JP3238078B2 - 消泡剤組成物 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は水中油型エマルショ
ン型消泡剤組成物に関し、さらに詳しくは、優れた消
泡、抑泡効果を有し、加えて製品の長期貯蔵時において
も増粘、固化の伴わない消泡剤組成物に関する。

【０００２】

【従来の技術】水中油型エマルション消泡剤は、抄紙工
程、その他各種製造工程、及び排水工程等において発泡
抑制を目的として広く用いられている。水中油型エマル
ション型消泡剤としては、高級アルコールを用いたもの
がよく知られている（特開昭４８−６２６８３号公報、
特開昭６０−１５６５１６号公報）。しかしこの水中油
型エマルション型消泡剤は、製品貯蔵中に増粘し、ある
ときはクリーム状に固化し、取扱い性が極めて悪いとい
う欠点を有している。その改良方法として、例えばアク
リル酸、アクリルアミド等の重合物から成る水溶性高分
子化合物を配合する方法（特公平６−１０４１６５号公
報）、炭素数１６〜２４のアルコール、及び一価〜三価
の炭素数１〜１８のアルコールと炭素数１２〜２２の脂
肪酸とからなる脂肪酸エステルを用いる方法（特公平８
−２４８０６号公報）等が提案されている。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、これら
改良方法をもってしても製品を長期に亘って貯蔵した際
には依然増粘、固化が起こり、満足できるものではなか
った。本発明の目的は、この水中油型エマルション型消
泡剤の優れた消泡効果を有したまま、長期貯蔵した際に
も増粘、固化を起こさず、取扱い性良好な水中油型エマ
ルション型消泡剤組成物を提供することにある。

【０００４】

【課題を解決するための手段】本発明者らは、水中油型
エマルション型消泡剤の増粘、固化現象、およびその解
決方法について鋭意研究を重ねた結果、特定の脂肪酸エ
ステルと特定の高級アルコールを組み合わせることによ
りその増粘、固化現象を大幅に改善し得ることを見いだ
し、その知見に基づいて本発明をなすに至った。

【０００５】すなわち、本発明は、(Ａ) エリトリトー
ル及びペンタエリトリトールからなる群より選ばれた１
種以上の四価アルコールと炭素数１２〜２４の脂肪酸と
からなる脂肪酸エステルと(Ｂ) 炭素数１２〜２６のア
ルコールを、重量比で１：１〜１：２０にて、非イオン
性及び／又はアニオン性界面活性剤の存在下に配合して
なる水中油型エマルション型消泡剤組成物である。

【０００６】

【発明の実施の形態】以下、本発明について説明する。

【０００７】本発明における水中油型エマルション型消
泡剤における油相は、(Ａ) エリトリトール及びペンタ
エリトリトールからなる群から選ばれた１種以上の四価
アルコールと炭素数１２〜２４の脂肪酸とからなる脂肪
酸エステル及び(Ｂ) 炭素数１２〜２６のアルコールか
ら構成されている。

【０００８】本発明の(Ａ)成分に用いられる脂肪酸は、
炭素数１２〜２４、好ましくは１４〜１８の飽和脂肪
酸、あるいは不飽和脂肪酸である。炭素数１１以下の脂
肪酸、あるいは炭素数２５以上の脂肪酸では、組成物の
粘度安定性が劣り好ましくない。しかし、炭素数１２〜
２４の脂肪酸を用いたとき、一部炭素数１１以下の脂肪
酸、あるいは炭素数２５以上の脂肪酸を含むことがある
が、消泡剤の作用、組成物の粘度安定性を損なわない範
囲で含有することを妨げるものではない。通常炭素数１
２〜２４の脂肪酸成分が７０重量％以上含有すれば本発
明の目的が達せられる。炭素数１２〜２４の脂肪酸の具
体的な例としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミ
チン酸、ステアリン酸、アルキン酸、ベヘン酸、リグノ
セリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸があ
り、さらに牛脂油、トウモロコシ油、大豆油、パーム
油、オリーブ油など天然の油脂から得られ、かつ炭素数
１２〜２４の成分を多く含む脂肪酸等が挙げられる。

【０００９】本発明の(Ａ)成分である脂肪酸エステル
は、エリトリトール及びペンタエリトリトールのうちの
１種以上と上記脂肪酸の１種以上とのエステル化によっ
て得られるものであり、エリトリトールあるいはペンタ
エリトリトールの分子中に４つあるアルコール基のうち
の１個以上が脂肪酸によってエステル化されたモノエス
テル化物、ジエステル化物、トリエステル化物の部分エ
ステル化物、あるいは４つのアルコール基が全てエステ
ル化された完全エステル化物である。しかし、組成物の
粘度安定性の観点からジエステル化物、トリエステル化
物の部分エステル化物、あるいは完全エステル化物を用
いるのが好ましい。また、２種以上の脂肪酸エステルを
混合して用いることもできる。

【００１０】本発明の(Ｂ)成分であるアルコールは、炭
素数１２〜２６、好ましくは１８〜２２の合成あるいは
天然のアルコールである。炭素数１１以下のアルコー
ル、および炭素数２７以上のアルコールは組成物の安定
性が劣り好ましくない。しかし、炭素数１２〜２６のア
ルコールを選んだとき、一部成分として炭素数１１以下
のアルコール、あるいは炭素数２７以上のアルコールを
含むことがあるが、消泡剤の作用、組成物の安定性を損
なわない範囲で含有することを妨げるものではない。通
常炭素数１２〜２６のアルコール成分が７０重量％以上
含有すれば本発明の目的が達せられる。炭素数１２〜２
６の単体のアルコールの例としてラウリルアルコール、
ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリル
アルコール、エイコシルアルコール、ベヘニルアルコー
ル等が挙げられる。また、合成のアルコールとしては、
例えばトリアルキルアルミニウムを触媒（チーグラー・
ナッタ触媒）としてエチレンを重合し、得られたポリエ
チレンを濃硫酸を反応させモノアルキル硫酸を得、次で
加水分解、蒸留分離して得られる所謂チーグラー合成に
よるアルコールがある。この、チーグラー合成によるア
ルコールは偶数の炭素数を有し、炭素数の異なるアルコ
ールが混合されているので、本発明消泡剤には好ましい
アルコールとして挙げられる。

【００１１】本発明の消泡剤組成物の油相は、(Ａ)成分
及び(Ｂ)成分を含有する。(Ａ)成分及び(Ｂ)成分の構成
は、その重量比が１：１〜１：２０、好ましくは１：３
〜１：７である。これら混合比は、組成物の粘度安定
性、さらに消泡、抑泡効果の検討から決められたもので
あり、この範囲の外では特に粘度の安定性において不十
分であり好ましくない。また本発明における(Ａ)成分及
び(Ｂ)成分は、その合計量が水中に１０〜４０重量％、
好ましくは２０〜３０重量％含有するエマルションとし
て用いられる。

【００１２】本発明の消泡剤組成物においては、油相成
分は(Ａ)成分及び(Ｂ)成分の混合物であるが、本発明の
効果が失われない範囲において、他の油剤、例えば鉱油
などを加えることもできる。

【００１３】本発明の水中油型エマルションの製造に
は、エマルションの乳化剤として非イオン性界面活性
剤、及び／又はアニオン性界面活性剤が用られる。

【００１４】非イオン性界面活性剤としては、例えばポ
リオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレ
ンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリ
オキシプロピレンブロックポリマー、ポリオキシエチレ
ンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシ
エチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレ
ンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソル
ビトール脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪
酸エステル、脂肪酸モノグリセリド、ソルビタン脂肪酸
エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステルなどが
挙げられる。

【００１５】一方、アニオン性界面活性剤としては、脂
肪酸セッケン、アルキルエーテルカルボン酸塩、アルキ
ルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン
酸塩、ナフタレンスルホン酸塩のホルマリン重縮合物、
ジアルキルスルホコハク酸エステル塩、Ｎ−アシルメチ
ルタウリン、高級アルコール硫酸エステル塩、アルキル
エーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニル
エーテル硫酸塩、脂肪酸アルキロールアマイドの硫酸エ
ステル塩、アルキルホスホン酸エステル塩、脂肪酸モノ
グリセリド硫酸エステルなどが挙げられる。

【００１６】これら界面活性剤は、主として該エマルシ
ョンの安定性の見地から選択され、２種以上を組み合わ
せて用いることもできる。

【００１７】本発明に用いられる非イオン性界面活性
剤、及び／又はアニオン性界面活性剤の量は、(Ａ)成分
及び(Ｂ)成分、さらに必要により加えた他の油類が、水
中でエマルションとして安定に存在するに足ればよく、
一般的には、エマルション中０．１〜５重量％、好まし
くは０．５〜３重量％である。

【００１８】本発明の水中油型エマルションにおいて、
その油滴は平均粒径１〜１５μｍ、好ましくは３〜８μ
ｍであるとエマルションとして安定であり、かつ消泡、
抑泡効果も優れている。水中油滴の粒径は、例えば実施
例に記載した方法で測定される。

【００１９】本発明の消泡剤組成物の製造方法について
は、従来の水中油型エマルションの製造において慣用さ
れている方法を用いることができる。例えば、水中に界
面活性剤を加え、これを激しく撹拌しながら(Ａ)成分と
(Ｂ)成分の混合物を徐々に加えてエマルションとする方
法がある。しかし本発明においては、(Ａ)成分と(Ｂ)成
分の加える順序、加えるタイミング、撹拌速度などエマ
ルションの製造方法について、特に限定するものではな
い。

【００２０】高級アルコールを含む水中油型エマルショ
ンは、水相（連続相）中に分散した油成分粒子が凝集す
ることにより、増粘又はゲル化するものといわれている
〔「乳化・分散技術応用ハンドブック」サイエンスフォ
ーラム社刊行（１９８７年）・１３１頁〕。本発明で
は、四価のアルコールと脂肪酸とから構成される脂肪酸
エステルと高級アルコールを用いており、このうちの四
価のアルコールを用いることに本発明の大きな特徴があ
る。四価のアルコールと脂肪酸からなる脂肪酸エステル
は大きく広がった分子構造を有し、そのため分子の配列
が阻害されて凝集が難かしくなり、増粘又はゲル化とな
り難くしていると推測される。

【００２１】本発明の水中油型エマルションを安定化さ
せる目的で、公知のエマルション安定化剤、例えば、ア
クリル酸、メタクリル酸、アクリルアミド、メタクリル
アミドなどの重合物等の水溶性高分子化合物が用いられ
ることがあるが、これら水溶性高分子化合物の添加につ
いてもなんら制限を加えるものではない。

【００２２】また、本発明の消泡剤組成物には、長期貯
蔵の際の腐敗を防止する目的で、必要に応じ公知の水溶
性防腐剤を含有させることができるが、本発明はそれら
防腐剤の添加に関しなんら制限を加えるものではない。

【００２３】本発明の消泡剤組成物の使用量は、対象と
するプロセス、その規模、装置形態、温度など操業条
件、さらに泡の程度などにより決められ一律に決められ
るものではないが、一般的には対象とする液体に対し１
〜３０ｐｐｍである。加える方法も連続的に添加する、
あるいは断続的に添加するなど任意に決められる。

【００２４】

【実施例】以下、実施例により本発明を具体的に説明す
る。

【００２５】[テストに用いた脂肪酸エステル]下記表１
に記載した組み合わせで脂肪酸エステルを合成した。な
お、エステル化率は、ペンタエルトリトール、あるいは
エリトリトールの４つのアルコール基が全てエステル化
された場合を１００％とした。

【００２６】

【表１】

【００２７】[テストに用いたアルコール]下記表２に示
した炭素数組成のアルコールを用いた。〔いずれもコン
デア・ビスタ（Ｃｏｎｄｅａ・Ｖｉｓｔａ）社製、ＮＡ
ＦＯＬ（商品名）シリーズを使用した。〕

【００２８】Ｂ−３はナタネ油から得られた天然アルコ
ールであり、その他はチーグラー合成によるアルコール
である。

【００２９】

【表２】

【００３０】[テストに用いた界面活性剤] Ｃ−１；ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロ
ックポリマー（ＨＬＢ＝５．７） 〔旭電化工業(株)製、プルロニックＬ−６１（商品
名）〕 Ｃ−２；ポリオキシエチレンラウリルエーテル（ＨＬＢ
＝１６．２） 〔日本油脂(株)製、ノニオンＫ−２２０（商品名）〕 Ｃ−３；ジオクチルスルホサクシネート 〔旭電化工業(株)製、アデカコールＥＣ−８６００（商
品名）〕

【００３１】[粒子径の測定]レーザー回析式粒度分布測
定装置〔堀場製作所(株)）製、ＬＡ−５００（商品
名）〕を用いた。

【００３２】[エマルションの製造] 組成物−１；水７９重量部を８０℃に加温し、界面活性
剤“Ｃ−１”を１重量部加え、タービン翼で激しく撹拌
しながら、脂肪酸エステル“Ａ−１”１０重量部とアル
コール“Ｂ−１”１０重量部を８０℃に加温して熔融さ
せた混合物を加え水中油型エマルションを調整した。エ
マルションの平均粒径は３〜６μｍであった。同様にし
てエマルション組成物−２〜２５を調整した。各組成物
の組成を表３に示した。表中の重量％は、組成物中の重
量％を示す。

【００３３】[経時粘度変化]本発明の消泡剤組成物、あ
るいは比較の消泡剤組成物をそれぞれ、５℃、２５℃、
４０℃に設定した恒温器内に各々静置し、６０日後の粘
度を測定した。粘度測定にはＢＨ型粘度計〔東京計器
(株)製〕を用い、２５℃、２０ｒｐｍ、測定時間１分間
の条件で測定した。この結果を表３に示した。

【００３４】本発明の組成物は、比較のものに比べて６
０日後の粘度上昇が小さいことが認められ、粘度安定性
に優れていることが認められた。

【００３５】

【表３】

【００３６】[消泡効果]図１に示す装置を用いた。２Ｌ
メスシリンダー(１)に試験液(２)として抄紙白水を１Ｌ
入れ、４０℃に保ちつつ循環ポンプ(３)にて試験液(２)
を循環（循環管の内径は６ｍｍ）し、メスシリンダーの
液面から２７ｃｍ上部より落下、メスシリンダー(１)内
で試験液(２)を発泡させ、１分後、２分後、３分後の泡
の高さを測定した。この結果を表４に示した。本発明の
組成物、及び比較の組成物とも消泡効果の上では大差な
く、消泡効果を示した。

【００３７】

【表４】

【００３８】

【発明の効果】以上説明したように本発明の消泡剤組成
物を用いることにより、優れた消泡、抑泡効果を有し、
しかも長期保存時においても増粘、固化が起こらず、粘
度安定性が良好であるため、取扱い易いという効果を奏
する。

【図面の簡単な説明】

【図１】 実施例で用いた消泡試験装置を示す。

【符号の説明】

１…２Ｌメスシリンダー ２…試験液（１リットル） ３…循環ポンプ ４…流量計 ５…コック

フロントページの続き (56)参考文献 特開 平９−234307（ＪＰ，Ａ) 特開 平８−257305（ＪＰ，Ａ) 特開 平８−155212（ＪＰ，Ａ) 特開 昭62−171715（ＪＰ，Ａ) 特開 昭60−156516（ＪＰ，Ａ) (58)調査した分野(Int.Cl.⁷，ＤＢ名) B01D 19/04

Claims (1)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 (Ａ) エリトリトール及びペンタエリト
   リトールからなる群より選ばれた１種以上の四価アルコ
   ールと炭素数１２〜２４の脂肪酸とからなる脂肪酸エス
   テルと(Ｂ) 炭素数１２〜２６のアルコールを、重量比
   で１：１〜１：２０にて、非イオン性及び／又はアニオ
   ン性界面活性剤の存在下に配合してなる水中油型エマル
   ション型消泡剤組成物。