JP3223890B2 - バイポーラトランジスタ - Google Patents

バイポーラトランジスタ

Info

Publication number
JP3223890B2
JP3223890B2 JP31377198A JP31377198A JP3223890B2 JP 3223890 B2 JP3223890 B2 JP 3223890B2 JP 31377198 A JP31377198 A JP 31377198A JP 31377198 A JP31377198 A JP 31377198A JP 3223890 B2 JP3223890 B2 JP 3223890B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
collector
electron
energy
bipolar transistor
band
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP31377198A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2000150528A (ja
Inventor
誠也 葛西
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
NEC Corp
Original Assignee
NEC Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by NEC Corp filed Critical NEC Corp
Priority to JP31377198A priority Critical patent/JP3223890B2/ja
Publication of JP2000150528A publication Critical patent/JP2000150528A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP3223890B2 publication Critical patent/JP3223890B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Bipolar Transistors (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、バンドギャップの
異なる二つ以上の半導体より構成されるヘテロ接合バイ
ポーラトランジスタに関するものである。
【0002】
【従来の技術】ヘテロ接合バイポーラトランジスタは、
超高速・大容量通信システムにおいて欠かせない超高速
能動素子であるが、より高速で大量の情報通信システム
および信号処理システムが望まれている現在、より一層
の素子高速化が求められている。
【0003】従来技術によるバイポーラトランジスタ
は、図18に示すように、エミッタ、ベース、コレクタ
の三層から構成される。現在、バイポーラトランジスタ
の動作速度は、コレクタ層での電子輸送特性が支配して
おり、素子高速化にはコレクタにおけるキャリア走行時
間の短縮が課題となる。解決策として、コレクタ層を薄
層化する方法が考えられるが、一方で、耐圧の低下や接
合容量の増大による充放電遅延のような弊害が生まれ
る。従って、コレクタ走行時間を短縮するためには、コ
レクタ層での電子速度を引き上げる方法が要求される。
【0004】コレクタ中において、電子は数十kV/cm以
上の高い電界のもとで輸送される。電子がベースからコ
レクタに注入された直後は速度オーバーシュートといっ
た非平衡輸送によりその速度は非常に大きくなるが、電
子が100〜200nm走行したところで非弾性散乱などの影響
により電子エネルギーは緩和し急激に電子速度が低下し
てしまう。この速度低下が、コレクタ電子輸送、しいて
はヘテロ接合バイポーラトランジスタの動作速度向上に
おいて問題となる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】この問題の解決を試み
る従来技術として、特開平1-53453号に記載のバリステ
ィックコレクタ構造がある。これは、コレクタのうちベ
ース側のイオン化不純物濃度を低くすることで一部電界
を緩和しキャリアのバンド間散乱を抑制、キャリアのバ
リスティック輸送を持続させるものである。この従来技
術では、特定のコレクタバイアス下において平均電子速
度は非常に大きくなる。
【0006】しかし、カーク効果によりコレクタバイア
ス条件や駆動電流密度の制限が厳しい。また、他の従来
技術として、ラウンチャーを有するコレクタ構造がある
(アイ・イー・イー・イー トランザクション オン
エレクトロン デバイス、41巻、 1319頁 (19
94年) (IEEE Transactions on Electron Devices,
vol.41 p.1319 (1994)))。これは、ベース側からコ
レクタコンタクト層に向かって階段状に電子親和力を小
さくし、電子を階段状に高くなったポテンシャルを通過
させることで、逐次加速させバリスティック伝導を維持
させるものである。この構造では、電界条件によっては
電子親和力の差によるポテンシャル障壁が電子輸送の妨
げになるという欠点がある。
【0007】本発明は、上述した事情に鑑みてなされた
もので、上記した従来技術の欠陥を改良し、高速動作が
可能なヘテロ接合バイポーラトランジスタを提供するこ
とを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
の本発明は、以下の構成を採用した。請求項1に記載の
バイポーラトランジスタは、コレクタコンタクト層、コ
レクタ、ベースおよびエミッタが順次積層されてなるバ
イポーラトランジスタにおいて、前記コレクタは、χ1
なる電子親和力を有する第1の半導体からなる第1コレ
クタとχ2なる電子親和力を有する第2の半導体からな
る第2コレクタとが少なくともその一部が前記コレクタ
コンタクト層に垂直な面で接続してなり、前記第1コレ
クタにおける伝導帯の第1の極小エネルギーと第2の極
小エネルギーの差をΔ1としたとき、 χ1>χ2 かつ (χ 1 −χ 2 )<Δ 1 なる関係を満たし、かつ、該第1コレクタの幅が1μm
以下である ことを特徴とする。
【0009】請求項2に記載のバイポーラトランジスタ
は、請求項1に記載のバイポーラトランジスタにおい
て、前記第2コレクタにおける伝導帯の第1の極小エネ
ルギーと第2の極小エネルギーの差をΔ2としたとき、(χ 1 −χ 2 )+Δ 2 >Δ 1 なる関係を満たすことを特徴とする。
【0010】
【0011】請求項3に記載のバイポーラトランジスタ
は、請求項1または2に記載のバイポーラトランジスタ
において、前記第1コレクタの伝導帯の第1の極小エネ
ルギーにおける有効質量が前記第2コレクタの伝導帯の
第2の極小エネルギーにおける有効質量より軽いことを
特徴とする。
【0012】
【0013】
【発明の実施の形態】まず、本発明の実施の形態につい
て図面を参照して詳細に説明する。図1は、本発明の第
1の実施形態であるバイポーラトランジスタの断面図で
ある。半絶縁性基板1上にコレクタコンタクト層2、第
1コレクタ層3と第2コレクタ層4、ベース層5、エミ
ッタ層6が積層されている。前記2つのコレクタ層3、
4は、半絶縁性基板1に対し垂直方向に並べられ、互い
に電子親和力の異なる2種類の半導体よりなる。コレク
タコンタクト層2、ベース5層の外部領域、およびエミ
ッタ層6上にそれぞれコレクタ電極7、ベース電極8、
エミッタ電極9が設けられている。 前記電子親和力の
異なる2種類のコレクタのうち、第1コレクタ層3は電
子親和力が大きい半導体からなり、エミッタからベース
に注入された電子が直進した場合、電子を受け止められ
る位置に配置されている。第2コレクタ層4は電子親和
力の小さい半導体からなり、第1コレクタ層3を側面か
ら挟むように配置されている。第1コレクタ層3と第2
コレクタ層4を構成する半導体の伝導帯エネルギーレベ
ルを比較すると、エネルギーの小さいほうから第1コレ
クタ層のΓ点(第1の極小エネルギー)、第2コレクタ
層のΓ点(第1の極小エネルギー)、第1コレクタ層の
L点(第2の極小エネルギー)、第2コレクタ層のL点
(第2の極小エネルギー)となっている。前記の各エネ
ルギー点における有効質量をmΓ1、mΓ2、mL1、mL2とす
ると、mΓ2 <mL1 、もしくは、 mL2 < mL1となるもの
とする。前記第1および第2コレクタ層となる2種類の
半導体の伝導体エネルギー不連続量を△Ecとし、第1コ
レクタ層および第2コレクタ層のΓ点とL点のエネルギ
ー差をそれぞれ△EΓL1、△EΓL2とすると、△Ec<△E
ΓL1である。また、△EΓL1<△EΓL2となっている。
【0014】以下に、本発明によるバイポーラトランジ
スタの電子輸送特性が向上する原理を詳細に説明する。
図2は、本発明によるバイポーラトランジスタにおける
コレクタのエネルギーバンド図である。第1コレクタと
第2コレクタはy方向に並んでおり、電界Fがx方向に
かかっている。ベースからコレクタに注入された電子は
電子親和力の大きい第1コレクタのΓバンドに入り、電
界Fによりx方向に加速さる。エネルギー緩和時間内に
おいて電子のエネルギーは増加する。電子エネルギーEe
が△EΓL 1以上になると電子は順次Lバンドに移行する
が、△Ec<△EΓL1であるためy方向に運動量をもつ電
子の一部は、Ee>△Ecとなった時点より第1コレクタの
Lバンドに移行せず第2コレクタに移る。この機構によ
って、電子の非平衡輸送特性が従来構造によるバイポー
ラトランジスタに比べて顕著になる。以下に理由を述べ
る。
【0015】(1)第一に、非平衡輸送を長距離持続で
きるためである。図3は、本発明による素子のコレクタ
のエネルギーバンド図であり、図2のバンド図をy方向
から見たものである。図3(a)が従来構造、図3
(b)が本発明である。△EΓL1< △EΓL2であれば、
第1コレクタのΓ点からみた第2コレクタのL点エネル
ギーは第1コレクタのL点エネルギーより高くなる。第
2コレクタへの電子遷移がともなうと、実効的にΓ-L
間エネルギーが大きくなる。一定電界下でLバンドへ遷
移するために必要なエネルギーを獲得するには一定の距
離を走行しなければならないが、その距離は従来構造で
は t0 = △EΓL1/Fであったものが、本発明によるコレ
クタ構造では t1 + t2 = △Ec/F + △EΓL2/F となる。
Fが一定でかつ△EΓL1<△EΓL2であるから、t1 + t2
> t0 である。一方、電子速度veとエネルギーEにはve
= (2E/m)∧0.5 の関係があり、かつ mΓ2 < mL1である
ので、第2コレクタΓバンドの電子速度は第1コレクタ
のLバンドでの電子速度より大きい。よって、本発明に
おいては、電子がLバンドに移行するまでの走行距離が
延長され、Γバンドの高い電子速度を長い距離維持で
き、電子の平均速度が大きくなる。
【0016】(2)第二に、電子の有効質量増加が抑制
されるためである。図4は第1コレクタと第2コレクタ
の電子エネルギー分散図である。電子が第1コレクタの
Γバンドにあっても、電子エネルギーが増加すると図4
に示すようにバンドが放物線からずれる。このため、電
子エネルギーの増大にともない電子有効質量が増加す
る。しかし、このような電子を第2コレクタに遷移させ
ると、第2コレクタにおいては△Ecだけ電子のエネルギ
ーが相対的に低下し、電子は再びエネルギーバンドの極
小点側に移る。よって、電子の有効質量は第1コレクタ
に存在したときより軽くなる。第2コレクタに遷移した
電子の個数に対応して系全体から見た実効的な有効質量
は低下し、従って、エネルギー緩和時間までの電子速度
が増す。
【0017】(3)第三に、一度速度オーバーシュート
した電子が再度速度オーバーシュートを起こす確率が生
まれるためである。これは、第1のコレクタから第2の
コレクタに遷移し電子の運動エネルギーが減少すること
によって、運動量緩和時間とエネルギー緩和時間が逆転
するためである。電子が高エネルギーであるとエネルギ
ー緩和時間は運動量緩和時間より大きくなり電子は運動
量空間にほぼ対称に分布するが、電子のエネルギーが低
いときにはエネルギー緩和時間は運動量緩和時間よりも
小さいため、エネルギー増加分はそのまま電界方向の運
動量となり、電界方向の電子速度が選択的に大きくな
る。コレクタ間の移動による運動エネルギーの低下は後
者の現象を引き起こすため、電界方向における電子速度
の向上が図られる。
【0018】また、本発明における素子では、次のよう
に非平衡電子輸送特性の向上に加え、定常輸送を含めて
電子輸送特性を向上させることができる。 (4)バイポーラトランジスタのコレクタには40kV/cm
以上の電界がかかっており、電子が数百nm走行したとこ
ろで電子エネルギーが緩和し電界ドリフト輸送に切り替
わる(図3(a))。この輸送状態になると、速度−電界
特性におけるピーク速度よりも飽和速度が大きいことが
走行時間の短縮につながる。飽和速度はLバンドにおけ
る電子速度であり、よって、Lバンドの有効質量が軽い
コレクタほど高速電子輸送に適する。先に説明したよう
に、本発明においては、電子の一部はコレクタを走行し
ΔEc以上のエネルギーを獲得したところで走行領域を第
1コレクタから第2コレクタに切り替える。従って、本
発明による素子では、第2コレクタのLバンドの有効質
量を mL2 < mL1 とすることで第2コレクタの飽和速度
を高くし、かつ、適切な電界をかけ非平衡輸送からドリ
フト輸送への輸送機構の切り替えと電子が走行するコレ
クタの切り替えを同期させることで、高速非平衡輸送と
高速定常輸送特性を両立することができる。これにより
コレクタの電子速度を大幅に引き上げることが可能であ
る。
【0019】以上のように、本発明によるトランジスタ
では、2種類のコレクタを並列に設けることによってコ
レクタの電子速度が引き上げられ、よって高速動作が可
能になるのである。
【0020】
【実施例】本発明におけるバイポーラトランジスタの実
施例について図を用いて具体的に説明する。図5は、本
発明によるバイポーラトランジスタの具体例の構造断面
図である。半絶縁性InP基板10上に、n+-InPコレクタ
コンタクト層11(n = 1x10∧19 cm-3、500nm)が形成
され、その上に第1コレクタであるn-In0.53Ga0.47Asコ
レクタ12(n = 3x10∧16 cm-3, 500nm)、第2コレクタ
n-InP13(n = 3x10∧16 cm-3, 500nm)が同一面内に並
列している。前記コレクタ上にp+-In0.53Ga0.47Asベー
ス14(p= 4x10∧19 cm-3, 60nm)、n-InPエミッタ15
(n = 3x10∧17, 40nm )、n+-InP16( n = 5x10∧18 cm
-3, 50nm), n+-In0.53Ga0.47Asエミッタコンタクト層1
7(n = 1x10∧19 cm-3, 50nm)が順に積層されている。
コレクタコンタクト層11、ベース14の外部領域、エ
ミッタコンタクト層17上にそれぞれ、Ge/Au/Ni/Ti/Au
コレクタ電極18、Ti/Pt/Auベース電極19、WSiエミ
ッタ電極20が設けられている。素子を上から見て第1
コレクタ12はエミッタの下に位置し、前記第1コレク
タ12を挟むように第2コレクタ13が配置されてい
る。第1コレクタ幅Wは、エミッタ幅と同じであり W =
0.2μmである。
【0021】図6は、前記バイポーラトランジスタの第
1コレクタとなるIn0.53Ga0.47Asと第2コレクタとなる
InPのバンドラインナップである。各バンド端の有効質
量もあわせて載せてある。InGaAsとInPは、共に直接遷
移形のバンド構造を有しており、Γ点に伝導帯のエネル
ギー最小点がある。InGaAsのΓ点とL点のエネルギー差
ΔEΓL1は 0.55eV、InPのΓ点とL点のエネルギー差△E
ΓL2は0.50eVである。伝導帯の不連続量△Ecは0.18 eV
であり、InGaAsの方が電子親和力が大きい。第1コレク
タのΓ点と第2コレクタのL点のエネルギー差は0.68eV
でありΔEΓL1より大きい。第1コレクタのΓ点とL点
の有効質量はそれぞれ、0.04m0、0.30m0であり、第2コ
レクタのΓ点とL点の有効質量はそれぞれ、0.08m0、0.
28m0である。ここで、m0は真空中の電子質量である。Γ
点においては第1コレクタのほうが有効質量が軽く、L
点においては第2コレクタのほうが有効質量が軽い。
【0022】図7は、In0.53Ga0.47AsとInPにおける電
子有効質量のエネルギー依存性である。InPに対しては
エネルギー軸を△Ec分シフトしてある。各バンドの非放
物線性を考慮している。エネルギーの増加に従い有効質
量も増加する。伝導帯端においてはInPよりもInGaAsの
有効質量の方が軽いが、電子エネルギーInPの伝導帯端
に達する0.18eVにおいては逆転しており、InPの有効質
量のほうが軽くなっている。このため、電子エネルギー
がΔEc以上であれば、走行するコレクタを第1コレクタ
であるInGaAsから第2コレクタであるInPに切り替えた
ほうが有利となる。
【0023】図8に、モンテカルロ法を用いて求めたIn
0.53Ga0.47AsとInPの定常状態における速度-電界特性を
示す。InGaAsは有効質量が軽いため、低電界での電子速
度が速く、移動度μ=ve/EはInPよりも大きい。一方、電
界が5kV/cm以上になると、InPのほうが電子速度が高
く、飽和電子速度も高い。これは、InPのLバンドでの有
効質量がInGaAsより軽く、また、InPでは、InGaAsのよ
うな三元混晶で起こる合金散乱が生じないなどの理由に
よる。以上より、InGaAsとInPはそれぞれ第1コレク
タ、第2コレクタとして望ましい特性を有していること
がわかる。
【0024】図9は、本発明によるコレクタ構造の電子
分布をモンテカルロ法を用いてシミュレートした結果で
ある。電界は40kV/cmであり、通常動作状態のバイポー
ラトランジスタのコレクタにかかる電界と同程度であ
る。電子はベース層から第一コレクタにのみ注入される
ものとした。ベースから第1コレクタに注入された電子
は、次第に第1コレクタから第2コレクタに遷移し、第
2コレクタを走行することがわかる。第2コレクタへ遷
移する確率は第1コレクタの幅Wに依存し、Wが1μm以
下になると電子が第2コレクタを走行する確率が増え、
系全体からみた電子平均速度の上昇が認められた。
【0025】図10に、本発明によるコレクタ構造の位
置(電界方向)に対するエネルギー空間での電子分布を
示す。図10(a)が第1コレクタで、図10(b)が
第2コレクタにおける電子分布である。電界は40kV/cm
である。電子はコレクタを走行するにつれてそのエネル
ギーを増している。第1コレクタにおいては、電子注入
点から180 nmの間で、走行距離と共に電子エネルギーが
増加し、電子エネルギーは電界と走行距離の積にほぼ等
しい。x = 180nmの近辺で電子はΓバンドからLバンド
に移っている。x = 180nm以降では電子エネルギーはあ
まり上昇せず、第1コレクタであるInGaAsのL点のエネ
ルギーEL1=0.53 eV近辺に分布している。このことは、
電子がL点に至ったところでエネルギー緩和が起こり、
電子が定常輸送状態に入っていることを示している。一
方、x = 50 nm近辺で第1コレクタから第2コレクタへ
の遷移が起こる。第2コレクタ内でも、電子はコレクタ
を走行するに連れてそのエネルギーを増し、x = 220 nm
を越えたあたりでΓバンドからLバンドに移行してい
る。ΓバンドからLバンドに移るまでの位置は第一コレ
クタに比べてコレクタコンタクト層側に約40nm延長され
ており、従って、本発明による素子は従来の素子に比べ
て非平衡輸送を長く保てることがわかる。第1コレクタ
と比較して、第2コレクタではL点においてもエネルギ
ーを上昇させる電子が存在しエネルギー緩和が弱いが、
これはInPでは合金散乱などの散乱要因が少ないためで
ある。
【0026】図11は、本発明と従来技術によるバイポ
ーラトランジスタにおけるコレクタの平均電子速度であ
る。本発明による素子は、従来の技術による素子と比較
して平均電子速度が高いことが明らかに示されている。
従来例では、x = 150 nmをこえたところでInGaAs Lバ
ンドへの散乱とエネルギー緩和により電子速度が30%ま
で急激に低下しているが、本発明による素子ではそのよ
うな電子速度の大幅な低下は抑制されている。また、本
発明による素子においては、第2コレクタに遷移した電
子が速度オーバーシュートを起こし、x = 150 nm近辺で
電子速度のピークを生じている。さらに、x = 250 nm以
降においては従来例と比較して2倍もの電子速度が実現
されている。
【0027】図12は、本発明によるコレクタ構造の低
電界における電子分布を示したものである。電界強度は
4kV/cmである。低電界では、ほとんどの電子は第1コレ
クタのみ走行しており、電界強度により電子が走行可能
なコレクタが切り替わっていることがわかる。この電界
強度の条件では、電子はコレクタ走行を続けてもLバン
ドに到達するまでのエネルギーを得ることはなく、また
十分加速されないうちにエネルギー緩和してしまいコレ
クタ全域において定常状態にはいっている。
【0028】図13に、本発明と従来技術によるバイポ
ーラトランジスタのコレクタの低電界における平均電子
速度を示す。電界強度は4kV/cmである。電子速度分布は
従来構造と本発明による構造と差異は少なく、ほぼ同じ
である。これは、図12で示した実空間における電子分
布から明らかなように、電子が第1コレクタのInGaAs領
域のみを走行していることによる。電子速度はコレクタ
全域に渡ってほぼ一定であり、電界ドリフトによって電
子が輸送されている。図8に示されているように、低電
界においてはInPよりInGaAsのほうが速度が大きく、よ
って、電子をInPからなる第2コレクタに遷移させない
ほうが平均電子速度が大きくなるが、本発明による素子
は、低電界下では走行層を第1コレクタに限ることによ
って電子速度の低下を避けている。このように、本発明
におけるコレクタ構造では、第2コレクタに電子を遷移
させるか否かバンド不連続量とコレクタのx方向の電界
の兼ね合いによって変え、低電界と高電界の各条件下で
平均電子速度が大きくなるように適宜電子輸送経路を切
り替えることができ、より広いバイアス条件で素子の高
速化を図ることが可能となっている。
【0029】本発明による他の実施の形態について説明
する。図14は、本発明による第2の実施形態であるバ
イポーラトランジスタの断面図である。図14は、図1
に示した第1の実施形態において第1コレクタのうちコ
レクタコンタクト層側の一部を第2コレクタと同じ材料
に置き換えたものである。この実施形態では、ΔEΓL1
〜ΔEc + ΔEΓL2であれば、第1コレクタを走行してい
る電子のエネルギーが上昇し電子がLバンドに遷移して
しまえば、△Ecの影響を直接受けずに第2コレクタへの
遷移が可能である。第2コレクタの禁制帯幅Eg2が第1
コレクタの禁制帯幅Eg1より大きければ、第2の実施形
態においては素子の耐圧が上がる利点が加えられる。
【0030】図15は、本発明による第3の実施の形態
であるバイポーラトランジスタの断面図である。図15
は、図1に示した第1の実施の形態において第2コレク
タのうちベース側の一部を第1コレクタと同じ材料に置
き換えた形態を有する。
【0031】図16は、本発明による第4の実施形態で
あるバイポーラトランジスタの断面図である。この実施
の形態は、第1の実施形態において第1コレクタと第2
コレクタを合わせたコレクタ部分を、第1コレクタと第
2コレクタを交互に複数配列したものに置き換えた構造
を有する。本発明においては、第1コレクタの幅Wが狭
いほうが、高電界時に第1コレクタから第2コレクタへ
遷移する電子が多くなるため、素子高速化の効果が大き
い。一方で、第1コレクタが狭くなることで駆動電流が
制限される。この実施形態では、Wが十分狭い第1コレ
クタを多重に配列することで本発明による高速化の効果
と大駆動電流が両立されるのである。
【0032】図17と図18は、それぞれ本発明による
バイポーラトランジスタの第5または第6の実施形態の
断面図である。図17は、図1に示した第1の実施形態
において第1コレクタとベースの間に組成傾斜層を挿入
した構造を有するものである。また、図18は、図1に
示した第1の実施の形態において第2コレクタとベース
層の間に組成傾斜層を挿入した構造を有するものであ
る。本発明における素子のコレクタに組成傾斜層を挿入
することによって、ベース内に内蔵電界を導入するため
に施した組成傾斜した分をコレクタで補償しつつ、本発
明による高速電子輸送特性を保つことができる。また、
ベース・コレクタ間に生じるバンド不連続を生じること
無く、ベースより禁制帯幅の広い半導体材料を第1コレ
クタや第2コレクタに用いることが可能となる。
【0033】図19は、本発明によるバイポーラトラン
ジスタの第7の実施形態の断面図である。この実施形態
は、図1に示した第1の実施形態のコレクタ部分を、互
いに電子親和力の異なる3種類以上の半導体のコレクタ
によって構成したものである。前記複数の半導体のコレ
クタを電子親和力が大きい順に並列させることにより、
高い電界でより長い距離Γバンドを走行させることが可
能になり、さらなる高速電子輸送が実現される。
【0034】上記各実施の形態において、エミッタとコ
レクタを入れ替えた、いわゆるコレクタトップでも構成
することができる。
【0035】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によるバイ
ポーラトランジスタでは、コレクタを電子親和力の異な
る2種類以上の半導体を並列させて構成しているため、
非平衡電子輸送が顕著になり、かつ定常状態での高い飽
和電子速度が両立し、コレクタにおける電子輸送特性が
向上する。また、本発明によるバイポーラトランジスタ
では、コレクタを電子親和力の異なる2種類以上の半導
体を並列させて構成しているため、コレクタ電界により
電子が走行する経路を切り替えることができる。低電界
の電子速度が高い材料と飽和電子速度が高い材料によっ
てコレクタを構成することによって、広範囲の電界でコ
レクタにおける電子速度を高めることができる。従っ
て、バイポーラトランジスタの動作速度を著しく向上さ
せる効果がもたらされるのである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係るバイポーラトランジスタの第1
の実施形態を示す断面図である。
【図2】 図1のコレクタのエネルギーバンドを示す図
である。
【図3】 コレクタ近傍のエネルギーバンドを示す図で
ある。(a)従来のコレクタ構造の高電界における場合
である。(b)本発明によるコレクタ構造の高電界にお
ける場合である。(c)本発明によるコレクタ構造の低
電界における場合である。
【図4】 図1の第1コレクタおよび第2コレクタを構
成する半導体のエネルギー分散図である。
【図5】 本発明に係るバイポーラトランジスタの第1
の実施形態についての実施例の断面図である。
【図6】 図5に示すバイポーラトランジスタにおける
In0.53Ga0.47AsとInPのバンド接続状態を示すエネルギ
ーバンドである。
【図7】 図5に示すバイポーラトランジスタにおける
In0.53Ga0.47AsとInPの電子の有効質量のエネルギー依
存性を示す図である。
【図8】 図5に示すバイポーラトランジスタにおける
In0.53Ga0.47AsとInPの速度−電界特性を示す図であ
る。
【図9】 本発明の第1の実施形態のバイポーラトラン
ジスタのコレクタにおける電子分布を示す図である。
【図10】 本発明の第1の実施形態のバイポーラトラ
ンジスタのコレクタにおける電界方向の位置に対するエ
ネルギー空間での電子分布を示す図である。(a)第1
コレクタについてである。(b)第2コレクタについて
である。
【図11】 本発明の第1の実施形態のバイポーラトラ
ンジスタのコレクタにおける平均電子速度を示す図であ
る。
【図12】 本発明の第1の実施形態のバイポーラトラ
ンジスタの低電界下のコレクタにおける電子分布を示す
図である。
【図13】 本発明の第1の実施形態のバイポーラトラ
ンジスタの低電界下のコレクタにおける平均電子速度を
示す図である。
【図14】 本発明に係るバイポーラトランジスタの第
2の実施形態を示す断面図である。
【図15】 本発明に係るバイポーラトランジスタの第
3の実施形態を示す断面図である。
【図16】 本発明に係るバイポーラトランジスタの第
4の実施形態を示す断面図である。
【図17】 本発明に係るバイポーラトランジスタの第
5の実施形態を示す断面図である。
【図18】 本発明に係るバイポーラトランジスタの第
6の実施形態を示す断面図である。
【図19】 本発明に係るバイポーラトランジスタの第
7の実施形態を示す断面図である。
【図20】 従来のバイポーラトランジスタを示す断面
図である。
【符号の説明】
1 半絶縁性基板 2 コレクタコンタクト層 3 第1コレクタ 4 第2コレクタ 5 ベース 6 エミッタ 7 コレクタ電極 8 ベース電極 9 エミッタ電極 10 半絶縁性InP基板 11 n+-InPコレクタコンタクト層 12 n-InGaAs(n-In0.53Ga0.47As00) 13 n-InP 14 p+-In0.53Ga0.47Asベース 15 n-InPエミッタ 16 n+-InP層 17 n+-In0.53Ga0.47Asエミッタコンタクト層 18 Ge/Au/Ni/Ti/Auコレクタ電極 19 Ti/Pt/Auベース電極 20 WSiエミッタ電極 21 組成傾斜層 23 第3コレクタ 24 第4コレクタ
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H01L 21/331 H01L 29/205 H01L 29/73

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 コレクタコンタクト層、コレクタ、ベー
    スおよびエミッタが順次積層されてなるバイポーラトラ
    ンジスタにおいて、 前記コレクタは、χ1なる電子親和力を有する第1の半
    導体からなる第1コレクタとχ2なる電子親和力を有す
    る第2の半導体からなる第2コレクタとが少なくともそ
    の一部が前記コレクタコンタクト層に垂直な面で接続し
    てなり、 前記第1コレクタにおける伝導帯の第1の極小エネルギ
    ーと第2の極小エネルギーの差をΔ1としたとき、 χ1>χ2 かつ (χ 1 −χ 2 )<Δ 1 なる関係を満たし、かつ、該第1コレクタの幅が1μm
    以下である ことを特徴とするバイポーラトランジスタ。
  2. 【請求項2】 請求項1に記載のバイポーラトランジス
    タにおいて、前記第2コレクタにおける伝導帯の第1の
    極小エネルギーと第2の極小エネルギーの差をΔ2とし
    たとき、(χ 1 −χ 2 )+Δ 2 >Δ 1 なる関係を満たすことを特徴とするバイポーラトランジ
    スタ。
  3. 【請求項3】 請求項1または2に記載のバイポーラト
    ランジスタにおいて、 前記第1コレクタの伝導帯の第1の極小エネルギーにお
    ける有効質量が前記第2コレクタの伝導帯の第2の極小
    エネルギーにおける有効質量より軽いことを特徴とする
    バイポーラトランジスタ。
JP31377198A 1998-11-04 1998-11-04 バイポーラトランジスタ Expired - Fee Related JP3223890B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP31377198A JP3223890B2 (ja) 1998-11-04 1998-11-04 バイポーラトランジスタ

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP31377198A JP3223890B2 (ja) 1998-11-04 1998-11-04 バイポーラトランジスタ

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2000150528A JP2000150528A (ja) 2000-05-30
JP3223890B2 true JP3223890B2 (ja) 2001-10-29

Family

ID=18045336

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP31377198A Expired - Fee Related JP3223890B2 (ja) 1998-11-04 1998-11-04 バイポーラトランジスタ

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP3223890B2 (ja)

Non-Patent Citations (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Title
赤崎勇編著,「▲III▼−▲V▼族化合物半導体」,初版,株式会社培風館,1994年5月20日,p.187−188

Also Published As

Publication number Publication date
JP2000150528A (ja) 2000-05-30

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US7388235B2 (en) High electron mobility transistors with Sb-based channels
EP0800219B1 (en) Heterojunction pin photodiode
US4649405A (en) Electron ballistic injection and extraction for very high efficiency, high frequency transferred electron devices
EP0278386B1 (en) Heterojunction bipolar transistor
JP2716136B2 (ja) 半導体装置
JP3223890B2 (ja) バイポーラトランジスタ
JPH09275224A (ja) フォトダイオード
US5359257A (en) Ballistic electron, solid state cathode
US5751029A (en) Field-effect semiconductor device having heterojunction
EP0186301A1 (en) High-speed semiconductor device
EP0349703A2 (en) Multilayer field-effect transistor
JP2978572B2 (ja) 半導体受光素子
US5569943A (en) Field effect real space transistor
JP2586640B2 (ja) ヘテロ接合バイポーラトランジスタ
US4901122A (en) Double-base hot carrier transistor
JP3246401B2 (ja) ヘテロ接合バイポーラトランジスタ
JP2503639B2 (ja) 半導体装置
KR100222398B1 (ko) 공진 터널링 전자 장치
JPH11214712A (ja) 半導体デバイス
EP0033496B1 (en) Three-terminal semiconductor device
JPH04127534A (ja) 半導体装置
JP5681031B2 (ja) ヘテロ接合バイポーラトランジスタ
EP0166343B1 (en) A bistable ballistic space charge semiconductor device
US5712491A (en) Lateral theta device
KR100268170B1 (ko) 공진 터널링 핫-일렉트론 트랜지스터

Legal Events

Date Code Title Description
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20010724

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees