JP3233486B2 - 植物体の鮮度保持剤 - Google Patents

植物体の鮮度保持剤

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JP3233486B2 JP08051593A JP8051593A JP3233486B2 JP 3233486 B2 JP3233486 B2 JP 3233486B2 JP 08051593 A JP08051593 A JP 08051593A JP 8051593 A JP8051593 A JP 8051593A JP 3233486 B2 JP3233486 B2 JP 3233486B2
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鉄子 高倍
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、切り花や鉢物などの植
物体を収穫後も新鮮に保ち、鑑賞期間を延長させるため
の鮮度保持剤に関する。
【0002】
【従来の技術】従来から、切り花や鉢物は贈呈用として
用いられているが、生活様式が洋風化するにつれて、季
節を彩る花を日常的に購入する習慣が普及し、花に対す
る消費意欲が増大している。花の大量消費時代を迎え、
輸入物の増大や需要の多様化と共に、高品質の花に対す
る需要が大きく成長するものと期待されている。
【0003】切り花や鉢物などの植物体の鮮度は、収穫
前の栽培環境と管理の適否や、収穫後の環境条件(例え
ば、温度、湿度、ガス、微生物など)が大きな影響をも
たらす。例えば、切り花は活発な代謝を行っている植物
体の一部であり、採花後は、同じ環境下にあっても、も
との植物体上にある場合よりも老化が進みやすく鑑賞期
間は短くなる。そこで、上記の条件に対する配慮が必要
になり、例えば、貯蔵性を高める包装資材や貯蔵・輸送
技術などの研究開発が進められている(野中瑞生,研究
ジャーナル,13(1),1990を参照)。
【0004】一方、植物体は、収穫後、水分バランス、
呼吸と体内成分、色素、植物ホルモン量、膜質などが変
化する(山口隆,植調,Vol.26,No.5(1992)を参
照)。例えば、切り花は採花によって水の通路を切断さ
れるが、切り口の導管から依然として吸水を続ける。と
ころが、切断された茎の基部に微生物が繁殖して導管を
ふさいだり、水が汚濁して吸水が悪くなる。また、切り
口の導管の末端から気泡が入って水の流れが阻止された
り、茎の切断面から乳液を分泌して導管をふさぐ場合も
ある。
【0005】切り花の鑑賞期間を延長させる手段として
最も簡便な方法は、切り花基部を水に浸漬し、その水を
早目に交換することである(特開平4−346902号
を参照)。また、微生物の繁殖や水の汚濁防止を目的と
して、切り花基部を殺菌剤液に浸漬したり、水に浄化剤
を混入したりすることも行われている。さらに、気泡侵
入や分泌物による吸水阻害の防止を目的として、収穫後
の植物体の茎などに水中(または処理薬液中)で切り返
し(水切り)を行ったり、切り口を焼いたり、砕いた
り、食塩、アルコール、酸などで処理することが行われ
てきた(特開平2−3601号を参照)。
【0006】しかし、これらは、いずれも大量の植物体
を短時間に処理する方法としては適しておらず、また、
鮮度を保持する効果は一時的なものであり、長続きしな
い。そこで、植物体の様々な生理的変化に着目して、薬
剤処理による実用的な鮮度保持技術の開発が盛んに行わ
れている。
【0007】鮮度保持に用いる薬剤の従来例としては、
殺菌剤(例えば、クエン酸8−ハイドロキシキノリン塩
(8−HQC)など)、栄養剤(例えば、糖類など)、
抗エチレン剤(例えば、チオ硫酸銀(STS)、アミノ
オキシ酢酸(AOA)(特開平3−48601号)、α
-アミノイソ酪酸(AIB)、シス-プロペニルホスホン
酸(PPOH)(特開平3−163001号)など)、
水の浄化剤(例えば、硫酸アルミニウムなど)、生育調
節物質(例えば、ジベレリン(GA)、ベンジルアデニ
ン(BA)、α-ナフタレン酢酸(NAA)、アブシジ
ン酸(ABA)、ブラシノライド類(BR)(特開昭5
9−1401号)など)、生理活性物質(例えば、ビタ
ミン剤など)、界面活性剤(例えば、アルキルベンゼン
スルホン酸塩、ショ糖脂肪酸エステルなど)が挙げられ
る。これらの薬剤は、単独で、あるいは通常、2種以上
を組み合わせて使用される。
【0008】また、鮮度保持剤は、使用時期によって、
前処理剤と後処理剤とに分類される(山口隆,植調,Vo
l.26,No.5(1992)を参照)。後処理剤は、流通または
消費者の段階で使用される保持剤であり、多くの種類の
花に有効であるが、効果は浸漬中しか続かない。その代
表例としては、8−HQC、キノリン、硫酸アルミニウ
ム、ベンジルアデニン、糖類、界面活性剤などが挙げら
れる。これに対し、前処理剤は、生産者段階で使用され
る保持剤であり、収穫後速やかに使用され、効果が長期
間持続する。例えば、代表的な前処理剤であるSTS
は、エチレンが原因で萎凋する花、例えばカーネーショ
ン、スイートピーなどには、大きな延命効果を示す(特
開平2−268102号を参照)。それゆえ、オランダ
の花市場では、これらの花を出荷する際に、STSで前
処理することが義務づけられているほどである。しか
し、バラ、ガーベラ、ダリアなどには効果がなく、ま
た、花の種類により、処理濃度や処理時間が大きく異な
る。さらに、重金属の銀を含むので、安全性や使用後の
廃棄、環境汚染などの問題がある(特開平4−3469
02号を参照)。
【0009】そこで、STSに代わる環境汚染のない鮮
度保持剤として、エチレン生合成の阻害剤であるAOA
や、エチレンの作用を直接阻害するPPOHなどの有機
系薬剤が期待されている(化学と生物,30(12),770-77
2(1992)を参照)。しかし、全般的にコスト高なこと
と、外生エチレンに対して効果がないことなどから実用
化には至っていない。
【0010】また、ブラシノライド類、天然型アブシジ
ン酸などの植物ホルモンも実用化に向けて試験されてい
るが、植物ホルモンの場合は、全般的に、使用濃度やホ
ルモン間のバランスの影響が大きいなどの課題がある。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】このような事情に鑑
み、本発明者は、安全無害で環境汚染の問題がなく、使
用方法が簡便で広範囲の花に効果があり、しかも経済性
に優れた植物体の鮮度保持剤を得るべく鋭意研究を行っ
た結果、グリシンベタイン、β−アラニンベタイン、γ
−ブチロベタインおよびトリアルキルアミンオキシド類
が、かかる鮮度保持剤の有効成分として極めて有用であ
ることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
【課題を解決するための手段】すなわち、本発明は、グ
リシンベタイン、β−アラニンベタイン、γ−ブチロベ
タインおよびトリアルキルアミンオキシド類 からなる
群より選択される少なくとも1種の化合物を有効成分と
して含有することを特徴とする植物体の鮮度保持剤を提
供するものである。
【0013】本発明の植物体の鮮度保持剤における有効
成分として使用するグリシンベタイン(トリメチルグリ
シン)、β−アラニンベタインおよびγ−ブチロベタイ
ン(以下、これらをベタイン類と称する場合がある)の
うち、特に、グリシンベタインが好ましい。
【0014】ベタイン類は動植物界に広く分布する天然
物であり、例えば、グリシンベタインは甲殻類や軟体動
物などの水産物および麦芽やキノコ類などの植物に含ま
れ、特にサトウダイコンの糖密に多いことが知られてい
る。しかも、グリシンベタインは、「合成品以外の食品
添加物リスト」(厚生省)に調味料として分類されてお
り、変異原性試験や急性毒性試験において、その安全性
が確認されている。さらに、グリシンベタインは、1)
水への溶解度(約160g/100g水)が高いので、
濃厚溶液を調製できる;2)白色結晶であり、その水溶
液が着色しないので、色の薄い花にも使用できる;3)
分解点(約310℃)が高く、酸やアルカリに対して非
常に安定であるので、製品の製造条件の許容範囲が広
い;4)双性イオンとして存在するので、植物体の膜透
過吸収性に優れている;5)天然物であるので、自然界
で容易に分解され、環境汚染の問題が全くない;6)製
造コストが低く、相対的に安価であるので、経済性に優
れるなどの利点を有する。
【0015】トリアルキルアミンオキシド類とは、第三
級アミンの窒素原子上の非共有電子対が酸素原子に対し
て配位結合を行っている化合物を意味する。その具体例
としては、トリメチルアミンオキシドが挙げられる。
【0016】トリメチルアミンオキシドは、広く海産動
物の筋肉中に含まれ、高等動物の尿中にも検出される天
然物であり、特にイカ、エビ、カニ類に多いことが知ら
れている。また、トリメチルアミンオキシドは、無色透
明の結晶であり、水への溶解度(約165g/100g
水)が高く、分解温度(約180℃)が高いので、グリ
シンベタインと同様の利点を有する。
【0017】
【0018】植物栽培におけるベタイン類の効果につい
ては、すでに公知である。例えば、圃場試験では、霜に
対する耐性が高まり、冬小麦が増収すること(シーウィ
ーズ・リソーシーズ・イン・ヨーロッパ(Seaweeds Res
ources in Europe),ジョン・ワイリー・アンド・サン
ズ(John Wiley & Sons),1991を参照)や、園芸栽培
で使用される海藻抽出物に含まれるベタイン類が、養分
の吸収能を高め、抗ストレス効果(例えば、乾燥、過
湿、塩類障害、温度障害、植え傷みなどに強くなる)を
示すこと(日本曹達社の製品「ゴエマー」のカタログを
参照)が知られている。
【0019】細胞レベルでの研究では、塩分ストレスを
受けた場合に浸透圧の調節を目的として、ベタイン類が
葉緑体および細胞質に蓄積されること(エス・ピィー・
ロビンソン(S.P.Robinson),オーストラリアン・ジャ
ーナル・オブ・プラント・フィジオロジー(Aust.J.Pla
nt Physiol.),13:649-658(1986)を参照)や、ベタ
イン類が光合成の酸素放出複合体を安定化させること
(エヌ・ムラタ(N.Murata),フェブズ・レターズ(FE
BS Letters),296(2),187-189(1992)を参照)が知
られている。
【0020】また、ベタイン型の界面活性剤を用いた切
り花用の鮮度保持剤が報告されている(例えば、特開平
3−24001号を参照)。しかし、この鮮度保持剤の
有効成分は、4−または5−フルオロトリプトファンで
あり、アルキルトリメチルアンモニウムクロリドやベタ
イン型の界面活性剤は、必要に応じて添加される成分に
すぎず、単独で使用しても鮮度保持効果のある有効成分
としては認識されていない。
【0021】
【0022】
【0023】本発明の鮮度保持剤の有効成分であるベタ
イン類およびトリアルキルアミンオキシド類の作用機作
については、以下のように考えられる。
【0024】植物は移動できないので、環境変化に適応
するための様々な仕組みを備えている。ここで、環境変
化とは、乾燥、湛水、低酸素、光、塩分、栄養、重金
属、温度に起因するものを意味する。例えば、塩分スト
レスを受けた場合、植物は浸透圧調節機構を働かせて、
生体重量の約80〜90%に及ぶ水分を確保する。その
際、浸透圧調節を行う代表的な成分として、適合溶質と
呼ばれる低分子量の有機化合物が植物自身によって合成
される。そして、この適合溶質の代表例が、ベタイン類
(特に、グリシンベタイン)およびトリアルキルアミン
オキシド類(特に、トリメチルアミンオキシド)である
(プラント・フィジオロジー(Plant Physiology),第
4版,サリスバリー(Salisbury)およびロス(Ros
s),ワドワース(Wadworth)を参照)。
【0025】さらに、近年の分子生物学的手法によっ
て、植物の耐塩性における適合溶質の浸透圧調節機構が
解明されつつある(高部鉄子ら,植物の化学調節,25
(2),149-162(1990)を参照)。それによると、植物
は、塩分ストレスを受けると、その体内に適合溶質を急
速に蓄積させて、体内から水分が失われるのを防止する
と共に、タンパクや膜を安定化させて、生命を維持しよ
うとするのである。
【0026】例えば、植物を切り花として収穫した場
合、この植物体は、それまで水分や養分を吸収していた
器官である根を突然失い、充分な水分が供給されない状
態にあると考えられる。それゆえ、このような環境下に
ある植物体に対して、適合溶質の1つであるベタイン類
(特に、グリシンベタイン)やトリアルキルアミンオキ
シド類(特に、トリメチルアミンオキシド)を与えて、
その体内に吸収させてやれば、上記のような塩分ストレ
スを受けた場合と同様に、この植物体は速やかに適正な
水分を確保し、正常な状態を維持することができるはず
である。このように、本発明の鮮度保持剤は、従来の鮮
度保持剤とは全く異なった機構により、植物体の延命効
果を計っているのである。
【0027】本発明の鮮度保持剤の有効成分であるベタ
イン類およびトリアルキルアミンオキシド類に関し、そ
の起源は特に限定されず、天然品または化学合成品のい
ずれでもよい。また、精製品だけでなく、有効成分を多
く含む抽出物、例えば、サトウダイコンの抽出液や水産
物エキスでもよい。さらに、これらの有効成分は、食品
衛生上または薬学的に許容される塩の形態であってもよ
い。その具体例としては、塩酸塩、硫酸塩、リン酸塩、
酢酸塩、ギ酸塩、シュウ酸塩などの酸付加型の塩や、リ
チウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム
塩、カルシウム塩、アルミニウム塩などの金属塩、アン
モニウム塩、各種アミン塩などのカルボキシレート型の
塩が挙げられる。さらに、これら有効成分は、水和物や
酸無水物の形態であってもよい。
【0028】本発明の鮮度保持剤は、上記の有効成分を
単独または2種以上を組み合わせて調製されるが、これ
ら有効成分に加え、必要に応じて、従来公知の殺菌剤
(例えば、8−HQC、サリチル酸、次亜塩素酸ソーダ
など)、栄養剤(例えば、ショ糖、ブドウ糖、硝酸塩、
リン酸塩、カリウム塩など)、抗エチレン剤(例えば、
STS、AOA、AIBなど)、水の浄化剤(例えば、
硫酸アルミニウム、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸な
ど)、生育調節物質(例えば、BA、ABA、BR、B
−ナインなど)、生理活性物質(例えば、ビタミン剤な
ど)、界面活性剤(例えば、アルキルベンゼンスルホン
酸塩、ショ糖脂肪酸エステルなど)を適宜含有させても
よい。これら添加成分の種類および使用濃度は特に限定
されるものではなく、当業者によって適宜決定される。
【0029】さらに、本発明の鮮度保持剤に香料や色素
を添加して、香りや色を付与することもできる。香料
は、天然香料または合成香料のいずれか、あるいはその
組み合わせでもよく、その具体例としては、3Z−ヘキ
セノールや2E−ヘキセナール(緑葉の香り)、オイゲ
ノールやイソオイゲノール(カーネーションの香り)、
桂皮酸アルコールやロジノール、フェニルエチルアルコ
ール(バラの香り)などが挙げられる。色素について
も、天然色素または合成色素のいずれか、あるいはその
組み合わせでもよく、その具体例としては、カロチノイ
ド、フラボノイド(例えば、アントシアニンなど)、ベ
タレイン、クロロフィルが挙げられる。
【0030】本発明の鮮度保持剤は、水溶液剤、粉剤、
水和剤、乳剤、カプセル剤などの形態に製剤されるが、
その方法は特に限定されない。例えば、有効成分である
グリシンベタインやトリメチルアミンオキシドは、水へ
の溶解度が高いので、予め高濃度の水溶液を調製してお
き、使用時に適当な濃度に水で希釈して使用してもよ
い。あるいは、pHを約7に調節した水溶液を粉末状態
にした後、カプセルに充填したカプセル剤の形態で使用
することもできる。
【0031】本発明の鮮度保持剤は、様々な濃度の水溶
液として使用され、切り花の場合には、その全体または
一部をこの水溶液に浸漬し、鉢物の場合には、この水溶
液を噴霧してもよいし、根に与えてもよい。その有効成
分濃度は、有効成分の種類、処理すべき植物体の種類や
処理方法によって最適値が異なり、特に限定されない
が、通常は、0.01mM〜1Mの範囲内である。切り
花の場合、例えば、カーネーション、フリージアでは
0.1〜5mM、バラでは0.1〜10mMの範囲内であ
る。鉢物の場合、例えば、シクラメンでは1〜10mM
の範囲内である。
【0032】本発明の鮮度保持剤を使用する温度は、処
理すべき植物体が変化を受けない温度範囲であり、通常
は、0〜50℃であり、好ましくは収穫後に低温室で処
理する場合の1℃〜室温の範囲内である。
【0033】本発明の鮮度保持剤を使用する時期は、特
に限定されないが、生産者が収穫後の早期に用いる前処
理剤としても、また、出荷後、小売店や消費者が販売や
家庭で用いる後処理剤としても利用可能である。また、
その適用時間は、実際に用いる水溶液の有効成分濃度に
よって異なり、特に限定されないが、好ましくは、前処
理の場合は数分〜24時間の範囲内であり、後処理では
必要に応じて継続して使用される。
【0034】本発明の鮮度保持剤は、切り花や鉢物など
の植物体に適用される。ここでいう植物体は、花弁や花
被、萼、雌雄ずいなどから構成される、いわゆる花器だ
けでなく、鑑賞価値を有する植物体の一部、例えば、
葉、茎、実なども含む。適用対象の植物体は、野生種お
よび栽培種の如何を問わず、一、二年草、多年草、球根
植物、ラン類、観葉植物、観賞樹木などのいずれであっ
てもよい。その具体例としては、例えば、アルストロメ
リア、アスター、アンスリウム、アイリス、カスミソ
ウ、カーネーション、キク、グラジオラス、キンセン
カ、ガーベラ、キンギョソウ、カンパニュラ・ピラミダ
リス、カンパニュラ・ペルシシホリア(モモバギキョ
ウ)、カラー、スイセン、ストック、スイートピー、シ
ュッコンカスミソウ(宿根カスミソウ)、キング・プロ
テア、チューリップ、ダイアンサス、デルフィニウム、
デンドロビウム、トルコギキョウ、バラ、フリージア、
ポインセチア、ブバルディア、ベニバナ、ラバテラ・ト
リメストリス(ハナアオイ)、フィソステギア(カクト
ラノオ)、ミカエルマス・デージー、ヒアシンス、マー
ガレット、ユリ、ユーホルビア・フルゲンス、ヤナギト
ラワヨ、ラン、ライラック、スカシユリ、トリカブト、
アスクレピアス・チューベローサ(ヤナギトウワタ)、
スカビオーサ・コーカシカ(マツムシソウ)、ベロニカ
・ロンジフォリア、アスチルベなどの切り花および鉢物
が挙げられ、さらに、鉢物の例として、シクラメン、ア
ザレア、セントポーリア、ポインセチア、プリムラ、イ
ースター、シンビジウム、ファレノプシス、デンドロビ
ウムなどが挙げられるが、これらの植物体に限定されな
い。
【0035】
【実施例】以下に、製剤例、参考例および実施例を挙げ
て、本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら
に限定されるものではない。なお、製剤例における
「部」は「重量部」を意味する。
【0036】製剤例1 以下の処方により、常法に従って、広範囲の植物体に適
用できる後処理剤を調製した。 成 分 配合量 グリシンベタイン 0.11部(10mM) ショ糖 0.60部 クエン酸 0.05部 水 99.24部
【0037】製剤例2 以下の処方により、常法に従って、広範囲の植物体に適
用できる後処理剤を調製した。 成 分 配合量 トリメチルアミンオキシド 13部(10mM) ショ糖 78部 クエン酸 9部 この粉剤は水で所望の濃度に希釈して使用する。
【0038】製剤例3 以下の処方により、常法に従って、バラの前処理剤を調
製した。 成 分 配合量 グリシンベタイン 0.11部(10mM) クエン酸8−ハイドロキシキノリン(8−HQC) 0.02部(200ppm) ベンジルアデニン 0.001部(10ppm) ショ糖 3.00部 水 96.869部
【0039】製剤例4 以下の処方により、常法に従って、カーネーションまた
はフリージアの前処理剤を調製した。 成 分 配合量 グリシンベタイン 0.01部(1mM) 水 99.99部
【0040】
【0041】参考例1(グリシンベタイン溶液の調製) 撹拌機を備えた容量1リットルのビーカーに、精製水1
リットルを入れ、グリシンベタイン塩酸塩(分子量15
3.61)を1.53g(10mM)を添加し、完全に溶解
させた。この溶液に、水酸化ナトリウム水溶液を添加し
てpH7.0とし、濃度10mMの試験液1とした。ま
た、試験液1を精製水で10倍に希釈して、濃度1mM
の試験液2とした。さらに、同様にして、濃度0.1m
Mの試験液3を調製した。
【0042】参考例2(トリメチルアミンオキシド溶液
の調製) 撹拌機を備えた容量1リットルのビーカーに、精製水1
リットルを入れ、トリメチルアミンオキシド(分子量1
11.14)を5.55g(50mM)を添加し、完全に溶
解させた。この溶液を濃度50mMの試験液1とした。
また、試験液1を精製水で5倍に希釈して、濃度10m
Mの試験液2とした。さらに、試験液2を精製水で10
倍に希釈して、濃度1mMの試験液3を調製した。
【0043】
【0044】実施例1(カーネーションの鮮度保持試
験) 参考例1で調製した試験液1および2のいずれか100
mlを入れたガラスビンに、満開の赤色カーネーション
2本と、5分咲きの黄色カーネーション1本とを、それ
ぞれ浸漬した。対照としては、精製水を用いた。これら
のカーネーションを室温で放置し、試験液および精製水
を毎日入れ変えて、いずれかの花が枯れた時点で実験を
終了した。観察は毎日行い、外観を次の基準で判定し
た。 A:鮮度が全く落ちていない。 B:花弁の一部が変色し、萎縮している。 C:花弁の全体が変色し、萎縮している。 D:花弁が完全に枯れた。 結果を表1に示す。
【0045】
【表1】
【0046】表1に示すように、対照の精製水では、黄
色カーネーションの鮮度は5日間変化しなかったが、赤
色カーネーションの鮮度は2日目から低下し、5日目に
は完全に枯れてしまった。これに対し、試験液1では、
いずれのカーネーションも、3日目に花弁の一部が変色
し、萎縮するが、それ以降5日目まで鮮度は保持され
た。また、試験液2では、5日目まで全く鮮度が落ちて
いない。このことから、グリシンベタイン塩酸塩は、明
らかにカーネーションの鮮度を保持する作用があり、そ
の最適濃度は約1mMであることがわかる。
【0047】実施例2(キク、バラ、フリージアの鮮度
保持試験) 参考例1で調製した試験液1〜3のいずれか50ml入
れたガラスビンに、キク(黄色)、バラ(赤色)および
フリージア(白色)を各々1本ずつ浸漬した。対照とし
ては、精製水を用いた。これらの植物体を室温で放置
し、試験液および精製水を毎日変えて、4日目の時点で
実験を終了した。観察は毎日行い、外観を実施例1と同
様の基準で判定した。結果を表2に示す。
【0048】
【表2】
【0049】表2に示すように、対照の精製水では、キ
クの鮮度は4日間変化しなかったが、バラとフリージア
の鮮度は2日目に低下し、後者の鮮度は4日目まで保持
されたが、前者は4日目には完全に枯れてしまった。こ
れに対し、試験液1では、バラとキクの鮮度は4日間保
持されたが、フリージアの鮮度は2日目に低下し、それ
以後、対照の精製水と変わらなかった。また、試験液2
では、フリージアとキクの鮮度が4日間保持されたが、
バラの鮮度は2日目から低下し、4日目に完全に枯れて
しまった。さらに、試験液3では、キクの鮮度は4日間
保持されたが、フリージアの鮮度は2日目に低下し、そ
れ以後、試験液1および対照の精製水と変わらなかっ
た。バラの鮮度は、試験液2および対照の精製水と同
様、2日目から低下し、4日目には完全に枯れてしまっ
た。このことから、水分の多いキクでは、効果がはっき
り出なかったが、グリシンベタイン塩酸塩は、明らかに
バラやフリージアの鮮度を保持する作用があり、その最
適濃度は、それぞれ約10mMおよび約1mMであるこ
とがわかる。
【0050】実施例3(バラの鮮度保持試験) 参考例2で調製した試験液1〜3のいずれか30ml
を、各濃度とも2本の試験管に満たし、バラ(ピンク
色)を1本ずつ供試した。対照としては、精製水を用い
た。これらのバラを室温で4時間放置し、各濃度の溶液
を吸収させた。その後、直ちにすべての試験液を精製水
と交換した。そして、15〜25℃に保持した恒温室に
入れ、精製水を毎日変えて、いずれかの花が枯れた時点
で実験を終了した。観察は毎日行い、外観を実施例1と
同様の基準で判定した。結果を表3に示す。
【0051】
【表3】
【0052】表3に示すように、対照の精製水では、バ
ラの鮮度は、3日目から低下し、6日目まで鮮度は保持
されたが、7日目からさらに低下し、9日目には完全に
枯れてしまった。これに対し、試験液1および2では、
バラの鮮度は対照の精製水と変わらなかったが、試験液
3では、9日目まで全く鮮度が落ちなかった。このこと
から、トリメチルアミンオキシドは、明らかにバラの鮮
度を保持する作用があり、その最適濃度は約1mMであ
ることがわかる。
【0053】
【0054】
【0055】
【発明の効果】本発明によれば、有効成分としてベタイ
ン類またはトリアルキルアミンオキシド類を用いている
ので、人や動物に対して安全無害であり、環境汚染を招
くことがなく、取り扱いや使用法が簡便で経済性にも優
れ、しかも広範囲の植物体に適用可能な鮮度保持剤が提
供される。

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 グリシンベタイン、β−アラニンベタイ
    ン、γ−ブチロベタインおよびトリアルキルアミンオキ
    シド類 からなる群より選択される少なくとも1種の化
    合物を有効成分として含有することを特徴とする植物体
    の鮮度保持剤。
  2. 【請求項2】 グリシンベタインを有効成分として含有
    する請求項1記載の鮮度保持剤。
  3. 【請求項3】 トリメチルアミンオキシドを有効成分と
    して含有する請求項1記載の鮮度保持剤。
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