JP3266361B2 - 反射鏡の製造方法 - Google Patents

反射鏡の製造方法

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JP3266361B2 JP07966693A JP7966693A JP3266361B2 JP 3266361 B2 JP3266361 B2 JP 3266361B2 JP 07966693 A JP07966693 A JP 07966693A JP 7966693 A JP7966693 A JP 7966693A JP 3266361 B2 JP3266361 B2 JP 3266361B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、X線から、極短紫外
光、紫外光、可視光、赤外光等のさまざまな波長の電磁
波の反射に利用する反射鏡に関するものである。特に、
波長の短いX線や極短紫外光を反射する反射鏡に適用し
た場合、顕著な効力を発揮する。
【0002】
【従来の技術】一般的に電磁波を反射することを目的と
して反射鏡は、図1に示すように、母材1の表面に、反
射率を高めることを目的として電磁波ビーム3を反射す
る反射膜2を形成した構造を有している。従来、母材
は、切削あるいは研削等の方法で形状加工した後、表面
に残る切削あるいは研削の痕をなくし、表面の凹凸を小
さくするために研磨加工が行われている。近年、コンピ
ュータによる数値制御(NC:Numerical Control )に
よる、高速かつ高精度な形状加工が可能な高性能NC加
工機が開発され、形状加工精度は格段に向上し、かつ安
価に母材を加工できるようになってきた。しかし、NC
加工機を用いても、切削あるいは研削加工工程だけで切
削あるいは研削痕を消すことができないのが現状であ
る。図2に現状の切削技術で、できるだけ表面凹凸が小
さくなるように切削だけで加工した表面のプロファイル
を光の干渉によって測定した例を示す。母材表面には、
切削痕による凹凸と、その上に同一箇所を何回も重ねて
切削するためできると考えられる、長周期の「うねり」
が残っていることが分かる。これは、加工機の切削バイ
ト先端の位置が切削のたびに数nmずれるために発生す
ると考えられ、現在の技術ではそれを避けることは困難
である。このため、研磨加工を経ない母材は反射鏡母材
として使用できないとされ、表面の最終的仕上げは、依
然として、研磨工程で行われている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】電磁波のビームを効率
良く反射し、反射によってビームを絞り、平行にし、ビ
ームの断面形状を精密に整形するといった反射鏡のビー
ム制御性能は、反射鏡の放物面あるいは回転楕円面のよ
うに加工された表面形状や、凹凸等の表面状態によって
決まる。表面形状の加工精度が悪い場合、電磁波ビーム
を制御する光学素子としての性能は著しく劣化する。ま
た、表面凹凸が大きい場合、反射率は急激に低下するこ
とが良く知られている。従って、反射鏡には、表面形状
が所定の形状に高精度に加工され、かつ表面の凹凸が小
さいことが求められる。特に、X線や極短紫外線といっ
た、波長が1nmから数百nmと波長が短い電磁波に対
しては、曲率等の形状精度はミクロン以下、表面凹凸は
rms(root mean square)粗さで1nmあるいはそれ
以下にする必要がある。しかし、従来は、反射鏡の母材
の表面形状を数値制御工作機で精密に加工できても、最
終的に研磨工程が回避できないため、これを経ることに
よって表面凹凸は小さくなるが、形状精度は悪化するた
めに、電磁波ビーム形状を制御する光学素子としての性
能が劣化するという問題があった。
【0004】また、曲面の研磨工程は、依然として人間
の手作業で行っているのが現状であり、時間がかかるだ
けでなく、加工精度が個人の技量に依存するため品質に
ばらつきが生じ、かつ反射鏡の価格もこれによって著し
く上昇するといった問題があった。また、研磨工程を省
いてしまうと、精密な形状精度を維持するために、切
削、あるいは研削、あるいは両者の複合加工で作製した
母材をそのまま用いなければならないが、表面には図2
に示すような加工痕が残ることを回避できない問題があ
った。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明は、研磨加工によ
って表面形状が変形し、電磁波ビームを制御する光学素
子特性が悪化する問題と、研磨加工を省くことによっ
て、今度は表面に加工痕が残ってしまい、反射率特性が
劣化する問題点とを回避した、特性の良好な反射鏡を提
供することを目的とする。
【0006】本発明の第1の特徴は、例えば、切削、あ
るいは研削、あるいは両者を複合させた加工によって母
材を形状加工し、研磨加工しない母材をそのまま使用す
る点にある。母材が研磨加工を経ていないため、高精度
に加工された形状はそのまま残すことができるが、表面
には図2に見れるような数十nmの高さの加工痕が残
る。従って、このままでは反射率が低下するため、反射
鏡として使用することは難しい。
【0007】本発明の第2の特徴は、上記の加工痕によ
る表面凹凸を小さくして反射率の減少を抑え、かつ電磁
波ビーム形状の制御性が高い反射鏡を得るために、図3
に示すように、母材に付着して膜を形成する粒子(原子
あるいは分子)5と同時に、10から 500eVのエネルギ
ーを有し、かつその数が、1013個/sec /cm2 以上の
粒子からなるビーム4を母材1上の膜表面に照射しつ
つ、電磁波を反射する反射膜2を形成する点にある。こ
のビーム4は、例えばイオン、あるいは中性原子・分
子、あるいはクラスター等を含み、自らのエネルギーを
母材表面に与えるため、膜を構成する原子が表面に移動
して広い領域に拡散し易くなり、表面の凹凸を小さくす
る。実際に、ビーム4の刺激によって、図4に示すよう
な、真空蒸着法やCVD法等では不可避の反射膜表面の
微細な凹凸の成長が抑えられる。従って、反射膜2は、
通常の膜形成法で不可避の、微小凹凸の成長を抑制して
形成されるため、反射率を低下させないという大きな特
徴を有する。エネルギーを有するビーム4の数と表面粗
さの関係を、白金膜を形成して調べた結果、図5に示す
ようにその数が1013個/sec /cm2 以上ではほぼ一定
の小さな値を示すことが分かった。従って、反射率の減
少を抑えるためには粒子の数は1013個/sec /cm2
上であることが望ましい。また、ビームのエネルギーと
表面粗さの関係を調べた結果を図6に示す。上記の粒子
数があり、かつエネルギーが10eV以上であれば平坦化
が可能であることが分かる。しかし、エネルギーが 500
eVを越えるとスパッタ現象が支配的になり、膜が形成
されなくなるため、エネルギーは500 eV以下である必
要がある。
【0008】また、母材表面にイオンを照射せずに、C
VD法、蒸着法、スパッタ法、あるいは液体を塗布して
中間層を形成し、さらに中間層上部に前記条件で反射膜
を形成することで表面の粗さを小さくして反射率の減少
を抑え、反射鏡特性を向上させることができる。例え
ば、母材表面に、蒸着法でPt 膜を形成すると、X線で
測定した表面粗さはrmsで1.2 nmとなるが、さらに
その上に前記条件でPt膜を形成することで、粗さは0.5
nmと半分以下に小さくなるため、反射率の減少は抑
えられ高性能反射鏡が得られる。この中間層には、例え
ば軽元素層と重元素層とを交互に積層した多層膜を用い
ることもできる。これによって反射鏡は、特定の波長の
みを反射するため、分光素子としての性能も持つことが
でき、より多様な目的に用いることができる。
【0009】従来の技術とは、切削あるいは研削で高精
度に加工した表面を研磨加工しなくても表面の凹凸成長
を抑え、粗さを小さくした膜を形成することで電磁波の
反射率減少を抑制して反射鏡の特性を向上させた点で異
なる。
【0010】
【作用】研磨工程を無くすことで、例えば切削あるいは
研削、あるいは両者の複合工程で精密に加工した形状の
研磨による変形を回避することができるため、電磁波ビ
ームを抑制する光学素子としての性能を向上させること
ができる。さらに、研磨加工を行う個人の技量に強く依
存する研磨工程を省くことで、品質のばらつきを抑え、
加工時間の短縮と費用の大幅な削減を実現することがで
きる。さらに、表面に膜を形成する際に照射する、エネ
ルギーを持ったイオン、あるいは中性原子・分子、ある
いはクラスター等の粒子からなるビーム4は、衝突する
母材表面の原子と効率良く相互作用して表面状態を変え
るため、従来の膜形成法では不可避の微小領域の膜の表
面凹凸の成長を抑制する効果があり、粗さによる反射率
の減少を抑えることができる。この照射に最適な条件と
して、イオンあるいは高速原子・分子、あるいはクラス
ターからなる粒子のエネルギーは10から500 eVで、粒
子の数は1013個/sec /cm2 である。また、母材表面
に、従来の方法で多層膜等の種々の機能を有する膜を中
間層として形成し、その上にエネルギーを有する粒子を
照射しつつ膜を形成することで、反射鏡に分光特性を付
与し、かつ表面が平坦であるため反射率の減少を抑える
ことができる。これによって、電磁波ビームの制御性能
が良好で、多様な使用が可能で反射率も高い反射鏡が得
られる。
【0011】
【実施例】以下、図面により本発明の実施例を詳細に説
明する。
【0012】(実施例1)図7に本発明の第1の実施例
を示す。図7(a)は切削によって作製した母材表面を
模式的に表示したもので、Lは切削痕の周期を、hは凹
凸の高さを示している。現在の切削技術で到達できる典
型的な値は、Lが数十μm、hが約十nmである。図7
(b)は切削表面を研磨加工せずにそのままイオン照射
しつつ膜を形成した本発明の第1の実施例を模式的に示
した図である。5は膜を構成する原子で、7の蒸発源か
ら放出され、母材に付着して膜を形成する。4は膜の形
成中に表面に照射されるエネルギーを持った粒子であ
り、これは6のエネルギー粒子源から照射される。
【0013】図8に表面を無電解ニッケルメッキ(組成
はNi :約90%、P:約10%)したサンプルを切削加工
し、その表面を光の干渉を利用した方法で形状測定した
結果を示す。周期が約30μmで、高さが約10nmの凹凸
がある。これは同じ箇所の切削を繰り返すことで、多数
の切削痕が重なった結果できた「うねり」のようなもの
である。この周期は可視光の波長(約0.5 μm)の約10
0 倍の長さであり、虹色の干渉縞を生成するため、粗れ
た表面に見える。実際、図8の像から表面のrms粗さ
を求めると、7.46nmと非常に大きく、可視光領域の光
に対しては粗れた面として振る舞うことが分かる。
【0014】しかし、一方で、表面の微小部分をSTM
(トンネル電流顕微鏡)で拡大して観察すると、図9お
よび図10に示すように、大きな周期の中にはより小さ
い凹凸があり、1つ1つの山の高さは数nmであること
が分かる。これらの像から求めたrms粗さはそれぞれ
1.8nmと 1.2nmと、図8から求めた粗さとは大きく
異なっている。実際に波長0.834 nmのX線に対する反
射率を測定したのが図11である。これは8が実験値、
9が表面粗さが1.44nmとした時の計算値であり、10は
rms粗さが0nmとした場合の反射率の計算値であ
る。反射率からrms粗さを評価すると1.44nmとな
り、可視光の干渉から評価した値と大きく異なり、微小
領域のSTM像から導出した値に近い。つまり、X線領
域の反射率は、可視光で見える凹凸ではなく、より小さ
い凹凸に影響されることが分かる。従って、1μm□以
下の領域の粗さをより小さくする膜が形成できれば、高
い反射率を有する反射鏡が作製できる。
【0015】従って、図7(b)の構成で、表面にエネ
ルギーを有するイオンビーム4を照射しつつPt 膜を10
nm形成した。この場合の膜を形成する粒子5は白金原
子である。この粒子5は、蒸発装置7において、加速し
た電子ビームを白金の塊に照射することによって発生さ
せた。イオンビーム4はアルゴンのイオンビームで、イ
オンビーム発生装置6でイオンを生成し、 200eVに加
速して照射した。イオンビーム発生装置としては、カウ
フマン型のイオン源、ECR(電子サイクロトロン共
鳴)型のイオン源、ディオプラズマトロン型のイオン源
等を用いることができるが、この例ではカウフマン型イ
オン源を用いた。Pt 原子の粒子が母材1に到達して膜
を形成すると同時に、アルゴンイオン4が母材表面に到
達して表面を刺激する。イオン数と蒸発Pt 原子数との
比率(イオン照射比と呼ぶ)は、イオン数が1013個/se
c /cm2 の時、この数の約10%とした。すなわち、こ
の時、アルゴンイオン1個が母材1に到達すると同時に
Pt 原子が10個母材に到達する。
【0016】イオンを照射しながら、切削母材の上にP
t 膜を形成した場合のSTM像を図12、図13に示
す。図12に示すように1μm□領域の凹凸はまだ残っ
ているが、中でも短い周期の粗さは滑らかになってお
り、図13に示すように 100μm□領域を拡大すると凹
凸は平滑化されてほとんど痕跡は見られない。従って、
上記の膜の形成によって、明らかに表面凹凸が減ってい
ることが分かる。このサンプルのX線反射率を図14に
示す。11はX線反射率の実験値、12は表面粗さが0.76n
mとした時のX線反射率の計算値であり、13の点線はr
ms粗さが0nmとした場合の反射率の計算値である。
反射率から求めた粗さは1.44nmから0.76nmと約半分
に小さくなっており、イオンを照射しながらの膜形成に
よって反射鏡の高性能化が実現されたことが分かる。ま
た、この反射膜の厚さは、10nm程度の膜厚であるた
め、膜の応力も小さく、膜の応力による母材形状の変形
も抑えられる。
【0017】(実施例2)図15は本発明の第2の実施
例を示す。母材の上に中間層14として、単一の元素、あ
るいは化合物、あるいは合金、あるいは個となる種類の
元素を積層した多層膜がある。これらの膜は真空蒸着
法、CVD法、DCあるいはRFスパッタ法、あるいは
液体を塗布することでも形成できるが、表面に数nmの
凹凸があっても構わない。本実施例は小さな凹凸がある
この中間層14の上に、エネルギーを持った粒子を照射し
つつ反射膜2を形成したものである。母材と反射膜の間
に中間層を挟むことによって、ビーム整形性能と反射特
性を劣化させずに、反射鏡の特性を上げるか、あるいは
別の機能を付与することができる。例えば、流動的な液
体を薄く塗布することで、さらに滑らかして反射率を上
げることができる。また、多層膜のように、特定の波長
だけを反射する中間層を形成し、その上部にエネルギー
粒子を照射しつつ形成することで表面を滑らかにし、特
定の波長を効率よく反射できる反射鏡を作製することが
できる。
【0018】母材は第1の実施例のように無電解ニッケ
ルメッキした母材を切削加工した。このサンプルの光干
渉法で測定した表面像を図2に示す。また、STM像を
図16に示す。実施例1のサンプルと同様に切削による
凹凸が見られる。このサンプルの上に中間層14を形成す
る。この例では真空蒸着法によって表面にPt 膜を12n
m形成した。従って、膜形成中には表面刺激がないた
め、表面には図17に見られる微小凹凸が密に発生して
しまう。このPt 膜の上にさらに真空蒸着法でPt 膜を
24nm形成すると、図18に示すように表面の凹凸がさ
らに成長する。このままでは、反射特性が劣化するた
め、特性の良好な反射鏡が得られない。
【0019】そこで、さらにこの上に第1の実施例と同
じ条件でイオン照射しながら最上層に膜を形成する。膜
の表面STM像を図19に示す。表面の微小凹凸は消失
し、滑らかな面が形成される。このサンプルの粗さをX
線反射率(波長 0.834nm)から評価した結果を図20
に示す。15が母材のX線反射率、16が母材の上に蒸着P
t の中間膜を12nm形成した膜の反射率、17がさらにそ
の上に中間膜を24nm形成した膜の反射率、18が最上層
にイオンを照射しながら膜を12nm形成した場合の反射
率である。16と17の反射率がほとんど変わらないのに対
し、18は高い反射率を示すことが分かる。16および17か
ら求めた表面粗さは1.3 nmである。一方、18から求め
た表面粗さは0.71nmで、急激に粗さが小さくなり、反
射特性が向上していることが分かる。従って、本実施例
のように母材と反射膜の間に単一の元素、あるいは化合
物、あるいは合金、あるいは異なる種類の元素を積層し
た多層膜からなる表面に小さな凹凸のある中間層14を挟
んでも、少なくとも最上層だけでも、エネルギー粒子で
照射しつつ形成すれば、高性能な反射鏡が作製できる。
【0020】(実施例3)図15の構造を持つ反射鏡に
おいて、表面反射膜2に中間層14とは異なった種類の金
属あるいは合金を使用することができる。表面反射膜を
形成する金属としては、融点の高いものが融点の低い金
属より平坦な面を作り易いため、W,Ta,Re ,Ir
,Os ,Pt ,Au 等の重金属や、Ti ,Mn ,Cr
,Co ,Fe,Ni ,Cu ,Zn ,Ge ,Zr ,Mo ,
Ru ,Rh ,Pd ,Ag 等の遷移金属、また、La ,C
e ,Eu ,Pr ,Sm ,Nd ,Gd ,Tb ,Er ,Tm
,Yb等の希土類あるいはアクチノイド類等を用いるこ
とができ、また、これらの合金も用いることができる。
図21にPt 中間層の上にエネルギーを有するECRプ
ラズマ中のイオンを照射しながらRe を形成した反射鏡
表面のSTM像測定した例を示す。rms粗さが0.54n
mの非常に小さな表面粗さが得られる。これらの金属は
融点が高いため、耐熱性に優れた反射鏡を作成すること
ができる。
【0021】(実施例4) 図15の構造の反射鏡は、反射膜2に中間層14とは異な
った種類の半導体、絶縁体、あるいは、それらの化合物
を形成することによっても作製できる。反射膜を構成す
る物質としては、例えばSi あるいはその化合物(Si
C, Si O2 ,Si N ...)や、Cあるいはその化合物
(B4 C等)、Bあるいはその化合物(BN等)、Al
あるいはその化合物(Al23 )等を用いることができ
る。これらの他にも、熱的、化学的に安定な物質が適当
である。図22に、Pt の中間層の上に数十eVのイオ
ンを照射しつつSi O2 を形成し、X線(波長 0.834n
m)反射率を測定した結果を示す。実線がrms表面粗
さが0nmとして場合の反射率で、黒丸は実験値であ
る。実験値から求めたrms粗さは0.19nmであり、表
面粗さの非常に小さな反射鏡が形成されていることが分
かる。これらの物質は、化学的に安定なため、経時変化
の少ない反射鏡を作製することができる。
【0022】(実施例5)図15と同じ構造を有する反
射鏡において、中間層14に第3の実施例で記述したよう
な金属や合金、あるいは第4の実施例で記述したような
半導体、絶縁体および化合物、さらには、これらを積層
した構造の多層膜を用いることができ、これにより特性
のよい反射鏡を作製することができる。
【0023】
【発明の効果】以上述べたように、母材の上にX線等の
電磁波を反射する膜がある反射鏡において、母材を、研
磨加工工程を除く切削あるいは研削、あるいは両者の複
合工程で作製し、該母材表面に、10から 500eVのエネ
ルギーを有し、その数が、1013個/sec /cm2 以上の
粒子を該膜の表面に照射しつつ膜を形成することによっ
て、反射率の高い反射鏡を作製することができる。ま
た、この反射膜の厚さは、10nm程度の膜厚で充分であ
るため、膜の応力も小さく、膜の応力による母材形状の
変形も抑えられる。研磨工程を無くしたことで、例えば
切削あるいは研削あるいは両者の複合工程で精密に加工
した形状の研磨による変形を回避することができ、電磁
波ビームを制御する光学素子としての性能を向上させる
ことができる。さらに、研磨加工を行う個人の技量に強
く依存する研磨工程を省くことで、品質のばらつきを抑
え、加工時間の短縮と費用の大幅な削減を実現すること
ができる。さらに、表面にエネルギーを持ったイオン、
あるいは中性原子・分子、あるいはクラスター等の粒子
からかるビームを照射することで、衝突する母材表面の
原子と効率よく相互作用し、表面状態を変えるため、従
来の膜形成法では不可避の微小領域の膜の表面凹凸の成
長が抑制され、粗さによる反射率の減少を抑えることが
できる。
【0024】また、母材と上記反射膜の間に、単一の元
素、あるいは化合物、あるいは合金、あるいは異なる種
類の元素を積層した多層膜からなる中間膜を挟むことが
できる。表面反射膜や中間層としては、W,Ta ,Re
,Ir ,Os ,Pt ,Au 等の重金属や、Ti ,Mn
,Cr ,Co ,Fe ,Ni ,Cu ,Zn ,Ge ,Zr
,Mo ,Ru ,Rh ,Pd ,Ag 等の遷移金属、ま
た、La ,Ce ,Eu ,Pr ,Sm ,Nd ,Gd ,Tb
,Er ,Tm ,Yb 等の希土類あるいはアクチノイド
類等を用いることができ、また、これらの合金も用いる
ことができる。これらの金属は融点が高いため、耐熱性
に優れた反射鏡を作成することができる。
【0025】反射膜や中間層を構成する物質としては、
例えばSi あるいはその化合物(Si C, Si O2 ,S
i N .... )や、Cあるいはその化合物(B4 C等)、
Bあるいはその化合物(BN等)、Al あるいはその化
合物(Al23 )等を用いることができる。これらの他
にも、熱的、化学的に安定な物質が適当である。これら
の物質は、化学的に安定なため、経時変化の少ない反射
鏡を得ることができ、また、中間層には上記物質を積層
した多層膜を用いることができる。多層膜は特定の波長
を選択的に反射できるため、反射鏡に分光機能を付与す
ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は光学素子の構造と入射する電磁波を示す
模式図である。
【図2】図2は切削した母材表面を光の干渉で測定した
図である。
【図3】図3は本発明の構成を示す第1の模式図であ
る。
【図4】図4は真空蒸着法で作製したPt 膜の表面ST
M像である。
【図5】図5は表面粗さとイオン数の関係を示す図であ
る。
【図6】図6は表面粗さとイオンエネルギーとの関係を
示す図である。
【図7】図7は本発明の第1の実施例を示す図である。
【図8】図8は第1の実施例に使用した母材表面を光の
干渉で測定した図である。
【図9】図9は第1の実施例に使用した母材表面のST
M像である。
【図10】図10は第1の実施例に使用した母材表面の
微細領域のSTM像である。
【図11】図11はX線反射率を示す図である。
【図12】図12は母材表面に反射膜を形成した反射鏡
表面のSTM像である。
【図13】図13は母材表面に反射膜を形成した反射鏡
表面の微細領域のSTM像である。
【図14】図14は母材表面に反射膜を形成した反射鏡
のX線反射率である。
【図15】図15は本発明の第2の実施例を示す図であ
る。
【図16】図16は第2の実施例に使用した母材表面の
STM像である。
【図17】図17は母材表面に真空蒸着膜を形成した反
射鏡表面のSTM像である。
【図18】図18は母材表面に真空蒸着膜を形成した上
にさらに真空蒸着膜を形成した反射鏡表面のSTM像で
ある。
【図19】図19は母材表面に真空蒸着膜を形成した上
にさらに真空蒸着膜を形成した上にイオンを照射しなが
ら膜を形成した反射鏡表面のSTM像である。
【図20】図20は第2の実施例で作製した膜のX線反
射率である。
【図21】図21は中間膜としてPt を、反射膜として
Re 膜を有する反射鏡のSTM像である。
【図22】図22は中間膜としてPt を、反射膜として
Si O2 膜を有する反射鏡のX線反射率を示す図であ
る。
【符号の説明】
1 母材 2 反射膜 3 電磁波ビーム 4 エネルギーを有するビーム 5 膜を形成する粒子 6 エネルギー粒子源 7 蒸発源 8 X線反射率(実験値) 9 rms粗さ1.44nmとした時のX線反射率の計算値 10 rms粗さ0nmとした時のX線反射率の計算値 11 X線反射率 12 rms粗さ0.76nmとした時のX線反射率の計算値 13 rms粗さ0nmとした時のX線反射率の計算値 14 中間層 15 母材のX線反射率 16 母材に真空蒸着Pt 膜を12nm形成した表面のX線
反射率 17 試料16の上に真空蒸着Pt 膜を24nm形成した表面
のX線反射率 18 試料17の上にイオンを照射しつつPt 膜を12nm形
成した表面のX線反射率

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 平面もしくは有限の曲率を有する母材上
    に電磁波を反射する反射膜を有する反射鏡を製造する方
    法において、前記母材を切削又は研削或いは両者の複合
    工程で形状加工し、母材の形状加工した表面に、10e
    V〜500eVのエネルギーを有する粒子ビームを10
    13個/sec/cm2 以上の照射量で照射しながら前記
    反射膜を構成する材料の粒子を照射することにより反射
    膜を形成することを特徴とする反射鏡の製造方法。
  2. 【請求項2】 平面もしくは有限の曲率を有する母材上
    に電磁波を反射する反射膜を有する反射鏡を製造する方
    法において、前記母材を切削又は研削或いは両者の複合
    工程で形状加工し、母材の形状加工した表面に中間層と
    なる膜を形成し、当該中間層の表面に、10eV〜50
    0eVのエネルギーを有する粒子ビームを1013個/s
    ec/cm2 の照射量で照射しながら前記反射膜を構成
    する材料の粒子を照射することにより反射膜を形成する
    ことを特徴とする反射鏡の製造方法。
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