JP3217091B2 - 液晶ポリマーを含有する再成形品 - Google Patents

液晶ポリマーを含有する再成形品

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、液晶性ポリマーを含有
する再成形品の製造方法に関する
【0002】
【従来の技術】従来、高強度で高剛性を有する合成樹脂
製成形品としては、熱硬化性樹脂にガラス繊維を混合し
たものや、スタンパブルシートと称される熱可塑性樹脂
に長繊維ガラスを混合したものなどを所定形状に成形す
ることにより得られるものが知られている。また、上記
ガラス繊維の代わりに炭素繊維を用いてなる高強度且つ
高剛性の合成樹脂も知られている。
【0003】さらに、ガラス繊維や炭素繊維が混合され
ない高強度で高剛性を有する合成樹脂成形品として、特
開平1−320128号公報に示されるように、熱可塑
性樹脂と液晶樹脂(液晶ポリマー)とからなる複合材を液
晶樹脂の液晶転移温度以上の温度下で延伸しながら押出
すことにより得たストランドを1〜40mmの長さに切断
し、得られた切断物を液晶樹脂の液晶転移温度以下の温
度で押出成形することにより得られるものも知られてい
る。
【0004】ところで、近時、資源保護等の観点から成
形品となった合成樹脂体をリサイクル(再成形)すること
が望まれている。合成樹脂体よりなる成形品をリサイク
ルする場合には、合成樹脂体を粉砕して合成樹脂よりな
る粉砕片を得た後、該粉砕片を加熱して溶融し、次に、
溶融状態の合成樹脂材を所定形状の成形品に成形する
か、又は溶融状態の合成樹脂を押出成形して成形用素材
を得た後、その成形用素材を所定形状の成形品に成形す
るものである。
【0005】従来、高強度で高剛性を有する合成樹脂体
をリサイクルする場合には、ガラス繊維や炭素繊維等の
強化用繊維を合成樹脂に混合してなる繊維強化樹脂体が
対象になっていた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかるに、上記のよう
な繊維強化樹脂体を再成形する場合、繊維強化樹脂体を
粉砕して得られた粉砕片においては合成樹脂体に混入さ
れている強化用繊維が短く切断されているために、再成
形により得られた成形用素材においても強化用繊維が切
断されたままである。このため、リサイクルによる得ら
れた再成形品は、当初の成形品に比べて強度及び剛性の
点で低下せざるを得なかった。
【0007】上記に鑑み、本発明は、高強度で高剛性を
有する合成樹脂体を再成形して得られる再成形品の強度
及び剛性を当初の合成樹脂体よりも低下しないようにす
ることを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】即ち本発明は、変性ポリ
フェニレンオキシドであるマトリックス樹脂および該マ
トリックス樹脂より高い融点を有する液晶性ポリマー3
〜60重量%を含有して成形され、上記マトリックス樹
脂中において、液晶性ポリマーが繊維化されてなる複合
成形品を粉砕し、次いで粉砕材を上記液晶性ポリマーの
融点よりも高温に加熱溶融して再成形用材料を上記液晶
性ポリマー分子に配向性を付与する状態で調製した後、
上記マトリックス樹脂の融点以上で液晶性ポリマーの融
点未満の温度で成形することにより上記液晶性ポリマー
の繊維状液晶化物のアスペクト比3以上に設定するよう
にしたことを特徴とする液晶性ポリマーを含有する再成
形品の製造方法を、提供する。
【0009】本発明の再成形品において使用されるマト
リックス樹脂として用いる変性ポリフェニレンオキシド
は好ましくはスチレン変性ポリフェニレンオキシド(以
下、変性PPOと略す)である。上記マトリックス樹脂
は、市販品として入手出来る。具体的には市販品として
は、例えばノリルPX2623(日本GEプラスチック
ス(株)製)、ユピエースAN30(三菱互斯化学(株)
製)、ザイロンX5055(旭化成(株)製)等が挙げら
れ、これらの1種以上使用してよい。マトリックス樹脂
の含有量は、樹脂組成物全重量に対し40〜97重量%
が好ましい。マトリックス樹脂が40重量%未満だと樹
脂組成物の成形性が低下し、又97重量%を超過すると
成形物の強度が十分でなくなる。
【0010】本発明の再成形品は、液晶性ポリマーを含
有する。液晶性ポリマーは、成形物中に於いて、後述の
アスペクト比を有する繊維形状をなし、成形物の強化材
となる。このような液晶性ポリマーとしては、上記マト
リックス樹脂より融点が高いもの、好ましくは20℃以
上高いものである。融点がマトリックス樹脂より低い
と、液晶性ポリマーが成形物中に於いて繊維状とならず
又配向も一定せず十分な強度が得られない。液晶ポリマ
ーとしては従来公知の各種のものが適用出来、特に限定
されるものではない。液晶ポリマーとしては、各種のも
のが知られているが、本発明で特に好ましく用いられる
ものは熱可塑性の液晶ポリエステル、また液晶ポリエス
テルアミドである。かかるものとして、特に好ましく用
いられるものとしては、下記に記載するものが挙げられ
る。即ち
【0011】
【化1】
【0012】
【化2】
【0013】
【化3】
【0014】
【化4】
【0015】
【化5】
【0016】ここで、Σni=100である。そして、特
に好ましいのは各構造式のniが4以上である。
【0017】また、各式において、ハロゲン等をはじ
め、各種の置換基が付加されていても良い。これらに示
されるものは本発明の変性ポリエステルと良好に溶融成
形しやすいので特に好ましい。また、高強度・高弾性率
の複合繊維としやすい。
【0018】同様に液晶ポリエステルアミドも従来公知
のものが適用できなんら制限されるものではない。特に
好ましいものとして下記の構造式に示されるものが挙げ
られる。即ち
【0019】
【化6】
【0020】
【化7】
【0021】
【化8】
【0022】ここで、各構造式においてΣni=100で
ある。そして、特に好ましいのは各構造式のniが15以
上である。また、各式ともハロゲン等をはじめ、各種の
置換基が付加されていてもよい。これらに示されるもの
はポリアーリレートからなる液晶ポリマーと同様に溶融
成形性があり、かつ高強度である。液晶性ポリマーの含
有量は、樹脂組成物全重量に対し3〜60重量%であ
る。含有量が3重量%未満だと成形物に十分な強度を付
与できず、又60重量%を超過すると樹脂組成物の成形
性が低下する。
【0023】本発明の樹脂組成物にはその他添加剤とし
て、耐光剤、酸化防止剤、可塑剤等を加えてよい。
【0024】本発明の樹脂組成物は一旦溶融状態、即ち
液晶性ポリマーの融点より高い温度に加熱し、ポリマー
分子に配向性を付与する状態で成形あるいは成形用材料
化する。ポリマー分子に配向性を付与する状態は押出成
形、射出成形等の方法により与えられるのが一般的であ
る。この方法で直接、成形して、高い配向性(分子方向
性)を有する成形物品を得てもよい。しかし、通常押出
成形した後、ペレット状の成形用材料にする。この成形
用材料を用いて、再度押出機や射出成形器等で溶融して
成形する。この再溶融する時の温度はマトリックス樹脂
の融点より高くかつ液晶ポリマーの融点より低い温度で
ある方が、液晶樹脂が繊維状態を保持しているので好ま
しい。成形用材料としては平板状のものを用いてもよ
い。この場合成形用材料板を重ねて型内成形してもよ
い。特に、配向方向を同一または異なる方向にすること
により、成形物品の特性を変えることができる。
【0025】上記再成形物中に複合された繊維状液晶化
ポリマーは、アスペクト比(即ち、長さ/太さ)3以上、
好ましくは10以上有する。
【0026】
【発明の効果】上記成形物を原料として、これを必要に
応じ粉砕等を行い、上記製造法に従って再溶融、再成形
を行うことにより、再成形物が得られる。このようにし
て得られた再成形物中の繊維状液晶化ポリマーは本質的
に原料成形物中のそれと同じであり、アスペクト比3以
上を有し、従って再成形物は原料成形物の強度と実質的
に同等である。このような再成形物も更に、何度でも再
成形出来、実質的に強度低下のない再成形物を与える。
【0027】
【実施例】以下、本発明を実施例により具体的に説明す
る。まず、液晶樹脂としてポリプラスチックス(株)製の
ベクトラA950(芳香族ポリエステル、液晶転移温度:
約280℃)を用い、変性PPOとしては日本GEプラ
スチックス(株)製のノリルPX2623を用い、両者を
所定の割合に混合して液晶樹脂複合材を得た。
【0028】次に、上記液晶樹脂複合材を初期押出成形
した。この場合の押出成形条件は、押出機としてプラス
チック工学研究所(株)製の2軸押出機(スクリュー径:3
0mm)を用い、樹脂温度は290℃に、スクリュー回転
数は100rpmに、ダイス径は2mmに、剪断速度は17
00sec-1に、延伸比は2倍に各々設定した。そして、
上記の液晶樹脂複合材を延伸しながら押出成形してテス
ト用の直径:1.4mmのストランド状の初期成形用素材
を得た後、該初期成形用素材の一部を長さ:3mmに切断
して初期ペレット材を得た。射出成形条件は、東芝機械
(株)製の220Ton射出成形機及びテストピース型の金
型を用い、樹脂温度を265℃に設定した。また、この
場合に、上記の射出成形機及びスパイラルフロー型(直
径:6mmの半円形)の金型を用い、樹脂温度を265℃
に、射出圧を1000kg/cm2に各々設定して流動性評
価テストを行なった。
【0029】次に、上記初期ペレット材を射出成形して
液晶樹脂複合体を得た。この場合の射出成形条件は、東
芝機械(株)製の220Ton射出成形機及びテストピース
型の金型を用い、樹脂温度を265℃に設定した。ま
た、この場合に、上記の射出成形機及びスパイラルフロ
ー型(直径:6mmの半円形)の金型を用い、樹脂温度を2
65℃に、射出圧を1000kg/cm2に各々設定して流
動性評価テストを行なった。
【0030】次に、上記液晶樹脂複合体を、(株)ホーラ
イ製 V−360の粉砕装置で粉砕し、長さ:3〜4mm
の粉砕片を得た後、該粉砕片をリサイクル押出し成形し
てテスト用の直径:1.4mmのストランド状のリサイク
ル成形用素材を得た後、該リサイクル成形用素材の一部
を長さ:3mmに切断してリサイクルペレット材を得た。
この場合の押出成形条件は初期押出成形の場合と同じで
あった。
【0031】次に、ストランド状の初期成形用素材及び
リサイクル成形用素材に対して引張試験を行なった。測
定機としては島津製作所(株)製の万能試験機(オートグ
ラフ)を用い、引張速度を20mm/分に設定した。
【0032】図1は初期成形用素材及びリサイクル成形
用素材に対して引張試験を行なった結果を示しており、
液晶樹脂の含有率が3〜4%を超える領域で液晶樹脂の
繊維化が生じ、液晶樹脂含有量の全量域に亘って両者の
引張強度が略同じであること、つまり上記再成形方法に
よると高強度の合成樹脂を再成形するにも拘わらず、強
度が低下しないことが確認できた。
【0033】図2は液晶樹脂含有量と流動長比との関係
を示しており、液晶樹脂含有量が70%を超えると流動
性が極端に低下し、成形用材料としては用い難いことが
明らかになった。以上の考察から、熱可塑性樹脂として
変性PPOを用いる場合には、液晶樹脂の含有量が3〜
60%の範囲内であることが好ましい。
【0034】また、初期成形用素材及びリサイクル成形
用素材に対して電子顕微鏡(SEM)による形態観察を行
なったところ、液晶樹脂の含有量が3%のときには液晶
樹脂の大部分は粒状であり一部分が繊維状であった。ま
た、液晶樹脂の含有量が4%、6%及び8%のときには
液晶樹脂は繊維状であった。この結果から、液晶樹脂が
3〜4%以上含有されると、液晶樹脂が繊維化して引張
強度が向上することが理解できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例により得られた初期成形用素材および
リサイクル成形用素材に対する引張試験の結果を示すグ
ラフである。
【図2】 実施例により得られた成形物中の液晶樹脂含
有量と流動長比を示すグラフである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平5−70700(JP,A) 特開 平3−24911(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C08L 1/00 - 101/16

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 変性ポリフェニレンオキシドであるマト
    リックス樹脂および該マトリックス樹脂より高い融点を
    有する液晶性ポリマー3〜60重量%を含有して成形さ
    れ、上記マトリックス樹脂中において、液晶性ポリマー
    が繊維化されてなる複合成形品を粉砕し、次いで粉砕材
    を上記液晶性ポリマーの融点よりも高温に加熱溶融して
    再成形用材料を上記液晶性ポリマー分子に配向性を付与
    する状態で調製した後、上記マトリックス樹脂の融点以
    上で液晶性ポリマーの融点未満の温度で成形することに
    より上記液晶性ポリマーの繊維状液晶化物のアスペクト
    比3以上に設定するようにしたことを特徴とする液晶性
    ポリマーを含有する再成形品の製造方法
  2. 【請求項2】 再成形品の液晶性ポリマー繊維状液晶化
    物がアスペクト比10以上である請求項1記載の製造方
  3. 【請求項3】 液晶性ポリマーの融点がマトリックス樹
    脂のそれより20℃以上高い請求項1記載の製造方法
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