JP3229475B2 - 近視野光走査記録再生装置 - Google Patents

近視野光走査記録再生装置

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、エヴァネッセント光を
利用して情報信号の記録または再生を行う近視野光走査
記録再生装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】半導体レーザ等の光源から放射させた情
報信号光をレンズで集束して記録媒体に照射し、記録媒
体の反射率や偏光特性などを部分的に変化させて情報信
号を記録することが一般に行われている。波長の短い光
を使用したり、レンズの開口数を増したりして分解能を
高めると、情報信号の記録または再生の密度を高めるこ
とができるものの、それには限度がある。レンズを用い
た光の集束では回折現象を伴うので、可視光または近赤
外光を記録媒体の記録面に結像させて生成し得る結像ス
ポットの直径は1μm前後が下限となる。
【0003】しかし、このような回折現象を生じる進行
波であっても、その波長よりも小さい微小領域に局在す
る局在波(エヴァネッセント光)を利用すれば、さらに
径小のスポットを得ることができる。
【0004】エヴァネッセント光は、波長よりも小さい
微小領域に局在し、光エネルギを外部へ伝ぱんしないと
いう特性を有している。しかし、通常の進行波がその波
長よりも小さい開口を通じて外部へ伝ぱんしないのに対
し、エヴァネッセント光は波長程度またはそれ以下であ
れば開口を通じて外部へ伝ぱんできる。
【0005】したがって、使用するレーザ光の波長とほ
ぼ同等かそれよりも小さい開口を波長程度またはそれ以
下の距離で記録面に近接させると、光エネルギーを記録
面の極小領域に集中させ得て、信号ピットの書き込みま
たは読み出しを行うことができる。つまり、高屈折率媒
体(基台)にレーザ光を全反射可能に入射させ、低屈折
率媒体(空気)たる基台表面上にエヴァネッセント光を
生成させると、微小領域に記録されている信号ピットを
検出することができる。また、微小の開口を通じて与え
たエヴァネッセント光によって信号ピットを書き込むこ
ともできる。
【0006】このような技術は、フォトン走査トンネル
顕微鏡(フォトンSTM)の呼称で知られているが、そ
の透過型のものを図5とともに説明すると以下のとおり
である。
【0007】半導体レーザ1から放射された所定波長の
レーザ光は、コリメータレンズ2を透過して並行光線と
なる。これを再生動作用の参照光としてプリズム状誘電
体の基台3にその傾斜下面から入射させると、入射光は
基台3の上面に達するが、上面での光入射角は基台3の
屈折率で決まる全反射臨界角よりも大きくとってあるの
で全反射する。全反射した光はそのまま利用されず捨て
られるが、基台3の上面から波長程度までの空気層にエ
ヴァネッセント光が局在するようになる。
【0008】このエヴァネッセント光を取り込むための
プローブ4は光ファイバからなり、先細の先端部の突端
面にコア径が数10nmの開口を有している。そして、
この開口が基台3の上面から約10nm隔たる平面内を
一次元または二次元で走査するので、エヴァネッセント
光は前記開口を通じてプローブ4に取り込まれ、取り込
まれた光は光検出器5で光電変換される。つまり、基台
3の上面に凹凸または濃淡のかたちで記録されていた情
報信号を読み出すことができる。なお、エヴァネッセン
ト光は光ファイバ内で通常の進行波に変換されるので、
プローブ4は通常の光路として光エネルギーを伝達す
る。
【0009】情報信号を記録する場合は、プローブ4側
から光波を入射させる。プローブ4の先端部の開口付近
に生成したエヴァネッセント光を基台3の上面の微小領
域に集中させることによって、凹凸または濃淡のかたち
で信号ピットを記録することができる。
【0010】勿論、基台3の上面の偏光特性を情報信号
光によって部分的に変化させる光磁気的な記録も可能で
ある。プローブ4を二次元的に走査させると、エヴァネ
ッセント光の反射強度の分布をマップにすることができ
るので、表面形状を直接観察できる高分解能の顕微鏡と
しての利用法もある。また、光ファイバ自体にファブリ
・ペロー共振特性をもたせ、記録媒体の表面形状に応じ
て変化する共振周波数のシフトを光位相同期技術によっ
て検出する反射共振型フォトンSTM等も知られてい
る。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】このようなフォトンS
TMを用いて情報信号の再生を行う場合、記録媒体の目
的の記録ライン上または記録ピット上にプローブの開口
を追尾させるトラッキング制御が必要となるが、微細な
記録ラインまたは記録ピットに対してプローブの開口を
精度よく追尾させるのは容易でなかった。
【0012】したがって本発明の目的は、エヴァネッセ
ント光を利用した高密度の記録および再生を高精度で追
尾性よく行うことができ、しかも、ディスク状の記録媒
体を使用することができる近視野光走査記録再生装置を
提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】本発明は上述した目的を
達成するために、所定波長のレーザ光を放射する半導体
レーザと、前記レーザ光を集束するレンズと、前記レン
ズで集束されたレーザ光を導入する第1の開口を有し、
先細の先端部で走査ヘッドを形成するとともに、前記
ーザ光の波長とほぼ同等かそれよりも小さい直径の第2
開口を前記走査ヘッドの突端面に設けた光ファイバ
と、記録媒体の記録面から前記第2の開口を通じて取り
出された反射光を検出する光検出器と、前記走査ヘッド
と固定され、この走査ヘッドの記録面からの浮上高さを
一定に保つエアースライダと、光源、レンズ系および光
電変換素子を有する走査制御ヘッドと、前記光電変換素
子の検出信号に基づいて前記走査制御ヘッドを記録面
水平方向と垂直方向とに移動させるアクチュエータと、
記録面に直角な方向の偏位を吸収する緩衝器とを有し、
前記走査ヘッドと前記走査制御ヘッドとを前記緩衝器を
介して相互に固定したことを特徴とする近視野光走査記
録再生装置としたものである
【0014】
【作用】本発明によると、集束レーザ光を導入する光フ
ァイバが先細の先端部に走査ヘッドを有し、この走査ヘ
ッドの突端面にレーザ光の波長とほぼ同等かそれよりも
小さい直径の開口を有するので、情報信号をエヴァネッ
セント光によって高い分解能で記録・再生することがで
きる。また、走査ヘッドに一体的に並設された走査制御
ヘッドが走査ヘッドとともに移動し、走査ヘッドの走査
に必要なトラッキングエラー検知信号を発生するので、
走査ヘッドを追尾性よく常に所定の記録トラック上に位
置させることができ、微細な記録トラックを高密度で配
列することが可能となる。そのうえ、記録および再生の
いずれにおいてもエヴァネッセント光は記録面側から与
えられるので、記録媒体にディスク状のものを使用する
ことができる。
【0015】
【実施例】つぎに、本発明の実施例を図1ないし図4を
用いて説明する。
【0016】図1に示す構成において、半導体レーザ1
から放射された情報信号光は、カップリングレンズ6で
集束されて光ファイバ7に開口8を通じて入射する。光
ファイバ7はその先端部に走査ヘッド9を有し、走査ヘ
ッド9における光ファイバ部分は先細に絞り込まれてい
る。そして、突端面での開口10の直径(コア径)は数
10nmに設定されている。また、開口10は記録媒体
の記録面11に約10nmの微小空隙を介して向き合っ
ている。
【0017】使用するレーザ光の波長は700nm前後
であるので、これに比較した開口10の直径は非常に小
さい。このため、通常観察される進行波は開口10を通
過し得ないが、開口10の近傍に局在するエヴァネッセ
ント光だけが開口10を通じて記録面11に達し、その
光エネルギーを記録面11に伝達して情報信号を記録す
ることができる。
【0018】情報信号を再生する場合は、集束レーザ光
が光ファイバ7に開口8を通じて与えられる。走査ヘッ
ド9の開口10を通じて記録面11を照射したエヴァネ
ッセント光は、記録面11で回折または吸収の作用を受
けて開口10に戻り、光ファイバ7中で進行波に変換さ
れる。そして、光ファイバ7の途中に設けられたスプリ
ッタ12を経て光検出器13に導かれる。光検出器13
で光電変換された電気信号は、モニタ・出力器14また
はその他の信号処理機器に入力される。
【0019】走査ヘッド9には、半導体レーザ15、第
1・第2の反射面16、17、対物レンズ18および光
電変換素子19からなる走査制御ヘッド20が一体的に
並設されている。走査制御ヘッド20はコンパクトに構
成されており、走査ヘッド9とともに移動して走査に必
要なトラッキングエラー検知信号等を発生する。
【0020】半導体レーザ15から放射された光は、第
1の反射面(双曲面)16で反射したのち第2の反射面
(放物面)17で並行光線に変換される。そして、マイ
クロフレネルレンズからなる対物レンズ18で集束され
て記録面11に結像する。
【0021】この結像で生じた結像スポットは、トラッ
キング用プリグループ(図示せず)によって後述するよ
うな±1次回折光を発生する。正反射の0次回折光およ
び±1次回折光は、対物レンズ18および第2の反射面
17を経て第1の反射面16に回帰する。第1の反射面
16の全域または一部分には入射光に対して偏向作用を
与えるグレーティングまたはホログラムが形成されてい
るので、戻り光の一部が光電変換素子19に入射する。
【0022】光電変換素子19は図2に示すように、4
区分されたセンサエリアS1、S2、S3、S4を有
し、各センサエリアを形成するフォトダイオードの出力
が各別にとり出せるようになっている。そして、各出力
を演算して前記結像スポットのパターンを分析し、走査
ヘッド9のフォーカスおよびトラッキングの各制御に必
要なエラー検知信号を得る。4つのセンサエリアS1、
S2、S3、S4の各出力をP1、P2、P3、P4と
すると、フォーカスエラー検知信号FEは、両サイドの
センサエリアS1、S4の各出力P1、P4の和(P1
+P4)と、残余のセンサエリアS2、S3の各出力P
2、P3の和(P2+P3)との差をとる。すなわち、
結像スポットの大きさをセンサ上で検出してデフォーカ
スの大小を検出するビームサイズ法の適用でフォーカス
エラー検知信号FEを得る。
【0023】トラッキングエラー検知信号TEについて
は、左半分の2センサエリアS1、S2の各出力の和
(P1+P2)と右半分の2センサエリアS3、S4の
各出力の和(P3+P4)との差をとる。すなわち、記
録面11のプリグループで発生した±1次回折光と0次
回折光との干渉強度のバランスを比較するプッシュプル
法の適用でトラッキングエラー検知信号TEを得る。
【0024】このような光電的処理で得られた信号を用
いてアクチュエータ21を駆動制御すると、走査ヘッド
9および走査制御ヘッド20をともに記録面11のプリ
グループに沿った水平方向(トラック方向)および垂直
方向(フォーカス方向)にそれぞれ安定に移動させるこ
とができる。
【0025】信号ピットは記録面11に直径約50nm
のスポットで記録されるが、その精度を高めるために緩
衝器23を設けている。この緩衝器23は走査ヘッド9
を走査制御ヘッド20とともに駆動させるときに生じる
フォーカス方向への不所望な動き(上下振動)を吸収す
る役割を果たす。
【0026】つぎに、トラッキング駆動および緩衝器2
3の動作について図3を参照しつつ説明する。走査制御
ヘッド20の光源たる半導体レーザ15から放射された
光はレンズ系で集束作用を受けて記録面11に達し、記
録面11で反射または回折して+1次光A、−1次光B
および0次光Cとなる。そして、走査制御ヘッド20に
戻って前述のような光電的処理を受け、フォーカスエラ
ー検知信号FEおよびトラッキングエラー検知信号TE
を発生する。
【0027】走査ヘッド9はエアースライダ22固定
されており、記録面11が高速で移動することによって
わずかに浮上し、その高さを一定に保つ。また、走査ヘ
ッド9とこれに連なる本体部分との間に、不本意な揺れ
を吸収させるための緩衝器23を設けている。すなわ
ち、前記本体部分の垂直方向への揺らぎのダイナミック
レンジは走査ヘッド9のそれと大きく異なるので、その
差による歪みを緩衝器23で吸収させている。
【0028】緩衝器23は図示したようなコイル状のば
ねや、ハードディスク等に用いられている板ばねなどで
構成できるが、垂直方向にのみクッション作用を与える
ものでなければならず、トラック方向に揺れを生じさせ
ないことが重要である。このように構成すると、前記本
体部分において垂直方向の揺れが生じても、走査ヘッド
9の開口10と記録面11との間隔を常に所定値に安定
に保持させることができる。
【0029】複数の信号ピット24は記録面11の一つ
のランド部分(トラック上)に並ぶので、トラッキング
エラー検知信号(TE信号)と走査ヘッド9の偏位量と
を図4に示す特性曲線に沿うように設定しておくと、走
査ヘッド9はTE信号によってトラックに直角な方向に
軌道修正を受けつつ目的とするトラック上の部位(レベ
ル)を追尾性よく走査する。
【0030】このようにトラッキングエラー検知信号に
よるオフセット作用で、走査ヘッド9をトラックに直角
な方向に微小量偏位させることができるので、微小の開
口10をもつ走査ヘッド9によって従来の光学系では得
ることのできなかった高密度の記録・再生動作を達成す
ることが可能となる。
【0031】
【発明の効果】以上のように本発明によると、微小の開
口をもつ走査ヘッドを用いてエヴアネッセント光を利用
した高分解能の記録・再生動作を得るのであるが、通常
の光学系からなる走査制御ヘッドを走査ヘッドに一体的
に並設して発生させたトラッキングエラー検知信号でア
クチュエータを駆動させるので、走査ヘッドを所定のト
ラック上に精度よく位置させることが可能となる。ま
た、記録媒体にディスク状のものを使用することが可能
となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例の近視野光走査記録再生装置
の構成図。
【図2】本発明の一実施例における光電変換素子の信号
発生回路図。
【図3】本発明の一実施例の近視野光走査記録再生装置
の要部の斜視図。
【図4】本発明の一実施例の近視野光走査記録再生装置
のTE信号−偏位量特性図。
【図5】透過型フォトンSTMの構成図。
【符号の説明】
1 半導体レーザ 7 光ファイバ 9 走査ヘッド 10 開口 11 記録面 20 走査制御ヘッド 21 アクチュエータ
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平4−370536(JP,A) 特開 平4−90152(JP,A) 特開 昭62−22224(JP,A) 特開 昭56−165936(JP,A) 特開 平5−34129(JP,A) 特開 平7−98885(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) G11B 7/09 - 7/22 G11B 7/00 - 7/013 G02B 27/56

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 所定波長のレーザ光を放射する半導体レ
    ーザと、前記 レーザ光を集束するレンズと、前記 レンズで集束されたレーザ光を導入する第1の開口
    有し、先細の先端部で走査ヘッドを形成するととも
    に、前記レーザ光の波長とほぼ同等かそれよりも小さい
    直径の第2の開口を前記走査ヘッドの突端面に設けた
    ファイバと、 記録媒体の記録面から前記第2の開口を通じて取り出さ
    れた反射光を検出する光検出器と、前記走査ヘッドと固定され、この走査ヘッドの記録面か
    らの浮上高さを一定に保つエアースライダと、 光源、レンズ系および光電変換素子を有する走査制御ヘ
    ッドと、 前記光電変換素子の検出信号に基づいて前記走査制御ヘ
    ッドを 記録面の水平方向と垂直方向とに移動させるアク
    チュエータと、 記録面に直角な方向の偏位を吸収する緩衝器とを有し、 前記走査ヘッドと前記 走査制御ヘッドとを前記緩衝器を
    介して相互に固定したことを特徴とする近視野光走査記
    録再生装置。
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