JP3276911B2 - Iii族窒化物半導体発光素子 - Google Patents

Iii族窒化物半導体発光素子

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JP3276911B2 JP33454097A JP33454097A JP3276911B2 JP 3276911 B2 JP3276911 B2 JP 3276911B2 JP 33454097 A JP33454097 A JP 33454097A JP 33454097 A JP33454097 A JP 33454097A JP 3276911 B2 JP3276911 B2 JP 3276911B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、III 族窒化物半
導体から成るn形半導体層とp形半導体層との中間に、
インジウム含有III 族窒化物半導体から成るn形発光層
を配置して成るIII 族窒化物半導体発光素子に関するも
のである。
【0002】
【従来の技術】
A.光デバイスとしての発光ダイオード 光デバイスと呼称される素子には、発光ダイオード(L
ED)やレーザダイオード(LD)等に代表される発光
素子がある。光を発すると云う意味から能動デバイスに
分類されることもある発光素子とは対照的に、光を受光
する意から受動デバイスの範疇にある受光素子なども光
デバイスの一例である。本発明が適用の対象とするの
は、能動デバイスとしての発光素子であり、電子と正孔
との再結合をもって発光を得るLED及びLDである。
【0003】 B.発光素子の発光層を構成する半導体材料 LEDを例にすれば、現在では赤色、橙色、黄色、緑
色、青緑色、青色あるいは紫色等、赤外帯域から紫外帯
域に及ぶ様々な波長の光を発するLEDが実現されるに
至っている。このような様々な発光をもたらすのは発光
層あるいは活性層と呼ばれる機能層である。そして、意
図する発光色、すなわち、発光波長に鑑みて、発光層
(活性層)を構成する半導体材料は選択される。また、
略同一の発光波長を意図する場合にあっても、帰結され
る発光強度の観点から発光層の材料は取捨選択される。
【0004】例えば、赤色LEDには実用上、砒化アル
ミニウム・ガリウム混晶(化学式:AlGaAs)が発
光層として多用されている。また、黄緑色系のLEDに
はリン化ガリウム(化学式:GaP)が、橙色から黄色
のLEDの発光層には、4元混晶(4元素から構成され
る混晶)であるリン化アルミニウム・ガリウム・インジ
ウム混晶(化学式:AlGaInP)が、それぞれ利用
されている。
【0005】さらに、発光波長を525nmとする緑色
LED、もしくは波長を大凡490nm前後とする青緑
色LED、あるいは波長を450nm程度とする青色L
EDなどの短波長可視光のLEDの発光層には、窒化ガ
リウム・インジウム混晶(化学式:GaInN)等のイ
ンジウムを構成元素として含むIII 族窒化物半導体(イ
ンジウム含有III 族窒化物半導体)が利用される。
【0006】窒化ガリウム・インジウム混晶が短波長発
光素子の発光層として特に好ましく利用されるのは、イ
ンジウム(In)の組成比を種々変化させることによっ
て、短波長の可視領域において発光の波長を都合良く変
化させられるからである。例えば、インジウム組成比を
約0.05(5%)から約0.10(10%)とする窒
化ガリウム・インジウム層は、波長を約450nmとす
る青色帯域の発光素子の発光層として利用されている。
インジウム組成比を約0.15から約0.20とする亜
鉛(元素記号:Zn)がドーピングされた窒化ガリウム
・インジウム層は、波長を約490nm前後とする青緑
帯域の発光素子の発光層として用いられている。
【0007】 C.発光をもたらす機構としてのキャリアの再結合 キャリア(担体)の「放射再結合」は、発光をもたらす
基本的な機構として周知である。再結合するキャリアと
は、一方は電子であり、他方は正孔である。これらのキ
ャリアの放射再結合により、両キャリア間のエネルギ準
位間の差に対応する波長の光が放射される。エネルギー
準位間の電子遷移に依って放射される光の波長λ(単
位:nm)とエネルギー準位間のエネルギ差ΔE(単
位:eV)とは、次の式(1)で近似される関係にあ
る。 λ=1.24×103/ΔE ・・・・・ 式(1) このような発光様式に依る発光素子において、発光素子
の高出力化は、発光層を直接遷移型の半導体材料で構成
するのを前提とした上で、如何に効率良く放射再結合を
生じさせるかに依っている。このため、窒化ガリウム・
インジウムを発光層とする従来の発光素子にあっては再
結合の効率化のための種々の発光層との接合構成が選択
され、採用されている。
【0008】 D.従来におけるGaInN発光層の配置例 LEDを例にして説明すれば、窒化ガリウム・インジウ
ムを発光層とする発光部の構成には大別して3通りあ
る。第1は、n形の窒化ガリウム・インジウム層とp形
の窒化ガリウム・インジウム層とのpn接合から構成さ
れる、単一ヘテロ(SH)構造の発光部である。
【0009】第2は、例えば、クラッド層と成すp形と
n形のIII 族窒化物半導体層の中間に、窒化ガリウム・
インジウム発光層を配置して構成される、pn接合型の
ダブルヘテロ(DH)構造の発光部である。このDH構
造の発光部にあっては、窒化ガリウム・インジウム発光
層がそれより禁止帯幅を大とする半導体層により挟み込
まれているため、発光をもたらす電子と正孔との放射再
結合が、限定された領域即ち発光層内で効率良く行われ
る。このキャリアの「閉じ込め」効果により、上記のS
H接合の場合に比較すればより高い強度の発光が得られ
る。このため、近年では砒化ガリウム(GaAs)系材
料等の他のIII −V族化合物半導体LEDと同様に、窒
化ガリウム系LEDにあってもpn接合を備えたDH構
造型のLEDが実用に供されている。そして、実用化に
至っている青色、青緑色あるいは緑色を発する短波長L
EDを例にすれば、特開平6−260283号公報に開
示されているように、クラッド層を通常、窒化アルミニ
ウム・ガリウム混晶(AlxGayN:0≦x,y≦1、
x+y=1)で構成している。また、発光層の下部に配
置する下部クラッド層をn形の窒化ガリウム(GaN)
で構成した例もある(Jpn.J.Appl.Phy
s.、32(1993)、L8〜L11頁)。一方、発
光層の上部に配置する上部クラッド層はp形の窒化アル
ミニウム・ガリウム混晶( AlxGayN;0≦x,y
≦1、x+y=1)で構成するのが通例である(特開平
6−268259号公報)。
【0010】第3の構成例は、例えば窒化ガリウム・イ
ンジウム層を井戸(well)層とする量子井戸(Qu
antum Well:QW)構造から成る発光部構成
である。具体的に例を挙げれば、特開平9−36430
号公報に開示されているような、窒化ガリウム・インジ
ウム混晶の薄層を井戸層とし、窒化ガリウム(GaN)
あるいは窒化アルミニウム・ガリウム混晶(AlxGa
1-xN:0<x≦1)からなる薄層を障壁層とする、単
一量子井戸構造(single QW:SQW)あるい
は多重量子井戸構造(multi QW:MQW)であ
る。
【0011】量子サイズ効果を顕現して井戸層内に電子
の量子準位の形成を可能にするに先ず必要とされる具体
的な井戸層の層厚(記号 Lzで表す)の条件は、クロー
ニッヒ・ペニー(Kronig−Penny)則(K.
Seeger著、「セミコンダクターの物理学(上)」
第4版 ((株)吉岡書店、1991年6月10日第1
刷発行)、12〜21頁参照)を基に次式(2)で示さ
れる(日本物理学会編、「半導体超格子の物理と応用」
((株)培風館、昭和61年9月30日初版第4刷発
行)、212頁参照)。 Lz <(τπ2ho/2m*1/2 ・・・・・ 式(2) 式(2)において、τは電子の散乱の寿命を、m* は電
子の有効質量を、各々表す。ho はプランク(Plan
ck)定数をhとしてh/2πで与えられる数値であ
る。現状では、窒化アルミニウム(AlN)、窒化ガリ
ウム(GaN)及び窒化インジウム(InN)の電子の
散乱の寿命(τ)を知るには至らず、したがって、窒化
アルミニウム・ガリウム・インジウム系の量子井戸構造
に関して正確に井戸層厚Lz を求めるには到っていな
い。ちなみに、III 族窒化物半導体と同類のIII −V族
化合物半導体に属する砒化ガリウム(GaAs)におけ
る、電子に関しての井戸層厚Lz は大凡、65nmであ
るとされている。しかし、実際に供される井戸層の層厚
は約10nm未満の極く薄い層である(Jpn.J.A
ppl.Phys.、21(9)(1982)、L57
4〜L576.あるいはPhys.Rev.、40
(5)(1989)、3013〜3020.など参
照)。
【0012】 E.量子井戸層内の量子準位と準位間遷移 上記のような、井戸層内に電子の量子準位を形成するた
めに必要とされる井戸層厚Lzを満たし、かつ井戸層と
障壁層との接合界面に、井戸層内に量子準位の形成を帰
結するに足る伝導帯あるいは価電子帯の急峻な変化を付
与している際に、井戸層内に形成される量子準位En
は、これまた、Kronig−Pennyモデルを基に
次の式(3)で与えられる(上記の半導体超格子の物理
と応用」、211頁参照)。但し、式(3)においてn
は正の整数である。 En =(ho2/2・m*)(π・n/Lz)2 ・・・・・ 式(3) 量子井戸構造を具備する発光部から放射される発光も、
DH構造の発光部からの発光の場合と同じく、井戸層内
に形成される上記の式(3)で求められる量子準位En
間の遷移に依っている。
【0013】ここで、量子井戸構造の井戸層の内部に形
成される量子準位の様態を視覚的に理解してみる。
【0014】図14は量子井戸構造においてタイプI型
と呼称される超格子における理想的なバンド構成を模式
的に示す図である。ここに示すのは、単一量子井戸(S
QW)構成、もしくは多重量子井戸(MQW)にあって
その一構成単位のポテンシャルの分布である。
【0015】井戸層Wに相当する領域には伝導帯側及び
価電子帯側の双方にポテンシャルの井戸W1及びW2が
出来ている。井戸層Wの両脇には、井戸層Wに接合する
障壁層B,Bとのバンドのオフセットによりポテンシャ
ルの障壁が発生している。このバンドの不連続性は、そ
もそも発光層と障壁層とを構成する窒化物半導体材料の
禁止帯幅(バンドギャップ)の差異に起因するものであ
る。量子準位を形成するに充分な条件が付帯された量子
井戸構造にあっては、井戸層Wに相当する領域に形成さ
れるポテンシャル井戸W1及びW2の内部には、図中破
線で示す量子準位L11,L12,L21,L22が形
成され得る。
【0016】窒化ガリウム・インジウム等の直接遷移型
の半導体材料から量子準位を形成するに足る井戸層W内
では、電子と”軽い”正孔間、あるいは電子と”重い”
正孔間のk空間における波長選択則を固持した遷移が生
じ、その間の量子準位差に対応した波長の光が放射され
る。例えば、図14では電子の量子準位L11と、”重
い”正孔の量子準位L21間との遷移が起こる。
【0017】 F.矩形(方形)ポテンシャル井戸構造を具備した発光
素子 このような、伝導帯より一様にポテンシャルが増加し
た、所謂矩形ポテンシャル型の量子井戸内の量子準位間
の遷移を利用する量子井戸構造発光素子は既に、砒化ガ
リウム/砒化アルミニウム・ガリウム混晶系からなる量
子井戸構造III −V族化合物半導体レーザとして実現さ
れている(J.P.van der Ziel他、A
ppl.Phys.Lett.、26(1975)、4
63.、W.T.Tsang他、Appl.Phy
s.Lett.、39(1981)、786.)。
【0018】量子井戸構造から成る発光部は単色性に優
れる発光スペクトルをもたらすため、この利点を流用す
べく、近年では、同類のIII −V族化合物半導体である
III族窒化物半導体から成る量子井戸構造の発光部を備
えた窒化ガリウム・インジウム系の発光素子も報告され
ている(Jpn.J.Appl.Phys.、35(1
996)、Part 2、No.1B、L74〜L76
頁参照)。その他、多くの技術開示例に窒化ガリウム・
インジウム等を井戸層とする量子井戸構造発光素子を観
ることができる(例えば特開平6−164055号、特
開平6−268257号、特開平7−7223号、特開
平7−94784号、特開平7−297476号の各公
報)。窒化アルミニウム・ガリウム混晶/窒化ガリウム
系からなる単一あるいは多重量子井戸構造の発光素子を
含めれば、さらに多くの報告例がある。例えば、ジャ
ーナル オブ バキューム サイエンス アンド テク
ノロジー B(J.Vac.Sci.Technol.
B)、8(1990)、316.、アプライド フィ
ジクスレターズ(Appl.Phys.Lett.)、
56(1990)、1257.、ジャーナル オブ
アプライド フィジクス(J.Appl.Phy
s.)、74(1993)、3911.、ジャーナル
オブ エレクトロニック マテリアルズ(J.Ele
ctron.Mater.)、21(1992)、43
7.同誌21(1992)、609.、ジャパニー
ズ ジャーナル オブ アプライド フィジクス(Jp
n.J.Appl.Phys.)、30(Part
1)(1991)、1924.、同誌34(199
5)、L797.、同誌34(Part 2)(19
95)、L1332.、同誌34(Part 2)
(1995)、L1487.等である。
【0019】G.量子井戸層内の準位分布 量子井戸構造を構成する井戸層と障壁層との双方の層の
禁止帯幅を各々、(Eg)w及び(Eg)bで表すとす
れば、伝導帯側のオフセット量ΔEc 及び価電子帯側の
オフセット量ΔEvは次の式(4)及び(5)で表せ
る。 ΔEc =α((Eg)b−(Eg)w)=αΔEg ・・・・・ 式(4) ΔEv =β((Eg)b−(Eg)w)=βΔEg ・・・・・ 式(5) 但し、ΔEg=(Eg)b−(Eg)w
【0020】式(4)、式(5)におけるα及びβは分
配比率を表す係数であって、αはΔEgの何割がΔEc
、すなわち、伝導帯側のオフセットに寄与しているか
を示す係数である。βは価電子帯側のオフセット量がΔ
Egの何割に相当するかを示す係数であり、αとβはα
+β=1の関係にある。砒化ガリウム/砒化アルミニウ
ム・ガリウム混晶系の量子井戸構造にあっては、α=
0.85、β=0.15であるのがDingleの85
%則として知られている(上記の「半導体超格子の物理
と応用」、72頁参照)。しかし、窒化ガリウム系の量
子井戸構造にあっては、バンド不連続性を定量的に知る
には未だ充分に至っていない。
【0021】何れにしても、図14に示すような、従来
型の量子井戸構造における、障壁層Bとのポテンシャル
の差異によって形成される矩形ポテンシャル井戸W1,
W2にあって、内部に形成される量子準位L11,L1
2,L21,L22は一様である。すなわち、従来の量
子井戸構造と称される構造にあって、井戸層W内に形成
される量子準位L11,L12,L21,L22は井戸
層Wの幅方向(水平方向)に、伝導帯から一定のポテン
シャルの差異を保持しながら一様に分布する矩形状の分
布である。したがって、従来の量子井戸構造と称する井
戸層からの発光は、対称的な矩形ポテンシャル井戸の内
部に存在する電子等のキャリアの再結合によっているも
のである。
【0022】ところで、この対称型矩形ポテンシャル井
戸構造は、次に述べるような問題点を抱えている。
【0023】 H.矩形ポテンシャル井戸構造の作製上の一般的問題点 発光部を量子井戸構造に構成することによる一つ利点
は、単色性である。しかし、量子準位を形成するに足る
薄膜積層構成を得るにあっては、その形成に伴う問題が
付帯する。矩形ポテンシャル井戸の形成にあって理想的
なのは、井戸層と、井戸層とのオフセットを生む障壁層
との接合界面で構成元素あるいは構成元素の組成比が急
峻に変化していることである。
【0024】構成元素の急峻な変化が要求される一具体
例を挙げれば、窒化ガリウム・インジウム(GaxIn
1-xN:0≦x<1)から発光層を、窒化アルミニウム
・ガリウム混晶(AlxGa1-xN:0≦x≦1)から障
壁層を構成するポテンシャル井戸系にあって、井戸層と
障壁層との接合界面で物質を窒化ガリウム・インジウム
から窒化アルミニウム・ガリウム混晶へと原子的なレベ
ルで変化させる必要がある。すなわち、本例においてイ
ンジウム(In)原子は井戸層にのみ存在し、アルミニ
ウム(Al)原子は障壁層のみに存在していることが理
想として要求される。しかし、実際は接合界面を通して
の原子の相互拡散や界面(表面)の原子レベルでの非平
坦性等に起因して、接合界面での構成元素あるいはその
組成を急峻に厳密に安定して制御するには、高度な界面
制御技術を駆使する必要がある。発光層と障壁層との接
合界面の急峻性が獲得できない場合の端的な問題点は、
井戸層と障壁層とのバンド変化が緩慢となることであ
る。
【0025】図15は井戸層と障壁層とのバンド変化が
緩慢な場合を模式的に示す図である。図において、実際
のバンドダイヤグラムD1と、破線で示した理想とする
対称型矩形ポテンシャル井戸におけるバンドダイアグラ
ムD2との対比から明かなように、バンドオフセットが
緩慢であると井戸W内に形成される一量子準位L3及び
L4が変化を被る。バンドが緩慢に変化する程、すなわ
ち、接合面における構成元素濃度の緩慢な変化により、
井戸幅が拡幅されるのと同等の事態が生じた場合、上記
の式(3)に示される通り、量子準位L3はL31へと
低下し、量子準位L4はL41へと低下する。これは、
一般に量子準位の「ゆらぎ」として認識されている現象
である(上記の「半導体超格子の物理と応用」((株)
培風館発行)、227頁参照)。この量子準位の「ゆら
ぎ」はポテンシャルの緩慢な変化のみではなく、井戸層
の層厚が意図する値から僅かに変化した場合にも発生す
る。
【0026】図16は井戸層の層厚(幅)の僅かな変化
によって、量子準位が微妙に変化する模様を伝導帯側の
準位L5について模式的に示したものである。同図から
井戸幅の僅かな拡幅あるいは縮小に対応して、量子準位
L5がL52へ低下あるいはL51へ増加する様子が観
てとれる。井戸層W内の量子準位間の遷移を基に発光を
得る量子井戸構造の発光素子にあって、量子準位L5の
変化は遷移エネルギーの変化、すなわち、式(1)によ
れば意図する発光波長からの”ずれ”に帰結する。この
ように、井戸層Wの層厚(幅)が僅かに”ずれ”ても、
発光波長に変化を被るのが従来の対称型の矩形ポテンシ
ャル井戸を有する量子井戸構造からなる発光素子の問題
点の一つである。
【0027】窒化ガリウム・インジウム/窒化ガリウム
系量子井戸構造にあっては、そもそも窒化ガリウム・イ
ンジウムからなる発光層(井戸層)と、窒化ガリウムあ
るいは窒化アルミニウム・ガリウム混晶からなる障壁層
とで良好な接合界面を形成するのが極めて困難であるこ
とが知られている。これは、一つは、一様なインジウム
組成の単一の相からなる窒化ガリウム・インジウム混晶
の形成の困難性に起因している。窒化ガリウム・インジ
ウムは熱的に変質し易いため、結果としてインジウム濃
度(組成)を不均一とする複数の相が生じ、多相構成と
なる傾向が強いからである(Solid State
Comunn.、11(1972)、617〜621
頁、J.Appl.Phys.、46(8)(197
5)、3432〜3437頁参照)。
【0028】窒化ガリウム・インジウム混晶に関する結
晶形態に関する研究の最近の進展は、均質な混晶組成の
窒化ガリウム・インジウム混晶の成長はむしろ困難であ
るのを教示している(1996(平成8年)秋季第57
回応用物理学会学術講演会講演予稿集No.1、講演番
号8p−ZF−14、209頁)。窒化ガリウム・イン
ジウムにあっては、加熱による相構造の変化により、母
相と、母相とはインジウム濃度(組成)を異にする従属
相とに分離する現象も認められる(特願平8−2610
44号明細書参照)。
【0029】図17は多相構造からなる不均質な窒化ガ
リウム・インジウム混晶層を発光層として含む量子井戸
構成の一例を示す図である。同図の構成において、井戸
層W10に接合する障壁層B10,B10は、相変化を
無視できる2元(2元素)化合物である窒化ガリウム
(GaN)から構成している。発光層(井戸層)W10
である窒化ガリウム・インジウム混晶層は、その混晶の
成膜時の加熱プロセス等により熱的に変質し、内部は母
相P10と、従属相P11としての微結晶体とに分離してい
る。障壁層B10,B10との接合様式を観れば、母相
P10と接合する、あるいは従属相P11と接合する領域等
では、発光層W10を構成する窒化ガリウム・インジウ
ムの形態の変化のため発光層W10の領域によって接合
を構成する物質が変貌する。母相P10と従属相P11とで
はインジウム濃度を異にするのが一般的である。窒化ガ
リウム・インジウム混晶(GaxIn1-xN:0≦x≦
1)にあって、インジウム組成比(1−x)が異なれ
ば、禁止帯幅が非直線的に変化するのは従来の技術が教
示するところである(特公昭55−3834号公報明細
書参照)。したがって、この母相P10と従属相P11との
構成形態に変化を来たし易い状況は、発光層W10が禁
止帯幅を異にする多相から構成され易いことを表してい
る。これは、たとえ、障壁層B10の内部結晶構造等の
品質を一様に形成したとしても、井戸層W10の不均質
性故に井戸層W10の領域に依存してバンドオフセット
に差異が生ずることを意味している。バンドオフセット
が異なれば、井戸層W10内の量子準位が変化すること
は次の式(6)が教えるところである(J.Appl.
Phys.、56(2)(1984)、463〜467
頁参照)。 tan2{(mw・E・Lz2/2ho2)}1/2−mb(V−E)/mw・E=0 ・・・・・・式(6) 上記の式(6)において、mw 及びmb は、井戸の内部
及び外部の電子の有効質量(effctive mas
s)を各々表す。また、Eは矩形ポテンシャル井戸に生
ずるエネルギー準位を、Vはポテンシャル井戸の深さ、
すなわち、バンド端の不連続性(オフセット)をそれぞ
れ表す。また、hoはプランク定数をhとしてh/2π
で与えられる数値である。
【0030】量子準位が変化すれば、式(1)から導か
れるごとく発光波長は変化する。量子井戸構造の発光素
子にあっては、接合面におけるバンドの緩慢な変化、あ
るいは意図する井戸幅からの僅かなずれによって発光波
長に変貌を来すのが大きな欠点である。内部組織の多相
構造への変化が特に顕著に進行すると、母相P10がイン
ジウムを殆ど含有しない窒化ガリウム、あるいは窒化ガ
リウムだけから構成される事態も誘発され得る(特願平
8−208486号明細書参照)。母相P10がそのよう
な窒化ガリウムから構成されるとなると、図17に示す
窒化ガリウムを障壁層B10とする量子井戸構造にあっ
ては、発光層W10と障壁層B10,B10とのバンド
オフセットがキャリアの閉じ込めを行うに充分とはなら
ず、量子井戸を形成するに至らないことも推測される。
【0031】また、窒化ガリウム・インジウム混晶の成
膜技術上の困難さを省みる。図17に示した量子井戸構
造の発光部を、窒化ガリウム系膜の成膜に一般的に使用
される有機金属熱分解気相成長法(MOCVD法)によ
り構成する場合を例にして説明する。MOCVD法で
は、障壁層B10としての窒化ガリウムの成膜は約10
00℃を越える温度で実施されるのが通例である(例え
ば、特公平3−31678号公報明細書など参照)。一
方、井戸層W10としての窒化ガリウム・インジウム混
晶は、その易昇華性を勘案して1000℃未満の大凡、
800℃から900℃前後の比較的低温で成膜されるの
が常である(特開平6−209122号公報明細書参
照)。
【0032】したがって、窒化ガリウム/窒化ガリウム
・インジウム/窒化ガリウムからなる積層構成を形成す
る際には、1000℃を越える、例えば1100℃で下
層の窒化ガリウムの成膜を終了したる後、成膜温度を約
800℃から約900℃に一旦低下させて、中間層の窒
化ガリウム・インジウムの成膜を形成し、然る後再び1
000℃を越える上層の窒化ガリウムに適する成膜温度
に昇温するというように、成膜温度を順次変化させる必
要がある。このため、中間層の窒化ガリウム・インジウ
ム混晶層は、その上に窒化ガリウム層を積層するための
高温への昇温時の受熱により昇華する。特に、この昇温
の条件が不適であると昇華が激しく生じるため、窒化ガ
リウム・インジウム混晶発光層の部分的な揮散、損失を
招く。昇華等に起因する発光層の部分的な揮散・損失
は、発光層即ち井戸層の層厚(井戸幅)の部分的な変化
を来す。
【0033】このように、窒化ガリウム・インジウム混
晶の非混和性に基づく不均質性と相俟って、成膜プロセ
スに付随して生ずる井戸層内における層厚(幅)の変化
が帰結される。井戸層において井戸幅に変化を来せば、
発光波長の不均一性をもたらすことは上記の式(3)が
示すところである。しかも、同一の発光層(井戸層)に
おいて、接合界面の非平坦性によって層内の領域毎に井
戸層厚が異なれば、尚更のこと同一の発光層から異なる
波長の発光がもたらされることとなり、単色性に優れる
発光を得るに不利な状況を招くのみであり、発光強度も
それほど強くすることはできない。
【0034】上記のように、窒化ガリウム・インジウム
混晶で対称型矩形ポテンシャル井戸を構成すると、
(1)接合界面での急峻な組成比形成が困難なためバン
ド変化が緩慢化する、(2)多相化しやすい(非混和
性)、(3)易昇華性である、といったことが原因し
て、発光素子として機能させても、発光波長にずれが生
じ、単色性が損なわれ、発光強度もそれほど強くするこ
とができない、という問題点を生じていた。一方、この
ような問題点を抱えながらも、キャリアの再結合(量子
準位間の遷移)によりもたらされる優れた発光特性を安
定して顕現するに適する発光様式の実現が求められると
ころであり、そこで、本発明者は、対称型矩形ポテンシ
ャル井戸の構成とは異なる、非矩形ポテンシャル井戸の
構成の下で、キャリアの再結合を行わせるデバイスに着
目した。
【0035】 I.矩形ポテンシャル井戸以外の量子構造を利用するデ
バイス例 伝導帯のバンド構造の曲折をもって形成された、非矩形
ポテンシャル井戸に蓄積された低次元の電子(量子化さ
れた準位のキャリア)を、素子の高速動作をもたらすキ
ャリアとして利用する素子には、例えば、2次元電子ガ
ス電界効果型トランジスタ(TEGFET)がある。こ
の類の電子デバイスに利用されるポテンシャル井戸構造
は、従来からの発光素子用途の量子井戸構造における矩
形ポテンシャル井戸構造(特開平8−293643号公
報明細書参照)ではなく、活性層の中央を中心にして非
対称のバンド構成となっている。
【0036】上記の2次元電子ガス電界効果型トランジ
スタの一つに、III −V族化合物半導体からなる高移動
度トランジスタ(変調ドーピング電界効果型トランジス
タ(MODFET))がある。このMODFETの動作
に利用されるキャリアは主に、量子井戸内の電子の如
く、量子化された低次元の電子、即ち2次元的に振る舞
う電子である。そして、MODFETに高速動作性を付
与する量子化された電子の存在をもたらすポテンシャル
井戸の構成は、上記のように非対称であり、従来の発光
素子用途の対称型矩形ポテンシャル井戸のそれとは異に
する。
【0037】図18はMODFETの積層構造体におけ
る非対称型のバンド構造を示す図である。図において、
MODFET積層部の非対称型バンド構造は、電子走行
層(チャネル層)S1/スペーサ層S2/電子供給層S
3から成っている。スペーサ層S2との接合界面510
近傍の電子走行層S3の内部の領域では、伝導帯端と価
電子帯端にバンドの不連続部分501,502が発生し
ている。特に、伝導帯端のバンドの曲折部分503での
落ち込みは顕著であって、接合界面510近傍の領域で
は、伝導帯のレベルがフェルミレベルF以下に下降して
いる。この伝導帯がフェルミレベルF以下に在る領域は
当然のことながらポテンシャルが低いため、電子eが蓄
積され、局在化する。
【0038】電子(キャリア)の分布状態を対比する
と、従来の矩形ポテンシャル井戸層内の量子化された電
子は、障壁層との接合界面に局在するのではなく、井戸
層内で伝導帯端とのエネルギー差を略一定に維持してな
る或る準位に略一様に分布しているのに対し、MODF
ET構造における電子は、他層との接合界面近傍の領
域、すなわち、活性層の特定の領域に蓄積され局在して
いる。
【0039】すなわち、MODFET構造では、電子
を、伝導帯のバンド構造の曲折をもって形成された非矩
形(非対称)ポテンシャル井戸に蓄積するとともに、そ
の非矩形ポテンシャル井戸に低次元(2次元)的に閉じ
こめることで、その電子を素子の高速動作をもたらすキ
ャリアとして利用している。
【0040】電子走行層S1を砒化ガリウム(GaA
s)とし、スペーサ層S2あるいは電子供給層S3を砒
化アルミニウム・ガリウム混晶(AlGaAs)とす
る、GaAs/AlGaAs系MODFET、あるいは
電子走行層S1を砒化ガリウムに代替して砒化ガリウム
・インジウム(GaInAs)とするGaInAs/A
lGaAs系MODFETに加え、最近では、窒化ガリ
ウム系半導体材料からなるMODFETも報告されるに
至っている(例えば、Appl.Phys.Let
t.、69(25)(1996)、3872〜3874
頁参照)。このMODFETの作製に利用されている窒
化ガリウム系半導体材料とは、窒化ガリウムと窒化ガリ
ウム・アルミニウム混晶であり、窒化ガリウムは電子走
行層S1を、また窒化アルミニウム・ガリウム混晶はス
ペーサ層S2、及び電子供給層S3をそれぞれ構成して
いる(Appl.Phys.Lett.、69(6)
(1996)、794〜796頁参照)。この窒化ガリ
ウムと窒化アルミニウム混晶とのヘテロ接合において、
接合界面近傍の領域に電子の局在をもたらすバンド構造
の変化が発生することは既に、報告されている(App
l.Phys.Lett.、69(23)(199
6)、3456〜3458頁参照)。
【0041】これらのMODFET構造におけるバンド
構造の変化を発生させる接合様式を観るに、それはn形
伝導層相互の接合界面である。すなわち、n形の電子走
行層とn形のスペーサ層もしくは電子供給層とのn/n
接合である。基板結晶側からの結晶層の積層順序から観
て所謂、逆MODFET構造と一般的に呼称される構造
も提示されているが(IEEE Electron.D
evice Lett.、EDL−7(1986)、7
1頁及び同誌454頁参照)、この場合もキャリア(電
子)が2次元電子ガスとして蓄積されるのは、n形電子
供給層もしくはn形スペーサ層と、n形電子走行層との
接合界面、すなわち、n/n接合部である。このよう
に、MODFET構造におけるキャリアの局在は、いず
れもnn接合部を利用している。
【0042】 J.窒化ガリウム・インジウム系発光素子における量子
効果の解明の状況 一方、窒化ガリウム・インジウム混晶を発光層とするII
I 族窒化物半導体素子にあって、同発光層内に「閉じ込
め」られた状態の量子を介しての発光の可能性が示唆さ
れている(1997年(平成9年)春季第44回応用物
理学関係連合講演会講演予稿集No.1、講演番号28
a−D−6、178頁参照)。しかし、キャリアの「閉
じ込め」の実態は不明であって、どのようなバンド構成
において、どのような分布状態を示すキャリアが発光を
もたらす再結合に寄与しているかは不明のままであり、
ましてや、接合界面近傍における領域に蓄積され局在す
る電子を、発光をもたらす再結合に利用したIII 族窒化
物半導体発光素子の例は実際知られていない。
【0043】
【発明が解決しようとする課題】上記のように、発光素
子の発光部において、窒化ガリウム・インジウム混晶で
対称型矩形ポテンシャル井戸を構成し発光層とすると、
バンド変化の緩慢化、多相化(非混和性)、易昇華性と
いったことが原因して、発光波長にずれが生じ、単色性
が損なわれ、発光強度もそれほど強くすることができな
いという問題点を有している。一方、このような問題点
を抱えながらも、キャリアの再結合によりもたらされる
優れた発光特性を、安定して顕現できる発光様式とし
て、非対称型ポテンシャル井戸構造にその可能性を見い
だせるものの、発光素子分野でのこのような非対称型ポ
テンシャル井戸構造は、現状では何ら解明されておら
ず、このため、非対称型ポテンシャル井戸構造でのキャ
リアの分布形態や、その発光特性改善に寄与する構成要
件も明確でなく、したがって、単色性特性や発光強度特
性を改善できるには至っていない。
【0044】この発明は上記に鑑み提案されたもので、
青色帯から緑色帯にかけての単色性に優れる短波長光を
高強度で発光することのできるIII 族窒化物半導体発光
素子を提供することを目的とする。
【0045】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、請求項1に記載の発明は、III 族窒化物半導体から
成るn形半導体層とアルミニウムを含有するIII 族窒化
物半導体から成るp形半導体層との中間に、インジウム
含有III 族窒化物半導体から成るn形発光層を配置して
成るIII 族窒化物半導体発光素子において、上記n形発
光層が、n形半導体層との接合界面近傍の領域に設けら
れた高キャリア濃度層と、p形半導体層との接合界面近
傍の領域に設けられた低キャリア濃度層とからなり、上
記高キャリア濃度層は、ドナー濃度が5×10 17 cm -3
以上で1×10 19 cm -3 以下であり、上記低キャリア濃
度層は、キャリア濃度が5×10 17 cm -3 以下、層厚が
2nm以上で20nm以下であり、上記n形発光層とp
形半導体層との接合界面では、n形発光層のインジウム
原子の濃度がp形半導体層内で2桁低下するまでの遷移
距離、およびp形半導体層のアルミニウム原子の濃度が
n形発光層内で2桁低下するまでの遷移距離を、それぞ
れ20nm以下として組成比変化の急峻性を確保し、上
記低キャリア濃度層中に、キャリア面密度が1×1011
cm-2以上で5×1013cm-2以下の、低次元電子を選
択的に蓄積し局在させる電子蓄積領域が設けられてい
る、ことを特徴とする。
【0046】また、請求項2に記載の発明は、上記した
請求項1に記載の発明の構成に加えて、上記n形発光層
は、層厚の減少に反比例して発光波長が長波長化する、
ことを特徴とする。
【0047】また、請求項3に記載の発明は、上記した
請求項1または2に記載の発明の構成に加えて、上記n
形発光層と上記p形半導体層との間に、キャリア濃度を
5×10 17 cm -3 以下とし、層厚を3nm以上で30n
m以下とする窒化アルミニウム・ガリウム混晶(Al x
Ga 1-x N:0≦x≦1)から成る薄層を介在させた、
ことを特徴とする
【0048】
【発明の実施の形態】以下にこの発明の実施の形態を図
面に基づいて詳細に説明する。図1は本発明のIII 族窒
化物半導体発光素子における発光部積層構造を概念的に
示す図である。図において、本発明のIII 族窒化物半導
体発光素子の発光部10は、III 族窒化物半導体から成
るn形半導体層(以下、「n形層」という)1とp形半
導体層(以下、「p形層」という)3との中間に、イン
ジウム含有III族窒化物半導体から成るn形発光層(以
下、「発光層」という)2を配置して成り、n形層2の
ドナー濃度を5×1017cm-3以上で1×1019cm-3
以下とし、発光層2のp形層3との接合界面5の近傍の
領域に、キャリア面密度が1×1011cm-2以上で5×
1013cm-2以下の、電子を選択的に蓄積し局在させる
電子蓄積領域R(図2参照)を備えている。
【0049】このように、本発明の発光部10は、イン
ジウム含有III 族窒化物半導体発光層2の両側にマトリ
ックスを異にする半導体層1,3を接合させてなる非対
称型の接合構成を含む構造となっている。特に、詳細は
後述するように、キャリア(電子)を、発光層2のp形
層3側の表層部に備えた電子蓄積領域Rに選択的に蓄積
するために、バンド構造を非対称型のポテンシャル構成
としている。
【0050】発光部10の接合構成は、バンドオフセッ
トから観れば発光層2とn形層1との間の擬似的なホモ
(homo)接合と、発光層2とp形層3とのヘテロ接
合から成る。すなわち、擬似的なシングルヘテロ(S
H)を基本とするものである。
【0051】図2は発光部のバンド構造を示すバンドダ
イアグラムである。発光部10は、図に示すように、非
対称型のポテンシャル構成を有し、発光層2内部におけ
るバンド20は、p形層3との接合界面5に近づくにつ
れて、大きな曲率で落ち込んで、接合界面5との間に電
子蓄積領域Rを形成し、接合界面5において急激に立ち
上がり、その後p形層3において少し下降し平坦化す
る。
【0052】発光層2とp形層3との伝導帯のバンドオ
フセットOF1は、急激に立ち上がったバンド20の最
高点20aと、落ち込んだ最低点20bとの間のエネル
ギ差である。本発明では、電子蓄積領域Rを、接合界面
5近傍の発光層2の内部に、発光層2の大きな曲率で落
ち込む伝導帯と、p形層の伝導帯との間のエネルギ差に
よって、電子蓄積領域Rを創出し、電子eをこの電子蓄
積領域Rに優先的に且つ選択的に蓄積する構成となって
いる。ここで云うバンド間のエネルギ差は、従来の矩形
ポテンシャル井戸のように、フェルミレベルから一様な
ポテンシャル差をもって存在する「平坦」な伝導帯レベ
ル間相互の差(図14参照)とは異なっている。
【0053】キャリア(電子)を電子蓄積領域Rに優先
的かつ選択的に蓄積する効果を上げるために、n形層1
は、発光層2との間の伝導帯側のオフセットOF2が電
子の充分な「閉じ込め」をもたらすに至らないIII 族窒
化物半導体材料から構成する。したがって、n形層1と
発光層2とのオフセットOF2は、電子の室温での熱運
動エネルギ(約0.26eV)未満の概ね、0.2〜
0.3eV未満、好ましくは約0.1eV以下とする。
一方、発光層2と接合するp形層3は、順方向バイアス
下においてn形層1側から発光層2に流通する電子を、
接合界面5近傍の電子蓄積領域Rに蓄積する、そのよう
なポテンシャル構成を創出する作用を担わなければなら
ない。したがって、p形層3を構成するIII 族窒化物半
導体材料は、発光層2を構成するインジウム含有III 族
窒化物半導体材料に比較して、最低でも電子の室温での
熱運動エネルギ(約0.26eV)以上の伝導帯の障壁
をもたらすに足るものでなければならない。
【0054】発光層2は、一般式 AlxGayInz
(x+y+z=1、0≦x,y≦1、z≠0)で表記さ
れるインジウムを含有するIII 族窒化物半導体から構成
する。代表的なものには、窒化アルミニウム・ガリウム
・インジウム系混晶がある。また、リン(P)や砒素
(As)等の窒素(N)以外の元素周期律表の第V族元
素(記号Vで示す。)を構成元素として含む、一般式
AlxGayInza1-a(x+y+z=1、0≦x,
y≦1、z≠0、0<a≦1)で表記されるインジウム
含有III 族窒化物半導体混晶からも発光層を構成でき
る。
【0055】電気伝導形から判断すれば、n形、p形及
びi形(高抵抗もしくは絶縁形)の何れのインジウム含
有III 族窒化物半導体層も発光層として利用できるが、
本発明では、発光部10の非対称型のポテンシャル井戸
構造をもって、キャリア特に電子を蓄積する発光層2の
形成を意図している以上、発光層2を構成するインジウ
ム含有III 族窒化物半導体層は、n形の伝導性を呈する
のを最も好ましいとする。
【0056】発光層2をn形とする場合、p形層3との
接合界面5近傍の発光層2の領域に電子蓄積領域Rを形
成するのが重要である。発光層2の内部にあって、キャ
リア(電子)の蓄積をp形層3との境界側にもたらすの
は、蓄積した電子と順方向電流の注入(電流注入)によ
って、p形層3からより多く供給される正孔との再結合
を生じさせるのに都合が良いからである。n形層1側と
の接合界面に電子蓄積領域を持つ構成の発光層にあって
は、p形層3からその電子蓄積領域までの間には距離が
あり、正孔が電子蓄積領域に到達するのは、正孔の拡散
長を考慮しても不都合である。
【0057】本発明では、発光層2のドナー濃度Ndを
規定する。ドナー濃度Ndとは、電気的に活性化したn
形不純物の濃度である。電気的に活性化したp形不純物
の量を示すアクセプタ濃度をNaとすれば、キャリア濃
度Nとドナー濃度Ndとの関係は、N=|Nd−Na|
である。したがって、ドナーが支配的に存在し、Nd》
Naである半導体層では、キャリア濃度Nとドナー濃度
Ndとは略同等となる。
【0058】或る”深さ”のポテンシャル井戸に蓄積す
るキャリアの量には限りがある。ポテンシャル井戸内の
量子準位に許容される状態密度を越える程の多量のキャ
リアが存在する状態となると、ポテンシャル井戸から逸
脱して通常の3次元的な挙動を呈するキャリアの量が増
加する。すなわち、素子の高速動作をもたらす量子化さ
れた低次元(2次元)のキャリアが3次元的キャリアの
量に占有する割合が低下する。したがって、量子効果に
基づく優れた素子特性の顕現を妨げる。一方、逆にポテ
ンシャル井戸内の量子準位に空位を生む程キャリアが少
量であっても、量子化された低次元のキャリアが3次元
のキャリアに占める比率は小となる。したがって、量子
デバイスの特徴は発現できない。適量のキャリアの蓄積
がもたらされるn形発光層2のドナー濃度Ndは5×1
17cm-3以上で1×1019cm-3以下である。この範
囲外では、蓄積されるキャリア(電子)の量は適量から
外れる。
【0059】本発明ではまた、p形層3側の発光層2の
表層部のキャリア面密度(シートキャリア濃度)を規定
する。シートキャリア濃度Nsとキャリア濃度Nとは、
Ns=N×dの関係にある。dは発光層2の層厚であ
る。上記のドナー濃度Nd(5×1017cm-3以上で1
×1019cm-3以下)の範囲におけるシートキャリア濃
度Nsは、1×1011cm-2以上で5×1013cm-2
下の範囲とする。この範囲外のシートキャリア濃度Ns
を有する発光層2では、量子化したキャリアは存在する
が、量子化されたキャリアの3次元的(バルク(bul
k)的)な非量子化キャリアに占める割合が低下する。
これより、量子化されたキャリアの再結合に起因する優
れた発光特性を充分に顕現するに至らない。
【0060】局在するキャリアの有無はシュブニコフ・
ド・ハース(Shubnikov−de Haas:略
称SdH)効果による磁気抵抗の振動の測定から調査で
きる(K.ジーガー著、山本 恵一他共訳、「セミコン
ダクターの物理学(下)(第4版)」((株)吉岡書店
物理学叢書61、1991年6月25日第1刷発
行)、353〜360頁参照)。特に、磁場方向が接合
界面(被検体)に対して垂直である場合の磁気抵抗のS
dH振動におけるランダウ準位(Landau lev
el)の出現から局在化した低次元(2次元)のキャリ
アの存在を知ることができる(上記の「半導体超格子の
物理と応用」((株)培風館発行、42〜46頁参
照)。また、Landau準位と磁力との相関から、局
在化し量子化した低次元キャリアのキャリア面密度Ns
が求められる。シートキャリア濃度Nsはホール効果法
で測定されるキャリア濃度Nからも計算できる。
【0061】上記のように、この発明に係る第1の実施
形態では、p形層3との接合界面5近傍の発光層2の領
域に、電子蓄積領域Rを備えるようにしたので、順方向
バイアス下においてp形層3の正孔が発光層2側の界面
5に拡散したとき、その正孔は近接する電子蓄積領域R
に流下し、電子蓄積領域内の電子との間で再結合する。
したがって、再結合が円滑に行われ、高い発光強度を得
ることができる。
【0062】また、発光層2のドナー濃度Ndを5×1
17cm-3以上で1×1019cm-3以下とし、発光層2
の立体的空間において通常の3次元的な挙動を呈する電
子(3次元的キャリア)の数を制限したので、その電子
が電子蓄積領域Rに流入して溜まるその数を適量に保持
することができる。
【0063】さらに、電子蓄積領域Rを備える発光層2
側界面5の幅狭い領域において主に2次元的に振る舞う
電子(2次元的キャリア)のシートキャリア濃度Ns
を、1×1011cm-2以上で5×1013cm-2以下とし
たので、上記の発光層2の立体的空間における3次元的
キャリアに対する、電子蓄積領域Rにおける2次元的キ
ャリアの占める割合を最適化することができる。
【0064】上記したように、発光層2のドナー濃度N
dが高すぎても低すぎても、P形層3からの正孔と電子
蓄積領域Rの電子との再結合に起因するこの発明に固有
の発光特性を充分に顕現できなくなる。すなわち、ドナ
ー濃度Ndが低く3次元的キャリアが少ないと、電子蓄
積領域Rに流入して溜まる電子が少なくなって空位が生
じ、したがって電子蓄積領域Rでの電子との再結合の発
生が少なくなる。逆にドナー濃度Ndが高く3次元的キ
ャリアが多すぎると電子蓄積領域Rが満席となり収容で
きなくなって、電子蓄積領域Rにおける2次元的キャリ
アの、3次元的キャリアに占める割合が小さくなり、p
形層3からの正孔が電子蓄積領域に流入しようとして
も、その手前で3次元的キャリアによって阻止されてし
まう。このように、双方の場合ともこの発明に固有の発
光特性の顕現が妨害されてしまうが、この発明では、発
光層2のドナー濃度Ndと、発光層2側界面5でのシー
トキャリア濃度Nsとを規定したので、電子蓄積領域R
に適量の電子を保持でき、発光特性を最大限発揮させる
ことができる。
【0065】発光層2のp形層3側との接合界面5にの
みキャリア(電子)の蓄積をもたらす電子蓄積領域Rを
有する発光層2を形成するには、発光層2より禁止帯幅
を大とする半導体層を単に積層するのみでは不充分であ
り、p形層3と発光層2との接合界面5は物質的に観て
明瞭な境界となっていなければならない。すなわち、界
面の急峻性が要求される(上記の「半導体超格子の物理
と応用」((株)培風館発行)、139〜145頁参
照)。次に、この急峻な界面を実現する各層の成長方法
について、説明する。
【0066】発光部10を構成する各III 族窒化物半導
体層の成長方法には、有機化合物熱分解気相成長法(M
OCVD法)、分子線エピタキシャル成長法(MBE
法)やハロゲン化物あるいはハイドライド(水素化物)
を原料とする気相成長法(VPE法)があるが、LED
等の発光素子用途の積層構造体の形成に一般的に利用さ
れるMOCVD法を例にすれば、ヘテロ接合界面の急峻
性の確保を阻害する様々な要因を排除する配慮を施した
成長環境の創出が必要である。ヘテロ接合界面の急峻性
を損なう、所謂、界面の”弛れ”と俗称される原因に
は、バルブ等の配管系の構成、成長反応炉内の原料ガス
等の熱対流、成長反応炉の管壁への原料ガスの吸着、脱
着等が挙げられている。特に、III 族窒化物半導体層
(例えば窒化ガリウム層)の成膜は、砒化ガリウム(G
aAs)等の他のIII −V族化合物半導体に比較して、
より高い温度である約800℃〜約1200℃で実施さ
れるのが通常である。このため、成長反応炉内で原料ガ
ス等の熱対流がより激しく発生し、滞留した一部のガス
は成長反応炉の管壁に沈積物として残留する。このよう
な沈積物が窒化ガリウム層の安定成長を阻害する原因と
なっていることは既に知られている。III 族窒化物半導
体系からなるヘテロ接合にあって、その接合界面の急峻
性を求める場合もこの沈積物の堆積の抑制が重要な因子
である。
【0067】図3はIII 族窒化物半導体からなる接合界
面の急峻性を達成するための創意を施した成長反応炉の
構成例を示す図である。図において、成長反応炉90は
基板100の表面(被堆積面)に略平行に原料ガス等を
流通させる方式であり、横型形式の反応炉の範疇に属す
るものである。従来の如く原料ガス及び不活性ガス等か
らなるキャリア(輸送)ガスを、基板100の表面に対
し、略垂直及び略水平の2方向から個別に供給する縦
(垂直)方向及び横(水平)方向流通方式ではない。特
徴は、原料ガスを基板100の表面に導入するための第
1流路91及び第2流路92の他に、成長反応炉90の
内壁94、特に基板100が載置されている領域及びそ
の前方の領域に在る内壁94への沈積物の析出を抑制す
るための掃引ガスを流通する専用の掃引ガス流路93を
配備したことにある。すなわち、従来の横型形式の成長
反応炉に観られる様に、窒素(N)等の第V族元素の原
料ガスと、ガリウム(Ga)、アルミニウム(Al)、
インジウム(In)等の第III 族元素の原料ガスを互い
分離、隔離して炉内に導入するための2つの流路91,
92に加え、掃引ガスの内壁94周辺への供給を目的と
した掃引ガス流路93を設けた3流路方式としたことに
ある。原料ガスの流路91,92とは区画された掃引ガ
ス流路93を設けて掃引ガスを導入できる流路構成とす
ると、反応炉内壁94への反応による分解生成物の沈積
を防止する格別の効果が上げられる。これは、ヘテロ接
合界面の急峻性を安定して得るに顕著な効果を奏する。
【0068】掃引ガス流路93は、基板100上方の領
域に在る内壁94を被覆するが如く掃引ガスが選択的に
流れる形状とするのが望ましい。すなわち、基板100
表面を水平の基準として最も遠隔に在る流路を掃引ガス
の流路とするのが好ましい。更には、原料ガスの周囲へ
の拡散を抑制するが如く原料ガスを中央部に囲繞し、基
板100の周囲の領域に在る反応炉内壁94に直接、原
料ガスあるいは原料ガスの分解生成物が接触するのを抑
制できるように、掃引ガスを流通させるのが好ましい。
【0069】掃引ガスを構成するガス種としては、MO
CVD法においてキャリアガスとし一般に使用される水
素ガス(H2)や窒素ガス(N2)の他、アルゴン(A
r)等の不活性ガスを用いる。また、III 族窒化物半導
体の一般的な成膜温度で分解し、その分解により金属性
の分解生成物、例えば、ガリウム、アルミニウムあるい
はインジウムを発生する恐れの無い、例えば、第V族元
素の原料として一般的に使用さているアンモニア(NH
3 )を混合したH2、N2やArの混合ガスも使用でき
る。図3に図示した構成の成長反応炉90にあって、各
流路91,92及び93に流通させるガスの種類、流
量、構成、混合比等の諸条件は、成膜温度、反応圧力等
の基本条件に照合して、また帰結される膜の均一性等に
鑑みて適宜、決定すれば良い。
【0070】発光層2のp形層3側との接合界面5は、
界面の急峻性を確保するために格別に留意する必要があ
るが、発光層2のn形層1側の界面4の急峻性について
はそれ程、精緻に制御する必要はない。発光層2とn形
層1との界面4の急峻性をp形層3側のそれと同一とす
ると、発光層2とn形層1との界面4近傍の発光層2の
内部領域においてバンドの曲折が発生する事態を招く。
バンドがp形層3との界面5と同様にフェルミレベルに
到達する程、曲折するとなるとキャリア(電子)はその
領域に蓄積され、曲在する。発光をもたらす再結合を担
う一方のキャリア(電子)がn形層1との接合界面4近
傍の発光層2の内部に局在していても、他方のキャリ
ア、すなわち、正孔を高密度に内包するp形層3との間
隔(距離)が大きいだけに、正孔の拡散距離の関係から
再結合の効率は低下する。したがって、高強度の発光を
得るに不利となる。高発光強度を得るには、p形層3側
の接合界面5近傍の領域に選択的に且つ限定的に電子の
局在をもたらすバンド構成(電子蓄積領域R)を有する
発光層2である必要がある。
【0071】ちなみに、発光層2との接合界面における
急峻性において、p形層3との接合界面5における急峻
性よりも、n形層1との接合界面4を故意に劣るものと
なすには、いくつかの手段が例示できる。
【0072】一つは、成長環境の構成に関するものであ
る。例えば、上記の如くのヘテロ接合界面の急峻性を確
保するための掃引ガスの流通機構を備えた成長反応炉9
0を利用して接合界面4の成長を行わせる場合にあっ
て、掃引ガスの流量を、沈積物の基板100表面への落
下に因る表面モフォロジの悪化を招かない程度に減ずる
方法がある。他の手法は、n形層1よりインジウム含有
III 族窒化物の発光層2へと成膜を移行する際に、例え
ば、インジウムの原料ガスの成長反応炉への供給量を経
時的に変化させて、発光層2のn形層1との接合界面4
近傍の領域にインジウム組成に勾配を付した組成勾配層
を配置するものである。すなわち、発光層2とn形層1
との界面4近傍の領域に、組成の遷移層(領域)を敷設
する方法である。
【0073】さらに別の手法は、発光層2を重層構成と
成す場合に応用できるものであって、n形層1と接合す
る界面4側に不純物をドーピングした発光層2の一構成
層を配置し、p形層3側にアンドープもしくは低キャリ
ア濃度の発光層2の一構成層を配置する方法である。こ
れにより、不純物が形成する準位等の事由によりn形層
1と発光層2との界面4でバンドの曲折を抑制すること
ができる。次に上記の、発光層2とp形層3との界面5
の発光層2側に低キャリア濃度層を設けた場合につい
て、図4を用いて説明する。
【0074】図4は本発明の第2の実施形態における発
光部積層構造を概念的に示す図である。図において、上
記の第1の実施形態での積層構造と同一の構成要素には
同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0075】この第2の実施形態では、発光部11にお
いて、発光層2の内部の、p形層3側との接合界面5近
傍の領域に、そのキャリア濃度を、n形層1側との接合
界面4でのキャリア濃度よりも小とする低キャリア濃度
層2cを形成し、その低キャリア濃度層2cに電子蓄積
領域Rを設けている。これは、n形層1との接合界面4
よりもp形層3との接合界面5に、より効率良くキャリ
アを蓄積させるためであり、またその蓄積キャリアを散
乱させないためである。さらに、低キャリア濃度層2c
に電子蓄積領域Rを設けることで、周囲のキャリア濃度
の高い発光層領域からの電子を入れやすくするととも
に、電子蓄積領域Rが低不純物濃度で高純度の領域とな
ることで、不純物による電子の走行妨害を発生しにくく
し、電子の2次元的な高速走行をスムーズに行わせるた
めである。
【0076】上記のキャリア濃度構成は、マトリックス
(構成元素)に変化を加えず成膜を継続しながら、不純
物(ドーパント)の有無あるいは添加量の調節により、
簡便に形成され得る。不純物のドーピング方法には、デ
ルタ(δ)ドーピング手法等が利用できる(M.A.H
ermanand H.Sitter、「Molecu
larBeam Epitaxy−2nd.Editi
on」(Springer−Verlag、1996年
発行)、281〜284頁参照)。
【0077】本発明では、上記の低キャリア濃度層2c
におけるキャリア濃度Nを5×1017cm-3以下程度と
する。キャリア濃度Nがこの値を越えると、電子蓄積領
域Rに局在化したキャリア(電子)が散乱される確率が
増す。すなわち、低次元化(2次元化)したキャリアの
高速走行が妨害される恐れがある。
【0078】低キャリア濃度層2cの幅(層厚)は20
nm以下とするのが望ましい。過度に厚くすると、低キ
ャリア濃度であるが故に通流抵抗が増し、順方向電流を
徒に増加させるだけである。逆に、極端に薄い約1nm
以下となると、電子が散乱等の悪影響を被らずに局在で
きる領域が狭まり、都合が悪い。望ましい低キャリア濃
度層の幅は少なくとも約2nm以上である。したがっ
て、低キャリア濃度層2cの層厚は2nm以上20nm
以下である。
【0079】低キャリア濃度層2cの層厚を2nm以上
20nm以下としたことで、電子蓄積領域Rに蓄積され
た電子は、活動領域を2次元的な「面内」に制約され、
3次元的な振る舞いを規制されて無駄なエネルギ消費が
無くなるので、その「面内」を活発に動くことができ、
したがって、正孔との再結合を活発化することができ、
発光特性を改善させることができる。
【0080】発光層2は約1nm以上で300nm以下
の層厚であるのが好まれる。発光層2は、矩形ポテンシ
ャルを用いて発光層との接合界面に電子を略一様に分布
させるものではなく、したがって、発光層2の層厚を数
nm程度の極薄膜層に制限する必要はなく、発光層2の
合計層厚を、例えば数十nmから数百nmと比較的厚い
層としてもよい。したがって、本発明では、構成上の好
ましい配置はあるものの、例えば、不純物をドーピング
したIII 族窒化物半導体層と、アンドープ状態のインジ
ウム含有III 族窒化物半導体層とを重層させた合計層厚
を数十nmから数百nmと比較的厚い層も発光層2とし
て使用できる。好ましい重層の発光層2の構成例を挙げ
れば、発光層2を2層構造としたものとしては、n形層
/高キャリア濃度の不純物をドーピングしたn形発光層
の一構成層/アンドープで低キャリア濃度のn形発光層
の一構成層/p形層、からなる積層構造がある。また、
発光層2を3層構造としたものとしては、n形層/アン
ドープで低キャリア濃度のn形発光層の一構成層/10
18cm-3を越える高キャリア濃度の不純物をドーピング
した低キャリア濃度のn形発光層の一構成層/アンドー
プで低キャリア濃度のn形発光層の一構成層/p形層か
らなる重層構成がある。本発明に係わるIII族窒化物半
導体発光素子の実現にあっては、発光層2の層厚より
も、発光層2のp形層3との接合界面5に選択的にキャ
リア(特に、電子)を局在させる非対称型ポテンシャル
井戸構造の創出が重要である。
【0081】本発明では、特に、発光層2を従来のイン
ジウム組成を均一とする単一相構造ではなく、インジウ
ム濃度を異にする複数の相から構成される多相構造のイ
ンジウム含有III 族窒化物半導体から構成する。これ
は、インジウム組成を均一とする単一相構造の発光層に
比べ、インジウム濃度を異にする多相構造の発光層の方
が、強度の高い光を放射するからである。
【0082】窒化ガリウム・インジウム混晶を例にすれ
ば、窒化ガリウム、あるいはインジウム濃度を比較的希
薄とする窒化ガリウム・インジウム混晶からなる母相
と、母相の構成物質よりもインジウム濃度を大とする窒
化ガリウム・インジウム混晶からなるドット状の微結晶
体である従属相とからなる多相構造が挙げられる。
【0083】多相構造には、発光層2の内部に従属相が
空間的に略均一の密度で存在する場合と、発光層2と他
層1,3との接合界面、もしくはその近傍の領域に集中
して従属相が存在する場合がある。例えば、インジウム
含有III 族窒化物半導体の発光層2とクラッド層等のn
形層1と接合界面4に、当該界面4の特定の領域に凝縮
したインジウムを核として発達したと見受けられる島状
あるいは球状のインジウム含有従属相が集中して存在す
る場合がある。本発明では、従属相の発光層2内での分
布状況に拘らず、何れも多相構造とみなす。
【0084】窒化ガリウム・インジウム等の熱力学的あ
るいは結晶学的性質によって、母相と従属相とに多相に
分離する窒化物材料から発光層2を構成する場合、発光
層2と接合させるn形層1は母相と同一の材料あるいは
同一の組成を有する材料から構成するのが最も好まし
い。例えば、窒化ガリウム(GaN)を主体とする母相
と、母相よりもインジウム濃度(組成比)を大とする窒
化ガリウム・インジウムを主体とする従属相とを内部組
織とする窒化ガリウム・インジウムからなる発光層2に
あって、この発光層2に接合させるn形層1は、窒化ガ
リウムから構成するのが最も好ましい。また、インジウ
ム組成比を例えば、0.06(6%)とする窒化ガリウ
ム・インジウム(Ga0.94Ga0.06N)からなる母相
と、インジウム組成比を例えば、0.10(10%)と
する窒化ガリウム・インジウム(Ga0.90In0.10N)
からなる従属相とから構成される窒化ガリウム・インジ
ウム発光層2に接合させるn形層1は、母相に合わせて
インジウム組成比を0.06とする窒化ガリウム・イン
ジウムから構成するのが最も好ましい。発光層2に接合
させるn形層1を、バンドオフセットを生じない半導体
材料から構成することをもって、発光層2とn形層1と
の接合界面4でのバンドの曲がりや、バンドオフセット
の発生を抑制し、それによって発光層2とn形層1との
接合界面4近傍の発光層2内部の領域にキャリア、特に
電子を蓄積させないためである。
【0085】図5は本発明の第3の実施形態における発
光部積層構造を概念的に示す図である。図において、上
記の第1、第2の実施形態での積層構造と同一の構成要
素には同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0086】この第3の実施形態では、発光部12にお
いて、発光層2とp形層3との間に、散乱防止層(薄
層)6を設けてある。この散乱防止層6は、電子蓄積領
域Rに蓄積されたキャリアの散乱を抑制し、効率よく蓄
積させるためのものである。散乱防止層6の層厚は大
凡、1nm以上で60nm以下の範囲とするのが望まし
く、好ましくは3nm以上で30nm以下の範囲であ
る。トンネル効果が発現される程度の層厚であれば高抵
抗あるいは絶縁形の層であっても散乱防止層として利用
可能である。
【0087】散乱防止層6に要求される従来のスペーサ
層S2とは異なる要件は、光学的に透明で、特に紫外、
近紫外及び短波長可視領域の波長光に対して透明な材料
であることである。発光層2から放射される発光を散乱
防止層6を通過させてp形層3側から取得する発光取り
出し型のLEDにあっては、散乱防止層6は光学的に透
明な材料から構成するのが、発光の取り出し効率の損失
を防止するために重要となる。
【0088】散乱防止層6は、例えばAlxGayInz
a1-a (0≦x,y,z≦1、0≦a≦1、記号V
は窒素以外の第V族元素を示す。)から構成できる。発
光層2をインジウム含有III 族窒化物半導体である窒化
ガリウム・インジウムから構成する場合にあって、散乱
防止層6として最も好ましく用いられるのは、窒化ガリ
ウム・インジウムよりも電子親和力を小とし、且つ禁止
帯幅を大とし、尚且つ、紫外から短波長可視領域におい
て光学的に透明である窒化アルミニウム・ガリウム混晶
(AlxGa1-xN:0≦x≦1)である。
【0089】このように、電子との親和力が小さく、且
つ禁止帯幅が大きい窒化アルミニウム・ガリウム混晶か
ら成る散乱防止層6を電子蓄積領域Rに隣接して設ける
ことで、発光層2のp形層3側との伝導帯のオフセット
OF1は大きくなり、図2でのバンド20の最高点20
aがより高くなって電子蓄積領域Rにおける電子の溜め
込み層をより深くすることができる。したがって、電子
蓄積領域Rに蓄積された電子の散乱を抑制でき、発光特
性を良好なものに保つことができる。また、窒化アルミ
ニウム・ガリウム混晶は紫外から短波長可視領域におい
て、光学的に透明であるため、この混晶から成る散乱防
止層6を設けても発光層2から放射される発光は遮られ
たりしない。
【0090】以下に、本発明に係わるキャリア(電子)
の局在をもたらす電子蓄積領域Rを備えた発光層2を含
むIII 族窒化物半導体発光素子を例示する。下記例にお
いて記号/は接合を表す。上記の散乱防止層6を配置す
る場合にあっては、下記の(1)〜(5)に例示する発
光部の構成において、発光層とp形層との間に配置すれ
ばよい。
【0091】(1)AlxGayInza1-a(但し、
0≦x,y,z≦1、0≦a<1であって、記号Vは窒
素以外の第V族元素を表す。)から成るn形層/窒化ガ
リウム・インジウムから成るアンドープもしくは不純物
をドーピングしたn形発光層/AlxGayInza
1-a (0≦x,y,z≦1、0≦a<1)から成るp形
不純物がドーピングされたp形層、からなるpn接合を
含むヘテロ接合構造の発光部を備えたIII 族窒化物半導
体発光素子。
【0092】(2)GaNから成るn形層/窒化ガリウ
ム・インジウムから成るアンドープn形発光層/Alx
Ga1-xN(0≦x≦1)から成るp形層、からなるp
n接合を含むヘテロ接合構造の発光部を備えたIII 族窒
化物半導体発光素子。
【0093】(3)GaNから成るn形層/窒化ガリウ
ム・インジウムから成り、n形層の構成物質を母相とす
るn形発光層/発光層との伝導帯のオフセットを約0.
3eV以上としAlxGa1-xN(0≦x≦1)から成る
p形層、からなるpn接合を含むヘテロ接合構造の発光
部を備えたIII 族窒化物半導体発光素子。
【0094】(4)発光層の母層と同一組成のGax
1-xN(0≦x≦1)から成るn形層/GaxIn1-x
Nから成る母相と、母相とはインジウム濃度(組成)を
異にするGaYIn1-YN(0≦y≦1)から成る従属相
とから成り、n形層とのバンドオフセットを電子の蓄積
には不充分とするn形発光層/発光層との伝導帯のバン
ドオフセットを約0.3eV前後とするp形層、とから
構成される発光部を備えたIII 族窒化物半導体発光素
子。
【0095】(5)AlxGayInza1-a(0≦
x,y,z≦1、0≦a<1)から成るn形層/窒化ガ
リウム・インジウムから成る、不純物をドーピングした
n形発光層の一構成層/窒化ガリウム・インジウムから
成るアンドープで低キャリア濃度のn形発光層の一構成
層/AlxGayInza1-a (0≦x,y,z≦1、
0≦a<1)から成るp形層、とから構成される発光部
を備えたIII 族窒化物半導体発光素子。
【0096】本発明の如く、従来にない新規な構成をも
ってキャリアを特定の領域に局在させ蓄積できる活性層
を発光層として利用する発光素子、特にLEDには次の
ような利点がもたらされる。 (1)発光強度の向上 (2)発光スペクトルの単色性の向上 (3)消光特性に見られるような素子の高速応答性
【0097】また、上記(1)(2)(3)の利点に加
えて、本発明の発光層は、従来の矩形ポテンシャル井戸
を内包する従来の量子井戸構造からなるIII 族窒化物半
導体発光素子とは発光波長の安定性に特別の差異が認め
られる。本発明の発光層にあっては、発光層との接合に
より伝導帯端の曲折による接合端面の界面物性に基づき
発光を獲得するが故に、或る程度の幅(=井戸幅)を持
つ矩形ポテンシャル井戸の量子井戸構造の発光素子の場
合程に、発光層の層厚の変化に対して発光波長が変動す
ることはない。
【0098】更に、本発明の発光層2がもたらす特質的
な波及効果がもたらされる。それは、発光層2に接合さ
せるp形層3の構成材料に依って、発光層2から放射さ
れる発光の波長に変化を与えられることである。すなわ
ち、発光層2の層厚並びに発光層2を構成する半導体材
料の組成を変化させずとも発光波長は変化させられる。
また逆に、発光層2と接合するp形層3を変化させずと
も、発光層2の層厚を変化させるだけで発光波長を変え
ることができる。
【0099】本発明の発光層2にあっては、発光層2の
層厚の減少に反比例して発光波長は長波長化する。この
発光波長の長波長化現象は、従来のクローニッヒ・ペニ
ーモデルで表示される矩形のポテンシャル井戸(上記の
「セミコンダクターの物理学(上)」((株)吉岡書
店、物理学叢暑60、第4版)、12〜13頁参照)か
らなるタイプI型の従来の量子井戸構造(図14)を備
えた発光素子では発現されない物理的挙動である。井戸
層あるいは障壁層に見合う薄膜層を単純に積層したのみ
ではなく、真にポテンシャル井戸が形成され量子準位が
実在したとしても、従来のバンド構造のポテンシャル井
戸を有する量子井戸構造の発光層(井戸層)から放射さ
れる発光の波長は、式(3)に示されるように井戸層の
層厚(井戸幅:Lz)の減少に伴い量子準位(En)が高
くなり、式(1)に従い発光波長は短波長となるからで
ある。すなわち、本発明の発光層2は、発光波長とポテ
ンシャル井戸幅の関係について、従来の量子井戸構造と
は全く逆の事象をもたらすものである。
【0100】発光層2を全く同一の物質から同一の層厚
をもって構成する場合にあっても、発光層2に接合させ
るp形層3として発光層2との弾性率の差異をより大と
する層を配置し、発光層2へ歪をより多く導入する措置
によって発光波長の長波長化、例えば、青色より青緑色
への波長シフト(shift)が観測されることを勘案
すると、本発明の発光層2では発光層2とp形層3との
接合界面5近傍の領域における導入された歪に因る発光
層2のバンドの曲率、換言すれば、伝導帯の”落ち込
み”の度合いが、発光波長に変化を与えている要因であ
ると考慮される。実際、インジウム組成比を大凡、0.
15(15%)程度とする窒化ガリウム・インジウム
(Ga0.85In0.15N)から発光層2を、この発光層2
に接合するp形層3を、アルミニウム組成比を(x)と
する窒化アルミニウム・ガリウム混晶(AlxGa
1-xN:0≦x≦1)からそれぞれ構成した場合、発光
層2の層厚を減少させ、且つp形層3のアルミニウム組
成比を増大させると、発光波長は青色帯から緑色帯へと
シフトする。発光層2の層厚を減少させ、且つp形層3
のアルミニウム組成比を増大させる措置は、発光層2に
内在する歪をより増量させる方向である。したがって、
この現象は発光層2内部の歪の増量に因ってより曲率を
増して”落ち込み”、結果として伝導帯(量子化された
電子の準位)と価電子帯(正孔準位)とのエネルギ差が
縮小されることに因ると解釈される。伝導帯のバンドが
曲率を増して価電子帯側に曲折すれば、両バンド間のエ
ネルギ差は当然、縮小されると共に、再結合するキャリ
アの準位間の差異も小となるため、式(1)に従い発光
波長は長波長化する。曲折した伝導帯と価電子帯とのエ
ネレギレベルの差異の指標となる再結合するキャリアの
準位間の差は、例えば、発光層2にレーザ光等の励起光
を照射した際に取得されるPLスペクトルのピーク(p
eak)波長を上記の式(1)に代入して算出されるΔ
Eをもって知れる。
【0101】
【実施例】(実施例1) 本発明を、窒化ガリウムからなるn形層と、アンドープ
窒化ガリウム・インジウムからなるn形発光層と、窒化
アルミニウム・ガリウム混晶からなるp形層とを備えた
pn接合を含むヘテロ接合構造から成る発光ダイオード
(LED)に適用した場合について説明する。LED用
途の積層構造体を構成する各積層体構成層は一般的な常
圧(大気圧)方式のMOCVD成長装置を利用して、基
板上に次の手順により順次形成した。
【0102】図6は本発明に係るLED用途の積層構造
体を示す図である。図において、LEDとして用いられ
る積層構造体10aは、基板100上に積層して構成さ
れている。基板100として直径約1インチ(直径約2
5mm)、厚さを約90μmとする両面(表裏面)を機
械的化学的研磨法により鏡面に研磨した(0001)
(c面)−サファイア(α−Al23単結晶)を使用し
た。基板100上への積層構造体10aの各構成層の堆
積には、上記したMOCVD成長反応炉90(図3)を
利用した。この結晶基板100を反応炉90内の高純度
グラファイト製サセプタ99上に略水平に載置した。
【0103】この反応炉90の具体的な構成例は次の通
りである。反応炉90は、アルカリ金属類の含有量が低
い半導体工業用高純度石英から構成した。反応炉90の
鉛直断面の形状は長方形であって、その中央部の断面積
は約20cm2 である。この反応炉90の特徴は、上記
したように、元素周期律表の第III 族元素と第V族元素
の原料ガス(正確には、原料を随伴するガス)を分別し
て反応炉内に導入するための互いに隔離された第1、第
2流路91,92に加え、反応炉90の内壁94への、
原料ガスの分解により生成した分解物の付着を防止する
ための掃引ガスを流通する専用の掃引ガス流路93を設
けてあることにある。したがって、炉内に合計して3つ
の流路91,92,93を備えたものとなっている。
【0104】基板100をサセプタ99上に載置した
後、反応炉90内を通常の油回転式真空ポンプを具備し
た真空排気経路(図示省略)を介して真空に排気した。
約10-3トール(Torr)の真空度に到達してから約
10分間保持した後に、3流路併せて合計約3リットル
/分の流量の精製アルゴンガス(Ar)を反応炉90内
に流通させて炉内の圧力をほぼ大気圧に復帰させた。
【0105】約5分間に亘り反応炉90内を精製された
高純度のアルゴンガスで掃気した後、アルゴンガスの反
応炉90への供給を停止した。代わりに露点を約マイナ
ス(−)90℃とする精製水素ガス(H2 )を反応炉9
0内へ供給した。水素ガスの流量は各流路91,92,
93につき均等に3リットル/分に電子式質量制御計
(マスフローコントロラー(MFC))で維持した。す
なわち、各流路91,92,93には、予め3リットル
/分の水素ガスが流通する状態としておいた。
【0106】然る後、反応炉90の外周に設けた円状に
巻いた高周波加熱コイルに高周波電源を投入した。これ
により、基板100の温度を室温(約25℃)から45
0℃に上昇させた。基板100の温度は上記のサセプタ
99の中腹に開けた直径約5mmの貫通孔に挿入したモ
リブデン(Mo)シース型の白金(Pt)−白金・ロジ
ウム(Pt・Rh)合金熱電対(日本工業規格JIS−
R規格に準拠した熱電対)により測温した。基板100
の温度は、熱電対から発生される熱起電力信号を入力す
るPID方式の市販の温度制御器により、±1℃以内に
精密に制御した。基板100の温度が450℃に到達し
てから約20分経過し、温度の変動が450℃±1℃に
確実に制御されるようになった時点で、窒素源とした液
化アンモニアガスの気化により発生したアンモニアガス
(NH3 )を毎分1リットルの割合で反応炉90への供
給し始めた。アンモニアは3重に重ねられた上記の3流
路の内、第V族元素の原料ガスであるアンモニアの流通
用途としての中央の第2流路92を介して反応炉90内
に供給した。すなわち、中央の第2流路92には上記の
予め流通させておいた3リットル/分の水素と共に毎分
1リットルのアンモニアガスが流れる状態となった。
【0107】アンモニアガスの供給と同時に反応炉90
へアルミニウム(Al)源としてのトリメチルアルミニ
ウム((CH33Al)を3流路の中で最下段の第1流
路91から供給した。トリメチルアルミニウムを収納し
た316ステンレス鋼製バブラー容器はペルチェ効果を
利用した電子式恒温槽で20℃に保持した。この容器内
のトリメチルアルミニウムを毎分20ccの流量の水素
ガスでバブリングし、トリメチルアルミニウムの蒸気を
随伴する水素バブリングガスを、最下段の第1流路91
に流れる毎分3リットルの水素ガスと共に反応炉90へ
供給した。各々個別の第1、第2流路91,92を介し
ての、トリメチルアルミニウムを随伴する水素ガスと、
アンモニアガスとの反応炉90への供給を正確に6分間
継続した。これより、層厚を20nmとする窒化アルミ
ニウム(AlN)から成る緩衝層100aを形成した。
緩衝層100aの成長は、反応炉90へのトリメチルア
ルミニウムの蒸気を随伴する水素ガスの供給の停止をも
って終了した。
【0108】然る後、各流路91,92,93を介して
の反応炉90への水素ガスの供給を停止し、代わりに各
流路につき流量を2リットル/分とする合計6リットル
/分の流量のアルゴンガスの供給を開始した。高周波加
熱コイルに印加する電力量を増し、基板100の温度を
450℃から1050℃に平均して約100℃/分の速
度で昇温した。途中、基板100の温度が約500℃を
通過した時点で流量を1リットル/分とするアンモニア
ガスの供給を、上記の中央の第2流路92を介して開始
した。熱電対で測温される基板100の温度が1050
℃となった時点で、アンモニアの反応炉90への供給量
を毎分1リットルから毎分3.5リットルへと電子式質
量流量計をもって増加させた。同時に最上段の掃引ガス
流路93のみから毎分2リットルのアルゴンが供給され
る状態としたままで、最下段及び中央の第1、第2流路
91,92からのアルゴンガスの供給を停止した。最下
段及び中央の第1、第2流路91,92からは、アルゴ
ンの供給を停止すると同時に、中央の流路92からは1
リットル/分の水素ガスを、最下段の第1流路91から
は毎分2リットルの水素ガスを流通させた。これによ
り、高純度石英管から構成される反応炉90へは合計し
て8.5リットル/分の水素、アルゴン及びアンモニア
が流通する状況となった。
【0109】基板100の温度が1050℃に到達して
5分間待機した後、緩衝層100a上にn形層101と
して珪素(Si)をドーピングしたn形窒化ガリウム層
を成長させた。n形窒化ガリウム層の成長時には、0℃
に保持し液化したトリメチルガリウムに毎分30ccの
流量の水素ガスでバブリング操作を施し、トリメチルガ
リウムを随伴した水素バブリングガスを反応炉90内に
供給した。珪素は高純度の水素で体積濃度にして約1p
pmに希釈されたジシラン(Si26)をドーピング源
として添加した。ジシランドーピングガスの流量は電子
式質量流量計により毎分20ccに設定し、中央の第2
流路92からアンモニアガスと共に流通させた。ガリウ
ム源を随伴する水素バブリングガス、及び珪素ドーピン
グ源ガスの反応炉90への供給を正確に60分間に亘り
継続して、層厚を3μmとするSiドープn形窒化ガリ
ウム層からなるn形層101を得た。キャリア濃度は約
1×1018cm-3であった。
【0110】下部クラッド層を兼用するn形層101の
成長を終えた後、基板100の温度を1050℃から8
90℃に平均して50℃/分の速度で降温した。基板1
00の温度が890℃に安定する迄3分間待機した。然
る後、各流路91,92,93に流通するガスを全て流
量を毎分2リットルとするアルゴンに変換した。中央の
第2流路92には毎分3.0リットルの流量のアンモニ
アガスを加えて流通させた。その後、最下段の第III 族
元素原料用の第1流路91からアルゴンと共に反応炉9
0内へのガリウム源及びインジウム源の供給を開始し
た。ガリウム(Ga)源には上記のトリメチルガリウム
を使用した。ガリウム源のバブラ容器の温度は0℃とし
た。インジウムの供給源にはトリメチルインジウム
((CH33In)を使用した。トリメチルインジウム
は内容積を約100ccとするステンレス鋼製のシリン
ダ容器内に収納し、シリンダ容器は電子式恒温槽を利用
して正確に35℃に保持した。成長初期におけるトリメ
チルガリウムの蒸気を随伴するためのバブリング用水素
ガスの流量は、電子式質量流量計により毎分5ccに制
御した。
【0111】また、インジウム源を収納するシリンダ容
器内には、昇華したトリメチルインジウムの蒸気を反応
炉90内に随伴するための水素ガスを流通させたが、当
初はその流量を0、すなわち、成長開始時には窒化ガリ
ウムが成長する状況とした。ガリウムの原料ガスの供給
を開始してから正確に3分間が経過する間に、インジウ
ム原料の蒸気を随伴する水素ガスの流量を0ccから毎
分31.3ccへ単調に直線的に増加させた。この間、
一方のガリウム源をバブリングし、随伴する水素ガスの
流量は一定に維持して、インジウム組成比をn形層10
1との接合界面で0(すなわち、窒化ガリウム)とし、
それより層厚が1.5nmと成る間に約0.15に単調
に増加させて、インジウムに関して組成勾配を有する窒
化ガリウム・インジウム層102aを得た。
【0112】その後は12分間に亘り、双方の第III 族
元素の原料を随伴する水素ガスの流量を変更せずに一定
を保ってインジウム組成比を約0.15と一定とする窒
化ガリウム・インジウム層102bを成膜した。これよ
り、合計の層厚を7.5nmとする発光層102を、水
素を含まない成長環境下で成膜した。すなわち、発光層
102をインジウム組成の勾配を有する層102aと、
インジウム組成を一定とする層102bの双方のアンド
ープ窒化ガリウム・インジウム層から構成した。
【0113】発光層102のシートキャリア濃度(キャ
リア面密度)、特に発光層102の、後述のp形層10
3側との接合界面105近傍のシートキャリア濃度を測
定するための試料として、別途、同一条件で成長した発
光層上にキャリア濃度を5×1016cm-3未満とするア
ンドープのn形窒化アルミニウム・ガリウム混晶(Al
0.1Ga0.9N)層を積層した構造体を形成した。n形窒
化アルミニウム・ガリウム混晶層の層厚は零バイアスで
発光層へ空乏層が延びるように10nmとした。アルミ
ニウムを電極とするファン・デァ・ポウ(van de
r Pauw)法(K.ジーガー著、「セミコンダクタ
ーの物理学(上)(第4版)」((株)吉岡書店 物理
学叢書60(1991年6月10日第1刷発行)、77
頁参照)を利用した通常のホール(Hall)効果測定
によるシートキャリア濃度は3×1012cm-2であっ
た。ドナー濃度は約4×1018cm-3であった。
【0114】上記のガリウム源及びインジウム源の反応
炉90への供給を中断して発光層102の形成を終えた
後は、反応炉90内へのアルゴン及びアンモニアガスの
供給を継続したままで、熱電対からの熱起電力信号を基
に、高周波加熱コイルに印荷する高周波電源からの電力
量を自動的に調節して、基板100の温度を890℃か
ら1050℃に昇温した。昇温過程での不用意に緩やか
な昇温に因るインジウムを含有する発光層102の揮散
を抑制する目的で、890℃から1050℃へは1.5
分間で昇温した。
【0115】デッドスペース(dead space:
淀み空間)が小さく、高速応答性の良好なバルブの動作
を信頼して、発光層102の成長後に直ちにp形層10
3の成長に移行する成長手段も有り得る。しかし、本実
施例では、昇温中に掃引ガスを流通した効果によりMO
CVD反応炉90の内壁94には茶褐色の薄い膜が付着
しているのみで、ガリウム等の金属の液滴等が視覚上存
在しないのを確認した上で、掃気ガスとしてのアルゴン
の流量を毎分2リットルから5リットルに増加させた。
このアルゴン流量の増加により、反応炉90内に滞留あ
るいは残存する未分解の原料ガス等を炉外へ排出し、次
層(p形層)103との接合界面の急峻化を図った。
【0116】基板100の温度が1050℃に到達した
後、各流路91,92,93に流すアルゴン、アンモニ
ア及び水素の流量を、n形層101の形成の場合と同一
とした。最下段の第1流路91には、ガリウム源を含む
随伴ガスに加え、アルミニウム源の蒸気を随伴する水素
ガスを添加した。また、マグネシウム源を含む水素ガス
も添加した。ガリウム源にはトリメチルガリウムを使用
した。トリメチルガリウムを収容する316ステンレス
鋼製バブラ容器は電子式恒温槽により正確に0℃に保持
した。バブリング用且つトリメチルガリウムの蒸気の随
伴用の水素ガスの流量は毎分30ccとした。アルミニ
ウム源は緩衝層100aの成膜時に使用したトリメチル
アルミニウムとした。アルミニウム源の供給量はアルミ
ニウム組成比を0.1とする窒化アルミニウム・ガリウ
ム混晶が得られるように設定した。マグネシウムのドー
ピング源にはビス−メチルシクロペンタジエニルマグネ
シウム(bis−(CH3542Mg)を使用した。
マグネシウムドーピング源を収容するステンレス鋼製の
シリンダ容器は電子式恒温槽により45℃の恒温に保持
した。液化させたビス−メチルシクロペンタジエニルマ
グネシウム内には、バブリング用ガスとして、電子式質
量流量計により流量を毎分20ccに精密に調整して制
御された水素ガスを流通させた。ガリウム源、及びマグ
ネシウム源の蒸気を随伴する水素ガスの反応炉90への
供給を5分間に亘り継続して、層厚を0.2μmとする
マグネシウムをドーピングした窒化アルミニウム・ガリ
ウム混晶(Al0.1Ga0.9N)混晶層から成るp形層1
03を成膜した。アルミニウム源の蒸気を随伴する水素
ガスの供給を遮断して、p形層103の成膜を終了し
た。
【0117】このようにして、珪素をドーピングした窒
化ガリウム(GaN)から成るn形層101と、n形層
101との接合界面の近傍の内部領域にキャリアの蓄積
を抑制するためにインジウムの組成遷移領域を含む窒化
ガリウム・インジウム(Ga0.85In0.15N)から成る
発光層102と、マグネシウムをドーピングしたし窒化
アルミニウム・ガリウム混晶(Al0.1Ga0.9N)から
成るp形層103とを備えたヘテロ接合構造を構成し
た。
【0118】引き続き、基板100の温度を1050℃
に維持し、アンモニア、ガリウム源及びマグネシウム源
の供給流量を不変としたままで、窒化アルミニウム・ガ
リウム混晶から成るp形層103上に、マグネシウムと
亜鉛をドープしたp形窒化ガリウムから成る最表層11
0を堆積した。最表層110の成長時には、ジエチル亜
鉛((C252 Zn)を含むガスを、亜鉛(元素記
号:Zn)のドーピング源として添加した。亜鉛のドー
ピング源には、体積濃度にして100ppmのジエチル
亜鉛を含む高純度水素ガスを使用した。原料ガス及びド
ーピングガスの供給を3分間に亘り継続して、層厚を
0.1μmとするマグネシウム及び亜鉛をドーピングし
た窒化ガリウムから成る最表層110となした。窒化ガ
リウムから成る最表層110の成膜は、ガリウム源の反
応炉90内への流通を停止することをもって終了した。
【0119】同時にマグネシウム及び亜鉛のドーピング
ガス及び水素ガスの反応炉90内への供給も停止した。
一方、アンモニアガスの流量は毎分3.5リットルに維
持した。高周波加熱コイルに印加する高周波電力量を低
減して、基板100の温度を1050℃から約2分間で
950℃に低下させた。950℃から650℃へは毎分
15℃の速度で20分間を要して降温した。650℃に
降温した時点でアンモニアガスの反応炉90内への供給
を遮断し、反応炉90に流通するガスをアルゴンのみと
した。かかる状態で室温に至る迄冷却した。
【0120】以上の成長操作をもって、n形層101
と、n形の発光層102と、p形層103とから成るヘ
テロ接合構造に、マグネシウムと亜鉛とを共にドーピン
グした窒化ガリウムから成るp形の最表層110を積層
することで、積層構造体10aの形成を終了した。
【0121】積層構造体10aから短冊状の切片を採
り、断面TEM技法により発光部の接合構成を調査し
た。断面TEM観察に当たり切片をアルゴンを使用する
スパッタリングで薄層とした。
【0122】図7は発光部の接合構成の断面TEM像を
模式的に示す図である。この断面TEM像は、加速電圧
を200キロボルト(KV)として撮像したものであ
る。発光層102には、インジウムの凝集に起因して発
達したと推定されるインジウムを含有する結晶体201
が、窒化ガリウムから成るn形層101との接合界面1
04上に散在しているのが認められた。また、この接合
界面104上の結晶体201、及び接合界面104より
内側の発光層102内の結晶体202の周囲の母相20
0は、結晶体201,202よりインジウムの濃度が低
かった。これより、発光層102はインジウム濃度を異
にする母相200と従属相(結晶体)201,202と
から成る多相構造であると判断された。n形層101に
接合する発光層102の接合界面104領域は、窒化ガ
リウムが成長していることが確認された。すなわち、発
光層102はn形層101とバンドの不連続性をもたら
さない窒化ガリウム相互の接合から成るホモ接合をして
いるものと考えられた。一方のp形層103側との接合
界面105には、明瞭に視認される程の大きさの結晶体
は確認され難く、母相200が支配的に存在した。これ
より、接合界面の急峻性を求めた、発光層102のp形
層103側との接合界面105近傍の領域はインジウム
濃度がほぼ均一で、発光層102とp形層103との間
に均一なオフセットを発生するに都合の良い均質領域が
形成されているのが確認された。
【0123】また、積層構造体10aから一片(約5m
m×約5mm×t(厚さ))を切り出し、構成元素の深
さ方向の分析用試料に供した。積層構造体10aの最表
層110より深さ方向のマトリックス元素の濃度分布
(デプスプロファイル)は市販のSIMS分析装置
((仏)CAMECA社製IMS−6F型2次イオン質
量分析装置)で定量した。インジウム及びアルミニウム
の濃度分析については、共にセシウム(Cs)イオンビ
ームを一次イオンビームとして用いた。ビーム加速電圧
は5.5KVとした。このSIMS分析装置を用いて測
定した、発光層102とp形層103との接合界面10
5におけるインジウムとアルミニウムとの濃度分布は、
次のようであった。
【0124】図8は発光層とp形層との接合界面におけ
るインジウムとアルミニウムとの濃度分布を示す図であ
る。横軸は接合界面105からの距離、縦軸は原子濃度
をそれぞれ示している。インジウム原子の濃度分布曲線
C1が示す通り、インジウム原子の濃度が発光層102
の内部で略一定となった濃度Roから、2桁低い濃度で
ある6.6×1019原子/cm3 と成るに要する接合界
面105からp形層103内への距離、すなわち遷移距
離D1は約18nmであると認められた。一方、アルミ
ニウム原子の濃度分布曲線C2から、その濃度を2桁減
ずるに要する接合界面105から発光層102側へのア
ルミニウム原子に関する遷移距離D2は約15nmと測
定された。このように、p形層3と発光層2との接合界
面105におけるインジウム原子の濃度分布曲線C1
と、アルミニウム原子の濃度分布曲線C2とは、接合界
面105を越えるといずれも急激に落ち込んでおり、物
質的に観て明瞭な境界となって、界面の急峻性を満たし
ている。
【0125】上記の積層構造体10aを母体材料として
LEDを作製した。図9はLEDの断面構造を模式的に
示す図で図10のA−A断面であり、図10はLEDの
平面模式図である。図9、図10に示すLED40を構
成するために、先ず図6の積層構造体10aにおいて、
n形電極(負電極)41を形成する予定領域のn形層1
01上に在る発光層102、p形層103及び最表層1
10を、アルゴン−メタン(CH4 )−水素混合ガスを
使用するマイクロ波プラズマエッチング技術によりエッ
チングして除去した。このエッチングはn形層101の
表層部を約150nm除去するに至る迄継続した。然る
後、エッチングにより露呈したn形層101の表面にパ
ッド電極(負電極)41を形成した。パッド電極41は
アルミニウム(Al)単体から構成した。
【0126】一方、最表層110上には、全体の膜厚を
約20nmとする2層から成る透過性(透光性)電極4
3を被着し、その透過性電極43の表層を形成する金属
酸化物膜のみを選択的除去して、残存させた下層の金
(Au)薄膜電極上に、金・ベリリウム(Au・Be)
合金と金(Au)との重層から成るパッド電極(正電
極)42を形成した。透過性電極43は上記のエッチン
グにより、メサ型に残存させた最表層110のほぼ全域
に形成した。透過性電極43の表面上に直接パッド電極
を形成する方法もあるが、本実施例では透過性電極43
の表層をを選択的除去して、パッド電極42を形成し
た。
【0127】このようにして形成したLED40におい
て、隣接する電極41及び42間に直流電圧を印加し
た。1ボルト(V)未満の直流電圧、例えば0.4Vの
印加により既に青色の発光が得られた。印荷する電圧値
の増大と共に青色発光の強度は増加した。積分球を利用
した測定では順方向電流を20ミリアンペア(mA)通
流した際の発光出力は16.2マイクロワット(μW)
となった。ちなみに、層厚を本実施例と同一の7.5n
mとする窒化ガリウム・インジウム(Ga0.85In0.15
N)を井戸層とする従来の矩形ポテンシャル井戸構造の
発光部を備えたLEDの発光出力は、11.2μWと本
実施例のそれの70%弱であった。通常のフォトルミネ
ッセンス測光装置に付属する分光器を利用した発光スペ
クトルの測定では、主たる発光スペクトルの発光波長が
452nmであるのが知れた。LEDロット間の発光波
長の変動は±5nm程度であった。一方、上記の従来の
ポテンシャル構造を有するLEDの中心発光波長の分散
は±15nmに及ぶ均一性に欠けるものとなった。
【0128】(実施例2) 次に、積層構造体の第2の例を、図11を用いて説明す
る。図11はLED用途の積層構造体の第2の例を示す
図である。図において、LEDとして用いられる積層構
造体10bは、実施例1と同一の手法及び成長条件で、
(0001)(c面)−サファイア基板100上に成長
させて成るものである。図において、上記実施例1の積
層構造体10aと同一の構成要素には同一の符号を付し
て、その説明を省略する。
【0129】この実施例では、実施例1に記載したn形
の発光層102のうち、上層のインジウム組成を一定と
するアンドープ窒化ガリウム・インジウム層102b
に、キャリア濃度を3×1017cm-3とし、層厚7nm
とする低キャリア濃度のアンドープ窒化ガリウム・イン
ジウム(Ga0.12In0.88N)から成る低キャリア層1
02cを重層させて全体として発光層102Mとなして
いる。この低キャリア層102cは、実施例1の発光層
102の場合と同一の温度(890℃)で成膜した。実
施例1に記す発光層102の成長に加え、上記のアンド
ープ窒化ガリウム・インジウムから成る発光層(低キャ
リア層)102cの成長を実施してもなお、反応炉90
の基板100が載置された近辺の領域には、明瞭に視認
される程の量のガリウム等の金属の液滴が付着しておら
ず、界面105での良好な急峻性を与え得る成長環境の
必要条件が整備されているのを確認した。
【0130】この確認を行った上で、実施例1と同様
に、p形層103及び最表層110を積層し、積層構造
体10bの形成を終了した。実施例1に記載したと同一
の手法によって計測された発光層102Mの界面105
側でのシートキャリア濃度は3.2×1012cm-2であ
った。発光層102Mのドナー濃度は約3〜4×1018
cm-3と計測された。
【0131】積層構造体10bから短冊状の切片を採り
断面TEM技法により、発光部の接合構成を調査した。
断面TEM観察に当たり、切片をアルゴンを使用するス
パッタリングで薄層とした。加速電圧を、実施例1と同
様に、200キロボルト(KV)として撮像した。
【0132】図12は実施例2での発光部の接合構成の
断面TEM像を模式的に示す図である。実施例1での発
光層102と同様に、発光層102Mは、インジウム濃
度を相違する母相200と従属相201,202とから
成る多相構造であると判断された。また、n形層101
に接合する発光層102Mの接合界面104領域は、窒
化ガリウム相互の接合から成るホモ接合を成しているも
のと考えられた。一方のp形層103側の接合界面10
5には、明瞭に視認される程の大きさの結晶体201,
202は確認され難く、母相200が支配的に存在して
いた。これより、接合界面105の急峻性を求めた発光
層102Mのp形層103側の接合界面105近傍の領
域は、インジウム濃度を略均一とする、発光層102M
とp形層103との均一なオフセットを発生するのに都
合の良い均質領域が形成されているのが確認された。さ
らに、本実施例の断面TEM観察用試料にあっては、ア
ルゴンスパッタリングにより加速電圧200KV時の観
察に都合良く薄層化が果たされたためか、低キャリア濃
度のアンドープ窒化ガリウム・インジウム層102cの
内部のp形層103との接合界面105近傍の領域に
は、歪の存在を示すと思量される黒色のコントラスト2
06が観測された。
【0133】積層構造体10bの一片(約5mm×約5
mm×t(厚さ))を構成元素の深さ方向の分析用試料
に供し、実施例1と同様にSIMS分析装置を用いて、
発光層102Mとp形層103との接合界面105にお
けるインジウムとアルミニウムとの濃度分布を測定し
た。
【0134】図13は発光層とp形層との接合界面にお
けるインジウムとアルミニウムとの濃度分布を示す図で
ある。横軸は接合界面105からの距離、縦軸は原子濃
度をそれぞれ示している。インジウム原子の濃度分布曲
線C3が示す通り、インジウム原子の濃度が発光層10
2Mの内部で略一定となった濃度RoMから、2桁低い濃
度である6.4×1019原子/cm3 と成るに要する接
合界面105からp形層103内への距離、すなわち遷
移距離D3は約16nmであると認められた。一方、ア
ルミニウム原子の濃度分布曲線C4から、その濃度を2
桁減ずるに要する接合界面105から発光層102M側
へのアルミニウム原子に関する遷移距離D4は約15n
mと測定された。このように、p形層3と発光層102
Mとの接合界面105におけるインジウム原子の濃度分
布曲線C3と、アルミニウム原子の濃度分布曲線C4と
は、接合界面105を越えるといずれも急激に落ち込ん
でおり、物質的に観て明瞭な境界となって、界面の急峻
性を満たしている。
【0135】実施例1に記載と同様の素子化工程をもっ
て、LEDを作製した。一般の積分球を利用した測定で
は順方向電流を20ミリアンペア(mA)通流した際の
発光出力は18.6マイクロワット(μW)となった。
実施例1のLED40の発光出力に比較して、さらに約
14.8%の増大が達成された。市販のスペクトルアナ
ライザ装置を利用して測定した発光スペクトルの中心波
長は約450nmであった。繰り返し作製した本実施例
と同様の積層構造体を母体材料とするLEDの中心波長
の変動は450±3nmの範囲に収斂されることから、
本実施例の接合構成を備えた発光部は均一な発光波長を
安定して再現するのに優れたものであることが立証され
た。また、中心波長を約450nmとする主たる発光ス
ペクトルの半値幅は約6nmであった。更に、紫外帯域
での副次的なスペクトルの発生も認められず、色純度に
優れるLEDをも帰結するに充分な単色性を与える発光
スペクトルが顕現された。
【0136】上記の実施例1,2では、本発明を発光ダ
イオード(LED)に適用した場合について説明した
が、本発明は、他の発光素子例えばレーザダイオード
(LD)にも同様に適用することができる。
【0137】
【発明の効果】この発明は上記した構成からなるので、
以下に説明するような効果を奏することができる。請求
項1に記載の発明では、n形発光層のp形半導体層との
接合界面近傍の領域に電子蓄積領域を備えるようにした
ので、順方向バイアス下においてp形半導体層の正孔が
発光層側界面に拡散したとき、その正孔は近接する電子
蓄積領域に流下し、電子蓄積領域内の電子との間で放射
再結合する。したがって、放射再結合が円滑に行われ、
高い発光強度と優れた単色性を得ることができる。
【0138】また、発光層のドナー濃度を5×1017
-3以上で1×1019cm-3以下とし、発光層の立体的
空間において通常の3次元的な挙動を呈する電子(3次
元的キャリア)の数を制限したので、その電子が電子蓄
積領域に流入して溜まるその数を適量に保持することが
できる。
【0139】さらに、電子蓄積領域を備える発光層側界
面の幅狭い領域において主に2次元的に振る舞う電子
(2次元的キャリア)のキャリア面密度を、1×1011
cm-2以上で5×1013cm-2以下としたので、上記の
発光層の立体的空間における3次元的キャリアに対す
る、電子蓄積領域における2次元的キャリアの占める割
合を最適化することができる。
【0140】ちなみに、発光層のドナー濃度が高すぎて
も低すぎても、p形半導体層からの正孔と電子蓄積領域
の電子との再結合に起因するこの発明に固有の発光特性
を充分に顕現できなくなる。すなわち、ドナー濃度が低
く3次元的キャリアが少ないと、電子蓄積領域に流入し
て溜まる電子が少なくなって空位が生じ、したがって電
子蓄積領域での電子との再結合の発生が少なくなり、逆
にドナー濃度が高く3次元的キャリアが多すぎると電子
蓄積領域が満席となり収容できなくなって、電子蓄積領
域における2次元的キャリアの、3次元的キャリアに占
める割合が小さくなり、その結果、p形半導体層からの
正孔が電子蓄積領域に流入しようとしても、その手前で
3次元的キャリアによって阻止され、双方の場合ともこ
の発明に固有の発光特性の顕現が妨害されてしまう。こ
の発明では、上記のように、発光層のドナー濃度と、発
光層側界面でのキャリア面密度とを規定したので、電子
蓄積領域に適量の電子を保持でき、発光特性を最大限発
揮させることができる。
【0141】このように、発光層を、非対称の量子ポテ
ンシャル井戸構造(非矩形ポテンシャル井戸構造)とし
てその発光層内部に電子蓄積領域を形成し、キャリアを
その電子蓄積領域内に適正な濃度で選択的に蓄積させた
ので、それらのキャリアに、効果的でかつ高速応答性の
良好な放射再結合を行わせることができ、したがって、
この発光層を含む積層構造体を用いて構成したIII 族窒
化物半導体発光素子は、青色帯から緑色帯にかけての単
色性に優れた短波長光を高強度で発光させることがで
き、また、印加電圧のオンオフに対しても高速に応答す
ることができる。
【0142】また、n形発光層のp形半導体層との接合
界面近傍の領域に低キャリア濃度層を設け、その低キャ
リア濃度層に電子蓄積領域を設けたので、電子蓄積領域
には、周囲のキャリア濃度の高い発光層から電子が入り
やすくなり、また、電子蓄積領域は低不純物濃度で高純
度の領域となるので、不純物による電子の走行妨害は発
生しにくく、電子の2次元的な高速走行をスムーズに行
わせることができる。
【0143】さらに、低キャリア濃度層の層厚を2nm
以上20nm以下としたので、電子蓄積領域に蓄積され
た電子は、活動領域を2次元的な「面内」に制約され、
3次元的な振る舞いを規制されて無駄なエネルギ消費が
無くなるので、その「面内」を活発に動くことができ、
したがって、電子と正孔との再結合をより高速にかつ強
力に行わせることができる。
【0144】また、低キャリア濃度層の層厚を厚くする
と低キャリア濃度であるが故に通流抵抗が増して、順方
向電流を徒に増加させることとなり、逆に、極端に薄く
すると、電子蓄積領域が狭まり、蓄積される電子の数が
減少してしまうが、この発明では、低キャリア濃度層の
層厚を2nm以上20nm以下としたので、順方向電流
の増加や、電子蓄積領域に蓄積される電子の少量化を確
実に防ぐことができる。さらに、低キャリア濃度層のキ
ャリア濃度に上限を設けたので、電子蓄積領域の2次元
的電子の走行を妨げる不純物の濃度を確実に低く抑える
ことができる。
【0145】請求項に記載の発明では、電子との親和
力が小さく、且つ禁止帯幅が大きい窒化アルミニウム・
ガリウム混晶から成る薄層を電子蓄積領域に隣接して設
けたので、電子蓄積領域における電子の溜め込み層をよ
り深くすることができ、したがって電子蓄積領域に蓄積
された電子の散乱を抑制でき、発光特性を良好なものに
保つことができる。また、窒化アルミニウム・ガリウム
混晶は紫外から短波長可視領域において、光学的に透明
であるため、この混晶から成る薄層を設けても発光層か
ら放射される発光は遮られたりしない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のIII 族窒化物半導体発光素子における
発光部積層構造を概念的に示す図である。
【図2】発光部のバンド構造を示すバンドダイアグラム
である。
【図3】III 族窒化物半導体から成る接合界面の急峻性
を達成するための創意を施した成長反応炉の構成例を示
す図である。
【図4】本発明の第2の実施形態における発光部積層構
造を概念的に示す図である。
【図5】本発明の第3の実施形態における発光部積層構
造を概念的に示す図である。
【図6】LED用途の積層構造体を示す図である。
【図7】発光部の接合構成の断面TEM像を模式的に示
す図である。
【図8】発光層とp形層との接合界面におけるインジウ
ムとアルミニウムとの濃度分布を示す図である。
【図9】LEDの断面構造を模式的に示す図である。
【図10】LEDの平面模式図である。
【図11】LED用途の積層構造体の第2の例を示す図
である。
【図12】実施例2での発光部の接合構成の断面TEM
像を模式的に示す図である。
【図13】実施例2における発光層とp形層との接合界
面におけるインジウムとアルミニウムとの濃度分布を示
す図である。
【図14】従来のタイプI型と呼称される超格子におけ
る理想的なバンド構成を模式的に示す図である。
【図15】井戸層と障壁層とのバンド変化が緩慢な場合
を模式的に示す図である。
【図16】井戸層の層厚(幅)の僅かな変化によって、
量子準位が微妙に変化する模様を模式的に示す図であ
る。
【図17】多相構造からなる不均質な窒化ガリウム・イ
ンジウム混晶層を発光層として含む量子井戸構成の一例
を示す図である。
【図18】MODFETの積層構造体における非対称形
のバンド構造を示す図である。
【符号の説明】
1 n形層 2 発光層 2c 低キャリア層 3 p形層 4 n形層と発光層との接合界面 5 p形層と発光層との接合界面 6 散乱防止層(薄層) 10,11,12 発光部 10a 積層構造体 20 バンド 40 LED 41 パッド電極(負電極) 42 パッド電極(正電極) 43 透過性電極 90 成長反応炉 91 第1流路 92 第2流路 93 掃引ガス流路 94 内壁 99 サセプタ 100 基板 101 n形層 102,102M 発光層 102a 発光層内のインジウム組成の勾配を有する層 102b 発光層内のインジウム組成を一定とする層 102c 発光層内の低キャリア層 103 p形層 104 n形層と発光層との接合界面 105 p形層と発光層との接合界面 110 最表層 200 発光層の母相 201,202 発光層の従属相 C1,C3 インジウム原子の濃度分布曲線 C2,C4 アルミニウム原子の濃度分布曲線 OF1 発光層とp形層との伝導帯のバンドオフセッ
ト OF2 発光層とn形層との伝導帯のバンドオフセッ
ト R 電子蓄積領域

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 III 族窒化物半導体から成るn形半導体
    層とアルミニウムを含有するIII 族窒化物半導体から成
    p形半導体層との中間に、インジウム含有III 族窒化
    物半導体から成るn形発光層を配置して成るIII 族窒化
    物半導体発光素子において、 上記n形発光層が、n形半導体層との接合界面近傍の領
    域に設けられた高キャリア濃度層と、p形半導体層との
    接合界面近傍の領域に設けられた低キャリア濃度層とか
    らなり、 上記高キャリア濃度層は、ドナー濃度が5×10 17 cm
    -3 以上で1×10 19 cm -3 以下であり、 上記低キャリア濃度層は、キャリア濃度が5×10 17
    -3 以下、層厚が2nm以上で20nm以下であり、 上記n形発光層とp形半導体層との接合界面では、n形
    発光層のインジウム原子の濃度がp形半導体層内で2桁
    低下するまでの遷移距離、およびp形半導体層のアルミ
    ニウム原子の濃度がn形発光層内で2桁低下するまでの
    遷移距離を、それぞれ20nm以下として組成比変化の
    急峻性を確保し、 上記低キャリア濃度層中に、 キャリア面密度が1×10
    11cm-2以上で5×1013cm-2以下の、低次元電子を
    選択的に蓄積し局在させる電子蓄積領域が設けられてい
    る、 ことを特徴とするIII 族窒化物半導体発光素子。
  2. 【請求項2】 上記n形発光層は、層厚の減少に反比例
    して発光波長が長波長化する、ことを特徴とする請求項
    1に記載のIII 族窒化物半導体発光素子。
  3. 【請求項3】 上記n形発光層と上記p形半導体層との
    間に、キャリア濃度を5×10 17 cm -3 以下とし、層厚
    を3nm以上で30nm以下とする窒化アルミニウム・
    ガリウム混晶(Al x Ga 1-x N:0≦x≦1)から成る
    薄層を介在させた、 ことを特徴とする請求項1または2に記載のIII 族窒化
    物半導体発光素子。
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