JP3225016U - 電池用ケース - Google Patents

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Abstract

【課題】絞り加工や、パウチ形式を用いる必要のない、新規な構造の電池用ケースを提供する。【解決手段】ポリエチレンまたはポリプロピレンを主体としたフィルムを被覆した略矩形の金属を折り曲げて角型の形状に形成された容器、および容器と同じ材質で形成された容器蓋、から成る。【選択図】図12

Description

本考案は、容器本体と容器蓋からなる電池用ケースに関するものであり、特に前記容器本体がポリエチレンまたはポリプロピレンを主体としたフィルムを被覆した略矩形の金属を折り曲げて形成されたものである。
蓄電池やキャパシタ等の蓄電素子のケースとして、主に、金属板材を使用して、プレス加工や、捲き締め、レーザー溶接等により、円筒型や直方体の缶を形成する形式のものと、金属箔をガスバリア層として有する樹脂フィルムを用いてヒートシールによりケース(この場合は柔らかいので、袋体ともいう)を形成するパウチ形式のものと、2種類が広く知られている。
特許文献1には、金属板材を使用して、プレス加工や、捲き締め、レーザー溶接等により、円筒型や直方体の缶を形成する形式の電池ケースの例が開示されている。より具体的には、鋼板と、その両面を被覆する金属メッキ層と、を有する板材により構成されている電池容器が開示されている。
パウチ形式の電池は、ヒートシール用樹脂をラミネートした金属箔(ラミネート金属箔)で包装し、ヒートシール用樹脂同士をヒートシールすることにより蓄電素子部と外界とを遮断した状態で使用される。
特許文献2には、リチウムイオン電池本体、キャパシタ、電気二重層キャパシタ等の電気化学セル本体を密封収納する外装体、電池外装用包装材として、「基材層と、表面に化成処理が施された金属箔層と、酸変性ポリオレフィン層と、熱接着性樹脂層とを、少なくとも順次積層して構成される電気化学セル用包装材料」が開示されている。ここでは、「基材層」は樹脂フィルムであり、「金属箔層12は、外部からリチウムイオン電池の内部に水蒸気が浸入することを防止するための層」とされている。
電池は、さらなる小型化、長寿命化、低コスト化等が求められており、それを実現するために電池容器についても様々な研究、開発が続けられている。
特開2011−060644号公報 特開2010−086744号公報 国際公開第2013/132673号
金属板材を使用して、プレス加工等により、円筒型や直方体の容器形状を形成する場合、絞り加工などが一般的だが、材質や容器の深さによっては作製が困難である。
パウチ形式の電池は、金属箔の板厚が薄く、強度と剛性が十分でない場合がある。その場合、所望の形状を得るための加工ができない、容器自体の強度と剛性が十分でない等の問題を生じる。
本考案では、絞り加工や、パウチ形式を用いる必要のない、新規な構造の電池用ケースを提供することを課題とする。
本考案により、以下の態様が提供される。
[1]
ポリエチレンまたはポリプロピレンを主体としたフィルムを被覆した略矩形の金属を折り曲げて形成された容器、および前記容器と同じ材質で形成された容器蓋、から成ることを特徴とする、電池用ケース。
[2]
前記金属の少なくとも一部が溶接されて、前記容器の側部および底部が封止されていることを特徴とする、[1]に記載の電池用ケース。
[3]
前記容器の側部の封止は、前記金属の対向する端縁が当接するように、前記金属を円筒の形状に曲げ、当接した前記金属の端縁を溶接したものであることを特徴とする、[2]に記載の電池用ケース。
[4]
前記容器の底部の封止は、前記円筒の下端縁を圧接し、当接した前記下端縁を溶接したものであることを特徴とする、[3]に記載の電池用ケース。
[5]
前記フィルムを被覆した金属を折り曲げて、角型の形状に形成されていることを特徴とする、[1]〜[4]のいずれか1項に記載の電池用ケース。
[6]
前記容器および/または前記容器蓋が、前記金属を溶接することなく形成されたものであることを特徴とする、[1]に記載の電池用ケース。
[7]
前記金属の4端部を折り曲げて、前記容器の底部および4つの側面を画定し、
前記容器の4つの角部で前記金属が重合された部分を、前記4つの側面のいずれかに外接するように折り曲げて形成されていることを特徴とする、[6]に記載の電池用ケース。
[8]
前記容器の4つの角部で前記金属が重合された部分を、前記4つの側面のすべてに外接するように折り曲げて形成されていることを特徴とする、[7]に記載の電池用ケース。
[9]
前記容器と前記容器蓋との接合部は、前記フィルムを被覆した前記金属の溶接部、空隙部、前記フィルムの融着部を有し、かつ電池ケースの内面が前記ポリエチレンまたはポリプロピレンを主体とした前記フィルムで被覆されていることを特徴とする、[1]〜[5]のいずれか1項に記載の電池用ケース。
[10]
前記金属の溶接部および前記フィルムの融着部を含めた前記接合部の長さが15mm以下であり、前記接合部における前記空隙部が5mm以下であることを特徴とする、[9]に記載の電池用ケース。
[11]
前記容器の厚みが0.05mm以上、1.0mm以下、前記容器蓋の厚みが0.1mm以上であることを特徴とする、[1]〜[10]のいずれか1項に記載の電池用ケース。
[12]
前記金属がめっき鋼板であり、めっき金属が、Al,Cr,Ni,Sn,Znの中から、1種または複数の種類の元素を含むことを特徴とする、[1]〜[11]のいずれか1項に記載の電池用ケース。
[13]
前記フィルムを被覆した略矩形の金属が、めっき鋼板のラミネート材、SUSのラミネート材、Alのラミネート材、であることを特徴とする、[1]〜[12]のいずれか1項に記載の電池用ケース。
本考案の一態様によれば、絞り加工や、パウチ形式を用いる必要のない、新規な構造の電池用ケースが提供される。したがって、絞り加工やパウチ形式では作成が困難であった容器が実現できる。
絞り加工などは、材質によっては深さのある容器の作製は困難である。これに対して、板を折り曲げて容器形状にすることで、金型を用いずに、自由度の高い容器の成型が可能となる。
またパウチ形式では、金属箔の板厚が薄く、強度と剛性が十分でない場合がある。これに対して、折り曲げが可能な金属を用いることにより、容器の強度と剛性を高めることができる。
さらに、電池材料は反応性が高く、可燃性物質を含むものが一般的であるが、ポリエチレンまたはポリプロピレンを含むフィルムにより、電池材料に対する耐食性を高めることもできる。
図1は、本考案の第一の態様である電池用ケースを形成する工程の一部を説明する図であって、略矩形の金属の模式図である。 図2は、本考案の第一の態様である電池用ケースを形成する工程の一部を説明する図であって、金属を円筒状にしたものの模式図である。 図2Aは、図2とは別の態様の円筒状にしたものの模式図である。 図3は、本考案の第一の態様である電池用ケースを形成する工程の一部を説明する図であって、金属を円筒状にし、溶接したものの模式図である。 図3Aは、図3とは別の態様の円筒状にし、溶接したものの模式図である。 図4は、本考案の第一の態様である電池用ケースを形成する工程の一部を説明する図であって、円筒の下端を圧接したものの模式図である。 図5は、本考案の第一の態様である電池用ケースを形成する工程の一部を説明する図であって、圧接した下端を折り曲げて、成形したものの模式図である。 図6は、本考案の第一の態様である電池用ケースを形成する工程の一部を説明する図であって、圧接した下端をさらに折り曲げて、成形を進めたものの模式図である。 図7は、本考案の第一の態様である電池用ケースを形成する工程の一部を説明する図であって、容器とそれに嵌合される容器蓋の模式図である。 図8は、本考案の第二の態様である電池用ケースを形成する工程の一部を説明する図であって、略矩形の金属の模式図である。 図9は、本考案の第二の態様である電池用ケースを形成する工程の一部を説明する図であって、略矩形の金属の折り曲げ線を示す模式図である。 図10は、本考案の第二の態様である電池用ケースを形成する工程の一部を説明する図であって、折り曲げ線に沿って折り曲げて、成形したものを示す模式図である。 図11は、本考案の第二の態様である電池用ケースを形成する工程の一部を説明する図であって、折り曲げ線に沿ってさらに折り曲げて、成形を進めたものを示す模式図である。 図12は、本考案の第二の態様である電池用ケースを形成する工程の一部を説明する図であって、容器とそれに嵌合される容器蓋の模式図である。 図13は、本考案の第三の態様である電池用ケースを形成する工程の一部を説明する図であって、略矩形の金属の模式図である。 図14は、本考案の第三の態様である電池用ケースを形成する工程の一部を説明する図であって、略矩形の金属の折り曲げ線を示す模式図である。 図15は、本考案の第三の態様である電池用ケースを形成する工程の一部を説明する図であって、折り曲げ線に沿って折り曲げて、成形したものを示す模式図である。 図16は、本考案の第三の態様である電池用ケースを形成する工程の一部を説明する図であって、折り曲げ線に沿ってさらに折り曲げて、成形を進めたものを示す模式図である。 図17は、本考案の第三の態様である電池用ケースを形成する工程の一部を説明する図であって、容器とそれに嵌合される容器蓋の模式図である。 図18は、本考案の第四の態様である電池用ケースを形成する工程の一部を説明する図であって、略矩形の金属の模式図である。 図19は、本考案の第四の態様である電池用ケースを形成する工程の一部を説明する図であって、略矩形の金属の折り曲げ線を示す模式図である。 図20は、本考案の第四の態様である電池用ケースを形成する工程の一部を説明する図であって、折り曲げ線に沿って折り曲げて、成形したものを示す模式図である。 図21は、本考案の第四の態様である電池用ケースを形成する工程の一部を説明する図であって、折り曲げ線に沿ってさらに折り曲げて、成形を進めたものを示す模式図である。 図22は、本考案の第四の態様である電池用ケースを形成する工程の一部を説明する図であって、折り曲げ線に沿ってさらに折り曲げて、成形を進めたものを示す模式図である。 図23は、本考案の第四の態様である電池用ケースを形成する工程の一部を説明する図であって、容器とそれに嵌合される容器蓋の模式図である。 図24は、接合部の拡大模式図である。 図25は、接合箇所の一例を示した写真である。
本考案の一態様である、電池用ケースは、ポリエチレンまたはポリプロピレンを主体としたフィルムを被覆した略矩形の金属を折り曲げて形成された容器、および前記容器と同じ材質で形成された容器蓋、から構成される。
本考案の第一の態様の電池用ケースを形成する工程が図1〜図7に示される。これらの図を用いて、本考案の第一の態様の電池用ケースについて説明する。
図1は、略矩形の金属の模式図であり、この金属が折り曲げられて電池用ケースに形成される。図2に示すように、略矩形の金属の対向する端縁が当接するように、略矩形の金属を円筒の形状に曲げ、を円筒状の形状に成形し、さらに、図3に示すように、当接した前記金属の端縁を溶接してもよい。金属が溶接され、金属に被覆されたポリエチレンまたはポリプロピレンを主体としたフィルムが融着(ヒートシール)されることにより、容器の側部が封止される。
別の態様として、図2Aに示すように、円筒の形状を形成する際に、当接する略矩形の金属の端縁が円筒の外に延在するようにし、溶接をしてもよい。この延在部では、略矩形の金属に被覆されたポリエチレンまたはポリプロピレンを主体としたフィルムどうしを接触させることができ、ヒートシール部をより広い範囲に形成することができ、容器の側部の封止性を高めることができる。図3Bに示すように、延在部は、溶接、ヒートシールをした後に、円筒の形状の胴部に沿って巻き付けてもよい。
図4に示すように、上記までの工程によって得られた円筒の下端縁を圧接してもよい。圧接部は融着および/または溶接してもよい。下端縁の圧接に伴って、円筒の上方の形状も変化するので、最終的に所望する容器の形状になるよう適宜成形することが好ましい。円筒の上方を略方形または角型の筒状に変形してもよい。
また、この下端縁の圧接部は溶接してもよい。溶接およびそれに伴って形成されるヒートシールによって、容器の底部の封止性を高めることができる。
図4では、圧接部が下方に延在している。そこで、図5に示すように、この延在部(圧接部)をさらに折り曲げて、胴部の底面に沿うように成形を進めてもよい。
図5では、圧接部が胴部の底面から突出するように延在している。そこで、図6に示すように、この突出する延在部(圧接部)をさらに折り曲げて、胴部の底部に当接するように、すなわち重ね合わせるように、成形を進めてもよい。これにより、角型の容器または箱形の容器、言い換えると上面のない直方体形状の容器を得ることができる。
図7に示すように、上記までの工程によって得られた容器に、容器蓋を嵌合させて、電池ケースを形成することができる。容器蓋も、容器と同様の工程により得ることができる。
なお、電池ケースの内部には電解液が注入され、電池ケースの電解液への耐食性を確保するために、電池ケースの内部側に、ポリエチレンまたはポリプロピレンを主体としたフィルムが存在するように、容器および容器蓋を形成することが好ましい。
本考案の第二の態様の電池用ケースを形成する工程が図8〜図12に示される。これらの図を用いて、本考案の第二の態様の電池用ケースについて説明する。特に、矛盾の生じない限り、他の態様の電池ケースについて説明された事項を、第二の態様の電池ケースについて適用することが可能である。
図8は、略矩形の金属の模式図であり、この金属が折り曲げられて電池用ケースに形成される。図9は、略矩形の金属の折り曲げ線を示したものである。図10は、この折り曲げ線に沿って、折り曲げを進めて成形されたものを示したものである。より詳しくは、金属の中央部(容器の底部に相当する部分)に対して略垂直になるように、金属の4端部(4辺に略平行な端縁部)を折り曲げて、容器の底部および壁部を画定する。壁部の高さを揃えるために、4端部の幅を揃えることが好ましい。金属の4端部を折り曲げた際に、金属の角部では、金属の端部どうし(縦の辺に平行な端部と横の辺の端部)を当接させてすなわち重ね合わせて、壁部から延在するように成形することができる。図11に示すように、この延在部を、さらに折り曲げて、壁部に当接するように成形することができる。これにより、角型の容器または箱形の容器、言い換えると上面のない直方体形状の容器を得ることができる。
図12に示すように、上記までの工程によって得られた容器に、容器蓋を嵌合させて、電池ケースを形成することができる。容器蓋も、容器と同様の工程により得ることができる。
本考案の第三の態様の電池用ケースを形成する工程が図13〜図17に示される。これらの図を用いて、本考案の第三の態様の電池用ケースについて説明する。特に、矛盾の生じない限り、他の態様の電池ケースについて説明された事項を、第三の態様の電池ケースについて適用することが可能である。
図13は、略矩形の金属の模式図であり、この金属が折り曲げられて電池用ケースに形成される。図14は、略矩形の金属の折り曲げ線を示したものである。図15は、この折り曲げ線に沿って、折り曲げを進めて成形されたものを示したものである。より詳しくは、金属の中央部(容器の底部に相当する部分)に対して略垂直になるように、金属の4端部(4辺に略平行な端縁部)を折り曲げて、容器の底部および壁部を画定する。壁部の高さを揃えるために、4端部の幅を揃えることが好ましい。金属の4端部を折り曲げた際に、金属の角部では、金属の端部どうし(縦の辺に平行な端部と横の辺の端部)を当接させてすなわち重ね合わせて、壁部から延在するように成形することができる。図16に示すように、この延在部を、さらに折り曲げて、壁部に当接するように成形することができる。壁部は4つの側面で構成され、延在部も4つあるので、壁部の側面のそれぞれに、延在部が1つずつ当接するように、延在部を折り曲げることができる。これにより、角型の容器または箱形の容器、言い換えると上面のない直方体形状の容器を得ることができる。さらに、この態様では、壁部の4側面の全てが延在部により補強されており、容器の強度を向上することができる。
図17に示すように、上記までの工程によって得られた容器に、容器蓋を嵌合させて、電池ケースを形成することができる。容器蓋も、容器と同様の工程により得ることができる。
本考案の第四の態様の電池用ケースを形成する工程が図18〜図23に示される。これらの図を用いて、本考案の第四の態様の電池用ケースについて説明する。特に、矛盾の生じない限り、他の態様の電池ケースについて説明された事項を、第四の態様の電池ケースについて適用することが可能である。
図18は、略矩形の金属の模式図であり、この金属が折り曲げられて電池用ケースに形成される。図19は、略矩形の金属の折り曲げ線を示したものである。図20は、この折り曲げ線に沿って、折り曲げを進めて成形されたものを示したものである。より詳しくは、金属の中央部(容器の底部に相当する部分)に対して略垂直になるように、金属の4端部(4辺に略平行な端縁部)を折り曲げて、容器の底部および壁部を画定する。金属の4端部を折り曲げた際に、金属の角部では、金属の端部どうし(縦の辺に平行な端部と横の辺の端部)を当接させてすなわち重ね合わせて、壁部から延在するように成形することができる。図21に示すように、紙面の手前側の延在部を、さらに、紙面の手前側の壁部に当接するように折り曲げ、紙面の奥側の延在部を、さらに、紙面の奥側の壁部に当接するように折り曲げることができる。なお、本実施態様では、図21に示すように、壁部を構成する4側面のうち、紙面の手前側の側面と奥側の側面が、他の側面(左右の側面)よりも高くまで延在している。そこで、図22に示すように、紙面の手前側および奥側の側面は、他の壁部(左右の壁部)よりも高く延在する部分を、底部と略平行になるように、さらに折り曲げることができる。当該部分は、容器のフランジ部や取っ手として用いることができる。当該部分をさらに曲げて、壁部をさらに補強することもできる。このようにして、角型の容器または箱形の容器、言い換えると上面のない直方体形状の容器を得ることができる。
図23に示すように、上記までの工程によって得られた容器に、容器蓋を嵌合させて、電池ケースを形成することができる。容器蓋も、容器と同様の工程により得ることができる。
本考案の一態様によれば、電池用ケースは、容器(本体)と容器蓋とを接合して構成される。容器と容器蓋との接合部は、ポリエチレンまたはポリプロピレンを主体としたフィルムを被覆した金属の溶接部、空隙部、フィルムの融着部を有し、かつ電池ケースの内面がポリエチレンまたはポリプロピレンを主体としたフィルムで被覆されている。
図24は、接合部の拡大模式図であって、接合部は溶接部、融着部、およびそれらの間の空隙部を含む。なお、本願明細書において、特に断りのない限り、溶接とは金属材料による接合を指し、融着とは樹脂材料による接合を指す。容器本体と前記容器蓋は、ポリエチレンまたはポリプロピレンを主体とするフィルムを被覆した金属(以下、「樹脂ラミネート鋼板」と称することがある)で構成されているので、この金属による溶接が実現され、フィルムに含まれる樹脂(ポリエチレンまたはポリプロピレン)による融着が実現される。
融着部は、樹脂が熱で溶融固化したものであり、いわゆるヒートシールとも呼ばれるものである。融着部(ヒートシール)は金属により構成されたものではなく樹脂のみで接合されており、そのガスバリア性は、金属層や、金属により構成された溶接部に比べて、低く、特に水分の侵入が寿命に致命的な影響を与える。そのため、高いガスバリア性が要求される電池において、融着部のみによる接合は十分なガスバリア性を発揮できないという問題がある。しかし、本願考案の一態様による接合部は、融着部に加えて、溶接部を有している。溶接した部分は、金属によりガスのバリアが形成されるため、溶接部分では樹脂融着部と比較して、外部からの水分の侵入、および、電解液の外部への漏洩が、無視できるほど低減できる。これは、大幅な寿命延長を可能とするという顕著な効果を奏する。
なお、溶接はレーザー等の熱源によって実現される。この熱は、鋼板を溶接するだけでなく、その近辺の樹脂フィルムにも伝わり、樹脂フィルムの一部の融着も実現される。すなわち、レーザー等による溶接工程は、融着工程も兼ねており、作業負担の軽減やコストの低下につながる。
溶接のために、樹脂ラミネート鋼板にレーザー等で加熱すると、加熱箇所から熱が伝わり、加熱部に近いほど高温になり、加熱部から遠ざかるほど低温になる。温度に応じて、フィルムの主成分であるポリオレフィン系樹脂は、溶融または蒸発する。樹脂が溶融した箇所では融着部が形成され、一方で樹脂が蒸発した箇所は空隙部が形成される。樹脂が蒸発した箇所のうち、鋼板が露出し、加熱部およびその近傍の特に温度が高い箇所で、鋼板の溶接部が形成される。加熱箇所からある程度離れた箇所では、ポリオレフィン系樹脂の蒸発温度より高く、鋼板の融点より低い温度になるので、そこに、空隙部のみが残る。さらに加熱箇所から離れた箇所では、ポリオレフィン系樹脂の蒸発温度より低く、ポリオレフィン系樹脂の融点より高い温度になるので、融着部が形成される。
したがって、本願考案の一態様による接合部は、溶接部と融着部の間に空隙部を有している。空隙部は、当然のことながら溶接も融着もしておらず接合強度を向上させない。また、空隙部は、樹脂フィルムの熱分解ガスが滞留しやすく、その後に周辺からの溶接熱等によりガスが膨張等することにより、当該空隙部近辺の樹脂フィルムや溶接部に欠陥を生じる恐れがある。さらに、空隙部が大きいほど、溶接部や融着部による接合力を大きくする必要があり、容器の小型化を困難にし、積載性を低下させる。そのため、空隙部をできるだけ小さくすることが、小型化、積載性、および長寿命化の点で有利である。
本考案の一態様である、電池用ケースは、下記の関係が満たすものである。
空隙部の長さ/鋼板の板厚≦ 30.0・・・(1)
空隙部の長さ/接合部の長さ<0.50 ・・・(2)
空隙部は、樹脂フィルムの一部が溶融、蒸発した箇所に対応する。そのため、空隙部の大きさについて、その高さ(断面縦方向の距離)は最大でも樹脂フィルムの厚み程度であるが、その長さ(断面横方向の距離)は、溶接のための熱の伝熱の状況に応じて変化し、一般に、入熱量が大きいほど、または入熱時間が長いほど、長くなる。
本考案者らは、鋭意検討の結果、空隙部の長さは、鋼板の板厚によって変化し得ることを見出した。
厚さの薄い金属箔に樹脂をラミネートしたものを溶接しようとする場合、金属箔にラミネートされた樹脂を除去しておく必要がある。ただし、樹脂フィルムと金属箔の厚さは同程度である。そのため、金属箔を溶接するための入熱で、相当広範囲の樹脂フィルムが溶融、蒸発する。そのため、空隙部が大きくなりやすい。また、金属箔を溶接するための入熱で、ラミネート樹脂が同時に蒸発し、その樹脂の蒸発ガスにより、溶融した金属箔が吹き飛ばされることもある(いわゆる爆飛)。なお、特許文献3では、このような爆飛を回避するために、金属箔を構成する金属の融点が樹脂の熱分解温度よりある程度高くなるように、材料を選定している。金属の融点と樹脂の分解温度が離れている程、樹脂が分解してガスが発生してから、金属が溶融するまでのタイムラグが大きいことにより、爆飛の原因となる樹脂の分解ガスを金属が溶融する前に十分に放散できると、特許文献3では推定されている。また、特許文献3では、ラミネート樹脂をヒートシールした上で、溶接を別途行っている。
これに対して、本願考案の一態様では、金属箔の代わりに、鋼板に樹脂をラミネートした、樹脂ラミネート鋼板を用いる。鋼板は、金属箔よりも板厚が大きく、熱容量も大きい。また、一般的に、樹脂と金属(鋼板)では、金属の方が熱伝導率は高い。そのため、樹脂ラミネート鋼板に溶接のための入熱を行っても、樹脂フィルムの溶融、蒸発する範囲を、樹脂ラミネート金属箔に比べて、相当小さくすることができる。つまり、空隙部が相対的に小さく、空隙部の長さも短くできる。
また、概して、鋼板は、金属箔よりも厚みが大きいので、剛性が高い。したがって、鋼板で構成された容器は、金属箔で構成された容器に比べて、それらを幾重にも重ねて積載することもでき、すなわち積載性を高くすることができる。リチウムイオン電池等の電池は通常、複数積載されるが、積載のために許容される面積が限られている場合、より多数の電池を積載できることが有利である。本考案の一態様では、容器の剛性が高く、積載性を高くすることができ、有利である。
なお、複数の電池ケースを所定の位置に積載する場合(例えば自動車等では複数の電池容器を積載することがある)、電池ケースは垂直方向に積み重ねてもよいし、あるいは水平方向に並べて置いてもよいし、または垂直積み重ねと水平並置を組み合わせてもよい。いずれの場合でも、同数の電池容器を積載する場合は、積載に必要な空間が小さい方が限られたスペースを有効に活用できる。本願考案の一態様では、空隙部の長さも短くできるので、積載に必要な空間を小さくすることができ、有利である。
本考案の一態様では、箔などに比べて、比較的厚い鋼板を採用することにより、空隙部の長さが比較的短くなる。逆に言うと、空隙部長さと鋼板の板厚について、以下の関係を満たしている。
空隙部の長さ/鋼板の板厚≦30.0 ・・・(1)
この比率が30.0以下であれば、金属板の板厚が相対的に厚くなり、言い換えると空隙部の長さが相対的に短くなり、上述した不具合(接合強度低下、ガス滞留による他部損傷、小型化阻害、低積載性等)が解消される。これらの不具合を解消する観点から、この比率は小さいほど、好ましく、空隙部の長さ/鋼板の板厚≦1.0であってもよい。下限値は特に限定されるものではないが、空隙部が存在する限り、この比率は0超であるので、空隙部の長さ/鋼板の板厚>0としてもよい。空隙部が存在することにより、溶接部と融着部が物理的に離隔しており、溶接部に樹脂が混入することを防ぐことができる。アルミなどのレーザーの熱吸収効率が悪いものよりも、鉄などの方が効率良く溶接できるため、空隙部の長さは短くなる。
一方、この比率が30.0を超えると、鋼板の板厚が相対的に薄くなり、言い換えると空隙部の長さが相対的に長くなり、上述した不具合が発生しやすい。
ここで、鋼板の厚みは変化するものであってもよい。一例として、出発の鋼板板厚は一定でも、絞り成形等で、フランジ、縦壁、底で板厚が変わってもよい。
また、溶接箇所となる鋼板を薄くすることにより、溶接を速やかに行うことができる。また、樹脂フィルムを融着する箇所で、鋼板の厚みを相対的に薄くすることにより、樹脂フィルムへの伝熱を促進して、樹脂の融着を促進することができる。鋼板の厚みを変化させて、入熱制御する代わりに、またはそれに加えて、溶接の際に用いるジグに、そのような吸熱作用をもたせてもよい。より詳しくは、ジグは内部が水冷されていても良い。またヒートシールの長さを制御するため、もしくはヒートシール部の形状を制御するために、ジグはCu、Al、Feなどの熱伝導率の異なるジグを使っても良い。それらを部分的に組み合わせたジグでもよい。
空隙部の長さが(樹脂ラミネート金属箔の場合より)比較的短くなるために、接合部(溶接部+空隙部+融着部)の長さに対する空隙部の長さの比率も小さくなる。本考案の一態様では、下記式を満たす。
空隙部の長さ/接合部の長さ<0.50 ・・・(2)
この比率が0.50未満であれば、接合部に対する空隙部の長さが相対的に大きく、空隙部による不具合(接合強度低下、ガス滞留による他部損傷、小型化阻害、低積載性等)が解消される。これらの不具合を解消する観点から、この比率は小さいほど、好ましく、空隙部の長さ/接合部の長さ≦0.20であってもよい。下限値は特に限定されるものではないが、空隙部が存在する限り、この比率は0超であるので、空隙部の長さ/接合部の長さ>0としてもよい。空隙部が存在することにより、溶接部と融着部が物理的に離隔しており、溶接部に樹脂が混入することを防ぐことができる。
一方、この比率が0.50以上であると、接合部に対する空隙部の長さが相対的に大きく、空隙部による不具合(接合強度低下、ガス滞留による他部損傷、小型化阻害、低積載性等)が発生しやすい。
接合部における空隙部の長さは、5.00mm以下であってもよい。空隙部による不具合(接合強度低下、ガス滞留による他部損傷、小型化阻害、低積載性等)を解消する観点から、特に電池ケースの小型化や高積載性を実現する観点から、空隙部は小さいほど好ましく、すなわち空隙部の長さは短いほど好ましく、好ましくは3.00mm以下、さらに好ましくは2.00mm以下、より望ましくは1.00mm以下、さらに望ましくは0.50mm以下であってもよい。
空隙部の長さは、2.00mm超であると、接合部に対する空隙部の長さが相対的に大きく、空隙部による不具合(接合強度低下、ガス滞留による他部損傷、小型化阻害、低積載性等)が発生しやすくなり、特に電池ケースの小型化や高積載性が困難となることがある。
接合部の長さは、15.0mm以下であってもよい。電池ケースの小型化や高積載性を実現する観点から、接合部の長さは短いほど好ましく、好ましくは10.0mm以下、さらに好ましくは8.0mm以下、より望ましくは5.0mm以下、さらに望ましくは3.0mm以下と2.0mm以下であってもよい。
空隙部の長さは、15.0mm超であると、接合部の長さが大きく、電池ケースの小型化や高積載性が困難となることがある。
樹脂ラミネート鋼板の厚みが0.05mm以上、1.00mm以下であってもよい。容器蓋の厚みは0.1mm以上であってもよい。鋼板が薄いと溶接金属を形成するための金属量が不足し、溶接欠陥が発生しやすくなり、また金属の変形も生じやすく、溶接の制御が困難になることがある。一方、厚すぎると、そもそも容器としての重量が増すため、軽量化の観点から不利な場合がある。
また、融着(ヒートシール)用のラミネート樹脂の厚さは10〜200μmが好ましく、15〜100μmがより好ましい。ラミネート樹脂が薄いとヒートシール時に溶融する樹脂が少なくなり過ぎ、融着部としての欠陥(樹脂の存在しないシールとしての欠陥)が発生し始める場合がある。一方、厚すぎると、溶接時に分解ガスを多く発生するようになり、空隙部が大きくなりやすくなる上に、溶接されるべき鋼板が溶接されにくくなる場合がある。
樹脂ラミネート鋼板の鋼板はめっき鋼板であってもよい。めっきは、めっき鋼板の溶接や、ラミネート樹脂の融着に影響を与えない範囲で、適宜選択してもよい。電池の電解液や使用環境等に応じて、適当な耐食性が得られるように、めっきの種類を選択してもよい。めっき鋼板に使われる、めっきは、Al,Cr,Ni,Sn,Znの中から、1種または複数の種類の元素を含むものであってもよい。これらの元素をふくむめっきは、常法によって得ることが可能である。複数元素を含むめっきにおいて、めっき元素は合金層、層状、一部粒状一部層状のうち一種または複数の状態でめっきされていても構わない。耐蝕性、入手容易性の観点等から、めっきとして、酸化クロム層と金属クロム層を有するティンフリースティールや、ニッケル層、あるいはニッケル層とニッケル−鉄合金層を有する様なニッケルめっきであってもよい。
めっき量は、電池の電解液や使用環境等に応じて、適当な耐食性が得られるように、適宜選択してもよく、5mg/mから5g/mの範囲であってもよい。5mg/m以下だとめっきが全体に付着できず、耐電解液密着性が低下しやすい。5g/m以上だと加工時にめっきにクラックが入り、ピール強度などが低下する原因となることがある。
なお、めっきはめっき浴の種類がいくつかありうるが、めっき浴によらず性能が発現する。まためっき方法も電気めっき以外に、溶射や蒸着、溶融めっきであっても構わない。
樹脂ラミネート鋼板に用いられる、鋼板は、めっき性や、溶接性、ラミネート樹脂の融着性に問題を与えない範囲で、適宜選択してもよい。電池の電解液や使用環境等に応じて、適当な耐食性が得られるように、鋼板の種類を選択してもよい。鋼板の厚みにより、耐蝕性や容器強度を確保することもできるので、コストパフォーマンスのよい鋼板を採用してもよい。鋼板として、ステンレス鋼のほか、純鉄、炭素鋼、低合金鋼、銅、ニッケル、ジルコニウム、バナジウム、アルミ鉄合金、亜鉛銅合金等を採用してもよい。
樹脂ラミネート鋼板に用いられる、樹脂は、ポリオレフィン系樹脂である。ポリオレフィン系樹脂は、ヒートシール用樹脂としても好適であり、また、電池用ケースの内面樹脂を兼ねることもでき、本考案の一態様では、電池ケースの内面の少なくとも一部が前記フィルムで被覆される。
前記溶接部および前記融着部を含めた接合部のポリオレフィン系樹脂とは、下記(式1)の繰り返し単位を有する樹脂を主成分にする樹脂であってもよい。主成分とは、(式1)の繰り返し単位を有する樹脂が、50質量%以上を構成することである。
−CRH−CR− (式1)
(式1中、R、Rは各々独立に炭素数1〜12のアルキル基または水素を示し、Rは炭素数1〜12のアルキル基、アリール基又は水素を示す)
ポリオレフィン系樹脂は、前述のこれらの構成単位の単独重合体でも、2種類以上の共重合体であってもよい。繰り返し単位は,5個以上化学的に結合していることが好ましい。5個未満では高分子効果(例えば,柔軟性,伸張性など)が発揮し難いことがある。
上記繰り返し単位を例示すると、エチレン、プロペン(プロピレン),1−ブテン,1−ペンテン,4−メチル−1−ペンテン,1−ヘキセン,1−オクテン,1−デセン,1−ドデセン等の末端オレフィンを付加重合した時に現われる繰り返し単位,イソブテンを付加したときの繰り返し単位等の脂肪族オレフィンや,スチレンモノマーの他に,o−メチルスチレン,m−メチルスチレン,p−メチルスチレン,o−エチルスチレン,m−エチルスチレン,o−エチルスチレン,o−t−ブチルスチレン,m−t−ブチルスチレン,p−t−ブチルスチレン等のアルキル化スチレン,モノクロロスチレン等のハロゲン化スチレン,末端メチルスチレン等のスチレン系モノマー付加重合体単位等の芳香族オレフィン等が挙げられる。
このような繰り返し単位の単独重合体を例示すると,末端オレフィンの単独重合体である低密度ポリエチレン,中密度ポリエチレン,高密度ポリエチレン,直鎖状低密度ポリエチレン,架橋型ポリエチレン,ポリプロピレン,ポリブテン,ポリペンテン,ポリへキセン,ポリオクテニレン,ポリイソプレン,ポリブタジエン等が挙げられる。また,上記繰り返し単位の共重合体を例示すると,エチレン−プロピレン共重合体,エチレン−ブテン共重合体,エチレン−プロピレン−ヘキサジエン共重合体,エチレン−プロピレン−5−エチリデン−2−ノルボーネン共重合体等の脂肪族ポリオレフィンや,スチレン系共重合体等の芳香族ポリオレフィン等が挙げられるが,これらに限定されるものではなく,上記の繰り返し単位を満足していればよい。また,ブロック共重合体でもランダム共重合体でもよい。また,これらの樹脂は単独もしくは2種類以上混合して使用してもよい。
また,本考案に使用するポリオレフィンは,上記のオレフィン単位が主成分であればよく,上記の単位の置換体であるビニルモノマー,極性ビニルモノマー,ジエンモノマーがモノマー単位もしくは樹脂単位で共重合されていてもよい。共重合組成としては,上記オレフィン単位に対して50質量%以下,好ましくは30質量%以下である。50質量%超では腐食原因物質に対するバリア性等のオレフィン系樹脂としての特性が低下することがある。
上記極性ビニルモノマーの例としては,アクリル酸,アクリル酸メチル,アクリル酸エチル等のアクリル酸誘導体,メタクリル酸,メタクリル酸メチル,メタクリル酸エチル等のメタクリル酸誘導体,アクリロニトリル,無水マレイン酸,無水マレイン酸のイミド誘導体,塩化ビニル等が挙げられる。
取扱性,腐食原因物質のバリア性から最も好ましいのは,低密度ポリエチレン,中密度ポリエチレン,高密度ポリエチレン,直鎖状低密度ポリエチレン,架橋型ポリエチレン,ポリプロピレン又はこれらの2種類以上の混合物である。
本考案で使用するラミネート樹脂(ヒートシール樹脂)として、これらポリオレフィン系樹脂は一般的に好適であるが、工業的にはポリエチレンまたはポリプロピレンを主とするものが、コスト、流通、熱ラミネートの容易性等の観点で、さらに好適である。
ここでポリプロピレンを主とする樹脂とは、ポリプロピレンを50質量%以上含有する樹脂をいい、ポリプロピレン純粋樹脂の他に、合計が50質量%未満の割合で低密度ポリエチレンや高密度ポリエチレンなど各種ポリエチレン、ポリブテン、ポリペンテン等のポリオレフィンを重合した樹脂などを挙げることができる。また、めっき鋼板との密着性を向上させるために酸変性ポリオレフィンとしたものでも良い。ブロック共重合体でも、ランダム共重合体でも、また、重合するポリプロピレン以外のオレフィンが1種類でも2種類以上でも、主となるポリプロピレンが50質量%以上となっていれば良い。より好ましくはポリプロピレンが70質量%以上、90質量%以上のものから、ポリプロピレンそのものまでである。好ましくは、重合されるものは、ポリプロピレン単独の時よりも分解温度を低下させるものの方が好ましく、ポリエチレン系の樹脂が特に好適である。
本考案容器に用いる樹脂ラミネート鋼板は、ヒートシール樹脂を被覆していない側の面、つまり、通常は容器の外面となる側の面については、鋼板の表面そのままでも、酸化物形成やめっき被覆、あるいは種々の樹脂ラミネートを施していても良い。特に、ヒートシール樹脂よりも薄い被覆が施されている場合は、溶接に影響は無く、絶縁性や、放熱性などの機能を持たせるために外面側を被覆したラミネート鋼板も本考案の範疇である。特に20μm以下、または12μm以下の厚みのPETフィルムを外面に被覆して絶縁性を与えることは、経済性、取扱い性、加工性等の観点からも好適である。
また、電池用容器の内面側の融着(ヒートシール)樹脂は、単層である必要はなく、金属との密着性を向上させるために酸変性させたポリプロピレン層をめっき鋼板に接する側にラミネートし、ヒートシール性を向上させたポリプロピレン層をその外層にラミネートするなど、複層の樹脂ラミネートを施すことも可能である。
さらに、電池用容器の内面側は、耐電解液性を向上させるために、鋼板に表面処理を施すことが可能であり、電解クロメート、樹脂クロメート等各種クロメート処理や、その他のクロメートフリー化成処理を施しても良い。なお製品として既にクロム含有表面処理の施されているティンフリースティールは、各種クロメート処理を施した金属面と同等に耐電解液性が良好である。化成処理する方法として、以下を用いてもよい。化成処理の前に、下地処理としてスケール除去処理をしてもよい。スケール除去処理法として、酸洗,サンドブラスト処理,グリッドブラスト処理等が挙げられる。化成処理法を例示するとクロメート処理,Cr+6を使用しないクロメートフリー処理,ストライクめっき処理,エポキシプライマー処理,シランカップリング処理,チタンカップリング処理等が挙げられる。中でも酸洗,サンドブラスト処理後,クロメート処理又はクロメートフリー処理,ストライクめっき処理,エポキシプライマー処理を併用した下地処理が,樹脂組成物と鋼板との化学的な密着力を強化する観点から好ましい。
溶接部および融着部を含む接合部について、その位置は特に限定されるものではないが、溶接作業性や、無駄な材料の低減等を考慮して、容器本体と容器蓋の端部とを溶接することが好ましい。
また、溶接部および融着部を含む接合部について、その配向方向は特に限定されるものではなく、接合部が容器本体の底部(または容器蓋)と略平行であってもよい。この態様では、容器本体の開口部をフランジ構造として、当該フランジ部と容器蓋の外縁部とを重ね合わせて、溶接することができ、溶接作業性が向上する。また、このような接合部は、容器本体の側胴部に対して突出するような形態であるが、本考案による接合部の長さは、鋼板板厚に対して所定の比率に限定されているので、その突出の程度は僅かである。そのため、容器を複数並置した場合でも、接合部どうしが干渉して、積載性を低下させる問題は生じにくい。
一方で、接合部が、容器本体の側胴部と略平行(言い換えると容器本体の底部(または容器蓋)と略垂直)であってもよい。この態様は、容器本体に容器蓋が嵌合するように、容器本体の開口部の内縁寸法と容器蓋の外径寸法を調整すること等により実現してもよい。この接合部は、容器本体の側胴部に対して突出せず(言い換えると側胴部に沿って延伸しており)、容器を複数並置した場合でも、接合部どうしが干渉して、積載性を低下させる問題は生じない。
なお、略平行(略垂直)とは、平行(垂直)方向に対して、数度、例えば±5度以内、より好ましくは±3度以内の範囲内にあることを指す。
電池用ケースの形状、大きさは、用途等に応じて適宜選択することができる。電池用ケースが角型の形状、円筒形の形状等であってもよい。なお、角型は円筒型と比べ、放熱性に優れるため大型化しやすく経済性に優れ、積載性も良いとされており、好ましい。
電池用ケースの高さ、幅、奥行の最短辺が10.0mm以上であってもよい。短辺が10.0mm以上となることで、電池ケースの内部容積が大きくできる(一方で、空隙部を小さくすることにより、有効な空間の占有率を高めることもできる)。そのため、電池をモジュール化する場合に、電池の必要個数を減らすことができ、モジュール組み立てが容易である。
電池用ケースを構成する容器蓋が、ステンレス鋼板、アルミニウム板、ステンレス鋼板のラミネート材、アルミニウム板のラミネート材、であってもよい。これらの材料は、現行のリチウムイオンバッテリーにおいて、その電解液との関係でひろく採用されている。本願考案の一態様である電池ケースでも、それらの実績ある材料を、用いることができる。
電池用ケースは、容器本体および容器蓋を接合することにより形成される。容器本体と容器蓋を構成する板材どうしを重ね合わせて、レーザー等により熱を加えることにより、それらが接合される。材料の無駄を省くために、容器本体と容器蓋の端部どうしを接合することが好ましい。
レーザー等による加熱部に近いほど高温になり、加熱部から遠ざかるほど低温になる。温度に応じて、樹脂ラミネート鋼板の金属は溶融し、フィルムの主成分であるポリオレフィン系樹脂は、溶融または蒸発する。そのため、加熱部およびその近傍の特に温度が高い箇所で、鋼板の溶接部が形成される。加熱箇所からある程度離れた箇所では、ポリオレフィン系樹脂の蒸発温度より高く、鋼板の融点より低い温度になるので、そこに、空隙部のみが残る。さらに加熱箇所から離れた箇所では、ポリオレフィン系樹脂の蒸発温度より低く、ポリオレフィン系樹脂の融点より高い温度になるので、融着部が形成される。言い換えると、ヒートシール処理工程と、溶接処理工程を、別工程として行う必要がなく、製造時の作業負荷やコストを低減できる。
なお、樹脂の蒸発によって発生したガスが空隙部に残留すると、溶接不良の原因となることがある。そこで、ガスを空隙部に残留しないように、すなわちガスが逃げやすいように、溶接箇所を設計することが好ましく、フランジ溶接の場合には、フランジを上向きにすることが好ましい。また、溶接時に、溶接箇所にAr等の不活性ガスを吹きかけることで、溶接部の酸化を抑制するとともに、樹脂の蒸発によって発生するガスの拡散を促進し、可燃性ガスが空隙部に残留しないようにすることも可能である。これにより、より長寿命化が期待できる。
溶接、および融着は、加熱により生じるものであり、熱源は特に限定されるものではなく、レーザー、電子ビーム等を用いることができる。入力するエネルギー、走査速度等は、接合する材料に応じて、適宜調整することができる。
レーザー溶接の方法は公知の方法でよい。たとえば、炭酸ガスレーザーや、半導体レーザー等を線源として使用することができ、またファイバーを通したレーザー光でも、レンズで収束したレーザー光でも、反射鏡を使用して反射させたレーザー光を使用しても良い。
図25に実際に容器本体及び容器蓋をレーザー加熱により接合した箇所の断面写真を示す。上下2枚の金属材(光反射するので白く見える)が側面端部で溶接されている。レーザー溶接部の内部(写真右方向)に融着(ヒートシール)された樹脂が見える。溶接部と融着部の間に空隙部が見える。なお、空隙部には、写真撮影用の埋め込み樹脂が充填されている。

Claims (13)

  1. ポリエチレンまたはポリプロピレンを主体としたフィルムを被覆した略矩形の金属を折り曲げて形成された容器、および前記容器と同じ材質で形成された容器蓋、から成ることを特徴とする、電池用ケース。
  2. 前記金属の少なくとも一部が溶接されて、前記容器の側部および底部が封止されていることを特徴とする、請求項1に記載の電池用ケース。
  3. 前記容器の側部の封止は、前記金属の対向する端縁が当接するように、前記金属を円筒の形状に曲げ、当接した前記金属の端縁を溶接したものであることを特徴とする、請求項2に記載の電池用ケース。
  4. 前記容器の底部の封止は、前記円筒の下端縁を圧接し、当接した前記下端縁を溶接したものであることを特徴とする、請求項3に記載の電池用ケース。
  5. 前記フィルムを被覆した金属を折り曲げて、角型の形状に形成されていることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の電池用ケース。
  6. 前記容器および/または前記容器蓋が、前記金属を溶接することなく形成されたものであることを特徴とする、請求項1に記載の電池用ケース。
  7. 前記金属の4端部を折り曲げて、前記容器の底部および4つの側面を画定し、
    前記容器の4つの角部で前記金属が重合された部分を、前記4つの側面のいずれかに外接するように折り曲げて形成されていることを特徴とする、請求項6に記載の電池用ケース。
  8. 前記容器の4つの角部で前記金属が重合された部分を、前記4つの側面のすべてに外接するように折り曲げて形成されていることを特徴とする、請求項7に記載の電池用ケース。
  9. 前記容器と前記容器蓋との接合部は、前記フィルムを被覆した前記金属の溶接部、空隙部、前記フィルムの融着部を有し、かつ電池ケースの内面が前記ポリエチレンまたはポリプロピレンを主体とした前記フィルムで被覆されていることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の電池用ケース。
  10. 前記金属の溶接部および前記フィルムの融着部を含めた前記接合部の長さが15.0mm以下であり、前記接合部における前記空隙部が5.0mm以下であることを特徴とする、請求項9に記載の電池用ケース。
  11. 前記容器の厚みが0.05mm以上、1.0mm以下、前記容器蓋の厚みが0.1mm以上であることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか1項に記載の電池用ケース。
  12. 前記金属がめっき鋼板であり、めっき金属が、Al,Cr,Ni,Sn,Znの中から、1種または複数の種類の元素を含むことを特徴とする、請求項1〜11のいずれか1項に記載の電池用ケース。
  13. 前記フィルムを被覆した略矩形の金属が、めっき鋼板のラミネート材、SUSのラミネート材、Alのラミネート材、であることを特徴とする、請求項1〜12のいずれか1項に記載の電池用ケース。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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CN111341949A (zh) * 2020-03-27 2020-06-26 湖北亿纬动力有限公司 一种电池壳体、电池、电池的制造方法及电池模组

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