JP3230728B2 - ガラスアンテナのチューニング方法 - Google Patents

ガラスアンテナのチューニング方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、車両用などの窓ガ
ラスあるいは建築用の窓ガラスにアンテナパターンを銀
プリントにより形成しようとするガラスアンテナを受信
周波数帯域で好適な性能を得るようにするためのアンテ
ナパターンの各エレメントの最適長さ、最適間隔などを
調整する(以下、「チューニング」という)方法に関す
る。
【0002】
【従来の技術】近年、AM、FMなどのラジオ放送波、
TV放送波を受信するための車両用ガラスアンテナが要
望されるようになり、特に後部窓ガラスあるいは側部窓
ガラスに設けられるガラスアンテナは銀ペーストをスク
リーン印刷によりプリント、焼成したアンテナである
が、アンテナパターンの各エレメントの最適長さ、最適
間隔などを調整(チューニング)する必要があるが、銀
ペーストにより形成したプリント線条(以下、銀プリン
トと略称する))を切ることはできても、長くしたり、
追加することは実質的に不可能である。
【0003】したがって、厚さが35μm程度で、幅が
1mm程度の銅箔の裏面に接着剤が形成された導電性テ
ープを貼り付けてアンテナパターンを形成、そのパター
他の一部を移動させたり、長さを変えたりして代用
しているのが現状である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、導電性
テープでチューニングしたガラスアンテナと、実際に車
両などの窓ガラスに装着されて使用されるプリント線条
で形成したアンテナに特性のずれがあることが当業者の
間では知られており、導電性テープである銅箔の厚みを
変えたり、幅を変えたりしても近似させるのは困難であ
り、近似させる適当な方法がないのが現状であり、導電
ペーストをプリントして形成したアンテナに近似した性
能が得られるチューニング方法が要望されていた。
【0005】本発明はこのような点に鑑みてなされたも
のであり、導電性テープで形成したガラスアンテナとプ
リント線条で形成したガラスアンテナが実質的に同じ特
性が得られるようなチューニング方法を提供することを
目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者は、特性のずれ
は共振周波数のずれとほとんど等価であることに、着目
して本発明をなしたものである。
【0007】すなわち、共振周波数は受信した電波のア
ンテナ上の速度に基づく波長短縮率を変えて、プリント
線条で形成したガラスアンテナの波長短縮率に近似させ
ればよいことに着目して本発明をなしたものであり、プ
リント線条で形成したガラスアンテナの波長短縮率が、
導電性テープで形成したガラスアンテナの波長短縮率よ
大きいので、導電性テープで形成したガラスアンテナ
の波長短縮率を大きくするために、誘電率の高い物質で
導電性テープを被覆することにより、切ったり、貼り付
けたりするチューニングがきわめて容易な導電性テープ
を使用して、ほぼプリント線条で形成したガラスアンテ
ナと同等の特性を得ることができる。
【0008】
【発明の実施の形態】導電性テープは、鉄、銅、アルミ
ニウムあるいはそれらを主成分とする合金などの金属箔
に接着剤が形成されたものを好適に採用することができ
る。
【0009】鉄製テープの場合にその幅は、誘電体の比
誘電率、厚みなどによっても変わるが、信越化学製のR
TVペーストを使用した場合には後述する実施例から明
かなように1mm〜3.5mmとするとプリント線条で
形成したガラスアンテナに近似させることができるので
好ましい。この場合に実際には3.5mmを超えても近
似可能であるが、アンテナパターン同士の間隔が5mm
程度と狭い場合にはアンテナパターンそのものの形成が
困難になるので3.5mmを上限とする。
【0010】銅製テープの場合にその幅は、誘電体の比
誘電率、厚みなどによっても変わるが、信越化学製のR
TVペーストを使用した場合には後述する実施例から明
かなように0.4mm〜2mmとするとプリント線条で
形成したガラスアンテナに近似させることができるので
好ましい。この場合に実際には0.4mmより小さくて
も近似可能であるが、作業性が悪くなるので0.4mm
を下限とする。
【0011】本発明では、誘電率の高い物質とは比誘電
率が3以上のものをいう。比誘電率の上限は実用上は1
4程度である。したがって、比誘電率が3〜14の範囲
のものを適宜選択すればよく、例えばポリビニールブチ
ラールの粉体をメチルエチルケトンに溶解させてペース
ト状にしたもの(以下、PVBペーストという。比誘電
率10〜13)、さらにPVBペーストを乾燥させたも
の(比誘電率4.0)、チタン酸ウィスカーを熱可塑性
ポリエステル樹脂に分散させた誘電フィルム(比誘電
率:13.8)を複数枚重ねたもの、信越化学製のRT
Vペースト(KE3417)などのペーストを導電性テ
ープ1本毎に被覆するか、あるいは高い誘電率を有する
物質からなるフィルム、例えば フェノール樹脂(比誘
電率:4.0〜7.0)、ユリア樹脂(比誘電率:6.
0〜8.0)、メラミン樹脂(比誘電率:7.2〜8.
4)、ポリエステル樹脂(比誘電率:5.2〜6.
4)、アクリル樹脂(比誘電率:3.8〜4.5)、エ
ポキシ樹脂(比誘電率:4.1)、塩化ビニル樹脂(比
誘電率:3.3〜4.5)などの樹脂のシートで、導電
性テープにより形成されたアンテナパターンの複数のエ
レメントに跨って被覆するか、あるいは導電性テープ1
本毎に被覆してもよい。
【0012】樹脂のシートで被覆する場合には、導電性
テープ1本毎に被覆してもよいが、導電性テープ(一般
的には多数本)全体を被覆することができるので作業性
が格段に改善される。
【0013】また、この場合に、この誘電物質と導電性
テープとの間に空気層(比誘電率1)が介在すると空気
層の影響で大きくアンテナ特性が変わる恐れがあるの
で、空気層の介在が少なくなるように密着させる必要が
ある。
【0014】チューニングは、導電性テープにより所定
のアンテナパターンを形成し、その導電性テープのみ
に、テープ毎に前記のペーストなどを塗布するか、ある
いは導電性テープ上部を樹脂のシートにより密着させた
ものによりアンテナ特性を測定しながら、導電性テープ
により形成したアンテナ線条同士の間隔を変えたり、導
電性テープの各線条の長さを変えたりすることにより、
好適なチューニングを行い、その結果に基づき、同じ形
状で、各線条の間隔、長さを同じとするガラスアンテナ
を銀プリントにより形成するとチューニング時とほぼ同
じ特性を有するガラスアンテナを得ることができる。
【0015】チューニングするときに、各線条の長さを
短くするときには、不用な部分をナイフ等で簡単に切り
とればよく、長くするときには、導電性テープを接続す
ればよいが、接続する導電部分を半田付けして確実に接
続する。
【0016】
【実施例】以下、図面を参照しながらアンテナパターン
を標準のダイポールアンテナとした場合について例示す
る。
【0017】図1は本発明のテストに使用したガラスア
ンテナを示す要部平面図、図2は実施例1、実施例2、
実施例4および実施例5におけるチューニングに使用し
た導電性テープにより形成したアンテナ線条の断面図、
図3は実施例3においてチューニングに使用した導電性
テープの断面図、図4は各アンテナの周波数特性図であ
り、(1)が実施例1、(2)が実施例2、(S)がプリントし
た基準アンテナ、(c)が銅箔で形成した比較例をそれぞ
れ示す。
【0018】実施例1 ポリビニールブチラール(PVB)の粉末を溶剤である
メチルエチルケトン(MEK)に重量比で1:10程度
の割合で混入してペースト状にしたPVBペーストを誘
電物質(比誘電率が10〜13)として使用した場合に
ついて例示する。
【0019】図1、図2に示すように、幅1mm、厚さ
が35μmの例えば接着剤付き銅箔などの導電性テープ
1を片側エレメントの長さがそれぞれ600mmとして
ガラス板2に貼り付け、ダイポールアンテナ3とし、そ
の上からPVBペーストを誘電率の高い物質4として厚
さが約2mmになるように塗布する。
【0020】このようにして得られたガラスアンテナの
特性を給電部31、31’から図示しないインピーダンス
測定器に接続し、共振周波数と抵抗を測定したところ、
表1に示すようになり、給電部31、31’から図示しな
いネットワークアナライザーに接続し、各周波数に対す
る受信利得(周波数特性)を測定したところ、図4の
(1)に示すようになり、銀ペーストによりプリント、焼
成して得られた幅が1mmで厚さが10μmのガラスア
ンテナ(基準アンテナという)の周波数特性がそれぞれ
表1と図4の(s)であるので、本実施例の導電性テープ
により形成したアンテナは、共振周波数も周波数特性も
後述する銅箔のみで形成した比較例より、格段に基準ア
ンテナに近似していることがわかる。
【0021】本実施例において、導電性テープにより形
成した線条を短くする場合にはナイフで切って、不用部
分を拭き取るようにすればよく、線条を長くする場合に
は新しい銅箔をガラス板上に形成された銅箔に接するよ
うに貼り付け、銅箔同士は半田付けし、その上からPV
Bペーストを塗布してチューニングした。
【0022】 実施例2 実施例1と同じ構成の、導電性テープを貼り付け、PV
Bペーストで被覆した後に乾燥させたものであり、比誘
電率は約4.0である。
【0023】このようにして得られたガラスアンテナの
特性は、共振周波数と抵抗が表1に示すように、92.
3MHzと55.5Ωであり、周波数特性は、図4の
(2)に示すようになり、実施例1と同程度以上の基準ア
ンテナとの近似性を示した。
【0024】実施例3 図3に示すように、実施例1と同じ寸法の銅箔1を貼り
付けた後、チタン酸ウィスカーを熱可塑性ポリエステル
樹脂に分散させた誘電フィルム(比誘電率:13.8)
を3枚重ねて誘電物質4として、その上から透明粘着性
テープ5で接着したものである。
【0025】このようにして得られたガラスアンテナの
特性は、共振周波数と抵抗が表1に示すように、92.
6MHzと53.7Ωであり、実施例1と同程度以上の
基準アンテナとの近似性を示した。
【0026】本実施例において、導電性テープにより形
成した線条を短くする場合にはナイフで切って、不用部
分を剥し、線条を長くする場合には新しい銅箔をガラス
板上に形成された銅箔に接するように貼り付け、銅箔同
士は半田付けし、その上から誘電フィルムを3枚重ねて
透明粘着テープで一緒に接着し、チューニングした。
【0027】比較例 従来のガラス板に厚さが35μm、幅が1mmの銅箔の
みを貼り付けてアンテナを形成したものであり、このア
ンテナの特性は共振周波数と抵抗が表1に示すように、
94.7MHzと53.9Ωであり、周波数特性は、図
4の(c)に示すようになり、基準のプリントアンテナと
はそれぞれの特性がかなりずれていることがわかる。
【0028】実施例4 導電性テープには接着剤付き鉄箔を使用し、誘電物質と
して信越化学製のRTVペースト(KE3417)を使
用した場合について例示する。
【0029】導電性テープの幅は1mm、2mm、4m
mの場合について行い、さらにそれぞれの場合について
誘電物質の厚さ(比較のため誘電物質がない場合を含
む)を変えて行った。
【0030】図1、図2に示すように、導電性テープ1
を片側エレメントの長さがそれぞれ600mmとしてガ
ラス板2に貼り付け、ダイポールアンテナ3とし、その
上からRTVペーストを誘電率の高い物質4として塗布
する。
【0031】鉄製テープの幅が1mmの場合、2mmの
場合、4mmの場合についてそれぞれ誘電物質を塗布し
ない場合、誘電物質の厚さが0.73mm、誘電物質の
厚さが1.14mm、1.87mmとして共振周波数と
抵抗値を測定したところ、表2に示す結果が得られた。
【0032】 この結果から明らかなように、いずれの場合にも誘電物
質を被覆することによって基準アンテナの共振周波数で
ある91.3MHzに近似する傾向にあり、幅が2mm
の場合に共振周波数も抵抗値も最も近似しており、幅1
mmの場合も、4mmの場合にも近似の範囲ということ
ことができる。
【0033】実施例5 導電性テープには接着剤付き銅箔を使用し、誘電物質と
して信越化学製のRTVペースト(KE3417)を使
用した場合について例示する。
【0034】導電性テープの幅は0.4mm、1mm、
2mm、4mmの場合について行い、さらにそれぞれの
場合について誘電物質の厚さ(比較のため誘電物質がな
い場合を含む)を変えて行った。
【0035】図1、図2に示すように、導電性テープ1
を片側エレメントの長さがそれぞれ600mmとしてガ
ラス板2に貼り付け、ダイポールアンテナ3とし、その
上からRTVペーストを誘電率の高い物質4として塗布
する。
【0036】銅製テープの幅が0.4mm、1mmの場
合、2mmの場合、4mmの場合についてそれぞれ誘電
物質を塗布しない場合、誘電物質の厚さを変えて共振周
波数と抵抗値を測定したところ、表3に示す結果が得ら
れた。
【0037】 この結果から明らかなように、導電性テープの幅が4m
mの場合には誘電物質を厚くしても基準の共振周波数に
それほど近似できないので好ましくないが、その他の幅
の場合には誘電物質を被覆することによって基準アンテ
ナの共振周波数である91.3MHzによく近似してい
ることがわかる。
【0038】
【発明の効果】本発明によると、従来困難であったプリ
ントで形成したガラスアンテナのチューニングを、鉄
箔、銅箔などの導電性テープにより、容易に行うことが
できるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のテストに使用したガラスアンテナを示
す要部平面図である。
【図2】実施例1と実施例2におけるチューニングに使
用した導電性テープにより形成したアンテナ線条の断面
図である。
【図3】実施例3においてチューニングに使用した導電
性テープにより形成したアンテナ線条の断面図である。
【図4】各アンテナの周波数特性図であり、(1)が実施
例1、(2)が実施例2、(S)がプリントした基準アンテ
ナ、(c)が銅箔で形成した比較例をそれぞれ示す。
【符号の説明】
1 導電性テープ 2 ガラス板 3 ダイポールアンテナ 4 誘電率の高い物質
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭62−247607(JP,A) 特開 平5−7107(JP,A) 特開 平6−305777(JP,A) 実開 昭61−151406(JP,U) 実開 昭63−78404(JP,U) 実開 平1−57810(JP,U) 特公 昭48−41379(JP,B1) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H01Q 1/32 H01Q 9/14

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】ガラス板に銀プリントにより形成しようと
    するアンテナパターンの各エレメントの最適長さ、最適
    間隔の調整方法において、導電性テープによってガラス
    アンテナパターンを形成するとともに、導電性テープ
    の上部に誘電率の高い物質を被覆してアンテナパターン
    の各エレメントの最適長さ、最適間隔を調整し、その結
    果に基づき、同じパターンで書く線条の間隔、長さを同
    じとするガラスアンテナを銀プリントにより形成する
    とを特徴とするガラスアンテナのチューニング方法。
  2. 【請求項2】導電性テープは、鉄、銅、アルミニウムあ
    るいはそれらを主成分とする合金などの金属箔からなり
    接着剤を裏面に形成したことを特徴とする請求項1記載
    のガラスアンテナのチューニング方法。
  3. 【請求項3】導電性テープのみを誘電率の高い物質で被
    覆するようにしたことを特徴とする請求項1あるいは請
    求項2記載のガラスアンテナのチューニング方法。
  4. 【請求項4】導電性テープの上部を誘電率の高い物質か
    らなるシートで被覆するようにしたことを特徴とする請
    求項1あるいは請求項2記載のガラスアンテナのチュー
    ニング方法。
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