JP3257353B2 - 車両の旋回制御装置 - Google Patents

車両の旋回制御装置

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JP3257353B2
JP3257353B2 JP17194795A JP17194795A JP3257353B2 JP 3257353 B2 JP3257353 B2 JP 3257353B2 JP 17194795 A JP17194795 A JP 17194795A JP 17194795 A JP17194795 A JP 17194795A JP 3257353 B2 JP3257353 B2 JP 3257353B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、車両の旋回時、
アンチスキッドブレーキ制御と協調して車両の旋回挙動
を安定化させる車両の旋回制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】この種の車両の旋回制御装置は、例えば
特開平4−257755号公報に開示されている。この
公知の旋回制御装置は、アンチスキッドブレーキ制御の
実施に伴い、車両における左右輪間に発生する第1制動
力差と、車両のヨー運動制御に要求される左右輪間の第
2制動力差と比較し、第1制動力差よりも第2制動力
差が大きい場合にあっては、これら第1及び第2制動力
差間の差に基づき、車両のヨー運動制御を実施し、これ
により、車両の減速度の低下を抑制しつつ、車両の旋回
挙動の安定化を図るようにしている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、公知の
旋回制御装置にあっては、車両が直進状態で制動されて
も、アンチスキッドブレーキ制御が作動し、第2制動力
差が第1制動力差よりも大となる状況では、車両のヨー
運動制御が無条件に実施されてしまう。このため、この
場合には、車両のヨー運動制御が不必要であるにも拘わ
らず、そのヨー運動制御が実施されてしまうため、その
実施に起因して、車両の制動力が低下する虞がある。
【0004】この発明は、上述した事情に基づいてなさ
れたもので、その目的とするところは、車両のヨー運動
制御を必要としない状況にあっては、そのヨー運動制御
よりもアンチスキッドブレーキ制御を優先させ、車両の
制動力を十分に確保できる車両の旋回制御装置を提供す
ることにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】この発明は、車両の運転
状態及び挙動の少なくとも一方に応じ、制御対象となる
所定の車輪間に制動力差を与えて車両のヨー運動を制御
する旋回制御装置を前提として、上述の目的は請求項1
の装置によって達成され、この請求項1の装置は、車両
が直進制動を開始してから所定時間の間、ヨー運動制御
における制御対象車輪の制動力の減少を規制する規制手
段を備えている。
【0006】請求項2の装置の場合、その規制手段は、
ステアリングハンドルのハンドル角を検出する第1検出
手段と、アンチスキッドブレーキ制御の作動の有無を検
出する第2検出手段と、前記ハンドル角が所定値以下で
且つアンチスキッドブレーキ制御の作動開始から所定時
間の間、前記ヨー運動制御における制御対象車輪の制動
力の減少を禁止する禁止手段とを備えている。
【0007】請求項3の装置は、車両の運転状態及び挙
動の少なくとも一方に基づき、車両のヨー運動を制御す
るための要求制御量を算出する算出手段と、算出された
前記要求制御量が所定値以上であるときには、前記制御
対象車輪に関し、車両のヨー運動制御のための第1制動
力制御量をアンチスキッドブレーキ制御のための第2制
動力制御量に加える補正手段とを備えており、そして、
その規制手段は、車両の直進制動開始から所定時間の
間、第1制動力制御量が制御対象車輪の制動力を減少さ
せるものである場合、その第1制動力制御量による第2
制動力制御量の補正を規制するものとなっている。
【0008】請求項4の装置の場合、その規制手段は、
ステアリングハンドルのハンドル角を検出する第1検出
手段と、アンチスキッドブレーキ制御の作動の有無を検
出する第2検出手段と、前記ハンドル角が所定値以下で
且つアンチスキッドブレーキ制御の作動開始から所定時
間の間は左右後輪の制動力をセレクトローの原理で制御
させ、前記所定時間の経過後車両の挙動が安定している
場合には左右後輪の制動力を独立制御に切り換える切換
手段とを備えている。
【0009】請求項5の装置では、その切換手段は、車
両のヨーレイトを検出する第3検出手段と、検出したヨ
ーレイトが所定値以下のとき、車両の挙動が安定してい
ると判定する判定手段とを含んでいる。請求項6の装置
の場合、制御対象車輪間に制動力差を与える手段は、車
両が回頭モーメントを要求していると、車両の旋回方向
でみて外側前輪の制動力を減少させる一方、内側後輪の
制動力を増加させるものとなっており、そして、その規
制手段は、車両の直進制動開始から所定時間の間、外側
前輪の制動力の減少を規制するものとなっている。
【0010】請求項7の装置では、車両のヨーレイト偏
差及びヨーレイト偏差の時間微分値の少なくとも一方に
基づき、車両のヨー運動を制御するための制御量が算出
されている。請求項1の旋回制御装置によれば、車両が
直進状態にて制動された場合にあっては、その制動の開
始から所定時間が経過するまでの間、ヨー運動制御によ
る制御対象車輪の制動力はその減少が制限される。
【0011】請求項2の装置によれば、ハンドル角が所
定値以下でアンチスキッドブレーキ制御の作動開始から
所定時間の間、ヨー運動制御による制御対象車輪の制動
力はその減少が禁止される。請求項3の装置によれば、
直進制動時から所定時間の間、ヨー運動制御での制御対
象車輪の第1制動力制御量がその制御対象車輪の制動力
を減少させるものである場合、アンチスキッドブレーキ
制御のための制御対象車輪の第2制動力制御量は第1制
動力制御量による補正が規制される。
【0012】請求項4の装置によれば、車両が直進状態
にあってアンチスキッドブレーキ制御が作動したときに
は、その作動開始から所定時間が経過するまで左右後輪
はセレクトローの原理に従い、それらの制動力が制御さ
れ、所定時間の経過後は車両の挙動が安定している場合
に限り、左右後輪の制動力は独立して制御される。請求
項5の装置によれば、車両の挙動が安定しているか否か
は、車両のヨーレイトの大きさから判定される。
【0013】請求項6の装置によれば、車両が回頭モー
メントを要求している状況では、車両の旋回方向でみて
外側前輪の制動力を減少させる一方、内側後輪の制動力
を増加させることで、ヨー運動制御が実施されるが、こ
のとき、車両が直進状態で制動されてから所定時間が経
過するまでの間にあると、外側前輪での制動力の減少は
規制される。
【0014】請求項7の装置によれば、ヨー運動制御を
実施するための制御量が車両の挙動を示す状態量に基づ
いて算出される。
【0015】
【発明の実施の形態】図1を参照すると、車両のブレー
キシステムが概略的に示されている。このブレーキシス
テムはタンデム型のマスタシリンダ1を備えており、マ
スタシリンダ1は真空ブレーキブースタ2を介してブレ
ーキペダル3に接続されている。マスタシリンダ1の一
対の圧力室はリザーバ4にそれぞれ接続されている一
方、これらの圧力室からはメインブレーキ管路56が
延びている。
【0016】メインブレーキ管路5,6は液圧ユニット
(HU)7内を延び、そして、これらメインブレーキ管
路5,6は一対の分岐ブレーキ管路にそれぞれ分岐され
ている。メインブレーキ管路5からの分岐ブレーキ管路
8,9は左前輪FWL及び右後輪RWRのホイールブレー
キ(図示しない)にそれぞれ接続されており、メインブ
レーキ管路6からの分岐ブレーキ管路10,11は右前
輪FWR及び左後輪RWLのホイールブレーキ(図示しな
い)にそれぞれ接続されている。従って、各車輪のホイ
ールブレーキはクロス配管形式でタンデムマスタシリン
ダ1に接続されている。
【0017】各分岐ブレーキ管路8,9,10,11に
は電磁弁がそれぞれ介挿されており、各電磁弁は入口バ
ルブ12と出口バルブ13とから構成されている。な
お、後輪のホイールブレーキとその対応する電磁弁、即
ち、入口バルブ12との間にはプロポーショナルバルブ
(PV)がそれぞれ介挿されている。分岐ブレーキ管路
8,9側において、その一対の電磁弁はその出口バルブ
13が戻り経路14を介してリザーバ4に接続されてお
り、また、分岐ブレーキ管路10,11側においても、
その一対の電磁弁の出口バルブ13が戻り経路15を介
してリザーバ4に接続されている。従って、各車輪のブ
レーキ圧はそのホイールブレーキ内の圧力を入口バルブ
及び出口バルブの開閉により給排することで制御され
る。
【0018】メインブレーキ管路5,6のそれぞれには
その途中にポンプ16,17の吐出口が逆止弁を介して
接続されており、これらポンプ16,17は共通のモー
タ18に連結されている。一方、ポンプ16,17の吸
い込み口は逆止弁を介して戻り経路14、15にそれぞ
れ接続されている。更に、メインブレーキ管路5、6に
は、ポンプ16,17との接続点よりも上流部分に電磁
弁からなるカットオフバルブ19,20が介挿されてお
り、また、これらカットオフバルブ19,20をバイパ
スするようにしてリリーフバルブ21がそれぞれ配設さ
れている。ここで、カットオフバルブ19,20はカッ
トオフバルブユニット(CVU)22を構成している。
【0019】前述した入口及び出口バルブ12,13や
カットオフバルブ19,20、また、モータ18は、電
子制御ユニット(ECU)23に電気的に接続されてい
る。より詳しくは、ECU23は、マイクロプロセッ
サ、RAM,ROMなどの記憶装置、また、入出力イン
ターフェースなどから構成されており、バルブ12,1
3,19,20及びモータ18は出力インタフェースに
接続されている。
【0020】一方、ECU23の入力インタフェースに
は、各車輪に設けた車輪速センサ24や、モータ18の
回転速度を検出する回転速度センサ25が電気的に接続
されている。なお、図1においては作図上の都合から、
モータ18とECU23との間の接続及び回転速度セン
サ25とECU23との間の接続は省略されている。更
に、図2に示されているようにECU23の入力インタ
フェースには、車輪速センサ24や回転速度センサ25
以外に、ハンドル角センサ26、ペダルストロークセン
サ27、前後Gセンサ28、横Gセンサ29及びヨーレ
イトセンサ30が電気的に接続されている。
【0021】ハンドル角センサ26は車両のステアリン
グハンドルの操舵量、即ち、ハンドル角を検出し、ペダ
ルストロークセンサ27はブレーキペダル3の踏み込み
量、即ち、ペダルストロークを検出する。前後G及び横
Gセンサ28,29は車両の前後方向及び横方向に作用
する前後加速度及び横加速度をそれぞれ検出し、ヨーレ
イトセンサ30は、車両の上下方向を軸とした角速度即
ちヨー角速度を検出する。
【0022】ECU23は上述の各種センサのセンサ信
号に基づき種々の車両運動制御に従い、HU7及びCV
20の作動を制御する。車両運動制御としては、図2
中、ECU23のブロック内に示されているように、車
両が旋回中にあるときのヨーモーメント制御、トラクシ
ョンコントロール(TCL)制御、アンチスキッドブレ
ーキ(ABS)制御、前後輪制動力配分制御などがあ
る。
【0023】図3を参照すると、ECU23の機能のう
ちでヨーモーメント制御に関連した機能がより詳しく示
されており、また、図4にはそのヨーモーメント制御関
連の機能を実行するメインルーチンが示されている。な
お、メインループの制御周期Tは例えば8msecに設定さ
れている。先ず、前述した各種センサからのセンサ信号
がECU23に供給されると、ECU23はセンサ信号
にフィルタ処理(図3のブロック32)を施す。ここで
のフィルタ処理には再帰型1次ローパスフィルタが使用
されている。なお、以下、特に記載しない限り、以下の
フィルタ処理にも再帰型1次ローパスフィルタが使用さ
れるものとする。
【0024】フィルタ処理済みのセンサ信号、即ち、車
輪速Vw(i)、ハンドル角θ、ペダルストロークSt、前
後加速度Gx(前後Gx)、横加速度Gy(横Gy)及びヨ
ーレイトγは、図4のステップS1にて読み込まれ、そ
して、これらセンサ信号に基づいて車両の運動状態を示
す情報及びドライバの運転操作を判断するため情報が算
出される(ステップS2)。
【0025】なお、ステップS1において、車輪速Vw
に付した(i)は、各車輪の車輪速を纏めて示すためのも
のであって、iはその車輪を特定する1から4まで整数
である。例えば、i=1は左前輪、i=2は右前輪、i
=3は左後輪、i=4は右後輪を表す。なお、以降の参
照符号に付した(i)もまた同様な意味で使用する。図3
でみた場合、ステップS2は、その演算部34,36に
てそれぞれ実行される。演算部34では、車輪速Vw
(i)、前後Gx、横Gy及びヨーレイトγに基づき、車両
の運動状態が算出され、そして、演算部36ではハンド
ル角θ及びペダルストロークStに基づき、ドライバに
よるステアリングハンドルやブレーキペダルの操作状況
が判断される。
【0026】:車両の運動状態: 基準車輪速:ここでは、先ず、車輪速Vw(i)の中から基
準車輪速Vsが選択される。基準車輪速Vsは、車輪の駆
動が制御されてもスリップの影響を受け難い車輪、具体
的には車両が非制動時の場合にあっては非駆動輪のうち
で速い方の車輪速Vwに設定され、制動時の場合には車
輪速Vw(i)中、最速の車輪速Vwに設定される。なお、
車両が非制動時にあるか否かは後述するブレーキペダル
3のペダル操作によって設定されるブレーキフラグFb
により判定される。
【0027】車体速: 次に、車両が旋回中にある場合の内外輪間の速度差及び
前後輪間の速度比を考慮して、先ず、車両の重心位置で
の重心速度を算出し、そして、この重心速度と基準車輪
速Vsに基づき、車体速Vbを算出する。ここで、ヨーレ
イトγ、フロントトレッドTf及びリアトレッドTrを使
用すれば、前輪間及び後輪間での内外輪速度差ΔVif、
ΔVirはそれぞれ次式で表される。
【0028】ΔVif=γ×Tf ΔVir=γ×Tr また、前輪間及び後輪間での平均内外輪速度差ΔVia
は、次式で表される。 ΔVia=γ×(Tf+Tr)/2 更に、前後輪間の速度比に関し、車両の旋回中心が後車
軸の延長線上にあり且つ車両が右旋回していると仮定し
た場合、右側及び左側の前後輪間の速度比Rvr、Rvlは
次式でそれ表される。
【0029】Rvr=cos(δ) Rvl≒cos(δ) 従って、車両の左右に拘わらず前後輪間速度比Rvはcos
(δ)で表すことができる。なお、上式中、δは前輪舵角
(ハンドル角/ステアリングギヤ比)である。
【0030】上式は車両が低速時(より正確には横Gy
が小さいとき)にしか成立しないため、前後輪間速度比
Rvによる重心速度の補正は以下に示すように低速時の
みに限定する。 Vbm≧30km/hの場合、Rv=1 Vbm<30km/hの場合、Rv=cos(δ) なお、Vbmは前回のルーチンにて算出された車体速であ
る。
【0031】ここで、車両が前輪駆動車(FF車)であ
るとすると、非制動時での旋回中、基準車輪速Vsは車
両の外側後輪の車輪速に追従する。それ故、基準車輪速
Vsに対し、平均内外輪速度差ΔViaの1/2や、ま
た、後車軸位置と重心位置との間での速度差による補正
を加えることで、重心速度が得られる。しかしながら、
この場合、重心速度の算出式が複雑になるため、重心速
度が前車軸での速度と後車軸での速度の中間値であると
すれば、フィルタ処理前の重心速度Vcg0は次式により
算出することができる。
【0032】 Vcg0=(Vs−ΔVia/2)×(1+1/Rv)/2 一方、制動時での旋回中にあっては、基準車輪速Vsは
車両の外側前輪の車輪速に追従すると考えることができ
る。従って、この場合には、平均内外輪速度差ΔViaの
1/2と、前車軸位置と重心位置との間での速度差に基
づき、基準車輪速Vsを補正すれば、フィルタ処理前の
重心速度Vcg0を下式から求めることができる。
【0033】 Vcg0=(Vs−ΔVia/2)×(1+Rv)/2 この後、重心速度Vcg0は、連続して2回フィルタ処理
(fc=6Hz)されて、重心速度Vcg(=LPF(LPF(Vcg
0))となる。なお、重心速度Vcgの算出にあたり、車
両が非制動時であるか否かに関しては前述したブレーキ
フラグFbに基づいて判定される。
【0034】通常、重心速度Vcgは車体速Vbに一致す
るので、車体速Vbには重心速度Vcgが設定される。即
ち、車体速Vbは通常、下式により算出される。 Vb=Vcg しかしながら、その車輪速が基準車輪速Vsとなる選択
車輪がロック傾向に陥り、その選択車輪に対してもAB
S制御が開始される状況にあると、選択車輪のスリップ
に追従して基準車輪速Vsが沈み込み、この結果、車体
速Vbは、実際の車体速よりも大きく低下してしまう。
【0035】それ故、このような状況に至ると、車体速
Vbは、前後Gxに基づき以下の分離条件で重心速度Vcg
から分離し、そして、所定の勾配で減少するものとして
推定される。分離判定値をGxsとした場合、d/dt(Vc
g)≦Gxsの状態が50msec継続しているか、又は、d/
dt(Vcg)≦ -1.4gの条件を満たすとき、車体速Vbは
重心速度Vcgから分離して推定される。
【0036】ここで、分離判定値Gxsは下式により設定
されている。 Gxs=−(|Gx|+0.2) 但し、-1.4g≦Gxs≦ -0.
35g 上述した分離条件が満たされると、車体速Vbは下式に
基づいて推定される。 Vb=Vbm−ΔG Vbmは分離条件が満たされる前の車体速を示しており、
ΔGは以下の条件で設定される勾配を示している。
【0037】ΔG=(|Gx|+0.15) 但し、-1.2g
≦ΔG≦ -0.3g 車体速Vbが重心速度Vcgから分離して推定されている
とき、車体速Vbが再び重心速度Vcgに設定される条
件、即ち、分離終了条件は以下の通りである。 Vcg>Vbm スリップ率:次に、算出した車体速Vbに対し、下式に
示すように前述の平均内外輪速度差Via及び前後輪速度
比Rvの補正を加えることにより、各車輪位置での参照
車輪位置速度Vr(i)を算出する。
【0038】 Vr(i)=Vb×2/(1+Rv)+(or−)Via/2 ここで、上式中、第2項の正負記号に関し、車両が右旋
回の場合、外側の前後輪に対応した参照車輪位置速度で
は(+)、内側の前後輪に対応した参照車輪位置速度で
は(−)となり、これに対し、車両が左旋回の場合、そ
の正負は逆になる。
【0039】そして、各車輪のスリップ率Sl(i)は、下
式により算出された後、その算出値をフィルタ処理(fc
=10Hz)して得られる。 Sl0(i)=(Vr(i)−Vw(i))/Vr(i) Sl(i)=LPF(Sl0(i)) なお、Sl0(i)はフィルタ処理前のスリップ率である。
【0040】重心スリップ角速度:車両の旋回中心に対
する角速度(車両の公転速度)をωとしたとき、重心ス
リップ角速度dβ(=d/dt(βg))とヨーレイトγとの
関係は次式で表される。 γ=d/dt(βg)+ω βg:重心スリップ角 ここで、重心スリップ角βgが小であると仮定し、車速
をVとすれば、下式が成立する。
【0041】Gy=V×ω Vb=V×cos(βg)=V 上記の3式からω,Vを消去すれば、フィルタ処理前の
重心スリップ角速度dβ0は、下式から得られる。 dβ0=γ−Gy/Vb ここでも、重心スリップ角速度dβ0は、次式に示すよ
うにフィルタ処理(fc=2Hz)されて、重心スリップ角速
度dβが得られる。
【0042】dβ=LPF(dβ0) なお、車両の旋回方向に拘わらず、重心スリップ角速度
dβの正負を アンダステア(US)側が正、オーバス
テア(OS)側で負とするため、車両の右旋回時には、
算出した重心スリップ角速度dβに(−1)を掛け、そ
の正負を反転させる。
【0043】また、車両の低速時、即ち、Vb<10km/h
の条件が満たされるときには、計算のオーバフローを防
止するため、重心スリップ角速度dβの算出を禁止し、
その重心スリップ角速度dβを0とする。 :運転操作の判断: ハンドル角速度 今、ハンドル角θが図5に示すように変化したとする。
【0044】ハンドル角θに変化が生じたとき、そのハ
ンドル角速度θaはハンドル角θの変化量をその変化に
要した時間で割って求めることができる。例えば、図5
に示されているように時刻nを基準とし時刻n+4にてハ
ンドル角θがΔθ(n+4)だけ変化したとすると、時刻n+4
でのハンドル角速度θa0(n+4)は、次式により算出され
る。
【0045】θa0(n+4)=Δθ(n+4)/(4×T) なお、Tは前述したメインルーチンの制御周期である。
一方、ハンドル角θの変化がない状況では、ハンドル角
速度θaは、ハンドル角θが最後に変化した時の変化方
向と同一方向にハンドル角θが最小変化量Δθminだけ
変化したと仮定し、最小変化量Δθminをその変化に要
した時間で割って求められる。例えば時刻n+2でのハン
ドル角速度θa0(n+2)は、次式により算出される。
【0046】θa0(n+2)=Δθmin/(2×T) ここでも、ハンドル角速度θa0は、次式に示すようにフ
ィルタ処理(fc=2Hz)されて、ハンドル角速度θaとな
る。 θa=LPF(θa0) ハンドル角速度実効値:ハンドル角速度実効値θaeは次
式に示されているようにハンドル角速度θaの絶対値を
フィルタ処理して得られる。
【0047】θae=LPF(|θa|) ここでのフィルタ処理では、そのfc(カットオフ周波
数)の値がハンドル角速度θaが増大側であるか減少側
であるか否か、つまり、その値の正負によって異なって
おり、例えばハンドル角速度θaが増加する方向ではfc=
20Hz、逆に、ハンドル角速度θaが減少する方向ではfc=
0.32Hzに設定されている。
【0048】ブレーキペダルのペダルストローク速度:
ペダルストローク速度Vstは、下式に示すようにペダル
ストロークStの変化分をフィルタ処理(fc=1Hz)して
得られる。 Vst=LPF(St(n)−St(n-1)) ここで、St(n-1)は前回のルーチンにて読み込んだペダ
ルストロークであり、St(n)は今回のルーチンにて読み
込んだペダルストロークを示す。
【0049】ブレーキペダルのブレーキフラグ:前述し
たブレーキフラグFbは、ペダルストロークSt又はペダ
ルストローク速度Vstに基づき、以下のようにして設定
される。 St>Ste又はVst>50mm/sの条件が満たされるとき、
Fb=1 上記の条件以外の時、Fb=0 ここで、Steは、ブレーキペダル3の踏み込みによりマ
スタシリンダ2内にて圧力が実際に立ち上がるブレーキ
ペダル3の踏み込み量である。
【0050】ブレーキフラグFbは、前述したように基
準車輪速Vsの選択、重心速度Vcgの算出の際に使用さ
れる。 ブレーキペダルの踏み増しフラグ:踏み増しフラグFpp
は、ペダルストローク速度Vstに基づいて以下のように
設定される。
【0051】Vst>50mm/sの場合、Fpp=1 Vst<20mm/sの場合、Fpp=0 :旋回判定:上述したようにして車両の運動状態を示す
各種の情報や、ドライバの運転操作を判断する各種の情
報が得られると、図3の演算部38及び図4のステップ
S3では、車両の旋回判定が実施され、その詳細は図6
のフローチャートに示されている。
【0052】ハンドル角θが10degよりも正の方向に大
きくなると(ステップS301)、ハンドル角ベースの旋
回方向フラグFdsに1がセットされ(ステップS30
2)、この場合、その旋回方向フラグFds(=1)は車両
が右旋回していること示す。これに対し、ハンドル角θ
が-10degよりも負の方向に大きくなると(ステップS30
3)、旋回方向フラグFdsに0がセットされ(ステップ
S304)、その旋回方向フラグFds(=0)は車両が左旋
回していること示す。なお、ハンドル角θが-10deg≦θ
≦10degの範囲にある場合、旋回方向フラグFdsは前回
のルーチンにて設定された値に維持される。
【0053】そして、ヨーレイトγが2degよりも正の
方向に大きくなると(ステップ305)、ヨーレイトベー
スの旋回方向フラグFdyに1がセットされ(ステップS
306)、この場合、その旋回方向フラグFdy(=1)は車
両が右旋回していることを示す。これに対し、ヨーレイ
トγが-2degよりも負の方向におおきくなると(ステッ
プS307)、旋回方向フラグFdyに0がセットされ、そ
の旋回方向フラグFdy(=0)は車両が左旋回しているこ
と示す。なお、ヨーレイトγが-2deg≦θ≦2degの範囲
にある場合、旋回方向フラグFdyは前回のルーチンにて
設定された値に維持される。
【0054】上述したようにして旋回方向フラグFds,
Fdyが設定されると、次のステップS309では、少なく
とも1つの前輪に対してABS制御が作動中にあり且つ
ブレーキフラグFbに1が設定されているか否かが判別
され、その判別結果が真(Yes)の場合には、旋回フラ
グFdにハンドル角ベースの旋回方向フラグFdsが設定
される(ステップS311)、その判別結果が偽(No)の
場合には、旋回フラグFdにヨーレイトベースの旋回方
向フラグFdyが設定される(ステップS310)。
【0055】更に、次のステップS312では、旋回方向
フラグFdsと旋回方向フラグFdyのの値が一致している
か否かが判別され、ここでの判別結果が偽の場合、つま
り、車体のヨーイングの方向とステアリングハンドルの
操作方向が不一致の場合には、カンタステアフラグFcs
に1がセットされる(ステップS314)。これに対し、
ステップS312の判別結果が偽(No)の場合には、カウ
ンタステアフラグFcsに0がセットされる(ステップS
315)。
【0056】:目標ヨーレイトの計算:図4のルーチン
にてステップS3からステップS4に進むと、図3でみ
た場合、演算部39にて、車両の目標ヨーレイトが計算
される。演算部39の詳細は図7に示されている。演算
部39では、先ず、その算出部42にて、車体速Vb及
び前輪舵角δに基づき、操舵に対するヨーレイト応答の
定常ゲインが算出され、そして、次の処理部44,46
にて、その定常ゲインに2段階のフィルタ処理を施すこ
とにより、目標ヨーレイトγtが算出される。
【0057】ここで、前輪舵角δは前述したようにステ
アリングギヤ比をρとすると、次式で表される。 δ=θ/ρ 定常ゲインは車両の操舵に対するヨーレイト応答の定常
値であって、この定常値は車両の線形2輪モデルから導
くことができる。第1段のフィルタ処理にはノイズ除去
用のローパスフィルタ(LPF1)が使用され、第2段のフィ
ルタ処理には1次遅れ応答用のローパスフィルタ(LPF2)
が使用される。
【0058】従って、目標ヨーレイトγtの算出式を示
すと、以下のようになる。 γt=LPF2(LPF1(Vb /(1+A×Vb2)×(δ/
L))) 上式において、Aはスタビリティファクタ、Lはホイー
ルベースをそれぞれ示している。 :要求ヨーモーメント計算:目標ヨーレイトγtが算出
されると、図3の演算部41、また、図4のステップS
5では、要求ヨーモーメントが計算される。演算部41
及びステップS5の詳細は図8及び図9にそれぞれ示さ
れている。
【0059】図8に示す演算部41では、先ず、その減
算部48にて、目標ヨーレイトγtと検出したヨーレイ
トγとの間の偏差、即ち、ヨーレイト偏差Δγが算出さ
れる。この算出は、図9でみてステップS501,S502に
示されている。また、ステップS502では、ヨーレイト
偏差Δγの正負をアンダステア(US)側で正、オーバ
ステア(OS)側で負として統一するため、車両の左旋
回時にはヨーレイト偏差Δγの正負を反転させる。な
お、車両の旋回方向は前述した旋回フラグFdに基づい
て判定される。
【0060】更に、ステップS502では、算出したヨー
レイト偏差Δγの絶対値をフィルタ処理することで、下
式に示すように最大ヨーレイト偏差Δγmaxが算出され
る。 Δγmax=LPF(|Δγ|) ここでのフィルタ処理では、ヨーレイト偏差Δγが増大
しているか減少しているかによって、そのfcの値が異な
り、例えば、その増大側ではfc=10Hz、その減少側ではf
c=0.08Hzに設定される。
【0061】なお、ヨーモーメント制御が終了したとき
(後述するヨーモーメント制御開始終了フラグFymが0
のとき)、最大ヨーレイト偏差Δγmaxは、下式に示さ
れるようにヨーレイト偏差Δγの絶対値に設定される。 Δγmax=|Δγ| 次に、ヨーレイト偏差Δγは図8の微分部50にて下式
に示すように、その時間微分値つまり差分が算出された
後、フィルタ処理(fc=5Hz)されてヨーレイト偏差微分
値Δγsが得られる。
【0062】Δγs=LPF(Δγ−Δγm) 上式中、Δγmは前回のルーチンで算出されたヨーレイ
ト偏差である。また、ここでも、ヨーレイト偏差Δγで
の場合と同様な理由から、車両の左旋回時、ヨーレイト
偏差微分値Δγsの正負は反転されることになる。上述
したヨーレイト偏差微分値Δγsの算出ステップは、図
9のステップS503で示されている。
【0063】この後、図8でみて、ヨーレイト偏差微分
値Δγsには乗算部52にてフィードバックゲイン、即
ち、比例ゲインKpが乗算されるとともに、ヨーレイト
偏差Δγには乗算部54にて積分ゲインKiが乗算さ
れ、そして、これらの乗算値は加算部56にて加算され
る。更に、加算部56から出力される加算値には、乗算
部58にて補正値Cpiが乗算されることで、要求ヨーモ
ーメントγdが得られる。
【0064】ここで、補正値Cpiは、車両が制動時であ
るか否かによって異なる値をとり、例えば以下のように
設定されている。 制動時(Fb=1)の場合、 Cpi=1.0 非制動時(Fb=0)の場合、Cpi=1.5 上述した要求ヨーモーメントγdの算出は、図9中、ス
テップS504,S505にて実施され、要求ヨーモーメント
γdの算出式は次式で表される。
【0065】γd=(Δγs×Kp+Δγ×Ki)×Cpi ステップS504では、前述した比例及び積分ゲインKp,
Kiが算出されるが、図10を参照すると、比例ゲイン
Kpの算出手順が具体的に示されている。比例ゲインKp
は、USでの旋回時とOSでの旋回時とで異なる基準値
Kpu(例えば、4kgm/s/(deg/s2)),Kpo(例えば、5kgm
/s/(deg/s2))をそれぞれ有しており、これら基準値Kp
u,Kpoの使用はスイッチSWpにより選択される。
【0066】スイッチSWpは判定部60からの判定信
号にて切り替えられ、この判定部60は前述のヨーレイ
ト偏差微分値Δγsが0以上となるUS時に、スイッチ
SWpを基準値Kpo側から基準値Kpu側に切り替える判
定信号を出力する。スイッチSWpから出力された基準
値には乗算部62,64,66にて補正係数Kp1,Kp
2,Kp3が順次乗算され、これにより、比例ゲインKpが
算出される。
【0067】従って、比例ゲインKpは、次式により算
出される。 US時;Kp=Kpu×Kp1×Kp2×Kp3 OS時;Kp=Kpo×Kp1×Kp2×Kp3 ここで、車両が限界走行領域に達する以前の段階で、車
体に対するヨーモーメント制御(後述)が作動されてし
まうと、ドライバに違和感を与えてしまう。それ故、補
正係数Kp1はヨーレイト偏差Δγ又は車体の横Gyが大
となるときのみ比例ゲインKpが有効に働くように、こ
の比例ゲインKpを補正するものである。具体的には、
補正係数Kp1は図11に示す算出ルーチンにて算出され
る。
【0068】図11の算出ルーチンにおいては、先ず、
最大ヨーレイト偏差Δγmaxが10deg/sを越えたか否か
が判別され(ステップS506)、ここでの判別結果が真の
場合、補正係数Kp1に1.0が設定される(ステップS50
7)。一方、ステップS506での判別結果が偽の場合にあ
っては、車体の横Gyの絶対値が下式で示すようにフィ
ルタ処理され、その平均横Gyaが算出される(ステップ
S508)。
【0069】Gya=LPF(|Gy|) ここでのフィルタ処理において、横Gyが増大側にある
ときにはfc=20Hz、減少側にあるときにはfc=0.23Hzに設
定されている。そして、車体速Vbに基づき参照横Gyr
が算出される(ステップS509)。具体的には、ECU
23の記憶装置には、図12に示すようなマップが予め
準備されており、このマップから車体速Vbに基づき、
参照横Gyrが読み出される。マップから明らかなように
車体速Vbが高速領域にあるときには走行が不安になり
易いので、車体速Vbに対する参照横Gyrは低く設定さ
れている。
【0070】上述したようにして平均横Gya及び参照横
Gyrが算出されると、平均横Gyaが参照横Gyrよりも大
きいか否かが判別され(ステップS510)、ここでの判
別結果が真の場合、補正係数Kp1に1.0が設定される
(ステップS507)。これに対し、その判別結果が偽の
場合には、補正係数Kp1に0.05が設定される(ステップ
S511)。
【0071】補正係数Kp2に関しては以下の理由から比
例ゲインKpを補正するために使用されている。即ち、
目標ヨーレイトγtに対しヨーレイトγを単純に追従さ
せると、路面が低μ路の場合、車体の横力がその限界値
に達し、そして、車体の重心スリップ角βgが増大する
結果、車体にスピンが発生する虞があり、これを防止す
るために補正係数Kp2が設定される。つまり、補正係数
Kp2を適切に設定すれば、車体の重心スリップ角βgを
小さく抑え、これにより、車体のスピンを防止できると
考えられる。
【0072】具体的には、補正係数Kp2は図13に示す
設定ルーチンにて決定される。ここでは先ず、重心スリ
ップ角速度dβが読み込まれ(ステップS512)、この
重心スリップ角速度dβに基づき基準補正係数Kcbが図
14に示すマップから読み出される(ステップS51
3)。図14から明らかなように基準補正係数Kcbは例
えば、重心スリップ角速度dβが2deg/s以上になると
1.0の最大値から徐々に減少し、そして、5deg/s以上で
0.1の最小値に維持される。
【0073】次のステップS514ではヨーレイト偏差Δ
γが読み込まれ、そして、前述したようにヨーレイト偏
差Δγの正負に基づき、その旋回がUSである否かが判
別される(ステップS515)。ここでの判別結果が真の
場合には、補正係数Kp2に前記基準補正係数Kcbが設定
され(ステップS516)、その判別結果が偽の場合には
補正係数Kp2に1.0が設定される(ステップS517)。つ
まり、車両の旋回がUSである場合、補正係数Kp2は重
心スリップ角速度dβに基づいて設定されるが、しかし
ながら、OSであるときには補正係数Kp2は定数1.0に
設定される。
【0074】なお、図13中、ステップS519以降のス
テップに関しては後述する。一方、補正係数Kp3は、以
下の理由から比例ゲインKpを補正するために使用され
ている。即ち、車両が悪路を走行しており、ヨーレイト
センサ30の出力に振動成分が加わると、その振動成分
の影響がヨーレイト偏差微分値Δγsに大きく現れ、制
御の誤動作や制御性の悪化を招くことになる。それ故、
補正係数Kp3は比例ゲインKpを減少させて上述の不具
合を防止する。
【0075】具体的には補正係数Kp3の算出手順は、図
15のブロック線図及び図16の設定ルーチンに具体的
に示されている。図15に示されているようにヨーレイ
トセンサ30から生の出力であるヨーレイトγoと、前
回のルーチンにて得られたヨーレイトγomとは減算部6
8に供給され(ステップS522)、この減算部68にて
ヨーレイトγoとヨーレイトγomとの間の偏差、即ち、
その時間微分値Δγoが算出される。
【0076】次に、微分値Δγoには、第1フィルタ処
理(fc=12Hz)及び第2フィルタ処理(fc=10Hz)が施さ
れた後、これらフィルタ処理された微分値の偏差が減算
部70にて算出される。つまり、ヨーレイトγoの微分
値Δγoに対してバンドパスフィルタ処理が実施され
る。この後、減算部70の出力である偏差の絶対値が演
算部72にて算出され、その絶対値は第3フィルタ処理
(fc=0.23Hz)を経て、ヨーレイト振動成分γvとして出
力される(ステップS523)。
【0077】従って、ヨーレイト振動成分γvの算出は
下式で示される。 Δγo=γo−γom γv=LPF3(|LPF1(Δγo)−LPF2(Δγo)|) このようにしてヨーレイト振動成分γvが算出される
と、図16のステップS524にて、そのヨーレイト振動
成分γvに基づき、補正係数Kp3が算出される。具体的
には、ここでも、図17に示すマップが予め準備されて
おり、このマップからヨーレイト振動成分γvに基づ
き、補正係数Kp3が読み出される。図17から明らかな
ように補正係数Kp3は、例えばヨーレイト振動成分γv
が10deg/s以上になると1.0から減少し、15deg/s以上で
0.2の一定値に維持される。
【0078】次に、図18を参照すると、前述した積分
ゲインKiの算出手順がブロック線図で示されている。
ここでも、比例ゲインKpの場合と同様に基準積分ゲイ
ンKi0(例えば、10kgm/s/(deg/s))が使用し、この基
準積分ゲインKi0に乗算部74,76にて順次補正係数
Ki1,Ki2が乗算されることで、最終的に積分ゲインK
iが算出される。従って、積分ゲインKiは下式から算出
される。
【0079】Ki=Ki0×Ki1×Ki2 補正係数Ki1は、以下の理由から積分ゲインKiを減少
させるために使用されている。即ち、前輪の操舵角が増
加すると、目標ヨーレイトγtの誤差がヨーレイト偏差
Δγの誤差を更に拡大し、制御の誤動作を招く虞があ
り、このような状況を考慮して、補正係数Ki0により積
分ゲインKiを減少する。
【0080】具体的には、補正係数Ki1は、図19に示
すマップからハンドル角θに基づいて設定される。図1
9から明らかなようにハンドル角θの絶対値が400deg以
上の大舵角時にあっては、ハンドル角θの増加に伴い、
補正係数Ki1はその最大値から徐々に減少し、ハンドル
角θが600deg以上になると、0.5の最小値に維持される
ようになっている。
【0081】一方、補正係数Ki2は、前述した比例ゲイ
ンKpの補正係数Kp2と同様な理由から積分ゲインKi
を減少させるために使用されており、それ故、その算出
手順は補正係数Kp2の算出手順と同様に図13のルーチ
ンに併せて示されている。図13のステップS518では
ヨーレイト偏差微分値Δγsが読み込まれ、そして、そ
のヨーレイト偏差微分値Δγsの正負に基づき、車両の
旋回がUSであるか否かが判別される(ステップS51
9)。ここでの判別結果が真であると、補正係数Ki2に
前述した基準補正係数Kcbが設定され(ステップS52
0)、その判別結果が偽の場合には、補正係数Ki2に最
大値である1.0が設定される。
【0082】:ヨーモーメント制御:前述したようにし
て要求ヨーモーメントγdが算出されると、図4のメイ
ンルーチンでは次のステップS6、また、図3では演算
部78にて、ヨーモーメント制御が実施される。演算部
78の詳細は図20に示されている。図20の演算部7
8において、先ず、その制御開始終了判定部80では要
求ヨーモーメントγdに基づき、制御開始終了フラグFy
mcが設定される。図21を参照すると、判定部80の詳
細が示されており、この判定部80はOR回路81を備
えている。OR回路81は2つの入力端子を有してお
り、これら入力端子には要求ヨーモーメントγdに応じ
たオンオフ信号が入力される。即ち、その一方の入力端
子には、要求モーメントγdがOS側の閾値γos(例え
ば-100kgm/s)よりも小のときオン信号が入力され、他
方の入力端子には要求モーメントγdがUS側の閾値γu
s(例えば200kgm/s)よりも大のときオン信号が入力さ
れるようになっている。従って、要求ヨーモーメントγ
dが何れか一方の閾値を越えたとき、OR回路81の出
力端子からオン信号が出力され、このオン信号はフリッ
プフロップ82のセット端子Sに入力される。この結
果、フリップフロップ82の出力端子Qから制御開始終
了フラグFymc、この場合、制御の開始を示すFymc=1
が出力される。
【0083】ここで、OS側の閾値γosの絶対値(100k
gm/s)はUS側の閾値γusの絶対値(200kgm/s)よりも
小さいので、OS側での制御開始終了フラグFymc=1の
出力タイミング、つまり、ヨーモーメント制御の開始タ
イミングがUS側での場合よりも早まることになる。一
方、フリップフロップ82のリセット端子Rには、制御
開始終了フラグFymcのリセットタイミング、つまり、
フリップフロップ82からFymc=0の出力タイミング
を決定するリセット信号が供給されるようになってい
る。
【0084】リセット信号を発生する回路は、図21に
示されているようにスイッチ83を備えており、このス
イッチ83は2つの入力端子を有している。スイッチ8
3の一方の入力端子には第1終了判定時間tst1(例え
ば152msec)が供給されており、他方の入力端子には第2
終了判定時間tst2(例えば504msec)が供給されてい
る。
【0085】スイッチ83は判定部84からの切り換え
信号を受けて切り換えられ、この判定部84は、車体の
挙動が安定している場合、つまり、以下の条件が全て満
たされている場合にあっては、スイッチ83から第1終
了判定時間tst1を終了判定時間tstとして出力させる
第1切り換え信号を出力し、上記の条件のうち1つでも
満たされない場合にはスイッチ83から第2終了判定時
間tst2を終了判定時間tstとして出力させる第2切り
換え信号を出力する。
【0086】条件:目標ヨーレイトγt<10deg/s且つ
ヨーレイトγ<10deg/s且つハンドル角速度実効値θa
e<200deg/s 次に、終了判定時間tstは判定部85に供給される。こ
の判定部85では、ブレーキ圧の制御信号が保持又は非
制御の状態(後述する制御モードM(i)が保持又は非制
御モードである状態)が終了判定時間tst以上継続して
いるか否かを判定し、その判定結果が真となったときに
終了指示フラグFst(i)=1を出力し、これに対し、そ
の判定結果が偽の場合には終了指示フラグFst(i)=0
を出力する。なお、終了指示フラグFstのiは対応する
車輪を表している。また、ブレーキ圧の制御信号に関し
ては後述する。
【0087】終了指示フラグFst(i)はAND回路86
の入力端子にそれぞれ供給され、このAND回路86の
出力端子はOR回路87の一方の入力端子に接続されて
いる。また、OR回路87の他方の入力端子には車体速
Vbが10km/hよりも遅いときにオン信号(=1)が入力さ
れるようになっている。そして、OR回路87の出力端
子が前述したフリップフロップ82のリセット端子Rに
接続されている。
【0088】AND回路86は、終了指示フラグFst
(i)の値が全て1であるときにオン信号をOR回路87
に供給し、OR回路87はその入力側の何れかにオン信
号が供給されたとき、フリップフロップ82のリセット
端子Rにオン信号を供給する。つまり、車体速Vbが10k
m/hよりも遅くなるか、または、ブレーキ圧の制御信号
に関して前述の条件が各車輪の全てで満たされたとき、
フリップフロップ82にリセット信号が供給される。
【0089】リセット信号を受け取ると、フリップフロ
ップ82は、制御の終了を示す制御開始終了フラグFym
c=0を出力する。図20に示されているように制御開
始終了判定部80の出力、即ち、制御開始終了フラグF
ymcはブレーキ圧制御モードの判定部88に供給され、
この判定部88は、供給された制御開始終了フラグFym
cの値が1である場合、前述した要求ヨーモーメントγd
及び旋回フラグFdに基づき、各車輪のブレーキ圧制御
モードを判定する。
【0090】先ず、判定部88では、図22に示される
マップからUS時及びOS時毎に、ブレーキ圧制御の制
御実行フラグFcus,Fcosが設定される。具体的には、
以下に示すように制御実行フラグFcus,Fcosは、要求
モーメントγdと各閾値との大小関係に基づいて設定さ
れる。 US時:γd>閾値γdus1(=100kgm/s)の場合、 Fcus=1 γd<閾値γdus0(=80kgm/s)の場合、 Fcus=0 OS時:γd<閾値γdos1(=-80kgm/s)の場合、Fcos=1 γd>閾値γdos0(=-60kgm/s)の場合、 Fcos=0 次に、制御実行フラグFcus,Fcosと、旋回フラグFd
の組み合わせに基づき、各車輪毎のブレーキ圧制御の制
御モードM(i)が選択され、この選択ルーチンは図23
に示されている。
【0091】図23の選択ルーチンにおいては、先ず、
旋回フラグFdの値が1であるか否かが判別され(ステ
ップS601)、ここでの判別結果が真の場合、つまり、車
両が右旋回している場合、制御実行フラグFcusの値が
1であるか否かが判別される(ステップS602)。ここ
での判別結果が真となる状況とは、車両の旋回時にUS
傾向が強く、要求モーメントγdが閾値γdus1以上の大
きな値であって、車両が回頭モーメントを要求している
ことを意味している。それ故、この状況では、左前輪F
WLの制御モードM(1)が減圧モードに設定され、これに
対し、右後輪RWRの制御モードM(4)は増圧モードに設
定され、そして、右前輪FWR及び左後輪RWLの制御モ
ードM(2),M(3)は非制御モードに設定される(ス
テップS603)。
【0092】ステップS602の判別結果が偽であると、
制御実行フラグFcosの値が1であるか否かが判別され
る(ステップS604)。ここでの判別結果が真となる状
況とは、車両の旋回時にOS傾向が強く、要求モーメン
トγdが閾値γdos1以上の小さな値であって、車両が復
元モーメントを要求していることを意味している。それ
故、この状況では、左前輪FWLの制御モードM(1)が増
圧モードに設定され、これに対し、右後輪RWRの制御
モードM(4)は減圧モードに設定され、そして、右前輪
FWR及び左後輪RWLの制御モードM(2),M(3)は
非制御モードに設定される(ステップS605)。
【0093】上述したステップS602,S604の判別結果
が共に偽である場合には、車両の旋回時、US傾向及び
OS傾向は共に強くないので、この場合、左前輪FWL
及び右後輪RWRの制御モードM(1),M(4)は保持モー
ドに設定され、そして、右前輪FWR及び左後輪RWLの
制御モードM(2),M(3)は非制御モードに設定され
る(ステップS606)。
【0094】一方、ステップS601の判別結果が偽であ
って、車両が左旋回している場合には、制御実行フラグ
Fcusの値が1であるか否かが判別される(ステップS6
07)。ここでの判別結果が真となる状況では前述の右旋
回の場合と同様に車両が回頭モーメントを要求している
ので、この場合には右旋回の場合とは逆に、右前輪FW
Rの制御モードM(2)が減圧モードに設定され、これに対
し、左後輪RWLの制御モードM(3)は増圧モードに設定
され、そして、左前輪FWL及び右後輪RWRの制御モー
ドM(1),M(4)は非制御モードに設定される(ステ
ップS608)。
【0095】ステップS607の判別結果が偽であると、
制御実行フラグFcosの値が1であるか否かが判別され
(ステップS609)、ここでの判別結果が真であると、
車両は復元モーメントを要求しているので、この場合に
は、右前輪FWRの制御モードM(2)が増圧モードに設定
され、これに対し、左後輪RWLの制御モードM(3)は減
圧モードに設定され、そして、左前輪FWL及び右後輪
RWRの制御モードM(1),M(4)は非制御モードに
設定される(ステップS610)。
【0096】ステップS607,S609の判別結果がともに
偽となる場合には、前述した右旋回の場合と同様に、右
前輪FWRL及び左後輪RWLの制御モードM(2),M(3)
は共に保持モードに設定され、そして、左前輪FWL及
び右後輪RWRの制御モードM(1),M(4)は非制御
モードに設定される(ステップS611)。上述した制御
モードM(i)の選択は、以下の表1に纏めて示されてい
る。
【0097】
【表1】
【0098】各車輪に対する制御モードM(i)が選択さ
れると、次のバルブ制御信号計算部89では、選択され
た制御モードM(i)と要求ヨーモーメントγdとに基づ
き、各車輪のブレーキ圧を制御する入口及び出口バルブ
12,13への制御信号が計算される。具体的には、先
ず、要求ヨーモーメントを得る上で、ホイールシリンダ
内の液圧、つまり、ブレーキ圧の増減圧レート(増減圧
の勾配)が算出され、そして、この算出した増減圧レー
トに従い、実際のブレーキ圧を一定の増減圧量ΔP毎に
変化させるために、その増減圧量ΔPを得るための入口
又は出口バルブ12,13の駆動パルス、つまり、バル
ブ制御信号のパルス周期Tpls及びパルス幅Wpls(i)が
算出される。ここで、増減圧量ΔPは例えば±5kg/cm2
に設定されているが、しかしながら、応答性を確保する
ため初回のみ増減圧量ΔPは±10kg/cm2に増加されてい
る。この点、図24を参照すれば、ホイールシリンダ内
のブレーキ圧が増減圧量ΔP毎に増減されている様子が
示されている。
【0099】入口及び出口バルブ12,13は、保持モ
ードを基準としてバルブ制御信号、つまり、その増圧パ
ルス信号又は減圧パルス信号の供給を受けて駆動される
ことになるが、ここで、その増減圧パルス信号はメイン
ルーチンの制御周期T(8msec)毎に出力されるため、
実際の入口及び出口バルブ12,13の駆動がパルス周
期Tpls毎に行われるべく駆動モードMpls(i)が設定さ
れる。
【0100】以下、前述したパルス周期Tpls、パルス
幅Wpls(i)及び駆動モードMpls(i)に関して詳細に説明
する。先ず、前輪のホイールブレーキ内のブレーキ圧が
ΔPwcだけ変化したとき、車体のヨーモーメントの変化
量ΔMzは、車体の横力を無視すれば下式で表すことが
できる。
【0101】ΔMz=ΔPwc×BF×Tf/2 ここで、BFはフロントブレーキ係数(kg/cm2→kg)、
Tfはフロントトレッドを示している。従って、要求ヨ
ーモーメントγdが与えられた際のブレーキ圧の増減圧
レートRpwc(kg/cm2/s)は下式で表すことができる。
【0102】Rpwc=2×γd/BF/Tf 一方、1回の増減圧量ΔP(5kg/cm2又は10kg/cm2)が
固定されている場合、増減圧レートRpwcとパルス周期
Tplsとの関係から次式が導かれる。 |Rpwc|=ΔP/(Tpls×T) 上記の2式からパルス周期Tplsは次式で表される。
【0103】 Tpls=ΔP×BF×Tf/(2×T×|γd|) 但し、2≦Tpls≦12 なお、後輪側の入口及び出口バルブ12,13のパルス
周期に関しては、前輪側のパルス周期Tplsを使用す
る。パルス幅Wpls(i)に関しては実験により予め設定さ
れている。この実験では、マスタシリンダ圧及びホイー
ルブレーキ圧(ブレーキ圧)をそれぞれ基準圧に調整し
た状態でバルブを駆動し、ホイールブレーキ圧に増減圧
量ΔP(5kg/cm2又は10kg/cm2)の変化が現れる時間を
計測する。そして、その計測時間に基づきパルス幅Wpl
s(i)を設定している。なお、ホイールブレーキ圧の増圧
には、前述したポンプ16又は17からの吐出圧が利用
されるため、パルス幅Wpls(i)は、ポンプ16又は17
の応答遅れを考慮して設定されるのが望ましい。
【0104】駆動モードMpls(i)に関しては、前述の制
御モードM(i)とパルス周期Tplsとに基づき、図25に
示す設定ルーチンに従って設定される。この設定ルーチ
ンでは、先ず、制御モードM(i)が判定される(ステッ
プS612)。ここで、制御モードM(i)が非制御である場
合には、増圧周期カウンタCNTi(i)及び減圧周期カウ
ンタCNTd(i)を共に0とし、駆動モードMpls(i)に非
制御モードが設定される(ステップS613)。
【0105】制御モードM(i)が保持モードである場合
には、駆動モードMpls(i)に保持モードが設定される
(ステップS614)。制御モードM(i)が増圧モードであ
る場合には、増圧周期カウンタCNTi(i)のみが作動し
(ステップS615)、そして、増圧周期カウンタCNTi
(i)の値がパルス周期Tplsに達したか否かが判別される
(ステップS616)。この時点ではその判別結果は偽と
なり、次に増圧周期カウンタCNTi(i)の値が0である
か否かが判別されるが(ステップS617)、ここでもそ
の判別結果は真となって、駆動モードMpls(i)に増圧モ
ードが設定される(ステップS618)。
【0106】この後のルーチンが繰り返して実行される
と、ステップS617の判別結果が偽に維持されるので、
駆動モードMpls(i)に保持モードが設定される(ステッ
プS619)。しかしながら、時間の経過に伴い、ステッ
プS616の判別結果が真になり、増圧周期カウンタCN
Ti(i)の値が0にリセットされると(ステップS62
0)、この時点で、ステップS617の判別結果が真となっ
て、駆動モードMpls(i)に増圧モードが設定される(ス
テップS618)。従って、制御モードM(i)が増圧モード
である場合、駆動モードMpls(i)はパルス周期Tpls毎
に増圧モードに設定されることになる。
【0107】一方、制御モードM(i)が減圧モードであ
る場合には、図25中のステップS621〜S626のステッ
プがその増圧モードの場合と同様にして実行されること
により、駆動モードMpls(i)はパルス周期Tpls毎に減
圧モードに設定される。前述したようにして駆動モード
Mpls(i)及びパルス幅Wpls(i)が計算されると、次の増
減圧禁止補正部90(図20参照)では、車両のカウン
タステア時やスリップの過大時、また、制御のオーバシ
ュートを考慮してブレーキ圧の増減圧を禁止すべくパル
ス幅Wpls(i)が補正され、その詳細は図26のブロック
線図に示されている。
【0108】増減圧禁止補正部90に供給されたパルス
幅Wpls(i)は3つのスイッチ91,92,93を経て、
パルス幅Wpls1(i)として出力される。これらスイッチ
は、設定部94,95,96にて設定されたフラグの値
により、その出力をWpls1(i)=Wpls(i)又はWpls1(i)
=0に切り換え可能となっている。なお、増減圧禁止補
正部90では、供給された駆動モードMpls(i)はそのま
ま出力される。
【0109】先ず、設定部94では、カウンタステア時
の増圧禁止フラグFk1(i)が設定される。具体的には、
設定部94はAND回路97を備えており、このAND
回路97の出力、即ち、増圧禁止フラグFk1(i)がスイ
ッチ91に供給されるようになっている。AND回路9
7の各入力には、対応する条件が満たされたときにオン
信号がそれぞれ供給され、ここで、各オン信号の入力条
件は、ブレーキフラグFbが1、自輪が後輪、カウンタ
ステアフラグFcsが1、そして、制御モードM(i)が増
圧モードの場合である。
【0110】従って、AND回路97はその入力の全て
がオン信号であるときに、増圧禁止フラグFk1(i)=1
を出力し、それ以外の場合には増圧禁止フラグFk1(i)
=0を出力することになる。スイッチ91は増圧禁止フ
ラグFk1(i)=1を受け取ると、図示の状態から切り換
えられ、これにより、パルス幅Wpls1(i)に0が設定さ
れる。なお、この場合、パルス幅Wpls(i)を0にする代
わりに、その値を減少させるようにしてもよい。
【0111】設定部95では、スリップ過大時の増圧禁
止フラグFk2(i)が設定される。ここでも、設定部95
はAND回路98を備えており、このAND回路98の
出力、即ち、増圧禁止フラグFk2(i)がスイッチ92に
供給されるようになっている。AND回路98の各入力
には、スリップ率Sl(i)が許容スリップ率Slmax(i)よ
りも大きいとき、また、制御モードM(i)が増圧モード
であるときにオン信号が供給される。許容スリップ率S
lmax(i)は、図27のマップから要求ヨーモーメントγd
に基づいて読み出される。ここで、許容スリップ率Slm
ax(i)は、要求ヨーモーメントγdが増加するに連れて所
定の比率で増加する特性を有し、その最大値は20%に
設定されている。
【0112】図27のマップに関し、その対象車輪に対
してABS制御が開始されたときには、許容スリップ率
Slmaxの最大値をその時点での対象車輪のスリップ率に
制限すべく、図27のマップを修正するようにしてもよ
い。AND回路98はその入力の全てがオン信号である
ときに、増圧禁止フラグFk2(i)=1を出力し、それ以
外の場合には増圧禁止フラグFk2(i)=0を出力するこ
とになる。
【0113】スイッチ92は増圧禁止フラグFk2(i)=
1を受け取ると、図示の状態から切り換えられ、この場
合にも、パルス幅Wpls1(i)に0が設定される。なお、
この場合にあっても、パルス幅Wpls(i)を0にする代わ
りに、その値を減少させるようにしてもよい。設定部9
6では、要求ヨーモーメントγdの絶対値が所定の比率
以上の減少傾向にあるとき、制御のオーバシュートを防
止する防止フラグFk3=1をスイッチ93に出力し、そ
の条件が満たされないときには防止フラグFk3=0をス
イッチ93に出力する。ここでも、スイッチ93に防止
フラグFk3=1が供給されると、スイッチ93は切り換
えられ、パルス幅Wpls1(i)を0に設定する。
【0114】図20を再度参照すると、ヨーモーメント
制御のブロック線図には予圧制御判定部100が含まれ
ており、この判定部100では、ヨーモメント制御の開
始に先立ち、ポンプ16,17や、入口及び出口バルブ
12,13並びにカットオフバルブ19,20の作動を
制御するための予圧フラグFpre1,Fpre2が設定され
る。
【0115】具体的には、要求ヨーモーメントγdの絶
対値が所定値以上に大きくなったり又は最大ヨーレイト
偏差Δγmaxが所定値以上に大きくなると、判定部10
0から予圧フラグFpre1=1又はFpre2=1が一定の継
続時間(例えば96msec)だけ出力され、その出力中に、
ヨーモーメント制御が開始されると、その開始時点で予
圧フラグFpre1又はFpre2は0にリセットされる。な
お、予圧フラグFpre1=1は車両の右旋回時に設定さ
れ、これに対し、予圧フラグFpre2は車両の左旋回時に
設定される。
【0116】更に、図20のブロック線図には、制御信
号の強制変更部111が含まれており、この強制変更部
111の詳細は図28に示されている。強制変更部11
1では、パルス幅Wpls1(i)及び駆動モードMpls(i)が
種々の状況に応じて強制的に変更される。これらパルス
幅Wpls1(i)及び駆動モードMpls(i)は、強制変更部1
11を通過すると、パルス幅Wy(i)及び駆動モードMy
(i)として出力される。
【0117】図28から明らかなように駆動モードMpl
s(i)は、スイッチ112〜117を経て駆動モードMy
(i)となり、これらスイッチ112〜117はフラグの
供給を受け、そのフラグの値に従って切り換えられるよ
うになっている。スイッチ112は、非制御対角ホール
ド判定部118から出力されるフラグFhld(i)により切
り換えられ、その判定部118では、車両が非制動中
(Fb=0)にあってポンプ16,17の作動している
とき(後述するモータ駆動フラグFmtr=1であると
き)、非制御モードの車輪に対応したフラグFhld(i)を
1に設定する。従って、この場合、スイッチ112は、
駆動モードMpls(i)中の非制御モードの車輪を保持モー
ドに強制的に切り換えた駆動モードMpls1(i)を出力
し、これに対し、フラグFhld(i)=0の場合には駆動モ
ードMpls(i)をそのまま出力する。従って、駆動モード
Wpls1(i)では、非制御中の車輪が保持モードに強制的
に切り換えられるので、ポンプ16,17からの吐出圧
がその車輪のホイールブレーキに供給されることはな
い。
【0118】スイッチ113は、終了制御判定部119
から出力される終了フラグFfin(i)により切り換えら
れ、その判定部119では、ヨーモーメント制御の終了
(Fymc=0)後、一定の期間(例えば340msec)の間に
亘り所定の周期(例えば40msec)で且つ所定時間(例え
ば16msec)の間、終了フラグFfin(i)を1に設定して出
力する。なお、終了フラグFfin(i)は後述するようにカ
ットオフバルブ19,20の開閉制御にも使用される。
【0119】終了フラグFfin(i)=1が供給されると、
スイッチ113は、駆動モードMpls(i)中、制御対象に
ある車輪を保持モードに強制的に切り換えた駆動モード
Mpls2(i)を出力し、これに対し、終了フラグFfin(i)
=0の場合には駆動モードMpls(i)をそのまま出力す
る。このようにヨーモーメント制御の終了後、制御対象
の車輪の駆動モードが周期的に保持モードに切り換えら
れると、制御対象車輪のブレーキ圧が急激に変化するこ
とはなく、車両の挙動を安定させることができる。
【0120】スイッチ114は、前述した予圧制御判定
部100から出力される予圧フラグFpre1,Fpre2によ
り切り換えられ、これら予圧フラグFpre1=1又はFpr
e2=1を受け取ると、スイッチ114は駆動モードMpl
s(i)中、その制御対象の車輪を保持モードに強制的に切
り換えた駆動モードMpls3(i)を出力し、Fpre1=Fpre
2=0の場合には駆動モードMpls(i)をそのまま出力す
る。
【0121】ここで、前述の説明では、制御開始終了判
定部80からの制御開始終了フラグFymc=1の出力を
受けることで、判定部88にて、制御モードM(i)及び
駆動モードMpls(i)が設定されるとしたが、これら制御
モードM(i)及び駆動モードMpls(i)は、制御開始終了
フラグFymcの値に拘わらず判定部88にて設定されて
いる。それ故、ヨーモーメント制御の開始前に、駆動モ
ードMpls(i)が駆動モードMpls3(i)に設定され、前述
の予圧制御が開始されても、その制御対象の車輪のブレ
ーキ圧に悪影響を与えることはない。
【0122】スイッチ115は、ペダル解放判定部12
0から出力される解放フラグFrpにより切り換えられ、
判定部120は制動時のヨーモーメント制御中、ブレー
キペダル3が解放されたとき、解放フラグFrpを1に所
定時間(例えば64msec)だけ設定して出力する。解放フ
ラグFrp=1を受け取ると、スイッチ115は駆動モー
ドMpls(i)中、減圧モードの車輪のブレーキ圧を強制的
に減圧させる駆動モードMpls4(i)を出力し、解放フラ
グFrp=0の場合には駆動モードMpls(i)をそのまま出
力する。
【0123】また、解放フラグFrpはスイッチ121に
も供給され、Frp=1の場合、スイッチ121はパルス
幅Wpls1(i)の値を強制的に制御周期T(=8msec)に変
更したパルス幅Wy(i)を出力し、Frp=0の場合にはパ
ルス幅Wpls1(i)をそのままパルス幅Wy(i)として出力
する。スイッチ116は、ペダル踏み増し判定部122
から出力される踏み増しフラグFppにより切り換えら
れ、この踏み増しフラグFppは前述したようにして設定
される。Fpp=1を受け取ると、スイッチ116は、駆
動モードMpls(i)の代わりに、全ての車輪を非制御モー
ドに強制的に切り換えた駆動モードMpls5(i)を出力
し、Fpp=0の場合には駆動モードMpls(i)をそのまま
出力する。駆動モードがMpls5(i)に設定されると、ド
ライバによるブレーキペダル操作が各車輪のブレーキ圧
に反映されることになる。
【0124】スイッチ117は後退判定部123から出
力される後退フラグFrevにより切り換えられ、その判
定部123は、車両の変速機において、後退ギヤが選択
されたとき、後退フラグFrevを1に設定し、これ以外
の場合には後退フラグFrevに0を設定して出力する。
後退フラグFrev=1を受け取ると、スイッチ117
は、駆動モードMpls(i)の代わりに、全ての車輪を非制
御モードに強制的に切り換えた駆動モードMy(i)を出力
し、Frev=0の場合には駆動モードMpls(i)を駆動モ
ードMy(i)として出力する。
【0125】図20に示されているように制御信号の強
制変更部111からの出力である駆動モードMy(i)及び
予圧制御判定部100からの出力である予圧フラグは、
駆動判定部124にも供給されており、この駆動判定部
124の詳細は図29から図32に示されている。図2
9の判定回路125では、各車輪のホイールシリンダ毎
にカットオフバルブ19,20及びモータ18の駆動を
要求するフラグが設定される。判定回路125は先ず、
2つのAND回路126,127を備えており、一方の
AND回路126の入力にはブレーキフラグFb=1、
また、駆動モードMy(i)が増圧モードであるときにオン
信号が供給され、そして、それらの入力が共にオンの場
合、増圧モードの車輪に対応したi(車輪識別番号)を
OR回路128に出力する。
【0126】他方のAND回路127の入力には、ブレ
ーキフラグFb=0、また、駆動モードMy(i)が非制御
モードであるときにオン信号が供給され、それらの入力
が共にオンの場合、非制御モードではない車輪に対応し
たiをOR回路128に出力する。つまり、AND回路
127の駆動モード側の入力はNOT回路129を介し
て供給されるようになっている。
【0127】OR回路128は、AND回路126,1
27からの出力を受けると、モータ18の駆動を要求す
る要求フラグFmon(i)のうち、供給を受けたiに対応す
る要求フラグFmon(i)の値を1にして出力する。また、
OR回路128の出力はフリップフロップ130のセッ
ト端子にも供給されており、そのリセット端子には駆動
モードMy(i)が非制御であるとき、そのi毎にリセット
信号が入力されるようになっている。
【0128】フリップフロップ130のセット端子に要
求フラグFmon(i)=1が供給されると、フリップフロッ
プ130は、カットオフバルブ19,20の駆動を要求
する要求フラグFcov(i)のうち、要求フラグFmon(i)=
1のiに対応した要求フラグFcov(i)の値を1に設定し
て出力し続け、そして、リセット信号を受けたとき、全
ての要求フラグFcov(i)の値を0にリセットする。
【0129】次に、図30の判定回路131はOR回路
132を備えており、このOR回路132はその入力で
ある左前輪FWL及び右後輪RWR側のカットオフバルブ
19に関する要求フラグFcov(1),Fcov(4),終了フラ
グFfin(1),Ffin(4)及び予圧フラグFpre1のうち、そ
の値の何れかが1に設定されていると、カットオフバル
ブ19を駆動するカット駆動フラグFvd1の値を1に設
定して出力する。
【0130】OR回路132から出力されたカット駆動
フラグFvd1は、更にスイッチ133,134を経て出
力され、ここで、スイッチ133は踏み増しフラグFpp
によって切り換えられ、スイッチ134は後退フラグF
revによって切り換えられるようになっている。つま
り、OR回路132の出力がFvd1=1であっても、踏
み増しフラグFpp及び後退フラグFrevの一方が1に設
定されている場合にあっては、カット駆動フラグFvd1
は0にリセット(非制御モード)されて出力される。
【0131】図31の判定回路135は、図30の判定
回路131と同様な構成及び機能を有しているが、その
OR回路136には右前輪FWR及び左後輪FWL側のカ
ットオフバルブ20に関する要求フラグFcov(2),Fco
v(3),終了フラグFfin(2),Ffin(3)及び予圧フラグFpr
e2が入力される点で判定回路131とは異なり、この場
合、OR回路136は、カットオフバルブ20を駆動す
るカット駆動フラグFvd2をスイッチ137,138を
経て出力することになる。
【0132】図32の判定回路、即ち、OR回路139
には、モータ18の駆動を要求する車輪毎の要求フラグ
Fmon(i)、又、予圧制御が作動中であることを示す予圧
フラグFpre1,Fpre2のうち、何れかの値が1に設定さ
れているとき、モータ駆動フラグFmtrの値を1に設定
して出力する。 :ABS協調制御:前述したようにヨーモーメント制御
に関して、駆動モードMy(i),パルス幅Wy(i),カット
駆動フラグFvd1,Fvd2及びモータ駆動フラグFmtrが
設定されると、次には、ABS制御との協調制御が実施
される(図3のABS協調制御部200及び図4のステ
ップS7参照)。
【0133】ABS協調制御部200の詳細は図33に
示されており、ここで、協調制御部200中のABS制
御自体に係わる構成を先ず簡単に説明する。先ず、車体
速Vb及び車輪速Vw(i)がスリップ率計算部201
供給され、この計算部201では、次式に基づき車輪
のスリップ率Sx(i)が算出される。 Sx(i)=(Vb−Vw(i))/Vb×100 なお、このスリップ率Sx(i)の計算に際しては、路面の
摩擦係数が高い高μ路、ABS作動の初回動作及び車体
の揺れ戻しを考慮したスリップ量補正や、車速、後輪、
旋回及び外乱を考慮したスリップ率補正に加え、後述す
るようにヨーモーメント制御を考慮した補正が加えられ
る。
【0134】算出されたスリップ率Sx(i)には更に悪路
補正が加えられ、そして、その補正後のスリップ率Sx
(i)が車輪スリップ指数の演算部202に供給される。
また、補正後のスリップ率Sx(i)は積分部201bにも
供給され、この積分部201bはスリップSx(i)の積分
値ISx(i)を演算部202に供給する。更に、演算部2
02には、車輪加速度dVw(i)及び車輪加加速度Jx(i)
もまた供給されており、そして、車輪加速度dVw(i)に
は悪路補正、ロック補正及び外乱補正が加えられてい
る。
【0135】演算部202では、スリップ率Sx(i)、積
分値ISx(i)、車輪加速度dVw(i)及び車輪加加速度J
x(i)を受け取ると、これらに基づいて車輪スリップ指数
IIx(i)が演算される。車輪スリップ指数IIx(i)とは
車輪のスリップ情報を表し、スリップ率Sx(i)が最大ス
リップ率(路面の摩擦係数μとの関係から、そのスリッ
プ率が最大値付近となる値)から外れたり、また、車輪
加速度dVw(i)が目標車輪加速度から外れると、車輪ス
リップ指数IIx(i)は正又は負の方向に増加される。具
体的には、スリップ率Sx(i)が最大スリップ率よりも増
加すると、車輪スリップ指数IIx(i)は負の方向に増加
される。
【0136】車輪加速度dVw(i)は車輪速の回復傾向を
示すので、車輪加速度dVw(i)がその目標車輪加速度か
ら大の方向に外れる場合、車輪スリップ指数IIx(i)は
正の方向に増加し、逆の場合には負の方向に増加する。
また、車輪スリップ指数IIx(i)の算出にあたり、車輪
加加速度Jx(i)を考慮するようにすると、車輪加速度d
Vw(i)の回復傾向を早期に検出でき、スリップ率Sx(i)
の積分値ISx(i)を考慮することで、低μ路から高μ路
への移行を早期に検出でき、これにより、車輪スリップ
指数IIx(i)の正確な算出が可能となる。
【0137】演算部202にて車輪スリップ指数IIx
(i)を算出にするにあたっては、スリップ率Sx(i)、そ
の積分値ISx(i)、車輪加速度dVw(i)及び車輪加加速
度Jx(i)を入力変数としたファジイ推論が利用される
が、そのファジイ推論のファジイルールを具体化したメ
ンバシップ関数、車輪スリップ指数IIx(i)を出力する
メンバシップ関数などに関しては省略する。
【0138】演算部202にて算出された車輪スリップ
指数IIx(i)は、次の演算部203に供給され、この演
算部203にて車輪スリップ指数IIx(i)に基づき、そ
の車輪のホイールブレーキに供給すべき目標増減圧ID
Px(i)が計算される。ここで、目標増減圧IDPx(i)
は、車輪スリップ指数IIx(i)から決定される基本増減
圧DP(i)に前述したHU7における入口及び出口バル
ブ12,13の切り換え動作の最適化を図る補正を加え
ることで求めることができる。
【0139】図34を参照すると、基本増減圧の変換マ
ップが示されている。この変換マップから明らかなよう
に基本増減圧DP(i)は、車輪スリップ指数IIx(i)が
所定の正の値から正の方向に増加し始めると、図34に
示すパターンに従い更に増加する。一方、車輪スリップ
指数IIx(i)が負の所定値を越えて負の方向に増加する
と、基本増減圧DPは、図34に示すパターンに従い負
の方向に増加する。
【0140】この後、目標増減圧IDPx(i)は演算部2
04に供給され、この演算部204では入口及び出口バ
ルブ12,13の駆動モード及びその駆動のパルス幅が
設定される。ここで、駆動モードは後述するようにMab
s1(i)で示され、また、そのパルス幅はWabs1(i)で示さ
れ、より具体的には、目標増減圧IDPx(i)が正の値を
とる場合にはその駆動モードは増圧モードになり、負の
値をとる場合、その駆動モードは減圧モードとなる。そ
して、目標増減圧IDPx(i)が0の場合、その駆動モー
ドは保持モードになる。
【0141】また、パルス幅に関しては、その目標増減
圧IDPx(i)とパルス幅とが下式、 IDPx(i)=増減圧ゲイン×パルス幅 の関係にあることから、パルス幅は次式 パルス幅=IDPx(i)/増減圧ゲイン から算出することができる。
【0142】ここで、増減圧ゲインには、入口及び出口
バルブ12,13自体の作動特性のばらつきを考慮した
増圧ゲインGapl、減圧ゲインGrelが使用される。更
に、次の演算分205では、演算部204にて設定され
たパルス幅が増減圧時、その入口及び出口バルブ12,
13におけるソレノイドの遅れ時間Tda,Tdrを考慮し
て補正される。
【0143】上述したようにして演算された駆動モード
及びパルス幅は、スイッチ207,208を経て出力さ
れることになるが、スイッチ207は、ABSの作動開
始・終了を判定する判定回路209からの判定信号、即
ち、ABS開始終了フラグFabs(i)の供給を受けて切り
換えられ、また、スイッチ208は、ABSの作動が開
始される直前の状態を判定する判定回路210から判定
信号、即ち、ABS開始直前フラグFp_abs(i)の供給を
受けて切り換えられる。また、判定回路210は、AB
S開始直前フラグFp_abs(i)を出力すると同時に、ポン
プ16,17のモータ18を駆動するためのモータ駆動
フラグFm_absの値を1にセットして出力する。
【0144】即ち、判定回路210は、ABSの作動が
開始される直前の状態を検出すると、そのスイッチ20
8を保持モード側に切り換え、そして、この後、判定回
路209にて、ABSの作動を開始すべきであると判定
されると、判定回路209,210はそれらのスイッチ
207,208を図示の切り換え位置に切り換え作動さ
せ、これにより、演算された駆動モード及びパルス幅が
出力されることになる。判定回路209,210での判
定は、例えば車体速Vbと車輪スリップ指数IIx(i)と
に基づいて行うことができる。
【0145】図33のABS協調制御部200には、上
述したABS制御のための基本構成に加え、前述のヨー
モーメント制御を考慮した構成をも付加されており、以
下、その付加構成に関して説明する。また、図35に
は、ABS協調制御に関して概略的な制御ルーチンが示
されている。図33から明らかなように協調制御部20
0には、ヨーモーメント制御量の演算部211が付加さ
れており、その詳細は図36に示されている。
【0146】図36の演算部212では、先ず、要求ヨ
ーモーメントγdに基づきスリップ補正基本量Csbが算
出される。具体的には、スリップ補正基本量Csbは、図
37のマップから要求ヨーモーメントγdに基づき読み
出される。図37のマップから明らかなようにUS側で
は、要求ヨーモーメントγdが200kgm/sを越えると、ス
リップ補正基本量Csbは負の方向に増加し、これに対
し、OS側では要求ヨーモーメントγdが-100kgm/sを越
えると、スリップ補正基本量Csbは正の方向に増加す
る。
【0147】算出部212にて得られたスリップ補正基
本量Csbは次に、判定部213に供給され、この判定部
213にてスリップ補正基本量Csbに基づき、強制増減
圧制御タイミングを決定するためのタイミングフラグF
os,Fusが設定される。具体的には、これらタイミング
フラグFos,Fusは図38(a),(b)に示すマップ
に従い、スリップ補正基本量Csbの値に基づき決定され
る。つまり、図38から明らかなように、スリップ補正
基本量Csbが10%を越えたとき、タイミングフラグF
osは0から1にセットされ、そして、スリップ補正基本
量Csbが−20%に達したときに0にリセットされる。
一方、タイミングフラグFusは、スリップ補正基本量C
sbが−10%よりも負の方向に増加したときに0から1
にセットされ、そして、スリップ補正基本量Csbが20
%に達したとき0にリセットされる。なお、全車輪に対
してABSが非作動の状態にあるとき、タイミングフラ
グFos,Fusは共に0にリセットされる。
【0148】一方、図36の判定部214には、要求ヨ
ーモーメントγd,車両の前後Gx及びハンドル角速度の
実効値θaeが供給され、これらに基づき判定部214で
は回頭制御の禁止判定、つまり、回頭制御禁止フラグF
us_inhが設定される。この設定ルーチンは、図35のス
テップS701に示されており、その詳細は図39に示さ
れている。
【0149】ここで、図39から明らかなように、先ず
ステップS710では、要求ヨーモーメントγdが正である
か否か、つまり、要求ヨーモーメントγdが回頭側であ
るか否かが判別され、その判別結果が真の場合には、ハ
ンドル角速度の実効値θaeが例えば200deg/sよりも小さ
いか否かが判別される(ステップS711)。ここでも、そ
の判別結果が真であれば、車両の前後Gxが0.5gよりも
小さいか否かが判別され、ここで、その判別結果が真で
あるとき、回頭制御禁止フラグFus_inhに1が設定され
る(ステップS713)。
【0150】ステップS710,S711,S712のうち、何れ
かの判別結果が偽の場合、回頭制御禁止フラグFus_inh
は0にリセットされる(ステップS714)。次に、図3
6の判定部215には、要求ヨーモーメントγd,ハン
ドル角ベースの旋回方向フラグFds,ヨーレイトベース
の旋回方向フラグFdy及びヨーレイトγが供給され、こ
れらに基づき、判定部215ではABS制御での車両の
カウンタステア状態を示すカウンタステアフラグFcs_a
bsを設定する。具体的には、下式に示す条件が全て満た
されたとき、カウンタステアフラグFcs_absは1に設定
される。
【0151】Fdy≠Fds且つγd>0且つ|γ|<5deg
/sのとき、Fcs_abs=1 上記以外の場合、Fcs_abs=0 図36の判定部216には、ハンドル角θ及び後輪に対
するABS開始終了フラグFabs(3),Fabs(4)が供給さ
れ、これらに基づき、判定部216では、ヨーモーメン
ト制御によるブレーキ圧の強制減圧に対し、強制減圧を
禁止するための強制減圧禁止フラグFrel_inhが設定さ
れる。ここでの設定は、図35のルーチン中、ステップ
S702にて行われ、その詳細は図40に示されている。
図40のステップS715では、先ず、一方の後輪にAB
Sが作動した後、つまり、ABS開始終了フラグFabs
(3),Fabs(4)の一方が1にセットされた後、500msec以
内であるか否かが判定される。そして、ここでの判別結
果が真であると、車両が直進状態にあるか否か、即ち、
ハンドル角θの絶対値が例えば15degよりも小さいか
否か判別され(ステップS716)、ここでも、その判別
結果が真であると、強制減圧禁止フラグFrel_inhに1
が設定される(ステップS717)。
【0152】一方、ステップS715,S716の判別結果が
偽の場合にあっては、強制減圧禁止フラグFrel_inhは
0にリセットされる(ステップS718)。更に、図36
の算出部217には、前述した増圧ゲインGapl及び減
圧ゲインGrelが供給され、ここでは強制増減圧制御タ
イミングを決定するフラグFos,Fusに関連して、その
強制増減圧時、入口及び出口バルブ12、13のバルブ
駆動時間が下式に基づき算出される。
【0153】前輪増圧時のバルブ駆動時間Tapl_f Tapl_f=Tga_f×1000/Gapl+Tv_apl 後輪増圧時のバルブ駆動時間Tapl_r Tapl_r=Tga_r×1000/Gapl+Tv_apl 前輪減圧時のバルブ駆動時間Trel_f Trel_f=Tgr_f×1000/Grel+Tv_rel 後輪減圧時のバルブ駆動時間Trel_r Trel_r=Tgr_r×1000/Grel+Tv_rel ここで、Tga_f=25kg/cm2,Tga_r=25kg/cm2,Tgr_f
=Tgr_f=15kg/cm2に設定されており、また、Tv_apl
は増圧時、バルブソレノイドの遅れ時間、Tv_relは減
圧時、バルブソレノイドの遅れ時間をそれぞれ示してい
る。
【0154】図36のスリップ補正量算出部218に
は、前述の算出部212にて算出されたスリップ基本補
正量Csbに加えて、回頭制御禁止フラグFus_inh,カウ
ンタステアフラグFcs_absが供給されているとともに、
更に後述するセレクトローフラグFs_lもまた供給され
ている。ここで、セレクトローフラグFs_lは、後輪の
セレクトロー制御を行う際、その選択すべき後輪を決定
するためのフラグである。
【0155】算出部218では、車両の旋回方向でみて
外側の前輪、内側の後輪及び外側の後輪のスリップ率補
正量は以下のように設定される。 スリップ基本補正量Csb>0(OS時)の場合、 外側前輪のスリップ率補正量Csf_out=−Csb 内側後輪のスリップ率補正量Csr_in=Csb/2 外側後輪のスリップ率補正量Csr_out=Csb/2 スリップ基本補正量Csb<0(US時)の場合、 外側前輪のスリップ率補正量Csf_out=−Csb/2 内側後輪のスリップ率補正量Csr_in=Csb 外側後輪のスリップ率補正量Csr_out=0 例外処理として、回頭制御禁止フラグFus_inh=1且つ
スリップ基本補正量Csb<0の場合には、 外側前輪のスリップ率補正量Csf_out=0 に設定され、そして、カウンタフラグFcs_abs=1又は
セレクトローフラグFs_l=1の場合、 外側前輪のスリップ率補正量Csf_out=0 外側後輪のスリップ率補正量Csr_out=0 に設定される。
【0156】上述したようにしてスリップ率補正量が計
算されると、そのスリップ率補正量は、次の設定部21
9に供給され、この設定部219にて、スリップ率補正
量と旋回方向フラグFdとに基づき、スリップ率補正量
割当Ys(i)が以下のようにしてそれぞれ設定される。 Fd=1の場合、 Ys(1)=Csf_out, Ys(2)=0,Ys(3)=Csr_out,Y
s(4)=Csr_in Fd=0の場合、 Ys(1)=0, Ys(2)=Csf_out,Ys(3)=Csr_in,Ys
(4)=Csr_out 設定部219にて算出されたスリップ率補正量割当Ys
(i)は、図33を参照すれば明らかなように前述したス
リップ率算出部201に供給され、ここではそのスリッ
プ率補正量割当Ys(i)がスリップ率Sx(i)に加えられ
る。それ故、スリップ率の算出式は下式のように変更さ
れることになる。
【0157】Sx(i)=(Vb−Vw(i)−HFV)/Vb×
100−HSR+Ys(i) なお、上式において、HFVは、前述したスリップ量補
正に係わる補正値、HSRはスリップ率補正に係わる補
正値を示している。上述のスリップ補正は、図35のル
ーチン中、ステップS703にて実施され、その基本部分
のみが図41に示されている。図41のフローチャート
において、先ず、そのステップS719ではスリップ率補
正量割当Ys(i)が算出され、そして、車輪の制御モード
が増圧モードであるか否かが判別される(ステップS72
0)。ここでの判別結果が真の場合、増圧モードにある
車輪のスリップ率Sx(i)はスリップ率補正割当Ys(i)に
基づき増加補正される(ステップS721)。
【0158】これに対し、ステップS720の判別結果が
偽であると、車輪の制御モードが減圧モードであるか否
かが判別され(ステップS722)、ここでの判別結果が
真の場合には次に回頭制御禁止フラグFus_inhが1にセ
ットされているか否かが判別される(ステップS72
3)。ここでの判別結果が偽の場合、減圧モードにある
車輪のスリップ率Sx(i)はスリップ率補正割当Ys(i)に
基づき減少補正される(ステップS724)。
【0159】しかしながら、ステップS723の判別結果
が真の場合、ステップS724はバイパスされ、減圧モー
ドの車輪のスリップ率Sx(i)に減少補正が加えられるこ
とはない。この点に関して詳述すると、旋回時、車両が
US傾向にあり、前述のヨーモーメント制御により外側
前輪のブレーキ圧が減圧モードで制御されると、その前
輪の制動力を低下させてしまう。ここで、ABSが作動
し且つ回頭制御禁止フラグFus_inhに1がセットされて
いるような状況、つまり、ドライバによる緊急回避の意
図がなく、ハンドル角速度の実効値θaeがステアリング
ハンドルを保舵状態を示す程度に小さい状況にあって
は、前述したように外側前輪におけるスリップ率Sx(i)
の減少補正を禁止することで、外側前輪の制動力低下を
阻止し、これにより、車両の減速度を十分に確保できる
ことになる。
【0160】一方、ステップS724の実行に伴い、減圧
モードの車輪の前述したスリップ率補正量の算出にあた
り、スリップ補正基本量Csbが0よりも大きく、車両が
OS傾向にある場合にあっては、その旋回方向でみて、
外側後輪のスリップ率補正量Csr_outにCsb/2が設定
されていることから、その外側後輪のスリップ率Sx(i)
は増加補正される。このことは、図23を参照すれば明
らかなように前述したヨーモーメント制御では、旋回方
向でみて外側前輪と内側後輪のみが制御対象車輪として
選択されているが、ABSが作動した状況にあっては、
その制御対象車輪に加えて外側後輪もまた選択されるこ
とを意味し、この場合、外側後輪はそのスリップ率が増
加補正される結果、減圧モードで制御されることにな
る。
【0161】つまり、ABSの作動時にあっては、図4
2のフローチャートに示されているように制御対象車輪
が付加されることになる。図42のフローチャートで
は、先ず、ABSが作動中であるか否かが判別され(ス
テップS725)、ここでの判別結果が真の場合には、旋
回中、車両が復元モーメントを要求しているか否か、つ
まり、制御実行フラグFcos=1又はFcus=1であるか
否かが判別され(ステップS726)、ここでも、その判
別結果が真の場合に旋回方向でみて外側後輪の制御モー
ドが減圧モードに設定されることになる(ステップS72
7)。
【0162】再度、図36を参照すると、演算部211
は、強制増減量の算出部220を備えており、この算出
部220には前述したタイミングフラグFus,Fos,回
頭制御禁止フラグFus_inh,カウンタステアフラグFcs
_abs,強制減圧禁止フラグFrel_inh,強制増減圧時の
バルブ駆動時間Tapl_f,Tapl_r,Trel_f,Trel_r及
びセレクトローフラグFs_lが供給され、これらに基づ
き、旋回方向でみて外側前輪、外側後輪及び内側後輪に
対してオーバライドする増減圧パルス幅及びその駆動モ
ードが設定される。
【0163】具体的には、タイミングフラグFosが0か
ら1に切り替わった場合(OS制御の場合)、外側前輪
の駆動モードMf_out及び増圧パルス幅Wf_outは、 Mf_out=増圧モード,パルス幅Wf_out=Tapl_f となり、内側後輪の駆動モードMr_in及び増圧パルス幅
Wr_inは、 Mr_in=減圧モード,パルス幅Wr_in=Trel_r, そして、外側後輪の駆動モードMr_out及び増圧パルス
幅Wr_outは、 Mr_out=減圧モード,パルス幅Wr_out=Trel_r となる。
【0164】一方、タイミングフラグFusが0から1に
切り替わった場合(US制御の場合)、外側前輪の駆動
モードMf_out及び増減圧パルス幅Wf_outは、 Mf_out=減圧モード,Wf_out=Trel_f となり、内側後輪の駆動モードMr_in及び増減圧パルス
幅Wr_inは、 Mr_in=増圧モード,Wr_in=Tapl_r、 そして、外側後輪の駆動モードMr_out及び増減圧パル
ス幅Wr_outは、 Mr_out=非制御モード,Wr_out=0 となる。
【0165】上記以外の場合、駆動モードMf_out,Mr
_in,Mr_outは全て非制御モードに設定され、それらの
増減圧パルス幅Wf_out,Wr_in,Wr_outは全て0に設
定される。しかしながら、例外処理として、カウンタス
テアフラグFcs_absが0又はセレクトローフラグFs_l
が0のときには、内側及び外側後輪の増減圧パルス幅W
r_in,Wr_outは共に0、回頭制御禁止フラグFus_inh
が1で且つスリップ基本補正量Csd<0のときには、外
側前輪の増減圧パルス幅Wf_outは0に設定され、更
に、強制増減圧フラグFrel_inhが1のとき、各車輪へ
の減圧モードの設定は禁止される。
【0166】上述した駆動モード及び増減圧パルス幅の
オーバライド、また、その例外処理は、図35のルーチ
ンではステップS704,S705にて実施され、その基本部
分のみが図43及び図44に示されている。図43のス
テップS728では、スリップ補正基本量Csbが10%を越
えた否か否かが判別され、ここでの判別結果が真の場合
には、スリップ補正基本量Csbの前回値Csbmが10%
か否かが判別される(ステップS729)。ここでの判
別結果もまた真となる場合には、タイミングフラグFos
が0から1に切り替わった瞬間を示しているから、次の
ステップS730にて、駆動モード及び増減圧パルス幅は
前述したように設定される。
【0167】一方、スリップ補正基本量Csbが−10%よ
りも小さくなって、ステップS731の判別結果が真とな
り、そして、スリップ補正基本量Csbの前回値Csbmが-
10%以上のとき、次のステップS732での判別結果もま
た真となると、この場合にはタイミングフラグFusが0
から1に切り替わった瞬間を示しているから、次のステ
ップS733にて、駆動モード及び増減圧パルス幅は前述
したように設定される。
【0168】一方、図44のステップS734では、回頭
制御禁止フラグFus_inhが1且つスリップ基本補正量C
sbが0よりも小さいか否かが判別され、その判別結果が
真の場合、車両の旋回方向でみて外側前輪の減圧が禁止
される(ステップS735)。また、ステップS736では強
制減圧禁止フラグFrel_inhが1であるか否かが判別さ
れ、その判別結果が真の場合、全車輪の減圧が禁止され
る(ステップS737)。
【0169】上述したように算出部220にて、駆動モ
ード及び増減圧パルス幅が設定されると、これらは次
に、図36から明らかなように設定部221に供給され
るが、この設定部211には更に旋回方向フラグFd及
びABS開始終了フラグFabs(i)もまた供給されてお
り、これらに基づき、設定部211では、ABS作動中
における各車輪の駆動モードMabs(i)及び増減圧パルス
幅、つまりパルス幅Wabs0(i)が以下のように設定され
る。
【0170】Fd=1の場合、 Mabs0(1)=Mf_out, Wabs0(1)=Wf_out Mabs0(2)=非制御モード, Wabs0(2)=0 Mabs0(3)=Mr_out, Wabs0(3)=Wr_out Mabs0(4)=Mr_in, Wabs0(4)=Wr_in Fd=0の場合、 Mabs0(1)=非制御モード, Wabs0(1)=0 Mabs0(2)=Mf_out, Wabs0(2)=Wf_out Mabs0(3)=Mr_in, Wabs0(3)=Wr_in Mabs0(4)=Mr_out, Wabs0(4)=Wr_out 設定部211にて設定された駆動モードMabs0(i)及び
パルス幅Wabs0(i)は、再度図33を参照すれば明らか
なように駆動信号のオーバライド部222に供給される
が、このオーバライド部222について説明する前に、
前述したABS作動の開始・終了を判定する判定回路2
09、また、セレクトロー処理部223に関して説明す
る。
【0171】図45にその詳細が示されているように判
定回路209は、AND回路224を備えており、この
AND回路224の一方の入力には、前述した計算部2
3(図33参照)にて算出された基本増減圧DP(i)
が負の所定値よりも小さい状態が2回連続したときに開
始フラグFstart(i)=1(オン信号)が供給され、ま
た、他方の入力には車体速Vbが例えば5km/h以上であ
るときにオン信号が供給される。AND回路224の出
力は、フリップフロップ225のセット端子及びフリッ
プフロップ226のリセット端子にそれぞれ供給され
る。
【0172】また、判定回路209はOR回路227を
備えており、このOR回路227の一方の入力には、車
体速Vbが例えば3km/h以下のときにオン信号が供給さ
れ、その他方の入力には前記基本増減圧DP(i)が正の
値に維持されている状態が終了判定時間継続していると
きに終了処理中フラグFe_ing(i)=1(オン信号)が供
給され、そして、そのOR回路227の出力はフリップ
フロップ226のセット端子に供給される。
【0173】ここで、基本増減圧DP(i)が正の値とな
る状態が終了判定時間継続している状況とは、ABS作
動後の終了処理として、その車輪のブレーキ圧を緩やか
に増圧させる、いわゆる緩増圧処理の実施中にあること
を意味している。一方、フリップフロップ225のリセ
ット端子は、別のOR回路228の出力に接続されてお
り、そのOR回路228の一方の入力には、ブレーキス
イッチSWbがオンからオフに切り替わったときにオン
信号が供給される。なお、ブレーキスイッチSWbは図
1及び図2に示されていない。また、OR回路228の
他方の入力には、後述する作動終了時の緩増圧実施判定
部229からの出力が供給される。
【0174】フリップフロップ225の出力端子から
は、前述したABS開始終了フラグFabs(i)が出力さ
れ、このABS開始終了フラグFabs(i)は、AND回路
230の一方の入力にも供給されている。そして、この
AND回路230の他方の入力にはフリップフロップ2
26の出力が入力されている。上述の判定回路209に
おいて、AND回路224の入力が共にオンの状態とな
ってABS開始条件が満たされると、対応した車輪の開
始フラグFstart(i)に1がセットされ、そして、これら
開始フラグFstart(i)はフリップフロップ225のセッ
ト端子に供給される。従って、フリップフロップ225
からは、開始フラグFstart(i)=1に対応した車輪のA
BS開始終了フラグFabs(i)がその値を1にセットして
出力される。このABS開始終了フラグFabs(i)は、A
ND回路230にも供給される。
【0175】ここで、終了中フラグFe#ing(i)に関し、
その終了判定時間は、ABSが作動した車輪数によって
切り換えられ、例えばABS作動車輪数が3輪以上の場
合には1.5sec、2輪以下の場合には200msecに設定され
ている。なお、ABS車輪数Nabsは、ABS開始終了
フラグFabs(i)中、その値が1にセットされたフラグの
数から求めることができる。
【0176】AND回路224から出力された開始フラ
グFstart(i)=1は、フリップフロップ226のリセッ
ト端子にも供給されており、この場合、フリップフロッ
プ226は、開始フラグFstart(i)=1に対応した反転
フラグF#abs(i)の値を0にし、この反転フラグF#abs
(i)をAND回路230に供給する。この場合、AND
回路230からの出力は0となる
【0177】この状態で、ドライバがブレーキペダルの
踏み込みを解除し、ブレーキスイッチSWbがオンから
オフに切り換えられると、OR回路からのリセット信号
がフリップフロップ225のリセット端子に供給され、
この時点で、フリップフロップ225から出力されるA
BS開始終了フラグFabs(i)は全て、その値が0にリセ
ットされる。この場合にも、AND回路230からの出
力はない。
【0178】一方、ABS開始終了フラグFabs(i)が
にセットされている状態で、OR回路227の入力の1
つであるVb≦3km/hの条件が満たされるか、又は、終
了中フラグFe#ing(i)が1にセットされていると、O
回路227から1が出力され、そして、その出力はフリ
ップフロップ226のセット端子に供給される。
【0179】フリップフロップ226が終了中フラグF
e#ing(i)=1を受け取ると、フリップフロップ226
は、対応する反転フラグF#abs(i)の値を1にセット
し、その反転フラグF#abs(i)をAND回路230に供
給する。ここで、AND回路230の入力である開始フ
ラグFstart(i)及び反転フラグF#abs(i)に関し、その
値が共に1となるため、AND回路230の出力、即
ち、終了指示フラグF#fin(i)は1となる
【0180】ここで、終了指示フラグF#fin(i)は前述
した緩増圧実施判定部229に供給され、この判定部2
29では車輪数Nabsが2以下のとき、オン信号を示す
緩増圧終了信号をOR回路228に供給する。従って、
この場合、OR回路228はリセット信号をフリップフ
ロップ225のリセット端子に供給し、この時点で、フ
リップフロップ225から出力されるABS開始終了フ
ラグFabs(i)は0にリセットされる。しかしながら、車
輪数Nabsが3以上である場合、判定部229から緩増
圧終了信号の出力はなく、それ故、フリップフロップ2
25のリセット端子には、ブレーキスイッチSWbがオ
ンからオフに切り替わった時点で、そのOR回路228
からリセット信号が出力されることになる。
【0181】即ち、Nabs≦2の条件を満たした状態
で、ABS作動が終了されるとき、前述した緩増圧処理
は実施されない。次に、図46には前述したセレクトロ
ー処理部223の詳細が示されており、この処理部22
3は、フラグの値により切り換え作動される3つのスイ
ッチ231,232,234を備えており、スイッチ2
31,233の一方の入力端子にはABS作動時におけ
る左後輪の駆動モードMabs1(3)及びパルス幅Wabs1(3)
がそれぞれ供給され、スイッチ231の他方の入力端子
及びスイッチ232の一方の端子には右後輪の駆動モー
ドMabs1(4)及びそのパルス幅Wabs1(4)がそれぞれ供給
される。そして、スイッチ231の出力端子は、スイッ
チ212,233の他方の入力端子にそれぞれ接続され
ている。
【0182】ここで、駆動モードMabs1(3),パルス幅
Wabs1(3),駆動モードMabs1(4)及びパルス幅Wabs1
(4)は、前述したABS制御の基本構成部分にて設定及
び算出されたものであり、また、左右前輪の駆動モード
及びパルス幅、即ち、Mabs1(1),Wabs1(1),Mabs1
(2)及びWabs1(2)は、図46から明らかなように処理部
223をそのまま通過する。
【0183】一方、処理部223にはローサイドの決定
部234が備えられており、この決定部234には、左
後輪の駆動モードMabs1(3)及びパルス幅Wabs1(3)並び
に右後輪の駆動モードMabs1(4)及びパルス幅Wabs1(4)
に加え、ABS開始終了フラグFabs(i)もまた供給され
ている。決定部234では、ABSの作動中に後輪のセ
レクトロー制御を行う際、そのローサイドの後輪が決定
される。ここで、基本的には、図47のタイミングチャ
ートに示されているように左右の後輪のうち、そのブレ
ーキ圧の減圧駆動指示が出力された側の後輪をローサイ
ドの後輪として決定し、例えば、左後輪がローサイドで
ある場合、決定部234はローサイドフラグFlsを0に
リセットしてスイッチ231に供給し、これに対し、右
後輪がローサイドである場合、決定部234はローサイ
ドフラグFlsを1にセットしてスイッチ231に供給す
る。
【0184】なお、左右の後輪に関し、その減圧駆動指
示が出力されたか否かに関しては、左右の後輪の駆動モ
ードMabs1(3),Mabs1(4)に加え、それらのパルス幅W
abs1(3),Wabs1(4)に基づいて検出することができる。
なお、左右後輪にて同時に減圧駆動指示が出力された場
合にあっては、そのパルス幅の長い方の後輪がローサイ
ドであると決定される。
【0185】スイッチ213は、ローサイドフラグFls
の値に従って切り換え作動され、Fls=0(左後輪がロ
ーサイド)の供給を受けたとき、その出力端子からスイ
ッチ232,233の他方の入力端子に左後輪の駆動モ
ードMabs1(3)及びパルス幅Wabs1(3)をそれぞれ供給す
る。これに対し、スイッチ213は、Fls=1(右後輪
がローサイド)の供給を受けたとき、その出力端子から
スイッチ232,233の他方の入力端子に右後輪の駆
動モードMabs1(4)及びパルス幅Wabs1(4)をそれぞれ供
給する。
【0186】また、処理部223には推定横加速度の算
出部235が備えられており、この算出部235では、
目標ヨーレイトγtと車体速Vbとから下式に基づき、推
定横加速度Gyeが算出される。 Gye=γt×Vb 更に、処理部223はセレクトローの切り換え判定部2
36を備えており、この判定部236には前記推定横加
速度Gye,ヨーレイトγ,横Gy,左右後輪に対するA
BS開始終了フラグFabs(3),Fabs(4)が供給され、こ
れらに基づき、前述したセレクトローフラグFs_lが設
定される。
【0187】ここで、セレクトローフラグFs_lの設定
ルーチンは、図35のルーチン中、ステップS706にて
実行され、その詳細は図48に示されている。図48の
フローチャートにおいて、先ず、セレクトローフラグF
s_lは0にリセットされ(ステップS738)、そして、前
述した推定横加速度Gyeの絶対値が例えば0.2gよりも小
さいか否かが判別される(ステップS739)。ここでの
判別結果が真であると、車両は直進状態にあると推測さ
れ、次に、一方の後輪にABSが作動してから、例えば
500msec以内であるか否かが判別される(ステップS74
0)。このステップS740の判別に関し、具体的には、左
右の後輪に関してのABS開始終了フラグFabs(3),F
abs(4)のうちの一方が1にセットされた後、500msecが
経過したか否かで判別される。
【0188】ステップS740の判別結果が真であると、
つまり、車両が直進状態にあり且つABSの作動直後に
あると、セレクトローフラグFs_lに1がセットされ
(ステップS741)る。しかしながら、ステップS740の
判別結果が偽であっても、次に、ヨーレイトγの絶対値
が例えば5deg/secよりも大きいか否かが判別されて
(ステップS742)、ここでの判別結果が真になると、
つまり、車体の挙動が不安定である場合には、セレクト
ローフラグFs_lに1がセットされる(ステップS74
1)。
【0189】なお、ステップS379,S742の何れかの判
別結果が偽となる場合、セレクトローフラグFs_lは0
に維持される。また、車体速Vbが高、横Gyが小、前後
Gxが大の状況にあっても、セレクトローフラグFs_lは
1にセットされる。図46から明らかなようにセレクト
ローの切り換え判定部236にて設定されたセレクトロ
ーフラグFs_lは、スイッチ232,233にそれぞれ
供給される。ここで、これらスイッチ232,233に
セレクトローフラグFs_l=1が供給されると、スイッ
チ232,233は、その出力端子が前記他方の入力端
子に接続されることから、これらスイッチ232,23
4の出力端子からは、前述したローサイドフラグFlsの
値に従い、ローサイド側の後輪の駆動モード及びパルス
幅がそれぞれ出力される。
【0190】しかしながら、スイッチ232,233に
セレクトローフラグFs_l=0が供給されると、スイッ
チ232,233は、その出力端子が前記一方の入力端
子に接続されることから、これらスイッチ232,23
4の出力端子からは、左後輪の駆動モードMabs1(3)及
びパルス幅Wabs1(3)、また、右後輪の駆動モードMabs
1(4)及びパルス幅Wabs1(4)がそれぞれ出力される。従
って、この場合、左右後輪のブレーキ圧は独立して制御
されることになる。
【0191】セレクトローの処理部223からの出力、
即ち、駆動モードMabs1(i)及びパルス幅Wabs(i)は、
前述した駆動信号のオーバライド部222に供給され、
そして、このオーバライド部222には前述したように
設定部211からの駆動モードMabs0(i)及びパルス幅
Wabs0(i)もまた供給されている。オーバライド部22
2では、前述したタイミングフラグFus、Fos及びブレ
ーキスイッチSWbに基づき、供給された駆動モード及
びパルス幅の一方が選択され、そして、駆動モードMab
s(i),パルス幅Wabs(i)として出力される。
【0192】具体的には、タイミングフラグFus、Fos
の一方が0から1に切り替わり、且つ、ブレーキスイッ
チSWbがオンの場合(ブレーキペダルの踏み込み状
態)、駆動モードMabs(i),パルス幅Wabs(i)には、駆
動モードMabs0(i),パルス幅Wabs0(i)が選択される。
即ち、 Mabs(i)=Mabs0(i) Wabs(i)=Wabs0(i) 一方、上記の条件以外の場合には、駆動モードMabs
(i),パルス幅Wabs(i)には、駆動モードMabs1(i),パ
ルス幅Wabs1(i)が選択される。
【0193】即ち、 Mabs(i)=Mabs1(i) Wabs(i)=Wabs1(i) :制御信号選択:再度、図3を参照すれば明らかなよう
に、ABS協調制御からの駆動モードMabs(i)及びパル
ス幅Wabs(i)や、ヨーモーメント制御からの駆動モード
My(i)及びパルス幅Wy(i)は、制御信号の選択回路14
0に供給される。この選択回路140では、図4のメイ
ンルーチン中、ステップS8が実施され、また、図49
にはその詳細が示されている。
【0194】選択回路140は、5つのスイッチ142
〜146を備えている。スイッチ142の一方の入力端
子には、ヨーモーメント制御にて設定された駆動モード
My(i)が供給され、その他方の入力端子には前後制動力
配分制御にて設定された駆動モードMdb(i)が供給され
る。ここで、前後制動力配分制御に関しては説明してい
ないが、その制御概要は、前輪に対する後輪の相対的な
スリップ量と、後輪の車輪速Vw(3),Vw(4)とから、後
輪のスリップの過大状況を判定し、そのスリップが過大
となったとき、後輪の駆動モードMdb(3),Mdb(4)を保
持モードに設定するものである。なお、前輪の駆動モー
ドMdb(1),Mdb(2)は非制御モードに維持されている。
【0195】スイッチ143の一方の入力端子には、A
BS協調制御にて設定された駆動モードMabs(i)が供給
され、その他方の入力端子はスイッチ142の出力端子
に接続されている。従って、スイッチ143の他方の入
力端子には、スイッチ142の切り換え状態に応じ、駆
動モードMy(i),Mdb(i)の一方が供給される。スイッ
チ144の一方の入力端子には、ABS協調制御にて設
定されたパルス幅Wabs(i)が供給され、その他方の入力
端子にはヨーモーメント制御にて設定されたパルス幅W
y(i)が供給される。
【0196】また、スイッチ145の一方の入力端子に
は、他方の入力端子に供給されるフラグを強制的にセッ
トする1が供給され、他方の入力端子にはヨーモーメン
ト制御にて設定されたカット駆動フラグFvd1,Fvd2が
供給される。更に、スイッチ146の一方の入力端子に
は、ABS制御時のモータ駆動フラグFm_abs(図33
の判定回路210参照)が供給され、その他方の入力端
子には、モータ駆動フラグFm_abs及びヨーモーメント
制御にて設定されたモータ駆動フラグFmtrがOR回路
147を介して供給される。
【0197】上述のスイッチ142は、判定部141か
ら出力されるフラグにより切り換え作動され、また、ス
イッチ143〜146は判定回路148から出力される
フラグの結果を受けて切り換えられる。より詳細には、
判定部141は、ヨーモーメント制御に関する駆動モー
ドMy(i)が非制御モードではないとき、切り換えフラグ
Fy_dを1にセットしてスイッチ142に供給する。切
り換えフラグFy_d=1を受け取ると、スイッチ142
はその一方の入力端子と出力端子とが接続され、スイッ
チ142からは駆動モードMy(i)が出力されることにな
る。
【0198】一方、判定回路148はOR回路149を
備え、このOR回路149の一方の入力端子は判定部1
51に接続されている。この判定部151は、車輪が3
輪以上ABS制御中にあるとき、そのABS作動中にあ
る車輪に対応した切り換えフラグFabs_on(i)の値を1
にセットして、OR回路149の一方の入力端子に供給
する。また、切り換えフラグFabs_on(i)はスイッチ1
45,146にもそれぞれ供給されている。
【0199】OR回路149の他方の入力端子は判定部
152に接続されており、この判定部152は、ヨーモ
ーメント制御での駆動モードMy(i)が減圧モードではな
いとき、その車輪に対応した切り換えフラグFy_nd(i)
の値を1にセットして、OR回路149の他方の入力端
子に供給する。従って、判定部151,152にて、切
り換えフラグFabs_on(i)又はFy_nd(i)が1にセットさ
れると、OR回路149は、対応した車輪の切り換えフ
ラグFabs_y(i)の値を1にセットして出力する。
【0200】OR回路149の出力端子は、AND回路
150の一方の入力端子に接続されており、その他方の
出力端子は判定部153に接続されている。この判定部
153では、ABS協調制御での駆動モードMabs(i)が
非制御モードにはないとき、その車輪に対応した切り換
えフラグFabs_e(i)の値を1にセットしてAND回路1
50の他方の入力端子に供給する。
【0201】AND回路150では、その入力である切
り換えフラグFabs#y(i),Fabs#e(i)のうちで、その値
が共に1である車輪に対応した切り換えフラグFa#y(i)
を1にセット、そして、その切り換えフラグFa#y(i)
=1がスイッチ143,144に供給される。上述した
判定回路148にあっては、3輪以上の車輪がABS制
御中にあると、判定部151からスイッチ145,14
6に切り換えフラグFabs#on=1が直ちに供給されるの
で、スイッチ145はその一方の入力端子と出力端子と
が接続され、これにより、スイッチ145の出力端子か
らは、それらの値を共に1にセットしたカット駆動フラ
グFvd1,Fvd2、つまり、Fv1=Fv2=1が出力される
ことになる。
【0202】また、スイッチ146に関しても、その一
方の入力端子と出力端子とが接続されるので、スイッチ
146の出力端子からはモータ駆動フラグFmabsがFm
として出力される。逆に、スイッチ145,146に切
り換えフラグFabs_on(i)=0が供給されると、スイッ
チ145はカット駆動フラグFvd1,Fvd2をそれぞれF
v1,Fv2として出力し、スイッチ146はモータ駆動フ
ラグFmtr又はFmabsをFmとして出力する。
【0203】一方、AND回路150の入力条件が満た
されると、その出力端子からスイッチ143,144に
切り換えフラグFa_y(i)=1が供給される。この場合、
スイッチ143は、切り換えフラグFa_y(i)=1に対応
した駆動モードMabs(i)、また、切り換えフラグFa_y
(i)=0に対応した駆動モードMy(i)又はMdb(i)を駆動
モードMM(i)として出力し、スイッチ144は、切り
換えフラグFa_y(i)=1に対応したパルス幅Wabs(i)、
また、切り換えフラグFa_y(i)=0に対応したパルス幅
Wy(i)をパルス幅WW(i)として出力する。
【0204】上述の説明から既に明らかなように、スイ
ッチ143,144からの出力は、ABSの作動状態及
びヨーモーメント制御による制御状態に応じて選択され
ることになり、その選択ルーチンは図4のメインルーチ
ン中、ステップS8にて実行され、その基本部分、即
ち、判定回路148の基本機能部分が図50にフローチ
ャートに示されている。
【0205】図50から明らかなように、先ず、ヨーモ
ーメント制御での駆動モードMy(i)が非制御であるか否
かが判別され(ステップS801)、ここでの判別結果が
真の場合、つまり、ヨーモーメント制御が実施される状
況にあると、次に、3輪以上の車輪がABS作動中又は
駆動モードMy(i)が減圧モードになく、且つ、ABS協
調制御での駆動モードMabs(i)が非制御モードにないか
否かが判別される(ステップS802)。ここでの判別結
果が真になると、駆動モードMM(i)及びパルス幅WW
(i)には、ABS協調制御の駆動モードMabs(i)及びパ
ルス幅Wabs(i)がそれぞれ設定される(ステップS80
3)。
【0206】一方、ステップS802の判別結果が偽であ
ると、駆動モードMM(i)及びパルス幅WW(i)には、ヨ
ーモーメント制御の駆動モードMy(i)及びパルス幅Wy
(i)がそれぞれ設定される(ステップS804)。 :駆動信号初期設定:制御信号選択回路140から駆動
モードMM(i)及びパルス幅WW(i)が出力されると、こ
れらは図3に示されているように駆動信号初期設定部1
54に供給され、この駆動信号初期設定部154では図
4のメインルーチンのステップS9が実行され、ここ
で、駆動モードMM(i)及びパルス幅WW(i)から実駆動
モードMexe(i)及び実パルス幅Wexe(i)が設定され、そ
して、実パルス幅Wexe(i)に初期値が与えられる。
【0207】ステップS9は図51に詳細に示されてお
り、ここでは、先ず、割込禁止処理が実行された後(ス
テップS901)、駆動モードMM(i)が判別される(ステ
ップS902)。ステップS902の判別結果が非制御モード
である場合、実駆動モードMexe(i)に増圧モードが設定
されるとともに実パルス幅Wexe(i)にメインルーチンの
制御周期T(=8msec)が設定され(ステップS903)、
そして、割込許可処理が実行された後(ステップS90
4)、ここでのルーチンは終了する。
【0208】ステップS902の判別結果が増圧モードで
ある場合には、実駆動モードMexe(i)が増圧モードであ
るか否かが判別される(ステップS905)。しかしなが
ら、この時点では未だ実駆動モードMexe(i)は設定され
ていないので、その結果は偽となり、この場合、実駆動
モードMexe(i)に駆動モードMM(i)、即ち、増圧モー
ドが設定されるとともに実パルス幅Wexe(i)にパルス幅
WW(i)が設定された後(ステップS906)、このルーチ
ンはステップS904を経て終了する。
【0209】次回のルーチンが実行されたとき、ステッ
プS902の判別結果が増圧モードに維持されていると、
この場合、ステップS905の判別結果は真となり、次
に、パルス幅WW(i)が実パルス幅Wexe(i)よりも大き
いか否かが判別される(ステップS907)。ここで、メ
インルーチンが制御周期T毎に実行されることから明ら
かなようにパルス幅WW(i)は制御周期T毎に新たに設
定されるものの、実パルス幅Wexe(i)は後述するように
入口又は出口バルブ12,13が実際に駆動されると、
その駆動に伴い減少するものであるので、ステップS90
7での判別結果により、現時点にて、新たに設定された
パルス幅WW(i)が残りの実パルス幅Wexe(i)よりも長
ければ、その実パルス幅Wexe(i)に新たなパルス幅WW
(i)を設定する(ステップS908)。しかしながら、ステ
ップS907の判別結果が偽となる場合には、その実パル
ス幅Wexe(i)に新たなパルスWW(i)を設定し直すこと
なく、残りの実パルス幅Wexe(i)が維持される。
【0210】一方、ステップS902の判別結果が減圧モ
ードである場合には、ステップS909からS912のステッ
プが実施され、前述した増圧モードでの場合と同様にし
て、実駆動モードMexe(i)及び実パルス幅Wexe(i)が設
定される。更に、ステップS902の判別結果が減圧モー
ドである場合には、実駆動モードMexe(i)に保持モード
が設定される(ステップS913)。
【0211】:駆動信号出力:前述したようにして実駆
動モードMexe(i)及び実パルス幅W(i)が設定される
と、これらは図3から明らかなように駆動信号初期設定
部154からバルブ駆動部155に出力され、このバル
ブ駆動部155では、図4のメインルーチン中のステッ
プS10が実施される。
【0212】また、バルブ駆動部155(ステップS1
0)では、実駆動モードMexe(i)及び実パルス幅W(i)に
加え、前述の制御信号選択ルーチンにて設定されたカッ
ト駆動フラグFv1,Fv2やモータ駆動フラグFmに基づ
き、カットオフバルブ19,20及びモータ18を駆動
するための駆動信号もまた出力される。ここで、カット
駆動フラグFv1がFv1=1の場合にあっては、カットオ
フバルブ19を閉弁する駆動信号が出力され、カット駆
動フラグFv2がFv2=1の場合には、カットオフバルブ
20を閉弁する駆動信号が出力される。これに対し、カ
ット駆動フラグFv1,Fv2が0にリセットされている
と、カットオフバルブ19、20は開弁状態に維持され
る。一方、モータ駆動フラグFmがFm=1の場合にはモ
ータ18を駆動する駆動信号が出力され、Fm=0の場
合、モータ18は駆動されない。
【0213】:入口及び出口バルブの駆動:前述したバ
ルブ駆動部155に実駆動モードMexe(i)及び実パルス
幅W(i)が供給されると、このバルブ駆動部155は、
図52に示す駆動ルーチンに従って入口及び出口バルブ
12,13を駆動する。ここで、図52の駆動ルーチン
は、図4のメインルーチンとは独立して実行され、その
実行周期は1msecである。
【0214】駆動ルーチンにおいては、先ず、実駆動モ
ードMexe(i)が判別され(ステップS1001)、ここでの
判別にて、実駆動モードMexe(i)が増圧モードの場合に
あっては、その実パルス幅Wexe(i)が0よりも大きか否
かが判別される(ステップS1002)。ここでの判別結果
が真であると、車輪に対応した入口及び出口バルブ1
2,13に関し、入口バルブは開弁されるのに対して出
口バルブ13は閉弁され、そして、実パルス幅Wexe(i)
はその実行周期だけ減少される(ステップS1003)。こ
こで、ステップS1003が実施されるとき、モータ18が
既に駆動され、そして、対応するカットオフバルブ19
又は20が閉弁されていれば、その車輪に対応したホイ
ールブレーキは増圧されることになる。
【0215】実駆動モードMexe(i)が増圧モードに維持
されている状態で、駆動ルーチンが繰り返して実行さ
れ、そして、ステップS1002の判別結果が偽になると、
この時点で、その車輪に対応した入口及び出口バルブ1
2,13に関し、これら入口及び出口バルブは共に閉弁
され、そして、実駆動モードMexe(i)は保持モードに設
定される(ステップS1004)。
【0216】ステップS1001の判別にて、実駆動モード
Mexe(i)が減圧モードである場合にあっては、ここで
も、その実パルス幅Wexe(i)が0よりも大きか否かが判
別される(ステップS1005)。ここでの判別結果が真で
あると、車輪に対応した入口及び出口バルブ12,13
に関し、入口バルブは閉弁されるのに対して出口バルブ
13は開弁され、そして、実パルス幅Wexe(i)はその実
行周期だけ減少される(ステップS1006)。従って、ス
テップS1006の実施により、その車輪に対応したホイー
ルブレーキは減圧されることになる。
【0217】この場合にも、実駆動モードMexe(i)が減
圧モードに維持されている状態で、駆動ルーチンが繰り
返して実行され、そして、ステップS1005の判別結果が
偽になると、この時点で、その車輪に対応した入口及び
出口バルブ12,13に関し、これら入口及び出口バル
ブは共に閉弁され、そして、実駆動モードMexe(i)は保
持モードに設定される(ステップS1007)。
【0218】ステップS1001の判別にて、実駆動モード
Mexe(i)が保持モードである場合にあっては、その車輪
に対応した入口及び出口バルブ12,13は共に閉弁さ
れる(ステップS1008)。図53を参照すると、前述し
た駆動モードMM(i)、パルス幅WW(i)、実駆動モード
Mexe(i)、実パルス幅Wexe(i)の関係がタイムチャート
で示されている。
【0219】以下、ヨーモーメント制御及びABS協調
制御の作用に関して順次説明する。 ヨーモーメント制御の作用: 対角輪制御:今、車両が走行中にあり、図4のメインル
ーチンが繰り返して実行されているとする。この状態
で、そのメインルーチン中のステップS3、即ち、図6
の旋回判定ルーチンにて、ハンドル角θ及びヨーレイト
γから車両の旋回方向を示す旋回フラグFdがFd=1に
設定されていると、この場合、車両は右旋回している状
態にある。
【0220】右旋回中:この後、メインルーチンのステ
ップS4,S5を経て要求ヨーモーメントγdが求めら
れ、そして、ステップS6のヨーモーメント制御が実行
されると、このヨーモーメント制御では、制御開始終了
フラグFymc(図21の判定回路参照)がFymc=1であ
ることを条件として制御モードの選択ルーチンが実行さ
れ、図23の選択ルーチンに従い、各車輪毎の制御モー
ドM(i)が設定される。
【0221】ここでは、車両が右旋回していると仮定し
ているので、図23の選択ルーチンではステップS601
の判別結果が真となり、ステップS602以降のステップ
が実施される。 US傾向の右旋回:この場合、ステップS602の判別結
果が真、つまり、制御実行フラグFcusの値が1であっ
て、車両のUS傾向が強いような状況にあると、左前輪
(外側前輪)FWLの制御モードM(1)は減圧モードに設
定されるとともに、右後輪(内後輪)RWRの制御モー
ドM(4)は増圧モードに設定され、そして、他の2輪の
制御モードM(2),M(3)はそれぞれ非制御モードに設定
される(表1及びステップS603参照)。
【0222】この後、各車輪の制御モードM(i)及
求ヨーモーメントγdに基づき、前述したようにして駆
動モードMpls(i)が設定され(図25の設定ルーチン参
照)、また、各車輪毎のパルス幅Wpls(i)が設定され
る。そして、これら駆動モードMpls(i)及びパルス幅W
pls(i)は、図20の増圧禁止補正部90及び制御信号の
強制変更部111を経て、駆動モードMy(i)及びパルス
幅Wy(i)となる。
【0223】一方、図20の動判定部124、つま
り、図29〜図32の判定回路において、図29の判定
回路125では、ブレーキフラグFbがFb=1(制動
中)且つ駆動モードMy(i)が増圧モードである場合、そ
のAND回路126及びOR回路128を介してモータ
18の駆動を要求する車輪毎の要求フラグFmon(i)や、
また、フリップフロップ130を介してカットオフバル
ブ19,20の駆動を要求する車輪毎の要求フラグFco
v(i)がそれぞれ1に設定される。
【0224】具体的には、前述したようにUS傾向の強
い右旋回時にあって且つブレーキペダル3が踏み込まれ
ている状況では、判定回路125の出力がFmon(4)=F
cov(4)=1となり、そして、図30の判定回路131
(OR回路132)からカット駆動フラグFvd1がFvd1
=1として出力され、また、図32の判定回路、OR回
路139からはモータ駆動フラグFmtrがFmtr=1とし
て出力される。ここで、要求フラグFcov(2),Fcov(3)
に関しては、Fcov(2)=Fcov(3)=0であるから、図3
1の判定回路135(OR回路136)から出力される
カット駆動フラグFvd2に関してはFvd2=0となる。
【0225】従って、制動時にあっては一方のカット駆
動フラグ、この場合にはFvd1のみが1となる。この
後、カット駆動フラグFvd1=1及びモータ駆動フラグ
Fmtr=1は、図3の制御信号の選択部140(図49
ではスイッチ145,14を経てFv1=1,Fv2=
0,Fm=1となり、そして、これらフラグは駆動信号
としてカットオフバルブ19,20及びモータ18に供
給される。即ち、この場合、左前輪FWL及び右後輪R
WRのホイールブレーキと組をなすカットオフバルブ1
9のみが閉弁されるとともに、右前輪FWR及び左後輪
RWLのホイールブレーキと組をなすカットオフバルブ
20は開弁状態に維持されたままとなり、そして、モー
タ18が駆動される。このモータ18の駆動により、ポ
ンプ16,17から圧液が吐出される。
【0226】一方、ブレーキペダル3が踏み込まれてい
ない非制動時にあっては、左前輪FWLの制御モードM
(1)及び右後輪RWRの制御モードM(4)が非制御モード
ではないので、判定回路125のAND回路127及び
OR回路128を介して要求フラグFmon(1)=Fmon(4)
=1が出力され、そして、そのフリップフロップ130
からはFcov(1)=Fcov(4)=1が出力されることにな
る。従って、この場合にも、モータ駆動フラグFmtr=
1となってモータ18、即ち、ポンプ16,17が駆動
され、そして、カット駆動フラグFvd1のみが1に設定
される結果、カットオフバルブ19のみが閉弁される。
【0227】しかしながら、非制動時の場合にあって
は、前述した駆動モードMpls(i)が制御信号の強制変更
部111(図20)にて処理されると、その非制御対角
ホールド判定部118(図28)の出力であるフラグF
hldが1に設定されるので、スイッチ112が切り換え
られ、非制御モードにある駆動モードMpls(i)は保持モ
ードに強制的に変更されることに留意すべきである。
【0228】また、非制動時(Fb=0)の場合、要求
ヨーモーメントγdの算出に関し(図8参照)、その補
正値Cpiが制動時の場合の1.0よりも大きい1.5に設定さ
れているから、要求ヨーモーメントγdは嵩上げされる
ことになる。この嵩上げは駆動モードMpls(i)、即ち、
My(i)が実行されるパルス周期Tplsを短くすることに
なるから、駆動モードMy(i)が増圧モード又は減圧モー
ドである場合、その増減が強力に実行されることに留意
すべきである。
【0229】この後、駆動モードMy(i)及びパルス幅W
y(i)は前述したように制御信号選択部140を経て駆動
モードMM(i)及びパルス幅WW(i)として設定され、更
に、これらに基づき実駆動モードMexe(i)及び実パルス
幅Wexe(i)が設定される結果、実駆動モードMexe(i)及
び実パルス幅Wexe(i)に従い、対応する入口及び出口バ
ルブ12,13が駆動される(図52の駆動ルーチン参
照)。
【0230】具体的には、US傾向の強い右旋回時であ
って且つ制動時の場合、左前輪FWLのホイールブレー
キに関してはその実駆動モードMexc(1)が減圧モードで
あるから、そのホイールブレーキに対応した入口バルブ
12は閉弁され且つ出口バルブ13が開弁される結果
(図52のステップS1006)、左前輪FWLのブレーキ
圧は減少される。一方、この場合、右後輪RWRのホイ
ールブレーキに関してはその実駆動モードMexe(4)が増
圧モードであるから、そのホイールブレーキに対応した
入口バルブ12は開弁され且つ出口バルブ13が閉弁さ
れる(図52のステップS1003)。この時点では、前述
したようにカットオフバルブ19が閉弁され、そして、
モータ18によりポンプ16,17が駆動されている状
況にあるから、右後輪RWRのホイールブレーキに至る
分岐ブレーキ管路8(図1参照)内の圧力はマスタシリ
ンダ圧とは独立して既に立ち上げられており、これによ
り、右後輪RWRのホイールブレーキは分岐ブレーキ管
路8から入口バルブ12を通じて圧液の供給を受け、こ
の結果、右後輪RWRのブレーキ圧は増加されることに
なる。
【0231】ここで、図54に示したスリップ率に対す
る制動力/コーナリングフォース特性を参照すると、車
両が通常の走行状態にあるとき、車輪のブレーキ圧、つ
まり、制動力Fxが減少するとスリップ率も減少し、こ
れに対し、制動力Fyが増加するとスリップ率も増加す
ることがわかり、一方、スリップ率の減少はコーナリン
グフォース増加させ、これに対し、スリップ率の増加
はコーナリングフォースを減少させることがわかる。な
お、図54中、領域Ryは、ヨーモーメント制御にて制
御されるスリップ率の制御範囲を示し、領域RabsはA
BSの作動時に制御されるスリップ率の制御範囲を示し
ている。
【0232】図55に示されているように、右旋回US
時で且つ制動時であるとき、左前輪FWLの制動力Fxが
白矢印から黒矢印のように減少されると、そのコーナリ
ングフォースFyは白矢印から黒矢印のように増加し、
これに対し、右後輪RWRの制動力Fxが白矢印から黒矢
印のように増加されると、そのコーナリングフォースF
yは白矢印から黒矢印のように減少する。この結果、左
前輪FWLに関してはその制動力Fxが減少することに加
えて、そのコーナリングフォースFyが強く働き、一
方、右後輪RWRに関してはその制動力Fxが増加するこ
とに加えて、そのコーナリングフォースFyが減少する
ことから、車両にはその旋回の向きに回頭モーメントM
(+)が発生する。
【0233】なお、図55中、ハッチング矢印は制動力
Fx、コーナリングフォースFyの変化分±ΔFx,±Δ
Fyをそれぞれ示している。ここで、ヨーモーメント制
御の対象となっている対角車輪、つまり、左前輪FWL
及び右後輪RWRにおいて、それら車輪の入口及び出口
バルブ12,13は、要求ヨーモーメントγdに基づき
設定された実駆動モードMexe(i)及び実パルス周期Wex
e(i)に従い開閉されるので、車両に回頭モーメントM
(+)を適切に付加することができる。従って、車両のU
S傾向が効果的に解消され、そのドリフトアウトを防止
することができる。
【0234】また、左前輪FWL及び右後輪RWRにおい
て、それらのブレーキ圧の増加量及び減少量は同一の要
求ヨーモーメントγdに基づいて算出されるため、それ
らのブレーキ圧の減圧はその絶対値が同一である。従
って、左前輪FWL及び右後輪RWRのブレーキ圧が減増
されても、車両全体の制動力が変動することはなく、車
両の制動フィーリングが悪化することもない。
【0235】更に、要求ヨーモーメントγdは、前述し
たように車両の運動状態や運転操作状態を考慮して算出
されているので(図9の算出ルーチン中、ステップS50
4,S505参照)、その要求ヨーモーメントγdに基づ
き、対角車輪の制動力が増減されると、車両の旋回状態
に応じたきめ細かなヨーモーメント制御が可能となる。
しかも、要求ヨーモーメントγdはヨーレイト偏差Δγ
及びヨーレイト偏差微分値Δγsを基準として算出され
ているので、その要求ヨーモーメントγdはその時点で
の車両が旋回挙動を正確に示すことになる。従って、そ
の要求ヨーモーメントγdに基づき、対角車輪の制動力
が増減されると、車両の不安定な旋回挙動が迅速に立ち
直り、極めて安定した車両の旋回が可能となる。
【0236】なお、要求ヨーモーメントγdの算出にあ
たっては、前述したヨーレイトフィードバック制御によ
らず、横Gyや、車速Vと操舵角δとに応じたオープン
制御を使用することも可能である。また、制動力を制御
すべき対角車輪の決定に関し、車両の旋回方向をヨーレ
イトセンサ30の出力に基づいて判定するようにしたの
で、その旋回方向を高精度に判定でき、ヨーモーメント
制御の実行を正確に行うことができる。
【0237】前述したヨーモーメント制御の実行中で且
つ車両が制動中にある場合、右前輪FWR及び左後輪R
WLの入口及び出口バルブ12,13は、その実駆動モ
ードMexe(i)が非制御モードに設定されているから、右
前輪FWR及び左後輪RWLのホイールブレーキと組をな
すカットオフバルブ20は開弁状態に維持されている。
従って、右前輪FWR及び左後輪RWLのホイールブレー
キはマスタシリンダ圧を受けることができるので、これ
ら右前輪FWR及び左後輪RWLのブレーキ圧はドライバ
によるブレーキペダル3の操作によって制御でき、それ
らのブレーキ圧にドライバの意志を反映させることがで
きる。この結果、ヨーモーメント制御に対するフェイル
セーフをも十分に確保することができる。
【0238】これに対し、ヨーモーメント制御の実行
中、車両が非制動状態にある場合には、前述したように
右前輪FWR及び左後輪RWL側の入口及び出口バルブ1
2,13はそれらの実駆動モードMexe(i)が保持モード
に強制的に変更されるので、このとき、それら車輪の入
口及び出口バルブ12,13は共に閉弁されている(図
52の駆動ルーチンにおいて、ステップS1008が実行さ
れている)。従って、モータ18によりポンプ16が駆
動されていても、このポンプ16の吐出圧が入口バルブ
12を介して右前輪FWR及び左後輪RWLのホイールブ
レーキに加わることはなく、これにより、これら右前輪
FWR及び左後輪RWLのブレーキ圧が不所望に増加する
ことはない。
【0239】また、車両の非制動時にあっては、左前輪
FWLのブレーキ圧が立ち上がっていないので、そのブ
レーキ圧の減圧制御は実質的に実行不能であるので、こ
の場合、回頭モーメントM(+)が不足するかもしれな
い。しかしながら、非制動時には前述したように要求ヨ
ーモーメントγdの算出に関し、その要求ヨーモーメン
トγdを嵩上げして求めているので、この場合、右後輪
RWRのブレーキ圧は制動時の場合よりも更に強く増圧
される。従って、その車輪のスリップ率の増加に伴い、
コーナリングフォースFyが更に減少するので、左前輪
FWLのコーナリングフォースが相対的に強く働き、制
動時の場合と同程度の回頭モーメントM(+)を車両に与
えることが可能となる。
【0240】更に、ヨーモーメント制御の実行中、ドラ
イバがブレーキペダル3を所定のペダルストローク速度
(50mm/s)よりも速い速度で踏み込むと、前述したよう
にブレーキペダル3の踏み増しフラグFppに1が設定さ
れる。この場合、踏み増しフラグFpp=1は、制御信号
の強制変更部111のスイッチ116(図28参照)を
切り換え、全ての車輪の駆動モードMy(i)が非制御モー
ドに設定される。
【0241】従って、要求フラグFmon(i)及び要求フラ
グFcov(i)の何れもが0にリセットされ(図29参
照)、そして、カット駆動フラグFvd1(Fv1)及びモ
ータ駆動フラグFmtr(Fm)もまた踏み増しフラグFpp
=1によって0にリセットされるので(図30,図31
参照)、カットオフバルブ19が開弁されるとともにモ
ータ18はその駆動が停止される。そして、各車輪の入
口バルブ12は開弁され、その出口バルブ13は閉弁さ
れる。この場合、図52の駆動ルーチンでは、増圧モー
ド側のステップS1003が実行されることになるが、この
とき、各車輪のホイールブレーキはマスタシリンダ圧の
供給を受けるので、ドライバによるブレーキペダル3の
踏み込みに応じたブレーキ圧が各車輪のホイールブレー
キ内に立ち上げられ、車両の制動力を十分に確保でき
る。
【0242】OS傾向の右旋回:図23の制御モード選
択ルーチンにおいて、ステップS602の判別結果が偽で
且つステップS604の判別結果が真つまりFcos=1とな
るような車両のOS傾向が強い状況では、左前輪FWL
の制御モードM(1)が増圧モードに設定されるととも
に、右後輪RWRの制御モードM(4)が減圧モードに設定
される点のみで前述のUS傾向の場合とは異なる(表1
及びステップS605参照)。
【0243】ここで、車両の制動時にあっては、図56
に示されているように左前輪FWLに関してはその制動
力Fxが増加する一方コーナリングフォースFyが減少
し、これに対し、右後輪RWRに関しては制動力Fxが減
少する一方コーナリングフォースFyが増加する。従っ
て、この場合には、車両に復元モーメントM(-)が発生
する。この復元モーメントM(-)は車両のOS傾向を効
果的に解消し、これにより、そのタックインに起因した
車両のスピンを確実に回避することができる。
【0244】なお、OS傾向の右旋回にあっても、非制
動時や、また、踏み増しフラグFppが1に設定された場
合には、US傾向での右旋回の場合と同様にして前述の
作用効果が得られることは言うまでもない。 非US傾向且つ非OS傾向での右旋回:図23の制御モ
ード選択ルーチンにおいて、ステップS602,S604の判
別結果が共に偽である場合、つまり、車両の旋回傾向が
USでもなくまたOSでもない場合には、左前輪FWL
及び右後輪RWRの制御モードM(1),M(4)は共に保持
モードに設定される(表1及びステップS606参照)。
【0245】この場合、左前輪FWL及び右後輪RWR側
の入口及び出口バルブ12,13は閉弁されるので、こ
れら車輪のブレーキ圧は保持され、ここでは、その回頭
モーメントM(+)及び復元モーメントM(-)の何れも発生
させることはない。 左旋回: 前述した旋回方向フラグFd及び制御開始終了フラグFy
mcが共に1、つまり、Fd=Fymc1=1となって左旋回
でのヨーモーメント制御が実行されると、ここでも、前
述した右旋回の場合と同様に、車両のUS傾向が強い状
況にあっては回頭モーメントM(+)を発生させ、これに
対し、そのOS傾向が強い場合には復元モーメントM
(-)を発生させるべく、右前輪FWR及び左後輪RWLの
ブレーキ圧が制御され、この結果、右旋回の場合と同様
効果を得ることができる(表1及び図23のステップ
S607〜S611、図43の駆動ルーチン参照)。
【0246】以上がヨーモーメント制御の基本的な作用
であり、以下には、ABS協調制御に関して説明する。 ABS協調制御の作用:前述したヨーモーメント制御の
実行中、その駆動モードが減圧モードではない車輪にA
BS制御が開始されるか、又は、3輪以上の車輪に対し
てABS制御が開始されると、図49の選択回路140
中、その判定回路148のAND回路10からはその車
輪に対応した切り換えフラグFa_y(i)=1が出力される
結果、駆動モードMM(i)及びパルス幅WW(i)には、A
BS協調制御での駆動モードMabs(i)及びパルス幅Wab
s(i)が選択される。
【0247】ここで、駆動モードMabs(i)及びパルス幅
Wabs(i)、つまり、Mabs1(i),Wabs1(i)の算出(図3
3参照)にあたり、前述したように演算部201では、
ヨーモーメント制御量の演算部211から出力されるス
リップ率補正量割当Ys(i)に基づき、そのスリップ率S
x(i)が補正され、しかも、そのスリップ率補正量割当Y
s(i)は要求ヨーモーメントγd及び車両の旋回動向に基
づいて算出されるものであるので(図37及び図41参
照)、ABS制御のためのスリップ率Sx(i)が効果的に
補正され、ヨーモーメント制御とABS制御とを適切に
協調させることができる。従って、ABS制御が開始さ
れても車体の旋回挙動を効果的に制御でき、車体のヨー
応答を改善することができる。
【0248】具体的には、ヨーモーメント制御にて制動
力の増加が要求される車輪に対してはその車輪のスリッ
プ率Sx(i)が増加補正されるので(図41のステップS
721参照)、その車輪に対してABSが作動し難くなる。
従って、その車輪の制動力をヨーモーメント制御に従っ
て増加可能となるので、車両のヨー運動を効果的に制御
可能となる。
【0249】これに対し、ヨーモーメント制御にて制動
力の減少が要求される車輪に対してはその車輪のスリッ
プ率Sx(i)が減少補正されるので(図41のステップS
724参照)、その車輪に対してABSが作動し易くなる。
従って、その車輪の制動力をABS作動の助けをもかり
て減少可能となるので、車両のヨー運動を効果的に制御
可能となる。
【0250】また、上述した駆動モードMabs(i)及びパ
ルス幅Wabs(i)の算出に関し、前述したタイミングフラ
グFus,Fosの一方が0から1にセットされた時点(図
43の参照)、具体的には要求ヨーモーメントγdの絶
対値が所定値以上になった時点において、図33の駆動
信号のオーバライド部222では駆動モードMabs(i)及
びパルス幅Wabs(i)に、ヨーモーメント制御量の演算部
211にて設定された駆動モードMabs0(i)及びパルス
幅Wabs0(i)が設定される。ここで、これら駆動モード
Mabs0(i)及びパルス幅Wabs0(i)は、車輪のスリップ率
Sx(i)とは無関係に設定されているので、つまり、AB
Sの作動開始時、その車輪の制動力が強制的に制御さ
れ、ABS制御に入り易くなる。この後、その車輪の駆
動モードMabs(i)及びパルス幅Wabs(i)には前述のMab
s1(i),Wabs1(i)が設定されるので、補正後のスリップ
率Sx(i)に基づき、車輪の制動力が制御される結果、そ
のABSの作動は前述したようにヨーモーメント制御に
好適に協調したものとなり、ABS制御の応答性が改善
される。
【0251】図37と図38を比較すれば明らかなよう
にタイミングフラグFus,Fosの一方が0から1にセッ
トされる時点、つまり、駆動モードMabs1(i)及びパル
ス幅Wabs1(i)がMabs0(i)及びパルス幅Wabs0(i)にオ
ーバライドされる時点では、スリップ基本補正量Csbが
既に出力され、スリップ率Sx(i)は補正された状態にあ
る。それ故、この後、駆動モードMabs(i)及びパルス幅
Wabs(i)にMabs1(i)及びパルス幅Wabs1(i)が設定され
ても、ABSの作動は車両に急激な挙動変化をもたらす
ことなく、ヨーモーメント制御と協調して車両のヨー運
動を効果的制御することができる。
【0252】更に、スリップ率Sx(i)の補正、つまり、
スリップ基本補正量Csbの算出に関し、車両の旋回挙動
がUSである場合には、旋回方向でみて外側前輪のスリ
ップ率Sx(i)が減少補正されるのに対し、内側後輪のス
リップ率Sx(i)が増加補正される。従って、外側前輪に
関してはそのABSが作動し易くなって、その制動力の
減少が要求されることになり、これに対し、内側後輪に
関してはそのABSが作動し難くなって、その制動力の
増加が要求されることになる。この結果、例えば図57
に示されているように右旋回US時且つABS作動時に
あっても、その左前輪の制動力が減少され且つ右後輪の
制動力が増加され易くなるので、車両に回頭モーメント
M(+)を発生させることができ、ABSの作動中であっ
ても車両の旋回挙動を安定させることができる。
【0253】一方、車両の旋回挙動がOSである場合に
は、外側前輪のスリップ率Sx(i)が増加補正されるのに
対し、内側後輪のスリップ率Sx(i)が減少補正される。
従って、外側前輪に関してはそのABSが作動し難くな
って、その制動力の増加が要求されることになり、これ
に対し、内側後輪に関してはそのABSが作動し易くな
って、その制動力の減少が要求されることになる。この
結果、例えば図58に示されているように右旋回OS時
且つABS作動時にあっても、その左前輪の制動力が増
加され且つ右後輪の制動力が減少され易くなるので、車
両に復元モーメントM(-)を発生させることができ、A
BSの作動中であっても車両の旋回挙動を安定させるこ
とができる。
【0254】ここで、図57,58から明らかなように
ABSの作動時にあっては、旋回方向でみて外側後輪の
制動力もまた減少される(図42参照)。このようにA
BSの作動時にあっては、ヨーモーメント制御での制御
対象車輪の他に、その制御対象車輪を付加することで、
ABSの作動に起因した回頭又は復元モーメントの不足
分をその追加した車輪の制動力を減少させることで補う
ことが可能となる。
【0255】前述したABS協調制御の駆動モードMab
s0(i)及びパルス幅Wabs0(i)に関し、ドライバがステア
リングハンドルを保舵しているような状況にあると、図
39から明らかなように回頭制御禁止フラグFus#inhに
1が設定される。そして、回頭制御禁止フラグFus#inh
=1の状況で且つスリップ基本補正量Csbが負(US傾
向)であると、前述したスリップ補正基本量及び強制増
減圧の算出に関しての例外処理で説明したように、外側
前輪に関し、そのスリップ基本補正量Csb及び強制の増
減圧量Wf#outはそれぞれ0に設定される。この場合、
外側前輪に対するスリップ率Sx(i)は補正されず、ま
た、そのパルス幅Wabs0(i)もまた0に設定されるの
で、図44のステップS735に示されているように外側
前輪の制動力の減少制御は禁止される。
【0256】つまり、ドライバが障害物に対する緊急回
避動作を行っていない状況にあっては、車両のヨーモー
メント制御の実施を禁止することで、その外側前輪に十
分な制動力を発揮させることができる。また、回頭制御
禁止フラグFus_inhのセットに関して、車両の減速度を
も考慮されているから、車両がある程度大きな減速度に
あるとき、その外側前輪の制動力の減少制御が禁止さ
れ、車両の制動力を十分に得ることができる。
【0257】ドライバがステアリングハンドルを保舵し
ているか否かに関しては、ハンドル角速度の実効値θae
の大きさから判定するようにしているので、ドライバに
よる緊急回避動作を正確且つ迅速に検出することができ
る。車両の制動の開始後、具体的には、例えば一方の後
輪にABSが作動し、その作動から所定時間(例えば50
0msec)以内にあり且つ車両が直進状態にあるときに
は、図40に示したように強制減圧禁止フラグFrel_in
hに1がセットされる。
【0258】この場合(強制減圧禁止フラグFrel_inh
=1)、強制増減圧の算出に関し、その例外処理で説明
したように全車輪の強制減圧が禁止される(図44のス
テップS737参照)。従って、車両が左右で路面の摩擦
係数が異なる路面、いわゆるμスプリット路に進入して
いても、この場合、ABSの作動から所定時間の間、ヨ
ーモーメント制御からの指示に基づくブレーキ圧の強制
減圧が全車輪に対して禁止される。つまり、駆動モード
Mabs0(i)が減圧モードであっても、そのパルス幅Wabs
0(i)は0に設定される。従って、ドライバに旋回の意志
が無い場合にあっては、制動開始直後、具体的にはAB
Sの作動直後の間はヨーモーメント制御を禁止すること
で、ABS制御を効果的に実施し、車両の制動力を十分
に発揮することができる。
【0259】また、ここでも、所定時間の経過後、ヨー
モーメント制御に関する強制増減圧は、要求ヨーモーメ
ントγdが所定値以上に達した時点、つまり、タイミン
グフラグFos又はFusが0から1にセットされた時点の
みで実施されるから、ABSとヨーモーメント制御との
協調を図りつつ、ドライバに旋回の意志が無いとき、制
動直後の車両の制動力を十分に確保することができる。
【0260】更に、上述したように車両が直進状態にあ
ってABSが作動してから所定時間(例えば500msec)
内にあるとき、図48に示されているように左右後輪の
制動力はセレクトロー制御によって制御され(セレクト
ローフラグFs_l=1)、この後は、車両の挙動が安定
しているときのみ、左右後輪の制動力は独立して制御さ
れる(セレクトローフラグFs_l=0)。つまり、直進
状態でのABSの初期作動時にあっては、ヨーモーメン
ト制御を実行するよりも、左右後輪の制動力をセレクト
ローの原理に従って制御することで、車両の制動安定性
を確保することができる。そして、車両が直進状態にな
い場合にあっては、左右後輪の制動力が独立して制御さ
れるので、車両のヨーモーメント制御とABS制御とを
協調させることができる。
【0261】車両が直進状態にあるか否かに関しては、
車体速Vb,目標ヨーレイトγtから求めた車両の推定横
加速度Gyeの絶対値に基づいて判定されているので、そ
の直進状態を車体速を考慮して検出でき、直進状態の判
定を効果的に行うことができる。つまり、目標ヨーレイ
トγtが小さくても(ハンドル角θの絶対値が小さ
い)、車体速Vbが高ければ、車両は直進状態にないと
判定され、この場合、左右後輪の制動力は独立して制御
されることになる。
【0262】また、車両の挙動が安定しているか否かを
ヨーモーメントγの絶対値に基づき判定しているので、
その判定は精度良く行われる。ABS協調制御にて設定
された駆動モードMabs(i)及びパルス幅Wabs(i)と、ヨ
ーモーメント制御にて設定された駆動モードMy(i)及び
パルス幅Wy(i)との選択に関し(図50参照)、ABS
協調制御での駆動モードMy(i)が減圧モードでなけれ
ば、駆動モードMM(i)及びパルス幅WW(i)に駆動モー
ドMabs(i)及びパルス幅Wabs(i)が設定され、これら駆
動モードMabs(i)及びパルス幅Wabs(i)に基づき、その
車輪の制動力が制御される。従って、この場合、その車
輪に対しヨーモーメント制御による制動力の減少はない
ので、ABS制御への悪影響はなく、車両の制動力を十
分に確保することができる。
【0263】これに対し、ABS協調制御での車輪の駆
動モードMy(i)が減圧であり、その車輪に対してABS
が作動する状況にあっては、駆動モードMM(i)及びパ
ルス幅WW(i)に駆動モードMy(i)及びパルス幅Wy(i)
が設定され、これら駆動モードMabs(i)及びパルス幅W
abs(i)に基づき、その車輪の制動力が制御される。つこ
の場合、ヨーモーメント制御の実施に伴い、その車輪に
対してABSが作動した場合には、その車輪における制
動力の減少がヨーモーメント制御により許容される。従
って、ヨーモーメント制御の実施に起因した車輪のスリ
ップ率の増大を、そのヨーモーメント制御自体により元
に戻すことができ、車輪のスリップ率の増大に歯止めを
かけることができる。
【0264】しかしながら、3輪以上にABSが作動し
ている状況にあっては、駆動モードMM(i)及びパルス
幅WW(i)に駆動モードMabs(i)及びパルス幅Wabs(i)
が選択されるので、ヨーモーメント制御による車輪の制
動力の減少は阻止され、これにより、ABSの作動中、
車両における制動力の低下を防止することができる。A
BS開始終了フラグFabs(i)に関し(図45参照)、A
BSが作動していた車輪に対し、その緩増圧処理が実施
される状況となると、つまり、その車輪のスリップが減
少し、OR回路227からその緩増圧処理の実施対象を
示す終了中フラグFe_ing(i)=1が出力されると、前述
したようにAND回路230から緩増圧実施判定部22
9にはABSの作動中にある車輪数Nabsが供給され
る。このとき、車輪数Nabsが2以下であると、判定部
229からはOR回路228に緩増圧終了信号が出力さ
れ、この時点で、ABS開始終了フラグFabs(i)は0に
リセットされる。
【0265】ここで、ABS作動中の車輪数Nabsが2
以下である状況とは、ヨーモーメント制御の実施、つま
り、制御対象車輪に対する制動力の増加に起因して、そ
の車輪にABSが作動したと考えられる。従って、この
場合には、ABS作動の終了時、その車輪に対する緩増
圧処理を継続、つまり、実質的に実施することなく、A
BS開始終了フラグFabs(i)が直ちにリセットされ、こ
の結果、ABS制御からヨーモーメント制御への迅速な
復帰が可能となる。
【0266】
【発明の効果】以上説明したように、この発明の請求項
1,3,6の旋回制御装置によれば、車両が直進状態に
あって、そのヨー運動制御を必要としない状況では、車
両の制動開始から所定時間の間だけ、ヨー運動制御での
制御対象車輪の制動力の減少を規制しているので、この
とき、車両がμスプリット路面に進入していてもヨー運
動制御が実質的に働くことはない。従って、制動の開始
直後において、車両全体の制動力が不足することはな
く、その全体の制動力を十分に確保することができる。
【0267】請求項2の装置によれば、所定時間の計測
開始時をアンチスキッドブレーキ制御の作動が開始され
た時点に設定したから、そのアンチスキッドブレーキ制
御が作動した直後、車両全体の制動力が低下することも
ないし、所定時間の経過後にあっては、アンチスキッド
ブレーキ制御とヨー運動制御とを効果的に協調させるこ
とが可能となる。
【0268】請求項4の装置によれば、制動開始から所
定時間経過するまでは左右後輪の制動力をセレクトロー
の原理に従って制御するようにしたから、制動初期、車
両の安定性を十分に図ることができる。請求項5の装置
によれば、車両のヨーレイトの大きさから車両の挙動を
判定しているので、その挙動が安定しているか否かを正
確に判定することができる。
【0269】請求項7の装置によれば、ヨー運動制御の
ための制御量が車両の挙動を正確に表す状態量、つま
り、そのヨーレイト偏差及びその時間微分値の少なくと
も一方に基づいて算出されているから、車両のヨー運動
制御を安定且つ高精度に実施可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】ヨーモーメント制御及びABS制御を実行する
ブレーキシステムの示した概略図である。
【図2】図1のブレーキシステム中、ECU(電子制御
ユニット)に対する各種センサ及びHU(ハイドロユニ
ット)の接続関係を示した図である。
【図3】ECUの機能を概略的に説明するための機能ブ
ロック図である。
【図4】ECUが実行するメインルーチンを示したフロ
ーチャートである。
【図5】ステアリングハンドルの操作時、ハンドル角θ
の時間変化を示したグラフである。
【図6】図3の旋回判定部にて実行される旋回判定ルー
チンの詳細を示したフローチャートである。
【図7】図3中の目標ヨーレイト計算部の詳細を示すブ
ロック図である。
【図8】図3の要求ヨーモーメント計算部の詳細を示す
ブロック図である。
【図9】要求ヨーモーメントの計算ルーチンを示したフ
ローチャートである。
【図10】要求ヨーモーメントの計算に使用される比例
ゲインKpを求めるためのブロック図である。
【図11】比例ゲインKpに関し、その補正係数Kp1の
算出ルーチンを示したフローチャートである。
【図12】車体速Vbと参照横Gyrとの関係を示したグ
ラフである。
【図13】比例ゲインKp及び積分ゲインKiに関し、そ
れらの補正係数Kp2,Ki2の算出ルーチンを示したフロ
ーチャートである。
【図14】重心スリップ角速度dβと基準補正係数Kcb
との関係を示したグラフである。
【図15】ヨーレイト振動成分γvを算出するためのブ
ロック図である。
【図16】比例ゲインKpに関し、その補正係数Kp3の
算出ルーチンを示したフローチャートである。
【図17】ヨーレイト振動成γvと補正係数Kp3との関
係を示したグラフである。
【図18】要求ヨーモーメントの計算において、その積
分ゲインKiを求めるためのブロック図である。
【図19】ハンドル角θの絶対値と積分ゲインKiのた
めの補正係数Ki1との関係を示すグラフである。
【図20】図3中、ヨーモーメント制御部の詳細を示す
ブロック図である。
【図21】図20中、制御開始終了判定部の詳細を示す
ブロック図である。
【図22】要求ヨーモーメントの大きさに対する制御実
行フラグFcus,Fcosの設定基準を示したグラフであ
る。
【図23】制御モードの選択ルーチンを示したフローチ
ャートである。
【図24】図23の選択ルーチンにて設定された制御モ
ードM(i)に対する駆動モードMpls(i)及びパルス幅Wp
ls(i)の関係を示したタイムチャートである。
【図25】駆動モードMpls(i)の設定ルーチンを示した
フローチャートである。
【図26】図20中、増減圧禁止補正部の詳細を示した
ブロック図である。
【図27】要求ヨーモーメントγdと許容スリップ率Sl
maxとの関係を示したグラフである。
【図28】図20中、制御信号強制変更部の詳細を示し
たブロック図である。
【図29】図20中、駆動判定部の一部を示したブロッ
ク図である。
【図30】図20中、駆動判定部の一部を示したブロッ
ク図である。
【図31】図20中、駆動判定部の一部を示したブロッ
ク図である。
【図32】図20中、駆動判定部の一部を示したブロッ
ク図である。
【図33】ABS協調制御部の詳細を示したブロック図
である。
【図34】車輪スリップ指数と基本増減圧との関係を示
したグラフである。
【図35】ABS協調制御のルーチンを概略的に示した
フローチャートである。
【図36】図33中、ヨーモーメント制御量の演算部の
詳細を示したブロック図である。
【図37】要求ヨーモーメントとスリップ補正基本量と
の関係を示したグラフである。
【図38】スリップ補正基本量とタイミングフラグとの
関係を示したグラフである。
【図39】回頭制御禁止フラグの設定ルーチンを示した
フローチャートである。
【図40】強制減圧禁止フラグの設定ルーチンを示した
フローチャートである。
【図41】ABS協調制御での目標スリップ率の補正ル
ーチンを概略的に示したフローチャートである。
【図42】ABS協調制御において、制御対象車輪の追
加ルーチンを示したフローチャートである。
【図43】駆動モード及び増減圧パルス幅のオーバライ
ト処理を示したフローチャートである。
【図44】図43でのオーバライト処理中の例外処理を
示したフローチャートである。
【図45】図33中、ABS作動の開始・終了判定部の
詳細を示したブロック図である。
【図46】図33中、セレクトロー処理部の詳細を示し
たブロック図である。
【図47】セレクトロー処理において、左右後輪におけ
るローサイドの設定を説明するためのタイミングチャー
トである。
【図48】セレクトローフラグの設定ルーチンを示した
フローチャートである。
【図49】図3中、制御信号選択回路の詳細を示したブ
ロック図である。
【図50】制御信号の選択ルーチンを概略的に示したフ
ローチャートである。
【図51】駆動信号の初期設定ルーチンを示したフロー
チャートである。
【図52】入口及び出口バルブの駆動ルーチンを示した
フローチャートである。
【図53】駆動モードMM(i)及びパルス幅WW(i)と実
駆動モードMexe(i)及び実パルス幅Wexe(i)の関係を示
したタイムチャートである。
【図54】スリップ率に対する制動力/コーナリングフ
ォース特性を示したグラフである。
【図55】制動中での右旋回US時において、ヨーモー
メント制御の実行結果を説明するための図である。
【図56】制動中での右旋回OS時において、ヨーモー
メント制御の実行結果を説明するための図である。
【図57】ABS制御時且つ右旋回US時において、ヨ
ーモーメント制御の実行結果を説明するための図であ
る。
【図58】ABS制御時且つ右旋回OS時において、ヨ
ーモーメント制御の実行結果を説明するための図であ
る。
【符号の説明】
2 タンデムマスタシリンダ 3 ブレーキペダル 12 入口バルブ 13 出口バルブ 16,17 ポンプ 18 モータ 19,20 カットオフバルブ 22 HU(ハイドロユニット) 23 ECU(電子制御ユニット) 24 車輪速センサ 26 ハンドル角センサ 27 ペダルストロークセンサ 28 前後Gセンサ 29 横Gセンサ 30 ヨーレイトセンサ 78 ヨーモーメント制御部 140 制御信号選択回路 200 ABS協調制御部
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B60T 8/00 B60T 8/32 - 8/96

Claims (7)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 車両の運転状態及び挙動の少なくとも一
    方に応じて制御対象となる所定の車輪間に制動力差を与
    え、車両のヨー運動を制御する旋回制御装置において、 車両が直進制動を開始してから所定時間の間、ヨー運動
    制御における制御対象車輪の制動力の減少を規制する規
    制手段を備えたことを特徴とする車両の旋回制御装置。
  2. 【請求項2】 前記規制手段は、ステアリングハンドル
    のハンドル角を検出する第1検出手段と、アンチスキッ
    ドブレーキ制御の作動の有無を検出する第2検出手段
    と、前記ハンドル角が所定値以下で且つアンチスキッド
    ブレーキ制御の作動開始から所定時間の間、前記ヨー運
    動制御での制御対象車輪における制動力の減少を禁止す
    る禁止手段とを備えていることを特徴とする請求項1に
    記載の車両の旋回制御装置。
  3. 【請求項3】 車両の運転状態及び挙動の少なくとも一
    方に基づき、車両のヨー運動を制御するための要求制御
    量を算出する算出手段と、算出された前記要求制御量が
    所定値以上であるときには、前記制御対象車輪に関し、
    車両のヨー運動制御のための第1制動力制御量をアンチ
    スキッドブレーキ制御のための第2制動力制御量に加え
    る補正手段とを備えており、 前記規制手段は、車両の直進制動開始から所定時間の
    間、前記第1制動力制御量が制御対象車輪の制動力を減
    少させるものである場合、前記第1制動力制御量による
    前記第2制動力制御量の補正を規制することを特徴とす
    る請求項1に記載の車両の旋回制御装置。
  4. 【請求項4】 前記規制手段は、ステアリングハンドル
    のハンドル角を検出する第1検出手段と、アンチスキッ
    ドブレーキ制御の作動の有無を検出する第2検出手段
    と、前記ハンドル角が所定値以下で且つアンチスキッド
    ブレーキ制御の作動開始から所定時間の間は左右後輪の
    制動力をセレクトローの原理で制御させ、前記所定時間
    の経過後車両の挙動が安定している場合には左右後輪の
    制動力を独立制御に切り換える切換手段とを備えている
    ことを特徴とする請求項1に記載の車両の旋回制御装
    置。
  5. 【請求項5】 前記切換手段は、車両のヨーレイトを検
    出する第3検出手段と、検出したヨーレイトが所定値以
    下のとき、車両の挙動が安定していると判定する判定手
    段とを含むことを特徴とする請求項4に記載の車両の旋
    回制御装置。
  6. 【請求項6】 前記制御対象車輪間に制動力差を与える
    手段は、車両が回頭モーメントを要求している場合、車
    両の旋回方向でみて外側前輪の制動力を減少させる一
    方、内側後輪の制動力を増加させるものであり、 前記規制手段は、車両の直進制動開始から所定時間の
    間、前記外側前輪の制動力の減少を規制することを特徴
    とする請求項1に記載の車両の旋回制御装置。
  7. 【請求項7】 車両のヨー運動を制御するための制御量
    は、車両のヨーレイト偏差及びヨーレイト偏差の時間微
    分値の少なくとも一方に基づいて算出されていることを
    特徴とする請求項1に記載の車両の旋回制御装置。
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