JP3694391B2 - 二次電池の容量検出方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、リチウムイオン二次電池などの二次電池の劣化の度合いを検出するための検出方法、及びこれを基にして電池の放電容量を推測する電池容量検出方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
現在、ノート型パソコン、携帯電話等、高容量二次電池を電源とした携帯機器が急速に普及しつつある。これらの機器には通常、使用可能時間を表す残存容量計が搭載されており、利用者の使用上の便宜を図っている。しかしながら、これら携帯機器の電源である二次電池は、充放電の回数を繰り返すと、必ず性能低下を引き起こすものである。しかし、この劣化の度合いを機器使用者に表示している例はきわめて少なく、使用者は曖昧に使用機器の実働時間が何となく減少しているという形で、電池の性能低下を感じているにすぎない。
【0003】
これまで提案された二次電池の劣化の度合いを検出する方法は、以下に記載した方法に大別できる。
(1)電池の内部インピーダンスを計測する方法(特開昭53−42327、特開昭61−170678、特開平1−253175、特開平4−141966、特開平8−254573、特開平8−273705)
(2)電池の内部インピーダンスを周波数の異なる信号で測定し、その値を演算式に従って処理する方法(特開平8−43506、特開平8−250159)
(3)電池の構成要素である活物質の電気抵抗を測定する方法(特開昭56−103875)
(4)所定の電流を通電したときの電圧を測定し、それをあらかじめ定めた基準値と比較する方法(特開昭59−48661、特開平3−95872 特開平8−254573、特開平8−55642、特開平9−33620)
(5)充放電のサイクル数をカウントする方法(特開平5−74501)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
前述のように二次電池の性能劣化を検出する方法は数多く提案されている。しかし、二次電池の性能劣化の様子は、当然その使用方法、つまり充放電電流、充放電電圧、充放電時間などにより大きく異なることはいうまでもない。つまり、充放電のサイクル数を単純にカウントしても、浅い充放電の繰り返しと完全放電に近い深い充放電の繰り返しとでは、同じ充放電サイクルを経た電池であったもその性能劣化の程度が異なり、これを画一的な手法で劣化の程度を数値化することは困難であった。本発明は、過去の充放電履歴に関わらず簡単な試験によって容易に電池の劣化の程度を検出できる方法を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、現在市販されているリチウムイオン電池を用い、異なる放電電流モードでの充放電サイクル試験を行い、共通する劣化特性を検討し、これを外部からの操作で検知する方法を見いだした。共通する劣化特性とは、試験電池の製造メーカ推奨の充電条件と放電停止電圧を遵守する限り、放電電流を変えても共通の劣化特性を示し、これは電池性能としては、いわゆる出力電流のレート特性悪化といわれるものであった。
【0006】
そこで、この出力電流のレート特性を定量的に、かつ短時間で検出する方法を検討したところ、被検二次電池の1時間率の公称容量をC(mAh)とするとき、前記二次電池を5C(mA)以上の電流で放電し、前記二次電池の電圧が予め定めた値になるまでの時間Tを測定し、この値を所定の計算式に入力演算することで算出した数値パラメータをその電池の特性劣化の指数として表現することにより、二次電池の劣化の度合いを定性的に評価できることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、
(a)1時間率の公称容量がC(mAh)である二次電池を定電流−定電圧法により推奨上限電圧まで充電した後、複数の放電電流条件で、前記電池の電圧が推奨下限電圧になるまで放電する充放電サイクルを行い、前記各放電電流条件毎の、放電容量と充放電サイクルによる劣化の関係を求め、
(b)複数の異なる前記充放電サイクル毎において、前記電池を前記定電流−定電圧法により推奨上限電圧まで充電し、5C(mA)以上の放電電流条件で前記電池の放電開始から前記電池の電圧が特定値になるまでの時間Tを求めることにより、前記電池の放電容量と時間Tとの関係を求め、
(c)前記複数の放電電流条件における前記時間Tおよび前記放電容量を、単一の時間因子−放電容量座標に全てプロットし、近似により下記式(1)で示される推定式を予め求めておき、
【数2】
Figure 0003694391
(式中、i=1、2、・・・、n、kiは前記近似によって定められる固有の値)
(d)被検二次電池を、5C(mA)以上の大電流で放電し、電池電圧が前記特定値に なるまでの時間Tを求め、前記推定式を用いて前記被検電池の放電容量を推定すること、を特徴とする二次電池の容量検出方法に関する。
【0008】
この手法は、電気化学反応系の分極特性を解析するとき通常用いられるクロノポテンシオメトリーと類似するが、特に本発明で新しく見いだした点は、リチウム電池のようにイオン伝導度の低い有機電解液を用いた電池系では、通常非常識的と考えられる程大きい電流値で電池を放電すると、充放電サイクルによる容量劣化の激しい電池ほど電圧降下は大きく、この電圧降下と電池容量とが直線的に反比例関係にあった点である。
【0009】
さらに重要なことは、たとえ充放電サイクルの電流モードが異なっていても、上述の通常非常識的と考えられる程大きい電流値で電池を放電したときの電圧降下の大きさをパラメータとして用いると、充放電サイクルを繰り返した電池の劣化の様子を統一的、かつ定量的に検出することができる。例えば、Ccap=k13+k22+k3T+k4(式中、Ccapは放電容量、k1〜k4は印加電流、停止電圧及び電池種類によりあらかじめ定められた固有の値)で表される式に入力すると、過去の充放電履歴に関わらずそのときの電池の放電容量を推定することが可能となった。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明の二次電池の劣化検出方法を実施するためには、構成機器の中に電流印加回路、電圧測定回路及び測定データ演算回路を設ける。測定プロセスは、被検二次電池を例えば、5Aの電流で放電し、電池電圧が1Vになるまでの時間Tを測定し、この値が小さいほどその電池は容量劣化が大きいと判断することができる。さらに、このTの値をTに関する多項式、例えば式(1)に入力計算することにより、被検電池の放電容量を事前に推測することが可能となる。
【0011】
【数
Figure 0003694391
【0012】
式中i=1、・・・n、kiは放電電流、停止電圧及び電池種類に対応して上記近似によりあらかじめ定められた固有の値である。
【0013】
【実施例】
以下、実施例により本発明の方法を具体的に説明する。
《実施例1》
表1に記載した異なる放電条件の充放電サイクルを実施し、充放電サイクル前、100300、500700サイクル経過時の電池に対し、本発明による二次電池の劣化検出測定を実施し、本発明の検出方法の妥当性を検証した。測定は以下に記載した手順に従い実施した。
【0014】
【表1】
Figure 0003694391
【0015】
1−1.電池充放電サイクル試験:
試験電池は松下電器産業(株)製リチウムイオン電池(型番CGR17500:推奨上限電圧4.1V、下限電圧3.0V、公称放電容量720mAh)を用いた。充電条件は、本電池の推奨充電方法である定電流−定電圧充電法に従い、定電流の500mAを通電し、電圧4.1Vに達したところで定電圧4.1Vに維持するという方法で合計2時間で充電終了とした。放電条件は表1に記載した異なる3種類の電流モードで行い、放電停止電圧はすべて共通の3.0Vとした。試験はすべて20℃の恒温室で行った。その結果を図1に示した。
【0016】
図1において、縦軸は放電容量、横軸は充放電サイクル数を示した。これを見るとわかるように、放電電流が異なると放電容量のサイクル劣化の様子が異なることが示された。
【0017】
1−2.劣化パラメーターの測定:
上記1−1に記載した充放電プロセスCにおいて、充放電サイクル前、100300、500700サイクル経過時の電池に本発明による二次電池の劣化検出測定を実施した。測定は上記充電方法に従い充電プロセスを完了した後、4.9Aの電流を通電したときの電池電圧の低下の様子を測定し、その結果を図2に示した。
図2において、充放電サイクルを重ねると、同じ電流で放電しても、電圧降下速度が大きくなることがわかる。さらに、電流放電後、電池電圧が1.0Vに降下するまでの時間を計測し、これを時間因子Tとして、各サイクル毎の放電容量とともに図3に記載した。 図3に示した時間因子Tと放電容量とは三次関数で相関することができ、その係数も図中に記載した。
【0018】
次に、上記1−1に記載した充放電プロセスA及びBについて、以上に記載した方法と全く同じ測定を行い、時間因子Tを算出し、その結果をそれぞれ図4及び図5に示した。
さらに、図3 図4および図5に記載した時間因子T−放電容量のプロット点を全て 図6にプロットした。通常、放電容量は、放電電流により大きく異なり、また充放電のサイクルを繰り返すと、充放電の条件によっても、当然劣化の程度は異なるものである。しかしながら、図6をみるとわかるように、本実施例によると、放電電流の異なる充放電サイクルを実施した電池であっても、放電容量は本測定で得た時間因子Tを用いると、放電容量(mAh)=aT3+bT2+cT+d(a=0.066b=−4.0c=86d=19)なる式で統一的に、そのときの電池の実力である放電容量が数値的に表現できることが判明した。
【0019】
本方式で用いた放電容量の推定式は、時間因子Tに関する三次式であるが、さらに次元を高くし、パラメータを細かく設定した方が容量の推定精度が向上することはいうまでもない。
【0020】
【発明の効果】
本発明によれば、異なる条件での充放電サイクルを経た電池であっても、その劣化の程度を定量的に評価し、さらに現在の放電容量を実際に放電しなくともこれを推定することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】 異なる条件で実施した充放電サイクルにおけるサイクル数と放電容量との関係を示した図である。
【図2】 放電プロセスCにおける電池に対する、各サイクル終了時毎の、電流印加したときの電圧−時間特性を示した図である。
【図3】 図2を基に定めた時間因子Tと各サイクルの放電容量との関係を示した図である。
【図4】 放電プロセスAにおける時間因子Tと各サイクルの放電容量との関係を示した図である。
【図5】 放電プロセスBにおける時間因子Tと各サイクルの放電容量との関係を示した図である。
【図6】 放電プロセスAB、C全ての時間因子Tと放電容量との関係を示した図である。

Claims (1)

  1. (a)1時間率の公称容量がC(mAh)である二次電池を定電流−定電圧法により推奨上限電圧まで充電した後、複数の放電電流条件で、前記電池の電圧が推奨下限電圧になるまで放電する充放電サイクルを行い、前記各放電電流条件毎の、放電容量と充放電サイクルによる劣化の関係を求め、
    (b)複数の異なる前記充放電サイクル毎において、前記電池を前記定電流−定電圧法により推奨上限電圧まで充電し、5C(mA)以上の放電電流条件で前記電池の放電開始から前記電池の電圧が特定値になるまでの時間Tを求めることにより、前記電池の放電容量と時間Tとの関係を求め、
    (c)前記複数の放電電流条件における前記時間Tおよび前記放電容量を、単一の時間因子−放電容量座標に全てプロットし、近似により下記式(1)で示される推定式を予め求めておき、
    Figure 0003694391
    (式中、i=1、2、・・・、n、kiは前記近似によって定められる固有の値)
    (d)被検二次電池を、5C(mA)以上の大電流で放電し、電池電圧が前記特定値になるまでの時間Tを求め、前記推定式を用いて前記被検電池の放電容量を推定すること、を特徴とする二次電池の容量検出方法。
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