JP3236896U - 薄金属板用ドリルねじ - Google Patents
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Abstract
【課題】例えば0.4~1.0mm程度の薄金属板に使用する薄金属板用ドリルねじにおいて、締結強度とストリッピング防止効果と緩み抑制効果とに優れた技術を提供する。【解決手段】ドリルねじは、外周に台形の雄ねじ2が形成された軸部1を有し、軸部1の先端にはドリル部3が形成されて、基端には頭部4が形成されている。雄ねじ2はテーパ部2aとストレート部2bとを有しており、ストレート部2bには多数条の切欠き溝7が形成されている。雄ねじ2は台形であるため、雄ねじ2による部材16,17の押し広げ機能が高い。従って、両部材16,17の内周部16a,17aをできるだけ厚肉化して、軸部1と両部材16,17との間の摩擦を大きくできる。かつ、両部材16,17の内周部16a,17aが弾性復元力によって切欠き溝7に入り込むため、緩み防止効果が助長される。【選択図】図3
Description
本願考案は、薄金属板に他の部材を締結するドリルねじに関するものである。本願考案において、薄金属板としては、概ね0.4~1.0mmの金属板(主として鋼板やステンレス板)を好適な対象にしている。
0.4~1.0mm程度の板厚の鋼板製基材を使用している建物や構造物、装置類は多々存在しており、薄金属板同士をドリルねじで締結することも多く行われている(例えば特許文献1)。また、ドリルねじにおいて、ねじ部に、ねじ山を全体的に又は部分的に分断して軸方向に延びるV形等の切欠き溝を形成することも提案されている(例えば特許文献2)。
さて、金属板に他の部材をドリルねじで締結する場合、ドリルねじによる締結機能をみると、金属板にドリル部で谷径と略同径の下穴を空けて、下穴に雄ねじをねじ込ませていくケースと、金属板にドリル部で谷径よりも小径の下穴を空けて、金属板の内周部にバーリング部を形成してこれに雄ねじをねじ込ませていくケースとがあるが、これらの機能は、雄ねじによって雌ねじを形成し、雄ねじと雌ねじとの噛み合いを基本的機能にしているため、緩みやすいという問題がある。
金属板が薄くなると、雄ねじの深さが低くなって雄ねじと雄ねじとの引っ掛かりが弱くなるため、締結強度は更に低くなる。この点、バーリング部を形成すると雄ねじと雄ねじとの引っ掛かりが強くなるかのように予想されるが、実際には、バーリング部が形成されても、雄ねじと雄ねじとの引っ掛かりは強くならず、締結強度の向上にはさほど貢献できないのが実情である。
本願考案はこのような現状を背景に成されたものであり、薄金属板に対する締結強度と緩み防止効果とに優れたドリルねじを提供せんとするものである。
本願考案は、
「外周に1条の雄ねじが一定ピッチで形成された軸部と、前記軸部の先端に設けたドリル部と、前記軸部の基端に設けた頭部とを有している薄金属板用ドリルねじ」
に関し、
「前記雄ねじにおける山の形は頂面を有する台形に形成されて、
前記ドリル部のドリル径は前記雄ねじの谷径と略同じになっており、
前記雄ねじは、前記ドリル部の終端又はその近傍から立ち上がって外径(山の高さ)が徐々に増大するテーパ部と、前記テーパ部の終端に連続して外径(山の高さ)が一定になっているストレート部とを有しており、前記ドリル部を構成する溝が前記テーパ部の中途部まで至っており、
かつ、前記雄ねじのうち少なくとも前記ストレート部に、軸方向から見てV形の切欠き溝が周方向に離れて複数条形成されている」
という構成になっている。
「外周に1条の雄ねじが一定ピッチで形成された軸部と、前記軸部の先端に設けたドリル部と、前記軸部の基端に設けた頭部とを有している薄金属板用ドリルねじ」
に関し、
「前記雄ねじにおける山の形は頂面を有する台形に形成されて、
前記ドリル部のドリル径は前記雄ねじの谷径と略同じになっており、
前記雄ねじは、前記ドリル部の終端又はその近傍から立ち上がって外径(山の高さ)が徐々に増大するテーパ部と、前記テーパ部の終端に連続して外径(山の高さ)が一定になっているストレート部とを有しており、前記ドリル部を構成する溝が前記テーパ部の中途部まで至っており、
かつ、前記雄ねじのうち少なくとも前記ストレート部に、軸方向から見てV形の切欠き溝が周方向に離れて複数条形成されている」
という構成になっている。
切欠き溝は雄ねじの主としてストレート部に形成することも可能であるし、テーパ部に部分的にかかるように形成することも可能である。つまり、切欠き溝は、主としてストレート部に存在する深さに設定することも可能であるし、テーパ部の一部又は全部に存在する深さに設定することも可能である。
本願考案は、様々に具体化できる。その例として請求項2の考案は、
「締結部材として厚さ0.4~1.0mmの薄金属板を対象にしており、
前記軸部には、隣り合った前記雄ねじの間に帯状の谷底面が形成されて、
前記雄ねじのピッチは前記薄金属板の板厚と等しいか又は大きく、
前記雄ねじにおける頂面の幅よりも前記谷底面の幅が小さくて、前記雄ねじの山の最大幅は山の高さよりも大きく、
かつ、前記切欠き溝は、主として前記雄ねじのストレート部に、周方向に等間隔で6条以上形成されている」
という構成になっている。
「締結部材として厚さ0.4~1.0mmの薄金属板を対象にしており、
前記軸部には、隣り合った前記雄ねじの間に帯状の谷底面が形成されて、
前記雄ねじのピッチは前記薄金属板の板厚と等しいか又は大きく、
前記雄ねじにおける頂面の幅よりも前記谷底面の幅が小さくて、前記雄ねじの山の最大幅は山の高さよりも大きく、
かつ、前記切欠き溝は、主として前記雄ねじのストレート部に、周方向に等間隔で6条以上形成されている」
という構成になっている。
また、請求項3の考案は、請求項1又は2において、
「更に、前記軸部の首下部に、弾性体製のパッキンと、前記パッキンと前記頭部との間に介在した座金とが組み込まれている」
という構成になっている。
「更に、前記軸部の首下部に、弾性体製のパッキンと、前記パッキンと前記頭部との間に介在した座金とが組み込まれている」
という構成になっている。
さて、雄ねじの形状と締結部材(相手材)との関係をみると、雄ねじの山の形状が三角形であると食い込みが良好になると解されるが、食い込みが良好でも緩みに対する抵抗が増大する訳ではないし、既述のとおり、バーリング部が形成されても必ずしも締結強度や緩み防止効果の向上に貢献する訳ではない。
他方、本願考案では、締結部材(ドリルねじがねじ込まれて他の部材が固定される部材、ワーク)に形成される下穴の内径が谷径と略同じであるため、締結部材の内周部を雄ねじのテーパ部によって押し広げて、締結部材の内周部を変形させつつ(厚肉化させつつ)、雄ねじが締結部材に食い込んでいくが、雄ねじの山の形は台形であるため、雄ねじの山の形が三角形である場合に比べて、締結部材の内周部を押し広げる機能が高く(締結部材の内周部を厚肉化する機能が高く)、その結果、雄ねじ(軸部)と締結部材との噛み合い面積及び摩擦力を大きくできる。
かつ、締結部材は雄ねじの押し広げによって内周部が厚肉化するように変形するが、締結部材は塑性変形すると共に弾性変形もしているため、弾性復元力によって締結部材の内周部を切欠き溝に入り込ませることができ、これにより、緩みに対して高い抵抗が発揮される。
さて、薄金属製の締結部材に使用するドリルねじの場合、締結部材の雌ねじが潰れてねじが空回りしてしまうストリッピング現象が生じてことがある。近年、動力ドライバの性能がアップして高トルク化していることからストリッピング現象が現れやすくなっており、また、締結部材の厚さが薄くなると雌ねじが潰れやすくなるため、板厚が薄くてなるほどストリッピング現象も発生しやすい。更に、三角ねじの場合は、ねじ込み抵抗が小さいため、ストリッピング現象も発生しやすい。
これに対して本願考案では、まず、上記のとおり、山の形が台形であることによって締結部材を塑性変形及び弾性変性させる機能が高いため、三角ねじに比べて締結部材が薄くてもねじ込みに対する抵抗(ねじ込みトルク)を格段に大きくでき、これにより、ストリッピングの防止効果が高い。
更に、上記したように、締結部材は弾性変形もしているため、雄ねじは締結部材で掴持された状態でねじ込まれていくが、ねじ込みに際して、締結部材の内周部は弾性力によって切欠き溝に入り込む傾向を呈するため、多数の切欠き溝がねじ込みに対して抵抗として作用する。これにより、ねじ込みトルクを増大させてストリッピングの防止効果が助長されている。
結局、本願考案では、雄ねじによる締結部材の食い込み機能と押し広げ変形機能とを調和させて、雄ねじと締結部材との噛み合い面積を増大させて両者間の摩擦抵抗を増大できることと、締結部材が弾性復元力によって切欠き溝に嵌まり込むことによるねじ込み抵抗増大及び戻り抵抗増大との相乗作用により、締結部材が薄くても、ねじ込み時のストリッピングを防止しつつ、高い締結強度と緩み防止効果とを確保できる。
薄金属板同士を重ねて締結する場合は、被締結部材も雄ねじによって内周部が厚肉化して雄ねじをしっかりと掴持するため、被締結部材とねじ部との間にも高い摩擦抵抗が発生する。従って、ストリッピング防止効果及び緩み止め効果は更に高くなる。
請求項2では具体的な寸法の関係を特定しているが、請求項2では、まず、雄ねじのピッチが締結部材の板厚と同じか又は大きくても、上記したような雄ねじの特徴により、締結部材を雄ねじや谷部にしっかりと食い込ませて、締結部材とねじ部との間で高い噛み合い状態を確保できる。
また、縦断面視において、雄ねじの山の断面積が谷部の断面積より大きくなるため、雄ねじによって締結部材を変形させる(内周部を厚肉化する)機能に優れて、締結部材による軸部の抱持力を向上できる。更に、切欠き溝は6条以上形成されているため、多数の切欠き溝と締結部材とを嵌合させて、高いストリッピング防止効果及び緩み止め効果を発揮する。
更に、切欠き溝について述べると、切欠き溝は主としてストレート部に形成しているため、テーパ部による締結部材の押し広げ変形機能が切欠き溝によって阻害されることはない。すなわち、切欠き溝は基本的にはテーパ部には形成されていないため、切欠き溝の箇所による切削機能は殆ど発揮せずに、テーパ部による締結部材の押し広げ機能が十分に発揮されて、締結部材と軸部との間の摩擦抵抗増大に貢献できる。つまり、締結部材による軸部の抱持力を増大させた状態で、締結部材の内周部を切欠き溝に嵌合させることができるのであり、これにより、ストリッピング防止効果と緩み防止効果を向上できる。
本願考案のドリルねじは、座金を使用せずに独立して使用することもできるし、座金のみと併用することもできるが、請求項3のようにパッキンと座金とを組み込むと、まず、締結箇所のシール性をパッキンによって確保できる。
従って、建物の薄金属板製下地への板材の締結、屋根材の薄板製下地材への締結、外装等の役物同士の接続(継手)、建物に水切り用材の薄板製受け金具に対する締結、薄鋼板製外壁の下地材(受け金具)への締結などに好適である。建物や構造物に限らず、各種装置・設備類の薄板製ハウジング・ケーシングの締結などにも適用できる。
また、弾性体製のパッキンを組み込むと、ドリルねじのねじ込みによってパッキンが圧縮変形するため、パッキンの弾性復元力によって締結部材とねじ部との間の摩擦抵抗が増大するため、緩み止め効果も向上できる。
(1).構造の説明
次に、本願考案の実施形態を図面に基づいて説明する。ドリルねじは鋼やステンレス等の金属製であり、図1(A)(B)に示すように、外周に1条の雄ねじ(ねじ山)2が転造によって形成された軸部1と、軸部1の先端(一端)に形成したドリル部3(自己穿孔部)と、軸部1の基端(他端)に設けた頭部4とから成っている。
次に、本願考案の実施形態を図面に基づいて説明する。ドリルねじは鋼やステンレス等の金属製であり、図1(A)(B)に示すように、外周に1条の雄ねじ(ねじ山)2が転造によって形成された軸部1と、軸部1の先端(一端)に形成したドリル部3(自己穿孔部)と、軸部1の基端(他端)に設けた頭部4とから成っている。
以下では、方向を特定するため便宜的に上下の文言を使用するが、ドリル部3が下に位置して頭部4が上に位置している姿勢として定義している。従って、平面視では頭部4の頂面が現れる。ドリル部3は従来から知られた形状のものであり、軸心を挟んだ両側に一対の縦溝5を形成して、軸心に対して傾斜した一対の切り刃6を対称に形成している。ドリル部3の先端にはチゼルエッジが形成されている。
雄ねじ2は軸部1のほぼ全長に亙って形成されており、始端はドリル部3の終端から立ち上がって徐々に外径を増しており、途中から同径になっている。従って、雄ねじ2は、先端側に位置して外径が徐々に増大するテーパ部2aと、外径が一定のストレート部2bとを有しており、ストレート部2bに、周方向に等間隔で10条の切欠き溝(Vノッチ)7が形成されている。雄ねじ2のうち首下寄りの2巻ほどは、転造による製造上の関係でやや小径の不完全ねじ部になっている。切欠き溝7は、不完全ねじ部の一部まで至っているが、テーパ部2aには基本的に至っていない。
テーパ部2aのうち半分ほどの高さまでドリル部3の縦溝5が延びており、従って、テーパ部2aは半分程度の範囲が縦溝5によって分断されている。これにより、雄ねじ2のテーパ部2aのうち先端側の下半部に切り刃(或いは食い込み部)8が形成されている。
頭部4は平板状のフラットタイプになっており、頂面にはドライバビット(図示せず)が係合する十字形の係合溝(リセス)9を形成している。なお、係合溝9は角形などの他の形態であってもよい。また、頭部4は、六角頭や鍋頭、皿形など、用途に応じて任意の形状に設定できる。
軸部1のうち頭部4に連接した首下部には、弾性体製のパッキン10と金属板製の座金11とが組み込まれている(図1(B)では、パッキン10及び座金11は省略している。)。座金11は、パッキン10を上から包むように下向きに開口した椀形に形成されており、下端には外向きフランジ11aを形成している。締結前の自由状態で、パッキン10は座金11の下端よりも下方にはみ出ている。従って、ねじ込みによってパッキン10は圧縮される。
図2(C)に明示するように、雄ねじ2は、帯状の頂面12を有する台形の山形状であって、隣り合った雄ねじ2の間に帯状の谷底面13が存在している。頂面12の幅寸法W1は、谷底面13の幅寸法W2の約2倍になっている。また、ストレート部2bでは、山の最大幅W3が高さHよりも大きくなっている。このような寸法により、ストレート部2bでは、縦断面視において、山の断面積は谷部の断面積よりも大きくなっている(等しくてもよい。)。
山の角度θ1は約50度に設定しており、軸心と直交した線に対して進み側フランク14が成す角度と追い側フランク15が成す角度とは等しくなっている。すなわち、山の形は上下対称の台形になっている。テーパ部2aの開き角度θ2は約15度に設定している。
本実施形態のドリルねじは、0.4~0.8mm程度の厚さtの薄い鋼板を主たる使用対象にしている。各寸法の具体例として、外径(呼び径)D1は約4.5mm、谷径D2は約3.5mm、山の高さHは約0.5mm、ピッチPは0.8mm、頂面12の幅W1は約0.2mm強、谷底面13の幅W2は約0.1mm、といった数値を採用できる。ドルリ径D3(図1(A)参照)は、ストレート部2bの谷径D2とほぼ同じ寸法に設定している。
切欠き溝7は90度程度の開き角度のV形であり、進み側の内面と追い側の内面とが対称状に傾斜している。図2(D)に明示するように、切欠き溝7の深さは山の高さHの半分以下になっているが、切欠き溝7の深さを山の高さHの半分程度かそれ以上に設定したり、谷底面13に至るように形成することも可能である。なお、上記した数値は具体例の1つであり、対象になる締結部材の厚さ等に応じて適宜変更できる。
(2).使用態様
図3で使用状態の一例を表示している。この例では、薄金属板製の被締結部材16を薄金属板製の締結部材(ワーク)17に締結することに使用している。すなわち、薄金属板同士の締結に適用している。被締結部材16と締結部材17とは同じ厚さであり、両者の板厚tは0.4~1.0mm程度(好適には0.4~0.8mm)を想定している。
図3で使用状態の一例を表示している。この例では、薄金属板製の被締結部材16を薄金属板製の締結部材(ワーク)17に締結することに使用している。すなわち、薄金属板同士の締結に適用している。被締結部材16と締結部材17とは同じ厚さであり、両者の板厚tは0.4~1.0mm程度(好適には0.4~0.8mm)を想定している。
他方、ドリルねじのピッチPは既述のとおり約0.8mmに設定している。従って、ドリルねじのピッチPは締結部材17の板厚tに対して、「やや小さい~2倍程度に大きい」の範囲になるが、図3では、両部材16,17の板厚tとドリルねじのピッチPとを同じ程度に表示し(tは約0.8mm)、図4では、両部材16,17の板厚tはドリルねじのピッチPよりもかなり小さくなっている(tは0.5mm程度)。
本例では、被締結部材16には下穴は空けられておらず、被締結部材16にもドリルねじによって下穴が空けられる。すなわち、重ねられた被締結部材16と締結部材17に対して、ドリルねじを動力ドライバ(図示せず)によって回転させつつ押し当てることにより、締結部材17に対する被締結部材16の締結が行われる。
締結の基本的なメカニズムは従来のドリルねじと同様であり、雄ねじ2が締結部材17にねじ込まれることにより、被締結部材16が頭部4に向けて引き寄せられて、被締結部材16がパッキン10及び座金11を介して頭部4と締結部材17とで挟持される。図3では、パッキン10は圧縮変形して座金11の空間内に入り込んだ状態に表示しているが、パッキン10が圧縮によって放射方向に肉流れして、被締結部材16とフランジ11aとの間にパッキン10の膜が存在することもある。
本実施形態では、ドリル径D3と谷径D2とがほぼ同じであるため、ドリルねじによるバーリング機能はあまり発揮されずに、被締結部材16及び締結部材17は、テーパ部2aによって切削と押し広げ作用を受ける。
具体的には、図示するように、被締結部材16及び締結部材17とも、テーパ部2aによる押し広げによって内周部16a,17aが厚肉化するように塑性変形及び弾性変形し、両部材16,17の厚肉化した内周部16a,17aに雄ねじ2が食い込んでいく。この場合、締結部材17はドリルねじによって頭部4の方向に引き寄せられるため、被締結部材16の内周部(厚肉化した部分)はパッキン10を圧縮して頭部4の側に引かれる傾向を呈する。
そして、雄ねじ2の山の形状が三角であると(雄ねじ2が三角ねじであると)、切削性は高くても部材16,17の押し広げ機能が低くて、結果として、両部材16,17の内周部16a,17aの厚肉化効果があまり高くならず、すると、両部材と軸部1との密着面積をさほど大きくできずに、締結強度を高くできない。
これに対して本実施形態のように雄ねじ2の山の形を台形に形成すると、雄ねじ2による両部材16,17の押し広げ機能が高くなるため、両部材16,17の内周部16a,17aを可能な限り厚肉化して、両部材16,17と軸部1との密着面積を増大できる。また、両部材16,17の内周部16a,17aが大きく塑性変形した厚肉化することにより、内周部16a,17aに対する雄ねじ2の引っ掛かりも増大できる(従って、図3のようにピッチPが板厚tと同じか、図4のようにピッチPが板厚tよりかなり大きくても、高い締結強度を確保できる。)。
更に、両部材16,17の内周部16a,17aは弾性変形もしているため、弾性復元力によって軸部1は両部材16,17の内周部16a,17aでクランプされた状態になるが、内周部16a,17aの変形量が大きいことにより、両部材16,17よる軸部1のクランプ力が高くて、軸部1と両部材16,17との間の摩擦力を増大できる。その結果、締結強度と緩みに対する抵抗とを増大できる。また、ねじ込み抵抗は大きいためストリッピングも防止できる。
加えて、両部材16,17の内周部16a,17aが弾性復元力によって切欠き溝7に入り込む傾向を呈するため、緩み対して高い抵抗を発揮する。この場合、両部材16,17の内周部16a,17aが厚肉化することにより、内周部16a,17aは雄ねじ2の少なくとも1ピッチPの範囲で雄ねじ2と係合しているが、切欠き溝7は10条形成されているため、少なくとも10個の切欠き溝7が両部材16,17の内周部16a,17aにそれぞれ係合しており、従って、切欠き溝7によるストリッピング防止効果及び緩み防止効果は格段に向上している。
更に、切欠き溝7について述べると、切欠き溝7は基本的にストレート部2bにしか形成していないため、テーパ部2aによって両部材16,17を押し広げるにおいて切欠き溝7が切削機能を発揮することはなくて、両部材16,17の内周部16a,17aを、破断が抑制された状態に綺麗に厚肉化できる。これにより、両部材16,17による軸部1の抱持力を可能な限り大きくして、高い締結強度と緩み防止効果とを発揮できる。
本使用例では、被締結部材16の内周部16aも厚肉化されてこれに雄ねじ2が食い込むため、被締結部材16と軸部1との間でも緩み止め効果が発揮される。従って、緩み抑制効果を更に助長できる。また、パッキン10の弾性復元力によって雄ねじ2が両部材16,17に押されているため、両部材16,17と雄ねじ2との間の摩擦力が増大する。従って、締結力の向上と緩み防止効果とが助長される。
さて、図3に仮想のバーリング部18を一点鎖線で誇張して表示している。このバーリング部18に雄ねじ2がねじ込まれると、バーリング部18は広がり変形する傾向を呈するが、広がり変形に対する抵抗はあまり強くないしかつ破れやすいため、バーリンク部18による軸部1(ねじ部)の掴持力は強く無く、従って、ねじ込み時にはストリッピングが生じやすくて、ねじ込んだ後には緩みやすく、従って、高い締結強度は期待できない。
更に述べると、バーリング部18に対する雄ねじ2の押圧力はバーリング部18に対して曲げ力として作用するが、曲げ応力は圧縮応力に比べると遥かに小さいため、いわば、雄ねじ2がバーング部18に対して殆ど抵抗無く侵入していく現象があり,従って、ストリッピング及び緩みが生じやすいし、締結力も高くない。
これに対して、図3や図4の例では、ドリル径D3と谷径D2とがほぼ同じであること、及び、雄ねじ2の形が台形であることとにより、両部材16,17の内周部16a,17aが厚肉化するが、内周部16a,17aの厚肉化は上下方向(厚さ方向)に肉が流れることによって生じるため、ねじ込みの抵抗は、矢印19で示すように、両部材16,17を圧縮放射方向に圧縮させるように作用する。
すなわち、本使用例では、雄ねじ2が両部材16,17を圧縮させるように強く突っ張るのである、圧縮応力は曲げ応力に比べて格段に高いため、ねじ部と両部材16,17との間に高い抵抗が発生して、両部材16,17が薄板であっても、ストリッピングの防止効果及び緩み止め効果を格段に向上できると共に、高い締結力を保持できる。
なお、本実施形態のドリルねじは外径が4.5mm程度であるため、両部材16,17が過剰に厚くなると推力を確保できなくなるおそれがある。本例の場合は、重ね合わせている場合の使用可能な全体の厚さは1.6mm程度である(条件によっては、最大で2.0mmまで対応可能である。)。他方、最小厚さは重ねた状態で0.8mm程度である。被締結部材にねじ挿通穴が空いていてねじ込みが締結部材17のみに行われる場合は、請求項2のとおり、0.4~1.0mm程度の厚さが対象になる。外径等を変更したら、対応できる厚さは自ずと変わっている。
以上、本願考案の実施形態を説明したが、本願考案は他にも様々に具体化できる。例えばドリル部について述べると、ドリル部は2つの縦溝と切り刃とを有する形態には限らず、例えば角錐形のものも採用できる。被締結部材には予めねじ挿通穴が空いていてもよい。また、被締結部材は必ずしも金属板である必要はなく、木製や樹脂製であってもよい。複数の被締結部材を重ねて締結部材に締結することも可能である。
雄ねじは、必ずしも軸部の全長に亙って形成されている必要はない。被締結部材が厚い場合は、被締結部材に嵌入する部分にねじ無し部(素材径の部分)が存在してもよい。実施形態では軸部は帯状の谷底面を有しているが、谷部を帯条の谷底面が存在しないV形に形成することも可能である。ばね座金を組み込む事も可能である。
本願考案は、薄金属板用ドリルねじに具体化できる。従って、産業上利用できる。
1 軸部
2 雄ねじ
2a テーパ部
2b ストレート部
3 ドリル部
4 頭部
5 縦溝
6 ドリル部の切り刃
7 切欠き溝
10 パッキン
11 座金
12 頂面
13 谷底面
14 進み側フランク
15 追い側フランク
16 被締結部材(締結部材に固定される部材)
17 締結部材
2 雄ねじ
2a テーパ部
2b ストレート部
3 ドリル部
4 頭部
5 縦溝
6 ドリル部の切り刃
7 切欠き溝
10 パッキン
11 座金
12 頂面
13 谷底面
14 進み側フランク
15 追い側フランク
16 被締結部材(締結部材に固定される部材)
17 締結部材
Claims (3)
- 外周に1条の雄ねじが一定ピッチで形成された軸部と、前記軸部の先端に設けたドリル部と、前記軸部の基端に設けた頭部とを有している薄金属板用ドリルねじであって、
前記雄ねじにおける山の形は頂面を有する台形に形成されて、
前記ドリル部のドリル径は前記雄ねじの谷径と略同じになっており、
前記雄ねじは、前記ドリル部の終端又はその近傍から立ち上がって外径が徐々に増大するテーパ部と、前記テーパ部の終端に連続して外径が一定になっているストレート部とを有しており、前記ドリル部を構成する溝が前記テーパ部の中途部まで至っており、
かつ、前記雄ねじのうち少なくとも前記ストレート部に、軸方向から見てV形の切欠き溝が周方向に離れて複数条形成されている、
薄金属板用ドリルねじ。 - 締結部材として厚さ0.4~1.0mmの薄金属板を対象にしており、
前記軸部には、隣り合った前記雄ねじの間に帯状の谷底面が形成されて、
前記雄ねじのピッチは前記薄金属板の板厚と等しいか又は大きく、
前記雄ねじにおける頂面の幅よりも前記谷底面の幅が小さくて、前記雄ねじの山の最大幅は山の高さよりも大きく、
かつ、前記切欠き溝は、主として前記雄ねじのストレート部に、周方向に等間隔で6条以上形成されている、
請求項1に記載した薄金属板用ドリルねじ。 - 更に、前記軸部の首下部に、弾性体製のパッキンと、前記パッキンと前記頭部との間に介在した座金とが組み込まれている、
請求項1又は2に記載した薄金属板用ドリルねじ。
Priority Applications (1)
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JP2022000258U JP3236896U (ja) | 2022-01-28 | 2022-01-28 | 薄金属板用ドリルねじ |
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JP2022000258U JP3236896U (ja) | 2022-01-28 | 2022-01-28 | 薄金属板用ドリルねじ |
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Family Applications (1)
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JP2022000258U Active JP3236896U (ja) | 2022-01-28 | 2022-01-28 | 薄金属板用ドリルねじ |
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