JP3232694B2 - フェノール樹脂製ステータ - Google Patents

フェノール樹脂製ステータ

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、フェノール樹脂製ステ
ータに関する。更に詳しくは、ウェルド強度を向上せし
めたフェノール樹脂製ステータに関する。
【0002】
【従来の技術】成形材料たるフェノール樹脂に、ガラス
繊維、炭素繊維、アラミド繊維などの繊維状物質を1.5
〜6mmの長さにカットしたチョップドストランドを配合
し、強度を向上させることが一般に行われている。
【0003】ところで、射出成形、トランスファ成形な
どでは、成形材料を溶融し、金型キャビティ内を流動さ
せて成形品を得ているが、キャビティ内にピンやインサ
ートなどの障害物が存在したり、多点ゲートで成形した
りする場合、樹脂の流動先端が一度分離し、その後再び
合流する挙動をとるため、ウェルドラインの発生を避け
ることができない。
【0004】そして、従来技術による成形材料で形成さ
れたウェルドラインの強度、特にウェルドラインと直角
方向の引張応力に対する強度は非常に低く、チョップド
ストランドを配合したフェノール樹脂成形材料もその例
外ではない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、ガラ
ス繊維のチョップドストランドを配合したフェノール樹
脂成形材料であって、その成形品のウェルド強度を向上
せしめたフェノール樹脂製ステータを提供することにあ
る。
【0006】
【課題を解決するための手段】かかる本発明の目的は、
フェノール樹脂、その硬化剤、ガラス繊維のチョップド
ストランドおよび長さ約10〜200μmのガラス繊維粉末を
含有するフェノール樹脂から成形された金属製アウター
レースをインサート成形または後挿入したフェノール樹
脂製ステータによって達成される。
【0007】フェノール樹脂としては、ノボラック型樹
脂、レゾール型樹脂のいずれをも用いることができ、ノ
ボラック型樹脂が好んで用いられる。用いられるノボラ
ック型樹脂の重量平均分子量は約1000〜5000であること
が好ましい。約1000以下では流動性が良すぎて、成形時
に大量のバリが発生したり、ガス発生による焼けが生じ
たりするおそれがあり、一方約5000以上では流動性が悪
く、一般に成形が困難となる。これらのフェノール樹脂
には、それの硬化剤としてヘキサメチレンテトラミンな
どが、フェノール樹脂100重量部当り好ましくは約10〜3
0重量部配合されて用いられる。
【0008】ガラス繊維のチョップドストランドとして
は、繊維径6〜30μmのガラス繊維約1000〜30000本をエ
ポキシ樹脂、酢酸ビニル樹脂などのバインダで束ねたも
のを1.5〜6mmの長さにカットしたものが、従来と同様に
フェノール樹脂100重量部当り約5〜150重量部の割合で
用いられる。
【0009】また、長さ約10〜200μmのガラス繊維粉末
は、繊維径6〜30μmのガラス繊維を粉砕機などで粉砕
し、所定の長さにしたものであり、フェノール樹脂100
重量部当り約50〜200重量部、好ましくは約60〜160重量
部の割合で用いられる。ガラス繊維粉末の長さがこれよ
り短いと、通常の強度が低下するようになり、一方これ
より長さの長いものを用いると、ウェルド強度の向上が
達成されないようになる。また、配合割合がこれより少
ないと、目的とするウェルド部の強度向上効果が得られ
ず、反対にこれより多い割合で用いると、ウェルド強度
は大きくなるものの、混練性が悪くなる。
【0010】上記ガラス繊維のチョップドストランドお
よび粉末に代えて、炭素繊維やアラミド繊維などのチョ
ップドストランドおよび粉末を用いることもできるが、
成形品の強度およびコストの面からみて、ガラス繊維の
ものの方が望ましい。ただし、これらのものをガラス繊
維のものと、支障のない範囲内で併用することはでき
る。
【0011】以上の各成分以外に、フェノール樹脂とガ
ラス繊維との接着性を向上させるためのシラン系、チタ
ネート系、アルミニウム系などのカップリング剤、着色
剤、硬化促進剤、離型剤なども、必要に応じて適宜配合
される。
【0012】成形材料は、各配合成分を2本ロールなど
で混練し、冷却後ミル型粉砕機などで粉砕することによ
り調製され、調製された成形材料は、射出成形、トラン
スファ成形などに供される。
【0013】フェノール樹脂にガラス繊維のチョップド
ストランドを配合したフェノール樹脂成形材料は、自動
変速機などに用いられるステータの成形に有効に用いら
れ、それの耐クラック性を向上させることができる。
【0014】フェノール樹脂製ステータは、その内周部
の寸法精度が要求される部分に、金属製アウターレース
をインサート成形または後挿入して得られる。ところ
で、フェノール樹脂は通常約150〜200℃の型温で成形さ
れるが、成形後の冷却の過程で、金属との間の熱膨張係
数の差により、ステータ本体には内部応力が蓄積され
る。このステータ本体の内部応力は、実使用時に高温雰
囲気下におかれ、フェノール樹脂が更に収縮することに
より増大される。
【0015】こうした内部応力を低減するために、フェ
ノール樹脂に無機質の充填材が配合され、この無機質充
填材としては、強度、耐熱性、コストなどの点から、一
般的には長さ約1.5〜6mm程度のガラス繊維のチョップド
ストランドが用いられている。
【0016】ところで、ステータ本体の内周部には、ア
ウターレースの内周側に取り付けられるワンウェイクラ
ッチを潤滑する油の流路としての切欠きまたは油孔が必
要であり、その周辺に特に内部応力が集中し易い。更
に、切欠きまたは油孔を成形時に附形すると、その周囲
に必ずウェルド部が形成され、クラックが発生し易くな
る。
【0017】しかるに、ガラス繊維のチョップドストラ
ンドの一部を長さ約10〜200μmのガラス繊維粉末で置換
して用いることにより、成形後および高温雰囲気中に長
時間放置後のフェノール樹脂製ステータのクラック発生
率を殆んど0とすることができる。
【0018】
【発明の効果】フェノール樹脂にガラス繊維のチョップ
ドストランドを配合したフェノール樹脂成形材料中に、
長さ約10〜200μmのガラス繊維粉末を更に配合すること
により、射出成形、トランスファ成形などによって得ら
れる成形品のウェルド部強度を向上させることができ
る。
【0019】この結果、本発明で用いられるフェノール
樹脂成形材料から成形されたウェルド部のある成形品
は、高負荷状態や熱応力を受ける環境下で使用した場合
でも、すぐれた耐久性を示すようになり、金属などをイ
ンサートしたウェルド部を有する成形品、例えば自動変
速機に用いられるフェノール樹脂製ステータにおいて
は、すぐれた耐クラック性を有している。
【0020】
【実施例】次に、実施例について本発明を説明する。
【0021】実施例1〜4、比較例1〜2 ヘキサメチレンテトラミン20重量%を含有するノボラッ
ク型フェノール樹脂100重量部に、繊維径13μmのガラス
繊維のチョップドストランドおよび繊維径11μm、平均
繊維長70μmのガラス繊維粉末の所定量ならびにアミノ
シラン系カップリング剤、着色剤、離型剤などの各種配
合剤合計10重量部を混合し、混合物を高温側120℃、低
温側80℃の2本ロールで混練した。冷却後、ミル型粉砕
機で粉砕して、フェノール樹脂成形材料を得た。ロール
混練性は、ロール間からの落下物の多い比較例2を除
き、いずれも良好であった。
【0022】このフェノール樹脂成形材料を用いて、AS
TM D-638、TYPE Iに準じた形状の試験片を、シリンダ温
度90℃、金型温度175℃、射出圧力800kgf/cm2、射出時
間30秒間、硬化時間30秒間の成形条件下で射出成形し
た。
【0023】ウェルド部の引張強さを測定した試験片
は、成形用金型の両端から溶融成形材料を注入し、通常
部の引張強さを測定した試験片は、金型の片端から材料
を注入した。引張試験は、ASTM D-638に準じて行われ
た。測定結果は、ガラス繊維のチョップドストランドお
よび粉末の配合量と共に、次の表1に示される。 表1 比-1 実-1 実-2 実-3 実-4 比-2 [ガラス繊維;重量部] チョップドストランド 170 110 85 60 40 0 粉末 0 60 85 110 160 170 [引張強さ;kgf/cm2] ウェルド部(A) 5.5 7.5 8.3 8.4 10.0 - 通常部 (B) 14.2 13.4 14.0 13.8 14.9 - A/B比 0.39 0.56 0.59 0.61 0.67 -
【0024】実施例5、比較例3〜4 次の配合組成を有するフェノール樹脂成形材料から、金
属製アウターレースをインサート成形させたフェノール
樹脂製ステータが製造され、成形後のクラックの発生個
数を30個のサンプルについて測定し、その後クラックを
発生しなかったものについて、150℃の恒温槽中に1000
時間放置後のクラックの発生個数を測定した。 表2 実-5 比-3 比-4 [フェノール樹脂成形材料;重量部] ヘキサメチレンテトラミン含有 35 40 35 ノボラック型フェノール樹脂 ガラス繊維チョップドストランド 40 55 30 (長さ3mm) ガラス繊維粉末(平均繊維長70μm) 20 - - けい酸アルミニウム粉末(平均粒径5μm) - - 30 その他(離型剤、着色剤など) 5 5 5 [ステータのクラックの発生個数] 成形後 0/30 1/30 16/30 150℃、1000時間放置後 0/30 3/29 14/14
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C08L 61/04 - 61/16 F16H 41/00 - 41/32 WPI/L(QUESTEL)

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 フェノール樹脂、その硬化剤、ガラス繊
    維のチョップドストランドおよび長さ10〜200μmのガラ
    ス繊維粉末を含有してなるフェノール樹脂成形材料から
    成形された、金属製アウターレースをインサート成形ま
    たは後挿入したフェノール樹脂製ステータ
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