JP3263336B2 - 二次電池の容量推測方法 - Google Patents

二次電池の容量推測方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、リチウムイオン二
次電池などの二次電池の劣化の度合いを検出するための
検出方法、及びこれを基にして電池の放電容量を推測す
る二次電池の容量推測方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】現在、ノート型パソコン、携帯電話等、
高容量二次電池を電源とした携帯機器が急速に普及しつ
つある。これらの機器には通常、使用可能時間を表す残
存容量計が搭載されており、利用者の使用上の便宜を図
っている。しかしながら、これら携帯機器の電源である
二次電池は、充放電の回数を繰り返すと、必ず性能低下
を引き起こすものである。しかし、この劣化の度合いを
機器使用者に表示している例はきわめて少なく、使用者
は曖昧に使用機器の実働時間が何となく減少していると
いう形で、電池の性能低下を感じているにすぎない。こ
れまで提案された二次電池の劣化の度合いを検出する方
法は、以下に記載した方法に大別できる。 (1)電池の内部インピーダンスを計測する方法(特開
昭53−42327、特開昭61−170678、特開
平1−253175、特開平4−141966、特開平
8−254573、特開平8−273705) (2)電池の内部インピーダンスを周波数の異なる信号
で測定し、その値を演算式に従って処理する方法(特開
平8−43506,特開平8−250159)(3)電
池の構成要素である活物質の電気抵抗を測定する方法
(特開昭56−103875) (4)所定の電流を通電したときの電圧を測定し、それ
を予め定めた基準値と比較する方法(特開昭59−48
661、特開平3−95872 特開平8−25457
3、特開平8−55642、特開平9−33620) (5)充放電のサイクル数をカウントする方法(特開平
5−74501)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】前述のように二次電池
の性能劣化を検出する方法は数多く提案されている。し
かし、二次電池の性能劣化の様子は、当然その使用方
法、つまり充放電電流、充放電電圧、充放電時間などに
より大きく異なることはいうまでもない。つまり、充放
電のサイクル数を単純にカウントしても、浅い充放電の
繰り返しと完全放電に近い深い充放電の繰り返しとで
は、同じ充放電サイクルを経た電池であったもその性能
劣化の程度が異なり、これを画一的な手法で劣化の程度
を数値化することは困難であった。本発明は、過去の充
放電履歴に関わらず簡単な試験によって容易に電池の劣
化の程度を検出できる方法を提供することを目的とす
る。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、現在市販
されているリチウムイオン電池を用い、異なる放電電流
モードで充放電サイクル試験を行い、共通する劣化特性
を検討し、これを外部からの操作で検知する方法を見い
だした。共通する劣化特性とは、試験電池の製造メーカ
推奨の充電条件と放電停止電圧を遵守する限り、充電電
流や環境温度を変えても共通の劣化特性を示し、これは
電池性能としては、いわゆる出力電流のレート特性悪化
といわれるものであった。そこで、この出力電流のレー
ト特性を定量的に、かつ短時間で検出する方法を検討し
たところ、被検二次電池に互いに異なる複数の電流をそ
れぞれ所定時間印加し、この時の二次電池の電圧値を測
定し、これを所定の計算式に入力し、得られる値をその
電池の特性劣化の指数として表現することにより、二次
電池の劣化の度合いを定性的に評価できることを見いだ
し、本発明を完成するに至った。
【0005】この手法は、電気化学反応系の分極特性を
解析するとき通常用いられるクロノポテンシオメトリー
と類似するが、特に本発明で新しく見いだした点は、印
加した電流値をi、測定された電圧値をVとし、これを
式V=ai2+bi+cで表される二次関数でフィッテ
ィングすると、二次の係数aが、充放電サイクルを行っ
ていないものでは非常に大きい、つまり印加電流と分極
電圧はほぼ比例関係にあるが、充放電のサイクルを繰り
返すと、この値が次第に小さく、つまり分極電圧は印加
電流により加速度的に増大することである。さらに、重
要なことは、様々なモードで充放電を行っても、このパ
ラメータaを用いると、充放電サイクルを繰り返した電
池の劣化の様子を統一的、かつ定量的に検出することが
可能となった。 例えば、前記のパラメータaを式Ccap
=k1−ak2(Ccapは放電容量、k1、k2はあらかじ
め定めた電池固有の値)に入力すると、過去の充放電履
歴に関わらずそのときの電池の放電容量を推定すること
が可能となった。
【0006】
【発明の実施の形態】本発明は、前記のように、被検二
次電池に互いに異なる複数の電流をそれぞれ所定時間印
加し、このとき測定された前記二次電池の電圧値を所定
の計算式に入力演算処理して数値パラメータを算出し、
この数値パラメータにより前記二次電池の劣化の度合い
を定量的に判別するものである。特に、前記の演算方法
として、印加した電流値inを独立変数、これに対応す
る測定電圧値Vnを従属変数とし、この値を式V=ai2
+bi+cで表される二次関数で近似したときの二次の
係数aの大きさで被検二次電池の劣化の度合いを判別す
る方法をとる。また、二次電池の容量推測方法は、前記
の係数aを式Ccap=k1−ak2に入力計算することによ
り、被検二次電池の放電容量を推測するものである。
【0007】本発明の二次電池の劣化検出方法を実施す
るためには、構成機器の中に電流印加回路、電圧測定回
路及び測定データ演算回路を設ける。測定プロセスは、
被検二次電池に例えば、0.1A,0.5A,1A,2
A,3Aの電流を連続して1秒ずつ印加し、それぞれ印
加1秒後の電圧を測定し、電池の初期電圧からの降下
(または上昇)分を計算し、その値をV=ai2+bi
+c(V:電圧降下分、i:印加電流)で表される二次
関数でフィッティングし、これにより得られたaをあら
かじめ記録した式Ccap=k1−ak2に入力計算するこ
とにより、被検電池の放電容量を数値的に表現する。本
プロセスにおけるaの算出のためのフィッティングアル
ゴリズムは、特に限定する必要はなく、最小自乗法等の
公知の手法を用いることができる。
【0008】
【実施例】以下、実施例により本発明の方法を具体的に
説明する。 《実施例1》表1に記載した異なる放電条件の充放電サ
イクルを実施し、充放電サイクル前、300サイクル経
過時、および500サイクル完了時の電池に対し、本発
明による二次電池の劣化検出方法を実施し、本発明の検
出方法の妥当性を検証した。測定は以下に記載した手順
に従い実施した。
【0009】1−1.電池充放電サイクル試験:試験電
池は松下電器産業(株)製リチウムイオン電池(型番CG
R17500:推奨上限電圧4.1V、下限電圧3.0V、公
称放電容量720mAh)を用いた。充電条件は、本電
池の推奨充電方法である定電流−定電圧充電法に従い、
定電流の500mAを通電し、電圧4.1Vに達したと
ころで、定電圧4.1Vに維持するという合計2時間で
充電終了とした。放電条件は、表1に記載した異なる3
種類の電流モードで行い、放電停止電圧はすべて共通の
3.0Vとした。試験はすべて20℃の恒温室で行っ
た。その結果を図1に示した。
【0010】
【表1】
【0011】図1において、縦軸は放電容量、横軸は充
放電サイクル数を示した。これを見るとわかるように、
放電電流が異なると放電容量のサイクル劣化の様子が異
なることが示された。
【0012】1−2.劣化パラメータの測定:上記1−
1に記載した充放電プロセスCにおいて、充放電サイク
ル前、300サイクル経過時、および500サイクル完
了時に、本発明による二次電池の劣化検出方法を実施し
た。測定は、上記充電方法に従い充電プロセスを完了し
た後、0.1A,0.5A,1A,1.5A,2A,
2.5A,3A,4A,5Aの電流をそれぞれ連続して
1秒間通電(放電)したときの電池電圧の充電完了時か
らの降下分を計測することで行った。この結果を通電電
流と併せて図2に示した。図2において、充放電サイク
ルを重ねると、同じ電流を印加しても、電圧降下がより
大きくなることがわかる。図2に示したデータをV=a
2+bi+c(V:降下電圧、i:印加電流)で表さ
れる二次関数フィッティングしたとき得られたパラメー
タa,b,cを表2に示した。
【0013】
【表2】
【0014】次に、各サイクル毎に得られた前記パラメ
ータaとそのときの放電容量とを図3にプロットした。
図4において、プロットした4点は、ほぼ直線関係にあ
り、これを最小自乗法でフィッティングすると放電容量
(mAh)=680−490・aで、示される関係が成
立していた。
【0015】次に、上記1−1に記載した充放電プロセ
スA及びBについて、以上に記載した方法と全く同じ測
定を行い、パラメータaを算出し、その結果をそれぞれ
図4及び図5に示した。通常、放電容量は放電電流によ
り大きく異なり、また充放電のサイクルを繰り返すと、
充放電の条件によっても、当然劣化の程度は異なるもの
である。しかしながら、図3,図4及び図5を合わせて
みるとわかるように、本実施例によると、放電電流の異
なる充放電サイクルを実施した電池であっても、放電容
量は初期の放電電流の実測値及び本発明の方法で得られ
るパラメータaにより、放電容量(mAh)=初期容量
−500・aなる式で、そのときの電池の実力が数値的
に表現できることが判明した。以上の実施例では、電池
への印加電流を放電電流として電圧降下を測定したが、
印加電流を充電電流とし、電圧上昇を測定しても同様に
して放電容量を推測する事ができる。
【0016】
【発明の効果】本発明によれば、被検二次電池に互いに
異なる複数の電流をそれぞれ所定時間印加し、この時の
二次電池の電圧値を測定し、これを所定の計算式に入力
することにより得られるパラメータにより、二次電池の
劣化の度合いを定性的に評価することができる。さら
に、様々なモードで充放電を行っても、このパラメータ
を用いると、過去の充放電履歴に関わらずそのときの電
池の放電容量を推定することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】異なる条件で実施した充放電サイクルにおける
サイクル数と放電容量との関係を示した図である。
【図2】放電プロセスCにおける電池に対する、印加電
流−降下電圧特性を示した図である。
【図3】図2を基に印加電流−降下電圧特性を二次関数
でフィティングすることにより得たパラメータaと放電
容量との関係を示した図である。
【図4】放電プロセスAにおける電池に対するパラメー
タaと放電容量との関係を示した図である。
【図5】放電プロセスAにおける電池に対するパラメー
タaと放電容量との関係を示した図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 竹山 健一 大阪府門真市大字門真1006番地 松下電 器産業株式会社内 (56)参考文献 特開 平6−150981(JP,A) 特開 平9−84271(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) G01R 31/36 H01M 10/42 - 10/48 H02J 7/00 - 7/12

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 被検二次電池に互いに異なる複数の電流
    nをそれぞれ所定時間印加し、このとき測定された前
    記二次電池の電圧値Vnを計算式V=ai2+bi+cで
    表される二次関数で近似したとき、二次の係数aを放電
    容量=k1−ak2(k1、k2はあらかじめ定めた固有の
    値)で表される式に入力計算することにより、被検二次
    電池の放電容量を推測する二次電池の容量推測方法。
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