JP3257855B2 - 創傷被覆材および創傷被覆用組成物 - Google Patents
創傷被覆材および創傷被覆用組成物Info
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- JP3257855B2 JP3257855B2 JP06349293A JP6349293A JP3257855B2 JP 3257855 B2 JP3257855 B2 JP 3257855B2 JP 06349293 A JP06349293 A JP 06349293A JP 6349293 A JP6349293 A JP 6349293A JP 3257855 B2 JP3257855 B2 JP 3257855B2
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Description
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、火傷などの創傷の被覆
に好適に用いられる材料に関する。さらに詳しくは、本
発明は創傷被覆材の交換時、或いは創傷が治癒した際
に、創傷面に実質的に損傷を与えることなく、容易に且
つ患者に苦痛を与えることなく離脱することが可能な創
傷被覆材に関する。
に好適に用いられる材料に関する。さらに詳しくは、本
発明は創傷被覆材の交換時、或いは創傷が治癒した際
に、創傷面に実質的に損傷を与えることなく、容易に且
つ患者に苦痛を与えることなく離脱することが可能な創
傷被覆材に関する。
【0002】本発明は更に、創傷面の感染を防止すると
同時に、治癒を促進させることが可能な創傷被覆材に関
する。
同時に、治癒を促進させることが可能な創傷被覆材に関
する。
【0003】
【従来の技術】従来、火傷をはじめとした創傷を被覆、
保護する目的で開発されてきた創傷被覆材は、構造上か
ら大別すると次の2種類に分類される。
保護する目的で開発されてきた創傷被覆材は、構造上か
ら大別すると次の2種類に分類される。
【0004】1)ガーゼのような織布状、不織布或い
は、スポンジなど代表される材料であり、有孔性に富む
ことを構造上の特徴とする。
は、スポンジなど代表される材料であり、有孔性に富む
ことを構造上の特徴とする。
【0005】2)キチン、コラーゲン、フィブリンなど
の生体由来材料、あるいはポリウレタン、シリコーンゴ
ム、シリコーンゲルのような人工材料からなるフィルム
で、有孔性が非常に乏しいことを特徴とする。
の生体由来材料、あるいはポリウレタン、シリコーンゴ
ム、シリコーンゲルのような人工材料からなるフィルム
で、有孔性が非常に乏しいことを特徴とする。
【0006】上記した両者のように、構造上全く異なっ
た材料には、それぞれ長所と短所がある。前者の有孔性
の高い織布、不織布、スポンジなどから構成される創傷
被覆材の長所は、創傷面から分泌される大量の滲出液を
孔中に保持すると同時に外部に排出することができるた
め、創傷面での滲出液の貯溜を防止し、感染などの頻度
を下げることができること、および有孔性が高いために
創傷被覆材の外側から抗菌剤、鎮痛剤あるいは治癒促進
剤のような薬剤を塗布し、創傷面に到達させることが可
能であることが挙げられる。また、有孔性の高い材料は
柔軟性が高く、複雑な形状をした創傷面にも良く密着す
ること、更には、創傷面に必要な酸素などが自由に通過
できることも特徴である。
た材料には、それぞれ長所と短所がある。前者の有孔性
の高い織布、不織布、スポンジなどから構成される創傷
被覆材の長所は、創傷面から分泌される大量の滲出液を
孔中に保持すると同時に外部に排出することができるた
め、創傷面での滲出液の貯溜を防止し、感染などの頻度
を下げることができること、および有孔性が高いために
創傷被覆材の外側から抗菌剤、鎮痛剤あるいは治癒促進
剤のような薬剤を塗布し、創傷面に到達させることが可
能であることが挙げられる。また、有孔性の高い材料は
柔軟性が高く、複雑な形状をした創傷面にも良く密着す
ること、更には、創傷面に必要な酸素などが自由に通過
できることも特徴である。
【0007】一方、これらの有孔性の高い材料の問題点
として最も重大なものは、材料の孔の中に組織の滲出液
あるいは組織が侵入して、材料の交換時或いは治癒後の
脱着が非常に困難になり、無理に上記材料を取り外す
と、せっかく治癒した組織が破損し治癒を大巾に遅らせ
るばかりでなく、取り外しに手間がかかり、同時に患者
に著しい苦痛を与えてしまうことである。
として最も重大なものは、材料の孔の中に組織の滲出液
あるいは組織が侵入して、材料の交換時或いは治癒後の
脱着が非常に困難になり、無理に上記材料を取り外す
と、せっかく治癒した組織が破損し治癒を大巾に遅らせ
るばかりでなく、取り外しに手間がかかり、同時に患者
に著しい苦痛を与えてしまうことである。
【0008】また、これらの有孔性の材料においては、
水分の蒸散性が高すぎて創傷面が過度に乾燥し治癒が遅
れること、大きな有孔性のため外部から細菌が創傷面に
到達できるというような問題点が指摘されている。
水分の蒸散性が高すぎて創傷面が過度に乾燥し治癒が遅
れること、大きな有孔性のため外部から細菌が創傷面に
到達できるというような問題点が指摘されている。
【0009】一方、有孔性に乏しい後者のフィルム性状
を有する材料の長所は、前述した有孔性材料の最大の問
題点である創傷面からの剥離の困難性が著しく改善され
ること、また該材料自身が高い細菌のバリヤー性を有し
ていること、また創傷面からの水分の過度の蒸散性を抑
え、創傷面の乾燥を防止できることなどである。
を有する材料の長所は、前述した有孔性材料の最大の問
題点である創傷面からの剥離の困難性が著しく改善され
ること、また該材料自身が高い細菌のバリヤー性を有し
ていること、また創傷面からの水分の過度の蒸散性を抑
え、創傷面の乾燥を防止できることなどである。
【0010】一方、有孔性の低い材料の最大の問題点
は、有孔性の高い材料の長所である滲出液の吸収性に乏
しく、創傷被覆材と創傷面との間に大量の滲出液が貯溜
し、細菌繁殖の良い温床になってしまうこと、および材
料の外側から治療薬を創傷面に到達させることが困難な
ことである。また、フィルム状の材料においては、複雑
な形状を有する創傷面への密着が困難であることなど種
々の問題が未解決のまま残されている。
は、有孔性の高い材料の長所である滲出液の吸収性に乏
しく、創傷被覆材と創傷面との間に大量の滲出液が貯溜
し、細菌繁殖の良い温床になってしまうこと、および材
料の外側から治療薬を創傷面に到達させることが困難な
ことである。また、フィルム状の材料においては、複雑
な形状を有する創傷面への密着が困難であることなど種
々の問題が未解決のまま残されている。
【0011】上記した種々の問題点を解消するために、
従来より幾つかの試みが行われてきた。例えば、有孔性
材料の致命的な問題点である創傷面からの離脱性を改善
するために、多孔質のレーヨン織布にワセリン軟膏をコ
ーティングしたもの(川上重彦ら、非固着性ガーゼ(ア
ダプチック)の表在性皮膚欠損層に対する臨床効果,基
礎と臨床,22,1113,1988)や、ナイロン織
布にシリコーンをコーティングしたもの(富士森良輔,
よりよいwound dressingを得るため、皮膚科の臨床,3
2,1403,1990)が開発されている。しかしな
がら、上記の材料では剥離性はある程度改善されるもの
の、欠損部の深度が深い創面に長期間使用すると剥離に
非常に困難を伴う。
従来より幾つかの試みが行われてきた。例えば、有孔性
材料の致命的な問題点である創傷面からの離脱性を改善
するために、多孔質のレーヨン織布にワセリン軟膏をコ
ーティングしたもの(川上重彦ら、非固着性ガーゼ(ア
ダプチック)の表在性皮膚欠損層に対する臨床効果,基
礎と臨床,22,1113,1988)や、ナイロン織
布にシリコーンをコーティングしたもの(富士森良輔,
よりよいwound dressingを得るため、皮膚科の臨床,3
2,1403,1990)が開発されている。しかしな
がら、上記の材料では剥離性はある程度改善されるもの
の、欠損部の深度が深い創面に長期間使用すると剥離に
非常に困難を伴う。
【0012】一方、有孔性の乏しいフィルム状の材料の
重大な問題点である創傷面からの滲出液の貯溜性を改善
するために、フィルム状の材料にスリットを入れたも
の、あるいはフィルム層の創傷面側に吸水性の不織布あ
るいはハイドロゲルをラミネートした材料が開発されて
いる(中村元信ら、ポリウレタン膜と吸水性不織布から
なる抗菌剤含有創傷被覆材の開発−I 基礎的評価,日
形会誌,12,443,1992,Fowler E.F. ら,A n
ew hydrogel wound dressing for the treatmentof ope
n wonnds ,Ostomy/Wound Management 37,39,1
991)。しかしながら、創傷面からの滲出液が多量の
場合は、吸水性不織布あるいは、ハイドロゲルの吸水能
力に限界があり、有孔性材料と比較すると創面での滲出
液の貯溜が認められる。
重大な問題点である創傷面からの滲出液の貯溜性を改善
するために、フィルム状の材料にスリットを入れたも
の、あるいはフィルム層の創傷面側に吸水性の不織布あ
るいはハイドロゲルをラミネートした材料が開発されて
いる(中村元信ら、ポリウレタン膜と吸水性不織布から
なる抗菌剤含有創傷被覆材の開発−I 基礎的評価,日
形会誌,12,443,1992,Fowler E.F. ら,A n
ew hydrogel wound dressing for the treatmentof ope
n wonnds ,Ostomy/Wound Management 37,39,1
991)。しかしながら、創傷面からの滲出液が多量の
場合は、吸水性不織布あるいは、ハイドロゲルの吸水能
力に限界があり、有孔性材料と比較すると創面での滲出
液の貯溜が認められる。
【0013】以上のように、有孔性材料の長所である滲
出液の吸収性および排出性が良いという性質、および被
覆材の外側から各種の薬剤を塗布し創面に到達させるこ
とのできるという性質と、非有孔性材料の長所である創
傷面からの剥離性が良好という両者の性質を併せ持つ効
果的な創傷被覆材料は、従来開発されていなかった。
出液の吸収性および排出性が良いという性質、および被
覆材の外側から各種の薬剤を塗布し創面に到達させるこ
とのできるという性質と、非有孔性材料の長所である創
傷面からの剥離性が良好という両者の性質を併せ持つ効
果的な創傷被覆材料は、従来開発されていなかった。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、上述
したように創傷面からの滲出液の吸収性に乏しいか或い
は創傷面からの離脱性に乏しいという従来の創傷被覆材
の問題点を同時に解決できる創傷被覆材を提供すること
にある。
したように創傷面からの滲出液の吸収性に乏しいか或い
は創傷面からの離脱性に乏しいという従来の創傷被覆材
の問題点を同時に解決できる創傷被覆材を提供すること
にある。
【0015】
【課題を解決するための手段】本発明者は鋭意研究の結
果、従来のゲル素材と全く異なった性質、すなわちゾル
ーゲル転移温度を有し、該転移温度よりも低い温度で可
逆的にゾル状態を示す高分子化合物を用いて創傷被覆材
を構成することが、上述した問題点の解消に極めて効果
的なことを見い出した。
果、従来のゲル素材と全く異なった性質、すなわちゾル
ーゲル転移温度を有し、該転移温度よりも低い温度で可
逆的にゾル状態を示す高分子化合物を用いて創傷被覆材
を構成することが、上述した問題点の解消に極めて効果
的なことを見い出した。
【0016】本発明の創傷被覆材は上記知見に基くもの
であり、曇点を有する複数のブロックと親水性のブロッ
クが結合してなり、水溶液中でゾルーゲル転移温度を有
し、該ゾルーゲル転移温度よりも低い温度で可逆的に液
体状態(ゾル状態)を示す高分子化合物を含むことを特
徴とするものである。本発明においては、上記ゾルーゲ
ル転移温度は0℃より高く40℃以下であることが好ま
しい。
であり、曇点を有する複数のブロックと親水性のブロッ
クが結合してなり、水溶液中でゾルーゲル転移温度を有
し、該ゾルーゲル転移温度よりも低い温度で可逆的に液
体状態(ゾル状態)を示す高分子化合物を含むことを特
徴とするものである。本発明においては、上記ゾルーゲ
ル転移温度は0℃より高く40℃以下であることが好ま
しい。
【0017】本発明によれば、更に、曇点を有する複数
のブロックと親水性のブロックが結合してなり、水溶液
中でゾルーゲル転移温度を有し、且つ、該ゾルーゲル転
移温度より低い温度で可逆的に液体状態(ゾル状態)を
示す高分子化合物と、抗菌剤とからなることを特徴とす
る創傷被覆材用の組成物が提供される。
のブロックと親水性のブロックが結合してなり、水溶液
中でゾルーゲル転移温度を有し、且つ、該ゾルーゲル転
移温度より低い温度で可逆的に液体状態(ゾル状態)を
示す高分子化合物と、抗菌剤とからなることを特徴とす
る創傷被覆材用の組成物が提供される。
【0018】本発明によれば、更に、曇点を有する複数
のブロックと親水性のブロックが結合してなり、水溶液
中でゾルーゲル転移温度を有し、且つ、該ゾルーゲル転
移温度よりも低い温度で可逆的に液体状態(ゾル状態)
を示す高分子化合物と、創傷治癒を促進させる物質とか
らなることを特徴とする創傷被覆材用の組成物が提供さ
れる。
のブロックと親水性のブロックが結合してなり、水溶液
中でゾルーゲル転移温度を有し、且つ、該ゾルーゲル転
移温度よりも低い温度で可逆的に液体状態(ゾル状態)
を示す高分子化合物と、創傷治癒を促進させる物質とか
らなることを特徴とする創傷被覆材用の組成物が提供さ
れる。
【0019】本発明によれば、更に、曇点を有する複数
のブロックと親水性のブロックが結合してなり、水溶液
中でゾルーゲル転移温度を有し、且つ、該ゾルーゲル転
移温度より低い温度で可逆的に液体状態(ゾル状態)を
示す高分子化合物を含み、且つ、形状がフィルム状,織
布状,不織布状,スポンジ状またはゲルフィルム状とな
るように成形加工されたことを特徴とする創傷被覆材が
提供される。
のブロックと親水性のブロックが結合してなり、水溶液
中でゾルーゲル転移温度を有し、且つ、該ゾルーゲル転
移温度より低い温度で可逆的に液体状態(ゾル状態)を
示す高分子化合物を含み、且つ、形状がフィルム状,織
布状,不織布状,スポンジ状またはゲルフィルム状とな
るように成形加工されたことを特徴とする創傷被覆材が
提供される。
【0020】本発明によれば、更に、曇点を有する複数
のブロックと親水性のブロックが結合してなり、水溶液
中でゾルーゲル転移温度を有し、且つ、該ゾルーゲル転
移温度より低い温度で可逆的に液体状態(ゾル状態)を
示す高分子化合物が、フィルム状,織布状,不織布状ま
たはスポンジ状の形態を有する支持体にコーティングさ
れていることを特徴とする創傷被覆材が提供される。
のブロックと親水性のブロックが結合してなり、水溶液
中でゾルーゲル転移温度を有し、且つ、該ゾルーゲル転
移温度より低い温度で可逆的に液体状態(ゾル状態)を
示す高分子化合物が、フィルム状,織布状,不織布状ま
たはスポンジ状の形態を有する支持体にコーティングさ
れていることを特徴とする創傷被覆材が提供される。
【0021】上述した本発明において、上記高分子化合
物の親水性部分は、上記したゾルーゲル転移温度より低
い温度で該高分子化合物が水溶性になるために必要であ
り、また疎水性部分は、該高分子がゾルーゲル転移温度
より高い温度でゲル状態に変化するために必要である。
換言すれば、該疎水性部分間の結合がゲルの架橋点の形
成のために必要である。
物の親水性部分は、上記したゾルーゲル転移温度より低
い温度で該高分子化合物が水溶性になるために必要であ
り、また疎水性部分は、該高分子がゾルーゲル転移温度
より高い温度でゲル状態に変化するために必要である。
換言すれば、該疎水性部分間の結合がゲルの架橋点の形
成のために必要である。
【0022】本発明の担体は、上記高分子化合物中の疎
水性部分間の結合、即ち疎水性結合の以下に記す性質を
利用したものである。
水性部分間の結合、即ち疎水性結合の以下に記す性質を
利用したものである。
【0023】疎水性結合は、その結合力が温度の上昇と
共に強くなるという性質を有し、温度上昇と共に架橋の
強さおよび架橋密度が増大するため、本発明の創傷被覆
材は、ゾルーゲル転移温度より高い温度でゲル状態を維
持し創傷被覆材としての機能を有している。また、上記
疎水性結合力の温度依存性が可逆的であるという性質に
よって、本発明においてはゾルーゲル転移が可逆的にお
こる。
共に強くなるという性質を有し、温度上昇と共に架橋の
強さおよび架橋密度が増大するため、本発明の創傷被覆
材は、ゾルーゲル転移温度より高い温度でゲル状態を維
持し創傷被覆材としての機能を有している。また、上記
疎水性結合力の温度依存性が可逆的であるという性質に
よって、本発明においてはゾルーゲル転移が可逆的にお
こる。
【0024】一方、上記高分子化合物中の親水性部分
は、前述したように、該高分子化合物がゾルーゲル転移
温度より低い温度で水溶性に変化し、創傷被覆材の交換
時あるいは創傷が治癒した時点で該創傷被覆材を創面か
ら容易に取りはずすことができるようにするために必要
であると同時に、上記温度より高い温度で疎水性結合力
が増大しすぎて上記高分子化合物がゾルーゲル転移温度
以上で凝集沈殿してしまうことを防止しつつ、含水ゲル
の状態を形成するためにも必要である。
は、前述したように、該高分子化合物がゾルーゲル転移
温度より低い温度で水溶性に変化し、創傷被覆材の交換
時あるいは創傷が治癒した時点で該創傷被覆材を創面か
ら容易に取りはずすことができるようにするために必要
であると同時に、上記温度より高い温度で疎水性結合力
が増大しすぎて上記高分子化合物がゾルーゲル転移温度
以上で凝集沈殿してしまうことを防止しつつ、含水ゲル
の状態を形成するためにも必要である。
【0025】水溶液中でゾルーゲル転移温度を有し、該
転移温度より低い温度で可逆的にゾル状態を示す高分子
化合物の具体例としては、例えば、ポリプロピレンオキ
サイドとポリエチレンオキサイドのブロック共重合体な
どに代表されるポリアルキレンオキサイドブロック共重
合体;メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロー
スなどのエーテル化セルロース;キトサン誘導体(K.R.
Holme. et al. Macromolecules, 24, 3828(19
91))などが知られている。
転移温度より低い温度で可逆的にゾル状態を示す高分子
化合物の具体例としては、例えば、ポリプロピレンオキ
サイドとポリエチレンオキサイドのブロック共重合体な
どに代表されるポリアルキレンオキサイドブロック共重
合体;メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロー
スなどのエーテル化セルロース;キトサン誘導体(K.R.
Holme. et al. Macromolecules, 24, 3828(19
91))などが知られている。
【0026】また、ポリプロピレンオキサイドの両端に
ポリエチレンオキサイドが結合したプルロニック(Pl
uronic)F−127(商品名,BASF Wyandotte C
hemicals Co.製)を用いた創傷被覆用ゲルが開発されて
いる(R.M.Nalbandian et al.,J. Biomed. Mater. Re
s., 6,583,1972; J. Biomed. Mater. Res.,
12,1135,1987)。
ポリエチレンオキサイドが結合したプルロニック(Pl
uronic)F−127(商品名,BASF Wyandotte C
hemicals Co.製)を用いた創傷被覆用ゲルが開発されて
いる(R.M.Nalbandian et al.,J. Biomed. Mater. Re
s., 6,583,1972; J. Biomed. Mater. Res.,
12,1135,1987)。
【0027】このプルロニックF−127の高濃度水溶
液は約20℃以上でハイドロゲルとなり、これより低い
温度で水溶液となることが知られている。しかしなが
ら、この材料の場合は約20wt%以上の高濃度でしか
ゲル状態にはならず、また約20wt%以上の高濃度で
ゲル化温度以上に保持しても、さらに水を加えるとゲル
が溶解してしまう。したがって、プルロニックF−12
7ゲルを単に創面に塗布した場合には、創面からの滲出
液などによって溶解してしまい、創面上で安定したゲル
状態を維持することが困難である。また、プルロニック
F−127は分子量が比較的小さく、約20wt%以上
の高濃度のゲル状態で非常に高い浸透圧を示すと同時に
細胞膜を容易に透過するので、創面に悪影響を及ぼす可
能性がある。
液は約20℃以上でハイドロゲルとなり、これより低い
温度で水溶液となることが知られている。しかしなが
ら、この材料の場合は約20wt%以上の高濃度でしか
ゲル状態にはならず、また約20wt%以上の高濃度で
ゲル化温度以上に保持しても、さらに水を加えるとゲル
が溶解してしまう。したがって、プルロニックF−12
7ゲルを単に創面に塗布した場合には、創面からの滲出
液などによって溶解してしまい、創面上で安定したゲル
状態を維持することが困難である。また、プルロニック
F−127は分子量が比較的小さく、約20wt%以上
の高濃度のゲル状態で非常に高い浸透圧を示すと同時に
細胞膜を容易に透過するので、創面に悪影響を及ぼす可
能性がある。
【0028】一方、メチルセルロース,ヒドロキシプロ
ピルセルロースなどに代表されるエーテル化セルロース
の場合は、ゾルーゲル転移温度が高く約45℃以上であ
る(N.Sarkar, J. Appl. Polym. Science, 24,10
73,1979)。したがって、このようなエーテル化
セルロースを単に本発明の創傷被覆材に応用した場合に
は、創面の温度は少くとも37℃以下であるために、該
素材はゾル状態であり、創面からの滲出液などによって
溶解してしまうために不都合である。
ピルセルロースなどに代表されるエーテル化セルロース
の場合は、ゾルーゲル転移温度が高く約45℃以上であ
る(N.Sarkar, J. Appl. Polym. Science, 24,10
73,1979)。したがって、このようなエーテル化
セルロースを単に本発明の創傷被覆材に応用した場合に
は、創面の温度は少くとも37℃以下であるために、該
素材はゾル状態であり、創面からの滲出液などによって
溶解してしまうために不都合である。
【0029】また、上記したキトサン誘導体のゾルーゲ
ル転移温度も高く約50℃である(K. R. Holme, et a
l., Macromolecules, 24,3828(199
1))。したがって、このようなキトサン誘導体を単に
本発明の創傷被覆材に応用した場合には、創面の温度は
少くとも37℃以下であるために、該素材はゾル状態で
あり創面からの滲出液などによって溶解してしまうため
に不都合である。
ル転移温度も高く約50℃である(K. R. Holme, et a
l., Macromolecules, 24,3828(199
1))。したがって、このようなキトサン誘導体を単に
本発明の創傷被覆材に応用した場合には、創面の温度は
少くとも37℃以下であるために、該素材はゾル状態で
あり創面からの滲出液などによって溶解してしまうため
に不都合である。
【0030】上記したように、水溶液中でゾルーゲル転
移点を有し、且つ該転移温度より低い温度で可逆的にゾ
ル状態を示す従来の高分子化合物の問題点は、 1)ゾルーゲル転移温度以上で一旦ゲル化しても、さら
に水を添加するとゲルが溶解してしまうこと、 2)ゾルーゲル転移温度が体温(37℃近辺)よりも高
く、体温ではゾル状態であること、 3)ゲル化させるためには、水溶液の高分子化合物濃度
を非常に高くする必要があること、などである。
移点を有し、且つ該転移温度より低い温度で可逆的にゾ
ル状態を示す従来の高分子化合物の問題点は、 1)ゾルーゲル転移温度以上で一旦ゲル化しても、さら
に水を添加するとゲルが溶解してしまうこと、 2)ゾルーゲル転移温度が体温(37℃近辺)よりも高
く、体温ではゾル状態であること、 3)ゲル化させるためには、水溶液の高分子化合物濃度
を非常に高くする必要があること、などである。
【0031】本発明者の検討によれば、曇点を有する複
数のブロックと親水性のブロックが結合してなり、水溶
液中でゾルーゲル転移温度を有し、且つ、ゾルーゲル転
移温度より低い温度で可逆的にゾル状態を示す高分子化
合物を用いて創傷被覆材を構成した場合に、上記問題は
解決されることが判明した。
数のブロックと親水性のブロックが結合してなり、水溶
液中でゾルーゲル転移温度を有し、且つ、ゾルーゲル転
移温度より低い温度で可逆的にゾル状態を示す高分子化
合物を用いて創傷被覆材を構成した場合に、上記問題は
解決されることが判明した。
【0032】以下、本発明を更に詳細に説明する。
【0033】(ゾルーゲル転移温度)本発明において
「ゾル状態」「ゲル状態」および「ゾルーゲル転移温
度」は以下のように定義される。この定義については文
献(Polymer Journal.18(5),411−416(1
986))を参照することができる。
「ゾル状態」「ゲル状態」および「ゾルーゲル転移温
度」は以下のように定義される。この定義については文
献(Polymer Journal.18(5),411−416(1
986))を参照することができる。
【0034】高分子溶液1mLを内径1cmの試験管に
入れ、所定の温度(一定温度)とした水浴中で12時間
保持する。この後、試験管の上下を逆にした場合に、溶
液/空気の界面(メニスカス)が溶液の自重で変形した
場合(溶液が流出した場合を含む)には、上記所定温度
において高分子溶液は「ゾル状態」であると定義する。
一方、上記試験管の上下を逆にしても、上記した溶液/
空気の界面(メニスカス)が溶液の自重で変形しない場
合には、該溶液は、上記所定温度において「ゲル状態」
であると定義する。
入れ、所定の温度(一定温度)とした水浴中で12時間
保持する。この後、試験管の上下を逆にした場合に、溶
液/空気の界面(メニスカス)が溶液の自重で変形した
場合(溶液が流出した場合を含む)には、上記所定温度
において高分子溶液は「ゾル状態」であると定義する。
一方、上記試験管の上下を逆にしても、上記した溶液/
空気の界面(メニスカス)が溶液の自重で変形しない場
合には、該溶液は、上記所定温度において「ゲル状態」
であると定義する。
【0035】一方、上記測定において、濃度が例えば約
3wt%の高分子溶液を用い、上記した「所定温度」を
徐々に(例えば1℃きざみで)上昇させて「ゾル状態」
が「ゲル状態」に転移する温度を求めた場合、これによ
って求められる転移温度を「ゾルーゲル転移温度」と定
義する(この際、「所定温度」を例えば1℃きざみで下
降させ、「ゲル状態」が「ゾル状態」に転移する温度を
求めてもよい)。
3wt%の高分子溶液を用い、上記した「所定温度」を
徐々に(例えば1℃きざみで)上昇させて「ゾル状態」
が「ゲル状態」に転移する温度を求めた場合、これによ
って求められる転移温度を「ゾルーゲル転移温度」と定
義する(この際、「所定温度」を例えば1℃きざみで下
降させ、「ゲル状態」が「ゾル状態」に転移する温度を
求めてもよい)。
【0036】本発明においては、上記ゾルーゲル転移温
度は0℃より高く、50℃以下であることが好ましく、
更には4℃以上37℃以下であることが、創面組織の熱
的損傷を防ぐ点から好ましい。このように好適なゾルー
ゲル転移温度を有する高分子化合物は、後述するような
具体的な化合物の中から、上記したスクリーニング方法
(ゾルーゲル転移温度測定法)に従って容易に選択する
ことができる。
度は0℃より高く、50℃以下であることが好ましく、
更には4℃以上37℃以下であることが、創面組織の熱
的損傷を防ぐ点から好ましい。このように好適なゾルー
ゲル転移温度を有する高分子化合物は、後述するような
具体的な化合物の中から、上記したスクリーニング方法
(ゾルーゲル転移温度測定法)に従って容易に選択する
ことができる。
【0037】本発明の創傷被覆材においては、上記した
ゾルーゲル転移温度(a℃)を、創傷被覆材使用時の温
度(b℃)と、創傷被覆材を創面から取りはずす時の温
度(c℃)との間に設定することが好ましい。すなわ
ち、上記した3種の温度a℃,b℃、およびc℃の間に
はb>a>cの関係があることが好ましい。より具体的
には(b−a)は1〜35℃、更には2〜30℃である
ことが好ましく、また(a−c)は1〜35℃、更には
2〜30℃であることが好ましい。
ゾルーゲル転移温度(a℃)を、創傷被覆材使用時の温
度(b℃)と、創傷被覆材を創面から取りはずす時の温
度(c℃)との間に設定することが好ましい。すなわ
ち、上記した3種の温度a℃,b℃、およびc℃の間に
はb>a>cの関係があることが好ましい。より具体的
には(b−a)は1〜35℃、更には2〜30℃である
ことが好ましく、また(a−c)は1〜35℃、更には
2〜30℃であることが好ましい。
【0038】(曇点を有する複数のブロック)曇点を有
するブロックとしては、水に対する溶解度温度係数が負
を示す高分子化合物であることが好ましく、より具体的
には、ポリプロピレンオキサイド、プロピレンオキサイ
ドと他のアルキレンオキサイドとの共重合体、ポリN−
置換アクリルアミド誘導体、ポリN−置換メタアクリル
アミド誘導体、N−置換アクリルアミド誘導体とN−置
換メタアクリルアミド誘導体との共重合体、ポリビニル
メチルエーテル、ポリビニルアルコール部分酢化物から
なる群より選ばれる高分子化合物が好ましく用いられ
る。上記の高分子化合物(曇点を有するブロック)の曇
点が0℃より高く40℃以下であることが、本発明の高
分子化合物(曇点を有する複数のブロックと親水性のブ
ロックが結合した化合物)のゾルーゲル転移温度を0℃
より高く40℃以下とする点から好ましい。
するブロックとしては、水に対する溶解度温度係数が負
を示す高分子化合物であることが好ましく、より具体的
には、ポリプロピレンオキサイド、プロピレンオキサイ
ドと他のアルキレンオキサイドとの共重合体、ポリN−
置換アクリルアミド誘導体、ポリN−置換メタアクリル
アミド誘導体、N−置換アクリルアミド誘導体とN−置
換メタアクリルアミド誘導体との共重合体、ポリビニル
メチルエーテル、ポリビニルアルコール部分酢化物から
なる群より選ばれる高分子化合物が好ましく用いられ
る。上記の高分子化合物(曇点を有するブロック)の曇
点が0℃より高く40℃以下であることが、本発明の高
分子化合物(曇点を有する複数のブロックと親水性のブ
ロックが結合した化合物)のゾルーゲル転移温度を0℃
より高く40℃以下とする点から好ましい。
【0039】ここで曇点の測定は、例えば、上記の高分
子化合物(曇点を有するブロック)の約1wt%の水溶
液を冷却して透明な均一溶液とした後、除々に昇温(昇
温速度約1℃/min)して、該溶液がはじめて白濁す
る点を曇点とすることによって行うことが可能である。
子化合物(曇点を有するブロック)の約1wt%の水溶
液を冷却して透明な均一溶液とした後、除々に昇温(昇
温速度約1℃/min)して、該溶液がはじめて白濁す
る点を曇点とすることによって行うことが可能である。
【0040】本発明に使用可能なポリN−置換アクリル
アミド誘導体、ポリN−置換メタアクリルアミド誘導体
の具体的な例を以下に列挙する。
アミド誘導体、ポリN−置換メタアクリルアミド誘導体
の具体的な例を以下に列挙する。
【0041】ポリ−N−アクロイルピペリジン;ポリ−
N−n−プロピルメタアクリルアミド;ポリ−N−イソ
プロピルアクリルアミド;ポリ−N,N−ジエチルアク
リルアミド;ポリ−N−イソプロピルメタアクリルアミ
ド;ポリ−N−シクロプロピルアクリルアミド;ポリ−
N−アクリロイルピロリジン;ポリ−N,N−エチルメ
チルアクリルアミド;ポリ−N−シクロプロピルメタア
クリルアミド;ポリ−N−エチルアクリルアミド 上記の高分子は単独重合体(ホモポリマー)であって
も、上記重合体を構成する単量体と他の単量体との共重
合体であってもよい。このような共重合体を構成する他
の単量体としては、親水性単量体、疎水性単量体のいず
れも用いることができる。一般的には、親水性単量体と
共重合すると生成物の曇点は上昇し、疎水性単量体と共
重合すると生成物の曇点は下降する。従って、これらの
共重合すべき単量体を選択することによっても、所望の
曇点(例えば0℃より高く40℃以下の曇点)を有する
高分子化合物を得ることができる。
N−n−プロピルメタアクリルアミド;ポリ−N−イソ
プロピルアクリルアミド;ポリ−N,N−ジエチルアク
リルアミド;ポリ−N−イソプロピルメタアクリルアミ
ド;ポリ−N−シクロプロピルアクリルアミド;ポリ−
N−アクリロイルピロリジン;ポリ−N,N−エチルメ
チルアクリルアミド;ポリ−N−シクロプロピルメタア
クリルアミド;ポリ−N−エチルアクリルアミド 上記の高分子は単独重合体(ホモポリマー)であって
も、上記重合体を構成する単量体と他の単量体との共重
合体であってもよい。このような共重合体を構成する他
の単量体としては、親水性単量体、疎水性単量体のいず
れも用いることができる。一般的には、親水性単量体と
共重合すると生成物の曇点は上昇し、疎水性単量体と共
重合すると生成物の曇点は下降する。従って、これらの
共重合すべき単量体を選択することによっても、所望の
曇点(例えば0℃より高く40℃以下の曇点)を有する
高分子化合物を得ることができる。
【0042】上記親水性単量体としては、N−ビニルピ
ロリドン、ビニルピリジン、アクリルアミド、メタアク
リルアミド、N−メチルアクリルアミド、ヒドロキシエ
チルメタアクリレート、ヒドロキシエチルアクリレー
ト、ヒドロキシメチルメタアクリレート、ヒドロキシメ
チルアクリレート、酸性基を有するアクリル酸、メタア
クリル酸およびそれらの塩、ビニルスルホン酸、スチレ
ンスルホン酸など、並びに塩基性基を有するN,N−ジ
メチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジエチル
アミノエチルメタクリート、N,N−ジメチルアミノプ
ロピルアクリルアミドおよびそれらの塩などが挙げられ
るが、これらに限定されるものではない。
ロリドン、ビニルピリジン、アクリルアミド、メタアク
リルアミド、N−メチルアクリルアミド、ヒドロキシエ
チルメタアクリレート、ヒドロキシエチルアクリレー
ト、ヒドロキシメチルメタアクリレート、ヒドロキシメ
チルアクリレート、酸性基を有するアクリル酸、メタア
クリル酸およびそれらの塩、ビニルスルホン酸、スチレ
ンスルホン酸など、並びに塩基性基を有するN,N−ジ
メチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジエチル
アミノエチルメタクリート、N,N−ジメチルアミノプ
ロピルアクリルアミドおよびそれらの塩などが挙げられ
るが、これらに限定されるものではない。
【0043】一方、上記疎水性単量体としては、エチル
アクリレート、メチルメタクリレート、グリシジルメタ
クリレート等のアクリレート誘導体およびメタクリレー
ト誘導体、N−n−ブチルメタアクリルアミドなどのN
−置換アルキルメタアクリルアミド誘導体、塩化ビニ
ル、アクリロニトリル、スチレン、酢酸ビニルなどが挙
げられるが、これらに限定されるものではない。
アクリレート、メチルメタクリレート、グリシジルメタ
クリレート等のアクリレート誘導体およびメタクリレー
ト誘導体、N−n−ブチルメタアクリルアミドなどのN
−置換アルキルメタアクリルアミド誘導体、塩化ビニ
ル、アクリロニトリル、スチレン、酢酸ビニルなどが挙
げられるが、これらに限定されるものではない。
【0044】(親水性のブロック)一方、上記した曇点
を有するブロックと結合すべき親水性のブロックとして
は、具体的には、メチルセルロース、デキストラン、ポ
リエチレンオキサイド、ポリビニルアルコール、ポリN
−ビニルピロリドン、ポリビニルピリジン、ポリアクリ
ルアミド、ポリメタアクリルアミド、ポリN−メチルア
クリルアミド、ポリヒドロキシメチルアクリレート、ポ
リアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリビニルスルホン
酸、ポリスチレンスルホン酸およびそれらの塩;ポリ
N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、ポリ
N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレート、ポリ
N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミドおよび
それらの塩などが挙げられる。
を有するブロックと結合すべき親水性のブロックとして
は、具体的には、メチルセルロース、デキストラン、ポ
リエチレンオキサイド、ポリビニルアルコール、ポリN
−ビニルピロリドン、ポリビニルピリジン、ポリアクリ
ルアミド、ポリメタアクリルアミド、ポリN−メチルア
クリルアミド、ポリヒドロキシメチルアクリレート、ポ
リアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリビニルスルホン
酸、ポリスチレンスルホン酸およびそれらの塩;ポリ
N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、ポリ
N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレート、ポリ
N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミドおよび
それらの塩などが挙げられる。
【0045】曇点を有するブロックと上記の親水性のブ
ロックとを結合する方法は特に制限されないが、例えば
上記いずれかのブロック中に重合性官能基(例えばアク
リロイル基)を導入し、他方のブロックを与える単量体
を共重合させることによって行うことができる。
ロックとを結合する方法は特に制限されないが、例えば
上記いずれかのブロック中に重合性官能基(例えばアク
リロイル基)を導入し、他方のブロックを与える単量体
を共重合させることによって行うことができる。
【0046】また、曇点を有するブロックと上記の親水
性のブロックとの結合物は、曇点を有するブロックを与
える単量体と、親水性のブロックを与える単量体とのブ
ロック共重合によって得ることも可能である。
性のブロックとの結合物は、曇点を有するブロックを与
える単量体と、親水性のブロックを与える単量体とのブ
ロック共重合によって得ることも可能である。
【0047】また、曇点を有するブロックと親水性のブ
ロックとの結合は、予め両者に反応活性な官能基(例え
ば水酸基、アミノ基、カルボキシル基、イソシアネート
基など)を導入し、両者を化学反応により結合させるこ
とによって行うこともできる。この際、親水性のブロッ
ク中には通常、反応活性な官能基を複数導入する。
ロックとの結合は、予め両者に反応活性な官能基(例え
ば水酸基、アミノ基、カルボキシル基、イソシアネート
基など)を導入し、両者を化学反応により結合させるこ
とによって行うこともできる。この際、親水性のブロッ
ク中には通常、反応活性な官能基を複数導入する。
【0048】また、曇点を有するポリプロピレンオキサ
イドと親水性のブロックとの結合は、例えば、アニオン
重合またはカチオン重合で、プロピレンオキサイドと
「他の水溶性高分子」を構成するモノマー(例えばエチ
レンオキサイド)とを繰り返し逐次重合させることで、
ポリプロピレンオキサイドと「他の水溶性高分子」(例
えばポリエチレンオキサイド)が結合したブロック共重
合体を得ることができる。このようなブロック共重合体
は、ポリプロピレンオキサイドの末端に重合性基(例え
ばアクリロイル基)を導入後、水溶性高分子を構成する
モノマーを共重合させることによっても得ることができ
る。
イドと親水性のブロックとの結合は、例えば、アニオン
重合またはカチオン重合で、プロピレンオキサイドと
「他の水溶性高分子」を構成するモノマー(例えばエチ
レンオキサイド)とを繰り返し逐次重合させることで、
ポリプロピレンオキサイドと「他の水溶性高分子」(例
えばポリエチレンオキサイド)が結合したブロック共重
合体を得ることができる。このようなブロック共重合体
は、ポリプロピレンオキサイドの末端に重合性基(例え
ばアクリロイル基)を導入後、水溶性高分子を構成する
モノマーを共重合させることによっても得ることができ
る。
【0049】更には、水溶性高分子中に、ポリプロピレ
ンオキサイド末端の官能基(例えば水酸基)と結合反応
し得る官能基を導入し、両者を反応させることによって
も、本発明に用いる高分子化合物を得ることができる。
また、ポリプロピレングリコールの両端にポリエチレン
グリコールが結合した、プルロニック F−127(商
品名、旭電化工業(株)製)のような材料を連結させる
ことによっても、本発明に用いる高分子化合物を得るこ
とができる。
ンオキサイド末端の官能基(例えば水酸基)と結合反応
し得る官能基を導入し、両者を反応させることによって
も、本発明に用いる高分子化合物を得ることができる。
また、ポリプロピレングリコールの両端にポリエチレン
グリコールが結合した、プルロニック F−127(商
品名、旭電化工業(株)製)のような材料を連結させる
ことによっても、本発明に用いる高分子化合物を得るこ
とができる。
【0050】本発明の高分子化合物は、曇点より低い温
度においては、分子内に存在する上記「曇点を有するブ
ロック」が親水性のブロックとともに水溶性であるの
で、完全に水に溶解し、ゾル状態を示す。
度においては、分子内に存在する上記「曇点を有するブ
ロック」が親水性のブロックとともに水溶性であるの
で、完全に水に溶解し、ゾル状態を示す。
【0051】しかし、この高分子化合物の水溶液の温度
を上記曇点以上に加温すると、分子内に存在する「曇点
を有するブロック」が疎水性となり、疎水的相互作用に
よって、別個の分子間で会合する。
を上記曇点以上に加温すると、分子内に存在する「曇点
を有するブロック」が疎水性となり、疎水的相互作用に
よって、別個の分子間で会合する。
【0052】一方、親水性のブロックは、この時(曇点
以上に加温された際)でも水溶性であるので、本発明の
高分子化合物は水中において、曇点を有するブロック間
の疎水性会合部を架橋点とした三次元網目構造を持つハ
イドロゲルを生成する。このハイドロゲルの温度を再
び、分子内に存在する「曇点を有するブロック」の曇点
より低い温度に冷却すると、該曇点を有するブロックが
水溶性となり、疎水性会合による架橋点が解放され、ハ
イドロゲル構造が消失して、本発明の高分子化合物は、
再び完全な水溶液となる。このように、本発明の高分子
化合物のゾルーゲル転移は、分子内に存在する曇点を有
するブロックの該曇点における可逆的な親水性、疎水性
の変化に基づくものであるので、温度変化に対応して、
完全な可逆性を有する。
以上に加温された際)でも水溶性であるので、本発明の
高分子化合物は水中において、曇点を有するブロック間
の疎水性会合部を架橋点とした三次元網目構造を持つハ
イドロゲルを生成する。このハイドロゲルの温度を再
び、分子内に存在する「曇点を有するブロック」の曇点
より低い温度に冷却すると、該曇点を有するブロックが
水溶性となり、疎水性会合による架橋点が解放され、ハ
イドロゲル構造が消失して、本発明の高分子化合物は、
再び完全な水溶液となる。このように、本発明の高分子
化合物のゾルーゲル転移は、分子内に存在する曇点を有
するブロックの該曇点における可逆的な親水性、疎水性
の変化に基づくものであるので、温度変化に対応して、
完全な可逆性を有する。
【0053】本発明者の知見によれば、本発明に用いる
高分子化合物をゾルーゲル転移温度以上の温度でゲル化
させた後に更に多量(体積比で、ゲルの0.1〜100
倍程度)の水を加えても、該ゲルは溶解することはな
い。
高分子化合物をゾルーゲル転移温度以上の温度でゲル化
させた後に更に多量(体積比で、ゲルの0.1〜100
倍程度)の水を加えても、該ゲルは溶解することはな
い。
【0054】本発明の創傷被覆材は、上記したゾルーゲ
ル転移温度を有する高分子化合物を少なくとも含むもの
であるが、必要に応じて他の成分を含んでいてもよい。
このような態様における「他の成分」としては、後述す
る抗菌剤、創傷治癒促進物質の他に、例えば、鎮痛剤等
が挙げられる。この場合、「他の成分」は、ゾルーゲル
転移温度を有する高分子化合物100(重量)部に対し
て、0.5〜30部、更には1〜10部の範囲で用いる
ことが好ましい。
ル転移温度を有する高分子化合物を少なくとも含むもの
であるが、必要に応じて他の成分を含んでいてもよい。
このような態様における「他の成分」としては、後述す
る抗菌剤、創傷治癒促進物質の他に、例えば、鎮痛剤等
が挙げられる。この場合、「他の成分」は、ゾルーゲル
転移温度を有する高分子化合物100(重量)部に対し
て、0.5〜30部、更には1〜10部の範囲で用いる
ことが好ましい。
【0055】(抗菌剤)本発明においては抗菌剤とし
て、現在臨床で汎く用いられている外用抗菌剤が好まし
く用いられる。より具体的には、例えば硝酸銀、パラ−
アミノベンゼンスルファミド、ゲンタマイシン(gentam
ycin)、銀スルファジアジン(silver sulfadiazine)、
ナリジクス酸、ピロミド酸、ピペミド酸、ノルフロキサ
シン、オフロキサシン、シプロフロキサシンなどが好ま
しく用いられるが、これらに限定されるものではない。
て、現在臨床で汎く用いられている外用抗菌剤が好まし
く用いられる。より具体的には、例えば硝酸銀、パラ−
アミノベンゼンスルファミド、ゲンタマイシン(gentam
ycin)、銀スルファジアジン(silver sulfadiazine)、
ナリジクス酸、ピロミド酸、ピペミド酸、ノルフロキサ
シン、オフロキサシン、シプロフロキサシンなどが好ま
しく用いられるが、これらに限定されるものではない。
【0056】上記抗菌剤は、本発明の高分子化合物10
0部に対して、0.5〜30部、更には1〜10部の範
囲で用いることが好ましい。
0部に対して、0.5〜30部、更には1〜10部の範
囲で用いることが好ましい。
【0057】(創傷治癒促進物質)本発明においては創
傷治癒を促進させる物質として、組織への親和性を高め
ると同時に上皮化を促進させる効果を有する細胞外マト
リックスが特に好ましく使用される。より具体的には、
例えば細胞外マトリックスとしては、各種タイプのコラ
ーゲン、フイブロネクチン、ビトロネクチン、ラミニ
ン、プロテオグリコン、グリコサミノグリカンなどが好
ましく用いられる。また、細胞外マトリックス以外に
も、コラーゲンの熱変性物であるゼラチン等も同様の効
果を有するので、上記細胞外マトリックスと同様に用い
ることが可能である。
傷治癒を促進させる物質として、組織への親和性を高め
ると同時に上皮化を促進させる効果を有する細胞外マト
リックスが特に好ましく使用される。より具体的には、
例えば細胞外マトリックスとしては、各種タイプのコラ
ーゲン、フイブロネクチン、ビトロネクチン、ラミニ
ン、プロテオグリコン、グリコサミノグリカンなどが好
ましく用いられる。また、細胞外マトリックス以外に
も、コラーゲンの熱変性物であるゼラチン等も同様の効
果を有するので、上記細胞外マトリックスと同様に用い
ることが可能である。
【0058】上記創傷治癒促進物質は、本発明の高分子
化合物100部に対して、0.1〜50部、更には1〜
20部の範囲で用いることが好ましい。
化合物100部に対して、0.1〜50部、更には1〜
20部の範囲で用いることが好ましい。
【0059】(創傷被覆材の製造方法)次に、本発明の
創傷被覆材の製造方法の具体的な例を示す。
創傷被覆材の製造方法の具体的な例を示す。
【0060】例えば、本発明の高分子化合物を有機溶媒
に溶解するか、またはゾルーゲル転移温度より低い温度
で水に溶解し、該溶液をソルベントキャスティング(so
lvent casting ;溶液流延)することによって、上記高
分子化合物のフィルムから成る創傷被覆材を作成するこ
とができる。また、該高分子化合物溶液を、ガーゼに代
表される織布、不織布、スポンジあるいはフィルム状の
支持体にコーティングした後に溶媒を乾燥除去すること
によって、支持体表面に該高分子化合物がコーティング
された創傷被覆材を作成することができる。このように
支持体表面に上記高分子化合物がコーティングされた態
様においては、支持体1cm2 あたり、(乾燥重量で)
上記高分子化合物が0.1〜50mg程度、更には0.
5〜10mg程度コーティングされていることが好まし
い。
に溶解するか、またはゾルーゲル転移温度より低い温度
で水に溶解し、該溶液をソルベントキャスティング(so
lvent casting ;溶液流延)することによって、上記高
分子化合物のフィルムから成る創傷被覆材を作成するこ
とができる。また、該高分子化合物溶液を、ガーゼに代
表される織布、不織布、スポンジあるいはフィルム状の
支持体にコーティングした後に溶媒を乾燥除去すること
によって、支持体表面に該高分子化合物がコーティング
された創傷被覆材を作成することができる。このように
支持体表面に上記高分子化合物がコーティングされた態
様においては、支持体1cm2 あたり、(乾燥重量で)
上記高分子化合物が0.1〜50mg程度、更には0.
5〜10mg程度コーティングされていることが好まし
い。
【0061】更には、上記高分子化合物溶液に上記した
抗菌剤あるいは治癒を促進する物質等を溶解または混合
した後に、上記と同様の方法でソルベントキャスティン
グすることによって、上記物質を含有する高分子化合物
フィルム、あるいは支持体の表面に該高分子化合物フィ
ルムがコーティングされた創傷被覆材を作製することが
できる。
抗菌剤あるいは治癒を促進する物質等を溶解または混合
した後に、上記と同様の方法でソルベントキャスティン
グすることによって、上記物質を含有する高分子化合物
フィルム、あるいは支持体の表面に該高分子化合物フィ
ルムがコーティングされた創傷被覆材を作製することが
できる。
【0062】更には、上記高分子化合物をゾルーゲル転
移温度より低い温度で水に溶解し、該高分子化合物の水
溶液を水の氷点以下に冷却することによって凍結した後
に、該凍結物を真空乾燥する方法、いわゆる凍結乾燥法
によって、連通多孔性を有する上記高分子化合物のスポ
ンジを作成することができる。また、上記高分子化合物
の水溶液をゾル−ゲル転移温度より低い温度で、ガーゼ
に代表される織布、不織布、スポンジあるいはフィルム
状の支持体にコーティングした後に、該コーティング物
を上記と同様の方法により凍結乾燥することによって、
支持体表面に連通多孔性の高分子化合物スポンジがコー
ティングされた創傷被覆材を作製することが可能であ
る。
移温度より低い温度で水に溶解し、該高分子化合物の水
溶液を水の氷点以下に冷却することによって凍結した後
に、該凍結物を真空乾燥する方法、いわゆる凍結乾燥法
によって、連通多孔性を有する上記高分子化合物のスポ
ンジを作成することができる。また、上記高分子化合物
の水溶液をゾル−ゲル転移温度より低い温度で、ガーゼ
に代表される織布、不織布、スポンジあるいはフィルム
状の支持体にコーティングした後に、該コーティング物
を上記と同様の方法により凍結乾燥することによって、
支持体表面に連通多孔性の高分子化合物スポンジがコー
ティングされた創傷被覆材を作製することが可能であ
る。
【0063】また、上記高分子化合物をゾル−ゲル転移
温度より低い温度で水に溶解し、該水溶液に上記した抗
菌剤あるいは治癒を促進する物質等を同時に溶解、また
は混合した後、上記と同様に凍結乾燥することによっ
て、上記の物質を含有する高分子化合物の連通多孔性ス
ポンジ、あるいは支持体表面にコーティングされた高分
子化合物の連通多孔性スポンジから成る創傷被覆材を作
製することができる。
温度より低い温度で水に溶解し、該水溶液に上記した抗
菌剤あるいは治癒を促進する物質等を同時に溶解、また
は混合した後、上記と同様に凍結乾燥することによっ
て、上記の物質を含有する高分子化合物の連通多孔性ス
ポンジ、あるいは支持体表面にコーティングされた高分
子化合物の連通多孔性スポンジから成る創傷被覆材を作
製することができる。
【0064】(創傷被覆材の使用方法)次に、本発明の
創傷被覆材を実際に使用する際の使用方法の一例につい
て、具体的に述べる。
創傷被覆材を実際に使用する際の使用方法の一例につい
て、具体的に述べる。
【0065】本発明の創傷被覆材を、乾燥状態、あるい
は上記高分子化合物のゾル−ゲル転移温度より高い温度
の生理的食塩水に浸漬処理した状態で、創面に張り付け
創面を被覆する。
は上記高分子化合物のゾル−ゲル転移温度より高い温度
の生理的食塩水に浸漬処理した状態で、創面に張り付け
創面を被覆する。
【0066】該創傷被覆材の交換時、あるいは創面が治
癒し該被覆材を創面から取り外す際には、上記ゾル−ゲ
ル転移温度より低い温度(特に好ましくは、4℃近辺の
温度)の水、生理食塩水によって該創傷被覆材を湿潤状
態にすることにより、該創傷被覆材を構成する高分子化
合物を水溶性に変化させ、創傷被覆材を創面から剥離さ
せることができる。したがって、本発明の被覆材の基材
そのもの、あるいは支持体の創面との接触部分の基材が
溶解するために、被覆材の剥離が極めて容易になり、治
癒過程の創面に何らの損傷を与えることなく、また患者
に苦痛を与えることなく、被覆材の交換ないし離脱が可
能となる。
癒し該被覆材を創面から取り外す際には、上記ゾル−ゲ
ル転移温度より低い温度(特に好ましくは、4℃近辺の
温度)の水、生理食塩水によって該創傷被覆材を湿潤状
態にすることにより、該創傷被覆材を構成する高分子化
合物を水溶性に変化させ、創傷被覆材を創面から剥離さ
せることができる。したがって、本発明の被覆材の基材
そのもの、あるいは支持体の創面との接触部分の基材が
溶解するために、被覆材の剥離が極めて容易になり、治
癒過程の創面に何らの損傷を与えることなく、また患者
に苦痛を与えることなく、被覆材の交換ないし離脱が可
能となる。
【0067】以下に実施例を示し、本発明を更に具体的
に説明するが、本発明の範囲は特許請求の範囲により限
定されるものであり、以下の実施例により限定されるも
のではない。
に説明するが、本発明の範囲は特許請求の範囲により限
定されるものであり、以下の実施例により限定されるも
のではない。
【0068】
【実施例】実施例1 トリメチロールプロパン1モルに対し、エチレンオキサ
イド160モルをカチオン重合により付加して、ポリエ
チレンオキサイドトリオールを得た。このポリエチレン
オキサイドトリオール0.02モルを蒸留水1000m
lに溶解し、過マンガン酸カリウム0.1モルを加えて
25℃で60分間酸化反応を行い、ポリエチレンオキサ
イドトリカルボキシル体とした。
イド160モルをカチオン重合により付加して、ポリエ
チレンオキサイドトリオールを得た。このポリエチレン
オキサイドトリオール0.02モルを蒸留水1000m
lに溶解し、過マンガン酸カリウム0.1モルを加えて
25℃で60分間酸化反応を行い、ポリエチレンオキサ
イドトリカルボキシル体とした。
【0069】このポリエチレンオキサイドトリカルボキ
シル体10gと、ポリプロピレンオキサイドジアミノ体
(プロピレンオキサイド平均重合度約65、米国ジェフ
ァーソンケミカル社製:ジェファーミンD−4000)
10gとを四塩化炭素1000mlに溶解し、ジシクロ
ヘキシルカルボジイミド1.2gを加えて、沸点還流下
に6時間反応させた。反応液を冷却、濾過後、溶媒を減
圧留去し、残さを真空乾燥して本発明の高分子化合物
(TGP)を得た。
シル体10gと、ポリプロピレンオキサイドジアミノ体
(プロピレンオキサイド平均重合度約65、米国ジェフ
ァーソンケミカル社製:ジェファーミンD−4000)
10gとを四塩化炭素1000mlに溶解し、ジシクロ
ヘキシルカルボジイミド1.2gを加えて、沸点還流下
に6時間反応させた。反応液を冷却、濾過後、溶媒を減
圧留去し、残さを真空乾燥して本発明の高分子化合物
(TGP)を得た。
【0070】この高分子化合物を氷冷下、8wt%の濃
度で蒸留水に溶解した。この水溶液をゆるやかに加温し
てゆくと、5℃から徐々に粘度が上昇し、約10℃で固
化し、ハイドロゲルとなった。このハイドロゲルを冷却
すると、5℃で水溶液に戻った。この変化は、可逆的に
繰り返し観測された。また、25℃でこのハイドロゲル
を多量の蒸留水中に投入したが、該ハイドロゲルは溶解
しなかった。
度で蒸留水に溶解した。この水溶液をゆるやかに加温し
てゆくと、5℃から徐々に粘度が上昇し、約10℃で固
化し、ハイドロゲルとなった。このハイドロゲルを冷却
すると、5℃で水溶液に戻った。この変化は、可逆的に
繰り返し観測された。また、25℃でこのハイドロゲル
を多量の蒸留水中に投入したが、該ハイドロゲルは溶解
しなかった。
【0071】上記の方法で合成したTGPをアセトンに
溶解し、濃度が5w/w%のアセトン溶液を作製した。
該アセトン溶液中に日本薬局方のガーゼ(タイプI)を
浸漬し、ガーゼの繊維中に該溶液を充分しみ込ませた
後、ガーゼを該溶液から取り出し、マイレクスフィルタ
ー(商品名、ミリポア社製)でロ過した窒素ガスを吹き
付けて余分な溶液を除去し、室温で10分間乾燥した。
上記の工程を3回繰り返して行うことによって、ガーゼ
にTGPをコーティングした。コーティング前後のガー
ゼの重量を測定したところ、コーテイングされたTGP
の乾燥重量は、ガーゼ1cm2 当り約5mgであった。
溶解し、濃度が5w/w%のアセトン溶液を作製した。
該アセトン溶液中に日本薬局方のガーゼ(タイプI)を
浸漬し、ガーゼの繊維中に該溶液を充分しみ込ませた
後、ガーゼを該溶液から取り出し、マイレクスフィルタ
ー(商品名、ミリポア社製)でロ過した窒素ガスを吹き
付けて余分な溶液を除去し、室温で10分間乾燥した。
上記の工程を3回繰り返して行うことによって、ガーゼ
にTGPをコーティングした。コーティング前後のガー
ゼの重量を測定したところ、コーテイングされたTGP
の乾燥重量は、ガーゼ1cm2 当り約5mgであった。
【0072】コーティング前後のガーゼの顕微鏡写真を
それぞれ図1、図2(倍率:いずれも32倍)に示す
が、コーティング前にみられた細い繊維の乱れがコーテ
ィング後には見られなかった以外には、ガーゼの孔径な
どガーゼの構造にはほとんど変化が認められなかった。
それぞれ図1、図2(倍率:いずれも32倍)に示す
が、コーティング前にみられた細い繊維の乱れがコーテ
ィング後には見られなかった以外には、ガーゼの孔径な
どガーゼの構造にはほとんど変化が認められなかった。
【0073】次に、ガーゼにコーティングしたTGPの
溶出挙動が、創傷被覆材として使用されている状態と、
創面から取り外す際にゾル−ゲル転移温度より低い温度
の水で湿潤状態にした時とでどのように変化するかをシ
ミュレートするために、以下に記すような実験を行っ
た。
溶出挙動が、創傷被覆材として使用されている状態と、
創面から取り外す際にゾル−ゲル転移温度より低い温度
の水で湿潤状態にした時とでどのように変化するかをシ
ミュレートするために、以下に記すような実験を行っ
た。
【0074】上記の方法で、コーティングしたガーゼ1
00cm2 を30mlの37℃の水中に浸漬し、1週間
放置した後、該水中のTGPの量を蒸発乾固法によって
測定したところ、ガーゼ1cm2 当りTGP0.125
mg(コーティングされたTGPの約2.5%)が溶出
していることが判明した。次に、上記ガーゼ浸漬溶液の
温度を約4℃に下げ5分間放置した後に、該コーティン
グガーゼから溶出したTGPを蒸発乾固法で測定したと
ころ、ガーゼ1cm2 当り3.84mg(コーティング
量の約77%)のTGPが溶出していることが判明し
た。
00cm2 を30mlの37℃の水中に浸漬し、1週間
放置した後、該水中のTGPの量を蒸発乾固法によって
測定したところ、ガーゼ1cm2 当りTGP0.125
mg(コーティングされたTGPの約2.5%)が溶出
していることが判明した。次に、上記ガーゼ浸漬溶液の
温度を約4℃に下げ5分間放置した後に、該コーティン
グガーゼから溶出したTGPを蒸発乾固法で測定したと
ころ、ガーゼ1cm2 当り3.84mg(コーティング
量の約77%)のTGPが溶出していることが判明し
た。
【0075】上記の実験結果から、本発明の創傷被覆材
は、創面に張られた状態では創面から滲出する体液、あ
るいは該被覆材の外側から塗布される各種薬剤の水溶液
に溶解することなく創傷被覆材としての機能を維持し、
該被覆材を創面から外す時点で、ゾル−ゲル転移温度よ
り低い温度の水を該創傷被覆材の外側からふりかけ、該
被覆材の温度をゾル−ゲル転移温度より低い温度に下げ
ると同時に湿潤状態にすることにより、該被覆材を構成
するTGPが溶解し、創傷被覆材の創面からの脱離が容
易となることが示唆される。
は、創面に張られた状態では創面から滲出する体液、あ
るいは該被覆材の外側から塗布される各種薬剤の水溶液
に溶解することなく創傷被覆材としての機能を維持し、
該被覆材を創面から外す時点で、ゾル−ゲル転移温度よ
り低い温度の水を該創傷被覆材の外側からふりかけ、該
被覆材の温度をゾル−ゲル転移温度より低い温度に下げ
ると同時に湿潤状態にすることにより、該被覆材を構成
するTGPが溶解し、創傷被覆材の創面からの脱離が容
易となることが示唆される。
【0076】実施例2 実施例1で用いたTGPを4℃の蒸留水に溶解し、1w
/w%の水溶液を作製した。次いで、径が9.5cmの
シャーレ中に日本薬局方ガーゼ(タイプI)を底面に敷
きつめた後に、上記TGP水溶液15mlをシャーレ中
に注入し、ガーゼを完全に浸した。
/w%の水溶液を作製した。次いで、径が9.5cmの
シャーレ中に日本薬局方ガーゼ(タイプI)を底面に敷
きつめた後に、上記TGP水溶液15mlをシャーレ中
に注入し、ガーゼを完全に浸した。
【0077】次に、該シャーレを−80℃の冷凍庫に2
時間放置することによって完全に上記水溶液を凍結させ
た後、一昼夜真空乾燥器を用いて凍結乾燥を行い、本発
明の創傷被覆材を作製した。該被覆材の表面の走査電顕
(走査電子顕微鏡)写真(倍率:70倍および560
倍)をそれぞれ図3(a)、図3(b)に示す。本被覆
材の形状は、孔径が約30μmの連通孔を有するスポン
ジ状であった。
時間放置することによって完全に上記水溶液を凍結させ
た後、一昼夜真空乾燥器を用いて凍結乾燥を行い、本発
明の創傷被覆材を作製した。該被覆材の表面の走査電顕
(走査電子顕微鏡)写真(倍率:70倍および560
倍)をそれぞれ図3(a)、図3(b)に示す。本被覆
材の形状は、孔径が約30μmの連通孔を有するスポン
ジ状であった。
【0078】実施例3 実施例1で用いたTGPをアセトンに溶解し、濃度が5
w/w%のアセトン溶液を作製した。更に、該アセトン
溶液に抗菌剤として銀スルファジアジン(silver sulfa
diazine 、田辺製薬(株)製)を溶解し、約0.2w/
w%溶液を作製した。該溶液を用いた以外は実施例1と
全く同様の方法で、抗菌剤含有TGPをコーティングし
たガーゼを作製した。抗菌剤の含有量は、コーティング
されたTGPに対して約4%であった。即ち、本被覆材
1cm2 当り0.08mgであった。
w/w%のアセトン溶液を作製した。更に、該アセトン
溶液に抗菌剤として銀スルファジアジン(silver sulfa
diazine 、田辺製薬(株)製)を溶解し、約0.2w/
w%溶液を作製した。該溶液を用いた以外は実施例1と
全く同様の方法で、抗菌剤含有TGPをコーティングし
たガーゼを作製した。抗菌剤の含有量は、コーティング
されたTGPに対して約4%であった。即ち、本被覆材
1cm2 当り0.08mgであった。
【0079】上記の方法によって得られた創傷被覆材を
実施例1と同様に、走査電顕によって観察したところ、
その構造は実施例1で得られたものと全く同様であっ
た。
実施例1と同様に、走査電顕によって観察したところ、
その構造は実施例1で得られたものと全く同様であっ
た。
【0080】次に、上記抗菌剤含有被覆材の抗菌性の試
験を、下記に示す方法によって行った。
験を、下記に示す方法によって行った。
【0081】NAC寒天培地(栄研化学(株)製)20
mlを直径90mmのシャーレに注入して作製した寒天
培地上に、1×105 個/cm2 の濃度になるように緑
膿菌(標準菌株:GN11189:P.aeruginosa)を
播種した後、該寒天倍地上に、上記により得た抗菌剤含
有被覆材(3cm×3cm)を乗せて37℃インキュベ
ーター中で2日間培養した。培養後、該被覆材料の下の
寒天を1cm×1cm×0.3cmの大きさに切り取
り、10mlの滅菌生食水(生理的食塩水)中に入れて
ホモジナイズした後、これを試験液Aとした。
mlを直径90mmのシャーレに注入して作製した寒天
培地上に、1×105 個/cm2 の濃度になるように緑
膿菌(標準菌株:GN11189:P.aeruginosa)を
播種した後、該寒天倍地上に、上記により得た抗菌剤含
有被覆材(3cm×3cm)を乗せて37℃インキュベ
ーター中で2日間培養した。培養後、該被覆材料の下の
寒天を1cm×1cm×0.3cmの大きさに切り取
り、10mlの滅菌生食水(生理的食塩水)中に入れて
ホモジナイズした後、これを試験液Aとした。
【0082】一方、コントロール実験として、上記被覆
材料が乗っていない部分の寒天を1cm×1cm×0.
3cmの大きさに切り取り、上記と同様の方法で、試験
液Bを作製した。
材料が乗っていない部分の寒天を1cm×1cm×0.
3cmの大きさに切り取り、上記と同様の方法で、試験
液Bを作製した。
【0083】0.1mlの試験液Aおよび100,00
0倍希釈した0.1mlの試験液Bを、それぞれ新しく
作製した上記と同様の寒天培地上に播種して37℃で一
日間培養し、形成されたコロニー数から菌数を推察し
た。その結果、試験液B中の緑膿菌の濃度が約4×10
7 /mlだったのに対して、試験液A中には緑膿菌は検
出されなかった。この実験から、本発明の抗菌剤含有被
覆材の抗菌効果は極めて良好であることが判明した。
0倍希釈した0.1mlの試験液Bを、それぞれ新しく
作製した上記と同様の寒天培地上に播種して37℃で一
日間培養し、形成されたコロニー数から菌数を推察し
た。その結果、試験液B中の緑膿菌の濃度が約4×10
7 /mlだったのに対して、試験液A中には緑膿菌は検
出されなかった。この実験から、本発明の抗菌剤含有被
覆材の抗菌効果は極めて良好であることが判明した。
【0084】実施例4 実施例1で用いたTGPを4℃の蒸留水に溶解し、1w
/w%の水溶液を作製した。次いで、該TGP水溶液2
0mlのpHを3に調整した後、0.5w/v%牛真皮
ペプシン可溶化タイプIコラーゲン溶液(KOKEN CELLGE
N I-PC, 高研(株)製)4mlを加え4℃で良く混合
し、TGP10部に対してコラーゲン1部を含む水溶液
を作製した。
/w%の水溶液を作製した。次いで、該TGP水溶液2
0mlのpHを3に調整した後、0.5w/v%牛真皮
ペプシン可溶化タイプIコラーゲン溶液(KOKEN CELLGE
N I-PC, 高研(株)製)4mlを加え4℃で良く混合
し、TGP10部に対してコラーゲン1部を含む水溶液
を作製した。
【0085】次いで、径が9.5cmのシャーレ中に日
本薬局方ガーゼ(タイプI)を底面に敷きつめた後に、
上記水溶液15mlをシャーレ中に注入し、ガーゼを完
全に浸した。次いで該シャーレを−80℃の冷凍庫に2
時間放置して完全に該溶液を凍結させた後、真空乾燥器
を用いて一昼夜凍結乾燥を行い、本発明の創傷被覆材を
作製した。該被覆材の表面を走査電顕によって観察した
ところ、実施例2で得られたものと同様のスポンジ構造
が認められた。
本薬局方ガーゼ(タイプI)を底面に敷きつめた後に、
上記水溶液15mlをシャーレ中に注入し、ガーゼを完
全に浸した。次いで該シャーレを−80℃の冷凍庫に2
時間放置して完全に該溶液を凍結させた後、真空乾燥器
を用いて一昼夜凍結乾燥を行い、本発明の創傷被覆材を
作製した。該被覆材の表面を走査電顕によって観察した
ところ、実施例2で得られたものと同様のスポンジ構造
が認められた。
【0086】実施例5 8週齢のウィスターラット(雄)の側腹部から背部にか
けて4cm×4cmの面積で無菌的に全層皮膚欠損創を
作り、実施例1で作製した本発明の創傷被覆材(エチレ
ンオキサイドガス滅菌済)を創面に密着させた後、更に
滅菌ガーゼ8枚を重ねてエラスターバンドを用いて全周
固定し、1週間留置した。
けて4cm×4cmの面積で無菌的に全層皮膚欠損創を
作り、実施例1で作製した本発明の創傷被覆材(エチレ
ンオキサイドガス滅菌済)を創面に密着させた後、更に
滅菌ガーゼ8枚を重ねてエラスターバンドを用いて全周
固定し、1週間留置した。
【0087】コントロール実験として、上記と同様の方
法で全層皮膚欠損創を作り、実施例1で用いた未コーテ
ィングの日本薬局方の滅菌ガーゼ(タイプI)を創面に
密着させ、同様の方法で1週間留置した。
法で全層皮膚欠損創を作り、実施例1で用いた未コーテ
ィングの日本薬局方の滅菌ガーゼ(タイプI)を創面に
密着させ、同様の方法で1週間留置した。
【0088】1週間留置後、エーテル麻酔下に上記ラッ
トから上記エラスターバンドを外した後、上記滅菌ガー
ゼ上に4℃の氷冷生食水を充分ふりかけ滅菌ガーゼにし
み込ませた後、該滅菌ガーゼを外側から1枚づつ剥離し
た。コントロール実験では、外側から5枚はがした時点
で残りの3枚は創面に密着し、容易にはがすことが困難
であった。この滅菌ガーゼを無理にはがすと、創面から
大量の出血が認められた。これに対して、本発明の創傷
被覆材を用いた場合には、滅菌ガーゼばかりでなく創傷
被覆材自体も創面から容易にはがすことができ、創面か
らの出血はほとんど認められなかった。
トから上記エラスターバンドを外した後、上記滅菌ガー
ゼ上に4℃の氷冷生食水を充分ふりかけ滅菌ガーゼにし
み込ませた後、該滅菌ガーゼを外側から1枚づつ剥離し
た。コントロール実験では、外側から5枚はがした時点
で残りの3枚は創面に密着し、容易にはがすことが困難
であった。この滅菌ガーゼを無理にはがすと、創面から
大量の出血が認められた。これに対して、本発明の創傷
被覆材を用いた場合には、滅菌ガーゼばかりでなく創傷
被覆材自体も創面から容易にはがすことができ、創面か
らの出血はほとんど認められなかった。
【0089】上記ガーゼおよび上記創傷被覆材を創面か
らはがした後、走査電顕によって観察した結果をそれぞ
れ図4および図5(いずれも倍率は84倍)に示す。こ
の図4および図5において、矢印は付着組織を示す。図
4および5からわかるように、上記ガーゼ(コントロー
ル実験)の組織(図4)には大量の肉芽組織の固着が認
められたのに対して、本発明の創傷被覆材の組織(図
5)にはほとんど肉芽の付着が認められなかった。
らはがした後、走査電顕によって観察した結果をそれぞ
れ図4および図5(いずれも倍率は84倍)に示す。こ
の図4および図5において、矢印は付着組織を示す。図
4および5からわかるように、上記ガーゼ(コントロー
ル実験)の組織(図4)には大量の肉芽組織の固着が認
められたのに対して、本発明の創傷被覆材の組織(図
5)にはほとんど肉芽の付着が認められなかった。
【0090】更に、上記ガーゼおよび上記創傷被覆材を
創面からはがした後、該ガーゼ、該被覆材および両者の
創面の組織を切り出し、10%ホルマリン生食水で固定
化し、HE(ヘマトキシリン−エオジン)染色して試料
標本および組織標本を作製した。図6および7(いずれ
も倍率は1000倍)に該ガーゼおよび該被覆材の試料
標本の顕微鏡写真を示す。この図6および7において、
矢印はガーゼないし創傷被覆材に付着した再生皮膚組織
を示す。
創面からはがした後、該ガーゼ、該被覆材および両者の
創面の組織を切り出し、10%ホルマリン生食水で固定
化し、HE(ヘマトキシリン−エオジン)染色して試料
標本および組織標本を作製した。図6および7(いずれ
も倍率は1000倍)に該ガーゼおよび該被覆材の試料
標本の顕微鏡写真を示す。この図6および7において、
矢印はガーゼないし創傷被覆材に付着した再生皮膚組織
を示す。
【0091】これらの写真からわかるように、上記ガー
ゼ(コントロール実験、図6)には大量の肉芽組織が付
着していたのに対して、上記した本発明の創傷被覆材
(図7)にはほとんど肉芽の付着は認められなかった。
ゼ(コントロール実験、図6)には大量の肉芽組織が付
着していたのに対して、上記した本発明の創傷被覆材
(図7)にはほとんど肉芽の付着は認められなかった。
【0092】実施例6 実施例2で作製したスポンジ状の本発明の被覆材を、実
施例5と全く同様の方法でラットの全層皮膚欠損創面に
密着させ、1週間留置後、実施例5と全く同様の方法で
創面から剥離させた。
施例5と全く同様の方法でラットの全層皮膚欠損創面に
密着させ、1週間留置後、実施例5と全く同様の方法で
創面から剥離させた。
【0093】本実施例の被覆材を用いた場合、実施例5
で用いた被覆材に比べ、更に創面からの剥離性が改善さ
れていることが判明した。剥離した該被覆材の顕微鏡写
真、固定試料標本の観察結果は、実施例5の場合とほぼ
同様であった。即ち、上記被覆材には肉芽組織の付着が
ほとんど認められなかった。
で用いた被覆材に比べ、更に創面からの剥離性が改善さ
れていることが判明した。剥離した該被覆材の顕微鏡写
真、固定試料標本の観察結果は、実施例5の場合とほぼ
同様であった。即ち、上記被覆材には肉芽組織の付着が
ほとんど認められなかった。
【0094】実施例7 実施例3で作製した抗菌剤、銀スルファジアジン(silv
er sulfadiazine)含有の本発明の被覆材を用い、実施例
5と全く同様の方法で動物実験を行った。
er sulfadiazine)含有の本発明の被覆材を用い、実施例
5と全く同様の方法で動物実験を行った。
【0095】該被覆材の創面からの剥離性、剥離した被
覆材への肉芽組織の付着程度、および創面組織への被覆
材の残留程度は、実施例5で使用した本発明の被覆材の
場合と全く同様で、抗菌剤を含有することによる本被覆
材の性能の劣化は全く認められなかった。
覆材への肉芽組織の付着程度、および創面組織への被覆
材の残留程度は、実施例5で使用した本発明の被覆材の
場合と全く同様で、抗菌剤を含有することによる本被覆
材の性能の劣化は全く認められなかった。
【0096】実施例8 実施例4で作製したコラーゲン含有の本発明の被覆材を
用い、実施例5と全く同様の方法で動物実験を行った。
用い、実施例5と全く同様の方法で動物実験を行った。
【0097】該被覆材の創面からの剥離性、剥離した被
覆材への肉芽組織の付着程度および創面組織への被覆材
の残留程度は、実施例6で使用した本発明の被覆材の場
合と全く同様で、コラーゲンを含有することによる本被
覆材の性能の劣化は全く認められなかった。また、該被
覆材剥離後の創面の治癒状態を組織学的に観察したとこ
ろ、コラーゲンを含有しない本発明の被覆材と比較し
て、より良好であることが判明した。
覆材への肉芽組織の付着程度および創面組織への被覆材
の残留程度は、実施例6で使用した本発明の被覆材の場
合と全く同様で、コラーゲンを含有することによる本被
覆材の性能の劣化は全く認められなかった。また、該被
覆材剥離後の創面の治癒状態を組織学的に観察したとこ
ろ、コラーゲンを含有しない本発明の被覆材と比較し
て、より良好であることが判明した。
【0098】
【発明の効果】上述したように本発明によれば、曇点を
有する複数のブロックと親水性のブロックとを含み、且
つゾルーゲル転移温度を有する高分子化合物化合物から
なる創傷被覆材が提供される。本発明の創傷被覆材は、
上記ゾル−ゲル転移温度を有する高分子化合物の熱可逆
的ゲル化特性に基づき、創傷面からの滲出液の吸収性お
よび排出性に優れ、しかも創傷面からの離脱性にも優れ
ている。
有する複数のブロックと親水性のブロックとを含み、且
つゾルーゲル転移温度を有する高分子化合物化合物から
なる創傷被覆材が提供される。本発明の創傷被覆材は、
上記ゾル−ゲル転移温度を有する高分子化合物の熱可逆
的ゲル化特性に基づき、創傷面からの滲出液の吸収性お
よび排出性に優れ、しかも創傷面からの離脱性にも優れ
ている。
【0099】特に、本発明の創傷被覆材が、生体の体温
より低く且つ室温よりも高いゾル−ゲル転移温度を有す
る高分子化合物を含む態様においては、該被覆材は創面
に張られた状態では、創面から滲出する体液あるいは該
被覆材の外側から塗布される各種薬剤の水溶液に溶解す
ることなく、創傷被覆材としての機能を維持する。他
方、該被覆材の交換時または創面が治癒した時点で、該
被覆材を創面から取り除く際に、上記ゾル−ゲル転移温
度より低い温度の水また生理食塩水(実際には4℃近辺
の温度が好適)を該被覆材の外側からふりかけ、該被覆
材の温度をゾル−ゲル転移温度より低く下げて湿潤状態
にして上記高分子化合物を水溶化させることによって、
該被覆材を創面から容易に剥離することができる。
より低く且つ室温よりも高いゾル−ゲル転移温度を有す
る高分子化合物を含む態様においては、該被覆材は創面
に張られた状態では、創面から滲出する体液あるいは該
被覆材の外側から塗布される各種薬剤の水溶液に溶解す
ることなく、創傷被覆材としての機能を維持する。他
方、該被覆材の交換時または創面が治癒した時点で、該
被覆材を創面から取り除く際に、上記ゾル−ゲル転移温
度より低い温度の水また生理食塩水(実際には4℃近辺
の温度が好適)を該被覆材の外側からふりかけ、該被覆
材の温度をゾル−ゲル転移温度より低く下げて湿潤状態
にして上記高分子化合物を水溶化させることによって、
該被覆材を創面から容易に剥離することができる。
【0100】したがって、本発明の創傷被覆材を用いた
場合、従来の創傷被覆材を用いた場合とは異なり、該被
覆材離脱時に創面に実質的に損傷を与えないばかりでな
く、包交(被覆材交換)時の手間および患者の苦痛が著
しく軽減される。
場合、従来の創傷被覆材を用いた場合とは異なり、該被
覆材離脱時に創面に実質的に損傷を与えないばかりでな
く、包交(被覆材交換)時の手間および患者の苦痛が著
しく軽減される。
【図1】未コーティングガーゼの顕微鏡写真である(倍
率:32倍)。
率:32倍)。
【図2】TGPをコーティングしたガーゼ(本発明の創
傷被覆材)の顕微鏡写真である(倍率:32倍)。
傷被覆材)の顕微鏡写真である(倍率:32倍)。
【図3】TGPをコーティングしたスポンジ(本発明の
創傷被覆材)の走査電顕写真である(図3(a)の倍率
は70倍、図3(b)の倍率は560倍)。
創傷被覆材)の走査電顕写真である(図3(a)の倍率
は70倍、図3(b)の倍率は560倍)。
【図4】動物実験後の未コーティングガーゼの走査電顕
写真である(倍率:84倍)。
写真である(倍率:84倍)。
【図5】動物実験後の本発明の創傷被覆材(TGPコー
ティングガーゼ)の走査電顕写真である(倍率:84
倍)。
ティングガーゼ)の走査電顕写真である(倍率:84
倍)。
【図6】動物実験後の未コーティングガーゼの試料標本
のHE(ヘマトキシリン−エオジン)染色像である(倍
率:1000倍)。
のHE(ヘマトキシリン−エオジン)染色像である(倍
率:1000倍)。
【図7】動物実験後の本発明の創傷被覆材(TGPコー
ティングガーゼ)の試料標本のHE染色像である(倍
率:1000倍)。
ティングガーゼ)の試料標本のHE染色像である(倍
率:1000倍)。
フロントページの続き (56)参考文献 特開 平5−84288(JP,A) 特開 平5−84289(JP,A) 特開 平5−84290(JP,A) 特開 平2−300114(JP,A) 特開 平1−170453(JP,A) 国際公開95/7719(WO,A1) 窪田倭ら,I.生体材料の最近の進歩 −1.温度感応性項分子化合物の原理と 応用,外科,61,pp.119−122 (1999) Yoshioka,H.,et a l.,A Synthetic Hyd rogel with Thermor eversible Gelation I.Preparation and Rheological Prope rties,J.M.S.−Pure Appl.Chem.,A31(1),p p.113−120(1994) R.K.Prund’homme,e t al.,Structure an d Rheology Studies of Poly(oxyethyle ne−oxypropylene−ox yethylene)Aqueous Solution,Langmuir, 12,pp.4651−4659(1996) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) A61L 15/00 - 15/64 A61F 13/00 - 13/84 A61K 31/00 - 45/08 A61P 17/00 - 17/02
Claims (10)
- 【請求項1】 曇点を有する複数のブロックと親水性の
ブロックとが結合してなり、水溶液中でゾルーゲル転移
温度を有し、且つ該ゾルーゲル転移温度より低い温度で
可逆的に液体状態(ゾル状態)を示す高分子化合物を含
むことを特徴とする創傷被覆材。 - 【請求項2】 前記ゾルーゲル転移温度が0℃より高く
40℃以下である請求項1記載の創傷被覆材。 - 【請求項3】 抗菌剤を含有する請求項1記載の創傷被
覆材。 - 【請求項4】 創傷治癒を促進させる物質を含有する請
求項1記載の創傷被覆材。 - 【請求項5】 前記高分子化合物の形状が、フィルム
状、織布状、不織布状、スポンジ状又はゲルフィルム状
である請求項1記載の創傷被覆材。 - 【請求項6】 前記高分子化合物が支持体の表面にコー
ティングされている請求項1記載の創傷被覆材。 - 【請求項7】 前記支持体の形状が、フィルム状、織布
状、不織布状、又はスポンジ状である請求項6記載の創
傷被覆材。 - 【請求項8】 曇点を有する複数のブロックと親水性の
ブロックが結合してなり、水溶液中でゾルーゲル転移温
度を有し、且つ、該ゾルーゲル転移温度より低い温度で
可逆的に液体状態(ゾル状態)を示す高分子化合物を少
なくとも含むことを特徴とする創傷被覆用組成物。 - 【請求項9】 更に、抗菌剤を含む請求項8記載の創傷
被覆用組成物。 - 【請求項10】 更に、創傷治癒を促進させる物質を含
む請求項8または9記載の創傷被覆用組成物。
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---|---|---|---|
JP06349293A JP3257855B2 (ja) | 1993-02-26 | 1993-02-26 | 創傷被覆材および創傷被覆用組成物 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP06349293A JP3257855B2 (ja) | 1993-02-26 | 1993-02-26 | 創傷被覆材および創傷被覆用組成物 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH06245988A JPH06245988A (ja) | 1994-09-06 |
JP3257855B2 true JP3257855B2 (ja) | 2002-02-18 |
Family
ID=13230805
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP06349293A Expired - Fee Related JP3257855B2 (ja) | 1993-02-26 | 1993-02-26 | 創傷被覆材および創傷被覆用組成物 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP3257855B2 (ja) |
Families Citing this family (6)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
EP0724888B1 (en) * | 1993-09-16 | 2003-05-21 | Ogita Biomaterial Laboratories Co. Ltd. | Wound covering material and wound covering composition |
JP5173199B2 (ja) * | 2006-01-16 | 2013-03-27 | 株式会社アイ・ティー・オー | 創傷治癒用高分子組成物 |
JP5538493B2 (ja) * | 2006-01-16 | 2014-07-02 | 株式会社アイ・ティー・オー | 生体内組織用創傷治癒用フィルム及び生体内接着用フィルム |
CN110452401A (zh) * | 2019-07-30 | 2019-11-15 | 珠海水丝新材料有限公司 | 一种吸水的膜材料及其制备方法 |
WO2021045166A1 (ja) * | 2019-09-06 | 2021-03-11 | 国際先端技術総合研究所株式会社 | 感温性ゲル及びオリゴペプチドを含む組成物、並びにその利用 |
CN114306716A (zh) * | 2022-01-24 | 2022-04-12 | 苏州大学 | 基于织物的温敏凝胶式医用敷料的制备方法 |
-
1993
- 1993-02-26 JP JP06349293A patent/JP3257855B2/ja not_active Expired - Fee Related
Non-Patent Citations (3)
Title |
---|
R.K.Prund’homme,et al.,Structure and Rheology Studies of Poly(oxyethylene−oxypropylene−oxyethylene)Aqueous Solution,Langmuir,12,pp.4651−4659(1996) |
Yoshioka,H.,et al.,A Synthetic Hydrogel with Thermoreversible Gelation I.Preparation and Rheological Properties,J.M.S.−Pure Appl.Chem.,A31(1),pp.113−120(1994) |
窪田倭ら,I.生体材料の最近の進歩−1.温度感応性項分子化合物の原理と応用,外科,61,pp.119−122(1999) |
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JPH06245988A (ja) | 1994-09-06 |
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