JP3228008B2 - 耐応力腐食割れ性に優れた高強度マルテンサイト系ステンレス鋼とその製造方法 - Google Patents
耐応力腐食割れ性に優れた高強度マルテンサイト系ステンレス鋼とその製造方法Info
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Description
た高強度マルテンサイト系ステンレス鋼およびその製造
方法に係わり、さらに詳しくいえば例えば石油、天然ガ
スの掘削、輸送において湿潤炭酸ガス、湿潤硫化水素を
含む環境で高い応力腐食割れ抵抗を有する高強度ステン
レス鋼およびその製造方法に係わる。
酸ガス、湿潤硫化水素を多量に含む場合が増加してお
り、従来の炭素鋼にかわって13Cr系ステンレス鋼な
どのマルテンサイト系ステンレス鋼が用いられてきてい
る。しかし、従来のマルテンサイト系ステンレス鋼は湿
潤炭酸ガスに対する耐食性(以下単に耐食性と呼ぶ)は
優れているが湿潤硫化水素に対する耐応力腐食割れ性
(以下単に耐応力腐食割れ性と呼ぶ)は十分ではなく、
強度、靭性、耐食性を維持しつつ耐応力腐食割れ性が向
上したマルテンサイト系ステンレス鋼が望まれていた。
れ性の要求を満たすものとして特公昭61−3391、
特開昭58−199850、特開昭61−207550
が開示されている。しかしこれらは硫化水素を極微量し
か含まない環境では耐性を示すものの、硫化水素分圧が
0.01気圧を超える環境では応力腐食割れが生じるた
め硫化水素を多く含む環境では使用できないという問題
があった。
る環境での耐応力腐食割れ性を改善したマルテンサイト
系ステンレス鋼も提案されており、例えば、特開昭60
−174859、特開昭62−54063などが開示さ
れている。しかし、これらの鋼も硫化水素による応力腐
食割れを完全に防止できるものではない。
ルテンサイト系ステンレス鋼はいずれも高強度化を試み
ると靭性および耐応力腐食割れ性が著しく劣化し、その
ため、強度あるいは靭性と耐応力腐食割れ性の一方を犠
牲にせざるをえないという問題もあった。そのため、例
えば高強度、耐応力腐食割れ性、耐食性、靭性が同時に
要求される高深度の油井管には適用できないという難点
があった。
技術における問題点を解決すべく創案されたもので、従
来のマルテンサイト系ステンレス鋼の強度、耐応力腐食
割れ性、靭性を同時に改善することにより耐食性を維持
しつつ、硫化水素を多く含む環境でも応力腐食割れを生
じることなく使用できる高強度のマルテンサイト系ステ
ンレス鋼およびその製造方法を提供する。ここで、目標
とする性能は炭酸ガス、硫化水素を含む石油、天然ガス
の掘削、輸送用鋼管に要求される性能に鑑み以下の如く
とした。
g/mm2 以上 靭性 :0℃でのシャルピ・フルサイズ試験
片での吸収エネルギ−(シャルピ衝撃値と呼ぶ)が10
kg−m以上 耐応力腐食割れ性:1気圧の硫化水素ガスを飽和させた
5%食塩水+0.5%酢酸水溶液中で試験片に0.2%
耐力の60%の応力を負荷し、720時間以上破断せず
もちこたえること
レス鋼の耐食性向上にはCrの増加が有効である。しか
しそれは一方ではδ−フェライト相を生成させ強度およ
び靭性を劣化させるため、オ−ステナイト生成元素であ
るNiを増加してδ−フェライト相の生成を抑制すれば
よいがNiの増加はコスト面からの制約がある。またC
の増加もδ−フェライト相の抑制に有効ではあるが焼戻
し時に炭化物が生成しかえって耐食性を劣化させるた
め、むしろその含有量は制限されるべきである。δ−フ
ェライト相の量としては、その面積率が10%を超える
と強度、靭性に悪影響となるため10%以下に制限すべ
きである。
および耐応力腐食割れ性が劣化するがCuを適性量含有
させ、かつ、熱処理によりCuをこのステンレス鋼の基
地に微細な析出物として分散させることによりこれらを
劣化させることなく高強度化させることができる。しか
し、Cuの微細な析出物を析出させるには特に焼戻し条
件を厳密に制御することが必要で、焼戻し温度のみなら
ず焼戻し時間をも同時に制御することが必要である。
属組織の制約を考慮しつつ、従来のマルテンサイト系ス
テンレス鋼では実現しえなかった高剛性、高強度で、耐
応力腐食割れ性に優れた新しいマルテンサイト系ステン
レス鋼を得ることに成功したものである。その要旨は、 1.主成分として重量%で、C:0.06%以下、C
r:12−16%、Si:1.0%以下、Mn:2.0
%以下、Ni:0.5−8.0%,Mo:0.1−2.
5%、Cu:0.3−4.0%、N:0.05%以下を
含み、δ−フェライト相の面積率が10%以下で、かつ
直径0.10ミクロン以下のCu析出物が基地に分散し
ていることを特徴とする靭性、および耐応力腐食割れ性
に優れた0.2%耐力で75kg/mm 2 以上の高強度
マルテンサイト系ステンレス鋼。 2.主成分として重量%で、C:0.06%以下、C
r:12−16%、Si:1.0%以下、Mn:2.0
%以下、Ni:0.5−8.0%,Mo:0.1−2.
5%、Cu:0.3−4.0%、N:0.05%以下を
含み、さらに付加成分として重量%で、V:0.01−
0.1%,とNb:0.01−0.1%のうち1種以上
を含むδ−フェライト相の面積率が10%以下で、かつ
直径0.10ミクロン以下のCu析出物が基地に分散し
ていることを特徴とする靭性、および耐応力腐食割れ性
に優れた0.2%耐力で75kg/mm 2 以上の高強度
マルテンサイト系ステンレス鋼。 3.主成分として重量%で、C:0.06%以下、C
r:12−16%、Si:1.0%以下、Mn:2.0
%以下、Ni:0.5−8.0%,Mo:0.1−2.
5%、Cu:0.3−4.0%、N:0.05%以下を
含む組成のマルテンサイト系ステンレス鋼をAc3以
上、980℃以下の温度でオーステナイト化後冷却し、
次いで焼戻し温度T(単位:℃)として500℃以上6
30℃またはAc1のどちらか低温のほうの温度以下、
焼戻し時間t(単位:時間)が(20+logt)(2
73+T)の値で15200以上、17800以下とな
る条件で焼戻すことを特徴とする靭性および耐応力腐食
割れ性に優れた0.2%耐力で75kg/mm 2 以上の
マルテンサイト系ステンレス鋼の製造方法。 4.主成分として重量%で、C:0.06%以下、C
r:12−16%、Si:1.0%以下、Mn:2.0
%以下、Ni:0.5−8.0%,Mo:0.1−2.
5%、Cu:0.3−4.0%、N:0.05%以下を
含み、さらに付加成分として重量%で、V:0.01−
0.1%,とNb:0.01−0.1%のうち1種以上
を含むマルテンサイト系ステンレス鋼を、Ac3以上9
80℃以下の温度でオーステナイト化後冷却し、次いで
焼戻し温度T(単位:℃)として500℃以上630℃
またはAc1のどちらか低温のほうの温度以下、焼戻し
時間t(単位:時間)が(20+logt)(273+
T)の値で15200以上、17800以下となる条件
で焼戻すことを特徴とする靭性および耐応力腐食割れ性
に優れた0.2%耐力で75kg/mm 2 以上の高強度
マルテンサイト系ステンレス鋼の製造方法。
性、耐応力腐食割れ性および靭性を劣化させる。C含有
量が0.06%を超えると劣化が顕著になるため0.0
6%以下の含有量とする。
な元素で、しかも耐食性を発現する重要な元素である
が、含有量が12%未満では十分な耐食性が現れず、1
6%を超えると他の合金元素を如何に調整してもδ−フ
ェライト相の生成量が増し強度、靭性が劣化するため1
2−16%とする。
イト生成元素でもあり1.0%を超えて含有させるとδ
−フェライト相の生成を助長するため1.0%以下とす
る。
ライト相の出現を抑えるオ−ステナイト生成元素である
が、過剰に含有させてもその効果は飽和するので2.0
%以下とする。
生成に極めて有効な元素であるが0.5%未満ではその
効果が少なく、一方、この元素は高価なため経済的な観
点から8.0%を上限とする。
の含有量ではその効果が現れず、また2.5%を超える
と過剰なδ−フェライト相を出現させるため上限を2.
5%とする。
として溶け込んで耐食性を向上させると同時に、焼戻し
により一部が基地に微細に分散析出することにより、耐
応力腐食割れ性を劣化させることなく強度を向上させる
両方の効果をもつ。しかし0.3%未満の含有量ではそ
の効果は十分でなく、4.0%を超えて含有させてもそ
の効果は飽和し、また熱間加工時に割れの原因になるた
め、含有量は0.3−4.0%とする。
成元素でもあるが、0.05%を超えて含有させると焼
戻し時にCrと結合して窒化物となって析出し耐食性、
耐応力腐食割れ性および靭性が劣化するため0.06%
以下の含有量とする。
0.10%、Nb:0.01−0.10%) V、Nbは強力な炭化物生成元素で、微細な炭化物を析
出させることにより結晶粒を細粒化し、耐応力腐食割れ
性を向上させる。しかしフェライト生成元素でもありδ
−フェライト相を増加させる。含有量をそれぞれ0.0
1−0.10%、0.01−0.10%とした。0.0
10%未満では耐応力腐食割れ性向上効果が現れず、
0.10%を超えるとその効果が飽和し、かつ、δ−フ
ェライト相が増加し靭性に悪影響がでるため含有量を
V、Nbともに0.01−0.10%、0.01−0.
10%とする。
%以下 δ−フェライト相はマルテンサイト鋼の焼入れ時にマル
テンサイトに変態せずフェライトのまま残った相で、そ
の量が多いと靭性が著しく劣化する。この鋼においては
δ−フェライト相の量が面積率で10%を超えると靭性
劣化が著しくなるので10%以下とする。
させ、しかも強度上昇による耐応力腐食割れ性の劣化は
生じない。ここで微細な析出物とは10万倍の電子顕微
鏡で識別可能でかつ直径が概ね0.10ミクロン以下の
大きさである。しかし、Cu析出物が粗大化し直径0.
10ミクロンを越えると強度上昇効果はなくなる。ま
た、Cuが析出せず基地に溶け込んだままだと析出硬化
による強度上昇は期待できない。そのためCuの析出物
は微細な析出物とする。また、分散量は特に制限しない
が、基地1平方ミクロン当り30ケ以上の微細な析出物
が存在していることが望ましい。
上980℃以下 Ac3温度より低いとオ−ステナイト化が不十分で必要
な強度が得られず、980℃を超えると結晶粒が粗大化
して靭性劣化が著しくなり、また耐応力腐食割れ性が低
下するためAc3以上980℃以下とする。
0℃以上630℃またはAc1のどちらか低温のほうの
温度以下 焼戻しはマルテンサイトを軟らかくして靭性を確保する
と同時に、Cuを基地に微細に析出させ強度を上昇させ
る効果をもつ。しかし、焼戻し温度が500℃未満だと
マルテンサイトの軟化が十分でなくまたCuの微細な析
出物も不十分で期待する性能が得られない。一方、焼戻
し温度がAc1より高いと組織の一部が再びオ−ステナ
イト化して焼戻しされず靭性が劣化する。また630℃
を超えると例えCuの微細な析出物が析出していてもそ
れが再び溶解してなくなってしまうため高強度が得られ
ない。そのため焼戻し温度は500℃以上630℃また
はAc1のどちらか低温の方の温度以下とする。
(20+log t)(273+T)が15200以上、1
7800以下となるような焼戻し時間 焼戻し温度が同じであっても焼戻し時間が短すぎればC
uの析出が不十分で十分な強度が得られない。また、焼
戻し時間が長すぎれば微細なCuの析出物が一旦析出し
てもそれが再溶解したり、凝集粗大化して強度向上に寄
与しなくなる。すなわち、適切な強度上昇を実現するた
めに必要な焼戻し時間はある範囲に限定されるが、その
範囲は採用された焼戻し温度によって異なる。
せた変数であるテンパー・パラメーターと0.2%耐力
およびシャルピー衝撃値との関係を調べた結果を図示し
たもので、テンパー・パラメーターが15200から1
7800の間にあれば、0.2%耐力が75kg/mm
2 以上でしかもシャルピー衝撃値が10kg−m以上と
本発明の目標性能を満足することがわかる。ここで、テ
ンパー・パラメーターは以下の式で定義する。
200以上、17800以下となるように設定する。
発明鋼は転炉あるいは電気炉にて本発明の成分範囲に成
分を調整し、普通造塊法または連続鋳造法により鋳片に
する。それを熱間加工により継目無鋼管または鋼板に製
造した後熱処理を行って製造する。熱処理方法は上に説
明したとおりである。
Al、W、Ti、Zr、Ta、Hf、Ca、REMを含
有させてもよい。これらの元素は本発明鋼の性能をさら
に向上させるのに役立つことがあり、各々の目的、適性
含有量は以下の如くである。
0.01−0.10%である。 W:炭酸ガス腐食に対して特に効果があるが過剰に含有
させると靭性を劣化させるため最大4%とする。
せるのに有効でありその適性含有量は最大0.2%であ
る。しかし0.2%を超えると粗大な析出物が生じて耐
応力腐食割れ性を劣化させる。
と結合し有害の程度を大幅に低減させ耐応力腐食割れ性
を改善する効果をもつ。しかし、過剰な含有は耐応力腐
食割れ性に対し逆効果となるため、適性含有量はCa:
0.01%以下、REM:0.02%以下である。
含まれ、それらはいずれも鋼の熱間加工性および耐応力
腐食割れ性を劣化させる元素であり少ないほど好まし
い。しかし、Pにおいては0.04%以下、Sにおいて
は0.01%以下であれば本発明の目的とする耐応力腐
食割れ性を確保でき、また熱間圧延鋼板あるいはシ−ム
レス鋼管の製造に支障は現れない。
る。本発明者らは発明鋼1から16および比較鋼aから
jを試験鋼として溶製し、熱間圧延にて厚み12mmの
鋼板とした後以下具体的に述べるような熱処理を行い各
種試験片を採取した。 (実施例1)表1に本発明鋼の主要成分、表2に付加成
分およびその他の成分、Ac1、Ac3変態温度を示
す。この鋼を980℃でオ−ステナイト化後空冷し、6
00℃で1時間焼戻してδ−フェライト相、機械的性
質、耐応力腐食割れ性を調べた結果を表3に示す。実施
例1の焼戻しにおけるテンパー・パラメーターは174
60である。まず、δ−フェライト相は鋼番5、8、1
4で10%以下のわずかなδ−フェライト相が観察され
た以外はまったく検出されていない。Cu析出状況は直
径0.001−0.10ミクロン程度のCuの微細な析
出物が基地に均一に分散していることが10万倍の電子
顕微鏡観察により確認された。分散の程度としては基地
1平方ミクロン当りの微細なCuの析出物が30ケ〜1
00ケ程度であった。0.2%耐力、0℃でのシャルピ
衝撃値はすべて目標の75kg/mm2 、10kg−m
以上であった。また、耐応力腐食割れ性は米国腐食技術
者協会規格TM01−77に従って評価試験した。すな
わち、1気圧の硫化水素ガスを飽和させた5%食塩水+
0.5%酢酸水溶液中で試験片に0.2%耐力の60%
(例えば表3の鋼番1においては76x0.6=45.
6kg/mm2 )の応力を負荷し、破断までの時間を測
定した。結果を表3の「SSC試験破断時間」の欄に示
すように鋼番1ないし16のうち720時間以内に破断
したものは皆無であった。
のオ−トクレ−ブ中で炭酸ガス分圧30気圧、硫化水素
分圧0.05気圧の条件で10%食塩水中に336時間
浸漬し腐食減量を測定した。1から16のいずれの鋼も
腐食減量は0.5g/m2 /hr以下と従来のマルテン
サイト系ステンレス鋼に要求される1.0g/m2 /h
rを大きく下回り、本発明鋼は耐食性にも優れることが
確認された。
の鋼についてオ−ステナイト化温度(表4には焼入れ温
度と表示してある)を変化させた結果を表4の一部に示
す。いずれの場合も、オ−ステナイト化後空冷し、60
0℃で1時間焼戻した。実施例2の焼戻しにおけるテン
パー・パラメーターは17460である。オ−ステナイ
ト化温度が本発明の範囲内の時は良好な性能を示すが、
700℃と低温の時はオ−ステナイト化が不十分なため
目標強度に達していない。一方、1000℃と高温の時
は靭性が低く、耐応力腐食割れ性も悪い。
0℃で一定とし焼戻し温度を変化させた結果を表4の一
部に示す。この場合も、鋼番3の鋼をオ−ステナイト化
後空冷し、焼戻し時間は1時間とした。焼戻し温度が本
発明の範囲内の時は良好な性能を示すが、それより低い
450℃ではマルテンサイトが硬くて脆いままであるた
め靭性が悪く耐応力腐食割れ性も悪い。さらにCuの析
出が起っていない。一方、Ac1温度より高い650℃
ではCuの微細な析出物が再溶解したため存在しておら
ず、その結果強度が低くなったことが確認された。
としてテンパー・パラメーターの影響を検討する。この
場合も鋼番5の鋼を950℃でオーステナイト化後冷却
し450〜680℃の範囲で焼戻した。その結果を表5
に示す。
っても、焼戻し時間が0.10時間(テンパー・パラメ
ーター14690)と短時間の場合は、シャルピー衝撃
値が目標値よりも低い。一方、焼戻し時間が0.5時間
以上の場合はテンパー・パラメーターが15200以上
となり十分な強度靱性および良好な耐応力腐食割れ性を
示すことが判る。
パラメーターが15200から17800の範囲で焼き
戻されているため目標性能を満足していることが判る。
一方、焼戻し温度が600℃の場合、焼戻し時間が1.
0時間のものはテンパー・パラメーターが15200か
ら17800の範囲であるため、所期の性能が得られて
いるが、焼戻し時間が5時間のものはテンパー・パラメ
ーターが17800を越えており、Cuの析出物が再溶
解あるいは粗大化したため強度が不十分でまた耐応力腐
食割れ性も不十分となっていることが判る。
囲から外れる鋼を共試材としたものについてその鋼の成
分組成および試験結果を表6および表7に示す。オース
テナイト化温度及び焼戻し処理は実施例1の場合と同じ
である。表6の鋼は何等かの成分が本発明の範囲を外れ
ているため、試験結果も強度、靭性のいずれかが目標を
外れ、その結果として耐応力腐食割れ性が目標を達成し
えていない。そのうち、鋼番a、bはCu含有量が0.
3%未満のためCuの析出物が生成できずその結果強度
が75kg/mm2 未満となった。鋼番cはCu含有量
が4.0%を超えているため熱間圧延時鋼板に割れを生
じ商品価値を著しく損ない、またSSC性能も劣った。
また、鋼番dはNiが低いため、鋼番gはCrとMoが
高いため、鋼番iはMoが高いため10%を超えるδ−
フェライト相が出現し靭性を著しく劣化させている。鋼
番eはNiが9%を超え著しく高価となるため本発明の
目的からは適当でなく、またSSC性能も劣っていた。
鋼番fはCrが低いため、鋼番hはMoが低いため、炭
酸ガス腐食に対する耐食性およびSSC性能が劣ってい
る。鋼番jはCが高いためSSC性能が劣っていた。
耐食性はもとより硫化水素を多量に含む環境での耐応力
腐食割れ性の良好な高強度マルテンサイト系ステンレス
鋼を提供することが可能となった。
・パラメータの関係を示す図。
Claims (4)
- 【請求項1】 主成分として重量%で、C:0.06%
以下、Cr:12−16%、Si:1.0%以下、M
n:2.0%以下、Ni:0.5−8.0%,Mo:
0.1−2.5%、Cu:0.3−4.0%、N:0.
05%以下を含み、δ−フェライト相の面積率が10%
以下で、かつ直径0.10ミクロン以下のCu析出物が
基地に分散していることを特徴とする靭性、および耐応
力腐食割れ性に優れた0.2%耐力で75kg/mm 2
以上の高強度マルテンサイト系ステンレス鋼。 - 【請求項2】 主成分として重量%で、C:0.06%
以下、Cr:12−16%、Si:1.0%以下、M
n:2.0%以下、Ni:0.5−8.0%,Mo:
0.1−2.5%、Cu:0.3−4.0%、N:0.
05%以下を含み、さらに付加成分として重量%で、
V:0.01−0.1%,とNb:0.01−0.1%
のうち1種以上を含むδ−フェライト相の面積率が10
%以下で、かつ直径0.10ミクロン以下のCu析出物
が基地に分散していることを特徴とする靭性、および耐
応力腐食割れ性に優れた0.2%耐力で75kg/mm
2 以上の高強度マルテンサイト系ステンレス鋼。 - 【請求項3】 主成分として重量%で、C:0.06%
以下、Cr:12−16%、Si:1.0%以下、M
n:2.0%以下、Ni:0.5−8.0%,Mo:
0.1−2.5%、Cu:0.3−4.0%、N:0.
05%以下を含む組成のマルテンサイト系ステンレス鋼
をAc3以上、980℃以下の温度でオーステナイト化
後冷却し、次いで焼戻し温度T(単位:℃)として50
0℃以上630℃またはAc1のどちらか低温のほうの
温度以下、焼戻し時間t(単位:時間)が(20+lo
gt)(273+T)の値で15200以上、1780
0以下となる条件で焼戻すことを特徴とする靭性および
耐応力腐食割れ性に優れた0.2%耐力で75kg/m
m 2 以上のマルテンサイト系ステンレス鋼の製造方法。 - 【請求項4】 主成分として重量%で、C:0.06%
以下、Cr:12−16%、Si:1.0%以下、M
n:2.0%以下、Ni:0.5−8.0%,Mo:
0.1−2.5%、Cu:0.3−4.0%、N:0.
05%以下を含み、さらに付加成分として重量%で、
V:0.01−0.1%,とNb:0.01−0.1%
のうち1種以上を含むマルテンサイト系ステンレス鋼
を、Ac3以上980℃以下の温度でオーステナイト化
後冷却し、次いで焼戻し温度T(単位:℃)として50
0℃以上630℃またはAc1のどちらか低温のほうの
温度以下、焼戻し時間t(単位:時間)が(20+lo
gt)(273+T)の値で15200以上、1780
0以下となる条件で焼戻すことを特徴とする靭性および
耐応力腐食割れ性に優れた0.2%耐力で75kg/m
m 2 以上の高強度マルテンサイト系ステンレス鋼の製造
方法。
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JP15610294A JP3228008B2 (ja) | 1993-10-22 | 1994-07-07 | 耐応力腐食割れ性に優れた高強度マルテンサイト系ステンレス鋼とその製造方法 |
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JP26490993 | 1993-10-22 | ||
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JPH07166303A JPH07166303A (ja) | 1995-06-27 |
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JP15610294A Expired - Lifetime JP3228008B2 (ja) | 1993-10-22 | 1994-07-07 | 耐応力腐食割れ性に優れた高強度マルテンサイト系ステンレス鋼とその製造方法 |
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