JP3271654B2 - 極薄けい素鋼板の製造方法及び極薄けい素鋼板 - Google Patents

極薄けい素鋼板の製造方法及び極薄けい素鋼板

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JP3271654B2 JP26089796A JP26089796A JP3271654B2 JP 3271654 B2 JP3271654 B2 JP 3271654B2 JP 26089796 A JP26089796 A JP 26089796A JP 26089796 A JP26089796 A JP 26089796A JP 3271654 B2 JP3271654 B2 JP 3271654B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、磁気特性にすぐれ
た極薄けい素鋼板の製造方法及び磁気特性に優れた極薄
けい素鋼板に関するものである。
【0002】
【従来の技術】変電器の鉄芯などに用いられる方向性け
い素鋼板は、特公昭46−23820号公報等に示され
るように、従来、2次再結晶のために、AlNやMnS
などの析出物をインヒビタとして利用して製造されてい
る。しかしながらこのような方向性けい素鋼板は、Al
NやMnSなどの多量のインヒビタの固溶のための高温
のスラブ加熱工程、最終焼鈍までの脱炭焼鈍工程および
2次再結晶を完全に完了させ、磁気特性に影響をあたえ
る不純物を純化するための高温長時間焼鈍工程を必須と
しており、経済的な観点から問題を有していた。
【0003】また、このような材料に要求される磁気特
性のなかでも特に重要視される鉄損値は、板厚が薄くな
るほど向上すると考えられているものの、従来のけい素
鋼板では、インヒビタの問題で0.2mm 以下の極薄材の製
造が困難であるとされてきた。
【0004】このような問題に対して、特開昭62ー8
3421号公報および特開平1ー212721号公報に
示されるように、極低炭素系であることを前提として、
これにAlを微量に添加した組成とすることによって問
題を回避する手法が考案されている。また特開平5ー1
86829号公報に代表されるような表面エネルギーを
用いた極薄方向性けい素鋼板の製造方法が提案されてい
る。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、特開昭
62ー83421号公報および特開平1ー212721
号公報に記載されている方法によれば、高温のスラブ加
熱や高温長時間の焼鈍プロセスを省略でき経済的効果が
得られるものの、0.2mm 以下の板厚では品質のバラツキ
が大きく工業的に安定した2次再結晶挙動を得ることが
できないという問題があった。
【0006】また、特開平5ー186829号公報の方
法は、インヒビタを用いないため、本発明が対象とする
極薄鋼板の製造に原理的に有利な手法であるが、微量の
不純物、雰囲気の微妙な変化などによって結晶粒成長が
左右されその結果として安定性に欠けるという問題を抱
えていた。
【0007】本発明者等は、こうした問題点を克服し、
脱炭焼鈍および高温長時間の焼鈍を施さずに、0.2mm 以
下の板厚で{110 }<001> 面方位の結晶粒(以下Goss粒
と呼ぶ)が安定的に2次再結晶し、これによって従来で
は困難であると考えられていた磁気特性に優れた極薄け
い素鋼板が製造可能となるような方法および磁気特性に
優れた極薄けい素鋼板を発明し、特願平8ー08964
6号等として先に特許出願した。
【0008】この方法は、熱延板に冷間圧延と中間焼鈍
を組み合わせて板厚0.2mm 以下の極薄冷間圧延材を製造
し、再結晶と微量のAlN・MnSの析出物の形態の調
整とGoss粒を発現・進展させるための1段又は2段の焼
鈍と、表面エネルギーを働かせて食い残されたGoss粒以
外の結晶粒を蚕食させる焼鈍を施すものである。この方
法により、磁束密度B8 が1.85Tを超える極薄けい素鋼
板を得ることができた。
【0009】しかしながら、省エネルギー化といった見
地から、さらに良好な磁気特性、即ち高磁束密度の製品
を製造することが望まれている。
【0010】本発明は、このような要望に応えるために
なされたもので、前記特願平8ー089646号に係る
発明に改良を加えて、磁束密度が更に高い極薄けい素鋼
板を製造する方法、及び極薄けい素鋼板を提供すること
を目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】前記課題を解決するため
の第1の手段は、(a) 重量%で、C:0.01%以下、S
i:2.5 %以上7%以下、Mn:0.005 %以上0.12%以
下、P:0.02%以下、S:0.002 %以上0.005 %以下、
sol.Al:0.0015%以上0.006 %以下、N:0.001 %以
上0.008 %以下を含み、不純物としてのTi+Nbが0.
003 %以下である熱延鋼板を準備する工程、(b) 前記熱
延鋼板に、焼鈍温度T(℃)、保持時間t(分)、昇温
速度R(℃/分)が下記の(1) 式を満たす条件で焼鈍を
施す工程、 830+1000/R≦T+4.2t+3000/R ≦1040-1000/R … (1) (但し、T≧500 ) (c) 前記熱延鋼板を脱スケール後、加熱・冷却速度が0.
1 ℃/sec 以上、保持時間が0.5 分以上10分以内である
中間焼鈍を含む2回又は3回の冷間圧延により板厚0.20
mm以下の冷間圧延鋼板とする工程、(d) 前記冷間圧延鋼
板を、窒素50vol.%以上含む還元性雰囲気において、1
℃/sec以上の昇温速度で700 ℃以上1000℃以下の所定温
度まで加熱し、当該温度に30秒以上保持する1段目の焼
鈍工程、(e) 引き続き前記冷間圧延鋼板を、窒素50vol.
%以上含む還元性雰囲気において、700 ℃以上1000℃以
下の所定温度に3時間以上保持する2段目の焼鈍工程、
(f) さらに、窒素を含まない還元性雰囲気もしくは酸素
分圧が0.5Pa 以下で実質的に窒素を含まない非酸化性雰
囲気または酸素分圧が0.5Pa 以下の真空中において、90
0 ℃以上1300℃以下の範囲の所定温度で30秒以上の保持
を行う3段目の焼鈍工程を含む極薄けい素鋼板の製造方
法である。
【0012】前記課題を解決するための第2の手段は、
前記第1の手段の製法によって製造される極薄けい素鋼
板である。
【0013】(発明に至る経緯)本発明者らは、前記目
的の達成のために詳細な実験、検討を行った結果、熱延
板に焼鈍を施すことにより極薄けい素鋼板の高磁束密度
化が達成できることを見出し、以下のような知見を得
た。
【0014】(1) 0.2mm 以下の板厚を有する極薄鋼板で
は、AlN・MnSをインヒビタとして2次結晶をさせ
る場合、Goss方位以外の方位を持った結晶粒の粒成長を
充分抑制しておくことが極めて重要であるために、イン
ヒビタを有効な量、適正な形態に制御する必要がある。
特に、熱延板中の析出物の形態を制御することは、最終
焼鈍時の初期の析出物の状態を制御することにつながる
ので極めて重要である。しかしながら、熱間圧延後の熱
延板中のインヒビタの析出状況は熱延状態により異な
り、熱間圧延により組織の適切な制御を行おうとする
と、必ずしもインヒビタは十分に微細析出しないため、
高い磁気特性を有する極薄方向性けい素鋼板を製造する
ことは困難である。このような考えに基づいて、析出物
状態を変化させるために種々の熱延板焼鈍を施したとこ
ろ、その条件により2次再結晶挙動がそれぞれ異なるこ
とが分かった。
【0015】(2) そこで、さらに熱延板焼鈍について詳
細な検討を加えたところ、焼鈍温度、保持時間、昇温速
度及びこれらの関係を適正に保つことにより、高い磁気
特性を有する極薄けい素鋼板を製造できることを見出
し、本発明を完成させた。
【0016】(化学成分の限定理由)まず、本発明にお
いて、熱延鋼板の化学成分を限定した理由について説明
する。
【0017】C:インヒビタ法では、Cによる組織およ
び集合組織制御を行なうが、前述した本発明ではそうし
たことを行わないため、積極的なCの添加を行う必要は
ない。むしろ、Cは0.01wt%をこえると磁気特性や加工
性を著しく低下させる。このため、Cは0.01wt%以下、
好ましくは0.005wt %以下とする。
【0018】Si:Siは、磁気特性や相変態を通じた
組織および集合組織制御を行うために極めて重要であ
る。Siが2.5wt %を下回ると、最終焼鈍の3段目の焼
鈍において、高温における相変態にともなう組織および
集合組織の変化が著しく、所定の特性を有する鋼板を製
造することが困難となる。また、Siが7wt%よりも高
い場合には加工性が著しく低下する。従って、Siは2.
5wt %以上7wt %以下とする。ただし加工性の点からS
iのより好ましい範囲を述べると4wt%以下である。
【0019】Mn:Mnは、MnSの形成のために極め
て重要である。このMnSはAlNインヒビタの析出の
核となり、またAlNの固溶を遅らせる働きを有する。
ただし、0.12wt%を越えて過剰に含まれる場合は、その
完全固溶のために1250℃以上の著しい高温でのスラブ加
熱が必要となる。一方、0.005wt %未満では、このよう
な働きは認められず、2次再結晶が不完全となる。この
ため、Mnは0.005wt%以上0.12wt%以下である必要が
ある。
【0020】P:Pは粒成長速度および、加工性を低下
させるために有害である。このため、0.02wt%以下とす
る。
【0021】S:Sは、MnSの形成のためにMnと同
様に極めて重要である。このためには、Sは0.002wt %
以上含有されなければならない。一方、0.005wt %を越
えて含有された場合には、著しく粒成長速度を低下させ
るため、3段目の焼鈍において所定の時間内で2次再結
晶を完了させることが困難となる。従って、Sは0.002w
t %以上0.005wt %以下とする。
【0022】sol.Al:sol.Alは、インヒビタとなる
AlN形成のために極めて重要である。sol.Alが、0.
0015wt%未満の場合は、高磁気特性の極薄けい素鋼板を
製造するのに必要なインヒビタとしてのAlNが不足し
マトリックス粒の粗大化が生じてしまうために、2次再
結晶が困難となる。一方0.006wt %をこえると、焼鈍中
の吸窒のためにインヒビタとしてのAlNが多くなりす
ぎるうえに、不適当な分布となり、その結果として、2
次再結晶が生じないか又は部分的に2次再結晶粒が形成
されるものの極めて低い被覆率となる。さらに、このよ
うなAlは、高温での粒成長性を著しく低下させるた
め、3段目の焼鈍において所定の時間内で2次再結晶を
完了させることが困難となる。従って、鋼中のsol.Al
は0.0015wt%以上0.006wt %以下とする。
【0023】N:NもインヒビタとなるAlN形成のた
めに極めて重要である。Nが0.001wt %未満では、吸窒
が始まるまでの、インヒビタとしてのAlN量が少なす
ぎるためにマトリックス粒の粗大化し、その結果2次再
結晶が困難となる。一方、0.008wt %をこえるとスラブ
加熱中に析出したAlNが、熱間圧延の再加熱時にも一
部未固溶のまま残留する。これらは熱延中に粗大化し、
その結果、AlNの分布形態が変化し、2次再結晶が生
じにくくなる。このため、Nは0.001wt %以上0.008wt
%以下とすることが必要である。
【0024】Ti、Nb:鋼中に不純物として含まれる
Ti、Nbは、極めて安定な窒化物を形成するため、A
lNによる2次再結晶挙動を阻害する。このような影響
を避けるために、Ti+Nb量を0.003wt %以下とす
る。
【0025】(製造方法)続いて製造方法について述べ
る。
【0026】(1) 熱延板焼鈍 熱延板焼鈍の条件が本発明を特徴づけるものであり、熱
延板中のインヒビタを十分に微細析出させるために必要
であり、焼鈍温度、保持時間、昇温速度及びこれらの関
係を制御することが重要である。
【0027】焼鈍温度が低いと、インヒビタが析出しな
いために熱延板焼鈍の効果が現れず、熱延板焼鈍を施さ
ないものと比べて磁気特性が改善されない。焼鈍温度が
高いとインヒビタが粗大化する。
【0028】保持時間が短いと、インヒビタが十分に析
出しないために、焼鈍温度の低いときと同様に熱延板焼
鈍の効果が薄れる。保持時間が長いとインヒビタが粗大
化する。
【0029】同じ焼鈍温度、保持時間の焼鈍をしても、
昇温速度によってインヒビタの析出状態は異なり、昇温
速度に応じて最適な焼鈍温度、保持時間が変わる。例え
ば昇温速度が速い場合にインヒビタが十分に微細析出す
るような焼鈍温度、保持時間であっても、昇温速度が遅
くなると、昇温中のインヒビタの析出形態の変化、オス
トワルド成長による粗大化のために、インヒビタが十分
に微細析出しなくなることもある。
【0030】このような知見に基づき、焼鈍温度T
(℃)、保持時間t(分)、昇温速度R(℃/分)を様
々に変化させて実験を行った。その結果、これらが下記
の(1) 式を満たす条件で熱延焼鈍を施すと、熱延板中の
インヒビタが十分に微細析出し、その結果、高い磁気特
性を有する極薄方向性けい素鋼板を製造できることが分
かった。
【0031】 830+1000/R≦T+4.2t+3000/R ≦1040-1000/R … (1) (但し、T≧500 ) (1) 式中の(T+4.2t+3000/R )が(830+1000/R)未満の
場合には、インヒビタが十分に析出せず、従って、熱延
板焼鈍の効果が十分でなく、磁気特性の向上は得られな
い。(T+4.2t+3000/R )が(1040-1000/R )超の場合に
は、析出物が粗大化するため、最終焼鈍時に2次再結晶
が完全に進行しなくなって、磁気特性の向上は得られな
い。
【0032】また、焼鈍温度Tが500 ℃未満ではインヒ
ビタが析出しないため、熱延板焼鈍の効果を得ることが
できない。よって、T≧500 ℃とする。
【0033】(2) 冷間圧延 冷間圧延は中間焼鈍をはさむ2回又は3回の冷間圧延と
する。冷間圧延は常法に従って行われるが、2回未満で
は最終焼鈍の際の結晶粒の選択的粒成長による2次再結
晶粒の成長に好ましい集合組織が適切に形成されず、最
終焼鈍後に十分成長した2次再結晶粒が得られない。ま
たおのおのの冷間圧延での圧延率は20%以上が好まし
い。
【0034】中間焼鈍の条件として、軟化を完全におこ
させるために、再結晶温度である700 ℃以上、結晶粒の
粗大化による冷間圧延鋼板の形状不良を避けるため1000
℃以下とする。また、これらの中間焼鈍においては、焼
鈍過程における析出物の粗大化を避けるために、0.1 ℃
/sec 以上の加熱速度で0.5 分以上10分以内の焼鈍を行
う必要がある。
【0035】(3) 冷間圧延後の焼鈍 安定した2次再結晶を発現させ、なおかつこの2次再結
晶粒の被覆率が90%以上となるためには、インヒビタと
なるAlNの焼鈍中の最適な形態、分量を制御しなくて
はならない。これを実現するのが、冷間圧延後の3回の
焼鈍である。
【0036】○1段目の焼鈍:1段目の焼鈍は、材料の
再結晶と、析出物の形態の調整の為に行う。焼鈍温度
が、700℃未満では、材料が完全に再結晶せず、その結
果、引き続く2段焼鈍での2次再結晶が不安定となる。
一方、1000℃超の場合には、正常粒成長している結晶粒
が粗大化し始め、引き続く2段焼鈍での2次再結晶が生
じない。このため焼鈍温度は700 〜1000℃とする。
【0037】また、昇温速度が1℃/sec未満の場合、
{110 }<001> 面方位以外の面方位の粒成長を十分に抑
止することができず、その結果、{110 }<001> 面方位
の2次再結晶を選択的に起こすことが難しくなる。その
ため昇温速度を1℃/sec以上とする。
【0038】さらに、焼鈍雰囲気は、鋼中から窒素が著
しく脱離せず、雰囲気より十分に窒素が供給されるよう
な窒素を含む還元性雰囲気とする。ただし、鋼板の酸化
を防ぐため、1vol.%以上の水素を含むことが好まし
い。また、窒素が50vol.%未満では、鋼中からの窒素の
脱離が顕著となる。このため、窒素の比率は50vol.%以
上とする。
【0039】さらにまた、保持時間は、引き続く2段焼
鈍での2次再結晶を安定的に発現させるために30秒以上
必要である。したがって保持時間を30秒以上とする。た
だし30分超では効果が飽和するため、経済面からは30分
以内とすることが好ましい。
【0040】○2段目の焼鈍:2段目の焼鈍は、2次再
結晶の発現と進展のために重要である。
【0041】加熱保持温度が、1000℃をこえると、正常
粒成長している結晶粒が粗大化し、その結果2次再結晶
を生じない。一方、700 ℃未満では、2次再結晶の核と
なる粗大粒の粒成長速度が著しく遅いため、極めて長時
間保持しても2次再結晶が進展しない。そのため加熱保
持温度を700 ℃以上1000℃以下とする。
【0042】昇温速度はとくに規定しない。工業的に可
能な速度で十分である。また、焼鈍雰囲気は、1段目の
焼鈍条件と同様に鋼中から窒素が著しく脱離せず、雰囲
気より十分にNが供給されるような窒素を含む還元性ガ
ス雰囲気とする。ただし、鋼板の酸化を防ぐため、1vo
l.%以上の水素を含むことが好ましい。また、窒素が50
vol.%未満では、鋼中からの窒素の脱離が顕著となる。
このため、窒素の比率を50vol.%以上とする。
【0043】保持時間は2次再結晶を行なわせるために
十分な時間が必要であり、3時間以上とする。一方10時
間をこえても、2次再結晶粒の被覆率において殆ど変化
が見られないため、経済面から10時間以内とすることが
好ましい。
【0044】○3段目の焼鈍:3段目の焼鈍は、2次再
結晶粒で鋼板表面を90%以上被覆するために必要な焼鈍
である。
【0045】2段目までの焼鈍では、2次再結晶粒の被
覆率は、最大でも80%程度であり、残りの20%程度は、
2次再結晶粒に食い残された板厚程度の粒径の領域とな
る。このような、細粒部は、貫通粒となっているため、
結晶粒の曲率に反比例する粒界エネルギが不十分であ
り、長時間焼鈍しても殆ど2次再結晶粒に蚕食されず、
磁気特性的にも不充分である。
【0046】このため、3段目においては、非酸化囲気
中で焼鈍を施すことによって{110}面が優先的に成
長する表面エネルギを2次再結晶の駆動力として用い細
粒部を2次再結晶粒に蚕食させることを狙いとする。た
だし、この場合、加熱温度は表面エネルギを働かせるた
めに、900 ℃以上が必要である。また、1300℃以上に加
熱した場合には、鋼板のクリープ等によって安定して鋼
板を焼鈍することが困難である。また、いずれの温度に
おいても保持時間は30秒以上必要であり、一方30分でそ
の効果が飽和する。従って、加熱の温度範囲は900 ℃以
上1300℃以下、保持時間は30秒以上、好ましくは30分以
下とする。また、その雰囲気は、還元性雰囲気もしくは
酸素分圧が0.5Pa 以下で実質的に窒素を含まない非酸化
雰囲気または酸素分圧が0.5Pa 以下の真空中とする。窒
素が雰囲気に含まれると、鋼中に窒素が残留して磁気特
性を劣化させるためである。
【0047】
【実施例】
(実施例1)表1に示される鋼種を真空溶解し、30mmま
でスラブ圧延を行った後に、1150℃加熱にて2.5mm まで
熱間圧延を施した。つづいて、表2に示す条件で熱延板
焼鈍を行い、その後酸洗、冷間圧延、最終焼鈍を行っ
た。
【0048】冷間圧延は、第1回目の冷間圧延で2.5mm
から0.5mm まで圧延し、第2回目の冷間圧延で0.5mm か
ら0.3mm まで圧延し、第3回目の冷間圧延で0.3mm から
0.1mm まで圧延した。各々の冷間圧延の間で、100 %N
2 雰囲気中において、焼鈍温度900 ℃、保持時間2分の
中間焼鈍を施した。
【0049】最終焼鈍は、3段にわたって実施した。第
1段目の焼鈍では、昇温速度を600℃/分とし、95%N
2 −5%H2 の雰囲気中で900 ℃に5分間保持した。第
2段目の焼鈍では、95%N2 −5%H2 の雰囲気中で90
0 ℃に10時間保持した。第3段目の焼鈍では、100 %H
2 の雰囲気中で1200℃に10分間保持した。
【0050】得られた薄鋼板の組織として板厚の10倍以
上の粒径を有する結晶粒の被覆率と圧延方向の磁束密度
8 (T)、保持力HC (A/m)を測定した。この結
果を、表2に示す。表2から明らかなように、本発明の
成分範囲でなおかつ本発明の製造方法を施した場合にの
み、磁束密度B8 が1.90T以上の、磁気特性に優れた極
薄けい素鋼板を得ることができた。
【0051】
【表1】
【0052】
【表2】
【0053】(実施例2)表1の鋼番1の鋼種を真空溶
解し、30mmまでスラブ圧延を行った後に、1150℃加熱に
て2.5mm まで熱間圧延を施した。つづいて、表3に示す
条件で熱延板焼鈍を行い、その後酸洗、冷間圧延、最終
焼鈍を行った。
【0054】冷間圧延は、表3において3回圧延と書か
れているものについては、実施例1と同じ条件で行っ
た。表3において2回圧延と書かれているものについて
は、第1回目の冷間圧延で板厚2.5mm から0.3mm まで圧
延し、第2回目の冷間圧延で板厚0.3mm から0.1mm まで
圧延した。そして、これらの冷間圧延の間で、100 %N
2 雰囲気中において、焼鈍温度900 ℃、保持時間2分の
中間焼鈍を施した。
【0055】最終焼鈍は、3段にわたって実施した。第
1段目の焼鈍では、昇温速度を600℃/分とし、95%N
2 −5%H2 の雰囲気中で900 ℃に5分間保持した。第
2段目の焼鈍では、95%N2 −5%H2 の雰囲気中で90
0 ℃に10時間保持した。第3段目の焼鈍では、100 %H
2 の雰囲気中で1200℃に10分間保持した。
【0056】得られた薄鋼板の圧延方向の磁束密度B8
(T)、保持力HC (A/m)を測定した。この結果
を、表3に示す。表3から明らかなように、熱延板焼鈍
条件が本発明の製造方法をの範囲にある場合にのみ、磁
束密度B8 が1.90T以上の極薄けい素鋼板を得ることが
できた。
【0057】
【表3】
【0058】
【発明の効果】以上説明したように、本発明において
は、熱延鋼板の化学成分、熱延焼鈍条件、冷間圧延・中
間焼鈍条件、最終焼鈍条件を特定のものにすることによ
り、インヒビターと表面エネルギーを活用することがで
き、磁気特性に優れた極薄けい素鋼板を得ることが可能
となる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平10−121137(JP,A) 特開 平9−157746(JP,A) 特開 平7−197126(JP,A) 特開 平6−207219(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C21D 8/12 C22C 38/00 303 C22C 38/06

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 (a) 重量%で、C:0.01%以下、Si:
    2.5 %以上7%以下、Mn:0.005 %以上0.12%以下、
    P:0.02%以下、S:0.002 %以上0.005 %以下、sol.
    Al:0.0015%以上0.006 %以下、N:0.001 %以上0.
    008 %以下を含み、不純物としてのTi+Nbが0.003
    %以下である熱延鋼板を準備する工程、(b) 前記熱延鋼
    板に、焼鈍温度T(℃)、保持時間t(分)、昇温速度
    R(℃/分)が下記の(1) 式を満たす条件で焼鈍を施す
    工程、 830+1000/R≦T+4.2t+3000/R ≦1040-1000/R … (1) (但し、T≧500 ) (c) 前記熱延鋼板を脱スケール後、加熱・冷却速度が0.
    1 ℃/sec 以上、保持時間が0.5 分以上10分以内である
    中間焼鈍を含む2回又は3回の冷間圧延により板厚0.20
    mm以下の冷間圧延鋼板とする工程、(d) 前記冷間圧延鋼
    板を、窒素50vol.%以上含む還元性雰囲気において、1
    ℃/sec以上の昇温速度で700 ℃以上1000℃以下の所定温
    度まで加熱し、当該温度に30秒以上保持する1段目の焼
    鈍工程、(e) 引き続き前記冷間圧延鋼板を、窒素50vol.
    %以上含む還元性雰囲気において、700 ℃以上1000℃以
    下の所定温度に3時間以上保持する2段目の焼鈍工程、
    (f) さらに、窒素を含まない還元性雰囲気もしくは酸素
    分圧が0.5Pa 以下で実質的に窒素を含まない非酸化性雰
    囲気または酸素分圧が0.5Pa 以下の真空中において、90
    0 ℃以上1300℃以下の範囲の所定温度で30秒以上の保持
    を行う3段目の焼鈍工程を含む極薄けい素鋼板の製造方
    法。
  2. 【請求項2】 請求項1に記載の製法によって製造され
    る極薄けい素鋼板。
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