JP3273764B2 - 化合物系超電導線の製造方法 - Google Patents

化合物系超電導線の製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、高磁界超電導マグ
ネット用の化合物系超電導線およびその製法に関する。
とくに、本発明はNb−Sn化合物系超電導線およびそ
の製法に好適に適用できる。
【0002】
【従来の技術】従来、超電導線はブロンズ法あるいは内
部拡散法といわれる方法等で製造されている。
【0003】図23および図24は、それぞれ特公昭6
1−16141号公報に記載された、従来の内部拡散法
による熱処理前のNb3Sn系超導電線の先駆体および
熱処理後のNb3Sn系超電導線の断面を示す説明図で
ある。なお、本明細書において熱処理前、すなわち超電
導化前の線材を超電導線の先駆体といい、熱処理後の超
電導化されたものを超電導線という。図23において、
41は熱処理前の超電導線の先駆体、43は熱処理によ
り超電導となるNb基金属フィラメント、44はたとえ
ばTaなどの障壁層、45は無酸素銅などの安定化層、
46はCu基金属材、47はSn基金属材であり、図2
4において48は熱処理後の超電導線、49は超電導化
されたNb3Snフィラメント、50は低Sn濃度ブロ
ンズである。
【0004】前記超電導線は、超電導線の先駆体を高温
(一般的には600〜800℃)で熱処理することによ
り、Nb基金属フィラメントにNb3Sn化合物を生成
せしめて得られたものである。
【0005】内部拡散法を用いるNb3Sn系超導電線
の製造法は以下のとおりである。まず、Nb基金属材を
Cuチューブに挿入し、ある径まで断面減少加工をして
単芯線を得る。この単芯線を適当な長さに截断し、Cu
製の容器中に複数充填する。ただし、中央部にはCu棒
または複数のCu線などのCu基金属材を配置する。容
器中の空気を排除し、蓋を溶接して密封し、押出し加工
したのち、中心のCu基金属材を機械的に穿孔する。こ
の孔にSn基金属材を挿入し、Cu製の容器の周囲にT
aやNbのチューブ、さらにその周囲にCuのチューブ
を被覆し、断面減少加工する。なお、大電流容量化する
ためには、得られた複合線を複数Cuチューブ中に充填
して断面減少加工する。最終径にまで断面減少したのち
ツイスト加工し、熱処理を施す。この熱処理によりSn
は周囲のCu中に拡散し、Cu−Sn合金を形成し、さ
らに、Nb基金属フィラメントと反応し、その一部また
はすべてにNb3Snが生成する。
【0006】前記内部拡散法における超電導線の先駆体
は、Cu基金属材中にNb基金属フィラメントとSn基
金属材のコアとが埋設された構造を有する。とくに、超
電導特性の1つである臨界電流密度(Jc)を少しでも
大きくするために、Nb基金属フィラメントは、なるべ
く密にCu基金属材中に埋設されている。超電導線は液
体ヘリウム温度まで冷却して用いると、電気抵抗を生じ
ることなく大電流を流すことが可能となる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】従来の内部拡散法によ
り生産される化合物系超電導線は、以上のようにSn基
金属材がモジュールの中心に配置されるために、Nb3
Snフィラメント相互の間隔は通常のブロンズ法と比較
して約半分程度と狭い。そのため、超電導線の先駆体の
熱処理時にNb基金属フィラメントがたがいに接触結合
して、超電導線の電気的特性である有効フィラメント径
(deff)の値(試料形状を円柱とし、超電導線の磁化
の幅をΔM、そのときの臨界電流密度をJcとしたと
き、deff=3πΔM/4μ0Jcで与えられる)が増大
し、その結果、直流電流に対しては問題を生じないが、
パルス電流の通電時には大きなヒステリシス損失を生
じ、超電導コイルの発熱により安定性が損なわれるとい
う問題点がある。
【0008】また、内部拡散法ではSn基金属材が中央
部に配置されているので、Sn拡散のための予備熱処理
時にSn濃度に勾配が生じる。したがって、Sn濃度に
依存してNb3Snフィラメントの組成が変動し、超電
導特性の1つであるn値(超電導線における長手方向の
均一性を示す指標。V∝Inで示される式におけるn
値。nが大きいほど超電導特性が優れている)が低くな
るという問題もある。
【0009】本発明はかかる問題を解決するためになさ
れたもので、超電導線の有効フィラメント径が大幅に減
少され、併せて超電導線のJcの減少が最小限にとどめ
られ、かつ、n値を増大させた化合物系超電導線を提供
することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明の化合物系超電導
線の第1の製造方法は、Cu基金属材と、該Cu基金属
材と合金層を形成する第1の基金属材Xとの積層板を先
ず圧延し、減厚して一体化し、これを第2の基金属材Z
の棒に巻回して得た複合単芯線をCu製円筒容器内に複
数充填して複合棒をつくる工程と、(B)前記複合棒を
伸線加工して超電導線の先駆体とする工程と、(C)前
記超電導線の先駆体を熱処理する工程とを備えたもので
ある。
【0011】本発明の化合物超電導線の第2の製造方法
は、Cu基金属材と該Cu基金属と合金層を形成する第
1の基金属材Xとの積層板を先ず圧延し、減厚して一体
化した複合体をCu製円筒容器内に充填し、該複合体に
複数の穿孔を設け、各孔に第2の基金属材Zを充填して
複合棒をつくる工程と、(B)前記複合棒を伸線加工し
て超電導線の先駆体とする工程と、(C)前記超電導線
の先駆体を熱処理する工程とを備えたものである。
【0012】本発明の化合物超電導線の第3の製造方法
は、円柱状Cu基金属材の中心に第1の穿孔を設け、該
第1の穿孔の周囲に複数の第2の穿孔を設け、前記第2
の穿孔にCu基金属と合金を形成する第1の基金属材X
を充填し、前記第1の穿孔に第2の基金属材Zを充填し
て複合単芯線を形成し、該複合単芯線をCu製円筒容器
内に複数充填して複合棒を形成する工程と、(B)前記
複合棒を伸線加工して超電導線の先駆体とする工程と、
(C)前記超電導線の先駆体を熱処理する工程とを備え
たものである。
【0013】本発明の化合物超電導線の第4の製造方法
は、前記第2の基金属材ZがTi、Ta、Hf、Mo、
ZrおよびVよりなる群から選ばれた少なくとも1種を
含有するようにしたものである。
【0014】本発明の化合物超電導線の第5の製造方法
は、前記第1の基金属材XがTi、In、Ge、Siお
よびMnよりなる群から選ばれた少なくとも1種を含有
するようにしたものである。
【0015】本発明の化合物超電導線の第6の製造方法
は、前記Cu基金属材がTi、In、Ge、Siおよび
Mnからなる群から選ばれた少なくとも1種を含有する
ようにしたものである。
【0016】
【作用】本発明の化合物系超電導線の製造方法は、Sn
またはGaを分散して配置するため、中心のSnまたは
Gaコアが不要となり、そのぶんだけフィラメントを埋
めるスペースが広くなるので、フィラメント間隔を従来
の内部拡散法で得られるものよりも約30%広げること
ができ、熱処理後に得られる超電導線において超電導フ
ィラメント同士が接触している確率が格段に減り、有効
フィラメント径の値が大幅に減少する。その結果、パル
ス電流の通電時に発生するヒステリシス損失が大幅に減
少し、超電導コイルの安定性が向上する。
【0017】また、SnまたはGaの拡散距離が短くな
って拡散後の含量が一定となり、その結果、生成される
Nb3Snフィラメントの組成も均一になり、超電導特
性の1つであるn値が向上する。あわせてSnまたはG
a拡散の予備熱処理時間も短くてすみ、コストの低減が
図れる。
【0018】
【発明の実施の形態】以下、本件第1および第2の発明
を問わず、超電導線およびその先駆体の説明において
は、説明を簡単にするためすべてNbおよびSnを用い
た場合について説明する。しかし、以下の説明において
はいちいち断わらないが、NbをVと、SnをGaと置
きかえることができ、Nb3Sn以外の化合物を用いて
もまったく同様の超電導線が得られる。Nb3Sn以外
ではV3Gaがとくに実用的である。
【0019】また、本発明で用いられる「A基金属…」
という表現は、A金属を主体とするものであって、純粋
なものでも、また添加剤の加わったものであってもよい
ことを意味する。熱処理などの結果、該金属を基本金属
として他の金属との間に合金あるいは金属間化合物を生
成する場合があるので「A基金属…」という表現が用い
られる。
【0020】まず、本件第1の発明について具体的に説
明する。
【0021】本件第1の発明のNb−Sn化合物系超電
導線は、ブロンズ層中にNb3Snフィラメントが、た
がいに接触、結合しないような間隔で埋め込まれた形を
しているものである。Nb3Snフィラメントをたがい
に接触しないような間隔とし、かつ、なるべく数多くの
Nb3Snフィラメントを埋めるために、Nb基金属フ
ィラメントの接触がおこりやすい領域、すなわち300
〜600℃の予備熱処理により生じるε相ブロンズ層の
境界領域において、Nb基金属のフィラメントの間隔を
他の領域よりも大きくし、超電導線の先駆体を熱処理す
る。
【0022】予備熱処理は、超電導線の先駆体を熱処理
して超電導線とする際に、あらかじめ300〜600℃
に加熱して中央部のSn基金属材を周囲のCu基金属材
中に拡散せしめて、Cu−Sn合金のブロンズ層を形成
させるためのものである。前記予備熱処理に引続いて熱
処理が行なわれる。
【0023】前記Nb−Sn化合物系超電導線は、いわ
ゆる内部拡散法によって得られるものであって、Cu基
金属材で被覆されたNb基金属フィラメントを伸線加工
して得られる単芯線を、ビレット内に充填し、押出し加
工して複合体を得るか、または穿孔加工したCu板を重
ねてブロック体とし、前記穿孔箇所に単芯線を挿入して
から押出し加工をして複合体をえ、そののち、前記複合
体の中央部を穿孔して、Sn基金属棒を挿入後、伸線加
工して超電導線の先駆体をえ、該超電導線の先駆体を6
00〜800℃で100〜200時間の熱処理をして得
られるものである。また、単芯線を充填したビレットを
中空押出しや冷間加工することによって管状の複合体を
え、該管状の複合体の中心部にSn基金属棒を挿入後伸
線加工して超電導線の先駆体としてもよい。かくしてC
u基金属材中のNb基金属フィラメントの一部または全
部がNb3Snとなり、その結果、Cu基金属材中にN
3Snフィラメントが埋設された形の超電導線が得ら
れる。
【0024】本件第1の発明の超電導線においては、前
記熱処理の過程で中心のSn基金属材がCu基金属材と
反応して生ずるε相ブロンズ層の境界領域にあるNb3
Snフィラメントがたがいに接触しないように、フィラ
メントを細くするか、粗に配置するかしてフィラメント
間の間隔を大きくしてあるので、ヒステリシス損失の観
点からすぐれた電気的性質が得られる。
【0025】前記ε相ブロンズ層とは、熱処理により中
心のSn基金属材がCu基金属材中に拡散してブロンズ
を形成する際に、300〜600℃の温度範囲において
生じるCu−Sn合金の相の一種であって、化学式がC
3Snで示される金属間化合物を意味する。前記ε相
ブロンズ層はα相ブロンズ層に比べて固くてもろい性質
がある。600〜800℃で熱処理をすると、ε相は一
旦生じたのち、最終加熱温度の段階では消失するもので
ある。ε相は中心から外周に向かって形成され、ε相ブ
ロンズ層とCu基金属材との境界はSnの量によっても
異なるが、通常、中心から超電導線の先駆体の(障壁層
を有する場合は障壁層内の)半径の約50〜70%の距
離に位置する。415℃で超電導線の先駆体を加熱した
際に生じるε相ブロンズ層の境界は前記超電導線の半径
の50〜70%の距離に位置する。600℃を超える温
度ではε相はα相に変り、ほぼ全面に拡がる。
【0026】前記超電導線の先駆体の熱処理の際に形成
されるNb3Snフィラメントがたがいに接触しやすく
なる理由は定かではないが、Nb基金属フィラメントが
Nb 3Snになる際にNb基金属フィラメントの体積が
30%ほど増加すること、加熱中はフィラメントが動き
やすいことなどのために、Nb3Snフィラメントがた
がいに接触する機会が多くなると考えられる。この動き
はε相ブロンズ層の拡がりの境界領域でとくに甚だし
い。
【0027】Nb3Snフィラメントがε相ブロンズ層
境界領域でたがいに接触しないようにするには、熱処理
前のNb基金属フィラメント間の間隔を、前記Nb基金
属フィラメントの直径の0.45倍以上とすることが好
ましく、さらに0.48倍以上とするのがとくに好まし
い。前記の値は実験的に求められるもので、Nb基金属
フィラメント間の距離が前記の値未満の場合には、熱処
理後の超電導線のJcは大きくなるが、Nb3Snフィ
ラメントの接触が多く生じやすく、deffすなわち交流
ロスが大きくなり、パルス用超電導線として使用するに
は不適当となる。たとえば0.38倍の場合には、d
effが500μmとなりパルス用超電導線としての使用
に耐えない。
【0028】Nb基金属フィラメントの間隔を拡げる必
要のある範囲は、熱処理によって生ずるε相ブロンズ層
の境界領域であって、超電導線の先駆体の中心から、超
電導線の先駆体を415℃で熱処理したときに生成する
ε相ブロンズ層の境界までの距離の0.7〜1.4倍の
距離を半径とする範囲が好ましく、とくに0.9〜1.
2倍の範囲が好ましい。前記範囲外までNb基金属フィ
ラメントの間隔を拡げると、Nb基金属フィラメントの
数が少なくなり、その結果、最終的に得られる超電導線
のJcが小さくなって好ましくない。境界までの距離は
超電導線の断面を研磨し、光学顕微鏡または電子顕微鏡
による写真から求めることができる。
【0029】本件第1の発明の超電導線の先駆体を得る
には、たとえば以下のような方法がある。
【0030】(1)Cu基金属材の中心にNb線が埋め
込まれた、Cuの肉厚の異なる2種類の単芯線を作製
し、Cuビレット中の中心付近にはCu基金属棒を、そ
の周囲に単芯線を充填する。この際、超電導線を得るた
めの熱処理の過程で生じるε相ブロンズ層の境界となる
領域には前記肉厚の単芯線を配し、その内側および外側
に肉薄の単芯線を配する。
【0031】前記単芯線は同じ太さのNb棒を肉厚の異
なる2種のCuパイプに挿入し延伸して得られる。
【0032】この際、肉厚の異なる2種の単芯線の径
(断面が円形ならば直径、正多角形ならば対辺間距離)
が同一となるように延伸すれば、肉厚のCuをもつ単芯
線の場合のほうが中のNb線が細くなる。したがって、
ε相ブロンズ層の境界領域のNb基金属フィラメント間
の間隔は肉薄の単芯線よりも大きくなる。
【0033】また、延伸する際に、Cuが肉厚である単
芯線は径を大きく、Cuが肉薄である単芯線は径を小さ
く作製すれば、Cuが肉厚である単芯線を詰めた部分の
Nb基金属フィラメント間距離は、Cuの肉厚の差に応
じて広くなり、いずれの場合でもNb基金属フィラメン
ト間の間隔を大きくすることができる。
【0034】そののち、前記単芯線とCu基金属棒とを
充填したCuビレットを延伸処理して複合体とし、中心
部のCuを穿孔して、Sn基金属棒を挿入する。
【0035】前記単芯線とCu基金属棒とを充填したC
uビレットを延伸処理する際、中空押出し、冷間加工な
どの方法によって管状の複合体とし、その中空部にSn
基金属材を挿入してもよい。こののち、必要に応じて複
合体外側をSnに対する拡散障壁材、たとえばTaで覆
い、さらに安定化材をかぶせて伸線処理をして超電導線
の先駆体とする。そののち、該超電導線の先駆体を30
0〜600℃に予備熱処理して、中央のSn基金属材を
Nbフィラメントの周囲にあるCu基金属中に拡散せし
め、ブロンズを生成させる。そののちさらに600〜8
00℃で熱処理して超電導線を得る。
【0036】前記安定化材は超電導線を得るための熱処
理の際にもブロンズ化されない層を形成するものであっ
て、超電導線の最外部に前記安定化材からなる層を設け
ることによって、電気的、熱的な処理に対してより安定
な超電導線が得られる。安定化材としてはCuのほかに
高純度Alなども使用できる。前記ブロンズ化を防止す
るためにはSn−Cu複合体と安定化材の層との間にS
nの拡散を妨たげる障壁層を設けるのがよい。障壁層を
形成する材料としてはTaが好ましいが、Nb、Vなど
も使用できる。
【0037】(2)単芯線をCuビレットに充填する
際、ε相ブロンズ層の境界の内側はすべてCu基金属棒
を充填し、境界のすぐ外側には肉厚の単芯線を、さらに
その外側に肉薄の単芯線を充填し、あとは(1)と同様
に処理をする。
【0038】(3)Cuビレット内に多数の孔を有する
無酸素銅板を重ねて充填し、孔にNbを挿入する。前記
無酸素銅円板にあける孔の位置は(1)の場合の単芯線
を充填する位置に相当する。その際、ε相ブロンズ層の
境界となる領域の穴の間隔を他の部分よりも広くとる。
以後は(1)の場合と同じ処理をする。
【0039】なお前記中心部のSn量が少なくてもすむ
ように、前記複合体の外側をあらかじめSnメッキして
もよい。
【0040】第1の発明の超電導線は、後述する第2の
発明と同様にNb3Snフィラメント中に微量元素とし
てTi、Ta、Hf、In、Ge、Si、Ga、Mo、
2r、VおよびMnよりなる群から選ばれた少なくとも
1種の元素を0.01〜5重量%含んでもよい。各微量
元素を含有することによる効果は、第2の発明の場合と
同様である。
【0041】前記微量元素を含むNb3Snを得るには
以下のような方法がある。
【0042】(i)0.01〜10重量%のTi、I
n、Ga、Ge、SiおよびMnよりなる群から選ばれ
た少なくとも1種を含有したSn合金または前記金属粉
を混合成形したSnを用いる。前記添加量が0.01重
量%未満では効果が認められず、10重量%をこえると
供給されるSn量が少なくなるので生成するNb3Sn
量が減り特性の低下をきたす。
【0043】(ii)0.01〜5重量%のTi、Ta、
Hf、Mo、ZrおよびVよりなる群から選ばれた少な
くとも1種を含むNb合金または前記金属粉を混合し、
成形したNbを用いる。前記添加量が0.01重量%未
満では、効果が認められず、5重量%をこえるとNb量
が少なくなるので生成するNb3Sn量が減り、特性の
低下をきたす。
【0044】(iii)0.01〜5重量%のTi、I
n、Ge、SiおよびMnよりなる群から選ばれた少な
くとも1種を含むCuを用いる。前記添加量が0.01
重量%未満では効果が得られず、5重量%を超えると加
工性が著しく悪化する。またCu基金属材に0.01〜
1重量%のSnを含有させると加工性をあげることがで
きる。
【0045】本件第2の発明の超電導線の先駆体は以下
のようにして得られるものである。
【0046】(I)Cu基金属板とSn基金属板とを交
互に重ね、圧延して一体化したCu−Sn複合体をつく
り、該複合体を無酸素銅容器中に縦に充填し、該充填さ
れた容器を押し出し加工してCu−Sn複合棒とする。
つぎに、該複合棒の縦方向に複数個の孔を穿孔して各孔
にNb基金属棒を挿入し、伸線加工する。
【0047】(II)Nb基金属棒の周囲にCuとSnと
からなる複合体を被覆して得られる複合単芯線を無酸素
銅容器中に密に多数充填し、該容器を伸線加工する。
【0048】なお、必要に応じて伸線加工の前にSnに
対する障壁材で覆い、さらに安定化材のパイプをかぶせ
て伸線処理をするのが好ましい。超電導線の先駆体は、
最外層がSnを含まないCuまたはAlの層であるのが
好ましい。障壁材とは、熱処理中に拡散したSnが最外
層の安定化材にまで達するのを防ぐ障壁となるものであ
る。
【0049】前記CuとSnとの複合体におけるSnの
割合は複合体中1〜99重量%が好ましく、13〜20
重量%であるのがとくに好ましい。Snの量が1重量%
未満の場合は、Snの量が不足してNb3Snが充分に
生成し難く、99重量%を超えるとSnの体積率が増え
すぎて柔かくなりすぎ、加工が困難となる。
【0050】前記複合単芯線は以下のような方法で得ら
れる。
【0051】(a)Nb基金属棒をCu基金属パイプに
挿入し、押し出し加工して単芯線とし、該単芯線の外面
をSnメッキして複合単芯線を得る。
【0052】(b)外壁に、その長さ方向に複数の孔が
穿孔された無酸素銅容器の前記穿孔部にSn棒を挿入
し、前記無酸素銅容器の中央にNb基金属棒を挿入し、
押し出し加工して複合単芯線を得る。
【0053】(c)2枚のCu板間にSn板を挟み、圧
延して一体化したCu−Sn複合体板、または少なくと
も片面にSnメッキしたCu板を、Nb基金属棒の周囲
に数回巻きつけ、押し出し加工して複合単芯線を得る。
【0054】本件第2の発明の超電導線の先駆体の各N
b基金属フィラメント間の距離は、熱処理の際にフィラ
メントが互いに接触しないためには、直径の14/10
0以上であることが必要であって、30/100以上で
あることがとくに好ましい。しかし間隔が広すぎると超
電導線中のNb3Snフィラメントの数が少なくなって
Jcの値が減少し、間隔が狭すぎるとdeff値が大きく
なるから前記の値以上の範囲でできるだけ接近させるこ
とが望ましい。
【0055】第2の発明の超電導線は、まず、CuとS
nとの複合体をブロンズ化するために、処理時間と20
0〜600℃の範囲から温度を適当に選び、超電導線の
先駆体に予備熱処理を行なったのち、ひきつづいて60
0〜800℃に約100〜200時間加熱してNb基金
属フィラメントをNb3Snフィラメントとすることに
よって得られる。なお、前記予備熱処理ののち一旦冷却
してからあらためて600〜800℃に加熱しても差支
えない。
【0056】前記Nb3Snフィラメントはまた、微量
元素としてTi、Ta、Hf、In、Ge、Si、G
a、Mo、Zr、VおよびMnよりなる群から選ばれた
少なくとも1種の元素を0.01〜5重量%含んでいて
もよい。
【0057】前記微量元素としてTi、Ta、Hf、M
o、ZrまたはVの少なくとも1種を含有するNb3
nフィラメントを用いると高磁界側のJcが向上する。
また、InまたはGaを用いた場合には、低中磁界側の
Jcが向上するほか線材の加工性がよくなる。また、G
e、SiまたはMnの添加は交流ロスの低減に効果があ
る。
【0058】前記微量元素を含むNb3Snを得るには
以下のような方法がある。
【0059】(i)Ti、In、Ga、Ge、Siおよ
びMnよりなる群から選ばれた少なくとも1種を0.0
1〜10重量%含有したSnを用いる。前記含有量が
0.01重量%未満では効果が認められず、10重量%
を超えると供給されるSn量が少なくなるので生成する
Nb3Sn量が減り、特性の低下をきたす。
【0060】(ii)Ti、Ta、Hf、Mo、Zrおよ
びVよりなる群から選ばれた少なくとも1種を0.01
〜5重量%含むNbを用いる。前記含有量が0.01重
量%未満では効果が認められず、5重量%を超えるとN
bの量が減るために最終的に生成するNb3Sn量が減
り特性の低下をきたす。
【0061】(iii)Ti、In、Ge、SiおよびM
nよりなる群から選ばれた少なくとも1種を0.01〜
5重量%含むCuを用いる。前記含有量が0.01重量
%未満では効果が認められず、5重量%を超えると加工
性が著しく悪化する。また、Cu基金属材に0.01〜
1重量%のSnを含有せしめると加工性を上げることが
可能となる。
【0062】(iv)Cu基金属材とSn基金属材からな
る複合体の表面に、Ti、In、Ge、Si、Mn、N
iおよびSnよりなる群から選ばれた少なくとも1種の
元素をメッキする。なお、Tiの場合には、その薄板を
前記複合体の板に重ねて使用してもよい。
【0063】(v)Nb基金属材の表面にTi、Ta、
Hf、Mo、ZrおよびVよりなる群から選ばれた少な
くとも1種の元素をメッキする。
【0064】以下、本発明の超電導線の製造法を図面に
基づいて具体的に説明する。なお、実施の形態1〜4は
本件第1の発明の実施の形態、実施の形態5〜12は本
件第2の発明の実施の形態である。
【0065】実施の形態1 図1は、Cu製のビレットに組み込んだ押出し加工前の
複合体の断面構成を示す説明図である。図1において、
1は複合体、2はビレット、13aおよび13bは以下
に記載するNb単芯線、4aはCu基金属材からなる線
(以下、Cu基金属線という)を表わす。
【0066】まず、超電導線の先駆体のNb基金属フィ
ラメントとなるべき2種類のNb単芯線13aおよび1
3bを作製した。すなわち、直径11mmの丸棒状のN
b基金属棒を内径および外径がそれぞれ11.8mm、
16.8mmのCu基金属パイプ中に挿入したあと、伸
線加工を行なって対辺間が4.2mmの六角線とした
(図1における13a)。同様にして直径11mmの丸
棒状のNb基金属棒と内径および外径がそれぞれ11.
8mm、18.4mmのCu基金属パイプとからCuの
肉厚が単芯線13aよりも厚い、単芯線(対辺間が4.
2mmの六角線)13bを得た。
【0067】前記Nb単芯線13a、13bおよび対辺
間が4.2mmの六角のCu基金属線4aとを図1に示
すように中心から外周方向に向かって、Cu基金属線4
aを7層、単芯線13aを2層、単芯線13bを3層、
さらに単芯線13aを5層の構成でビレット内に充填し
た(ただし図1では中心部から外周に向けて1列だけ描
き表わされている)。この構成を選んだ理由は、中央部
に配置されるSn基金属材とCu基金属線とが熱処理に
よって合金化してε相ブロンズ層を生成する際に、ε相
ブロンズ層の境界が中心から第3層目と第4層目のNb
単芯線の間に形成されるので、第3層〜第5層のNb基
金属材フィラメントの直径を前記のようにやや細くして
伸線加工後のフィラメント間隔をやや広げ、熱処理によ
って生成するNb3Snフィラメント相互の接触を防ぐ
ためである。
【0068】こののち、ビレットの押出し加工を行な
い、つづいて押し出された複合体の中央部を穿孔してS
n基金属棒を挿入したのち、伸線加工を行なって複合線
を得た。この複合線をSnの拡散に対する障壁材である
Taパイプ中に挿入し、さらにそのパイプに安定化のた
めのCuパイプをかぶせて2次複合を行なったのち、線
径0.5mmまで伸線加工を行なった。
【0069】前記のようにして作製した超電導線の先駆
体に、予備熱処理を行なったのち熱処理を施し、Nb基
金属フィラメント部分にNb3Snを形成せしめ、Nb
−Sn系超電導線を得た。この熱処理における温度およ
び時間は、熱拡散反応によって超電導体が形成される温
度であることが必要であり、Nb3Snの場合には60
0〜800℃で100〜200時間であった。
【0070】図2は、このようにして作製された熱処理
後の超電導線の断面構造を示す説明図であり、9は熱処
理後の超電導線、10はNb3Snフィラメント、11
は低Sn濃度ブロンズ、7はTaからなる障壁層、8は
Cuからなる安定化層である。
【0071】ε相ブロンズ層の境界領域のNb基金属フ
ィラメントは他の部分のフィラメントに対してやや細い
ので、フィラメント間距離はやや広くなる。
【0072】前記低Sn濃度ブロンズとは、熱処理過程
でいったん生じるブロンズのSn含量(約18〜20重
量%)よりも低含量(約3〜10重量%)のSnを含む
ブロンズのことを指し、熱処理によってSnが拡散し、
Nb3Snが生成される結果、Sn含量が低くなるもの
であって、超電導線の中心からNbフィラメントにいた
る領域がほぼこれに該当する。
【0073】前記のごとくして得られた超電導線のJc
およびdeffの測定を液体ヘリウム中で行なった。その
結果、Jcに関しては、B=12Tの磁界においてJc
=820A/mm2という値が得られた。この値は今ま
での通常の構成の超電導線の特性にくらべ、Nb3Sn
の占積率が少なくなっているため、Jc特性では5%減
少しているものの、deffに関しては9μmと今までの
値(36μm)に対して約1/4の値が得られた。した
がって、総合的な評価としてJc/deff値で両者を比
較すると、本発明により3.8倍の向上が達成されるこ
とがわかる。
【0074】実施の形態2 図3は、Cu製のビレットに組み込んだ押出し加工前の
複合体断面の構成の別の態様を示す説明図である。4b
はCu基金属棒を表わす。
【0075】まず、超電導線の先駆体のNb基金属フィ
ラメントとなる2種類のNb単芯線13cおよび13d
をつぎのように作製した。すなわち、直径11mmの丸
棒状のNb基金属棒を内径および外径がそれぞれ11.
8mmと16.8mmのCu基金属パイプ中に挿入した
あと、線径4.2mmまで伸線加工を行なってCuの肉
厚が薄い単芯線13cを作製した。また同様にして内径
および外径がそれぞれ11.8mmと18.4mmのC
u基金属パイプ中に直径11mmの丸棒状のNb基金属
棒を挿入して伸線加工を行ない、線径4.6mmのCu
の肉厚が厚い単芯線13dを得た。この実施の形態2に
おいては、Cuの厚さを変えた太さの異なる2種類の単
芯線を用いることによって、フィラメント間の接触がと
くに起こりやすいε相の境界領域のフィラメント間隔を
広げた。
【0076】図3に示したように、中心に直径が20m
mのCu基金属棒4b、ついで外周に向かって単芯線1
3cを2層、単芯線13dを3層、そして単芯線13c
を4層の構成でビレット内に詰めた(図3では一部の単
芯線は省略されている)。この構成を選んだ理由は、実
施の形態1の場合と同様である。このようにして丸棒状
の単芯線を組み込んだことによって生じた隙間部分にC
u基金属の細線を挿入した(図3ではCu基金属の細線
が省略されている)あと、押出し加工を行なって複合体
を得た。このあと、押し出された複合体の中央部を穿孔
してSn基金属棒を挿入し、再び伸線加工を行ない、複
合線を得た。該複合線をSnの拡散障壁材であるTaパ
イプ中に挿入し、安定化のためのCuパイプをかぶせて
2次複合を行なったのち、線径0.5mmまで伸線加工
を行なって超電導線の先駆体を得た。
【0077】前記のようにして作製した超電導線の先駆
体について、予備熱処理にひきつづいて600〜750
℃で100〜200時間の熱処理を行ない、Nb−Sn
系超電導線を得た。図4は、このようにして製作した熱
処理後の超電導線の断面構成を示す説明図であって、9
は熱処理後の超電導線、10はNb3Snフィラメン
ト、11は低Sn濃度ブロンズ層、7はTaの障壁層、
8はCuの安定化材である。
【0078】以上のようにして得られた超電導線のJc
およびdeffの測定を液体ヘリウム中で行なったとこ
ろ、JcはB=12Tの磁界においてJc=805A/
mm2という値が、deffに関しては6μmという値が得
られた。したがって、総合的な評価としてJc/deff
値で両者を比較すると、本発明により従来の超電導線よ
り5.6倍の向上が達成されることがわかる。
【0079】実施の形態3 図5は、Cu製のビレットに組み込んだ押出し加工前の
複合体の構成を示した斜視図であり、1は押出し加工前
の複合体、2はCu製のビレット、13は超電導線の先
駆体のフィラメントになるNb基金属棒、4cは円盤状
のCu基金属材を表わす。
【0080】円盤状のCu基金属材4cは以下のように
して作製した。すなわち、直径160mm、厚さ10m
mの無酸素銅の円盤上に直径4.95mmの孔を309
個、NCボール盤を用いて穿孔した。このときの孔は、
内側から外周に向かって第1層目と2層目との間は密
に、2層目から4層目の間は粗に、4層目と5層目との
間は密に配置した。前記円盤状のCu基金属材4cを3
0枚、孔の位置が合うように、外径180mm、内径1
60mmの無酸素銅製のビレット容器中に挿入した。つ
ぎに、直径4.9mmのNb基金属棒13を前記30枚
重ねた銅板の孔に充填し、最後に内部を真空引きして蓋
を溶接することで複合ビレットを製造した。なお、無酸
素銅の円盤へのNb基金属棒の挿入は容易であった。
【0081】前記複合ビレットを押出し加工し、押し出
された複合体の中央部を穿孔してSn基金属棒を挿入し
てから伸線加工を行ない複合線を得た。これをSnの拡
散障壁材であるTaのパイプ中に挿入し、安定化のため
のCuパイプをかぶせて2次複合を行なったのち、線径
0.5mmまで伸線加工を行なった。
【0082】前記のようにして作製した超電導線の先駆
体について、予備熱処理にひきつづいて600〜750
℃で100〜200時間の熱処理を行ない、Nb−Sn
系超電導線を得た。図6はこのようにして作製した熱処
理後の超電導線の断面構成を示す説明図であり、9は熱
処理後の超電導線、10はNb3Snフィラメント、1
1は低Sn濃度ブロンズ、7はTaからなる障壁層、8
はCuからなる安定化層である。
【0083】かくして得られた超電導線のJcおよびd
effの測定を液体ヘリウム中で行なったところ、Jcは
B=12Tの磁界においてJc=930A/mm2とい
う値が、deffに関しても6μmという値が得られた。
したがって、総合的な評価としてJc/deff値で両者
を比較すると、本発明により従来の超電導線より6.5
倍の向上が達成されることがわかる。
【0084】実施の形態4 超電導線に求められる要求スペックとして、Jc特性よ
りもdeff特性の一層の改善が求められる場合がある。
この要求を達成するためには、実施の形態1における態
様の一変形として、熱処理の過程でε相ブロンズ層が生
成した際に、Nb基金属フィラメントが前記ε相ブロン
ズ層境界の外側のみ存在するように、あらかじめ単芯線
を配置する。このようにすることによってNb3Snフ
ィラメント相互の接触、結合を抑制することができ、d
effの値の効果的な低減が可能となる。
【0085】図7は、Cu製のビレットに組み込んだ押
出し加工前の複合体断面の構成を示す説明図であり、1
は押出し加工前の複合体、2はCu製のビレット、13
e、13fは六角形状のNb単芯線、4aは対辺間が
4.2mmの六角形状のCu基金属線である。前記単芯
線13eおよび13fは、実施の形態1に記載した態様
の場合よりもフィラメント間隔を広げるため、13eで
は内径および外径がそれぞれ11.8mm、17.4m
mのCuパイプ中に、13fでは内径および外径がそれ
ぞれ11.8mm、19.3mmのCuパイプ中に直径
が11mmの丸棒状のNb基金属棒を挿入したあと、伸
線加工を行なっていずれも対辺間が4.2mmの六角形
状の単芯線としたものである。
【0086】これらのNb単芯線を図7に示したよう
に、中心から外周に向ってCu基金属線4aを7層、単
芯線13fを3層さらに単芯線13eを7層配置した構
成でビレット内に詰めた。図7では、断面の全面に組み
込まれている単芯線13e、13fおよびCu基金属棒
4aを中心部から外周へかけて1列のみ表示されてい
る。このあと、ビレットの押出し加工を行ない、つづい
て押し出された複合体の中央部を穿孔してTiが1.5
重量%添加された直径が14mmのSn合金を挿入した
あと、伸線加工を行なって複合線を得た。この複合線の
周囲に厚さ約30μmのSnメッキを施したあと、Sn
の拡散障壁材であるTaパイプ中に挿入し、安定化のた
めのCuパイプをかぶせて2次複合を行なってから、線
径0.5mmまで伸線加工を行なった。Snメッキを行
なった理由は、Snを複合体の外周部に分散させること
で中央部分に配置されるSn基金属材の量を減らし、こ
の中央部に配置されたSnがε相ブロンズを生成したと
き、該ε相ブロンズの領域を少しでも小さくするためで
ある。
【0087】このようにして作製した超電導線の先駆体
に予備熱処理につづいて600〜800℃で100〜2
00時間の熱処理を施し、Nb−Sn系超電導線を得
た。この熱処理温度は、熱拡散反応によって超電導体が
形成される温度であり、Nb3Snの場合には600〜
800℃である。図8は、このようにして作製された熱
処理後の超電導線の断面構成を示す説明図であり、9は
熱処理後の超電導線、10はNb3Snフィラメント、
11は低Sn濃度ブロンズ、7はTaからなる障壁層、
8はCuからなる安定化層である。
【0088】得られた前記超電導線について液体ヘリウ
ム中でJcおよびdeffの測定を行なった。
【0089】その結果、Jcに関してはB=12Tの磁
界においてJc=720A/mm2という値が得られ
た。この値は今までの通常の構成の超電導線の特性と比
べて、Nb3Snの占積率が少なくなっているため、J
c特性では16%減少している。しかし、deffに関し
ては4μmと今までの値(36μm)に対して約1/9
の小さい値が得られた。この値は実施の形態1〜3と比
べても優れている。したがって、総合的な評価としてJ
c/deff値で両者を比較すると、本発明により7.5
倍の向上が達成されることがわかる。
【0090】以上の実施の形態1〜4では超電導線とし
て、Cuで代表される安定化層とTaで代表される拡散
障壁層をもっている超電導線について述べたが、安定化
材や拡散障壁材は省略しても差支えない。
【0091】実施の形態5 図9は本件第2の発明の超電導線の先駆体、すなわち延
伸加工によって断面縮小をした熱処理前の超電導線の先
駆体の断面の構成を示す説明図である。図9において、
21は超電導線の先駆体、22はCu基金属材とSn基
金属材との複合体、23はNb基金属フィラメントを表
わす。図10は前記超電導線の先駆体を熱処理して得ら
れた超電導線断面の構成を示す説明図であって、24は
超電導線、25はNb3Snフィラメント、26は熱処
理によってSnが拡散し、Nbと反応した結果低Sn濃
度となったブロンズ層を示す。
【0092】前記Cu基金属材とSn基金属材との複合
体22を、以下の方法で作製した。まず、厚さ2mmの
無酸素銅板10枚の間に、厚さ1mmのSn板9枚を交
互に重ね合わせて圧延し一体化した厚さ15mmの厚板
を、外径180mm、内径160mmの無酸素銅の容器
中に、積層面を縦にして密に充填した。つぎに、内部を
真空引きして蓋を溶接し、該無酸素銅容器を冷間で静水
圧押し出し加工を行ない、直径90mmの棒状の複合体
を作製した。最後に、この棒状の複合体の外周部分の無
酸素銅を、旋盤で外周切削を行って取り除き、直径が8
0mmの円柱状の複合体22を得た。
【0093】前記直径80mmの複合体22を長さ10
0mmに切断し、直径4.1mmの孔を127個穿孔し
た。つぎに、直径4.0mm、長さ100mmのNb基
金属線を前記複合体の孔に挿入し、外径90mm、内径
80mmの無酸素銅の容器中に前記複合体を入れ、内部
を真空引きして蓋を電子ビーム溶接することで複合ビレ
ットを製造した。該複合ビレットを冷間で静水圧押し出
し加工を行なったのち、外周部分の無酸素銅を旋盤で外
周切削を行なって取り除いてから伸線加工を行ない、最
終径でツイスト加工を行なって、線径0.2mmの超電
導線の先駆体を得た。得られた超電導線の先駆体につい
て、予備熱処理にひきつづき600〜800℃で50〜
200時間の熱処理を行ない、Nb基金属フィラメント
部分にNb3Sn超電導体を形成させ超電導線を得た。
【0094】得られた超電導線のJcおよびdeffの測
定を、液体ヘリウム中で行なったところ、JcはB=1
2Tの磁界において550A/mm2という値が、d
effに関しては5μmという値が得られた。従来の内部
拡散法によって得られるNb3Sn超電導線との比較に
おいて、総合的な評価としてJc/deff値で両者を比
較すると、本発明により従来の超電導線より4.4倍の
向上が達成されることがわかる。
【0095】実施の形態6 図11は本件第2の発明の超電導線の先駆体のNb基金
属フィラメントとなる複合単芯線の構成の一実施の形態
を示す説明図である。図11において、23bはTiを
1重量%有するNb基金属棒、28はCu基金属、29
はCu基金属材表面のメッキを示す。前記複合単芯線は
つぎのように製作した。すなわち、Tiを1重量%添加
した直径11mmのNb基金属棒を、内径および外径が
それぞそれ11.8mm、18.4mmのCuパイプ中
に挿入したのち、伸線加工を行なって対辺が4.2mm
の六角形状の単芯線とした。該単芯線の表面にSnメッ
キ7を約100μmの厚さに施して、図11に示したよ
うな複合単芯線を得た。
【0096】前記のごとく作製した複合単芯線1225
本を、外径180mm、内径160mmの無酸素銅製の
ビレット内に充填し、真空排気と蓋の電子ビーム溶接を
行なって複合ビレットとした。つぎに、該複合ビレット
を冷間で静水圧押し出し加工を行なったのち、伸線加工
を行ない、複合体を得た。得られた複合体をSnの拡散
障壁材であるTaパイプ中に挿入し、安定化のためのC
uパイプをかぶせて2次複合化し、伸線加工を行ない、
最終径でツイスト加工を施して、線径0.3mmの超電
導線の先駆体を得た。
【0097】図12は得られた超電導線の先駆体の断面
の構成を示す説明図である。図12において、21は超
電導線の先駆体、23bはTiを1重量%有するNb基
金属フィラメント、30はTa障壁層、31は安定化の
ためのCu層、32はCu基金属材、33はCu基金属
材表面のSnメッキを示す。
【0098】得られた超電導線の先駆体について、予備
熱処理にひきつづき600〜800℃で50〜200時
間の熱処理を行ない、Nb基金属フィラメント部分にN
3Snを形成させて超電導線を得た。図13は得られ
た超電導線断面の構成を示す説明図であって、図中24
は超電導線、25はNb3Snフィラメント、26は低
Sn濃度ブロンズ、30はTaからなる障壁層、31は
安定化のためのCu層を示す。
【0099】かくして得られた超電導線のJcおよびd
effの測定を液体ヘリウム中で行なった。その結果、J
cに関してはB=12Tの磁界において850A/mm
2という値が、deffに関しては3μmという値が得られ
た。従来の内部拡散法によって得られる、Tiを含有す
るNb3Sn超電導線との比較において、総合的な評価
としてJc/deff値で両者を比較すると、本発明によ
り従来の超電導線より7.1倍の向上が達成されること
がわかる。
【0100】実施の形態7 図14は、本件第2の発明の超電導線の先駆体の製造に
用いられる断面縮小加工前の複合単芯線の構成の一例を
示す説明図である。図14において32はCu基金属
材、23aはNb基金属棒、34はInを7重量%含有
するSn基金属棒を示す。前記複合単芯線はつぎのよう
に作製した。
【0101】すなわち、まず図14に示すごとく直径が
3.5mmの穴を8個設けた外径25mm、内径14m
mの無酸素銅製のビレット容器の中央に直径13.9m
mのNb基金属棒を挿入し、7重量%のInを含む直径
が3.4mmのSn基金属棒8本を周辺の各穴に挿入し
た。前記ビレット容器の内部を真空引きして蓋を電子ビ
ーム溶接してから冷間で静水圧押し出し加工を行なった
のち、伸線加工を行ない、対辺が4.2mmの六角形状
の複合単芯線を得た。
【0102】前記複合単芯線1225本を実施の形態6
と同様のCu製のビレット内に充填後、内部を真空引き
し、蓋を電子ビーム溶接した。この複合ビレットを冷間
で静水圧押し出し加工を行なったのち伸線加工を行な
い、複合線を得た。つぎに、該複合線をSnの拡散障壁
材であるTaパイプ中に挿入し、さらに安定化のための
Cuパイプをかぶせて2次複合化し、伸線加工を行なっ
た。そののち、この線材を最終径でツイスト加工を行な
って、線径0.3mmの超電導線の先駆体を得た。
【0103】図15は前記超電導線の先駆体の断面の構
成を示す説明図である。図中21は超電導線の先駆体、
23aはNb基金属フィラメント、30はTa障壁層、
31は安定化のためのCu層、32はCu基金属材、3
4はInを7重量%含有するSn基金属材を示す。
【0104】得られた超電導線の先駆体について、予備
熱処理にひきつづき600〜800℃で50〜20時間
の熱処理を行ない、Nb基金属フィラメント部分にNb
3Sn超電導体を形成させ超電導線を得た。得られた超
電導線の断面形状は、図13と同様であった。
【0105】得られた超電導線のJcおよびdeffの測
定を液体ヘリウム中で行なった。その結果、Jcに関し
てはB=12Tの磁界において633A/mm2という
値が、deffに関しては3μmという値が得られた。従
来の内部拡散法によって得られる、Inを含有するNb
3Sn超電導線との比較において、総合的な評価として
Jc/deff値で両者を比較すると、本発明により従来
の超電導線より7.0倍の向上が達成されることがわか
る。
【0106】実施の形態8 図16は、本件第2の発明の超電導線の製造に用いられ
る、断面縮小加工前の複合単芯線の構成を示す説明図で
あって、22bはTiを1重量%含有するCuとSnと
の複合体、23aはNb基金属棒を示す。
【0107】複合体22bは、Tiを1重量%含有する
厚さ1mmのCu板2枚の間に、厚さ1mmのSn板を
重ねて圧延し、一体化して厚さ1mmの薄板にしたもの
である。この薄板状の複合体22bを縦×横が140m
m×1000mmの大きさに切断して、直径が10m
m、長さが1000mmの丸棒状のNb基金属棒の周囲
に簀巻き状に巻いたのち、内径および外径がそれぞれ1
8mmおよび19mmの無酸素銅のパイプ35中に挿入
した。つぎに、前記パイプ35を伸線加工して対辺が
4.2mmの六角形状の複合単芯線を得た。
【0108】前記複合単芯線1225本を外径180m
m、内径160mmの無酸素銅製のビレット内に充填し
たのち、ビレット内を真空排気し、蓋を電子ビーム溶接
した。つぎにこのビレットを冷間で静水圧押し出し加工
を行なったのち、伸線加工を行ない、複合線を得た。該
複合線をSnの拡散障壁材であるTaパイプ中に挿入
し、安定化のためのCuパイプをかぶせて2次複合化
し、伸線加工を行なった。これを最終径でツイスト加工
を行ない、線径0.3mmの超電導線の先駆体を得た。
【0109】図17は前記超電導線の先駆体の断面の構
成を示す説明図であり、図中22bはTiを1重量%含
有するCuとSnとの複合体、23aはNb基金属フィ
ラメント、30はTa障壁層、31は安定化材としての
Cu、32はCu基金属材を示す。
【0110】得られた超電導線の先駆体について、予備
熱処理にひきつづき600〜800℃で50〜200時
間の熱処理を行ない、Nb基金属フィラメント部分にN
3Sn超電導体を形成させて超電導線を得た。該超電
導線の断面形状は、図13と同様であった。
【0111】得られた超電導線のJcおよびdeffの測
定を液体ヘリウム中で行なった。その結果、Jcに関し
てはB=12Tの磁界において900A/mm2という
値が、deffに関しては3μmという値が得られた。し
たがって、従来の内部拡散法Tiを含有するによって得
られる、Nb3Sn超電導線との比較において、総合的
な評価としてJc/deff値で両者を比較すると、本発
明により従来の超電導線より7.5倍の向上が達成され
ることがわかる。
【0112】実施の形態9 図18は、本件第2の発明の超電導線の製造に用いられ
る、断面縮小加工前の複合単芯線の構成を示す説明図で
ある。図18において22cは表面がSnメッキされた
Cu基金属材からなる複合体、23cは表面がTiメッ
キされたNb基金属棒、35は無酸素銅パイプを示す。
【0113】まず、超電導線のフィラメントになる直径
10mmのNb基金属棒の表面に、電解メッキによりT
iを約45μm電着させた。つぎに、幅約200mm、
厚さ0.5mmの無酸素銅板の表面にSnメッキを約
0.1mm施してCu−Sn複合体22cを得た。該複
合体を、TiメッキされたNb基金属棒23cを芯金に
して、約5層簀巻き状に巻き、内径および外径がそれぞ
れ18×19mmの無酸素銅のパイプ中に挿入したの
ち、伸線加工して対辺が4.2mmの六角形状の複合単
芯線を得た。
【0114】得られた複合単芯線1225本を実施の形
態6と同様のCu製のビレット内に充填し真空排気と蓋
の電子ビーム溶接とを行ない、冷間で静水圧押し出し加
工を行ない、伸線加工し、複合線を得た。該複合線をさ
らに伸線加工し、最終径でツイスト加工を行なって、線
径0.3mmの超電導線の先駆体を得た。
【0115】図19は前記超電導線の先駆体の断面の構
成を示す説明図である。図19において22cは表面が
SnメッキされたCu複合体、23cは表面がTiメッ
キされたNb基金属材フィラメント、31は安定化材と
してのCu、32はCu基金属材を示す。
【0116】得られた超電導線の先駆体について、予備
熱処理にひきつづき600〜800℃で50〜200時
間の熱処理を行ない、Nb基金属フィラメント部分にN
3Sn超電導体を形成させて超電導線を得た。前記超
電導線の断面形状は、図13と同様であった。
【0117】得られた超電導線を液体ヘリウム中でJc
およびdeffの測定を行なった。その結果、Jcに関し
てはB=12Tの磁界において900A/mm2という
値が、deffに関しては3μmという値が得られた。し
たがって、従来の内部拡散法によって得られる、Tiを
含有するNb3Sn超電導線との比較において、総合的
な評価としてJc/deff値で両者を比較すると、本発
明により従来の超電導線より7.5倍の向上が達成され
ることがわかる。
【0118】実施の形態10 図20は、本件第2の発明の超電導線の製造に用いられ
る、断面縮小加工前の複合単芯線の断面構成を示す説明
図である。図中、22cは両表面がSnメッキされたC
u基金属材からなるCu−Sn複合体、23aはNb基
金属棒、35はCu基金属パイプ、36はCu−Sn複
合体22cとNb基金属棒23aとのあいだに挟まれた
Ti薄板を示す。
【0119】まず、超電導線のフィラメントになる単芯
線1をつぎのように製作した。実施の形態9と同様に、
幅約200mm、厚さ0.5mmの無酸素銅板の表面に
Snメッキを約0.1mm施してCu−Sn複合体22
aを得た。該複合体22aに厚さ0.05mm、幅約3
0mmの純Ti薄板36を重ね、直径10mmの丸棒状
のNb基金属棒23aを芯金にして、約5層簀巻き状に
巻いた。ただしTi薄膜は幅が約30mmしかないの
で、丸棒状のNb基金属棒の周囲を1層しか巻けなかっ
た。
【0120】これを内径および外径がそれぞそれ18×
19mmの無酸素銅のパイプ35中に挿入したのち、伸
線加工して対辺が4.2mmの六角形状の複合単芯線を
得た。
【0121】前記複合単芯線1225本を実施の形態6
と同様なCu製のビレット内に充填して、真空排気と蓋
の電子ビーム溶接を行ない、冷間で静水圧押し出し加工
を行なったのち、伸線加工してからSnの拡散障壁材で
あるTaパイプ中に挿入し、安定化のためのCuパイプ
をかぶせて2次複合化を行なった。得られた2次複合材
を伸線加工し、最終径でツイスト加工を行なって、線径
0.3mmの超電導線の先駆体を得た。
【0122】前記超電導線の先駆体について、予備熱処
理にひきつづき600〜800℃で50〜200時間の
熱処理を行ない、Nb基金属フィラメント部分にNb3
Sn超電導体を形成させ超電導線を得た。超電導線の断
面形状は、図13と同様であった。
【0123】得られた超電導線のJcおよびdeffの測
定を液体ヘリウム中で行なった。その結果、Jcに関し
てはB=12Tの磁界において900A/mm2という
値が、deffに関しては3μmという値が得られた。T
i添加した従来の内部拡散法Nb3Sn超電導線との比
較において、総合的な評価としてJc/deff値で両者
を比較すると、本発明により従来の超電導線よりも7.
5倍の向上が達成されることがわかる。
【0124】実施の形態11 図21は、本件第2の発明の超電導線の製造に用いられ
る、断面縮小加工前の複合単芯線の構成を示す説明図で
ある。図中、22dは表面が純TiでメッキされたCu
−Sn複合体、23aはNb基金属棒、35はCu基金
属材パイプである。
【0125】まず、実施の形態8と同様に、厚さ1mm
のCu板2枚の間に、厚さ1mmのSn板を重ねて圧延
し、一体化して厚さ1mmの薄板を製作し、その薄板を
縦×横が140mm×1000mmの大きさに切断した
のち、薄板の片側に約10μmのTiメッキを施し複合
体22dを得た。該複合体22dを、直径が10mm、
長さが1000mmの丸棒状のNb基金属材棒23aの
周りに簀巻き状に巻いたのち、内径および外径がそれぞ
れ18mmおよび19mmの無酸素銅のパイプ35中に
挿入し、伸線加工を行なって対辺が4.2mmの六角の
複合単芯線を得た。
【0126】得られた複合単芯線1225本を実施の形
態6と同様なCu製のビレット内に充填してから真空引
きし、蓋の電子ビーム溶接を行なったのち冷間で静水圧
押し出し加工を行ない、伸線加工をして複合線を得た。
該複合線をSnの拡散障壁材であるTaパイプ中に挿入
し、安定化のためのCuパイプをかぶせて2次複合を行
なったのち、最終径でツイスト加工を行なって、線径
0.3mmの超電導線の先駆体を得た。該超電導線の先
駆体の断面の構成は図17と同様であった。
【0127】得られた超電導線の先駆体について、予備
熱処理にひきつづき600〜800℃で50〜200時
間の熱処理を行ない、Nb基金属フィラメント部分にN
3Sn超電導体を形成させ超電導線を得た。超電導線
の断面形状は、図13と同様であった。
【0128】かくして得られた超電導線のJcおよびd
effの測定を液体ヘリウム中で行なった。その結果、J
cに関してはB=12Tの磁界において910A/mm
2という値が、deffに関しては3μmという値が得られ
た。したがって、従来の内部拡散法によって得られる、
Tiを含有するNb3Sn超電導線との比較において、
総合的な評価としてJc/deff値で両者を比較する
と、本発明により従来の超電導線よりも7.6倍の向上
が達成されることがわかる。
【0129】実施の形態12超電導線に求められる要求
スペックとして、deff特性よりもJc特性の一層の改
善が求められる場合がある。この要求を達成するため、
熱処理後に多少のNb3Snフィラメント同士の結合が
発生し、deff特性の増大は起こるものの、フィラメン
ト間隔を今までの実施の形態よりも密に配置すること
で、Jc特性の向上が可能になる。
【0130】図22は、本件第2の発明の超電導線の製
造に用いられる、断面縮小加工前の複合単芯線の構成を
示す説明図である。図中、22aはCuとSnとの複合
体、23dはTaを1重量%含有するNb基金属棒、3
6はTiを3重量%含有するCu基合金パイプである。
【0131】まず、実施の形態8と同様に、厚さ1mm
のCu板2枚の間に、厚さ1.5mmのSn板を重ねて
圧延し、一体化して厚さ1mmの薄板を製作した。この
薄板を縦×横が150mm×1000mmの大きさに切
断して、Taを1重量%含有する、直径が12.7m
m、長さが1000mmの丸棒状のNb基金属丸棒23
dの周りに簀巻き状に巻いたのち、Tiを3重量%含有
する内径および外径がそれぞれ19mmおよび20mm
のCuパイプ36中に挿入し、伸線加工を行なって対辺
が4.2mmの六角の複合単芯線を得た。
【0132】このようにして製作した複合単芯線122
5本を実施の形態6と同様なCu製のビレット内に充填
して内部を真空引きし、蓋の電子ビーム溶接を行なって
複合ビレットとした。該複合ビレットを冷間で静水圧押
し出し加工を行ない、伸線加工して複合線を得た。この
複合線をSnの拡散障壁材であるTaパイプ中に挿入
し、安定化のためのCuパイプをかぶせて2次複合を行
なったのち、最終径でツイスト加工を行なって、線径
0.3mmの超電導線の先駆体を得た。超電導線の先駆
体の断面の構成は図11と同様であった。得られた超電
導線の先駆体について、600〜800℃で50〜20
0時間の熱処理を行ない、Nb基金属フィラメント部分
にNb3Sn超電導体を形成させ超電導線を得た。熱処
理後の超電導線の断面形状は、図13と同様であった。
【0133】得られた超電導線のJcおよびdeffの測
定を液体ヘリウム中で行なった。その結果、Jcに関し
てはB=12Tの磁界において1250A/mm2とい
う値が、n値に関しては56という値が得られた。した
がって、従来の内部拡散法によって得られたTiを含有
するNb3Sn超電導線と比較すると、本発明によりJ
cで約40%、n値で約2倍の向上が達成されることが
わかる。
【0134】以上、実施の形態5〜12に述べたよう
に、分散Sn拡散法により従来の内部拡散法に比べて、
総合的なJc/deff値において、超電導特性が約5〜
7倍に向上したが、その中でも実施の形態8以降に述べ
たCuとSnとの複合体を丸棒状のNbフィラメントに
簀巻き状に巻いた構成の超電導線では、Jc、deff
超電導性の特性を示す指標の一つであるn値などの向上
がいちじるしく、また線材の加工性もとくに優れてい
た。その理由はCuとSnの複合体を簀巻き状に巻くた
め、Snの分散が向上し、そのためフィラメントに生成
されるNb3Snの組成ずれが抑えられ、特性向上につ
ながったものと考えられる。
【0135】なお、実施の形態5〜12では、超電導線
として、Cuで代表される安定化材とTaで代表される
拡散障壁材を有する超電導線について述べたが、実施の
形態5〜12の超電導線は安定化材として高純度Al、
拡散障壁材としてNbやVが採用された場合においても
有効である。また前記拡散障壁材や安定化材の使用を省
略することもできる。
【0136】さらに、実施の形態5〜12では、複合線
を単体で二次複合化した例を述べたが、大電流容量化す
るためには、得られた複合線を多数本Cuチューブ中に
充填して二次複合化し、断面減少加工すればよい。
【0137】なお、はじめにも記載したとおり、本明細
書に記載したNbをVにSnをGaに置き換えても全く
同様の結果が得られる。
【0138】
【発明の効果】本発明の化合物系超電導線の製造方法に
おいては、SnまたはGaとCuとの複合材を個々のN
bまたはV基金属フィラメントの周囲に配置する分散配
置にすることでフィラメント間隔を内部拡散法よりも約
30%広げることができ、そのため、熱処理後の超電導
線においてNb3Snフィラメントが相互に接触し結合
する確率が格段に減り、有効フィラメント径の値を大幅
に減少させることができる。その結果、パルス電流の通
電時に発生するヒステリシス損失が大幅に減少し、超電
導コイルの安定性が向上する効果がある。また、Snの
拡散距離が短くてすむため、個々のフィラメントに生成
されるNb3Snの組成が均一になり、Jcおよびn値
が向上する効果がある。さらに、Sn拡散の予備熱処理
時間が短くてすむため、コストの低減が優れるという効
果も併せもつ。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本件第1の発明の超電導線の一実施の形態の
押出し加工前の複合体の断面構成を示す説明図である。
【図2】 本件第1の発明の超電導線の一実施の形態の
断面構成を示す説明図である。
【図3】 本件第1の発明の超電導線の一実施の形態の
押出し加工前の複合体の断面構成を示す説明図である。
【図4】 本件第1の発明の超電導線の一実施の形態の
断面構成を示す説明図である。
【図5】 本件第1の発明の超電導線の一実施の形態の
押出し加工前の複合体の斜視図である。
【図6】 本件第1の発明の超電導線の一実施の形態の
断面構成を示す説明図である。
【図7】 本件第1の発明の超電導線の一実施の形態の
押出し加工前の複合体の断面構成を示す説明図である。
【図8】 本件第1の発明の超電導線の一実施の形態の
断面構成を示す説明図である。
【図9】 本件第2の発明の超電導線の先駆体の一実施
の形態の断面を示す説明図である。
【図10】 本件第2の発明の化合物系超電導線の一実
施の形態の断面を示す説明図である。
【図11】 本件第2の発明の超電導線の先駆体の製造
に用いられる複合単芯線の一実施の形態を示す説明図で
ある。
【図12】 本件第2の発明の超電導線の先駆体の他の
実施の形態の断面を示す説明図である。
【図13】 本件第2の発明の化合物系超電導線の他の
実施の形態の断面を示す説明図である。
【図14】 本件第2の発明の超電導線の先駆体の製造
に用いられる複合単芯線の他の実施の形態の断面を示す
説明図である。
【図15】 本件第2の発明の超電導線の先駆体の他の
実施の形態の断面を示す説明図である。
【図16】 本件第2の発明の超電導線の先駆体の製造
に用いられる複合単芯線の他の実施の形態を示す説明図
である。
【図17】 本件第2の発明の超電導線の先駆体の他の
実施の形態の断面を示す説明図である。
【図18】 本件第2の発明の超電導線の先駆体の製造
に用いられる複合単芯線の他の実施の形態を示す説明図
である。
【図19】 本件第2の発明の超電導線の先駆体の他の
一実施の形態の断面を示す説明図である。
【図20】 本件第2の発明の超電導線の先駆体の製造
に用いられる複合単芯線の他の実施の形態の断面を示す
説明図である。
【図21】 本件第2の発明の超電導線の先駆体の製造
に用いられる複合単芯線の他の実施の形態を示す説明図
である。
【図22】 本件第2の発明の超電導線の先駆体の製造
に用いられる複合単芯線の他の実施の形態を示す説明図
である。
【図23】 従来の超電導線の先駆体の断面を示す断面
説明図である。
【図24】 従来の超電導線の断面を示す説明図であ
る。
【符号の説明】
1 複合体、9 超電導線、10 Nb3Snフィラメ
ント、11 低Sn濃度ブロンズ、13a Cuが肉薄
の単芯線、13b Cuが肉厚の単芯線、21 超電導
線の先駆体、22 Cu基金属材とSn基金属材との複
合体、23 Nb基金属フィラメント。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI C22F 1/00 691 C22F 1/00 691C (72)発明者 永井 貴之 東京都千代田区丸の内二丁目2番3号 三菱電機株式会社内 (72)発明者 内川 英興 東京都千代田区丸の内二丁目2番3号 三菱電機株式会社内 (56)参考文献 特開 平2−148620(JP,A) 特開 平2−66813(JP,A) 特開 平2−177217(JP,A) 特開 昭63−213213(JP,A) 特開 昭61−16141(JP,A) 米国特許3905839(US,A) 国際公開91/4583(WO,A1) 第49回1993年度春季低温工学・超電導 学会講演概要集,内部拡散法Nb3Sn 線の有効フィラメント径の低減,(久保 芳生 他),187 (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H01B 13/00 563 H01B 12/10 ZAA C22F 1/00

Claims (6)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 (A1)Cu基金属材と、該Cu基金属
    材と合金層を形成する第1の基金属材Xとの積層板を先
    ず圧延し、減厚して一体化し、これを第2の基金属材Z
    の棒に巻回して得た複合単芯線をCu製円筒容器内に複
    数充填して複合棒をつくる工程と、(B)前記複合棒を
    伸線加工して超電導線の先駆体とする工程と、(C)前
    記超電導線の先駆体を熱処理する工程とを備えた超電導
    線の製造方法。
  2. 【請求項2】 (A2)Cu基金属材と該Cu基金属と
    合金層を形成する第1の基金属材Xとの積層板を先ず圧
    延し、減厚して一体化した複合体をCu製円筒容器内に
    充填し、該複合体に複数の穿孔を設け、各孔に第2の基
    金属材Zを充填して複合棒をつくる工程と、(B)前記
    複合棒を伸線加工して超電導線の先駆体とする工程と、
    (C)前記超電導線の先駆体を熱処理する工程とを備え
    た超電導線の製造方法。
  3. 【請求項3】 (A3)円柱状Cu基金属材の中心に第
    1の穿孔を設け、該第1の穿孔の周囲に複数の第2の穿
    孔を設け、前記第2の穿孔にCu基金属と合金を形成す
    る第1の基金属材Xを充填し、前記第1の穿孔に第2の
    基金属材Zを充填して複合単芯線を形成し、該複合単芯
    線をCu製円筒容器内に複数充填して複合棒を形成する
    工程と、(B)前記複合棒を伸線加工して超電導線の先
    駆体とする工程と、(C)前記超電導線の先駆体を熱処
    理する工程とを備えた超電導線の製造方法。
  4. 【請求項4】 前記第2の基金属材ZがTi、Ta、H
    f、Mo、ZrおよびVよりなる群から選ばれた少なく
    とも1種を含有してなる請求項1、2または3記載の超
    電導線の製造方法。
  5. 【請求項5】 前記第1の基金属材XがTi、In、G
    e、SiおよびMnよりなる群から選ばれた少なくとも
    1種を含有してなる請求項1、2または3記載の超電導
    線の製造方法。
  6. 【請求項6】 前記Cu基金属材がTi、In、Ge、
    SiおよびMnからなる群から選ばれた少なくとも1種
    を含有してなる請求項1、2または3記載の超電導線の
    製造方法。
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