JP3242987B2 - い草用織機の縦糸選択装置 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、い草用織機において柄
や模様を織り込むための縦糸の選択手段に関する。

【０００２】

【従来の技術】い草用織機においては柄や模様を織り込
むために一般に織機本体の上方に縦糸を選択する縦糸選
択装置（ジャカード）を備えている。ジャカードは例え
ば図６に示すように、通糸６を介して上下ロッド１０を
下方に連結した略Ｕ字形の縦針１と上下にスライドする
ナイフ２とを備え、上昇するナイフ２に対して縦針１の
上端に形成したフック３を選択的に係合させることで、
特定の縦針１のみが引き上げられるように構成されてい
る。

【０００３】縦針１が引き上げられると、通糸６と上下
ロッド１０を介して下方の綜絖針１１が引き上げられる
ため、水平方向にスライドするプッシャー１２は綜絖針
１１の下側をスライドすることになる。したがって、綜
絖針１１の端部に支持された縦糸１３は動かない。

【０００４】一方、縦針１が引き上げられないと、水平
方向にスライドするプッシャー１２が綜絖針１１を軸方
向に押し、綜絖針１１の端部に支持された縦糸１３を水
平方向に押して、ひ口をつくる。

【０００５】フック３をナイフ２に対して選択的に係合
させるために、ジャカードは各縦針１にフック３の下方
で係合する横針４と、この横針４を水平方向に駆動する
アクチュエータ５を備える。

【０００６】アクチュエータ５が横針４を図の右方向に
駆動すると、縦針１はフック３をナイフ２の上方から遠
ざける方向に傾動し、上昇するナイフ２はフック３に係
合せず、縦針１を引き上げない。

【０００７】また、アクチュエータ５が横針４を駆動し
ない場合には縦針１も変位せず、上昇するナイフ２がフ
ック３と係合して縦針１を引き上げる。

【０００８】このようにして、縦針１を選択的に引き上
げることで織り込む柄や模様に対応して縦糸１３が選択
されるのである。

【０００９】

【発明の課題】ところで、前述のようなジャカードにお
いては、通糸６によって縦針１と上下ロッド１０を連結
することが不可欠であるため、通糸６の長さ分だけジャ
カードを高い位置に組み付けねばならず、織機の高さが
著しく高くなってしまう。そこで、通糸６を無くして上
下ロッド１０を直接選択的に引き上げるようにすること
でこの問題を解決しようとするものである。

【００１０】上下ロッド１０を直接選択的に引き上げる
ためには、上下ロッド１０と同一ピッチで縦針１、横針
４およびアクチュエータ５を配置する必要がある。

【００１１】そのためには、アクチュエータ５を非常に
小型化せねばならないが、小型化すれば駆動力が小さく
なり、自身で横針４を動作させることはできない。

【００１２】本発明は、以上の問題点を解決すべくなさ
れたものでアクチュエータを変移した横針の保持にのみ
使用することでアクチュエータの小型化を実現し、ジャ
カード織機の小型化を図ることを目的とする。

【００１３】

【課題を達成するための手段】本発明は、上端にフック
を形成した縦針と、上下方向にスライドしてこのフック
を押し上げるナイフと、ナイフと一体にスライドするカ
ムと、縦針と係合して水平方向に変位する横針と、前記
カムの運動を横針に伝達して横針を水平変位させるスラ
イド伝達部材と、通電に応じて励磁されるソレノイドの
磁力で回動変位し、水平移動した横針の基端に当接して
横針を変位位置に保持する作動子とを備えている。

【００１４】

【作用】ナイフと一体にスライドするカムはスライド伝
達部材を介して横針を縦針とともに水平方向にストロー
クさせる。ソレノイドの励磁極性により作動子が水平方
向にストロークした横針の基端に当接すると、横針はカ
ムが遠ざかり、スライド伝達部材がもとに戻った後も元
の位置への復帰を阻止され、縦針はフックをナイフの上
方から遠ざけ、係合しない状態に保持される。したがっ
て、上昇するナイフはフックと係合せず、縦針はナイフ
に引き上げられない。

【００１５】一方、作動子が横針の基端を支持しない場
合には、カムが遠ざかると横針は縦針とともに元の位置
に復帰し、上昇するナイフがフックに係合して縦針を引
き上げる。

【００１６】したがって、横針を直接ソレノイドで駆動
せずに、織機の駆動力の一部を利用して任意の縦針を引
き上げて縦糸を選択することができる。

【００１７】

【実施例】図１〜図５に本発明の実施例を示す。なお、
前記従来例との同一構成部については同一番号を付して
詳しい説明を省略する。

【００１８】図１に示すように、縦針１は鉛直方向に伸
びる２本の平行軸を備えた略Ｕ字形に形成され、ナイフ
２側の上端にフック３を備える。

【００１９】ナイフ２は縦スライダ２０に固設される。
この縦スライダ２０はメインアーム２３の先端に連結物
２４を介して連結し、縦糸選択装置のボディに取り付け
たローラ状のガイド３６により上下方向にスライド自由
に支持される。メインアーム２３は基端をヒンジ２５を
介して縦糸選択装置のボディに連結され、その中間部に
は織機の主回転軸２２の回転に応じて上下にスライドす
るエキセンアーム２１がヒンジ２６を介して連結する。
これによりメインアーム２３はヒンジ２５と連結物２４
の距離とヒンジ２５と２６の距離との比に等しい比率で
エキセンアーム２１の上下動を縦スライダ２０に伝達す
る。

【００２０】ガイド３６の下方には縦針１と直角に横針
４が配設される。横針４は水平方向に変位自由に支持さ
れ、図２に示すように中間部を曲げ回して形成した係止
部４Ａを図１の縦針１の左側の軸の中間部に係合する。

【００２１】縦スライダ２０のナイフ２の下方にはカム
７が形成される。このカム７の上下動により水平方向に
駆動されるスライド伝達部材として、横スライダ８が縦
糸選択装置のボディに取り付けたローラ状のガイド２７
により水平方向にスライド自由に支持される。

【００２２】横スライダ８にはカム７に当接するカムフ
ォロワ２８が設けられる。横スライダ８はこのカムフォ
ロワ２８を介してカム７により図１の右方向へ駆動され
る。なお、横スライダ８はジャカードのボディとの間に
介装したリターンスプリング２９によりこの変位と逆向
きに弾性支持される。

【００２３】横スライダ８の先端には直角方向に水平に
延びるスライドロッド１８が固設される。一方、各横針
４の先端にはこのスライドロッド１８に係合するフック
１９が形成される。

【００２４】また、水平方向に変位した横針４を変位位
置に保持するためにソレノイド９の励磁極性により回動
する作動子１４が垂直軸１５を支点として回動自由に支
持される。

【００２５】作動子１４は図２に示すように、ソレノイ
ド９に向けて突設する２枚の平行な鉄片１６と、その間
に挟持された永久磁石１７を備え、ソレノイド９の励磁
状態(a)では極性により(a)の位置、すなわち横針４と同
軸線上の位置に保持され、横針４の基端に当接するよう
になっている。また、ソレノイド９の励磁状態(b)では
(a) の位置から先端を回動させた(b)の位置に保持され
る。なお、この作動子１４の構造は特開昭３−９０６４
５号により公知である。

【００２６】各ソレノイド９は柄や模様を信号データに
変換する信号処理装置３０とソレノイド駆動回路３１と
を介して制御される電流信号に応じて励磁される。

【００２７】なお、縦針１の下端には上下ロッド１０が
直接接続され、この上下ロッド１０と前記従来例と同様
に構成された綜絖針１１及びプッシャー１２により縦糸
１３が選択作される。

【００２８】次に作用を説明する。

【００２９】この縦糸選択装置においては、主回転軸２
２の回転により縦スライダ２０に固設したナイフ２が一
定の速度で上下にスライドする。そして、図１に示すよ
うにナイフ２が下降すると、カム７がカムフォロワ２８
を介して横スライダ８を図の右方向へと駆動し、横スラ
イダ８の先端に固設したスライドロッド１８が横針４の
フック１９に係合してすべての横針４を図の右方向へと
変位させる。

【００３０】これに伴い、横針４は係止部４Ａを介して
図１に示す縦針１の左側の軸を図の右方向へ傾倒するよ
うに弾性変形させ、図４の(g)に示すように先端のフッ
ク３をナイフ２の上方から遠ざける。

【００３１】この状態でソレノイド９に通電すると、励
磁されたソレノイド９の励磁極性により作動子１４が図
２の(b)の位置から(a)の位置へと回動する。

【００３２】縦スライダ２０がスライド方向を上向きに
転じてカム７がカムフォロワ２８の上方へ去ると、リタ
ーンスプリング２９に付勢された横スライダ８は図１の
左側へと戻り、縦針１は図４の(g)に示す傾倒状態から
(h)に示す元の状態へと戻ろうとし、これに伴って横針
４も元の位置へと戻ろうとする。

【００３３】しかしながら、図３の(e)に示すように横
針４の基端に当接する作動子１４が横針４のこの戻りを
阻止するので、縦針１も図４の(g)に示す傾倒状態に保
持される。

【００３４】したがって、縦スライダ２０とともに上昇
するナイフ２はこの縦針１のフック３と係合せずに上昇
し、綜絖針１１は図１に示す位置から上昇せず、そのま
まの位置にとどまるため、水平方向にスライドするプッ
シャー１２に押されて縦糸１３を図の右方向へと駆動す
る。

【００３５】一方、ソレノイド９の極性が変わらない場
合には、作動子１４は図２の(b)の位置に留まり、横針
４の戻りを拘束しない。したがって、縦スライダ２０の
上昇によりカム７がカムフォロワ２８から遠ざかり、横
スライダ８が図１の左側へ戻ると、横針４は図３の(f)
に示すように縦針１のばね作用により元の位置へと戻
り、縦針１は変形状態から図４の(h)に示すようなもと
の位置に復帰して、フック３をナイフ２の上方に位置さ
せる。この結果、上昇するナイフ２がフック３と係合し
て縦針１を引き上げる。

【００３６】この場合には、綜絖針１１は上下ロッド１
０を介して先端を上方へと引き上げられ、水平方向にス
ライドするプッシャー１２を綜絖針１１の下側に侵入さ
せる。このため、綜絖針１１は水平方向には変位せず、
縦糸１３はそのままの状態を保持する。

【００３７】このようにして、ソレノイド９への励磁極
性に応じて縦糸１３を任意に選択することができる。ソ
レノイド９は横針４を直接駆動するのではなく、軽量の
作動子１４を回転変位させるのみであるから小電力です
み、小型にできる。縦糸選択装置は横針４と同数の多く
のソレノイド９を備えるため、これにより選択装置の形
状もコンパクトにできる。

【００３８】なお、この実施例では縦針１と上下ロッド
１０を通糸を介さずに直接連結しているが、これはソレ
ノイド９が小さく、図５に示すようにソレノイド９と作
動子１４とを縦針１と上下ロッド１０と同じ狭いピッチ
で配設できるためである。この結果、縦糸選択装置の高
さも通糸相当分だけ低くすることができる。

【００３９】

【発明の効果】以上のように本発明は、ナイフと一体に
スライドするカムがスライド伝達部材と横針とを介して
縦針を変形させるとともに、励磁されたソレノイドの磁
力で横針を変位位置に保持する作動子を備えたので、横
針をナイフのスライド力の一部で駆動することができ、
ソレノイドはソレノイドの励磁極性を変えることにより
作動子を回動変位させるのみで横針を直接駆動する必要
がない。

【００４０】したがって、小さなソレノイドを使用する
ことができ、装置全体を小型化する上で好ましい効果が
得られる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の実施例を示す縦糸選択装置要部の縦断
面図である。

【図２】作動子と横針の平面図である。

【図３】同じく作動子と横針の平面図である。

【図４】縦針の変形状況を示す縦針と横針の側面図であ
る。

【図５】い草用織機要部の斜視図である。

【図６】従来例を示すい草用織機の概略縦断面図であ
る。

【符号の説明】

１ 縦針 ２ ナイフ ３ フック ４ 横針 ７ カム ８ 横スライダ ９ ソレノイド １４ 作動子 １８ スライドロッド

Claims (1)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 上端にフックを形成した縦針と、上下方
   向にスライドしてこのフックを押し上げるナイフと、ナ
   イフと一体にスライドするカムと、縦針と係合して水平
   方向に変位する横針と、前記カムの運動を横針に伝達し
   て横針を水平変位させるスライド伝達部材と、通電に応
   じて励磁されるソレノイドの磁力で回動変位し、水平変
   位した横針の基端に当接して横針を変位方向に支持する
   作動子とを備えたことを特徴とするい草用織機の縦糸選
   択装置。