JP3234717B2 - プラズマキーホール溶接方法 - Google Patents

プラズマキーホール溶接方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、鋼管等の被溶接管の突
合せ端部を全周に渡って溶接するプラズマキーホール溶
接方法に関する。
【0002】
【従来の技術】被溶接管の突合せ端部を全周に渡って溶
接する方法として、プラズマキーホール溶接装置(特開
平5−111774号公報参照)を使用したものが従来
一般に知られている。このプラズマキーホール溶接装置
は、被溶接管の突合せ端部の外周に沿って周回するトー
チのノズルから熱的、電磁気的に収束したエネルギ密度
の高いプラズマアークと共にプラズマガスをジェット状
に噴出することで、上記突合せ端部を溶融貫通するキー
ホールをトーチの周回方向に順次形成するものであり、
トーチが通過した後方の突合せ端部では、キーホールが
順次閉塞して溶融金属の冷却固化により表ビード及び裏
波ビードが順次形成され、こうして全周溶接が行われ
る。
【0003】このようなプラズマキーホール溶接装置を
使用したプラズマキーホール溶接方法は、肉厚9mm程
度までの鋼管等を開先加工なしで突合せ溶接可能であ
り、また固定された鋼管等に対してもその突合せ端部を
全周に渡って溶接できることから、既設のガス導管であ
る鋼管の突合せ溶接にも多用されている。
【0004】ここで一般に、前述したプラズマキーホー
ル溶接装置のトーチから噴出されるプラズマアークは、
供給される直流パルス状のプラズマ電流に応じてパルス
状に噴出し、その1パルスのエネルギ量はプラズマ電流
のピーク電流値とその継続時間に応じて定まる(特開昭
60−9578号公報参照)。そしてこのピーク電流値
またはその継続時間が変化すれば、それに応じてキーホ
ールの形成状況,ブローホールの発生状況,表ビードや
裏波ビードの形成状況なども変化する。
【0005】そこで前記特開昭60−9578号公報に
は、供給する各プラズマ電流を、ピーク電流値からベー
ス電流値へとスロープ状または階段状に低下させること
で、良好な表ビードや裏波ビードを形成し、またブロー
ホールの発生を防止することなどを企図したプラズマキ
ーホール溶接方法が提案されている。
【0006】ここで、プラズマキーホール溶接方法によ
り被溶接管の突合せ端部を全周溶接する際、溶接開始位
置でキーホールを貫通するには、図4に示すようにトー
チaを被溶接管bの溶接開始位置Sに停止させ、その状
態で図5に示すように連続的に増大するプラズマ電流を
供給し、このプラズマ電流に応じたプラズマアークと共
にプラズマガスをトーチaから連続噴出して被溶接管b
の溶接開始位置Sを数秒間にわたり予熱するのが従来一
般的であった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】ところで、トーチaを
停止したまま溶接開始位置Sを数秒間にわたって連続予
熱する従来のプラズマキーホール溶接方法では、溶接開
始位置S付近のみで被溶接管bの外周が部分溶融するに
過ぎないから、キーホールKHが貫通する際に被溶接管
bの外周側に排出される溶融金属は部分溶融した金属に
充分溶け込むことができず、溶接開始位置Sの直前に滞
留してコブcを形成してしまう。また被溶接管bの肉厚
公差の関係で、その肉厚が薄い場合には、溶接開始位置
Sでの予熱が過剰予熱となることがあり、キーホールK
H貫通の際に溶融金属が被溶接管bの内周側に垂れ込む
こともあった。
【0008】このような溶融金属のコブcや垂れ込み
は、被溶接管bを全周溶接する際の溶接終了位置付近の
溶接オーバラップ部分に位置するのであり、このため従
来のプラズマキーホール溶接方法にあっては、溶接オー
バラップ部分でのキーホールKの形成がコブcや垂れ込
みの存在によって不安定となり、溶接欠陥が発生し易い
という問題があった。
【0009】そこで本発明は、溶接オーバラップ部分で
のキーホールの形成を確実なものとすることで、被溶接
管に対し溶接欠陥のない安定した良好な全周溶接を可能
とするプラズマキーホール溶接方法を提供することを目
的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】この目的のため本発明
は、プラズマキーホール溶接装置のトーチを被溶接管の
突合せ端部の外周に沿って周回させつつ上記トーチから
直流パルス状のプラズマ電流に応じたプラズマアークと
共にプラズマガスを噴出して被溶接管の突合せ端部を全
周に渡り溶接するプラズマキーホール溶接方法におい
て、キーホールが貫通する溶接開始位置の手前所定位置
から上記トーチの周回を開始し、トーチが溶接開始位置
に至るまでの間は、ピーク値が漸次増大する直流パルス
状のプラズマ電流を供給してトーチからパルス状に噴出
するプラズマアーク及びプラズマガスのエネルギ量を漸
次増大させることを手段としている。
【0011】
【作用】このような手段を採用した本発明によるプラズ
マキーホール溶接方法では、トーチが被溶接管の突合せ
端部の外周に沿って溶接開始位置の手前所定位置から周
回し始め、溶接開始位置に至るまでの間は、ピーク値が
漸次増大する直流パルス状のプラズマ電流が供給される
ことで、その間、トーチからはエネルギ量が漸次増大す
るプラズマアーク及びプラズマガスがパルス状に噴出す
る。このため被溶接管の突合せ端部は、溶接開始位置の
手前所定位置から外周側が部分溶融し、その溶融深さは
溶接開始位置に近づくにつれ漸次深くなり、溶接開始位
置では内周側まで溶融してキーホールが貫通する。
【0012】
【実施例】以下、本発明の一実施例を添付の図面を参照
して具体的に説明する。まず、一実施例のプラズマキー
ホール溶接方法に使用するプラズマキーホール溶接装置
の全体構造は、前述した特開平5−111774号公
報,特開昭60−9578号公報などに記載のような従
来周知のものであるから、図面に基づく詳細説明は省略
する。
【0013】ここでプラズマキーホール溶接装置のヘッ
ドに装着されて被溶接管の突合せ端部を全周に渡って周
回するトーチ1は、図2に示すように、筒状のセラミッ
クキャップ2で覆われたトーチ本体3の先端にノズル4
がねじ込み装着され、このノズル4内の中心に先端5a
が円錐状に尖った棒状のタングステン陰極5が配置され
ている。
【0014】前記セラミックキャップ2とトーチ本体3
との間には、シールド用のアルゴンガスなどの不活性ガ
スが流通するシールドガス通路6が環状に形成され、ま
たトーチ本体3及びノズル4内には、タングステン陰極
5の周囲にアルゴンと水素の混合ガスが流通するガス通
路7が形成されている。
【0015】また、ノズル4内のガス通路7の先端はテ
ーパ状に絞られ、その先端にプラズマアーク噴出孔8が
連続している。このプラズマアーク噴出孔8は、通常内
径が変化しないストレート孔であるが、図2に示したも
のではタングステン陰極5の先端5aの直前方に位置す
るチョーク孔8aと、このチョーク孔8aに小径部が連
続して先端側が大径部をなすテーパ孔8bとの組合せ構
造となっている。
【0016】次に、前述のようなトーチ1を有するプラ
ズマキーホール溶接装置を使用した一実施例のプラズマ
キーホール溶接方法について説明する。このプラズマキ
ーホール溶接方法は、図1,図2に示すように、略水平
に設置されている鋼管9,9を被溶接管としてその突合
せ端部を全周に渡って溶接するものであり、プラズマキ
ーホール溶接装置のトーチ1は、鋼管9,9の突合せ端
部の外周に沿って図1のように時計廻りに周回するよう
セットされる。
【0017】こうしてセットされたトーチ1は、タング
ステン陰極5に直流パルス状のプラズマ電流が供給され
ることで、タングステン陰極5の先端5aから陽極であ
る鋼管9,9の突合せ端部に向かってプラズマアークP
Aをプラズマアーク噴出孔8からパルス状に噴出し、ま
たアルゴンと水素の混合ガスがガス通路7を流通するこ
とで、プラズマガスPGをプラズマアーク噴出孔8から
ジェット状に噴出する。
【0018】なお、図2に示したトーチ1では、噴出す
るプラズマアークPAはプラズマアーク噴出孔8のチョ
ーク孔8aによりビーム状に絞られてその電流密度が上
昇し、またプラズマガスPGもチョーク孔8aに絞られ
てその中心流速が上昇し、このプラズマガスPGの周辺
部はプラズマアーク噴出孔8のテーパ孔8bに沿って円
錐状に拡散する。このため、鋼管9,9の突合せ端部に
は内周側の開口が小さく、外周側の開口が大きいすり鉢
状のキーホールKHが強いキーホール貫通力をもって形
成される。
【0019】ここで、鋼管9,9の突合せ端部を全周溶
接するにあたり、キーホールKHを最初に貫通させるべ
き溶接開始位置Sを、例えば時計短針の10時半位置に
設定するとき、トーチ1は溶接開始位置Sより周長にお
いて半時計方向に50〜100mm程度手前の予熱位置
Pからその周回を開始させる。
【0020】その際、トーチ1が予熱位置Pから溶接開
始位置Sに至るまでの間は、図3に示すようにピーク値
が漸次増大してゆく直流パルス状のプラズマ電流をタン
グステン陰極5に供給し、溶接開始位置S以降において
は鋼管9,9の突合せ端部の肉厚などの条件に応じて予
め設定されたピーク値を示す直流パルス状のプラズマ電
流をタングステン陰極5に供給し、これらのプラズマ電
流に応じたプラズマアークPAをプラズマガスPGと共
にトーチ1からパルス状に噴出させる。なお、プラズマ
ガスPGの流量は、予熱位置Pから溶接開始位置Sに至
るまでは所定の小流量とし、溶接開始位置S以降は所定
の大流量に制御する。
【0021】そうすることで、プラズマアークPA及び
プラズマガスPGのエネルギ量は、トーチ1が予熱位置
Pから溶接開始位置Sに近づくにつれ漸次増大してゆ
き、溶接開始位置Sから以降はキーホールKH形成に必
要な一定値を保持する。そこで、鋼管9,9の突合せ端
部は、予熱位置Pから溶接開始位置Sの間において外周
側が部分溶融され、その部分溶融の深さは予熱位置Pか
ら溶接開始位置Sに近づくにつれ漸次深くなり、やがて
溶接開始位置Sでは内周側まで溶融されてキーホールK
Hが貫通する。
【0022】ここで溶接開始位置SでキーホールKHが
貫通する際には、鋼管9,9の突合せ端部の外周に溶融
金属が排出されるが、この溶融金属は溶接開始位置Sと
予熱位置Pとの間の広い範囲にわたって部分溶融した溶
融金属に溶け込むのであり、従来例のように溶接開始位
置Sの直前に滞留してコブを形成することがない。また
従来例では、溶接開始位置Sでの過剰予熱によってキー
ホールKH貫通の際に溶融金属が鋼管9,9の突合せ端
部の内周側に垂れ込むことがあったが、そうした事態も
未然に防止される。
【0023】キーホールKHが貫通した溶接開始位置S
以降においては、トーチ1が図1の時計廻りに周回する
ことで鋼管9,9の突合せ端部が順次キーホール溶接さ
れてゆく。そして溶接終了位置付近、即ち溶接開始位置
S付近の溶接オーバラップ部分においても、鋼管9,9
の突合せ端部の外周に従来のようなコブが形成されるこ
とがないので、キーホールKHの形成は安定した確実な
ものとなり、溶接欠陥のないキーホール溶接が行われ、
こうして溶接欠陥のない安定した良好な全周溶接が鋼管
9,9の突合せ端部に対して行われる。
【0024】なお、この鋼管9,9の突合せ端部に対す
る全周溶接に際して、形成されるキーホールKHは前述
のように内周側の開口が小さく、外周側の開口が大きい
すり鉢状となるので、キーホールKHの形成に伴う鋼管
9,9の突合せ端部の内周側の温度上昇は比較的低く抑
制され、溶融金属の冷却固化速度も内周側では速くな
る。このため鋼管9,9の突合せ端部の内周側に形成さ
れる裏波ビード10は流動の少ない非常に安定したもの
となり、トーチ1が上向き姿勢となる鋼管9,9の下側
部分の溶接箇所においても鋼管9,9の内周面より盛り
上がった欠陥のない裏波ビード10が形成される。また
キーホールKHが鋼管9,9の外周側で開口の大きいす
り鉢状をなすので、トーチ1が立向き姿勢で下降する鋼
管9,9の側部の溶接箇所において溶融池の溶融金属が
下方に流動しても、これがキーホールKHを塞いでしま
うことはなく、ブローホールの発生も未然に防止され
る。
【0025】
【発明の効果】以上説明したとおり本発明では、トーチ
が被溶接管の突合せ端部の外周に沿って溶接開始位置の
手前所定位置から周回し始め、溶接開始位置に至るまで
の間は、ピーク値が漸次増大する直流パルス状のプラズ
マ電流が供給されることで、その間、トーチからはエネ
ルギ量が漸次増大するプラズマアーク及びプラズマガス
がパルス状に噴出する。このため被溶接管の突合せ端部
は、溶接開始位置の手前所定位置から外周側が部分溶融
し、その溶融深さは溶接開始位置に近づくにつれ漸次深
くなり、溶接開始位置では内周側まで溶融してキーホー
ルが貫通する。
【0026】従って本発明によれば、溶接開始位置でキ
ーホールが貫通する際に排出される溶融金属は、溶接開
始位置より手前側の広いに範囲にわたって部分溶融した
溶融金属に溶け込むのであり、溶接開始位置の直前に滞
留してコブを形成することがない。またこのように広い
範囲に渡って予熱が行われるので、過剰予熱の虞がな
く、被溶接管の肉厚公差の関係で肉厚が薄い場合でも、
キーホールの貫通に伴い溶融金属が被溶接管の内周側に
垂れ込むこともない。このため、溶接終了位置付近の溶
接オーバラップ部分においてもキーホールを確実に形成
でき、被溶接管に対して溶接欠陥のない安定した良好な
全周溶接が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例の作用を示す鋼管の突合せ端
部の断面図である。
【図2】一実施例に使用するプラズマキーホール溶接装
置のトーチの断面図である。
【図3】一実施例におけるプラズマ電流量及びプラズマ
ガス流量の変化を示すグラフである。
【図4】従来例の作用を示す鋼管の突合せ端部の断面図
である。
【図5】従来例におけるプラズマ電流量及びプラズマガ
ス流量の変化を示すグラフである。
【符号の説明】
1 トーチ 2 セラミックキャップ 3 トーチ本体 4 ノズル 5 タングステン陰極 5a 先端部 6 シールドガス通路 7 ガス通路 8 プラズマアーク噴出孔 8a チョーク孔 8b テーパ孔 9 鋼管 10 裏波ビード S 溶接開始位置 P 予熱位置 KH キーホール
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B23K 10/00 B23K 9/028 B23K 10/02

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 プラズマキーホール溶接装置のトーチを
    被溶接管の突合せ端部の外周に沿って周回させつつ上記
    トーチから直流パルス状のプラズマ電流に応じたプラズ
    マアークと共にプラズマガスを噴出して被溶接管の突合
    せ端部を全周に渡り溶接するプラズマキーホール溶接方
    法において、 キーホールが貫通する溶接開始位置の手前所定位置から
    上記トーチの周回を開始し、 トーチが溶接開始位置に至るまでの間は、ピーク値が漸
    次増大する直流パルス状のプラズマ電流を供給してトー
    チからパルス状に噴出するプラズマアーク及びプラズマ
    ガスのエネルギ量を漸次増大させることを特徴とするプ
    ラズマキーホール溶接方法。
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JP4411114B2 (ja) * 2004-03-24 2010-02-10 第一高周波工業株式会社 合金被覆ボイラ部品、及び自溶合金被覆ボイラ部品の溶接施工方法
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