JP3275577B2 - 積層ポリエステルフィルム - Google Patents

積層ポリエステルフィルム

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JP3275577B2
JP3275577B2 JP25187094A JP25187094A JP3275577B2 JP 3275577 B2 JP3275577 B2 JP 3275577B2 JP 25187094 A JP25187094 A JP 25187094A JP 25187094 A JP25187094 A JP 25187094A JP 3275577 B2 JP3275577 B2 JP 3275577B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は特定の粒子を含有し、平
滑性、滑り性、耐摩耗性に優れた積層ポリエステルフィ
ルムに関する。
【0002】
【従来の技術】ポリエステルフイルムは、その優れた性
質のゆえに、磁気テ−プ用、電気絶縁用、写真用、メタ
ライズ用、包装用など多くの用途で広く用いられてい
る。。特にポリエチレンテレフタレートフイルムや、ポ
リエチレン−2,6−ナフタレートフイルムは平坦性、
機械的強度、化学特性、寸法安定性などに優れており、
磁気記録媒体のベースフイルムなどに好適に使用されて
いる。
【0003】一方、近年の磁気記録用媒体の開発に伴
い、ベースフイルムに要求される特性は次第に厳しくな
ってきている。
【0004】例えば、ビデオテープにおける高密度化に
おいてはベースフイルムの表面はより平坦性が要求され
る。しかし、表面が平坦になると表面の摩擦、摩耗が増
大し、フイルム表面に傷が発生したり、削れ粉を生じる
など多くの弊害を生じる。ここでベースフイルムの耐削
れ性が低い場合、磁気テープの製造工程中にフイルムの
削れ粉が多く発生し、磁気層を塗布する工程で塗布抜け
が生じ磁気記録の抜け(ドロップアウト)などを引き起
こす。また磁気テープを使用する際は多くの場合、記
録、再生部位と接触しながら走行するため、接触時に生
じる削れ粉が磁性体上に付着し、記録、再生時の磁気記
録の抜け(ドロップアウト)を生じる。
【0005】すなわち、ベースフイルムは、磁気テープ
製造工程中においてもまた磁気テープとして使用する場
合においても滑り性や耐削れ性を有することが必要であ
る。
【0006】フイルムには滑り性付与のため粒子を添加
し表面に突起を形成し、摩擦低減を図っているが、一
方、耐摩耗性向上の要請からより脱落しにくい突起を形
成する粒子が求められている。
【0007】このような粒子として従来のシリカ等に代
表される無機粒子に対し、近年、有機高分子からなる粒
子が提案されている。
【0008】有機高分子粒子はポリエステルとの親和性
が高く、しかも無機粒子に比べ弾性に富むためフイルム
成形時に粒子周辺のボイド発生が少なく耐摩耗性に優れ
る。例えば特開昭55−99948号公報には、メチル
メタクリレート−ジビニルベンゼン系ポリマ等からなる
粒子を使用することが提案されている。また特開平2−
194049号公報にはエチレングリコール単位を有す
る架橋高分子で被覆された有機粒子を使用することが提
案されている。
【0009】しかしながら、近年の磁気記録分野を始め
とする技術進歩に伴い、さらに滑り性、耐摩耗性に優れ
た粒子が求められている。
【0010】またベースフイルムには滑り性や耐摩耗性
以外に、さらに磁気記録媒体の高密度化に伴い、ベース
フイルムの薄膜化のための高弾性率化、あるいは平滑性
の向上などがますます強く要請されている。フイルム表
面の平滑性についてはフイルム中の粒子の粒度分布だけ
でなくポリエステルの重合に用いる各種の触媒や安定剤
が影響する。特開平2−103116号公報などではフ
イルム厚みの均一性を向上させる触媒条件が開示されて
いるが、このような方法では生産性と厚み均一性は両立
するものの、表面の平滑性は不十分であった。また特開
昭61−78829公報などではゲルマニウム化合物を
用いるポリエステルの製造方法が開示されているが、こ
のような方法においては触媒起因の不溶性の微粒子等が
減少し透明性などが向上し、またフイルム表面の平滑性
には寄与するものの、磁気記録分野におけるように滑り
性、走行性を同時に必要とする場合には不十分であっ
た。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】我々はこれらの課題、
問題点を鋭意検討し、特定の粒子を用い、かつ含有され
る金属化合物の組成と量を特定の範囲とすることによっ
て上記した課題を解決できることを見出した。本発明の
目的は前記した従来技術の欠点を解消し、滑り性、平滑
性、耐摩耗性に優れた積層ポリエステルフィルムを提供
することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明の目的は、平均粒
子径が0.01μm〜0.6μmであり、粒径比(長径
/短径)が1.0〜1.5である有機高分子粒子を0.
005〜2.0重量%含有するポリエステルであって、
かつマグネシウム化合物またはマンガン化合物の少なく
とも一種、ゲルマニウム化合物およびリン化合物をそれ
ぞれ式(1)〜(3)の条件を満たすように含有してな
るポリエステル組成物からなるフィルム層が最表層に配
置され、このフィルム層厚さtと有機高分子粒子の平均
粒子径Dとが0.2D≦t≦10Dなる関係を満足して
いる積層ポリエステルフィルム
【0013】 0.01≦M≦0.15 ・・・(1) 0.005≦Ge≦0.15 ・・・(2) 0.5≦M/P≦5 ・・・(3) (但し式中M、Ge、Pはそれぞれマグネシウム化合物
またはマンガン化合物、ゲルマニウム化合物、リン化合
物におけるマグネシウムまたはマンガン、ゲルマニウ
ム、リンの各原子としてのジカルボン酸の低級アルキル
エステルに対するモル%を示す。) によって達成される。
【0014】本発明におけるポリエステルは、フイルム
を形成しうるものならどのようなものでもよく、例えば
ポリエチレンテレフタレート、ポリテトラメチレンテレ
フタレート、ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタ
レート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート、ポリエ
チレン−1,2−ビス(2−クロロフェノキシ)エタン
−4,4’−ジカルボキシレートなどが挙げられるが、
ポリエチレンテレフタレートあるいはポリエチレン−
2,6−ナフタレートが好ましく、高い弾性率が求めら
れる場合にはポリエチレン−2,6−ナフタレートが特
に好ましい。
【0015】これらのポリエステルには、共重合成分と
してアジピン酸、イソフタル酸、セバシン酸、フタル
酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸などのジカルボ
ン酸およびそのエステル形成性誘導体、ポリエチレング
リコール、ジエチレングリコール、ヘキサメチレングリ
コール、ネオペンチルグリコール、ポリプロピレングリ
コールなどのジオキシ化合物、p−(β−オキシエトキ
シ)安息香酸などのオキシカルボン酸およびそのエステ
ル形成性誘導体などを共重合してもよい。
【0016】本発明における有機高分子粒子はとくに限
定されず、少なくとも一部がポリエステルに対し不溶の
粒子であれば如何なる粒子でも良い。このような粒子の
素材としては、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリメ
チルメタクリレート、ホルムアルデヒド樹脂、フェノー
ル樹脂、ポリスチレン、ポリシルセスキオキサンいわゆ
るシリコーン樹脂など種々のものを使用することができ
るが、耐熱性が高くかつ粒度分布の均一な粒子が得られ
やすいビニル系架橋高分子粒子が特に好ましい。
【0017】ビニル系架橋高分子粒子は分子中に唯一個
の脂肪族の不飽和結合を有するモノビニル化合物(A)
と、架橋成分として分子中に2個以上の脂肪族の不飽和
結合を有する化合物(B)との共重合体である。
【0018】上記共重合体における化合物(A)の例と
しては、スチレン、α−メチルスチレン、フルオロスチ
レン、ビニルピリン、エチルビニルベンゼンなどの芳香
族モノビニル化合物、アクリロニトリル、メタクリロニ
トリルなどのシアン化ビニル化合物メチルアクリレー
ト、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ヘキ
サデシルアクリレート、オクチルアクリレート、ドデシ
ルアクリレート、ヘキサデシルアクリレート、グリシジ
ルアクリレート、N,N’−ジメチルアミノエチルアク
リレートなどのアクリル酸エステルモノマー、メチルメ
タクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタク
リレート、イソプロピルメタクリレート、ブチルメタク
リレート、sec−ブチルメタクリレート、アクリルメ
タクリレート、フェニルメタクリレート、ベンジルメタ
クリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、2−
ヒドロキシエチルメタクリレート、グリシルメタクリレ
ート、N,N’−ジメチルアミノエチルメタクリレート
などのようなメタクリル酸エステルモノマー、アクリル
酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸などのモノ
またはジカルボン酸及びジカルボン酸の酸無水物、アク
リルアミド、メタクリルアミドなどのアミド系モノマー
を使用することができる。
【0019】上記化合物(A)としては、スチレン、エ
チルビニルベンゼン、メチルメタクリレートなどが好ま
しく使用される。
【0020】化合物(B)の例としてはジビニルベンゼ
ン化合物、あるいはトリメチロールプロパントリアクリ
レート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、
あるいはエチレングリコールジアクリレート、エチレン
グリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコール
ジアクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレ
ート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、
1,3−ブチレングリコールジメタクリレートなどの多
価アクリレート及びメタクリレートが挙げられる。
【0021】化合物(B)のうち特にジビニルベンゼ
ン、エチレングリコールジメタクリレートまたはトリメ
チロールプロパントリメタクリレートを用いることが好
ましい。
【0022】ビニル系架橋高分子粒子の組成として好ま
しいものを例示すると、ジビニルベンゼン重合体、エチ
ルビニルベンゼンージビニルベンゼン共重合体、スチレ
ンージビニルベンゼン共重合体、エチレングリコールジ
メタクリレート重合体、スチレン−エチレングリコール
ジメタクリレート共重合体、メチルメタクリレート−ジ
ビニルベンゼン共重合体などが挙げられる。ただし、こ
れらの例示に限定されるわけではなく例えばスチレン−
エチルビニルベンゼン−ジビニルベンゼン共重合体、ス
チレン−エチレングリコールジメタクリレート−メチル
メタクリレート共重合体などの3成分以上の共重合系で
あってもよい。
【0023】このようなビニル系高分子粒子は、例え
ば、化合物(A)、(B)を混合し、以下のような乳化
重合により製造する方法がある。 (a)ソープフリー重合法、すなわち乳化剤を使用しな
いか、あるいは極めて小量の乳化剤を使用して重合する
方法。 (b)乳化重合に先だって重合系内へ重合体粒子を添加
しておいて、乳化重合させるシード重合法。 (c)単量体成分の一部を乳化重合させ、その重合系内
で、残りの単量体を重合させるコアーシェル重合法。 (d)特開昭54−97582号公報に示されているユ
ーゲルスタット等による重合法。 (e)(d)の方法において膨潤助剤を用いない重合
法。
【0024】本発明の有機高分子粒子は、熱天秤による
熱分解温度(10%減量温度、窒素気流中、昇温速度1
0℃/min)が350℃以上の耐熱性を有する粒子
が,ポリエステル組成物製造時、溶融成形時あるいは成
形品の回収再利用時に粒子が凝集しフイルムの表面均一
性、耐摩耗性などを疎外することがない点で好ましく、
さらに好ましくは360℃以上、特に好ましくは370
℃以上である。
【0025】本発明における有機高分子粒子は、粒子を
構成する全有機成分に対して式(1)で定義される架橋
度が10重量%以上であるとポリエステルフイルムとし
たときに粒子の分散性が良好となり好ましく、より好ま
しくは30重量%以上、特には50重量%以上が好まし
い。 架橋度=(原料モノマ中の架橋成分の重量)/(原料モノマの全重量) ×100(%)……(4)
【0026】本発明における有機高分子粒子の平均粒子
径は、0.01〜0.6μmである。より好ましくは
0.02〜0.5μm、特には0.02〜0.3μm未
満である。有機高分子粒子の平均粒子径が0.01μm
未満になるとフイルムの滑り性が不十分となり、また
0.6μmを越えると耐摩耗性あるいは表面の平滑性が
不十分となる。
【0027】本発明における有機高分子粒子はフイルム
とした時の滑り性の点から、フイルム中での粒子の粒径
比R(長径/短径)が1.0〜1.5であることが必要
である。好ましい粒径比Rは1.0〜1.3、さらには
1.0〜1.1が好ましい。
【0028】本発明における有機高分子粒子は粒度分布
がそろっていると、フイルム表面に突起がより均一に形
成され、かつ粗大粒子の混入も少なくなるため、滑り性
および耐摩耗性がより良好となる。具体的には有機高分
子粒子の粒度分布の相対標準偏差が0.5以下であるこ
とが好ましく、より好ましくは0.3以下、特には0.
15以下が好ましい。
【0029】本発明における有機高分子粒子の含有量は
0.005〜2.0重量%であり、好ましくは0.05
〜2.0重量%、特には0.1〜0.5重量%である。
含有量が0.005重量%未満ではフイルムの滑り性が
十分でなく、2.0重量%を越えると耐摩耗性が十分で
なくなるため好ましくない。
【0030】本発明のポリエステルに含有される金属化
合物は主としてポリエステルの重合触媒および着防剤等
の添加物に由来するものであるが、エステル交換反応触
媒に由来するマグネシウム化合物またはマンガン化合物
の少なくとも一種およびリン化合物を下記式(1)およ
び(3)を満たすように含有する必要がある。該化合物
を含有しないあるいは式(1)および(3)以外の範囲
にあるとポリエステル中に異物を生じ、フイルム等にし
たときに平滑性が不十分となったり、製膜性いわゆる静
電印加性が不十分となる。また加えて、ゲルマニウム化
合物を式(2)を満たすように含有する必要がある。該
化合物を含有しないあるいは式(2)以外の範囲にある
とフイルム等にしたときに平滑性が不十分となる。
【0031】本発明においてポリエステル中での上記化
合物の存在状態は特に限定されない。従って該化合物を
ポリエステルに含有させるためには、エステル化あるい
はエステル交換反応触媒、重縮合触媒あるいは着防剤等
として添加すればよい。マグネシウム化合物、マンガン
化合物としては例えばマグネシウムあるいはマンガンの
水素化物、アルコラート、塩化物、酢酸塩、炭酸塩、カ
ルボン酸塩、硫酸塩等が挙げられる。またゲルマニウム
化合物としては、ゲルマニウムの酸化物、有機酸塩、ア
ルキルまたはアリール化合物などが挙げられる。具体的
には酸化ゲルマニウム、四酢酸ゲルマニウム、修酸ゲル
マニウム、酒石酸ゲルマニウム、テトラフェニルゲルマ
ニウムなどが挙げられる。リン化合物も特に限定され
ず、例えばリン酸、亜リン酸、ホスホン酸およびこれら
の誘導体があげられる。具体的には、リン酸、リン酸ト
リメチルエステル、リン酸トリエチルエステル、リン酸
トリブチルエステル、リン酸トリフェニルエステル、リ
ン酸モノメチルエステル、リン酸ジメチルエステル、リ
ン酸モノブチルエステル、リン酸ジブチルエステル、亜
リン酸、亜リン酸トリメチルエステル、亜リン酸トリエ
チルエステル、亜リン酸トリブチルエステル、メチルホ
スホン酸、メチルホスホン酸ジメチルエステル、エチル
ホスホン酸ジメチルエステル、フェニルホスホン酸ジメ
チルエステル、フェニルホスホン酸ジエチルエステル、
フェニルホスホン酸ジフェニルエステルなどが挙げられ
る。
【0032】本発明のポリエステル組成物は、通常のポ
リエステル製造時、例えばエステル交換法による場合の
エステル交換反応中あるいは重合反応中の任意の時期、
あるいは直接重合法による場合の任意の時期に、有機高
分子粒子を粉体あるいはグリコールスラリーの形態で添
加する方法や、粉体あるいは低沸点溶媒を用いたスラリ
ーの形態でポリエステルに練り込む方法をとることが可
能である。またこのとき式(1)〜(3)を満たすよう
に触媒および添加剤を添加、含有させればよい。とくに
粒子を水および/または沸点200℃以下の有機化合物
スラリーの形態でポリエステルに練り込む方法が粒子の
分散性が良好となり好ましい。この際には脱気のための
ベント式押出機を用いるとさらに好ましい。
【0033】この時、有機高分子粒子スラリーには、公
知の界面活性剤、例えばドデシルベンゼンスルホン酸ナ
トリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ジアルキルスルホ
コハク酸ナトリウム、ナフタレンスルホン酸のホルマリ
ン縮合物塩などのアニオン系界面活性剤、ポリオキシノ
ニルフェノールエーテル、ポリエチレングリコールモノ
ステアレート、ソルビタンモノステアレートなどの非イ
オン性界面活性剤、あるいはポリビニルアルコール、ポ
リビニルピロリドン、ポリエチレングリコール水溶性の
合成高分子、ゼラチン、デンプン等の水溶性の天然高分
子、カルボキシメチルセルロースなどの水溶性の半合成
高分子などを添加するとスラリー中の粒子分散性および
ポリエステル組成物とした時の粒子分散性が良好となり
好ましい。
【0034】本発明のポリエステル組成物には有機高分
子粒子以外に本発明の目的を阻害しない範囲内で、他の
粒子、例えば酸化ケイ素、酸化チタン、酸化アルミニウ
ム、炭酸カルシウム、酸化ジルコニウムなどの無機粒子
または、アルカリ金属およびアルカリ土類金属の少なく
とも一種とリンを構成成分の一部とするポリエステル重
合反応系内で析出してくる粒子すなわち内部粒子などの
粒子等を含有していてもよい。
【0035】本発明のポリエステル組成物からなるフイ
ルムは、単層、積層どちらのフイルムにも適用できる
が、表面平坦性の点からは、本発明のポリエステル組成
物からなるフイルムを少なくとも1層に積層しているフ
イルムが好ましい。また積層フイルムが3層以上の構造
であるとより好ましく、特には本発明のポリエステルフ
イルムが3層構造からなる積層フイルムの少なくとも1
つの最外層であることが好ましい。
【0036】また、耐摩耗性の点から特に好ましいの
は、本発明のポリエステル組成物からなるフイルムが最
表層に配置され、そのフイルム層厚さtと、有機高分子
粒子の平均粒子径Dの関係が、0.2D≦t≦10D、
好ましくは0.5D≦t≦5D、特に好ましくは0.5
D≦t≦3Dの場合であって、その最外層の厚さが0.
005〜1μmであることが好ましく、より好ましくは
0.01〜0.5μm、特には0.02〜0.3μmが
好ましい。
【0037】またこのポリエステルフイルムは、耐摩耗
性の点から、少なくとも片面の突起個数が2×103
5×105 個/mm2 であることが好ましい。好ましく
は3×103 〜4×105 個/mm2 、特には5×10
3 〜3×105 個/mm2 が好ましい。
【0038】次に本発明のポリエステル組成物からなる
フイルムの製造方法について積層フイルムの場合を例に
とって説明する。
【0039】本発明における有機高分子粒子および必要
に応じて他の粒子を所定量含有するペレットを乾燥した
のち、公知の溶融押出機に供給し、スリット状のダイか
らシート状に押出し、キャスティングロール上で冷却固
化せしめて未延伸フイルムを作る。積層フイルムの場
合、2台以上の押出し機、2層以上のマニホールドまた
は合流ブロックを用いて、溶融状態のポリエステルを積
層する。この場合、粒子を含有する流路に、スタティッ
クミキサー、ギャポンプを設置する方法を用いてもよ
い。
【0040】次にこの未延伸フイルムを二軸延伸し、二
軸配向せしめる。延伸方法としては、逐次二軸延伸法ま
たは同時二軸延伸法を用いることができる。ただし、最
初に長手方向、次に幅方向の延伸を行なう逐次二軸延伸
法を用い、長手方向の延伸を3段階以上に分けて、縦延
伸温度80℃〜160℃、総縦延伸倍率3.0〜7.0
倍、縦延伸速度は5000〜50000%/分の範囲が
好ましい。幅方向の延伸方法としてはステンタを用いる
方法が好ましく、延伸温度は80〜200℃、幅方向延
伸倍率は縦倍率より大きく3.0〜7.0倍、幅方向の
延伸速度は1000〜20000%/分の範囲が好まし
い。
【0041】次にこの延伸フイルムを熱処理する。この
場合の熱処理温度は170〜220℃で時間は0.5〜
60秒の範囲が好適である。
【0042】
【実施例】以下に実施例をあげて本発明を詳細に説明す
る。なお得られたフイルムの各特性値は次の方法に従っ
て求めた。
【0043】(1)平均粒子径 基本的にはポリエステル組成物中の粒子を直接測定する
が、無機粒子を併用し区別が繁雑となる場合などには、
平均粒子径はポリエステルに添加する前の粉体あるいは
スラリーから求めた。
【0044】(A)粉体またはスラリーから平均粒子径
を測定する場合 電子顕微鏡の試料台にできるだけ粒子が重ならないよう
に載せ、走査型電子顕微鏡または透過型電子顕微鏡で1
万〜10万倍の倍率で粒子を観察した。走査型電子顕微
鏡の場合には、あらかじめ試料表面にスパッタ装置で層
厚み200オングストローム程度の白金蒸着膜を形成さ
せた。画面あるいは写真像から少なくとも200個の粒
子の面積相当径を測定し、個数基準の平均径および相対
標準偏差を計算した。
【0045】(B)フイルムから平均粒子径および粒径
比を測定する場合 フイルムを製膜時の長手方向(MD方向)にカッティン
グして約0.1μm厚みの超薄切片を作製し、TD方向
(フイルム面内でMDと直角の方向)から、透過型電子
顕微鏡で断面を1万〜10万倍の倍率で観察した。画面
あるいは写真像から少なくとも200個の粒子の粒径比
の個数平均値および個数基準の平均径および相対標準偏
差を計算した。
【0046】(2)粒子の含有量 ポリエステルへの粒子配合量から計算するか、あるいは
得られたポリエステル組成物を粒子は溶解しない溶媒で
溶解し、ポリマから遠心分離して得られた粒子の全体に
対する比率(重量%)をもって粒子含有量とした。
【0047】(3)積層フイルムの積層厚み 2次イオン質量分析装置(SIMS)を用いて、表層か
ら深さ3000nmの範囲のフィルム中の粒子のうち最
も高濃度の粒子に起因する元素とポリエステルの炭素元
素の濃度比(M+ /C- )を粒子濃度とし、表面から深
さ3000nmまでの厚さ方向の分析を行なう。表層で
は表面という界面のために粒子濃度は低く表面から遠ざ
かるにつれて粒子濃度は高くなる。本発明のフィルムの
場合は、一旦極大値となった粒子濃度がまた減少し始め
る。この濃度分布曲線をもとに表層粒子濃度が極大値の
1/2となる深さ(この深さは極大値となる深さよりも
深い)を求め、これを積層厚みとした。条件は次の通
り。
【0048】測定装置 2次イオン質分析装置(SIMS)独、ATOMIKA
社製A−DIDA3000 測定条件 1次イオン種 O2 + 1次イオン加速電圧 12kV 1次イオン電流 200nA ラスター領域 400μm□ 分析領域 ゲート30% 測定真空度 6.0×10-9Torr E−GUN 0.5kV−3.0A なお、表層から深さ3000nmの範囲に最も多く含有
する粒子が有機高分子粒子の場合は、SIMSでは測定
が難しいので、表層からエッチングしながらXPS(X
線光電子分光法)、IR(赤外分光法)などで上記同様
のデプスプロファイルを測定し積層厚みを求めても良い
し、また、電子顕微鏡等による断面観察で粒子濃度の変
化状態やポリマの違いによるコントラストの差から界面
を認識し積層厚みを求めることもできる。さらに積層ポ
リマを剥離後、薄膜段差測定機を用いて積層厚みを求め
ることもできる。
【0049】(4)フイルム表面の平滑性 小坂研究所製の高精度薄膜段差測定器ET−10を用
い、中心線平均粗さ(Ra)を測定した。測定条件は下
記のとおりであり、20回の測定の平均値をもって値と
した。Rtが0.010以下が表面平滑性良好である。
【0050】 ・触針先端半径:0.5μm ・触針荷重 :5mg ・測定長 :1mm ・カットオフ値:0.08mm なお、各パラメータの定義の詳細は、例えば、奈良治郎
著「表面粗さの測定・評価法」(総合技術センター、1
983)に示されている。
【0051】(5)フイルムの滑り性 フイルム幅1/2インチにスリットし、テープ走行性試
験機TBT−300型[(株)横浜システム研究所製]
を使用し、20℃、60%RH雰囲気で走行させ、初期
の摩擦係数μkを下式より求めた。なお、ガイド径は6
mmφであり、ガイド材質はSUS27(表面粗度0.
2S)、巻き付け角は180°、走行速度は3.3cm
/秒である。 μk=0.733×log(T1 /T2 ) T1 :出側張力 T2 :入側張力 上記μkが0.35以下であるものは滑り性良好であ
る。
【0052】(6)フイルムの耐摩耗性 フイルムを1/2インチにスリットしたテープ状ロール
を、ステンレス鋼SUS−304製ガイドロールに巻き
付け角60°、250m/分の速度、張力95gで10
00mにわたって擦り付け、ガイドロール表面に発生す
る白粉量によって次のようにランク付けした。A、B級
のものを合格とした。 A級…白粉発生まったくなし B級…白粉発生少量あり C級…白粉発生やや多量あり D級…白粉発生多量あり
【0053】実施例1 撹拌装置、精留塔、凝縮器を備えたエステル交換反応器
にナフタレン−2,6−ジカルボン酸ジメチル66.5
部とエチレングリコール33.5部および酢酸マグネシ
ウム4水塩0.06部を供給した後、180℃〜240
℃まで徐々に昇温し同時に生成したメタノールは連続的
に反応系外へ留出させながらエステル交換反応を行っ
た。こうして得られた反応物に、リン酸トリメチルエス
テル0.025部を添加し15分間反応させてから、二
酸化ゲルマニウム0.02部を添加し、さらに5分間反
応させた。
【0054】引き続いてエチレングリコールを連続的に
留出させながら290℃まで昇温し同時に0.2mmH
gまで減圧を進めて重縮合反応を行い、固有粘度0.6
5のポリマ(II)を得た。
【0055】このチップをベントタイプ二軸押出機を使
用してを溶融状態とし、有機高分子粒子としてエチルビ
ニルベンゼン−ジビニルベンゼン共重合体粒子(平均粒
子径0.2μm、粒度分布の相対標準偏差0.12、粒
径比1.0、熱分解温度380℃)の水スラリーを添加
し有機高分子粒子を含有するポリマ(II)を得た。
【0056】(I)および(II)の2つのポリマを減
圧乾燥した後、押出機1、押出機2にポリマ(I)、
(II)をそれぞれ供給、溶融し、高精度濾過した後、
矩形合流部にて3層積層とした(積層構成:ポリマ(I
I)/ポリマ(I)/ポリマ(II))。
【0057】これを静電印加キャスト法を用いてキャス
ティング・ドラムに巻きつけて冷却固化し、未延伸フイ
ルムを作った。この未延伸フイルムを長手方向に4.5
倍、幅方向に6.0倍延伸、熱処理し、総厚さ12μm
の二軸配向積層フイルムを得た。
【0058】製膜に供したペレットの粒子濃度から、得
られたフイルムの積層部に含有されている有機高分子粒
子は0.2重量%。得られたフイルムの切片を用いて観
察した粒子は球形を維持しており粒径比に変化は見られ
なかった。また積層厚みは両積層部とも1μmであっ
た。
【0059】このフイルムのRaは0.005、μkは
0.31、耐摩耗性はA級であり、表面平滑性、滑り
性、耐摩耗性のすべてに良好な特性が得られた。
【0060】実施例2〜4、比較例1〜4 実施例1と同様にして、含有する有機高分子粒子の粒子
径、含有量、積層条件あるいはマトリックスのポリマを
変える以外は同様にしてフイルムを作成した。表1に示
すように本発明に規定する範囲内ではポリエステルフイ
ルムとしたとき表面平滑性、滑り性、耐摩耗性のすべて
に良好な特性が得られたが、そうでないものはいずれか
の特性が不十分であった。
【0061】
【表1】
【0062】
【発明の効果】本発明の積層ポリエステルフィルム
面平滑性、滑り性、耐摩耗性に優れ、磁気記録媒体用
途などに好適に使用できる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C08L 67/00 - 67/04

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 平均粒子径が0.01μm〜0.6μm
    であり、粒径比(長径/短径)が1.0〜1.5である
    有機高分子粒子を0.005〜2.0重量%含有するポ
    リエステルであって、かつマグネシウム化合物またはマ
    ンガン化合物の少なくとも一種、ゲルマニウム化合物お
    よびリン化合物をそれぞれ式(1)〜(3)の条件を満
    たすように含有してなるポリエステル組成物からなるフ
    ィルム層が最表層に配置され、このフィルム層厚さtと
    有機高分子粒子の平均粒子径Dとが0.2D≦t≦10
    Dなる関係を満足している積層ポリエステルフィルム。 0.01≦M≦0.15 ・・・(1) 0.005≦Ge≦0.15 ・・・(2) 0.5≦M/P≦5 ・・・(3) (但し式中M、Ge、Pはそれぞれマグネシウム化合物
    またはマンガン化合物、ゲルマニウム化合物、リン化合
    物におけるマグネシウムまたはマンガン、ゲルマニウ
    ム、リンの各原子としてのジカルボン酸の低級アルキル
    エステルに対するモル%を示す。)
  2. 【請求項2】 有機高分子粒子の熱分解温度が350℃
    以上であることを特徴とする請求項1記載の積層ポリエ
    ステルフィルム
  3. 【請求項3】 有機高分子粒子の平均粒子の相対標準
    偏差が0.5以下であることを特徴とする請求項1また
    は請求項2記載の積層ポリエステルフィルム
  4. 【請求項4】 ポリエステルがポリエチレン−2,6−
    ナフタレートであることを特徴とする請求項1〜のい
    ずれか1項に記載の積層ポリエステルフィルム
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