ
とから、ポリオレフィンとの相溶性は概ね満足される。
【0007】このEVOHにアルキレンオキシド、例え
ばエチレンオキシドをグラフト重合すると、ポリエチレ
ングリコール的な性質が付与され、親水性に富んだ樹脂
に改質することができる。
【0008】しかしながら、EVOHのアルキレンオキ
シドグラフト重合体は、樹脂との相溶性において十分満
足し得るものではなく、また可塑剤としての性能も乏し
いという問題、帯電防止性は良好ではあるものの水に浸
すと溶解してしまうという問題等があり、必ずしも満足
し得るものではなかった。
【0009】
【課題を解決するための手段】かかる事情に鑑み、本発
明者らは、エチレン−飽和カルボン酸ビニルエステル共
重合体けん化物の機能を改質することについて鋭意検討
した結果、アルキレンオキシド及び環状エステルをグラ
フト共重合することによって樹脂の改質が可能となり、
さらに種々の検討を加えて本発明を完成するに至った。
【0010】すなわち、本発明は、エチレン−飽和カル
ボン酸ビニルエステル共重合体けん化物にアルキレンオ
キシド及び環状エステルをグラフト共重合してなる、数
平均分子量が1500〜1000000のグラフト共重
合体を提供するものである。また、本発明は、アニオン
触媒またはカチオン触媒の存在下、エチレン−飽和カル
ボン酸ビニルエステル共重合体けん化物と、アルキレン
オキシド及び環状エステルとを反応させることを特徴と
するグラフト共重合体の製造方法を提供するものであ
る。さらに、本発明は、エチレン−飽和カルボン酸ビニ
ルエステル共重合体けん化物にアルキレンオキシド及び
環状エステルをグラフト共重合してなる、数平均分子量
が1500〜1000000のグラフト共重合体を有効
成分とする可塑剤を提供するものである。
【0011】以下、本発明を詳細に説明する。本発明で
製造されるグラフト共重合体は、主鎖として該けん化物
から導かれるポリメチレン構造を主体とする高分子量成
分、側鎖としてアルキレンオキシド及び環状エステルの
開環構造を主体とする低分子量乃至高分子量成分からな
っている。
【0012】主鎖としての該けん化物から導かれるポリ
メチレン構造を主体とする高分子量成分は、エチレン−
飽和カルボン酸ビニルエステル共重合体のけん化反応に
よって得ることができ、その原料であるエチレン−飽和
カルボン酸ビニルエステル共重合体は特に制限はない。
【0013】本発明で用いるエチレン−飽和カルボン酸
ビニルエステル共重合体けん化物としては、例えばエチ
レン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−プロピオン酸ビ
ニル共重合体、エチレン−酪酸ビニル共重合体等のけん
化物が挙げられ、これらの中でもエチレン−酢酸ビニル
共重合体のけん化物が好ましい。さらに、エチレン単位
含有量1〜90重量%、数平均分子量1000〜200
00のエチレン−酢酸ビニル共重合体のけん化物であっ
て、そのけん化率が30〜100%のものがより好まし
い。
【0014】側鎖としてのアルキレンオキシド及び環状
エステルの開環構造を主体とする低分子量ないし高分子
量成分は、例えばアニオンまたはカチオン触媒の存在下
に、エチレン−飽和カルボン酸ビニルエステル共重合体
けん化物中にアルキレンオキシド及び環状エステルを導
入してグラフトすることができる。
【0015】本発明で用いるアルキレンオキシドとして
は、例えばエチレンオキシド、プロピレンオキシド、イ
ソブチレンオキシド、1−ブテンオキシド、2−ブテン
オキシド、α−オレフィンオキシド、トリメチルエチレ
ンオキシド、テトラメチルエチレンオキシド等のアルキ
レンオキシドが挙げられる。これらのアルキレンオキシ
ドは、単独でも、これらの混合物であってもよい。これ
らの中でもエチレンオキシド、プロピレンオキシドが好
ましい。
【0016】本発明で用いる環状エステルとしては、例
えばε−カプロラクトン、γ−ブチロラクトン、δ−バ
レロラクトン、β−プロピオラクトン、γ−バレロラク
トン、メチル−ε−カプロラクトン、ジメチル−ε−カ
プロラクトン、トリメチル−ε−カプロラクトン等のラ
クトン類が挙げられる。これらのラクトン類は、単独で
も、これらの混合物であってもよい。これらの中でもε
−カプロラクトンが好ましい。
【0017】アルキレンオキシド及び環状エステルのグ
ラフト量は、特に制限されるものではないが、エチレン
−飽和カルボン酸ビニルエステル共重合体けん化物10
0重量部当たり、それぞれ5〜1000重量部、好まし
くはそれぞれ50〜500重量部の範囲である。
【0018】本発明の製造方法は、温度、圧力、時間等
は特に制限されるものではないが、例えば20℃〜30
0℃、1気圧〜10気圧、5〜300分の範囲が適当で
ある。また反応装置についても特に制限されるものでは
なく、例えば槽型、管型等の常圧容器、圧力容器等の装
置が挙げられる。
【0019】本発明で用いるアルキレンオキシドは、エ
チレン−飽和カルボン酸ビニルエステル共重合体けん化
物100重量部あたり、5〜1000重量部、好ましく
は50〜500重量部である。また、本発明で用いる環
状エステルは、エチレン−飽和カルボン酸ビニルエステ
ル共重合体けん化物100重量部あたり、5〜1000
重量部、好ましくは50〜500重量部である。
【0020】本発明の製造方法における重合触媒として
は、アニオンまたはカチオン触媒が効果的であり、アニ
オン触媒としては、例えば水酸化カリウム、水酸化ナト
リウム、水酸化リチウム等のアルカリ金属の水酸化物
や、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カ
リウムメトキシド、カリウムエトキシド、リチウムエト
キシド等のアルカリ金属のアルコキシ化物が挙げられ
る。
【0021】カチオン触媒としては、例えばチタンテト
ライソプロポキシド、チタンテトラブトキシド、チタン
テトラエトキシド等の有機チタン化合物、テトラオクチ
ルスズ、ジフェニルスズジラウレート、ジラウリルスズ
オキサイド、ジブチルスズオキシド、オクチル酸スズ、
ジブチルスズラウレート、塩化第一スズ、臭化第一ス
ズ、ヨウ化第一スズ等のスズ化合物、サリチル酸鉛、2
−エチルヘキサン酸鉛、酢酸鉛等の鉛化合物が挙げられ
る。
【0022】使用する触媒の量は、特に制限はないが、
通常アルキレンオキシドまたは環状エステルの量に対し
て、0.005〜10重量%、好ましくは0.01〜2
重量%である。あまり触媒量が少ないと反応に長時間を
要したり僅かしか反応せず不適当であり、またあまり触
媒量が多いと得られるグラフト共重合体が変色すること
があり、また経済的ではなく好ましくない。
【0023】本発明の製造方法において、重合溶媒は必
要に応じて用いることができる。使用可能な溶媒として
は、水酸基、カルボキシル基、アミノ基等の活性水素を
含有しない溶媒であり、例えばベンゼン、トルエン、キ
シレン、ヘプタン、シクロヘキサン等の炭化水素、酢酸
エチル、酢酸ブチル等のエステル類、メチルエチルケト
ン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、エチレング
リコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメ
チルエーテル等のエーテル類が挙げられ、その使用量は
反応温度や系の粘性を考慮して必要量用いることができ
る。
【0024】本発明の製造方法は、上記した触媒の存在
下に、必要により溶媒を用いてアルキレンオキシドを導
入してグラフトし、続いて環状エステルを導入してグラ
フトしたり、またはアルキレンオキシドと環状エステル
の導入順序を逆にしたり、両者を同時に導入したりして
本発明のグラフト共重合体を得ることができる。
【0025】本発明で得られるグラフト共重合体は、そ
の数平均分子量に特に制限はないが、数平均分子量約1
500〜約1000000の共重合体が工業的に有用で
ある。
【0026】本発明のグラフト共重合体は、プラスチッ
クス類やゴムに可塑性を与える目的で使用される可塑剤
としての利用ができ、ポリ塩化ビニルやポリ塩化ビニリ
デン、ポリオレフィン、合成ゴム等に配合することで、
蒸散性が少なく長期間可塑性を保つ可塑剤としての利用
が可能である。
【0027】本発明で得たグラフト共重合体を、可塑剤
として利用するに際しては、特別な制限はなく、必要と
する可塑性を与えるための添加量をプラスチックス類や
ゴムに練り込めばよい。例えば、ポリ塩化ビニル100
重量部に対して、本発明の可塑剤は5〜300重量部、
好ましくは20〜100重量部添加される。その際に他
の可塑剤との併用、あるいは各種安定剤、例えば酸化防
止剤、熱安定剤、光安定剤、滑剤、帯電防止剤、顔料、
補強剤、増量剤などとともに添加することも差し支えな
い。
【0028】
【発明の効果】以上、詳述したとおり、本発明によれば
グラフト共重合体は、新規な重合体であり、また樹脂等
の可塑剤として有効であり、さらに樹脂の改質、例えば
相溶化剤、帯電防止剤等に幅広く適用できる。また、本
発明の共重合体は温和な条件で製造することができ、し
かも高収率で得られる。
【0029】
【実施例】以下、実施例によって本発明を具体的に説明
するが、本発明はこれら実施例に制限されるものではな
い。
【0030】実施例1 1リットルのオートクレーブにエチレン含有量31%、
数平均分子量1900のエチレン−酢酸ビニル共重合体
(EVA)の90%けん化物(EVOH)100g及び
水酸化カリウム1gを添加した後、170℃に昇温し、
エチレンオキシド(EO)100gを2気圧に維持しな
がら、2時間かけて導入してグラフト共重合させた。未
反応ガスをパージしてオートクレーブ中の重量変化を調
べた結果、ポリマーの生成量は195gであった(E−
g−EO)。前記オートクレーブ中の180gのE−g
−EOに、ε−カプロラクトン(CL)90gとチタン
テトライソプロポキシド0.1gを加えて、大気圧下、
170℃で2時間反応させ、266gのワックス状グラ
フト化物を得た(E−g−EO−CL)。コロナ株製1
17型分子量測定器により、トルエン溶媒を用いて各試
料の数平均分子量(蒸気圧平衡法)を測定した結果を表
1に示す。
【0031】
【表1】
【0032】また、図1にEVOH、E−g−EO、E
−g−EO−CLのゲルパーミエーションクロマトグラ
ムを示す。E−g−EOは、EVOHよりも高分子量側
にシフトしており、E−g−EO−CLは、E−g−E
Oよりもさらに高分子量側にシフトしている。表1の数
平均分子量の測定結果において、グラフト共重合体がお
よそ一定の割合で分子量が増加している結果からも、E
VOHにエチレンオキシドとε−カプロラクトンがおよ
そ一定の割合でグラフトしていることが認められる。
【0033】実施例2 1リットルのオートクレーブにエチレン含有量31%、
数平均分子量1900のエチレン−酢酸ビニル共重合体
(EVA)の90%けん化物(EVOH)100g及び
水酸化カリウム1gを添加し、170℃に昇温し、エチ
レンオキシド(EO)200gを2気圧に維持しながら
2時間かけて導入してグラフト共重合させた。ポリマー
の生成量は292gであった(E−g−EO)。このポ
リマー100gを500cc丸底フラスコにとり、ε−
カプロラクトン(CL)200gとチタンテトライソプ
ロポキシド0.1gを加えて、170℃で2時間反応さ
せ、296gのワックス状グラフト化物を得た(E−g
−EO−CL)。ゲルパーミエーショングラフ(GP
C)によって、E−g−EOとε−カプロラクトンとの
分子量分布挙動を追跡した結果、2時間の反応によって
ε−カプロラクトンのピークは完全に消失して、代わり
にE−g−EO部が高分子量側へシフトするとともに、
1本の大きなピークに変化した。
【0034】実施例3 1リットルのオートクレーブにエチレン含有量28%、
数平均分子量2000のエチレン−酢酸ビニル共重合体
(EVA)の95%けん化物(EVOH)100g及び
水酸化カリウム1gを添加し、170℃に昇温し、プロ
ピレンオキシド(PO)100gを2気圧に維持しなが
ら2時間かけて導入してグラフト共重合させた。ポリマ
ーの生成量は196gであった(E−g−PO)。前記
オートクレーブ中の180gのE−g−POに、ε−カ
プロラクトン(CL)90gとチタンテトライソプロポ
キシド0.1gを加えて、大気圧下、170℃で2時間
反応させ、266gのワックス状グラフト化物を得た
(E−g−PO−CL)。各試料の数平均分子量(蒸気
圧平衡法)を測定した結果を表2に示す。
【0035】
【表2】
【0036】GPCによって、E−g−POとε−カプ
ロラクトンとの分子量分布挙動を追跡した結果、反応後
のε−カプロラクトンのピークは完全に消失し、代わり
にE−g−PO部が高分子量側へシフトするとともに、
1本の大きなピークに変化した。
【0037】実施例4 実施例1で得られたE−g−EO−CL50gを可塑剤
として、ポリ塩化ビニル(住友化学工業(株)製 スミ
リットSX−11F)100g及び安定剤として三塩基
性硫酸鉛3g、二塩基性亜リン酸鉛1gとともに、加熱
ロールで混練した後、加熱プレスした結果、強靱で透明
感のあるシートが得られた。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1にて示した原料(EVOH)、中間体
(E−g−EO)、最終生成物(E−g−EO−CL)
それぞれのゲルパーミエーションクロマトグラムを示す
図面である。
【符号の説明】
1・・・EVOH 2・・・E−g−EO 3・・・E−g−EO−CL
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平3−285928(JP,A) 特開 昭62−230840(JP,A) 特開 平3−227307(JP,A) 特開 平4−93338(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C08G 63/66 - 63/664 C08G 63/08 C08G 65/28 CA(STN) WPI(DIALOG)

Claims (8)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】エチレン−飽和カルボン酸ビニルエステル
    共重合体けん化物にアルキレンオキシド及び環状エステ
    ルをグラフト共重合してなる、数平均分子量が1500
    〜1000000のグラフト共重合体。
  2. 【請求項2】エチレン−飽和カルボン酸ビニルエステル
    共重合体けん化物100重量部に、アルキレンオキシド
    5〜1000重量部及び環状エステル5〜1000重量
    部をグラフト共重合してなる請求項1記載のグラフト共
    重合体。
  3. 【請求項3】エチレン−飽和カルボン酸ビニルエステル
    共重合体けん化物が、エチレン−酢酸ビニル共重合体の
    けん化物である請求項1記載のグラフト共重合体。
  4. 【請求項4】エチレン−飽和カルボン酸ビニルエステル
    共重合体けん化物が、エチレン単位含有量1〜90重量
    %、数平均分子量1000〜20000のエチレン−酢
    酸ビニル共重合体のけん化物であって、そのけん化率が
    30〜100%である請求項1記載のグラフト共重合
    体。
  5. 【請求項5】アルキレンオキシドが、エチレンオキシド
    またはプロピレンオキシドである請求項1記載のグラフ
    ト共重合体。
  6. 【請求項6】環状エステルが、ε−カプロラクトンであ
    る請求項1記載のグラフト共重合体。
  7. 【請求項7】アニオン触媒またはカチオン触媒の存在
    下、エチレン−飽和カルボン酸ビニルエステル共重合体
    けん化物と、アルキレンオキシド及び環状エステルとを
    反応させることを特徴とするグラフト共重合体の製造方
    法。
  8. 【請求項8】エチレン−飽和カルボン酸ビニルエステル
    共重合体けん化物にアルキレンオキシド及び環状エステ
    ルをグラフト共重合してなる、数平均分子量が1500
    〜1000000のグラフト共重合体を有効成分とする
    可塑剤。
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